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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】包装材、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20230523BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20230523BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20230523BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230523BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230523BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B65D65/40 D
C09D11/102
C09J175/06
B32B27/00 H
B32B27/36
B32B27/40
B32B27/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022157613
(22)【出願日】2022-09-30
(65)【公開番号】P2023071162
(43)【公開日】2023-05-22
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2021182915
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 進
(72)【発明者】
【氏名】武本 昇
(72)【発明者】
【氏名】土屋 翔吾
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特許第6915739(JP,B1)
【文献】特開2021-109706(JP,A)
【文献】特開2006-150617(JP,A)
【文献】特開2019-112567(JP,A)
【文献】国際公開第2021/039103(WO,A1)
【文献】特開2018-100108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
C09D 11/102
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/00
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、印刷層、接着剤層、及びシーラントを順次有する包装材であって、
前記印刷層が、ポリエステル系ウレタン樹脂を含むグラビアインキを印刷してなり、
前記ポリエステル系ウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が、2~10であり、
前記接着剤層が、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物とを含む接着剤を塗布してなり、
前記ポリエステル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が1.5~5.0であり、
前記イソシアネート化合物が、2官能以上の脂肪族イソシアネート類及び/又は2官能以上の脂環族イソシアネート類を含み、
前記イソシアネート化合物のイソシアネート基と前記ポリエステル樹脂の水酸基との比率NCO/OHが、1.0~8.0である、包装材。
【請求項2】
ポリエステル系ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステル由来の構成単位を含有し、前記二塩基酸は、セバシン酸及び/又はコハク酸を含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
ポリエステル系ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステル由来の構成単位を含有し、前記ジオールは、分岐状ジオール及び直鎖状ジオールを含む請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項4】
グラビアインキが、更に、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ロジン系樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有する、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項5】
接着剤層に含まれるポリエステル樹脂が、二塩基酸由来の構成単位を有しており、前記二塩基酸が、セバシン酸及び/又はコハク酸由来の構成単位を含有する、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項6】
グラビアインキが、更に、重量平均分子量800~8000のイソシアネート系硬化剤を含有する請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項7】
グラビアインキが、更に、シランカップリング剤を含有する、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項8】
基材、印刷層、接着剤層、及びシーラントを順次有する包装材の製造方法であって、ポリエステル系ウレタン樹脂を含むグラビアインキを印刷して印刷層を形成する工程、及び、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物とからなる接着剤を塗布して、接着剤層を形成する工程を含んでなり、前記ポリエステル系ウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が、2~10であり、かつ、前記ポリエステル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が、1.5~5.0であり、前記イソシアネート化合物が、2官能以上の脂肪族イソシアネート類及び/又は2官能以上の脂環族イソシアネート類を含み、
前記イソシアネート化合物のイソシアネート基と前記ポリエステル樹脂の水酸基との比率NCO/OHが、1.0~8.0である、包装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材に関する。特に包装袋にした際の内容物への溶出の影響が少なくラミネート強度に優れ、内容物充填後から時間が経過しても良好な引き裂き性を有する包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、包装袋は絵柄等の模様を付すことがあり、また内容物を不可視化するためにインキからなる印刷層が設けられている。それらインキは、オフセットインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ及びグラビアインキその他の印刷インキが挙げられる。中でもグラビアインキはその印刷速度や高精細な絵柄を作成可能ということから生産性が良く、グラビア印刷で使用される場合が多い。
【0003】
グラビアインキからなる印刷層は、当該印刷層上に更に接着剤層及び熱可塑性の基材等が順に貼り合され(ラミネート)積層体となる。当該積層体は最外層の熱可塑性基材どうしを熱融着(ヒートシール)されて包装袋となる。このような包装袋は食品包装分野に多く用いられる。このような包装袋は、各層同士の密着力が低いと内容物の充填や輸送時に層間での剥離を生じ、意匠性の低下や内容物の漏洩といった問題が生じるため、食品包装分野のラミネート積層体では良好な密着強度が求められる。
【0004】
また、食品包装の包装袋の場合、例えば液体子袋などでは内容物を取り出すために包装袋を直接手で引き裂いて開封する場合が多い。その際に鋏などの器具を用いずに包装袋を引裂いて開封できることは利便性の面で大きなメリットとなるため、より市場価値を与える。しかしながら、包装袋の引裂き性が悪い場合、特に包装袋の中身が液体であると、開封時に過剰な力が必要となる、あるいは思わぬ方向に引裂かれてしまい内容物がこぼれてしまうといった問題が生じるため、食品包装分野のラミネート積層体では良好な引裂き性が求められる(特許文献1)。なお、このような易引裂き性は包装袋の製造後、徐々に劣化してしまうことが多く、より改善されたものが求められていた。
【0005】
従来技術として、例えば特許文献1には、ポリウレタン樹脂を含むインキに硬化剤を用いて、ラミネート強度を上げることで易引裂き性を発現する技術が記載されている。しかしながら、それでも単に硬化剤のみではラミネート強度を上げるには困難である場合がある。一方、特許文献2では、硬化剤に加えて、更にシランカップリング剤を併用する技術が記載されている。しかしながらシランカップリング剤を併用するとインキの経時安定性が劣化してラミネート強度が変化するなどの懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-031298号公報
【文献】特開2019-199509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は包装袋にした際の内容物への溶出の影響が少なく、ラミネート強度に優れ、内容物充填後から時間が経過しても良好な引き裂き性を有する包装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明の包装材を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、基材、印刷層、接着剤層、及びシーラントを順次有する包装材であって、
前記印刷層が、ポリエステル系ウレタン樹脂を含むグラビアインキを印刷してなり、前記ポリエステル系ウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が、2~10であり、前記接着剤層が、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物とを含む接着剤を塗布してなり、前記ポリエステル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が1.5~5.0である、包装材に関する。
【0010】
また、本発明は、ポリエステル系ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステル由来の構成単位を含有し、前記二塩基酸は、セバシン酸及び/又はコハク酸を含む、上記包装材に関する。
【0011】
また、本発明は、ポリエステル系ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステル由来の構成単位を含有し、前記ジオールは、分岐状ジオール及び直鎖状ジオールを含む上記包装材に関する。
