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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】離型フィルムおよび成型品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230523BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20230523BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B7/022
B32B27/32 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022542816
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2021028849
(87)【国際公開番号】W WO2022034834
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2020136422
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠治
(72)【発明者】
【氏名】山戸 元
(72)【発明者】
【氏名】榎本 陽介
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-203475(JP,A)
【文献】国際公開第2011/135763(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/040240(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/169654(WO,A1)
【文献】特開2005-187526(JP,A)
【文献】国際公開第2006/120983(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/001682(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 7/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂を含む第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層と、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂と、該ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂とは異なるポリオレフィン系樹脂とを含む第3熱可塑性樹脂組成物からなるクッション層とを有する離型フィルムであって、
前記第1離型層は、その平均厚さが12μm以上38μm以下、前記クッション層は、その平均厚さが60μm以上110μm以下であり、前記第1離型層の平均厚さをT1[μm]とし、前記クッション層の平均厚さをTk[μm]としたとき、T1/Tkは、0.21<T1/Tk<0.50なる関係を満足し、
前記第1離型層は、180℃における貯蔵弾性率E’1が70MPa以上95MPa未満であり、当該離型フィルムは、180℃における貯蔵弾性率E’が30MPa以上であり、
幅270mmの当該離型フィルムを、ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸を備えるフレキシブル回路基板に、180℃、11MPa、120secの条件でロールツーロールプレス機にて加圧貼付して、加圧直後に搬送しつつ、前記フレキシブル回路基板と当該離型フィルムとを引き剥がしたときに、当該離型フィルムにシワが認められない限界引き剥がし速度が180mm/秒以上となり、かつ、
ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸を備えるフレキシブル回路基板に、カバーレイフィルム(有沢製作所社製、「CMA0525」)を、該カバーレイフィルムが備える接着剤層を前記フレキシブル回路基板側にして貼付することで形成される積層体に対して、幅270mmの当該離型フィルムを、180℃、11MPa、120secの条件で押し込み、その後当該離型フィルムの一端を持ち引き剥がした際の、前記積層体の凹部における平面視での接着剤の最大しみ出し量が85μm以下となることを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
当該離型フィルムは、その平均厚さが80μm以上180μm以下である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記第1離型層は、前記クッション層と反対側の表面における10点平均粗さ(Rz)が3μm以上20μm以下である請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記第1離型層の平均厚さをT1[μm]とし、前記第1離型層の180℃における貯蔵弾性率E’をE’1[MPa]としたとき、E’1/T1[MPa/μm]は、2.1<E’1/T1<6.0なる関係を満足する請求項1ないしのいずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項5】
当該離型フィルムは、前記クッション層の前記第1離型層と反対側に積層された、第2熱可塑性樹脂組成物からなる第2離型層を有する請求項1ないしのいずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項6】
当該離型フィルムが、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成された対象物の表面に、
前記第1離型層側の表面が接するように重ねて用いられる請求項1ないしのいずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の離型フィルムの前記第1離型層が対象物側になるように、
前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、を含み、前記離型フィルムを配置する前記工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される側の面が、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されていることを特徴とする成型品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムおよび成型品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回路が露出したフレキシブル回路基板に対して、カバーレイフィルムを、カバーレイフィルムが備える接着剤層を介して、加熱プレスにより接着してフレキシブルプリント回路基板すなわち積層体を形成する際に、離型フィルムが、一般的に、使用されている。
【0003】
このような離型フィルムを用いたフレキシブルプリント回路基板、換言すればフレキシブル回路基板とカバーレイフィルムとの積層体の形成の際に、離型フィルムには、2つの特性、すなわち、埋め込み性および離型性に優れることが要求されてきた。
【0004】
詳しくは、まず、フレキシブルプリント回路基板には、フレキシブル回路基板へのカバーレイフィルムの積層により、凹部が形成されるが、この凹部に対して、優れた埋め込み性を発揮することが離型フィルムに求められる。
【0005】
より具体的には、フレキシブル回路基板に対するカバーレイフィルムの積層は、カバーレイフィルムが備える接着剤層を介して行われる。この積層の際に、凹部に対して、離型フィルムが優れた埋め込み性を発揮して、凹部内における接着剤のしみ出しが抑制されることが求められる。
【0006】
また、上記のようなフレキシブル回路基板に対するカバーレイフィルムの積層の後には、形成されたフレキシブルプリント回路基板から、優れた離型性をもって離型フィルムが剥離されることが求められる。
