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特許7283587電力変換装置及び方法、並びに電力変換システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】電力変換装置及び方法、並びに電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/67 20060101AFI20230523BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230523BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230523BHJP
   H02J 3/48 20060101ALI20230523BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G05F1/67 A
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J3/48
H02J7/35 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022006219
(22)【出願日】2022-01-19
(62)【分割の表示】P 2018054184の分割
【原出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2022050656
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】品田 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】綾井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】奥村 俊明
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-038432(JP,A)
【文献】特開2017-139834(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066044(WO,A1)
【文献】特開2017-099235(JP,A)
【文献】特開2013-172514(JP,A)
【文献】特開2013-138540(JP,A)
【文献】特許第6167337(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/67
H02M 7/48
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 3/48
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備と交流電路及びバッテリとの間に設けられ、前記発電設備からの直流電力を、前記交流電路及び前記バッテリに配分する電力変換装置であって、
前記発電設備からの直流電力を交流電力に変換して前記交流電路出力するインバータ部と、
前記発電設備からの直流電力前記バッテリを充電するコンバータ部と、
前記インバータ部による前記交流電路への出力電力が、前記インバータ部における所定の上限以上か否かを判定する第1の判定部と、
前記コンバータ部による前記バッテリの充電が所定の充電電力許容値以上か否かを判定する第2の判定部と、
前記第1の判定部及び前記第2の判定部による判定結果に基づいて、前記インバータ部と前記コンバータ部とを制御する制御処理部とを含み、
前記制御処理部は、
前記第1の判定部による判定が否定であることを受けて、前記直流電力を変換して前記交流電路に配分するよう前記インバータ部を制御する第1の制御部と、
前記第1の判定部による判定が肯定であり、かつ前記第2の判定部による判定が否定であることを受けて、前記交流電路への電力の配分が前記所定の上限内に収まるように前記インバータ部を制御しながら、前記バッテリへの電力の配分を行う第2の制御部とを含む、電力変換装置。
【請求項2】
発電設備と、交流電路及びバッテリとの間に設けられ、前記発電設備からの直流電力を、前記交流電路及び前記バッテリに配分する電力変換装置であって、
前記発電設備からの直流電力を交流電力に変換して前記交流電路に出力するインバータ部と、
前記発電設備からの直流電力で前記バッテリを充電するコンバータ部と、
前記コンバータ部による前記バッテリの充電電力が前記バッテリにおける所定の充電電力許容値以上か否かを判定する第1の判定部と、
前記インバータ部による前記交流電路への出力電力が、前記インバータ部における所定の上限以上であるか否かを判定する第2の判定部と、
前記第1の判定部及び前記第2の判定部による判定結果に基づいて、前記インバータ部と前記コンバータ部とを制御する制御処理部とを含み、
前記制御処理部は、
前記第1の判定部による判定が否定であることを受けて、前記直流電力を変換して前記バッテリに配分するよう前記コンバータ部を制御する第1の制御部と、
前記第1の判定部による判定が肯定であり、かつ前記第2の判定部による判定が否定であることを受けて、前記バッテリへの電力の配分が前記所定の充電電力許容値内に収まるように前記コンバータ部を制御しながら、前記交流電路への電力の配分を行う第2の制御部とを含む、電力変換装置。
【請求項3】
発電設備と交流電路及びバッテリとの間に設けられ、前記発電設備からの直流電力を、前記交流電路及び前記バッテリに配分する電力変換装置の制御方法であって、
前記電力変換装置は、
前記発電設備からの直流電力を交流電力に変換して前記交流電路に出力するインバータ部と、
前記発電設備からの直流電力で前記バッテリを充電するコンバータ部とを含み、
前記制御方法は、
前記インバータ部による前記交流電路への出力電力が、前記インバータ部における所定の上限以上か否かを判定する第1の判定ステップと、
前記コンバータ部による前記バッテリの充電が所定の充電電力許容値以上か否かを判定する第2の判定ステップと、
前記第1の判定ステップ及び前記第2の判定ステップにおける判定結果に基づいて、前記インバータ部と前記コンバータ部とを制御する制御処理ステップとを含み、
前記制御処理ステップは、
前記第1の判定ステップによる判定が否定であるときに、前記直流電力を変換して前記交流電路に配分するよう前記インバータ部を制御する第1の制御ステップと、
前記第1の判定ステップによる判定が肯定であり、かつ前記第2の判定ステップによる判定が否定であるときに、前記交流電路への電力の配分が前記所定の上限内に収まるように前記インバータ部を制御しながら、前記バッテリへの電力の配分を行う第2の制御ステップとを含む、電力変換装置の制御方法。