【0012】
また、本発明は、グラビアインキが、更に、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ロジン系樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有する、上記包装材に関する。
【0013】
また、本発明は、接着剤層に含まれるポリエステル樹脂が、二塩基酸由来の構成単位を有しており、前記二塩基酸が、セバシン酸及び/又はコハク酸由来の構成単位を含有する、上記包装材に関する。
【0014】
また、本発明は、グラビアインキが、更に、重量平均分子量800~8000のイソシアネート系硬化剤を含有する、上記包装材に関する。
【0015】
また、本発明は、グラビアインキが、更に、シランカップリング剤を含有する、上記包装材に関する。
【0016】
また、本発明は、基材、印刷層、接着剤層、及びシーラントを順次有する包装材の製造方法であって、ポリエステル系ウレタン樹脂を含むグラビアインキを印刷して印刷層を形成する工程、及び、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物とからなる接着剤を塗布して、接着剤層を形成する工程を含んでなり、
前記ポリエステル系ウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が、2~10であり、かつ、前記ポリエステル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が、1.5~5.0である、包装材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により包装袋にした際の内容物への溶出の影響が少なく、ラミネート強度に優れ、内容物充填後から時間が経過しても良好な引き裂き性を有する包装材を提供することを可能とした。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0019】
本発明において、「グラビアインキ」は「インキ」と略記する場合がある。また、「グラビアインキ」と「硬化剤」の混合物からなるインキも「グラビアインキ」であるが、以下において「硬化性グラビアインキ」「硬化性インキ」と略記する場合がある。「グラビアインキ」「硬化性グラビアインキ」を印刷することで形成された印刷層は、単に「印刷層」ないし「インキ層」と表記する場合があるが同義である。
【0020】
以下の説明においてグラビアインキに用いられるポリエステル系ウレタン樹脂とは、ポリエステル由来の構成単位を含み、好ましくは更にウレア結合を有する樹脂をいう。一方、接着剤に用いられるポリエステル樹脂とは末端ポリオールの形態あるいはウレタン変性された形態であってよく、好ましくはウレア結合を有しない樹脂をいう。なお、当該ポリエステル樹脂の製造時において水分などで意図的でなく形成されたごく微量のウレア結合までも除くものではない。
【0021】
以下、本発明の包装材について詳細に説明する。
本発明は、基材、印刷層、接着剤層、及びシーラントを順次有する包装材であって、前記印刷層が、ポリエステル系ウレタン樹脂を含むグラビアインキを印刷してなり、前記ポリエステル系ウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が、2~10であり、前記接着剤層が、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物とを含む接着剤を塗布しなり、前記ポリエステル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が1.5~5.0である、包装材である。分子量分布(Mw/Mn)が2~10であるポリエステル系ウレタン樹脂を含むグラビアインキと分子量分布(Mw/Mn)が1.5~5.0であるポリエステル樹脂を含む接着剤を使用することでインキ、接着剤塗工時のレベリング性と各層間の密着性が良好となり、印刷層に更に、重量平均分子量800~8000のイソシアネート系硬化剤より架橋・硬化されていることでポリエステル系ウレタン樹脂を含む印刷層が強固となり、積層体全体の耐久性を持たせ、易引裂き性を持たせるものである。
【0022】
<包装材>
本発明の包装材は、少なくとも、基材、印刷層、接着剤層、及びシーラントが、この順に外層側から積層されている構成を備えた包装材である。その積層構成は、具体的には、以下において外層側(左側)から順に以下のような積層構成を例示することができる。なお以下(1)から(5)の構成表示においては、「/」は各層の境界を意味する。
(1)基材/印刷層/接着剤層/シーラント
(2)基材/印刷層/接着剤層/中間基材層/接着剤層/シーラント
(3)基材/印刷層/接着剤層/中間基材層/接着剤層/中間基材層/シーラント
なお、印刷層を外側(基材側)から視認できる範囲で層構成を任意に選択することができる。
【0023】
(ポリエステル系ウレタン樹脂を含むグラビアインキ)
上記グラビアインキは、バインダー樹脂として少なくとも上記範囲のポリエステル系ウレタン樹脂を1種以上含む。グラビアインキ100質量%中、バインダー樹脂を、2~40質量%含むことが好ましく、3~30質量%含むことがなお好ましい。なお、当該グラビアインキは後述のイソシアネート系化合物を含む硬化剤と混合して使用される。
【0024】
(ポリエステル系ウレタン樹脂)
本発明で用いられるポリエステル系ウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂においてポリエステル由来の構成単位を有し、好ましくはウレア結合を有するものをいう。ポリエステル系ウレタン樹脂総質量中にポリエステル由来の構成単位を40質量%以上有することが好ましく、50質量%以上有することがなお好ましく、60質量%以上有することが更に好ましく、65質量%以上有することが特に好ましい。
ポリエステル系ウレタン樹脂は、以下に限定されないが、例えば、ポリイソシアネートと、ポリエステルポリオールを含むポリオールとを反応させて得られたウレタンプレポリマーに、さらにポリアミン(鎖伸長剤)と必要に応じて反応停止剤を反応させて得られるポリエステル系ウレタン樹脂などが挙げられる。ポリエステル由来の構成単位を得るためには、例えば、上記のようにポリオールとしてポリエステルポリオールを使用した場合に可能である。
【0025】
(ポリオール)
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール以外のポリオールを含んでよく、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなども使用可能である。また、ウレタン樹脂にポリエステル由来の構成単位導入する場合、ポリエステル構造の導入方法は特段限定されない。
【0026】
(ポリエステルポリオール)
上記ポリエステルポリオールとして数平均分子量は500~10,000であることが好ましい。ここでポリオールに用いる数平均分子量は水酸基価から算出されるものであり、水酸基価は、樹脂中の水酸基をエステル化又はアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JISK0070に従って行った値である。ポリオールの数平均分子量が10,000以下であると、プラスチックフィルムに対する耐ブロッキング性に優れる。また、ポリオールの数平均分子量が500以上であると、ウレタン樹脂被膜の柔軟性に優れプラスチックフィルムへの密着性に優れる。以上の理由より、より好ましくは数平均分子量が1,000~5,000である。
【0027】
ポリエステルポリオールとしては、ポリエステルジオールであることが好ましく、当該ポリエステルジオールとしては、ジオールとジカルボン酸の縮合物であるポリエステルジオールであることが好ましい。
当該ポリエステルジオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、2、4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、1-モノグリセライド、2-モノグリセライド、1-モノグリセリンエーテル、2-モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が好適に挙げられる。ポリエステルポリオールは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。分岐ジオールを含むジオールとジカルボン酸との縮合物であるポリエステルジオールであることが好ましい。また、環状エステル(ラクトンなど)を開環反応させて得られるポリエステルジオールであってもよい。
当該ジカルボン酸としては、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等が好適に挙げられ、中でもアジピン酸、コハク酸、セバシン酸などが好ましい。さらにポリエステルポリオールの原料としてヒドロキシル基を3個以上有するポリオール、カルボキシル基を3個以上有する多価カルボン酸を併用することもできる。
【0028】
これらの中でも好ましい具体例として、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸その他の二塩基酸と、分岐状ジオール及び直鎖状ジオールの双方を含むポリエステル由来の構造単位を含むものが好ましい。これにより積層体におけるラミネート強度がより良好となる。ここで、直鎖状ジオールとは、原子数2以上であるジオールであり、アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコールその他のジオールをいう。また、分岐状ジオールとは、アルキレングリコールの炭化水素基の少なくとも1つの水素原子が水素原子以外で置換されたジオールをいう。
【0029】
直鎖状ジオールは結晶性を付与し、分岐状ジオールは柔軟性を付与するので、そのバランスにより、バインダー樹脂としてのポリウレタン樹脂はインキ被膜が強靭となり高いラミネート強度が得られる。
【0030】
分岐状ジオールとしては、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(以下、BEPGとも記載する)と、2-メチル-1,3-プロパンジオール(以下、MPOとも記載する)、3メチル1,5ペンタンジオール(MPDとも記載する)、ネオペンチルグリコール(NPGとも記載する)、1,2-プロピレングリコール(以下、PGとも記載する)、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール等が挙げられ、NPG、PGから選ばれる少なくとも一種の分岐状ジオールが特に好ましい。
【0031】