【0007】
より具体的には、形成されたフレキシブルプリント回路基板から、離型フィルムを剥離させる際に、フレキシブルプリント回路基板に対して、離型フィルムが優れた離型性を発揮して、フレキシブルプリント回路基板における折れシワおよび破断の発生が抑制されることが求められる。
【0008】
上記のような2つの特性(埋め込み性および離型性)に優れた離型フィルムとすることを目的に、例えば、特許文献1では、ポリエステル系エラストマー層と、ポリエステル層とを有する離型フィルムが提案されている。しかしながら、係る構成の離型フィルムでは、優れた埋め込み性と、優れた離型性との両立が図られているとは言えず、これら2つの特性が、バランス良くより優れた離型フィルムの開発が求められているのが実情であった。
【0009】
また、このような問題は、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成された対象物に対して、離型フィルムを貼付した状態とし、この状態で熱硬化性樹脂を硬化させることで、対象物を用いて成型品を製造する場合等についても同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2011-88351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、優れた埋め込み性と優れた離型性との両立をバランス良く発揮させることができる離型フィルム、および、かかる離型フィルムを用いた成型品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、下記(1)~()に記載の本発明により達成される。
(1) ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂を含む第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層と、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂と、該ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂とは異なるポリオレフィン系樹脂とを含む第3熱可塑性樹脂組成物からなるクッション層とを有する離型フィルムであって、
前記第1離型層は、その平均厚さが12μm以上38μm以下、前記クッション層は、その平均厚さが60μm以上110μm以下であり、前記第1離型層の平均厚さをT1[μm]とし、前記クッション層の平均厚さをTk[μm]としたとき、T1/Tkは、0.21<T1/Tk<0.50なる関係を満足し、
前記第1離型層は、180℃における貯蔵弾性率E’1が70MPa以上95MPa未満であり、当該離型フィルムは、180℃における貯蔵弾性率E’が30MPa以上であり、
幅270mmの当該離型フィルムを、ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸を備えるフレキシブル回路基板に、180℃、11MPa、120secの条件でロールツーロールプレス機にて加圧貼付して、加圧直後に搬送しつつ、前記フレキシブル回路基板と当該離型フィルムとを引き剥がしたときに、当該離型フィルムにシワが認められない限界引き剥がし速度が180mm/秒以上となり、かつ、
ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸を備えるフレキシブル回路基板に、カバーレイフィルム(有沢製作所社製、「CMA0525」)を、該カバーレイフィルムが備える接着剤層を前記フレキシブル回路基板側にして貼付することで形成される積層体に対して、幅270mmの当該離型フィルムを、180℃、11MPa、120secの条件で押し込み、その後当該離型フィルムの一端を持ち引き剥がした際の、前記積層体の凹部における平面視での接着剤の最大しみ出し量が85μm以下となることを特徴とする離型フィルム。
【0013】
(2) 当該離型フィルムは、その平均厚さが80μm以上180μm以下である上記(1)に記載の離型フィルム。
【0015】
) 前記第1離型層は、前記クッション層と反対側の表面における10点平均粗さ(Rz)が3μm以上20μm以下である上記(1)または(2)に記載の離型フィルム。
【0017】
) 前記第1離型層の平均厚さをT1[μm]とし、前記第1離型層の180℃における貯蔵弾性率E’をE’1[MPa]としたとき、E’1/T1[MPa/μm]は、2.1<E’1/T1<6.0なる関係を満足する上記(1)ないし()のいずれかに記載の離型フィルム。
【0020】
) 当該離型フィルムは、前記クッション層の前記第1離型層と反対側に積層された、第2熱可塑性樹脂組成物からなる第2離型層を有する上記(1)ないし()のいずれかに記載の離型フィルム。
【0023】
) 当該離型フィルムが、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成された対象物の表面に、
前記第1離型層側の表面が接するように重ねて用いられる上記(1)ないし()のいずれかに記載の離型フィルム。
【0024】
) 上記(1)ないし()のいずれかに記載の離型フィルムの前記第1離型層が対象物側になるように、
前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、を含み、前記離型フィルムを配置する前記工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される側の面が、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されていることを特徴とする成型品の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、優れた埋め込み性と、優れた離型性との両立がバランス良く発揮された離型フィルムとすることができる。
【0026】
したがって、離型フィルムを、例えば、フレキシブル回路基板とカバーレイフィルムとを用いたフレキシブルプリント回路基板の形成に用いた場合には、フレキシブルプリント回路基板に形成された凹部において、接着剤がしみ出すのを的確に抑制または防止することができる。
【0027】
そして、フレキシブルプリント回路基板の形成の後に、フレキシブルプリント回路基板から離型フィルムを剥離させる際に、フレキシブルプリント回路基板において、折れシワおよび破断が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、フレキシブルプリント回路基板の製造に用いられるロールツーロールプレス機の主要部を示す側面図である。
図2図2は、図1に示すロールツーロールプレス機を用いたフレキシブルプリント回路基板の製造方法における各工程を示す縦断面図である。
図3図3は、図1に示すロールツーロールプレス機を用いたフレキシブルプリント回路基板の製造方法における加熱プレス工程を示す縦断面図である。
図4図4は、本発明の離型フィルムの実施形態を示す縦断面図である。
図5図5は、図4に示す離型フィルムのA部を部分的に拡大した部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の離型フィルムおよび成型品の製造方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0030】
なお、以下では、本発明の離型フィルムを用いて、フレキシブルプリント回路基板を製造する場合を一例に説明する。また、本発明の離型フィルムおよび成型品の製造方法を説明するのに先立って、まず、フレキシブルプリント回路基板の製造に用いられるロールツーロールプレス機について説明する。
【0031】
<ロールツーロールプレス機>