【請求項4】
発電設備と、交流電路及びバッテリとの間に設けられ、前記発電設備からの直流電力を、前記交流電路及び前記バッテリに配分する電力変換装置の制御方法であって、
前記電力変換装置は、
前記発電設備からの直流電力を交流電力に変換して前記交流電路に出力するインバータ部と、
前記発電設備からの直流電力で前記バッテリを充電するコンバータ部とを含み、
前記制御方法は、
前記コンバータ部による前記バッテリの充電電力が前記バッテリにおける所定の充電電力許容値以上か否かを判定する第1の判定ステップと、
前記インバータ部による前記交流電路への出力電力が、前記インバータ部における所定の上限以上であるか否かを判定する第2の判定ステップと、
前記第1の判定ステップ及び前記第2の判定ステップにおける判定結果に基づいて、前記インバータ部と前記コンバータ部とを制御する制御処理ステップとを含み、
前記制御処理ステップは、
前記第1の判定ステップによる判定が否定であるときに、前記直流電力を変換して前記バッテリに配分するよう前記コンバータ部を制御する第1の制御ステップと、
前記第1の判定ステップによる判定が肯定であり、かつ前記第2の判定ステップによる判定が否定であるときに、前記バッテリへの電力の配分が前記所定の充電電力許容値内に収まるように前記コンバータ部を制御しながら、前記交流電路への電力の配分を行う第2の制御ステップとを含む、電力変換装置の制御方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置と、
記電力変換装置に接続されるバッテリと、
前記電力変換装置に前記直流電力を供給するよう前記電力変換装置に接続される発電設備とを含む、電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置及び方法、並びに電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用の太陽光発電設備(Photovoltaic。以下「PV」と呼ぶ。)に他の自家発電設備を併設した電力変換システムがある。この種の電力変換システムでは、晴天の昼間等ではPVで比較的大きな電力が発電され、自家消費電力を上回ることがある。そうした場合には、余剰電力を商用電力系統に逆潮流して電力会社に販売(売電)できる。さらに、上記電力変換システムにさらにバッテリ又は燃料電池等の太陽電池以外の電源が設けられることもある。こうしたPV以外の電源を設けたものは、ダブル発電と呼ばれている。ダブル発電では、夜間等においても自家消費電力の大部分を主として自家発電設備の発電電力でまかなうことができ、商用電源の使用量が削減される。バッテリの場合には、電力料金が割安な夜間で、自家消費電力も少なくなる時間帯に充電が行われる。
【0003】
このように複数種類の電源の間の電力変換を行うものは、パワーコンディショナと呼ばれる。パワーコンディショナでは、電力を扱う関係上、環境により出力上限が規定される。入力上限も出力上限により規定されるので、パワーコンディショナに入力される電力量の合計には限度がある。
【0004】
一方、PVは、その性格上、常に最大効率で電力を発生させることができるわけではない。PVで十分な電力量を得るために、例えばPVを複数個設置することがある。これは、PVのいわば過積載ということができる。そうした場合には、仮に全てのPVが上限に近い電力を発電すると、パワーコンディショナへの入力上限を上回ってしまう可能性がある。そのような事態が発生すると、パワーコンディショナに不都合が生じることがある。
【0005】
こうした問題を解決するための提案が後掲の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6167337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1に開示されたパワーコンディショナは、複数のPVにそれぞれ対応する複数の昇圧回路を持つ。各昇圧回路は、その昇圧回路に設定された電流値、電圧値又は直流電力値により異常を検知してその昇圧回路の出力電力を減少させる第1の保護動作部を持つ。このパワーコンディショナはさらに、動作している全ての昇圧回路の総出力電圧又は総電流の値から何らかの異常を検知して各昇圧回路の出力電力を減少させる第2の保護動作部を持つ。
【0008】
このように二重の保護動作部を持つことにより、昇圧回路のいずれかに異常が生じたときだけではなく、全てのPVに不具合が生じたときでもパワーコンディショナを保護できる。
【0009】
この特許文献1に開示されたパワーコンディショナでは、全体的な異常が検知されたときにもパワーコンディショナを保護できるという効果を持つ。しかし、上記したダブル発電の形式のシステム等において、PVによる発電電力がパワーコンディショナの入力上限を超えてしまうようなときには、パワーコンディショナへの入力を制限せざるを得ないという問題が残る。すなわち、特許文献1に開示の技術では、PVの発電電力を十分に活かすことができないという問題があった。
【0010】
それ故に本発明は、動作環境に制限があるパワーコンディショナなどのような電力変換装置において、PVの発電電力を有効に利用できるようにすること、そのような電力変換装置の動作方法及びそうした電力変換装置を含む電力変換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面に係る電力変換装置は、発電設備と、第1の電力配分先及び第2の電力配分先との間に設けられ、発電設備からの直流電力を、第1の電力配分先及び第2の電力配分先に配分する出力変換装置であって、直流電力を第1の電力配分先に配分する第1の電力変換部と、直流電力を第2の電力配分先に配分する第2の電力変換部と、第1の電力変換部による第1の電力配分先への配分電力が所定の上限を超えているか否かを判定する第1の判定部と、第1の判定部による判定結果に基づいて、第1の電力変換部と第2の電力変換部とを制御する制御処理部とを含み、制御処理部は、第1の判定部による判定が否定であるときに、直流電力を変換して第1の電力配分先に配分するよう第1の電力変換部を制御する第1の制御部と、第1の判定部による判定が肯定であるときに、第1の電力配分先への電力の配分が所定の上限内に収まるように第1の電力変換部を制御しながら、第2の電力配分先への電力の配分を行う第2の制御部と、第2の電力配分先への配分電力が所定の上限以上か否かを判定する第2の判定部と、第1の判定部の判定が肯定であり、かつ第2の判定部による判定が肯定であるときに、発電設備による直流電力の発電を抑制する発電抑制部とを含む。
