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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】ストッカ
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
B65G1/00 511J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022555296
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2021031398
(87)【国際公開番号】W WO2022074953
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020169233
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲イン▼
(72)【発明者】
【氏名】森脇 崇
(72)【発明者】
【氏名】矢河 一馬
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188244(JP,A)
【文献】特開平8-192904(JP,A)
【文献】特開2007-1692(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003753(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00-1/133,1/14-1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行方向に延びる走行経路上を走行するクレーンと、
前記走行経路の延長線上に設けられたメンテナンスエリアと、
前記メンテナンスエリアへ向けて前記クレーンを走行させるコントローラと、
前記クレーンが前記メンテナンスエリアに近接した近接位置に位置するか又は前記メンテナンスエリアに進入した進入位置に位置することを検出する第1センサと、
前記クレーンが前記メンテナンスエリアの停止位置に到達したことを検出する第2センサと、を備え、
前記第1センサは、前記クレーンに給電するためのケーブル部を有するケーブル装置に対応して設けられ、前記ケーブル部の移動を検出することにより、前記クレーンが前記近接位置に位置するか又は前記進入位置に位置することを検出し、
前記第2センサは、前記クレーン及び/又は前記メンテナンスエリアに対応して設けられ、前記クレーンが前記停止位置に到達したことを検出し、
前記コントローラは、前記第1センサの検出結果に応じて前記クレーンを減速制御し、前記第2センサの検出結果に応じて前記クレーンを停止制御する、ストッカ。
【請求項2】
前記ケーブル部は、前記ストッカ内の前記走行方向における中央部に取り付けられた第1端と、前記クレーンに取り付けられた第2端とを含み、
前記第1センサは、前記ケーブル部の前記第1端寄りの被検出部分が前記第1センサの設置位置に存在するか否かに基づいて、前記クレーンが前記近接位置に位置するか又は前記進入位置に位置することを検出する、請求項に記載のストッカ。
【請求項3】
前記走行経路上を走行する第2クレーンを更に備え、
前記クレーンに給電するための前記ケーブル部と前記第2クレーンに給電するための第2ケーブル部とは、前記走行方向に直交する水平な幅方向に離間しており、前記ケーブル部と前記第2ケーブル部との間に前記走行経路が配置されている、請求項又はに記載のストッカ。
【請求項4】
別の走行経路上を走行すると共に前記メンテナンスエリアを前記クレーンと共用する別のクレーンと、
前記別のクレーンが前記メンテナンスエリアの停止位置に到達したことを検出する別の第2センサと、を更に備え、