直鎖状ジオールとしては、アルキレングリコールであることが好ましく、かかる化合物としては、エチレングリコール(EGとも記載する)、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール(1,3PDとも記載する)、1,4-ブタンジオール(1,4BDとも記載)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。
中でも炭素数8以下、好ましくは炭素数6以下の直鎖状ジオールが好ましく、EG、1,3PD、1,4BD、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、などが好ましい。さらに物性の観点からは、1,3PDが特に好ましい。
【0032】
本発明において、ラミネート強度の観点からポリエステルポリオールの全ジオール中の分岐状ジオール及び直鎖状ジオールの質量比(分岐状ジオール:直鎖状ジオール)は、10:90~90:10であることが好ましく、20:80~80:20であることがなお好ましい。30:70~70:30であることが更に好ましい。
【0033】
なお、分岐状ジオール単位と直鎖状ジオール単位はそれぞれをひとつのポリエステルポリオール中に存在させてもよいし、分岐状ジオール単位のみを含むポリエステルポリオールと、直鎖状ジオール単位のみを含むポリエステルポリオールを混合物原料として利用し、バイオマスウレタン樹脂としてもよい。およそ同一の効果が得られる。
【0034】
(ポリイソシアネート)
本発明におけるポリイソシアネートとしてはジイソシアネートが好ましく、かかる化合物としては、芳香族、脂肪族又は脂環族の各種公知のジイソシアネートを使用することができる。例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。中でもイソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、溶解性の観点からイソホロンジイソシアネートがさらに好ましい。
【0035】
(ポリアミン)
鎖伸長剤は、ポリアミンであることが好ましい。当該ポリアミンとしては、有機ジアミンが好ましく、以下に限定されないが、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの有機ジアミンは単独又は2種以上を混合して用いることができるが、イソホロンジアミンが好ましい。さらに、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン:(IBPA、3,3’-ジアミノジプロピルアミン)、N-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン:(スペルミジン)、6,6-イミノジヘキシルアミン、3,7-ジアザノナン-1,9-ジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン等のアミノ基数が3以上の多官能アミンを、上記有機ジアミンと併用することもできる。
【0036】
反応停止剤は、ウレタン化工程のみで生成できるウレタン樹脂の場合、モノアルコール又はモノアミンの使用が好ましく、ウレタン化工程に加えてウレア化反応工程を行って生成するウレタン樹脂の場合はモノアミンを使用することが好ましい。
当該モノアルコールとしては置換もしくは未置換のアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、などが好適に挙げられる。当該モノアミンとしては置換もしくは未置換のモノアミンが好ましく、n-ブチルアミン、n-ジブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどが好適に挙げられる。また、前記反応停止剤としては、前記鎖伸長剤として挙げた化合物も利用でき、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
ポリイソシアネートとポリオールを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの製造において、ポリイソシアネートのNCOとポリオールのOHのモル当量比(ポリイソシアネートのNCOのモル当量/ポリオール化合物のOHのモル当量)は、1.3~3で反応させることが好ましく、1.5~2で反応させることがより好ましい。
【0038】
ウレタン樹脂は、水酸基価及び/又はアミン価などの活性水素基を有することが好ましい。後述の硬化剤との反応サイトを得るためである。水酸基価は、0.5~30mgKOH/gであることが好ましく、1~20mgKOH/gであることがより好ましく、2~15mgKOH/gであることが更に好ましい。アミン価を有する場合は、0.1~15mgKOH/gであることが好ましく、1~12mgKOH/gであることがなお好ましい。一方で、ウレタン樹脂の酸価は5mgKOH/g以下であることが好ましく、3mgKOH/g以下であることがなお好ましい。酸価は以下に説明のイソシアネート系硬化剤とは難反応性であるためである。
【0039】
ウレタン樹脂の重量平均分子量は、20,000~100,000であることが好ましく、25,000~90,000であることがなお好ましく、30,000~80,000であることが更に好ましい。後述の硬化剤との架橋により印刷層を強固な皮膜とし、レトルトでの加熱に耐えうるためである。
なお、本発明において、重量平均分子量と、後述する分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、HLC-8220(東ソー株社製)カラムとしてPLgel、5μm、MIXED-D(Polymer Laboratories社製)TSKgelSuperAWシリーズ(東ソー株社製)等を使用することができる。展開溶媒としてテトラヒドロフラン、1,2,4-トリクロルベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド(0.01N-臭化リチウム添加)などを使用することができ、流速0.5~1.5ミリリットル/分であることが好ましい。検出はRI検出器などが使用でき、試料注入濃度は0.5~1.5ミリグラム/ミリリットル、注入量は0.1~1.0マイクロリットル等の条件下で測定可能である。重量平均分子量は、ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0040】
ウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、2~10であることが好ましく、2~8であることがなお好ましく、3~6であることが更に好ましい。Mwとは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。Mw/Mnは上記範囲である場合、以下に説明するイソシアネート系硬化剤との架橋で凝集力・密着力が強化されてボイル・レトルトにおいて十分な耐性を示し、なおかつ易引き裂き性を発現すると考えられるのである。なお、Mw、Mn及びMw/Mnは上記のようにゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)により求めることができる。
【0041】
ウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲とするためには、ウレタン樹脂合成においてウレタン合成原料の選定や固形分質量比率、合成反応におけるポリイソシアネートなどの反応性原料の滴下速度、撹拌速度及び攪拌羽の形状、反応温度を適切に設定することで分子量分布(Mw/Mn)を範囲内とすることができる。なお、更に鎖延長反応を行う場合には特にポリアミンとウレタンプレポリマーを反応させる際の滴下速度や温度範囲制御をも一定幅とすることが分子量分布を所定範囲とすることに効果的である。反応温度制御は重要であり、ウレタンプレポリマーの合成においては50~130℃の間にて制御することが好ましく、ポリアミンとウレタンプレポリマーを反応させる際では10~50℃の範囲に制御することが好ましい。
また、反応原料の仕込み比率を適切な比率に設定することも分子量分布を所定範囲とすることに効果的である。当該仕込み比率とは、例えばポリオール及びヒドロキシ酸の水酸基、更にポリイソシアネートのイソシアネート基の比率である、NCO/OH比率が挙げられ、ポリアミンのアミノ基と、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基との比率である、アミノ基/NCO比率などが挙げられる。また、分子量分布を制御するためには過剰な重合反応を防止する目的で重合停止剤(反応停止剤ともいう)を用いることが好ましい。重合停止剤としてはモノアルコールやモノアミンが好適に挙げられる。
【0042】
(顔料)
本発明におけるグラビアインキには、着色剤として顔料を含むことが好ましく、無機顔料又は有機顔料の使用が好ましい。カラーインデックスに記載のC.I.ピグメントを適宜使用することができる。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化クロム、シリカ、カーボンブラック、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から、白色顔料には酸化チタンが好ましく、さらに、顔料表面が塩基性である酸化チタンがより好ましい。アルミニウムは粉末又はペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィング又はノンリーフィングいずれでもよい。硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムは体質顔料と呼ばれ、流動性、強度、光学的性質の改善のために増量剤として使用される。
上記有機顔料としては、以下の例には限定されないが、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノン系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられ、カラーインデックス記載のものを随時併用可能である。
【0043】
顔料は、インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわち印刷インキの総質量に対して1~50質量%の割合で含まれることが好ましい。3~30質量%で含まれることがなお好ましい。
【0044】
(イソシアネート系硬化剤)
本発明の包装材において、ラミネート物性や、レトルト耐性、その後の引き裂き性を向上させるため、上記グラビアインキにイソシアネート系硬化剤を使用することが好ましい。ウレタン樹脂が有する水酸基やアミノ基その他の活性水素基を有する場合は当該活性水素基と架橋して、ウレタン樹脂が当該活性水素基を有しない場合はイソシアネート系硬化剤のみで自己架橋することで、ラミネート強度、易引き裂き性等が向上する。ウレタン樹脂は水酸基やアミノ基、その他の活性水素基を有することが好ましい。