【0012】
本発明の他の局面に係る電力変換装置の制御方法は、発電設備と、第1の電力配分先及び第2の電力配分先との間に設けられ、発電設備からの直流電力を、第1の電力配分先及び第2の電力配分先に配分する出力変換装置の制御方法である。電力変換装置は、直流電力を第1の電力配分先に配分する第1の電力変換部と、直流電力を第2の電力配分先に配分する第2の電力変換部とを含む。この制御方法は、第1の電力変換部による第1の電力配分先への配分電力が所定の上限を超えているか否かを判定する第1の判定ステップと、第1の判定ステップにおける判定結果に基づいて、第1の電力変換部と第2の電力変換部とを制御する制御処理ステップとを含む。制御処理ステップは、第1の判定ステップにおける判定が否定であるときに、直流電力を変換して第1の電力配分先に配分するよう第1の電力変換部を制御する第1の制御ステップと、第1の判定ステップにおける判定が肯定であるときに、第1の電力配分先への電力の配分が所定の上限内に収まるように第1の電力変換部を制御しながら、第2の電力配分先への電力の配分を行う第2の制御ステップと、第2の電力配分先への配分電力が所定の上限以上か否かを判定する第2の判定ステップと、第1の判定ステップにおける判定が肯定であり、かつ第2の判定ステップにおける判定が肯定であるときに、発電設備による直流電力の発電を抑制するステップとを含む。
【0013】
さらに他の局面に係る電力変換システムは、上記した電力変換装置と、電力変換装置の第1の電力配分先又は第2の電力配分先のいずれかとして電力変換装置に接続されるバッテリと、電力変換装置に直流電力を供給するよう電力変換装置に接続される発電設備とを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、動作環境に制限があるパワーコンディショナなどのような電力変換装置において、PVの発電電力を有効に利用できるようにすること、そのような電力変換装置の動作方法及びそうした電力変換装置を含む電力変換システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る電力変換システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る電力変換システムでの制御部とコンバータ部及びインバータ部の間の関係を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る電力変換装置の1例であるパワーコンディショナを通常モードで制御するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態に係る電力変換装置の1例であるパワーコンディショナを抑制モードで制御するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
図5】第2の実施形態に係るパワーコンディショナを通常モードで制御するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
図6】第2の実施形態に係るパワーコンディショナを抑制モードで制御するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
図7】第3の実施形態に係るパワ-コンディショナにおける制御部、コンバータ部、インバータ部及び制御部の動作を設定する設定値を格納する設定部の関係を示すブロック図である。
図8】第3の実施形態に係るパワーコンディショナを充電優先モードと交流出力優先との間で切替えて動作させるプログラムの一部の制御構造を示すフローチャートである。
図9】第3の実施形態に係る電力変換システムの概略構成を示すブロック図である。
図10】第4の実施形態に係るパワーコンディショナを、売電優先と自家消費優先との間で切替えて動作させるプログラムの一部の制御構造を示すフローチャートである。
図11】第4の実施形態に係るパワーコンディショナを、売電優先と自家消費優先との間で切替えて動作させるプログラムの他の一部の制御構造を示すフローチャートである。
図12】第4の実施形態に係るパワーコンディショナを、売電優先と自家消費優先との間で切替えて動作させるプログラムの一部の制御構造を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本発明の実施形態の説明]
以下の説明及び図面では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0017】
以下に記載する実施形態は、少なくとも以下の構成を含む。
【0018】
(1)本発明の第1の局面に係る電力変換装置は、発電設備と、第1の電力配分先及び第2の電力配分先との間に設けられ、発電設備からの直流電力を、第1の電力配分先及び第2の電力配分先に配分する出力変換装置である。この電力変換装置は、発電設備からの直流電力を第1の電力配分先に配分する第1の電力変換部と、発電設備からの直流電力を第2の電力配分先に配分する第2の電力変換部と、第1の電力変換部による第1の電力配分先への配分電力が所定の上限を超えているか否かを判定する第1の判定部と、第1の判定部による判定結果に基づいて、第1の電力変換部と第2の電力変換部とを制御する制御処理部とを含む。制御処理部は、第1の判定部による判定が否定であるときに、直流電力を変換して第1の電力配分先に配分するよう第1の電力変換部を制御する第1の制御部と、第1の判定部による判定が肯定であるときに、第1の電力配分先への電力の配分が所定の上限内に収まるように第1の電力変換部を制御しながら、第2の電力配分先への電力の配分を行う第2の制御部と、第2の電力配分先への配分電力が所定の上限以上か否かを判定する第2の判定部と、第1の判定部の判定が肯定であり、かつ第2の判定部による判定が肯定であるときに、発電設備による直流電力の発電を抑制する発電抑制部とを含む。
【0019】
この電力変換装置により、発電設備による発電機会を長くし、かつ発電設備の発電電力を有効に利用できる。なぜなら、発電設備の発電電力が第1の電力配分先への上限を超えた時点では発電設備の発電を抑制せずに第2の電力配分先への電力の配分を開始し、第2の電力配分先への電力の配分が上限を超えて初めて抑制するためである。
【0020】
(2)好ましくは、第1の電力配分先は交流電路であり、第2の電力配分先はバッテリである。第1の電力変換部は、発電設備の直流電力を交流電路への重畳に適した交流電力に変換して交流電路に出力するインバータ部を含む。第2の電力変換部は、発電設備からの直流電力でバッテリを充電するコンバータ部を含む。第1の判定部は、第1の電力変換部による出力電力が所定の上限以上か否かを判定する。第2の判定部は、第2の電力変換部によるバッテリの充電が所定の充電電力許容値を超えているか否かを判定する。