前記第2センサ及び前記別の第2センサは、前記クレーンの停止位置への到達及び前記別のクレーンの停止位置への到達をそれぞれ独立して検出可能である、請求項1~のいずれか一項に記載のストッカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ストッカに関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1に記載されるように、容器を収納する収納部を複数備えた物品収納棚と、物品収納棚の横に設置されて物品収納棚に沿って移動し、容器を搬送するスタッカクレーンとを備えた物品搬送設備が知られている。スタッカクレーンは、物品搬送設備の内部領域内において、走行レール上を移動方向に走行する。スタッカクレーンのメンテナンス作業を行うための退避用領域が、搬送用領域に並ぶように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-88360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の技術では、退避用領域にスタッカクレーンを移動させるため、退避用移動区間が設定されている。しかしながら、退避用領域へのスタッカクレーンの移動は、種々の作業を伴い、作業者にとって煩わしい。また、作業者が手動でスタッカクレーンを移動させるので、移動に時間を要する。
【0005】
本開示は、クレーンのメンテナンスエリアへの移動を迅速かつ容易に行うことができるストッカを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るストッカは、走行方向に延びる走行経路上を走行するクレーンと、走行経路の延長線上に設けられたメンテナンスエリアと、メンテナンスエリアへ向けてクレーンを走行させるコントローラと、クレーンがメンテナンスエリアに近接した近接位置に位置するか又はメンテナンスエリアに進入した進入位置に位置することを検出する第1センサと、クレーンがメンテナンスエリアの停止位置に到達したことを検出する第2センサと、を備え、コントローラは、第1センサの検出結果に応じてクレーンを減速制御し、第2センサの検出結果に応じてクレーンを停止制御する。
【0007】
このストッカによれば、コントローラは、クレーンを制御し、走行経路の延長線上に設けられたメンテナンスエリアに向けて、クレーンを走行させる。このときのクレーンの走行速度は、クレーンメンテナンスエリアに近接するまでは、可能な限り大きい走行速度とされ得る。クレーンが近接位置に位置するか又は進入位置に位置することが第1センサによって検出されると、コントローラによって、クレーンが減速制御される。その後、クレーンがメンテナンスエリアの停止位置に到達したことが第2センサによって検出されると、コントローラによって、クレーンが停止制御される。このように、メンテナンスエリアに近接又は進入するまではクレーンは大きな走行速度で移動し、メンテナンスエリア内では減速する。更にクレーンは停止位置で自動的に停止する。したがって、このストッカによれば、クレーンのメンテナンスエリアへの移動を迅速かつ容易に行うことができる。
【0008】
第1センサは、クレーンに給電するためのケーブル部を有するケーブル装置に対応して設けられ、ケーブル部の移動を検出することにより、クレーンが近接位置に位置するか又は進入位置に位置することを検出し、第2センサは、クレーン及び/又はメンテナンスエリアに対応して設けられ、クレーンが停止位置に到達したことを検出してもよい。この場合、第1センサと第2センサの設置位置を離すことができ、両センサの設置位置の自由度を高めることができる。
【0009】
ケーブル部は、ストッカ内の走行方向における中央部に取り付けられた第1端と、クレーンに取り付けられた第2端とを含み、第1センサは、ケーブル部の第1端寄りの被検出部分が第1センサの設置位置に存在するか否かに基づいて、クレーンが近接位置に位置するか又は進入位置に位置することを検出してもよい。この場合、第1センサは、第1端寄りの被検出部分の存在又は不在に基づいて、クレーンが近接位置に位置するか又は進入位置に位置することを検出する。第1端はストッカ内の中央部に取り付けられているので、第1センサも中央部付近に設けられる。メンテナンスエリアには種々の機器が設置されるが、メンテナンスエリアの辺りに第1センサを設置しなくて済む。ストッカ内の中央部はメンテナンスエリアに比べてスペースに余裕があり、第1センサの設置位置の自由度を高めることができる。また、この第1センサは、クレーンがストッカ内のメインエリアに位置する(例えば、通常運転を行っている)ことを検出するために用いることもできる。
【0010】