図1は、フレキシブルプリント回路基板の製造に用いられるロールツーロールプレス機の主要部を示す側面図、図2は、図1に示すロールツーロールプレス機を用いたフレキシブルプリント回路基板の製造方法における各工程を示す縦断面図、図3は、図1に示すロールツーロールプレス機を用いたフレキシブルプリント回路基板の製造方法における加熱プレス工程を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1図3中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言い、左側を「左」、右側を「右」と言う。
【0032】
ロールツーロールプレス機100(RtoRプレス機)は、離型フィルム10、フレキシブルプリント回路基板200(以下「FPC」と言うこともある。)およびガラスクロス300A、300Bを搬送する搬送手段(図示せず)と、FPC200が備えるフレキシブル回路基板210とカバーレイフィルム220(以下、「CLフィルム」と言うこともある。)とを、離型フィルム10を用いてフレキシブル回路基板210に対してCLフィルム220を加熱プレスすることで接合する加熱プレス手段50と、フレキシブル回路基板210に対してCLフィルム220が接合されたFPC200から、離型フィルム10を離型(剥離)させる離型手段60とを備えている。
【0033】
搬送手段は、それぞれ異なる巻出しローラに巻回されたFPC200、離型フィルム10A、10B、および、ガラスクロス300A、300Bを、それぞれ、これらの長手方向に沿って、テンショナ(テンションローラー)の回転により、搬送するとともに、加熱プレス手段50および離型手段60による処理後に、巻取りローラに巻回するものである。
【0034】
なお、各ローラは、それぞれ、例えば、ステンレス鋼等のような金属材料で構成されている。また、これらのローラは、回動軸(中心軸)同士が同じ方向を向いており、互いに離間して配置されている。
加熱プレス手段50は、図1に示すように、加熱圧着部52を有している。
【0035】
加熱圧着部52は、一対の加熱圧着板521を有している。加熱圧着板521は、搬送手段により搬送されるとともに、重ね合わされた状態とされたガラスクロス300A、離型フィルム10A、FPC200、離型フィルム10Bおよびガラスクロス300Bに対向して、その上方および下方に1つずつ配置されている。そして、重ね合わされた状態とされたガラスクロス300A、離型フィルム10A、FPC200、離型フィルム10Bおよびガラスクロス300Bが、加熱圧着板521同士の間を通過する際に、加熱圧着板521により、ガラスクロス300A、300Bと、離型フィルム10A、10Bとを介して、FPC200が加熱されつつ加圧される。したがって、FPC200において、重ね合わされているフレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが、CLフィルム220が備える接着剤層222を介して接合される。換言すれば、カバーレイ221とフレキシブル回路基板210とが接着剤層222を介して接合される。また、FPC200の加熱・加圧の際、すなわち、カバーレイ221とフレキシブル回路基板210との接着剤層222を介した接合の際に、カバーレイ221に形成される凹部223内に離型フィルム10が埋入されることとなる。そのため、凹部223内における、接着剤層222に由来する接着剤のしみ出しが抑制される(図2(b)参照)。
【0036】
なお、加熱圧着板521により加熱圧着される前において、FPC200は、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが重ね合わせることで積層された状態となってはいるが、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とは、CLフィルム220が備える接着剤層222を介して接合されていない。
【0037】
離型手段60は、図1に示すように、加熱プレス手段50に対して、搬送方向の下流側に配置されている。この離型手段60は、FPC200と離型フィルム10A、Bとを離間させるように構成されている。前述したように、加熱プレス手段50が備える加熱圧着部52において、カバーレイ221に形成される凹部223内に離型フィルム10が埋入され、これにより、CLフィルム220(FPC200)に離型フィルム10が接合されている。その後、ロールツーロールプレス機100は、この離型手段60の作用により、CLフィルム220(FPC200)から離型フィルム10を剥離(離型)させ得るように構成されている(図2(c)参照)。
【0038】
以上のようなロールツーロールプレス機100を用いて、フレキシブルプリント回路基板200(FPC200)を製造し得る。以下、このロールツーロールプレス機を用いたFPC200の製造方法について説明する。なお、このFPC200の製造方法に、本発明の成型品の製造方法が適用される。
【0039】
FPC200の製造方法は、本実施形態では、それぞれがシート状をなす、ガラスクロス300Aと、離型フィルム10Aと、FPC200と、離型フィルム10Bと、ガラスクロス300Bとを、この順で重ね合わされた状態をなす積層体とする第1の工程と、かかる積層体を加熱プレスすることで、FPC200において、フレキシブル回路基板210に対してカバーレイ221(CLフィルム220)を、接着剤層222を介して接合する第2の工程と、FPC200から離型フィルム10(10A、10B)を離型させて、フレキシブル回路基板210に対してCLフィルム220が接合されているFPC200を得る第3の工程とを有する。
【0040】
以下、これらの各工程について、順次説明する。
(第1の工程)
まず、それぞれがシート状をなす、巻出しローラにそれぞれ巻回されたガラスクロス300Aと、離型フィルム10Aと、FPC200と、離型フィルム10Bと、ガラスクロス300Bとを、搬送手段による搬送の際に、この順で重ね合わされた状態をなす積層体とする(図1図2(a)、図3参照。)。
【0041】
なお、各部材(フィルム)を積層体に積層する方法は特に限定されず、例えば、ロールにより押し付けながら積層してもよいし、プレスにより押し付けながら積層してもよい。また、各部材を積層する順番も、任意に行うことが出来る。例えば、すべての部材を同時に積層してもよいし、カバーレイフィルム220とフレキシブル回路基板210とを事前に積層しておき、その後その他の部材を同時に積層してもよい。
【0042】
また、この第1の工程における前記積層体の形成により、本発明の成型品の製造方法における、対象物(FPC200)上に離型フィルム10を配置する工程が構成される。
【0043】
(第2の工程)
次に、ガラスクロス300Aと、離型フィルム10Aと、FPC200と、離型フィルム10Bと、ガラスクロス300Bとが、この順で重ね合わされた積層体を、加熱プレス手段50(加熱圧着部52)を用いて、加熱プレスすることで、FPC200において、フレキシブル回路基板210に対してカバーレイ221(CLフィルム220)を、接着剤層222を介して接合する(加熱プレス工程、図1図2(b)、図3参照。)。
【0044】
この加熱プレス工程において、FPC200を加熱する温度は、特に限定されないが、例えば、100℃以上250℃以下であることが好ましく、150℃以上200℃以下であることがより好ましい。
【0045】
また、加熱プレス工程において、FPC200を加圧する圧力は、特に限定されないが、1MPa以上14MPa以下であることが好ましく、より好ましくは5MPa以上14MPa以下に設定される。
【0046】
さらに、前記積層体を搬送する搬送速度は、特に限定されないが、40mm/sec以上400mm/sec以下であることが好ましく、より好ましくは200mm/sec以上350mm/sec以下に設定される。
【0047】
なお、加熱プレス工程により、本発明の成型品の製造方法における、離型フィルム10が配置された対象物(FPC200)に対し、加熱プレスを行う工程が構成される。また、カバーレイ221(絶縁層)が、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料で構成される場合には、対象物(FPC200)の離型フィルム10が配置される側の面を、カバーレイ221が構成する。そして、このカバーレイ221の表面に、第1離型層1側の表面が接するように離型フィルム10が重ねて用いられているため、離型フィルム10により、凹部223が形成されたカバーレイ221の形状を維持して、熱硬化性樹脂を硬化させ得る。これにより、フレキシブル回路基板210上に、カバーレイ221(成型品)を優れた精度で成型することができる。また、本実施形態においては加熱プレスにより加熱する手段を示したが、必ずしもこの方法に限定されるものではなく、例えば赤外線により加熱してもよいし、加熱ロールによる加熱を行ってもよい。