【0021】
この電力変換装置により、発電設備による発電機会を長くし、かつ発電設備の発電電力を有効に利用できる。なぜなら、発電設備の発電電力が交流電路への出力上限を超えた時点では発電設備の発電を抑制せずにバッテリへの充電を開始し、バッテリへの充電電力が上限を超えて初めて抑制するためである。
【0022】
(3)より好ましくは、第1の電力配分先は、さらに、交流電路と並列にインバータ部の出力に接続された負荷を含む。第1の判定部は、第1の電力変換部による出力電力が負荷の消費電力以上か否かを判定する。
【0023】
この電力変換装置により、発電設備による発電機会を長くし、かつ発電設備の発電電力を有効に利用できる。なぜなら、発電設備の発電電力が負荷の消費電力以上となった時点では発電設備の発電を抑制せずにバッテリへの充電を開始し、バッテリへの充電電力が上限を超えて初めて抑制するためである。
【0024】
(4)さらに好ましくは、第1の電力配分先はバッテリであり、第2の電力配分先は交流電路である。第1の電力変換部は、発電設備の直流電力でバッテリを充電するコンバータ部を含む。第2の電力変換部は、発電設備の直流電力を交流電路への重畳に適した交流電力に変換して交流電路に出力するインバータ部を含む。第1の判定部は、第1の電力変換部によるバッテリへの充電が所定の充電電力許容値を超えているか否か判定し、第2の判定部は、第2の電力変換部による交流電路への出力電力が上限以上であるか否かを判定する。
【0025】
この電力変換装置により、発電設備による発電機会を長くし、かつ発電設備の発電電力を有効に利用できる。なぜなら、発電設備の発電電力がバッテリへの充電電力の上限を超えた時点では発電設備の発電を抑制せずに交流電路への出力を開始し、交流電路への出力電力が上限を超えて初めて抑制するためである。
【0026】
(5)さらに好ましくは、電力変換装置は、設定値にしたがって第1の動作モード及び第2の動作モードのいずれでも動作可能である。第1の動作モードでは、第1の電力配分先は交流電路、第2の電力配分先はバッテリであり、第2の動作モードでは、第1の電力配分先はバッテリ、第2の電力配分先は交流電路である。
【0027】
この電力変換装置により、発電設備による発電機会を長くし、かつ発電設備の発電電力を有効に利用できる。なぜなら、設定に応じ、発電設備の発電電力が交流電路への出力上限を超えた時点では発電設備の発電を抑制せずにバッテリへの充電を開始し、バッテリへの充電電力が上限を超えて初めて抑制するようにする動作と、発電設備の発電電力がバッテリへの充電電力の上限を超えた時点では発電設備の発電を抑制せずに交流電路への出力を開始し、交流電路への出力電力が上限を超えて初めて抑制するという動作を切替えることができるためである。
【0028】
(6)さらに好ましくは、電力変換装置は、発電設備からの直流電力を第1の電力配分先及び第2の電力配分先に配分するために、発電設備からの直流電力に対する昇圧を行う昇圧回路をさらに含む。制御処理部は、発電設備の発電抑制時には昇圧回路による昇圧動作を停止させ、第1の電力変換部及び第2の電力変換部の入力に発電設備の出力電力を直結する。
【0029】
この電力変換装置により、発電設備による発電機会を長くし、かつ発電設備の発電電力を有効に利用できる。なぜなら、発電設備からの直流電力のうち、昇圧回路における昇圧動作に消費される部分をなくすことができるためである。
【0030】
(7)本発明の第2の局面に係る電力変換装置の制御方法は、発電設備と、第1の電力配分先及び第2の電力配分先との間に設けられ、発電設備からの直流電力を、第1の電力配分先及び第2の電力配分先に配分する出力変換装置の制御方法である。電力変換装置は、直流電力を第1の電力配分先に配分する第1の電力変換部と、直流電力を第2の電力配分先に配分する第2の電力変換部とを含む。この制御方法は、第1の電力変換部による第1の電力配分先への配分電力が所定の上限を超えているか否かを判定する第1の判定ステップと、第1の判定ステップにおける判定結果に基づいて、第1の電力変換部と第2の電力変換部とを制御する制御処理ステップとを含む。制御処理ステップは、第1の判定ステップにおける判定が否定であるときに、直流電力を変換して第1の電力配分先に配分するよう第1の電力変換部を制御する第1の制御ステップと、第1の判定ステップにおける判定が肯定であるときに、第1の電力配分先への電力の配分が所定の上限内に収まるように第1の電力変換部を制御しながら、第2の電力配分先への電力の配分を行う第2の制御ステップと、第2の電力配分先への配分電力が所定の上限以上か否かを判定する第2の判定ステップと、第1の判定ステップにおける判定が肯定であり、かつ第2の判定ステップにおける判定が肯定であるときに、発電設備による直流電力の発電を抑制するステップとを含む。
【0031】
この電力変換方法により、発電設備による発電機会を長くし、かつ発電設備の発電電力を有効に利用できる。なぜなら、発電設備の発電電力が第1の電力配分先への上限を超えた時点では発電設備の発電を抑制せずに第2の電力配分先への電力の配分を開始し、第2の電力配分先への電力の配分が上限を超えて初めて抑制するためである。
【0032】
(8)本発明の第3の局面に係る電力変換システムは、上記した電力変換装置と、電力変換装置の第1の電力配分先又は第2の電力配分先のいずれかとして電力変換装置に接続されるバッテリと、電力変換装置に直流電力を供給するよう電力変換装置に接続される発電設備とを含む。
【0033】
この電力変換システムにより、発電設備による発電機会を長くし、かつ発電設備の発電電力を有効に利用できる。なぜなら、発電設備の発電電力が第1の電力配分先への上限を超えた時点では発電設備の発電を抑制せずに第2の電力配分先への電力の配分を開始し、第2の電力配分先への電力の配分が上限を超えて初めて抑制するためである。
【0034】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る電力変換装置及び方法並びに電力変換システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0035】
<第1の実施形態>
〈構成〉
図1を参照して、第1の実施形態に係る電力変換システム50は、バッテリ52及びPV54と、商用電力系統58に接続された電力変換装置の1例であるパワーコンディショナ56とを含む。
【0036】