ストッカは、走行経路上を走行する第2クレーンを更に備え、クレーンに給電するためのケーブル部と第2クレーンに給電するための第2ケーブル部とは、走行方向に直交する水平な幅方向に離間しており、ケーブル部と第2ケーブル部との間に走行経路が配置されてもよい。この構成によれば、2本のケーブル部が、走行経路の両側(幅方向の両側)に配置される。よって、2つの第1センサを走行経路の両側に分散して配置することができ、全体としてストッカをコンパクトにすることができる。
【0011】
ストッカは、別の走行経路上を走行すると共にメンテナンスエリアをクレーンと共用する別のクレーンと、別のクレーンがメンテナンスエリアの停止位置に到達したことを検出する別の第2センサと、を更に備え、第2センサ及び別の第2センサは、クレーンの停止位置への到達及び別のクレーンの停止位置への到達をそれぞれ独立して検出可能であってもよい。この構成によれば、第2センサ及び別の第2センサは、2つのクレーンの停止位置への到達をそれぞれ検出するにあたり、互いに干渉しない。それぞれの第2センサは、検出対象ではないクレーンの移動に影響されることなく、停止位置に関する正確な検出が可能である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、クレーンのメンテナンスエリアへの移動を迅速かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るストッカを示す正面図である。
図2図2は、図1のストッカに設けられるクレーンを示す斜視図である。
図3図3は、操作装置、コントローラ及びクレーンの概略構成を示すブロック図である。
図4図4は、クレーンの移動範囲と、ケーブル部の位置及び姿勢を示す正面図である。
図5図5は、レール(走行経路)と2台のクレーンの配置を示す平面図である。
図6図6は、レール、2台のクレーン及び2本のケーブル部の配置を示す斜視図である。
図7図7は、ケーブル装置に対応して設けられた第1センサを示す斜視図である。
図8図8(a)及び図8(b)はクレーンの下部における第2センサの配置を示す平面図であり、図8(a)は第1クレーンがメンテナンスエリアの一方から進入する状態を示し、図8(b)は第2クレーンがメンテナンスエリアの他方から進入する状態を示す。
図9図9(a)及び図9(b)はクレーンの上部における第2センサの配置を示す平面図であり、図9(a)は第1クレーンがメンテナンスエリアの一方から進入する状態を示し、図9(b)は第2クレーンがメンテナンスエリアの他方から進入する状態を示す。
図10図10(a)~図10(c)は、操作装置を用いたクレーンのメンテナンスエリアへの移動操作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に示されるように、本実施形態のストッカ1は、例えば、左ストッカ2及び右ストッカ3を備える。このように、ストッカ1は、所定方向に配列された複数のストッカを備える。ストッカ1が、単一のストッカを備えてもよい。ストッカ1では、左ストッカ2及び右ストッカ3のそれぞれの内部をスタッカクレーン7が走行する。ストッカ1では、左ストッカ2及び右ストッカ3のそれぞれの内部に設けられた複数の棚Sと入出庫ポート(図示せず)との間でスタッカクレーン7が物品を搬送する。左ストッカ2及び右ストッカ3には、例えば、スタッカクレーン7によって搬送されてきた物品が保管される。物品は、例えば、半導体製造装置又は液晶製造装置等で処理されるウエハを収容するFOUP(Front-Opening Unified Pod)、及び半導体製造装置又は液晶製造装置等で用いられるレチクルを収容するレチクルポッド等の容器である。ストッカ1は、例えば、窒素パージ機能を搭載したストッカであってもよい。
【0015】
ストッカ1では、左ストッカ2及び右ストッカ3が、スタッカクレーン7の走行方向に配列されている。ストッカ1では、左ストッカ2及び右ストッカ3の内部に、それぞれ、2台のスタッカクレーン7が配備さている。左ストッカ2は、例えば一対のラック4、左第1スタッカクレーン7A及び左第2スタッカクレーン7Bを備える。右ストッカ3は、例えば一対のラック4、右第1スタッカクレーン7C及び右第2スタッカクレーン7Dを備える。左ストッカ2及び右ストッカ3は、例えば、ラック4の大きさが異なる点を除き、同様の構成を備える。そのため、以下の説明では、左ストッカ2に関する説明がなされる一方で、同様の構成を備えた右ストッカ3に関する説明は省略される場合がある。また、「スタッカクレーン」は「クレーン」と称される。便宜上、各スタッカクレーン7の走行方向をX方向とし、鉛直方向をZ方向とし、X方向及びZ方向と直交する水平な方向をY方向(幅方向)として、以下、ストッカ1の詳細を説明する。