【0045】
以下にイソシアネート系硬化剤の実施形態として好ましい態様を示す。当該イソシアネート系硬化剤の重量平均分子量は、800~8000であることが必要であり、1000~4500であることが好ましく、1500~4000であることがなお好ましい。また、イソシアネート系硬化剤の分子量分布(Mw/Mn)は、2~5であることが好ましく、2.2~4.5であることがなお好ましく、2.5~4であることが更に好ましい。重量平均分子量、更には、Mw/Mnが上記範囲である場合、上記ウレタン樹脂との作用で凝集力・密着力が強化されて、良好なラミネート強度、及びボイル・レトルトにおいて十分な耐性を示し、なおかつ易引き裂き性を発現すると考えられるのである。
【0046】
当該イソシアネート系硬化剤としては、アダクト型ポリイソシアネート(アダクト体)、ビウレット型ポリイソシアネート(ビウレット体)、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(イソシアヌレート体)、2官能型ポリイソシアネート等を含むポリイソシアネートが好適であり、アダクト体、ビウレット体及びイソシアヌレート体は例えば、トリメチロールプロパンその他のポリオールとジイソシアネートとの反応から得られるアダクト体、ジイソシアネートが二量化してビウレット結合で繋がれたビウレット体、ジイソシアネートの環状三量化反応から得られるイソシアヌレート体等が挙げられる。当該ジイソシアネートとしては上記したジイソシアネートを任意に選択して使用してもよく、中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(水添XDI)などが好適に挙げられる。アダクト型ポリイソシアネート、ビウレット型ポリイソシアネート、イソシアヌレート型ポリイソシアネートは併用してもよく、更にその他のポリイソシアネートと併用してもよい。
【0047】
イソシアネート系硬化剤の重量平均分子量及び分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲とするためには、イソシアネート系硬化剤合成においてジイソシアネート、ポリオールなどの選定や固形分質量比率、合成反応におけるポリイソシアネートなどの反応性原料の滴下速度、撹拌速度及び攪拌羽の形状更に反応温度を適切に設定することで範囲内とすることができる。なお、ポリアミンとポリイソシアネートを反応させる際の滴下速度や温度範囲制御をも一定幅とすることが分子量分布を所定範囲とすることに効果的である。
また、反応原料の仕込み比率を適切な比率に設定することで分子量分布を所定範囲とすることに効果的である。当該仕込み比率とは、例えばポリオールとポリイソシアネートのイソシアネート基の比率である、NCO/OH比率が挙げられ、ポリアミンのアミノ基と、ポリイソシアネートのイソシアネート基との比率である、アミノ基/NCO比率などが挙げられる。反応温度制御は重要であり、ポリオールとポリイソシアネートを用いた合成においては50~130℃の間にて制御することが好ましく、ポリアミンとポリイソシアネートを反応させる際では10~50℃の範囲に制御することが好ましい。また固形分も重要であり、反応中の固形分を40~80質量%とすることが好ましい。反応溶剤も重要であり、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピルその他のエステル系有機溶剤を使用することが好ましい。
【0048】
また、ウレタン樹脂とイソシアネート系硬化剤との質量比(ウレタン樹脂:イソシアネート系硬化剤)は、99:1~60:40であることが好ましく、98:2~65:35であることが好ましく、95:5~70:30であることがなお好ましい。ウレタン樹脂のほかに以下に説明の併用樹脂を使用する場合は、ウレタン樹脂と併用樹脂の合計量と、イソシアネート系硬化剤と、の質量比は、99:1~60:40であることが好ましく、95:5~70:30であることがなお好ましい。当該範囲で架橋、基材密着の効果が良好となり、良好なラミネート物性、ボイル・レトルト、経時後のラミネート強度において十分な耐性を示し、なおかつ易引き裂き性を発現すると考えられるためである。同様の観点から、インキ中の固形分とイソシアネート系硬化剤との質量比(インキ中の固形分:イソシアネート系硬化剤)は、99.5/0.5~70/30であることが好ましく、98/2~75/25であることがより好ましい。
【0049】
(併用樹脂)
印刷層を形成するインキはウレタン樹脂とともに併用樹脂を有していても好適である。以下に併用樹脂の好ましい態様を示す。
例えば、ポリエチレン系樹脂や塩素化ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、フッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化型ポリ(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロースやエチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルオキシエチルセルロース等の繊維素系樹脂、塩化ゴムや環化ゴム等のゴム系樹脂、石油系樹脂、ロジン、カゼイン等の天然樹脂等が挙げられる。
中でも塩化ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体及びロジン系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。塩化ビニル共重合樹脂であることがなお好ましい。
【0050】
上記塩化ビニル共重合樹脂は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂などが好ましい。塩化ビニル共重合樹脂の重量平均分子量は、5,000~100,000のものが好ましく5,000~50,000が更に好ましい。塩化ビニ
ル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構成単位の含有量は、70~95質量%であることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。また、塩化ビニル共重合樹脂は、水酸基を有することが好ましく、水酸基価として10~200mgKOH/gであることが好ましい。イソシアネート系硬化剤との反応性が向上するためであり、当該水酸基は、ビニルアルコール単位由来の水酸基あるいは水酸基を有するアクリルモノマーに由来することが好ましい。
【0051】
ウレタン樹脂と、塩化ビニル共重合樹脂その他の併用樹脂との質量比(ウレタン樹脂:併用樹脂)は95:5~30:70であることが好ましく、90:10~40:60であることがより好ましい。基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となるためである。
【0052】
(有機溶剤)
本発明で用いられるインキは、液状媒体として有機溶剤を含むことが好ましい。使用される有機溶剤としては、混合溶剤としての使用が好ましく、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。中でも、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)がより好ましい。更に好ましくは芳香族系有機溶剤及び/又はメチルエチルケトン(以下「MEK」と表記する)などのケトン系有機溶剤を含まない有機溶剤であり、有機溶剤中にエステル系有機溶剤を主成分(50%以上)として含有することが好ましい。特にエステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤を含むものが好ましい。
【0053】
(添加剤)
インキには、さらに、必要に応じて、例えば、レベリング剤、消泡剤、ワックス、シランカップリング剤、充填剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤等の任意の添加剤を添加することができる。
【0054】
(シランカップリング剤)
本発明の包装材においては、グラビアインキが、更に、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基等の官能基と、シラノール基、メトキシ基、エトキシ基等の官能基を有するものが挙げられる。具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基を有するトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシジル基を有するトリアルコキシシランが挙げられる。シラノール基を有するシランカップリング剤としては、信越シリコーン社製のKBP-64、KBP-90、X-12-1135、X-12-1098などが挙げられる。シランカップリング剤の添加量は、インキの固形分100質量%に対して、0.1~7質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。
【0055】
(グラビア版)
グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻又は腐蝕・レーザーにて凹部が各色用に作製される。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては100線~300線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。印刷層の厚みとしては、0.1μm~100μmが好ましい。
(グラビア印刷機)
グラビア印刷機において一つの印刷ユニットには上記グラビア版及びドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、有機溶剤系印刷インキ及び絵柄インキに対応する印刷ユニットを設定でき、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0056】
(基材)
基材はプラスチックフィルムが好ましく、積層体の外層側の基材1として役割を担うものであり、印刷層を外観から視認できるように、光透過性を有する材料で構成される。
具体的には、ポリエチレン(PE)系やポリプロピレン(PP)系等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、各種ナイロン(Ny)等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)等が挙げられる。基材は、一軸延伸又は二軸延伸されたものであってもよい。また、上記のうちの2種以上の樹脂フィルムが積層された複合フィルムであってもよい。またシリカ、アルミナ等の金属酸化物が蒸着された形態であってもよい。
【0057】