パワーコンディショナ56は、バッテリ52に接続された昇圧回路である第1のコンバータ部70、PV54からの直流電力を昇圧する昇圧回路である第2のコンバータ部72、第1のコンバータ部70と第2のコンバータ部72との出力側に共通に接続され、第1のコンバータ部70及び第2のコンバータ部72の出力する直流電力を交流電力に変換し商用電力系統58に逆潮流する機能と逆に商用電力系統58からの電力を第1のコンバータ部70及び第2のコンバータ部72に供給するインバータ部74と、第1のコンバータ部70、第2のコンバータ部72及びインバータ部74を制御する制御部82とを含む。第1のコンバータ部70とバッテリ52との間には、相互の間の電流値及び電圧値を測定しその情報を制御部82に与える電流・電圧センサ76が設けられる。同様に第2のコンバータ部72とPV54との間にも電流・電圧センサ78が設けられ、第1のコンバータ部70とインバータ部74との間には電流・電圧センサ80が設けられる。
【0037】
図2を参照して、制御部82は、これらからの情報に基づいて第1のコンバータ部70、第2のコンバータ部72、インバータ部74を制御する。インバータ部74は、PV54からの直流電力を最大限利用するために、以下に説明するようなプログラムによる制御を行う。
【0038】
図3を参照して、このプログラムは、一定時間間隔で繰返し実行される。なお、このプログラムと図4に示すプログラムとを切替えて実行するために、動作モードを記憶しておく必要がある。制御部82にはそのための記憶領域が準備されているものとする。このプログラムは、PV54の発電電力がインバータ部74の交流出力許容値以上か否かを判定するステップ100と、ステップ100の判定が否定のときには現状にしたがって運転を継続して処理を終了するステップ114とを含む。
【0039】
このプログラムはさらに、ステップ100の判定が肯定のときに、バッテリ52への充電電力を所定量だけ増やすステップ102と、バッテリ52への充電電力が、予め決まっているバッテリ52の充電電力の許容値以上か否かを判定するステップ104とを含む。ステップ104の判定が否定のときには制御はステップ102に戻り、バッテリ52への充電電力が再び所定量増加される。ステップ112の判定が肯定のときには、ステップ114の処理が実行されプログラムの実行を終える。すなわち、ステップ102、104及び112の処理が行われることにより、PV54の発電電力からバッテリ52への充電電力をさし引いた値が交流出力許容値以内に収まるまで、充電電力が増加され、その条件が充足された時点でこのプログラムの処理が終わる。
【0040】
一方ステップ104の判定が肯定のときには、ステップ106で動作モードが通常モードから抑制モードに変更される。これは、バッテリ52の充電電力が許容値以上となりこれ以上PV54の発電電力をバッテリ52の充電に利用できないため、PV54の発電能力を抑制する必要が生じたためである。そのため、続くステップ108でPV54の発電電力を一定量抑制する処理が実行される。その後、ステップ110でPV54の発電電力が充電電力許容値と交流出力許容値との和より小さくなったか否かが判定される。依然として判定が否定であれば制御はステップ108に戻り、再度PV54の発電電力が抑制される。このステップ108及びステップ110を実行することにより、PV54の発電電力がバッテリ52の充電電力許容値と交流出力許容値との和の範囲に収まるまでPV54の発電電力が抑制される。ステップ110の判定が肯定になった時点でステップ114において新たな設定により運転を継続することが選択され、このプログラムの実行を終了する。
【0041】
図3のプログラムによってPV54の発電電力が抑制された後、環境の変化によりPV54の発電電力を抑制する必要がなくなることがある。したがって、そうした環境の変化に応答してPV54の状態を戻す処理が必要である。図4は、そうした処理を実行するためのプログラムの制御構造を示す。
【0042】
図4を参照して、このプログラムは、動作モードが抑制モードのときに繰返し実行される。このプログラムは、PV54の発電電力が充電電力許容値と交流出力許容値より和より小さいか否かを判定するステップ130と、ステップ130の判定が否定のときに、すなわち依然としてPV54の発電電力が充電電力許容値と交流出力許容値より和より大きいときには何も処理を行わずこのプログラムの実行を終了する。
【0043】
このプログラムはさらに、ステップ130の判定が肯定のときに、動作モードを抑制モードから通常モードに変更するステップ132と、ステップ132の後、PV54の抑制運転を解除し、バッテリ52への充電出力を減らす制御を行うステップ134と、ステップ134の後、PV54の発電電力とバッテリ52の充電電力との差が交流出力許容値より小さいか否かを判定するステップ136とを含む。ステップ136の判定が肯定のときには、PV54の発電電力を全て交流側に出力しても問題ないということである。したがってステップ138でそのようにパワーコンディショナ56の各部を制御してこのプログラムの実行を終了する。ステップ136の判定が否定なら、PV54の発電電力の一部はバッテリ52に回さなければならないので、何もせずこのプログラムの実行を終了する。
【0044】
〈動作〉
電力変換システム50は通常は通常モードで動作する。図1に示すPV54で直流電力が発電され、第2のコンバータ部72により昇圧される。電流・電圧センサ76、78及び80等はいずれも各位置における電流値及び電圧値を測定しその値を示す信号を制御部82に与える。
【0045】
PV54の発電電力が低いときには、図3のプログラムではステップ100での判定がNOとなり、何も変化しない。
【0046】
PV54の発電電力が増加し、インバータ部74の交流出力許容値になると、図3のステップ100→102→104という経路で処理が進む。バッテリの充電電力が許容値未満なら、ステップ112でPV54の発電電力と充電電力の差が交流出力許容値か否かが判定され、判定が否定なら制御はステップ102に戻る。ステップ102→104→112の処理が繰返され、ステップ112の判定が肯定になったらそのときの設定でパワーコンディショナ56の動作が継続される(ステップ114)。
【0047】
一方、上記繰返しの間にステップ104の判定でバッテリ52の充電電力が許容値以上となった場合には、ステップ106で動作モードが抑制モードに設定され、それを示す値が制御部82の記憶領域内に保存される。さらに、PV54の発電電力がバッテリ52の充電電力許容値と交流出力許容値との和の範囲に収まるまで、ステップ108及び110が繰返される。ステップ110の判定が肯定になった時点で、この新たな設定でパワーコンディショナ56の制御が継続される(ステップ114)。
【0048】