【0048】
(第3の工程)
次に、離型手段60において、FPC200から離型フィルム10(10A、10B)を離型させる。すなわち、カバーレイフィルム220とフレキシブル回路基板210との接合体から、離型フィルム10Aと離型フィルム10Bとを剥離する。これにより、フレキシブル回路基板210に対してCLフィルム220が接合されているFPC200を得る(図1図2(c)図3参照。)。
【0049】
なお、離型手段60としては、特に限定されず、例えば、外側に真空装置を設置し、真空引きすることで剥離する構成であってもよいし、前記接合体と離型フィルム10A、10Bの間に空気を送り込むことで剥離する構成であってもよいし、接合体と離型フィルム10A、10Bの間に棒を挟みこみ剥離する構成であってもよい。
【0050】
その後、カバーレイフィルム220とフレキシブル回路基板210との接合体、ガラスクロス300A、離型フィルム10A、離型フィルム10B、ガラスクロス300Bをそれぞれの巻取りローラにて巻き取る。
【0051】
このような巻取りにより、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが、CLフィルム220が備える接着剤層222を介して接合されたFPC200が、巻取りローラに巻き取られた状態で連続的に得られることとなる。
【0052】
以上のように、離型フィルム10を用いたロールツーロールプレス機100による、フレキシブルプリント回路基板200の製造方法を適用することで、連続的にフレキシブルプリント回路基板200が製造される。
【0053】
そして、ロールツーロールプレス機100に使用される離型フィルム10として、本発明の離型フィルムが用いられる。すなわち、離型フィルム10として、第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層と、クッション層とを有し、前記第1離型層は、その平均厚さが12μm以上38μm以下であり、離型フィルム全層の180℃における貯蔵弾性率E’が30MPa以上であることを特徴とする離型フィルムが用いられる。
【0054】
離型フィルム10が、かかる構成をなすことで、優れた埋め込み性と離型性との両立がバランス良く発揮された離型フィルムとすることができる。
【0055】
したがって、離型フィルムを、上記の通り、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを用いたFPC200の形成に用いた場合には、前記第2の工程において、FPC200に形成された凹部223に、接着剤層222に由来する接着剤がしみ出すのを的確に抑制または防止することができる。
【0056】
そして、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが、CLフィルム220が備える接着剤層222を介して接合されたFPC200の形成の後に、前記第3の工程において、FPC200から離型フィルム10を剥離させる際に、FPC200に、折れシワおよび破断が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0057】
以下、本発明の離型フィルムが適用された離型フィルム10について説明する。なお、以下では、離型フィルム10が、第1離型層1と、クッション層3と、第2離型層2とがこの順で積層された積層体で構成される場合について説明する。
【0058】
<離型フィルム10>
図4は、本発明の離型フィルムの実施形態を示す縦断面図、図5は、図4に示す離型フィルムのA部を部分的に拡大した部分拡大縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図4図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0059】
図4に示すように、本実施形態において、離型フィルム10は、第1離型層1と、クッション層3と、第2離型層2とがこの順で積層されており、FPC200が備えるCLフィルム220に対して、第1離型層1側の表面が接するように重ねて用いられる。
以下、離型フィルム10を構成する各層について説明する。
【0060】
<第1離型層1>
まず、第1離型層1について説明する。この第1離型層1は、クッション層3の一方の面側に積層されている。
【0061】
第1離型層1は、可撓性を備え、前述した、離型フィルム10を用いたロールツーロールプレス機100による、フレキシブルプリント回路基板200の製造方法において、FPC200が備えるCLフィルム220に対して、この第1離型層1が接触するように、離型フィルム10が重ね合わされる。そして、第1離型層1は、この製造方法の前記第2の工程において、重ね合わされているフレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを、接着剤層222を介して接合する際に、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とで形成される凹部223の形状に追従して、押し込まれる層である。これにより、第1離型層1は、離型フィルム10が破断するのを防止する保護(緩衝)材として機能する。さらに、第1離型層1は、前記第3の工程において、CLフィルム220(FPC200)からの離型フィルム10の優れた離型性を発揮させるための接触層としての機能を有している。
【0062】
第1離型層1は、第1熱可塑性樹脂組成物からなり、この第1熱可塑性樹脂組成物は、離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率E’を30MPa以上に設定し得る組成物であれば、特に限定されないが、主としてポリ4-メチル1-ペンテン樹脂(ポリメチルペンテン;TPX(登録商標))を含有することが好ましい。これにより、前記貯蔵弾性率E’を比較的容易に30MPa以上に設定することができるとともに、第1離型層1に、確実に前述した機能を付与することができる。
【0063】
したがって、離型フィルム10を、上記の通り、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを用いたFPC200の形成に用いた場合には、前記第2の工程において、FPC200に形成された凹部223に、接着剤層222に由来する接着剤がしみ出すのを的確に抑制または防止することができる。
【0064】
そして、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが、CLフィルム220が備える接着剤層222を介して接合されたFPC200の形成の後に、前記第3の工程において、FPC200から離型フィルム10を剥離させる際に、FPC200に、折れシワおよび破断が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0065】
さらに、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂は、260℃、5.0kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が5g/10min以上250g/10min以下であることが好ましく、30g/10min以上200g/10min以下であることがより好ましく、40g/10min以上160g/10min以下であることがさらに好ましい。これにより、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂を用いることにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0066】