【0016】
左ストッカ2は、例えば中空の直方体状に形成されている。左ストッカ2には、左第1クレーン7A及び左第2クレーン7Bが走行する1本の走行レール31と、走行レール31とZ方向に対向するように配置された1本の補助レール32と、がX方向に沿って敷設されている。左第1クレーン7A及び左第2クレーン7Bは、走行レール31及び補助レール32に沿って走行(移動)する。すなわち、左第1クレーン7A及び左第2クレーン7Bは、X方向に延びる走行経路T上を走行する。左第1クレーン7A及び左第2クレーン7Bは、棚Sと入出庫ポートとの間で物品を搬送し、棚Sに対して物品の移載を行う搬送装置である。各ラック4は、左ストッカ2内においてX方向に沿って設けられている。一対のラック4が、走行レール31を介して互いに向かい合うように配置されている。各ラック4には、物品が収容される棚Sが複数設けられている。
【0017】
図2に示されるように、各クレーン7は、走行部71、マスト72、移載部75及び補助走行部90を備える。走行部71は、走行用モータ78及び昇降用モータ82を有する。走行部71は、走行レール31に沿って走行する。走行部71は、走行レール31の上面に沿って転動する駆動輪を含む。走行用モータ78は、走行用駆動輪の駆動源である。昇降用モータ82は、昇降台73の駆動源である。走行用モータ78及び昇降用モータ82を収容するハウジング(図示せず)が設けられてもよい。マスト72は、走行部71の上部にZ方向に立設されている。移載部75は、棚Sとの間で物品を移載すると共に、入出庫ポートとの間で物品を移載する。補助走行部90は、補助レール32に沿って走行する。補助走行部90は、補助レール32を挟み込んだ状態で転動する一対の駆動輪を含む。コントローラ30(図3参照)によって走行用モータ78が制御されることにより、各クレーン7は走行経路T上を走行する。走行用モータ78は、例えばサーボモータであり、コントローラ30によって、任意の回転速度に制御可能である。これにより、コントローラ30は、走行用モータ78を制御して、クレーン7を任意の走行速度で走行させることができる。なお、クレーン7に設けられる走行用モータは、他の制御可能なアクチュエータであってもよい。
【0018】
図1に示されるように、ストッカ1では、走行経路Tの延長線上に、クレーン7等のメンテナンス作業を行うための複数のメンテナンスエリアが設けられている。より詳細には、左ストッカ2は、X方向においてラック4の両側に配置された左メンテナンスエリアM1と中央メンテナンスエリアM2とを備える。右ストッカ3は、X方向においてラック4の両側に配置された中央メンテナンスエリアM2と右メンテナンスエリアM3とを備える。各メンテナンスエリアには梯子及び足場等(いずれも図示せず)が設置されている。作業者は、各メンテナンスエリアにおいてクレーン7のメンテナンスを行うと共に、ラック4の前に設置されるメンテナンスステップ等の上で棚Sのメンテナンス等を行うことができる。メンテナンスエリアは「メンテナンスドック」とも呼ばれる。
【0019】
左メンテナンスエリアM1、中央メンテナンスエリアM2、及び右メンテナンスエリアM3のそれぞれには、いずれかのクレーン7を収容することができる。左ストッカ2では、走行レール31上で左第1クレーン7Aを移動させて、左第1クレーン7Aを左メンテナンスエリアM1に収容することができ、走行レール31上で左第2クレーン7Bを移動させて、左第2クレーン7Bを中央メンテナンスエリアM2に収容することができる(図4参照)。右ストッカ3では、走行レール31上で右第1クレーン7Cを移動させて、右第1クレーン7Cを中央メンテナンスエリアM2に収容することができ、走行レール31上で右第2クレーン7Dを移動させて、右第2クレーン7Dを右メンテナンスエリアM3に収容することができる。