パワーコンディショナ56の動作モードが一旦抑制モードになった後は、抑制モードを解除すべき条件が生じたら抑制モードを解除し、通常モードに戻す必要がある。図4はそのため、抑制モードとなったときに所定時間間隔で繰返し起動される。
【0049】
図4のステップ130で、PV54の発電電力がバッテリ52の充電電力許容値とインバータ部74の交流出力許容値の和より小さいか否かが判定される。この条件が成立しない限りパワーコンディショナ56を通常動作モードにすることはできない。したがって、この条件が充足していないときには何もせず処理を終わる。
【0050】
ステップ130の判定が肯定になると、ステップ132で動作モードを抑制モードから通常モードに戻す。これを示す変数の値は制御部82の記憶領域に格納される。ステップ132で抑制運転を解除し、バッテリ52への充電電力を減らす制御が行われる。PV54の発電電力は抑制がされない状態に回復する。
【0051】
続くステップ136でPV54の発電電力からバッテリ52の充電電力を差し引いた値が交流出力許容値より小さいか否かが判定される。この判定が否定であれば、PV54の発電電力をバッテリ52への充電に使用することは不要になり、全て交流側に出力することができる。したがってこの状態では、PV54の出力を効率よく商用電路に売電できることになる。
【0052】
以上のように、この第1の実施形態によれば、通常は交流側にPV54の発電電力を配分する。PV54の発電電力が交流出力許容値より大きくなっても、直ちにPV54の発電を抑制するのではなく、交流側に配分した後の余剰電力をバッテリ52の充電に用いる。バッテリ52への充電電力が許容値に達して初めてPV54の発電の抑制が行われる。その結果、PV54による発電機会をできるだけ長くすることができる。
【0053】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、通常はPV54の発電電力をインバータ部74の交流出力側に配分し、PV54の発電電力が過大になったときには電力をバッテリ52の充電に用いる。いわば交流優先の制御方法である。しかしそうした方法だけが可能なわけではない。第1の実施形態において、通常はPV54の発電電力をバッテリ52の充電に用い、PV54の発電電力が過大になったときにインバータ部74の交流出力側にその電力を配分するようにもできる。したがってこの方式はいわば「充電優先」と呼ぶことができる。図5及び図6はそうした処理を実現するためのものである。図5図3に、図6図4に、それぞれ対応する。ハードウェアは図1に示したものをそのまま用いることができる。この実施形態でも、動作は通常モードで始まる。
【0054】
図5を参照して、ステップ160で、PV54の発電電力がバッテリ52の充電電力許容値未満であれば何も設定を変えず運転を継続する(ステップ174)。
【0055】
ステップ160で、PV54の発電電力がバッテリ52の充電電力許容値以上となったときには、PV54の発電電力のうち、インバータ部74の交流側に配分する出力電力を一定量増やす。続くステップ164で交流側の出力電力が許容値未満であれば、ステップ172でPV54の発電電力からバッテリ52の充電電力を差し引いた値が交流出力許容値より小さいか否か判定し、判定が否定なら再度ステップ162に戻る。
【0056】
ステップ162,164及び172の繰返しの中で、ステップ172でPV54の発電電力とバッテリ52の充電電力との差が交流出力許容値より小さくなればそのときの設定でパワーコンディショナ56を運転しても問題はない。したがってその設定で運転を継続する(ステップ174)。一方ステップ164の判定が肯定になったときにはこれ以上充電も交流への出力もできないため、動作モードは抑制モードに入る(ステップ166)。この抑制モードを示す変数の値は制御部82の記憶領域に記憶される。
【0057】
続くステップ168及び170によって、PV54の発電電力が交流出力許容値と充電電力許容値の和より小さくなるまでPV54の発電電力が抑制される。ステップ170の判定が肯定になったときにこのループが終わり、そのときの設定でパワーコンディショナ56の運転が継続される(ステップ174)。
【0058】
この実施形態でも、第1の実施形態と同様、条件の変更に応答して抑制モードから通常モードにパワーコンディショナ56の動作モードを復帰させる必要がある。そのため、動作モードが抑制モードのときには、図6に示すプログラムが定期的に実行される。
【0059】
図6を参照して、このプログラムでは、ステップ200でPV54の発電電力が交流出力許容値と充電電力許容値の和より小さくなっているか否かが判定される。この判定が否定なら抑制モードが維持される。ステップ200の判定が肯定なら動作モードを通常モードにする(ステップ202)。続くステップ204で抑制運転を解除し、交流側への出力電力を増加させる。さらにステップ206で発電電力から交流出力電力を差し引いた値が充電電力許容値より小さいか否か判定する。この判定が肯定なら発電電力を全てバッテリ側に回すように設定を変更する(ステップ208)。この判定が否定なら充電電力許容値より大きな電力でバッテリ52を充電してしまうことを避けるため設定をステップ204の状態にして運転を継続する。
【0060】
以上のように、この第2の実施形態によれば、通常はバッテリ52の充電にPV54の発電電力を配分する。PV54の発電電力がバッテリ52の充電電力許容値より大きくなっても、直ちにPV54の発電を抑制するのではなく、バッテリ52に配分した後の余剰電力を交流出力に配分する。交流出力電力が許容値上限に達して初めてPV54の発電の抑制が行われる。その結果、PV54による発電機会をできるだけ長くすることができる。
【0061】
<第3の実施形態>
第1の実施形態及び第2の実施形態は、それぞれ交流優先及び充電優先と呼ぶことができる制御方式である。しかし、両者を組み合わせることもできる。設備の管理者が何らかの事情でいずれかの方式を変更する可能性があるときには、この方式が有効である。
【0062】
図7を参照して、この方式では、いずれの方式を選択しているのかを設定情報として保存しておく必要がある。そのために、この第3の実施形態に係る電力変換装置は、設定情報を記憶する設定部232が設けられ、この設定部232の設定値にしたがって第1のコンバータ部70、第2のコンバータ部72、及びインバータ部74を交流優先方式又は充電優先方式で切替えて制御できる制御部230を含む。
【0063】
本実施形態では、交流優先方式では図3及び図4に示すプログラムを用い、充電優先方式では図5及び図6に示すプログラムを用いる。問題となるのは両者をどのようにして切替えるか、である。
【0064】