なお、第1熱可塑性樹脂組成物は、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂以外の樹脂材料が含まれていてもよく、この樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリ4-メチル1-ペンテン以外のポリオレフィン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレンのようなポリスチレン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
また、第1熱可塑性樹脂組成物は、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂の他に、さらに、無機粒子および有機粒子のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。第1熱可塑性樹脂組成物に上記のような粒子が含まれることで、特に、エアナイフ系の成膜方法を用いた場合において、図5に示すように、第1離型層1のクッション層3と反対側の表面に凹凸形状を有する第1離型層1を成膜することができる。
【0068】
無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウイスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アンチモン酸化物、Eガラス、Dガラス、Sガラス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
また、有機粒子としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン粒子、アクリル粒子、ポリイミド粒子、ポリエステル粒子、シリコーン粒子、ポリプロピレン粒子、ポリエチレン粒子、フッ素樹脂粒子およびコアシェル粒子等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
さらに、無機粒子および有機粒子は、その平均粒子径が3μm以上20μm以下であるのが好ましく、5μm以上20μm以下であるのがより好ましい。これにより、第1離型層1のクッション層3と反対側の表面に、確実に凹凸形状を形成することができる。
【0071】
この凹凸形状を前記表面に有する第1離型層1は、前記表面における10点平均粗さ(Rz)が3μm以上20μm以下であることが好ましく、5μm以上17μm以下であることがより好ましく、7μm以上17μm以下であることがさらに好ましい。これにより、第1離型層1に、より確実に前述した機能を付与することができる。また、前記第2の工程において、FPC200に形成された凹部223に、第1離型層1が押し込まれる際に、フレキシブル回路基板210およびCLフィルム220の表面に、この凹凸形状が転写されるのを的確に抑制または防止することができる。なお、前記10点平均粗さ(Rz)は、JIS B 0601-1994に準拠して測定することができる。
【0072】
かかる構成をなす第1離型層1は、その180℃における貯蔵弾性率E’1が60MPa以上であるのが好ましく、65MPa以上150MPa以下であるのがより好ましく、68MPa以上150MPa以下であるのがさらに好ましく、70MPa以上100MPa以下であるのが特に好ましい。このように、第1離型層1の180℃における貯蔵弾性率E’1を、前記のように設定することで、離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率E’tを比較的容易に30MPa以上に設定することができる。
【0073】
なお、第1離型層1の180℃における貯蔵弾性率E’1は、JIS K7244-4に準拠して、幅4mm、長さ20mmの第1離型層1を用意し、動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、「DMS6100」)を用いて、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minとして測定することで得ることができる。
【0074】
また、この第1離型層1は、本発明では、その平均厚さT1が12μm以上38μm以下に設定され、好ましくは14μm以上36μm以下に、より好ましくは25μm以上36μm以下に設定される。これにより、第1離型層1に、より確実に前述した機能を付与することができるとともに、離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率E’を、確実に30MPa以上に設定することができる。
【0075】
また、第1離型層1の平均厚さをT1[μm]とし、第1離型層1の180℃における貯蔵弾性率E’をE’1[MPa]としたとき、E’1/T1[MPa/μm]は、2.1<E’1/T1<6.0なる関係を満足することが好ましく、2.2<E’1/T1<5.0なる関係を満足することがより好ましく、2.2<E’1/T1<2.9なる関係を満足することがさらに好ましい。これにより、前記貯蔵弾性率E’および第1離型層1の平均厚さを、上記のように設定することにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0076】
なお、第1離型層1の厚さは、上記の通り、第1離型層1のクッション層3と反対側の表面が凹凸形状を有する場合、凸部では凸部を含む位置、また、凹部では凹部を含む位置で、それぞれ、その厚さを測定することとする。
【0077】
また、第1離型層1を構成する第1熱可塑性樹脂組成物には、前述した樹脂材料、無機粒子、有機粒子の他に、結晶核剤、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、着色剤、安定剤のような添加剤が含まれていてもよい。
【0078】
なお、第1熱可塑性樹脂組成物に、結晶核剤が含まれる場合、ポリメチルペンテンの結晶化度の向上を図ることができ、その結果、前記貯蔵弾性率E’を比較的容易に30MPa以上に設定することができる。
【0079】
また、この場合、第1熱可塑性樹脂組成物における、結晶核剤の含有量は、0.1重量%以上2.0重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以上0.8重量%以下であることがより好ましい。
【0080】
<クッション層3>
次に、クッション層3について説明する。このクッション層3は、第1離型層1と第2離型層2との間の中間層として配置されている。
【0081】
クッション層3は、優れた追従性を備えている。前述したように、離型フィルム10を用いたロールツーロールプレス機100による、フレキシブルプリント回路基板200の製造方法において、FPC200が備えるCLフィルム220に対して、第1離型層1が接触するように、離型フィルム10が重ね合わされる。そして、クッション層3は、この製造方法の前記第2の工程において、重ね合わされているフレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを、接着剤層222を介して接合する際に、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とで形成される凹部223の形状に、第1離型層1が追従するように、この第1離型層1を押し込む層であり、クッションとしての機能を有している。また、このクッション層3を離型フィルム10が備えることで、離型フィルム10により、CLフィルム220をフレキシブル回路基板210に対して、均一な圧力で押し付けることができる。
【0082】
クッション層3は、第3熱可塑性樹脂組成物からなり、この第3熱可塑性樹脂組成物は、クッション層3に優れた追従性を付与できるものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂(ポリメチルペンテン;TPX(登録商標))と、このポリ4-メチル1-ペンテン樹脂とは異なるポリオレフィン系樹脂とを含むことが好ましい。これにより、クッション層3に優れた追従性を付与できるとともに、第1離型層1および第2離型層2に対して、クッション層3を優れた密着性を発揮するものとすることができる。