基材は、ボイル、レトルト処理の観点から、耐熱性に優れるものが好ましい。耐熱性に優れる基材を構成する樹脂としては、ポリエステル系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂等が好適である。
耐熱性に優れる基材の具体例としては、ポリエステルフィルムの単体、ナイロン等のポリアミドフィルムの単体、ポリエステルフィルム及びポリアミドフィルムの一種以上を含む複合フィルムが挙げられる。前記複合フィルムの例としては、PET/Ny/PET、外層側からPET/Nyの構成からなる共押出し延伸フィルムが挙げられる。また、前記複合フィルムとしては、ポリエステルフィルム及びポリアミドフィルムの一種以上と、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム及びポリ塩化ビニリデンフィルムの一種以上とを組み合わせることも好ましい。
【0058】
基材の厚みは、特に限定されるものではなく、積層体の用途に応じて適宜設定することができるが、通常、5~50μm程度であることが好ましく、より好ましくは10~30μmである。
【0059】
基材は、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。また、基材は、JISK7136:2000のヘイズが1.5%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
【0060】
(ガスバリア層)
ガスバリア層は、基材とシーラントとの間の何れかに、必要に応じて設けることができる。ガスバリア層は、積層体による被包装物と積層体の外部環境との間で、酸素や水蒸気等の透過を遮断する役割を担うものである。また、可視光や紫外線等の透過を遮断する遮光性も付与するものであってもよい。ガスバリア層は、1層のみから構成されるものであっても、2層以上の複数層で構成されてもよい。
【0061】
ガスバリア層の一例(蒸着膜)としては、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の無機物又はこれらの酸化物により形成された蒸着膜が好適である。これらの中でも、積層体が電子レンジ用である場合には、ケイ素酸化物やアルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等の無機酸化物が好ましい。
蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着(PVD)法、プラズマ化学気相成長や熱化学気相成長、光化学気相成長等の化学蒸着(CVD)法等が挙げられる。
【0062】
蒸着膜の膜厚は、形成材料や要求されるガスバリア性能等によって異なるが、通常、5~200nm程度であることが好ましく、より好ましくは5~150nm、さらに好ましくは10~100nmである。ケイ素酸化物やアルミニウム酸化物等の無機酸化物の場合は、5~100nm程度であることが好ましく、より好ましくは5~50nm、さらに好ましくは10~30nmである。
【0063】
<中間基材層>
本発明で用いられる積層体は、印刷層とシーラントの間に中間基材層を有していてもよい。中間基材層は、積層体の強度の向上や加工適性の向上を目的として必要に応じて設けられる層である。中間基材層の構成材料としては、例えば、プラスチックフィルム状の基材などが挙げられる。当該基材としては上述した基材と同様のものを用いることができる。電子レンジでの加熱やレトルト処理を考慮して、積層体の耐熱性を高めるために、中間基材層は耐熱性に優れるものが好ましい。ポリエステル基材やポリアミド基材などが好適に使用される。
【0064】
<接着剤層>
本発明で用いられる接着剤は、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物とを含む、二液反応型の接着剤である。無溶剤型(ノンソル)ウレタン接着剤あるいは有機溶剤を含むドライラミネート型ウレタン接着剤であることが好ましい。ここで「ポリエステル樹脂」とは、エステル結合を有する末端水酸基の樹脂を意味し、ウレタン結合を有するポリエステルウレタン樹脂などであっても好適である。ただし、ポリエステル樹脂は、好ましくはウレア結合を有しないが、例えば、不純物由来で致し方なく生成するウレア結合までも除外するものではない。
ポリエステル樹脂は、ポリエステル由来の構成単位有し、例えば、ポリエステルポリオールなどが該当する。
【0065】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量としては10000~40000であることが好ましく、15000~35000であることがなお好ましく、20000~30000であることが更に好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、1.5~5.0であることが好ましく、1.6~3.5であることが更に好ましい。接着剤塗工時のレベリング性と各層間の密着性が良化するためである。
【0066】
(ポリオール)
ポリオールとしては、ポリエステルポリオールを必須とするが、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなども含有可能である。
【0067】
ポリエステルポリオールとしては、ポリエステルジオールであることが好ましく、当該ポリエステルジオールとしては、ジオールと二塩基酸(ジカルボン酸等)の縮合物であるポリエステルジオールであることが好ましい。
当該ジオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、2、4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、1-モノグリセライド、2-モノグリセライド、1-モノグリセリンエーテル、2-モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が好適に挙げられる。ポリエステルポリオールは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、環状エステル(ラクトンなど)を開環反応させて得られるジオールであってもよい。
当該ジカルボン酸としては、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等が好適に挙げられる。
さらにポリエステルポリオールの原料としてヒドロキシル基を3個以上有するポリオール、カルボキシル基を3個以上有する多価カルボン酸を併用することもできる。
【0068】
また、ポリエステルポリオールの水酸基の一部が無水トリメリット酸及び/又はトリメリット酸エステル無水物由来の構成単位を含む形態も好ましい。これらは無水トリメリット酸及び/又はトリメリット酸エステル無水物でエステル化変性されている部分酸変性ポリオールなどが好適である。部分酸変性により、優れた接着強度、耐熱水性、耐酸性、耐油性を示し、レトルト後の積み重ね時における不本意による折り曲げが原因の外観劣化がなく、さらに包装袋の内容物として酸性度の高い食品や油性食品を充填した場合においても、接着強度の低下を抑制できるため、経時での強度維持、引き裂き性向上に寄与する。
【0069】
以下にポリエステル樹脂としての好ましい実施態様を示す。以下の場合、積層体におけるラミネート強度と引き裂き性が良好となる。
【0070】
上記の様に、二塩基酸とジオールの縮合物であるポリエステルポリオールにおいて、当該二塩基酸は、セバシン酸及び/又はコハク酸由来の構成単位を含有することが好ましい。セバシン酸及び/又はコハク酸は、二塩基酸総量中に10~60モル%又は10~70質量%含まれることが好ましく、20~50モル%又は20~60質量%含まれることがなお好ましい。
【0071】
上記二塩基酸は、更に、イソフタル酸などの芳香酸系二塩基酸を含むことが好ましい。芳香酸系二塩基酸は、二塩基酸総量中に25~90モル%又は25~90質量%含まれることが好ましく、40~80モル%又は40~80質量%含まれることがなお好ましい。
【0072】
上記ジオールは、分岐状ジオール及び直鎖状ジオールの双方を含むことが好ましい。ここで、直鎖状ジオールとは、原子数2以上であるジオールであり、アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコールその他のジオールをいう。また、分岐状ジオールとは、アルキレングリコールの炭化水素基の少なくとも1つの水素原子が水素原子以外で置換されたジオールをいう。
【0073】
直鎖状ジオールは結晶性を付与し、分岐状ジオールは柔軟性を付与するので、そのバランスにより、2液硬化後のウレタン接着剤被膜が強靭となり高いラミネート強度かつ引き裂き性が得られる。
【0074】
上記分岐状ジオールとしては、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(以下、BEPGとも記載する)と、2-メチル-1,3-プロパンジオール(以下、MPOとも記載する)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(MPDとも記載する)、オペンチルグリコール(NPGとも記載する)、1,2-プロピレングリコール(以下、PGとも記載する)、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール等が挙げられ、NPG、PGから選ばれる少なくとも一種の分岐状ジオールが特に好ましい。
【0075】
直鎖状ジオールとしては、アルキレングリコールであることが好ましく、かかる化合物としては、エチレングリコール(EGとも記載する)、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール(1,3-PDとも記載する)、1,4-ブタンジオール(1,4-BDとも記載)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。
中でも炭素数8以下、好ましくは炭素数6以下の直鎖状ジオールが好ましく、EG、1,3-PD、1,4-BD、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、などが好ましい。さらに物性の観点からは、EGが特に好ましい。
【0076】
なお、分岐状ジオール単位と直鎖状ジオール単位はそれぞれをひとつのポリエステルポリオール中に存在させてもよいし、分岐状ジオール単位のみを含むポリエステルポリオールと、直鎖状ジオール単位のみを含むポリエステルポリオールを混合物原料として利用し、バイオマスウレタン樹脂としてもよい。およそ同一の効果が得られる。
【0077】
また、ポリエステル樹脂はポリイソシアネートとの反応物であってもよく、この場合末端に水酸基を有する形態になる。ポリイソシアネートとしては、「ポリエステル系ウレタン樹脂」の説明で述べたポリイソシアネートが好ましく用いられる。
【0078】