既に述べたように、図3又は図5に示したプログラムは通常モードのときに一定時間おきに起動され、図4又は図6に示したプログラムは、抑制モードのときに、一定時間おきに起動される。そこで、制御方式に必要な情報は、交流優先か否かと、通常モードが抑制モードか、という2つの情報である。この2つの情報を用い、一定時間おきに起動するプログラムを選択すればよい。図8にそうしたプログラムの起動を行うためのプログラムの制御構造を示す。
【0065】
図8を参照して、このプログラムは、一定時間おきに起動される。このプログラムは、起動直後に、設定部232を参照して、現在設定されているのが交流優先か否かを決定するステップ250と、ステップ250で交流優先が設定されていると判定されたときに、動作モードが通常モードか否かを判定するステップ258とを含む。ステップ258で通常モードと判定されたときには、ステップ260で通常モードで交流出力優先のプログラム(図3)を実行して処理を終了する。通常モードではないと判定されたときには、ステップ262において抑制モードで交流出力優先のプログラム(図4)を実行して処理を終了する。
【0066】
ステップ250で交流優先ではないと判定されたときには、ステップ252で動作モードが通常モードか否かが判定される。通常モードと判定されたときには、ステップ254で通常モードで充電優先のプログラム(図5)が実行される。ステップ252で通常モードでないと判定されたときには、ステップ256で、抑制モードで充電優先のプログラム(図6)が実行される。
【0067】
以上のように、この実施形態によれば、交流出力優先と充電優先とを選択してパワーコンディショナを動作させることができる。装置の設置環境及び運用方針に応じて適切な動作をさせ、PV54による発電機会を長くすることができる。
【0068】
<第4の実施形態>
第1~第3の実施形態では、基本的にはPV54の発電電力をできるだけ売電することを目標としている。それは、現状では太陽光発電のみ売電が認められていること、売電単価が有利であり、太陽光発電の電力を自家消費に回さず、自家消費分の電力を外部の商用電力から購入した方が経済上の効率が良いためである。
【0069】
しかし、売電単価が常にそのような良い条件であるとは限らない。政策的に、電力変換システムの導入後所定年の間は有利な条件で売電ができるが、ある年限を過ぎると売電するより自家消費したほうがよいという状態になることが当然に起こり得る。そうしたときに、当初のスキームにしたがって太陽光発電パネルの発電電力をできるだけ売電に振り向けるように電力変換システムを運用したとすれば、大きな損失を招く。そこでこの第4の実施形態では、導入後の初期には太陽光発電の発電電力を売電することを前提として動作するが、ある条件が充足したら売電ではなく自家消費に回すように電力変換装置を制御する。
【0070】
図9を参照して、この第4の実施形態に係る電力変換システム280は、PV54及びバッテリ52と、商用電力系統58との間に設けられたパワーコンディショナ282を含む。パワーコンディショナ282が図1に示すパワーコンディショナ56と異なるのは、上記した条件に関する設定を記憶する設定部292と、この設定部292に記憶された設定にしたがって、導入初期にはPV54の発電電力を売電優先で処理し、所定の条件が充足されたら自家消費に回すようパワーコンディショナ282の各部を制御する制御部290を含む点である。
【0071】
なお、インバータ部74と商用電力系統58との間には自家消費の負荷286が接続されており、商用電力系統58からの電力を検知するための、カレントトランスからなる電力センサ284が設けられている。電力センサ284の出力は制御部290に与えられる。制御部290は、この値とパワーコンディショナ282内部の電流・電圧センサ76、78、80等の出力とから負荷286の消費電力を計算できる。また、以下の説明では売電優先の際のパワーコンディショナ282の動作は、第3の実施形態でいう交流出力優先に相当するものである。この第4の実施形態は、ちょうど第3の実施形態の充電優先の代わりに自家消費優先というべきモードを採用した点、売電優先と自家消費優先とを、設定部292に記憶された情報により判定すること、という点で異なっているが、それ以外の部分では第3の実施形態とよく似ている。
【0072】
売電優先のときの通常モード及び抑制モードには、図3及び図4に示すプログラムを用いる。自家消費優先のときの通常モード及び抑制モードで使用されるプログラムを図10及び図11に示す。
【0073】
図10を参照して、この自家消費優先でかつ通常モードでのプログラムは、PV54の発電電量が自家消費電力以上か否かを判定するステップ300を含む。ステップ300の判定が否定なら発電電力を全て自家消費電力として消費できるので、設定を何も替えずにパワーコンディショナ282の運転を継続する。
【0074】
このプログラムはさらに、ステップ300の判定が定のときに、PV54の発電電力の一部が余剰電力となるので、バッテリ52への充電電力を所定量だけ増加させるステップ102と、ステップ102の後に、バッテリ52の充電電力が許容値以上になっているか否かを判定するステップ104とを含む。ステップ104の判定が否定であれば、制御はステップ304に進む。
【0075】
ステップ304では、PV54の発電電力からバッテリ52への充電電力を差し引いた値が自家消費電力より小さいか否かについて判定が行われる。判定が否定ならまだPV54の発電電力をさらにバッテリ52の充電電力に配分することが可能なので、制御はステップ102に戻り、さらに充電電力を増加させる。一方、ステップ304の判定が肯定なら、自家消費電力をPV54の発電電力でほぼまかない、同時に余剰の電力でバッテリ52の充電が可能な状態である。したがってステップ304の判定がされたときの設定でパワーコンディショナ282の運転を継続する。
【0076】
すなわち、ステップ102,104及び304の繰返しを実行することで、自家消費電力をPV54の発電電力でほぼまかない、かつバッテリ52の充電を可能な限り最大の電力で行うよう、PV54の発電電力を配分できる。
【0077】
一方、ステップ104の判定が肯定となったときには、バッテリ52への充電電力がそのときの設定値以上にはできないということである。したがって、PV54の発電を抑制する必要が生じる。そのため、ステップ106で動作モードを抑制モードに変更する。この抑制モードを表す変数の値は、パワーコンディショナ282内の所定の記憶箇所に保存される。
【0078】