【0083】
この第3熱可塑性樹脂組成物における、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂の含有量は、20重量%以上であることが好ましく、20重量%以上50重量%以下であることがより好ましい。これにより、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂と、ポリオレフィン系樹脂とを含む構成とすることにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0084】
さらに、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂は、260℃、5.0kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が5g/10min以上250g/10min以下であることが好ましく、15g/10min以上200g/10min以下であることがより好ましく、20g/10min以上150g/10min以下であることがさらに好ましい。これにより、前記第2の工程において、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とで形成される凹部223の形状に、第1離型層1が追従するように第1離型層1を押し込む押込み層としての機能を、より確実にクッション層3に付与することができる。
【0085】
また、第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂以外のポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のα-オレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を重合体成分として有するα-オレフィン系共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
また、このクッション層3は、その平均厚さTkが40μm以上110μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以上100μm以下、さらに好ましくは60μm以上85μm以下に設定される。これにより、クッション層3に、より確実に前述した機能を付与することができるとともに、離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率E’を、確実に30MPa以上に設定することができる。
【0087】
なお、クッション層3を構成する第3熱可塑性樹脂組成物には、前述した樹脂材料の他に、前記第1熱可塑性樹脂組成物で挙げたのと同様の添加剤が含まれていてもよい。
【0088】
<第2離型層2>
次に、第2離型層2について説明する。この第2離型層2は、クッション層3の他方の面側、すなわち、クッション層3の第1離型層1と反対の面側に積層されている。
【0089】
第2離型層2は、可撓性を備えている。前述したように、離型フィルム10を用いたロールツーロールプレス機100による、フレキシブルプリント回路基板200の製造方法において、FPC200が備えるCLフィルム220に対して、第1離型層1が接触するように、離型フィルム10が重ね合わされる。そして、第2離型層2は、この製造方法の前記第2の工程において、重ね合わされているフレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを、接着剤層222を介して接合する際に、加熱圧着板521からの力を、クッション層3に伝達する層として機能する。さらに、第2離型層2は、前記第3の工程において、ガラスクロス300A、300Bと離型フィルム10との間で優れた離型性を発揮させるための接触層としての機能を有している。
【0090】
第2離型層2は、第2熱可塑性樹脂組成物からなり、この第2熱可塑性樹脂組成物は、離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率E’を30MPa以上に設定し得る組成物であれば、特に限定されないが、前記第1熱可塑性樹脂組成物と同様に、主としてポリ4-メチル1-ペンテン樹脂(ポリメチルペンテン;TPX(登録商標))を含有することが好ましい。これにより、前記貯蔵弾性率E’を比較的容易に30MPa以上に設定することができるとともに、第2離型層2に、確実に前述した機能を付与することができる。
【0091】
さらに、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂は、260℃、5.0kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が5g/10min以上250g/10min以下であることが好ましく、30g/10min以上200g/10min以下であることがより好ましく、40g/10min以上160g/10min以下であることがさらに好ましい。これにより、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂を用いることにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0092】
なお、第2熱可塑性樹脂組成物は、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂以外の樹脂材料が含まれていてもよく、この樹脂材料としては、前記第1熱可塑性樹脂組成物で挙げたのと同様のものを用いることができる。
【0093】
また、第2熱可塑性樹脂組成物は、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂の他に、さらに、無機粒子および有機粒子のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。第2熱可塑性樹脂組成物に上記のような粒子が含まれることで、特に、エアナイフ系の成膜方法を用いた場合において、図5に示すように、第2離型層2のクッション層3と反対側の表面に凹凸形状を有する第2離型層2を成膜することができる。
【0094】
無機粒子および有機粒子としては、特に限定されないが、前記第1熱可塑性樹脂組成物で挙げたのと同様のものを用いることができる。
【0095】
さらに、無機粒子および有機粒子は、その平均粒子径が3μm以上20μm以下であるのが好ましく、5μm以上20μm以下であるのがより好ましい。これにより、第2離型層2のクッション層3と反対側の表面に、確実に凹凸形状を形成することができる。
【0096】
この凹凸形状を前記表面に有する第2離型層2は、前記表面における10点平均粗さ(Rz)が3μm以上20μm以下であることが好ましく、5μm以上17μm以下であることがより好ましく、7μm以上17μm以下であることがさらに好ましい。これにより、第2離型層2に、より確実に前述した機能を付与することができる。なお、前記10点平均粗さ(Rz)は、JIS B 0601-1994に準拠して測定することができる。
【0097】
かかる構成をなす第2離型層2は、その180℃における貯蔵弾性率E’2が60MPa以上であるのが好ましく、65MPa以上150MPa以下であるのがより好ましく、68MPa以上150MPa以下であるのがさらに好ましく、70MPa以上100MPa以下であるのが特に好ましい。このように、第2離型層2の180℃における貯蔵弾性率E’を、前記のように設定することで、離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率E’を比較的容易に30MPa以上に設定することができる。
【0098】