(イソシアネート化合物)
本発明におけるイソシアネート化合物としてはジイソシアネートあるいはジイソシアネートとポリオールとの反応物であるウレタンプレポリマーなどが好ましく、かかるジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族又は脂環族の各種公知のジイソシアネートを使用することができる。例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート
、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
イソシアネート化合物は硬化剤として機能し、通常の2液反応型接着剤用であって、ポリエステル樹脂が有する水酸基との反応性を有する基を含んでいれば限定されず使用可能である。中でも、接着強度及び凝集力が高くなり、また、室温付近の低温でキュアが可能であることからイソシアネート基を有する。
イソシアネート化合物は、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを好適に使用できる。さらに黄変や、密着性向上のための柔軟性付与観点からヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類の使用が好ましく、レトルト耐性との両立からはトリメチロールプロパン等のアダクト体やイソシアヌレート体、ビュレット体等の3官能以上のポリイソシアネート化合物として用いる場合が好ましい。
【0079】
一実施形態としてポリエステル樹脂とイソシアネート化合物は、ポリエステル由来の水酸基とイソシアネート化合物由来のイソシアネート基の比率NCO/OHは1.0~8.0で使用されることが好ましく、1.7~6.5で使用されることがなお好ましい。
【0080】
(シーラント)
シーラントは、内層側の面が被包装物と直接接触し、被包装物を保護する役割を担う。積層体を袋状とするためにシーラントは最内層がヒートシール性を有していることが好ましい。シーラントを構成する材料としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上の樹脂を用いることができる。シーラントは、単層で構成されても、2層以上の多層で構成されてもよい。なお、シーラントは、ヒートシールの際の収縮を抑制するために、上記した樹脂からなる無延伸のフィルムであることが好ましい。
【0081】
ボイルやレトルト処理での加熱の観点から、耐熱性を高めるために、シーラントは耐熱性に優れる樹脂から構成することが好ましく、具体的には、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のプロピレン系樹脂及びHDPEが好ましい。
【0082】
シーラントの厚みは、特に限定されるものではなく、積層体の用途及び被包装物の種類や性質等に応じて適宜設定されるが、通常、10~200μmであることが好ましい。また、パウチ(特にレトルトパウチ)の場合、シーラントの厚みは、20~150μm、さらには30~100μmであることが好ましい。
【0083】
(包装材の製造方法)
本発明の包装材は、少なくとも基材、印刷層、接着剤層及びシーラントを順次有する包装材の製造方法であって、当該印刷層が、顔料、ウレタン樹脂及び重量平均分子量800~8000であるイソシアネート系硬化剤を含むインキを、前記基材上にグラビア印刷することで形成される工程を含む。上記接着剤層は当該印刷層上に塗布して形成される場合もあれば、シーラントに塗布されて形成される場合もある。
好適な態様としては、例えば、接着剤を上記印刷層上に塗布形成して、その後シーラントを貼り合わせる態様である。なお、包装材が、更に中間基材層を有する場合には、印刷層と当該中間基材層を一旦接着剤により貼り合わせておき、更に中間基材層とシーラントを貼り合わせる工程を含む態様が好ましい。なお、構成としては任意であり特段限定されない。
このようにして得られた包装材は、所定のサイズにカットされて、シーラント同士を互いに合わせた形で縁部分をヒートシールされて袋状にされる。ヒートシールの温度としては50~250℃であることが好ましく、80~180℃であることがなお好ましい。ヒートシール圧力としては1~5kg/cm2等の条件であればよい。1枚の包装材を折り曲げて縁をヒートシールしてもよいし、2枚以上の包装材をヒートシールしてもよい。また、包装材からなる袋は、中身を包装した後、すべての開口部をヒートシールしたものであってもよい。
【0084】
(ボイル・レトルト)
通常、パウチなどの包装材は、消費期限を延ばすために、あらかじめ内容物を密封した後滅菌することを目的として高温加熱(加圧)処理を行い、これをレトルトという。細菌が死滅するために必要な加熱時間は、温度が高くなるにつれて対数的に減少する。一方、ボイル殺菌とは食品を包装後、湯の中に入れて殺菌する方法で、いわゆる湯煎である。カゴの中に入れて、決められた温度の熱水槽に食k _トщ{品を漬けて、一定の時間が経過したら取り出すという方法が一般的で、ボイル殺菌の特徴は・比較的簡単・低コスト・一度に大量に処理ができるということである。レトルトは一般的に120~135℃で行われ、ボイルは100℃程度である。そのため、包装材においてはレトルトでの耐熱性があれば、ボイルにおいても耐性を有する。
【実施例
【0085】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、以下の実施態様は本発明のごく一例であり、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。
【0086】
<アミン価の測定方法>
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式1)によりアミン価を求めた。
(式1)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S [mgKOH/g]
【0087】
(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mn)
重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW2500
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW3000
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW4000
東ソー株式会社製TSKgelguardcolumnSuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0088】
<水酸基価の測定方法>
JISK0070に記載の方法に従って求めた。
【0089】
<酸価の測定方法>
JISK0070に記載の方法に従って求めた。
【0090】
[合成例1-1](ポリエステルポリオールA1の合成)
攪拌機、温度計、分水器及び窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、1,3-プロパンジオール(以下1,3-PDとも略す)26部、ネオペンチルグリコール(以下NPGとも略す)26部、セバシン酸48部、テトラブチルチタネート0.002部を仕込み、窒素気流下に230℃で縮合により生じる水を除去しながらエステル化を8時間行った。ポリエステルの酸価が15以下になったことを確認後、真空ポンプにより徐々に真空度を上げ反応を終了した。これにより数平均分子量2000、水酸基価56.1mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/g、バイオマス度84.4%のポリエステルポリオ-ル(A1)を得た。
【0091】
[合成例1-2~1-5](ポリエステルポリオールA2~A5の合成)
表1に記載の原料及び仕込み比率を用いた以外は、合成例1-1と同様の方法で、ポリエステルポリオールA2~A5を得た。なお、表中に記載の略称は以下を表す。
NPG:ネオペンチルグリコール(植物由来バイオマス度40%)
PG:1,2-プロピレングリコール(植物由来バイオマス度100%)
・ 3-PD:1,3-プロパンジオール(植物由来バイオマス度100%)
上記において、NPGのバイオマス度はパーストープ社カタログ値に由来する。
・表中の二塩基酸は以下のバイオマス度である。
コハク酸:(バイオマス由来バイオマス度100%)
アジピン酸:(石油由来バイオマス度0%)
セバシン酸:(バイオマス由来バイオマス度100%)
【0092】
なお、バイオマス度とは化合物中に含まれる植物由来その他のバイオマス由来の割合をいう。
バイオマス度=100×該当化合物のバイオマス由来成分質量/該当化合物の総質量
で表される。
ただし、該当化合物が、バイオマス由来原料と、バイオマス由来でない原料との反応物である場合、反応前の原料に換算して、計算する。例えば、二塩基酸とジオールとの反応物であるポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)の場合、
バイオマス度=100×(バイオマス二塩基酸+バイオマス由来ジオール)/(すべての二塩基酸+すべてのジオール)
「すべての二塩基酸+すべてのジオール」とは、バイオマス由来及びバイオマス由来でない二塩基酸、及びバイオマス由来及びバイオマス由来でないジオールの合計をいう。
【0093】
【表1】
【0094】
[合成例2-1](ポリエステル系ウレタン樹脂B1の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ポリエステルポリオ-ルA1を23.6部、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIとも略す)4.68部、酢酸エチル7.5部、2-エチルヘキサン酸スズ0.003部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させ、酢酸プロピル7.5部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下IPDAとも略す)1.60部、ジブチルアミン(以下DBAとも略す)0.12部、部酢酸エチル34部及びイソプロピルアルコール(以下IPAとも略す)21部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、質量平均分子量70000、アミン価4mgKOH/g バイオマス度66質量%のポリエステル系ウレタン樹脂B1溶液を得た。
【0095】
[合成例2-2~2-7](ポリエステル系ウレタン樹脂B2~B7の合成)
表2に記載の原料及びの仕込み比率を用いた以外は、合成例2-1と同様の操作で、ポリエステル系ウレタン樹脂B2~B7を得た。バイオマス度等を同表に示した。
なお、表中に記載の略称は以下を表す。
IBPA:イミノビスプロピルアミン
【0096】
[比較合成例2-A]