このように、中央メンテナンスエリアM2は、左ストッカ2及び右ストッカ3において共用される。中央メンテナンスエリアM2には、一方側(図1に示す左側)から左第2クレーン7Bが進入可能であり、他方側(図1に示す右側)から右第1クレーン7Cが進入可能である。中央メンテナンスエリアM2は、左第2クレーン7B又は右第1クレーン7Cのいずれか1台を収容することができる。そのため、左ストッカ2の走行レール31及び補助レール32と、右ストッカ3の走行レール31及び補助レール32は、それぞれ、一直線状に連結されている(図8及び図9参照)。なお、中央メンテナンスエリアM2が、左第2クレーン7B及び右第1クレーン7Cの両方(2台)を収容することもできる。その場合は、左第2クレーン7Bも右第1クレーン7Cも、後述する停止位置P2には到達できない。
【0020】
図3及び図10に示されるように、各クレーン7は、例えば作業者が操作装置50を操作することにより、コントローラ30によって制御されて、走行経路T上を移動し、いずれかのメンテナンスエリアに進入する。ストッカ1では、クレーン7のメンテナンスエリアへの移動は、操作装置50のボタンを1回押すのみで、自動的に行われる。なお、ストッカ1が窒素パージ機能を搭載する場合には、ラック4が設置されるメインエリアMA(内部空間)の気密性を保つため、メンテナンスエリアとメインエリアMAとの間の褄面5に、扉等が設置される。クレーン7を移動させてメンテナンスエリアに引き出す(移動させる)際は、まず褄面5の扉を開き、下部に設けられたストッパ等を取り外して、操作装置50の操作を行う。
【0021】
続いて、図4図7を参照して、クレーン7の移動範囲と、クレーン7に対する給電に係る構成について説明する。図4図6に示されるように、左ストッカ2は、左第1クレーン7Aに給電するための第1ケーブル装置8Aと、左第2クレーン7Bに給電するための第2ケーブル装置8Bとを備える。第1ケーブル装置8Aは、左第1クレーン7Aの走行部71に接続された第1ケーブル部10Aを有する。第2ケーブル装置8Bは、左第2クレーン7Bの走行部71に接続された第2ケーブル部10Bを有する。以下、いずれのクレーン7にも同様に設けられたケーブル装置8及びケーブル部10の構成について詳細に説明する。
【0022】
図7に示されるように、ケーブル部10は、クレーン7に給電するためのケーブル部10と、ケーブル部10の接地部分(後述する下段部10z)を案内および保持するケーブルガイド20と、ケーブル部10の持ち上がり部分(後述する上段部10x)を支持するガイドローラ40とを有する。図4に示されるように、ケーブル部10は、左ストッカ2のX方向における中央部25に取り付けられた第1端10aと、クレーン7に取り付けられた第2端10bとを含む。ケーブル部10は、クレーン7の移動に応じて追従して移動する。ケーブル部10は、長尺の形状を呈する。ケーブル部10は、クレーン7からX方向の一方側に延びる上段部10xと、上段部10xからU字状に下方へ折り返すように延びるU字部10yと、U字部10yからX方向の他方側に延びる下段部10zとを含む。ケーブル部10は、クレーン7がX方向の一方側又は他方側に移動した場合、それに伴って第2端10b及びU字部10yが一方側又は他方側にストローク(移動)するように可動する。ケーブル部10の移動に伴って上段部10x及び下段部10zのX方向における長さは変化するが、上段部10xは常に第2端10bを含み、下段部10zは常に第1端10aを含む。
【0023】
ケーブル部10は、電力ケーブル11及び保護案内部材15を有する。電力ケーブル11は、クレーン7に接続されると共に、ストッカ2内の電源部(図示せず)に接続される。これにより、クレーン7は、電力ケーブル11を介して電源部から給電される。電力ケーブル11としては特に限定されず、種々の形状又は仕様のケーブルを用いることができる。
【0024】
保護案内部材15は、電力ケーブル11を内部に収容し、電力ケーブル11を保護する。これと共に、保護案内部材15は、クレーン7の移動に電力ケーブル11が追従して移動するように当該電力ケーブル11を案内する。保護案内部材15は、ケーブル収容部を構成する。保護案内部材15は、可動端及び固定端を有する。第2端10bの一部を構成する可動端は、クレーン7の走行部71に接続されている。第1端10aの一部を構成する固定端は、ストッカ2の架台9(図5及び図7参照)に取り付けられている。保護案内部材15は、Y方向に沿った軸線回りの方向のみに曲がるように構成されている。保護案内部材15としては特に限定されず、種々の形状又は仕様の部品を用いることができる。