続いて、ステップ108でPV54の発電電力を実際に所定量だけ抑制する処理を行う。さらにステップ302で、PV54の発電電力が、バッテリ52の充電電力の許容値と自家消費電力とを合計したものより小さいか否かを判定する。この判定が否定であれば、まだPV54の発電電力が大きすぎるので、制御をステップ108に戻し、さらに発電電力を抑制する。こうして、ステップ302の判定が肯定となったときには、自家消費電力を全てまかないながら、余剰電力でバッテリ52の充電を行うことができるように、PV54の発電電力等が設定された状態となる。したがってこのときの設定を用いてパワーコンディショナ282の運転を継続する(ステップ114)。
【0079】
この抑制運転は、ある条件が充足されたときには解除する必要がある。そのためのプログラムの制御構造を図11に示す。図11を参照して、このプログラムは、パワーコンディショナ282の抑制状態にあるときに実行されるプログラムである。このプログラムは、PV54の発電電力が、バッテリ52の充電電力許容値と自家発電消費電力の合計より小さいか否かを判定するステップ310を含む。ステップ310の判定が否定ならまだ抑制状態を継続する必要があるため、何もせずこのプログラムの実行を終了する。
【0080】
このプログラムはさらに、ステップ310の判定が肯定の時に実行され、動作モードを通常モードに変更するステップ132を含む。この動作モードを表す変数の値はパワーコンディショナ282の所定の記憶領域に記憶される。このプログラムはこれに加えて、ステップ132の後に、実際にPV54の抑制運転を解除し、バッテリ52への充電電力を減らす制御を行うステップ134とを含む。
【0081】
このプログラムはさらに、ステップ134の後、PV54の発電電力からバッテリ52の充電電力を差し引いた値が自家消費電力より小さいか否かを判定するステップ312と、ステップ312の判定が肯定のときに、発電電力を全て交流側に配分するようパワーコンディショナ282の設定を変更して処理を終了するステップ138とを含む。ステップ312の判定が否定のときには、PV54の発電電力を全て交流側に配分し自家消費電力に充当する設定としてこのプログラムの実行を終了する。
【0082】
上記した売電優先と自家消費優先との切替えは、上記した4つのプログラムを、売電優先か否かという条件と、抑制モードか否かという2つの条件に応じて切替えて実行することで実現できる。図12にそうしたプログラムの一例を示す。このプログラムは図8に死示したものと同様の構成を持つ。
【0083】
図12を参照して、このプログラムは、一定時間おきに起動される。このプログラムは、起動直後に、設定部292を参照して、現在設定されているのが売電優先か否かを判定するステップ330と、ステップ330で売電優先が設定されていると判定されたときに、動作モードが通常モードか否かを判定するステップ332とを含む。ステップ332で通常モードと判定されたときには、ステップ334で通常モードで交流出力優先のプログラム(図3)を実行して処理を終了する。通常モードではないと判定されたときには、ステップ336において抑制モードで交流出力優先のプログラム(図4)を実行して処理を終了する。
【0084】
ステップ330で売電優先ではないと判定されたときには、ステップ338で動作モードが通常モードか否かが判定される。通常モードと判定されたときには、ステップ340で通常モードで自家消費優先のプログラム(図10)が実行される。ステップ338で通常モードでないと判定されたときには、ステップ342で、抑制モードで自家消費優先のプログラム(図11)が実行される。
【0085】
以上のように、この実施形態によれば、売電優先と、自家消費優先とを選択してパワーコンディショナを動作させることができる。装置の設置環境、太陽光発電設備による発電電力に関する政策の動向、及びユーザの運用方針に応じて適切な動作をさせることができる。
【0086】
なお、第4の実施形態では設定部292に売電優先か自家消費優先かを示す値を格納する。この値は、例えばディップスイッチ等により手動で設定することもできるし、外部から通信により設定することもできる。売電優先から自家消費優先に変更すべき日付が設備の設置時点で判明しているなら、売電優先か自家消費優先かを実際の稼働日と特定の日付との比較に基づいて判定してもよい。この場合、比較対象となる特定の日付を設定部292に保存することになる。
【0087】
以上のように、この第4の実施形態では、PV54の発電電力を売電に配分すべきか、自家消費電力に配分すべきかに関する事情が変わったときに、どちらか最適な動作態様を選択できる。したがって、単にPV54による発電機会を長くするだけではなく、経済的にも適切な動作態様となるようパワーコンディショナ282を制御できる。
【0088】
この第4の実施形態では、売電優先のためのプログラムとして図3及び図4に示す交流出力優先のプログラムを使用している。しかし以上の説明から明らかなように、売電優先のためのプログラムとして、図5及び図6に示す充電優先のプログラムを用いることもできる。また、図9に示す電力センサ284については、図4に示すように商用電力系統58に近い位置ではなく、負荷286に近い位置に設けても良い。
【0089】
なお、以上の全ての実施形態において、抑制モードのときには、PV54からの電圧が高くなる。したがってその場合には、第2のコンバータ部72内のスイッチングによる昇圧動作を停止することもできる。PV54からの出力を第1のコンバータ部70及びインバータ部74に第2のコンバータ部72によるスイッチング動作なしで接続することになり効率的である。
【0090】
上記実施形態では、プログラム及び図示しないプロセッサによって電力変換装置の制御部を実現しているが、専用のハードウェアを用いて制御部を実現することもできる。
【0091】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載により示されるわけではなく、特許請求の範囲の各請求項によって示され、特許請求の範囲の文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
50、280 電力変換システム
52 バッテリ
54 PV
56、282 パワーコンディショナ
58 商用電力系統
70 第1のコンバータ部
72 第2のコンバータ部
74 インバータ部
76、78、80 電流・電圧センサ
82、230、290 制御部
102、104、106、108、110、112、114、130、132、134、136、138、160、162、164、166、168、170、172、174、200、202、204、206、250、252、254、256、258、260、262 ステップ
232、292 設定部
284 電力センサ
286 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12