表2に記載の原料及びの仕込み比率を用いた以外は、合成例2-1と同様の方法で、ポリウレタン樹脂C1を得た。バイオマス度等を同表に示した。
【0097】
【表2】
【0098】
[調製例3-1](グラビアインキD1の調製)
フタロシアニン顔料(銅フタロシアニン藍、トーヨーカラー株式会社製LIONOLBLUE FG-7330)10部、ポリウレタン樹脂B1溶液10部、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂溶液(水酸基価は140mgKOH/g、質量平均分子量は50000の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂固形分30%溶液)10部、混合溶剤(酢酸プロピル/IPA=70/30(質量比))10部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂(B1)30部、混合溶剤(ノルマルプロピルアセテート/イソプロピルアルコール=70/30(質量比))30部を攪拌混合し、藍色印刷インキD1を得た。
【0099】
[調製例3-2~3-14](グラビアインキD2~D14の調製)
表3に記載の原料及び仕込み比率を用いた以外は、調製例3-1と同様の方法で、インキD2~D14を得た。なお、表中の略称は以下を示す。
DLX5-8:ICI Novel enterprises社製ニトロセルロース
重量平均分子量50000 窒素分12.0% ガラス転移温度150℃ (固形分30%イソプロパノール溶液)
・ハリエスターP:ハリマ化成社製 ロジン変性ペンタエリスリトールエステル 固形分30%の酢酸エチル溶液
・BR-105:三菱ケミカル社製 アクリル樹脂、重量平均分子量60,000、ガラス転移点50℃、酸価3.5mgKOH/g 固形分30%の酢酸エチル溶液
・酸化チタン:石原産業社製 CR-90 シリカ及びアルミナで被覆された酸化チタン、透過型電子顕微鏡により測定した平均粒子径(メディアン粒子径)が0.25μm
【0100】
[比較調製例3-A~3-B](E1~E2の調製)
表3に記載の原料及び仕込み比率を用いた以外は、調整例3-1と同様の方法で、インキ3-A~3-Bを得た。
【0101】
【表3】
【0102】
[硬化剤合成例](硬化剤H1の合成)
窒素ガス雰囲気下、撹拌羽つき反応容器において、トリメチロールプロパン15部とトルエン-2,4-ジイソシアネート60.3部及びあらかじめ脱水処理しておいた酢酸エチル32.3部を50℃、150rpmの撹拌速度で3時間反応させて、硬化剤H1を得た。重量平均分子量:1200 Mw/Mn:2.5 固形分70質量%
【0103】
以下に記載の実施例では、上記硬化剤のほかに下記硬化剤も使用した。
・硬化剤H2
TLA-100:旭化成社製 イソシアヌレート型のイソシアネート系硬化剤
重量平均分子量:1300 Mw/Mn:2.4 固形分70質量%
・硬化剤H3
24A-100: 旭化成社製 ビウレット型のイソシアネート系硬化剤
重量平均分子量:1600 Mw/Mn:3.2 固形分70質量%
・硬化剤H4
E402-80B: : 旭化成社製 イソシアネート系硬化剤
重量平均分子量:4100 Mw/Mn:3.4 固形分70質量%
【0104】
[合成例4-1](接着剤ポリエステル樹脂F1の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却装置、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、1,6-ヘキサンジオール(1,6HD)21部、ネオペンチルグリコール(NPG)21部、イソフタル酸28部、セバシン酸28部を仕込み、240℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下で250℃で5時間脱グリコール反応を行いポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネートを1部添加し、150℃で2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリオールに無水トリメリット酸(TMA)を1部添加し、180℃で2時間反応させ、その後酢酸エチルで不揮発分60%に希釈し、ポリエステルポリオール(F1)の溶液を得た。ポリエステルポリオール(F1)の重量平均分子量は25000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
【0105】
[合成例4-2](接着剤ポリエステル樹脂F2の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却装置、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、1,6-ヘキサンジオール21部、ネオペンチルグリコール21部、イソフタル酸28部、セバシン酸28部を仕込み、240℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下で250℃で5時間脱グリコール反応を行いポリエステルポリオールを得た。その後、トリレンジイソシアネートを1部添加し、150℃で2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリオールに無水トリメリット酸を1部添加し、180℃で2時間反応させ、その後酢酸エチルで不揮発分60%に希釈し、ポリエステルポリオール(F2)の溶液を得た。ポリエステルポリオール(F2)の重量平均分子量は26000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.5であった。
【0106】
[合成例4-3](接着剤ポリエステル樹脂F3の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却装置、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、1,6-ヘキサンジオール21部、ネオペンチルグリコール21部、イソフタル酸28部、セバシン酸28部を仕込み、240℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下で250℃で5時間脱グリコール反応を行いポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネートを3部添加し、150℃で2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリオールに無水トリメリット酸を1部添加し、180℃で2時間反応させ、その後酢酸エチルで不揮発分60%に希釈し、ポリエステルポリオール(F3)の溶液を得た。ポリエステルポリオール(F3)の重量平均分子量は28000であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.2であった。
【0107】
[合成例4-4](接着剤ポリエステル樹脂F4の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却装置、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール(EG)12部、1,6-ヘキサンジオール12部、ネオペンチルグリコール20部、トリメチロールプロパン(TMP)0.5部、イソフタル酸35部、コハク酸16.5部を仕込み、240℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下で250℃で4.5時間脱グリコール反応を行いポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネートを3部添加し、150℃で2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリオールに無水トリメリット酸を1部添加し、180℃で2時間反応させ、その後酢酸エチルで不揮発分60%に希釈し、ポリエステルポリオール(F4)の溶液を得た。ポリエステルポリオール(F4)の重量平均分子量は22000であり、分子量分布(Mw/Mn)は4.5であった。
【0108】
[合成例4-5](接着剤ポリエステル樹脂F5の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却装置、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、1,6-ヘキサンジオール21部、ネオペンチルグリコール21部、イソフタル酸28部、アジピン酸28部を仕込み、240℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下で250℃で5時間脱グリコール反応を行いポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネートを1部添加し、150℃で2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリオールに無水トリメリット酸を1部添加し、180℃で2時間反応させ、その後酢酸エチルで不揮発分60%に希釈し、ポリエステルポリオール(F5)の溶液を得た。ポリエステルポリオール(F5)の重量平均分子量は25000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。
【0109】
[合成例4-6](接着剤ポリエステル樹脂F6の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却装置、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、1,6-ヘキサンジオール21部、ネオペンチルグリコール21部、イソフタル酸28部、セバシン酸28部を仕込み、240℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下で250℃で5時間脱グリコール反応を行いポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネートを1部添加し、150℃で2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。その後酢酸エチルで不揮発分60%に希釈し、ポリエステルポリオール(F6)の溶液を得た。ポリエステルポリオール(F6)の重量平均分子量は25000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
【0110】