【0025】
図7に示されるように、ケーブルガイド20は、走行レール31と平行にX方向に延びるように設けられ、ケーブル部10の下段部10zを収容するガイド体21を有する。ガイド体21は、上方に向けて開放された断面U字状の部材であり、下段部10zを支持しつつ、下段部10zのY方向における位置がずれないように案内する。ガイド体21は、中央部25から、ケーブル部10が接続されるクレーン7とは反対側へ延在するように設けられている。例えば、図4に示される第2ケーブル装置8Bにおいて、ケーブルガイド20のガイド体21は、中央部25から、左メンテナンスエリアM1の手前まで延在している。なお、図4図6では、ケーブルガイド20の図示は省略されている。
【0026】
ガイドローラ40は、X方向に所定の間隔をあけて配置された複数のローラ41を有する。各ローラ41は、例えば、Y方向に沿った軸線回りに回転可能である。各ローラ41は、ステー42等を介して架台9に取り付けられている。ガイドローラ40は、クレーン7の移動に伴って、移動する上段部10xをX方向にスムーズに案内すると共に、上段部10xを下方から支持する。なお、図6では、ローラ41のみが図示されており、架台9やステー42等の図示は省略されている。
【0027】
図5に示されるように、左ストッカ2において、第1ケーブル装置8Aと第2ケーブル装置8Bとは、Y方向に離間している。第1ケーブル部10Aと第2ケーブル部10Bとは、Y方向に離間している。第1ケーブル部10Aと第2ケーブル部10Bとの間に、走行経路Tすなわち走行レール31が配置されている。第1ケーブル部10Aを支持する架台9、及び、第2ケーブル部10Bを支持する架台9は、第1ケーブル部10A及び第2ケーブル部10Bよりも外側(Y方向において走行レール31から離れる側)に配置されている。図6に示されるように、Y方向に離間して平行に延びる第1ケーブル部10A及び第2ケーブル部10Bは、互いに干渉することなく、走行レール31(走行経路T)の両側の別々の空間内を移動する。
【0028】
図4及び図5に示されるように、左第2クレーン7Bは、X方向の略全域において走行可能(移動可能)であり、ラック4のすべての(又は大部分の)棚Sにアクセス可能である。左第2クレーン7Bは、メインエリアMAの略全域と、中央メンテナンスエリアM2とに移動可能である。左第1クレーン7Aも、同様に、X方向の略全域において走行可能(移動可能)であり、ラック4のすべての(又は大部分の)棚Sにアクセス可能である。左第1クレーン7Aは、メインエリアMAの略全域と、左メンテナンスエリアM1とに移動可能である。図5に示される例では、左第2クレーン7Bが中央メンテナンスエリアM2に収納されており、左第1クレーン7Aが左メンテナンスエリアM1に収納されている。なお、左第1クレーン7Aと左第2クレーン7Bとは同一の走行レール31上を走行するので、これらの左右の位置関係は不変である。
【0029】
本実施形態の左ストッカ2では、図4に示されるように、ケーブル部10のU字部10yは、中央部25から左ストッカ2のX方向の外側に向けて開放するように設けられている。U字部10yは、常にメインエリアMA内に位置する。クレーン7が、収納されるメンテナンスエリアから最も遠ざかった状態においては、U字部10yの先端は、他方のメンテナンスエリア(当該クレーン7は収納されないメンテナンスエリア)には達しない。例えば、左第2クレーン7Bは、中央メンテナンスエリアM2から最も遠ざかった状態、すなわち図4において仮想線で示される最も左に位置する状態においては、U字部10yの先端は左メンテナンスエリアM1には入ってない。第2ケーブル部10Bは、左第2クレーン7Bがどのような位置にあっても、U字部10yが左メンテナンスエリアM1には重複しないように構成されている。左第1クレーン7A、第2ケーブル部10B、及び中央メンテナンスエリアM2の関係においても、同様のことが言える。左第2クレーン7B及び左第1クレーン7Aは、いずれも、左ストッカ2内の稼働範囲の全体における搬送をカバーする。