また、この第2離型層2は、その平均厚さT2が12μm以上38μm以下であることが好ましく、より好ましくは14μm以上36μm以下に設定され、さらに好ましくは25μm以上36μm以下に設定される。これにより、第2離型層2に、より確実に前述した機能を付与することができるとともに、離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率E’を、確実に30MPa以上に設定することができる。
【0099】
なお、第2離型層2を構成する第2熱可塑性樹脂組成物には、前述した樹脂材料、無機粒子、有機粒子の他に、前記第1熱可塑性樹脂組成物で挙げたのと同様の添加剤が含まれていてもよい。
【0100】
また、第1離型層1と第2離型層2とにおいて、第1熱可塑性樹脂組成物と第2熱可塑性樹脂組成物とは、同一であっても異なっていても良いが、代替性を有すると言う観点からは、同一もしくは同質であることが好ましい。さらに、第1離型層1と第2離型層2において、その平均厚さは、同一であっても異なっていてもよい。
【0101】
ここで、本発明では、離型フィルム10が備える第1離型層1の平均厚さT1が12μm以上38μm以下に設定され、かつ、離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率E’tが30MPa以上に設定されている。
【0102】
離型フィルム10を、上記の通り、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを用いたFPC200の形成に用いた際に、前記第2の工程において、FPC200に形成された凹部223に、押し込まれることとなる第1離型層1の平均厚さを前記範囲内に設定し、さらに、離型フィルム10全体としての180℃における貯蔵弾性率E’を前記下限値以上に設定することで、優れた埋め込み性と離型性との両立がバランス良く発揮された離型フィルム10を得ることができる。
【0103】
したがって、離型フィルム10を、上記の通り、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを用いたFPC200の形成に用いた場合には、前記第2の工程において、FPC200に形成された凹部223に、接着剤層222に由来する接着剤がしみ出すのを的確に抑制または防止することができる。
【0104】
具体的には、ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸(回路)を備えるフレキシブル回路基板210に、カバーレイフィルム220(有沢製作所社製、「CMA0525」)を、このカバーレイフィルム220が備える接着剤層222をフレキシブル回路基板210側にして貼付することで形成される積層体に対して、幅270mmの離型フィルム10を、ロールツーロールプレス機100を用いて、180℃、11MPa、120secの条件で押し込み、その後、離型フィルム10の一端を持ち引き剥がした際の、前記積層体の凹部における平面視での接着剤の最大しみ出し量を、好ましくは100μm以下、より好ましくは85μm以下に設定することができる。
【0105】
そして、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが、CLフィルム220が備える接着剤層222を介して接合されたFPC200の形成の後に、前記第3の工程において、FPC200から離型フィルム10を剥離させる際に、FPC200に、折れシワおよび破断が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0106】
具体的には、幅270mmの離型フィルム10を、ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸(回路)を備えるフレキシブル回路基板210に、180℃、11MPa、120secの条件でロールツーロールプレス機100にて加圧貼付して、加圧直後に搬送しつつ、フレキシブル回路基板210と離型フィルム10とを引き剥がしたときに、離型フィルム10にシワが認められない限界引き剥がし速度を、好ましくは100mm/秒以上、より好ましくは150mm/秒以上、さらに好ましくは190mm/秒以上、特に好ましくは250mm/秒以上に設定することができる。
【0107】
上記の通り、前記最大しみ出し量が前記上限値以下に設定され、かつ、前記限界引き剥がし速度が前記下限値以上に設定されることで、離型フィルム10は、優れた埋め込み性と離型性との両立がバランス良く発揮された離型フィルムであると言うことができる。
【0108】
また、離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率E’tは、30MPa以上であればよいが、30MPa以上150MPa以下であることが好ましい。これにより、優れた埋め込み性と優れた離型性との両立がよりバランス良く発揮された離型フィルム10を得ることができる。
【0109】
なお、離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率E’tは、JIS K7244-4に準拠して、幅4mm、長さ20mmの離型フィルム10を用意し、動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、「DMS6100」)を用いて、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minとして測定することで得ることができる。
【0110】
さらに、離型フィルム10の平均厚さTtは、80μm以上180μm以下であることが好ましく、90μm以上160μm以下であることがより好ましい。また、クッション層3の平均厚さTkと第1離型層1の平均厚さT1との関係式であるT1/Tkは、0.5以下であることが好ましく、0.3以上0.4以下であることがより好ましい。これら厚さの関係を満足することにより、優れた埋め込み性と優れた離型性との両立がさらにバランス良く発揮された離型フィルム10を得ることができる。
【0111】
なお、離型フィルム10は、本実施形態では、第1離型層1と、クッション層3と、第2離型層2とが、この順で積層された積層体で構成されるが、かかる構成に限定されず、例えば、第1離型層1とクッション層3との間、および、第2離型層2とクッション層3との間の少なくとも一方に配置された、接着剤層のような中間層を備える積層体で構成されてもよい。
【0112】
また、離型フィルム10は、前記第3の工程において、ガラスクロス300A、300Bと離型フィルム10との間で優れた離型性を維持し得るのであれば、ガラスクロス300A、300Bに接触する第2離型層2が、省略されてもよい。
【0113】
以上、本発明の離型フィルムおよび成型品の製造方法について説明したが、本発明は、これらに限定されない。
【0114】
例えば、前記実施形態では、本発明の離型フィルムを、ロールツーロールプレス機によるフレキシブルプリント回路基板の製造に適用されたロールツーロールプレス用離型フィルムとして用いる場合、すなわち、貫通する凹部を有するカバーレイ(機能層)を、接着剤層を介して、フレキシブル回路基板(基板)に対して、ロールツーロール方式によるプレスにより接合する場合について説明したが、これに限定されない。具体的には、ロールツーロール方式とは異なる、プレス成型法や真空圧空成形法等を用いて、貫通する凹部を有する機能層を、接着剤層を介して基板に対して接合する場合においても、本発明の離型フィルムを用いることができる。
【実施例
【0115】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0116】
1.原材料の準備
離型フィルムを製造するための原材料として、それぞれ、以下の材料を用意した。
【0117】
・熱可塑性樹脂材料
ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂I(4-メチル-1-ペンテン・ヘキサデセン・オクタデセン共重合体、MFR=100g/10min)
ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂II(4-メチル-1-ペンテン・デセン-1共重合体、MFR=180g/10min)
ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂III(4-メチル-1-ペンテン・デセン-1共重合体、MFR=9g/10min、)
ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂IV(4-メチル-1-ペンテン・デセン-1共重合体、MFR=21g/10min)
低密度ポリエチレン(LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製、「R500」)
ポリプロピレン(PP、住友化学社製、「FH1016」)
エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA、住友化学社製、「WD106」)
エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA、三井・ダウポリケミカル社製、「エルバロイAC 1125」)
【0118】
・粒子材料
非晶性シリカ(Si、日鉄ケミカル&マテリアル社製、φ12μm、「SC10-32F」)
アクリルビーズ(総研化学社製、φ10μm、「MZ-10HN」)
【0119】
・結晶核剤
ゲルオールDXR(新日本理化社製)
【0120】
2.離型フィルムの製造
<実施例1>
まず、第1熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物として、それぞれ、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂Iを用意した。また、第3熱可塑性樹脂組成物として、低密度ポリエチレン(R500)50重量部と、ポリプロピレン(FH1016)30重量部と、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂I20重量部とで構成される組成物を用意した。
【0121】
次いで、第1熱可塑性樹脂組成物、第3熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物を用いて、Tダイ内で積層させて、1つの溶融樹脂積層体を形成後、冷却固化して、第1離型層1に、クッション層3と第2離型層2とがこの順で積層された積層体を形成することで実施例1の離型フィルム10を得た。なお、冷却の際、エンボス形状のついた100℃の金属ロールとエンボス形状のついた30℃のゴムロールで、溶融樹脂を挟み込み、冷却しながら凹凸を転写した。
【0122】
なお、得られた離型フィルム10において、第1離型層1の平均厚さT1は25μm、クッション層3の平均厚さTkは70μm、第2離型層2の平均厚さT2は25μmであった。
【0123】
また、離型フィルム10および第1離型層1について、それぞれ、180℃における貯蔵弾性率E’tおよび貯蔵弾性率E’1を、動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、「DMS6100」)を用いて測定したところ34MPaおよび72MPaであった。
【0124】
さらに、第1離型層1および第2離型層2について、それぞれ、クッション層3と反対側で露出する表面における10点平均粗さ(Rz)を、表面粗さ測定装置(ミツトヨ社製、「サーフテスト SJ-210」)を用いて測定したところ15.8μmおよび10.3μmであった。
【0125】
<実施例2~10、比較例1~4>
第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物および第3熱可塑性樹脂組成物として、表1に示す材料を用い、表面10点平均粗さ(Rz)および平均厚さが表1に示すようになっている、第1離型層1、クッション層3および第2離型層2を成膜したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2~10、比較例1~4の離型フィルム10を得た。なお、第1離型層、第2離型層に粒子を含む実施例3、4、9においては、溶融樹脂積層体冷却の際、エンボス形状のついた100℃の金属ロールにエアナイフの風圧で、溶融樹脂を押し当て、フイラーを露出させて凹凸が形成されるように冷却させた。
【0126】
3.評価
各実施例および各比較例の離型フィルム10について、ロールツーロールプレス機100を用いて、以下の評価を行った。
【0127】
3-1.離型フィルムの離型性
各実施例および各比較例の離型フィルム10について、それぞれ、幅270mmに形成した。そして、この離型フィルム10を、ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸を備えるフレキシブル回路基板210に、180℃、11MPa、120secの条件でロールツーロールプレス機100にて加圧貼付して、加圧直後に搬送しつつ、離型手段60が備える離型棒で、フレキシブル回路基板210と離型フィルム10とを引き剥がしたときに、離型フィルム10にシワが認められない限界引き剥がし速度を測定した。
【0128】
3-2.離型フィルムの埋め込み性
各実施例および各比較例の離型フィルム10について、それぞれ、幅270mmに形成した。そして、フレキシブル回路基板210に、カバーレイフィルム220(有沢製作所社製、「CMA0525」)を、このカバーレイフィルム220が備える接着剤層222をフレキシブル回路基板210側にして貼付することで形成される、ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸を備える積層体に対して、この離型フィルム10を、ロールツーロールプレス機100を用いて、180℃、11MPa、120sの条件で押し込み、その後、離型フィルム10の一端を持ち引き剥がした際の、前記積層体の凹部における平面視での接着剤の最大しみ出し量を測定した。
【0129】
3-3.まとめ
前記3-1.離型フィルムの離型性および前記3-2.離型フィルムの埋め込み性において得られた評価結果を表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
表1に示すように、各実施例では、第1離型層1の平均厚さが12μm以上38μm以下であることと、離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率E’tが30MPa以上であることとの双方を満足していた。その結果、前記限界引き剥がし速度が100mm/秒以上、かつ、前記接着剤の最大しみ出し量が100μm以下となっており、優れた埋め込み性と優れた離型性との両立がバランス良く発揮されている結果を示した。
【0132】
これに対して、各比較例では、第1離型層1の平均厚さが12μm以上38μm以下であることと、離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率E’tが30MPa以上であることとの何れか一方を満足していなかった。これにより、前記限界引き剥がし速度が100mm/秒以上であることと、前記接着剤の最大しみ出し量が100μm以下であることとの何れか一方を満足することができず、優れた埋め込み性と優れた離型性との両立がバランス良く発揮されているとは言えない結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明によれば、優れた埋め込み性と、優れた離型性との両立がバランス良く発揮された離型フィルムとすることができる。したがって、離型フィルムを、例えば、フレキシブル回路基板とカバーレイフィルムとを用いたフレキシブルプリント回路基板の形成に用いた場合には、フレキシブルプリント回路基板に形成された凹部において、接着剤がしみ出すのを的確に抑制または防止することができる。そして、フレキシブルプリント回路基板の形成の後に、フレキシブルプリント回路基板から離型フィルムを剥離させる際に、フレキシブルプリント回路基板において、折れシワおよび破断が生じるのを的確に抑制または防止することができる。したがって、本発明は、産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5