[合成例4-7](接着剤ポリエステル樹脂F7の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却装置、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングレコール15部、ジエチレングリコール(DEG)35部、イソフタル酸35部、セバシン酸15部を仕込み、240℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下で250℃で5時間脱グリコール反応を行いポリエステルポリオールを得た。その後酢酸エチルで不揮発分60%に希釈し、ポリエステルポリオール(F7)の溶液を得た。ポリエステルポリオール(F7)の重量平均分子量は23000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
【0111】
[比較合成例4-A](接着剤ポリエステル樹脂G1の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却装置、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール12部、1,6-ヘキサンジオール12部、ネオペンチルグリコール20部、トリメチロールプロパン1.5部、イソフタル酸35部、セバシン酸16.5部を仕込み、240℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下で250℃で4時間脱グリコール反応を行いポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネートを4部添加し、150℃で2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリオールに無水トリメリット酸を1部添加し、180℃で2時間反応させ、その後酢酸エチルで不揮発分60%に希釈し、ポリエステルポリオール(G1)の溶液を得た。ポリエステルポリオール(G1)の重量平均分子量は23000であり、分子量分布(Mw/Mn)は5.5であった。
【0112】
[比較合成例4-B](接着剤ポリエステル樹脂G2の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却装置、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール12部、1,6-ヘキサンジオール12部、ネオペンチルグリコール20部、トリメチロールプロパン1.5部、イソフタル酸35部、アジピン酸16.5部を仕込み、240℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下で250℃で4時間脱グリコール反応を行いポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネートを4部添加し、150℃で2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリオールに無水トリメリット酸を1部添加し、180℃で2時間反応させ、その後酢酸エチルで不揮発分60%に希釈し、ポリエステルポリオール(G2)の溶液を得た。ポリエステルポリオール(G2)の重量平均分子量は23000であり、分子量分布(Mw/Mn)は5.5であった。
【0113】
【表4】
【0114】
[イソシアネート化合物(硬化剤)]
イソシアネート化合物として以下を用いた。
硬化剤H5:ヘキサメチレンジイソシアネートビウレット不揮発分95質量%(酢酸エチル)溶液、NCO%=25
【0115】
[ラミネート接着剤の製造]
合成したポリエステルポリオールF1~7、G1~3と硬化剤H5とを15:1の割合で配合し、酢酸エチルを加えて不揮発分30%の接着剤溶液を調整した。
【0116】
[実施例1](インキD1の印刷)
インキD1の粘度を酢酸プロピル/IPA混合溶剤(質量比70/30)で、ザーンカップ#3(離合社製)における粘度が15秒(25℃において)に希釈調整し、版深30μmグラビア版を備えたグラビア校正機により、片面コロナ処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製E5100#12)のコロナ処理面に印刷して40~50℃ で乾燥し、印刷物(PET)を得た。
【0117】
包装材I1(積層構成Aの包装材の作製)ラミネート強度・溶出成分試験用
上記印刷物の印刷層上に、接着剤F1を15部、硬化剤H5を1部、酢酸エチルを加えて不揮発分30%に調整した溶液を塗布・乾燥し、ラミネート機により未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚さ70μm、表面コロナ放電処理)と貼り合せ、40℃で4日間保温し、包装材Aを作成した。
積層構成A:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)/印刷層未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚さ70μm、表面コロナ放電処理)
【0118】
包装材I1(積層構成Bの包装材の作製)引き裂き性・経時引き裂き性試験用
上記印刷物の印刷層上に、接着剤F1を15部、硬化剤H5を1部、酢酸エチルを加えて不揮発分30%に調整した溶液を塗布・乾燥し、塗布面にアルミニウム箔を貼り合せた。次に、当該アルミニウム箔面に同様に接着剤F1を15部、硬化剤H5を1部、酢酸エチルを加えて不揮発分30%に調整した溶液を塗布・乾燥し、未延伸ポリプロピレンフィルムと貼り合せ、40℃で4日間保温し、包装材Bを作成した。
積層構成:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)/印刷層/アルミニウム(AL)箔(厚さ9μm)/未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚さ70μm、表面コロナ放電処理)
【0119】
[実施例2-24](包装材I2~I24の作成)
表5に示す構成に変更した以外は実施例1と同様にして、積層構成Aの包装材及び積層構成Bの包装材をそれぞれ得た。
なお、実施例21-24については、上記の硬化剤(H1~H4)を表5に示す通り配合した。
【0120】
[実施例25](包装材I25の作成)
インキD1 100部、下記シランカップリング剤(KBM) 3部を撹拌混合したものを用い、実施例1と同様の方法で、積層構成Aの包装材、及び積層構成Bの包装材をそれぞれ得た。
・シランカップリング剤(KBM):KBM-903(信越シリコーン社製、3-アミノプロピルトリメトキシシラン)を、ノルマルプロピルアセテート(NPAC)/イソプロピルアルコール(IPA)=70:30の混合溶剤に溶解させた固形分10%溶液
【0121】
[実施例26-31](包装材I26~I31の作成)
表5に示すインキ、シランカップリング剤、及び必要に応じて上記硬化剤H1を用いた以外は実施例25と同様にして、積層構成Aの包装材及び積層構成Bの包装材をそれぞれ得た。
・シランカップリング剤(KBE):KBE-903(信越シリコーン社製、3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を、ノルマルプロピルアセテート(NPAC)/イソプロピルアルコール(IPA)=70:30の混合溶剤に溶解させた固形分10%溶液
また、実施例25~28、31における、シランカップリング剤の添加量は、インキ固形分100質量%に対し、1.2質量%であり、実施例29は0.4質量%、実施例30は3.6質量%であった。
【0122】
[比較例1-6](包装材J1~J6の作成)
表5に示す構成に変更した以外は実施例1と同様にして、積層構成Aの包装材及び積層構成Bの包装材をそれぞれ得た。
【0123】
【表5】
【0124】
上記包装材を用いて以下の特性評価を行った。
【0125】
(ラミネート強度)
上記実施例及び比較例において得られた積層構成Aの包装材について長さ150mm、幅15mmに切り出し、インキ/PETフィルム界面で開き、引っ張り試験機を用いて90°方向のラミネート強度を測定した。
(評価基準)
5:1.5N/15mm以上(優)
4:1.0N/15mm以上1.5N/15mm未満(良)
3:0.8N/15mm以上1.0N/15mm未満(可)
2:0.5N/15mm以上0.8N/15mm未満(不可)
1:0.5N/15mm未満(劣)
なお実用レベルは3~5である。
【0126】
(溶出成分試験)
上記実施例及び比較例において得られた積層構成Aの包装材は横12cm縦22cmのサイズに切出し、CPP面同士を内側として縁をヒートシール(温度:190℃、圧力:2kgf、時間:1秒)して包装袋を作り、内容物として水を充填し、85℃20分のボイル処理を行った。ボイル水をガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)にて分析し、有機物成分のピークの有無を確認した。なお、GC/MSの装置及びカラムは以下の通りである。
装置:HP-GC6890N/MSD5973(アジレント・テクノロジー株式会社製)/TDS(GERSTEL株式会社製)カラム:HP-5(内径0.32mm/長さ60m/膜厚1.00μm)(アジレント・テクノロジー株式会社製)
(評価基準)
5:環状ジエステル以外の有機物が検出されず、ボイル水も無臭であった。(優)
4:環状ジエステルを除く有機物が検出され、ボイル水は無臭であった。(良)
3:環状ジエステルを除く有機物が検出され、ボイル水は僅かに臭気があった。(可)
2:環状ジエステルを除く有機物が検出され、ボイル水に臭気があった。(不可)
1:環状ジエステルに起因するピークが確認され、ボイル水に臭気があった。(劣)
なお、実用レベルは3~5である。
【0127】
(易引裂き性)
上記実施例及び比較例で得られた積層構成Bの包装材について、JISK7128-1:1998に従ってサンプルを作成し、インテスコ社製201万能引張り試験機で引裂いた際の抵抗で評価した。
[評価基準]
6:0.3N未満(非常に良好)
5:0.5N未満(良好)
4:0.5N以上1.0N未満(やや良好)
3:1.0N以上1.5N未満(実用可)
2:1.5N以上2.0N未満(やや不良)
1:2.0N以上(不良)
なお実用可能である評価は3~6である。
【0128】
(経時易引き裂き性)
上記実施例及び比較例で得られた積層構成Bの包装材について、内容物を1:1:1スープ(ケチャップ:酢:水=質量比で1:1:1)として120℃30分のレトルト処理を行い、2週間40℃、オーブン内にて平置きで静置した。その後、JISK7128-1:1998に従ってサンプルを作成し、インテスコ社製201万能引張り試験機で引裂いた際の抵抗で評価した。
[評価基準]
6:0.3N未満(非常に良好)
5:0.5N未満(良好)
4:0.5N以上1.0N未満(やや良好)
3:1.0N以上1.5N未満(実用可)
2:1.5N以上2.0N未満(やや不良)
1:2.0N以上(不良)
なお実用可能である評価は3~6である。
評価結果を、表5に合わせて示す。