【0030】
本実施形態の左ストッカ2は、クレーン7に対するメンテナンス作業をする際等に、クレーン7をメンテナンスエリアに自動的に引き出せる(すなわち移動させる)ことができるように構成されている。複数のセンサがクレーン7の位置を検出することにより、クレーン7の速度が段階的に制御され、結果としてクレーン7の引出し(移動)が迅速に行われる。以下、クレーンの引出し時の走行制御に係る構成について説明する。
【0031】
図7に示されるように、左ストッカ2は、左第2クレーン7Bが中央メンテナンスエリアM2に進入した進入位置P1(図8参照)に位置することを検出する第1センサ6を備える。また図8に示されるように、左ストッカ2は、左第2クレーン7Bが中央メンテナンスエリアM2の停止位置P2に到達したことを検出する下第2センサ74及び上第2センサ94を備える。
【0032】
図7に示されるように、第1センサ6は、クレーン7に給電するためのケーブル部10に対応(ケーブル部10を検出)するように設けられている。第1センサ6は、例えば、ガイド体21内の隅部21aに設置される。第1センサ6は、第1端10a寄りに設定されたケーブル部10の被検出部分10dが載ることで没入し、当該被検出部分10dの存在を検出するスイッチ部6aを含む。クレーン7が通常運転を行っている場合等においてメインエリアMA内に位置する間、第1センサ6は被検出部分10dの存在を検出し続けている。クレーン7がメンテナンスエリアに進入した進入位置P1(図8参照)に到達した際、被検出部分10dは第1センサ6から離れ、スイッチ部6aが内部のバネ等の付勢力を受けて突出し、第1センサ6は被検出部分10dの不在を検出する。このようにして、第1センサ6は、クレーン7に接続されたケーブル部10の移動を検出することにより、クレーン7が進入位置P1に位置することを検出する。第1センサ6は、被検出部分10dが第1センサ6の設置位置に存在するか否かに基づいて、クレーン7がメインエリアMA内に位置することを検出でき、さらには、クレーン7が進入位置P1に位置することも検出できる。この第1センサ6が採用される場合、被検出部分10dは、単にケーブル部10(保護案内部材15)の一部であり、他の部分と同じ構成を有する(別途の部材等は付加されていない)。被検出部分10dは、ケーブル部10を設計する際に、進入位置P1に対応する適宜の位置に設定され、被検出部分10dが載置される位置に第1センサ6が設置される。本実施形態では、第1センサ6は、左ストッカ2の中央部25に設置されている(図5も参照)。なお、「ケーブル部10の第1端10a寄り」とは、被検出部分10dから第1端10aまでの距離が、少なくとも、被検出部分10dから第2端10b(クレーン7)までの距離よりも短いことを意味する。
【0033】
図8(a)に示されるように、下第2センサ74は、左第2クレーン7B(クレーン7)の走行部71に取り付けられている。下第2センサ74は、中央メンテナンスエリアM2(メンテナンスエリア)内に取り付けられたドグ84に対して近接(又は当接)することで、左第2クレーン7Bが中央メンテナンスエリアM2内の停止位置P2に到達したことを検出する。また、図9(a)に示されるように、上第2センサ94は、左第2クレーン7B(クレーン7)の補助走行部90に取り付けられている。上第2センサ94は、中央メンテナンスエリアM2(メンテナンスエリア)内に取り付けられたドグ86に対して近接(又は当接)することで、左第2クレーン7Bが中央メンテナンスエリアM2内の停止位置P2に到達したことを検出する。このように下第2センサ74及び上第2センサ94は、左第2クレーン7B(クレーン7)に対して設けられている。下第2センサ74及び上第2センサ94としては、光電センサが用いられてもよいし、リミットスイッチ、近接センサ、渦電流式変位センサ、レーザーセンサ等が用いられてもよい。
【0034】
本実施形態の左ストッカ2では、中央メンテナンスエリアM2が、左第2クレーン7Bと右第1クレーン7C(別のクレーン)によって共用される。右第1クレーン7Cの引出し時の走行制御に係る構成について説明すると、図8(b)に示されるように、上記と同様の構成を有する下第2センサ74(別の第2センサ)が、右第1クレーン7C(クレーン7)の走行部71に取り付けられている。下第2センサ74は、中央メンテナンスエリアM2(メンテナンスエリア)内に取り付けられたドグ85に対して近接(又は当接)することで、右第1クレーン7Cが中央メンテナンスエリアM2内の停止位置P2に到達したことを検出する。また、図9(b)に示されるように、上記と同様の構成を有する上第2センサ94(別の第2センサ)が、右第1クレーン7C(クレーン7)の補助走行部90に取り付けられている。上第2センサ94は、中央メンテナンスエリアM2(メンテナンスエリア)内に取り付けられたドグ87に対して近接(又は当接)することで、右第1クレーン7Cが中央メンテナンスエリアM2内の停止位置P2に到達したことを検出する。このように下第2センサ74及び上第2センサ94は、右第1クレーン7C(クレーン7)に対応して設けられている。
【0035】
中央メンテナンスエリアM2の下部においては、図8(a)及び図8(b)に示されるように、ドグ84及びドグ85は、X方向に離間して並列するように設けられている。ドグ84及びドグ85の間に、中央メンテナンスエリアM2のセンターラインCLが配置されている。ドグ84を検出することによる左第2クレーン7Bの位置検出動作と、ドグ85を検出することによる右第1クレーン7Cの位置検出動作とが、互いに干渉しないようになっている。すなわち、左第2クレーン7B及び右第1クレーン7Cにおける下第2センサ74の配置と、ドグ84及びドグ85の配置は、左第2クレーン7B及び右第1クレーン7Cが停止位置P2に到達したときに、互いに離れており影響を与えない。なお、本実施形態の引出し時の走行制御には用いられないが、左第2クレーン7Bの位置を検出するための下エンコーダ76及び位置検出用ラック102と、右第1クレーン7Cの位置を検出するための下エンコーダ76及び位置検出用ラック103も、センターラインCLの両側に分離して配置されており、X方向に離間している。左第2クレーン7B及び右第1クレーン7Cが停止位置P2に到達したときに、左第2クレーン7Bの下エンコーダ76及び位置検出用ラック102と、右第1クレーン7Cの下エンコーダ76及び位置検出用ラック103は、互いに干渉しないようになっている。
【0036】
中央メンテナンスエリアM2の上部においては、図9(a)及び図9(b)に示されるように、ドグ86及びドグ87は、X方向に離間して並列するように設けられている。ドグ86及びドグ87の間に、中央メンテナンスエリアM2のセンターラインCLが配置されている。ドグ86を検出することによる左第2クレーン7Bの位置検出動作と、ドグ87を検出することによる右第1クレーン7Cの位置検出動作とが、互いに干渉しないようになっている。すなわち、左第2クレーン7B及び右第1クレーン7Cにおける上第2センサ94の配置と、ドグ86及びドグ87の配置は、左第2クレーン7B及び右第1クレーン7Cが停止位置P2に到達したときに、互いに離れており影響を与えない。なお、本実施形態の引出し時の走行制御には用いられないが、左第2クレーン7Bの位置を検出するための上エンコーダ96及び位置検出用ラック104と、右第1クレーン7Cの位置を検出するための上エンコーダ96及び位置検出用ラック105も、センターラインCLの両側に分離して配置されており、X方向に離間している。左第2クレーン7B及び右第1クレーン7Cが停止位置P2に到達したときに、左第2クレーン7Bの上エンコーダ96及び位置検出用ラック104と、右第1クレーン7Cの上エンコーダ96及び位置検出用ラック105は、互いに干渉しないようになっている。
【0037】
中央メンテナンスエリアM2における左第2クレーン7B及び右第1クレーン7Cの走行制御を別の観点から説明すると、図8及び図9に示されるように、中央メンテナンスエリアM2内において、左第2クレーン7Bの停止位置P2と右第1クレーン7Cの停止位置P2は、異なっている。左第2クレーン7Bがその停止位置P2に至るまでの走行軌跡と右第1クレーン7Cがその停止位置P2に至るまでの走行軌跡は、重複している。図8(a)及び図9(a)に示される左第2クレーン7Bの停止位置P2は、左第2クレーン7Bの平面視における中心がセンターラインCLを越えて中央メンテナンスエリアM2の右ストッカ3に近い端部(図示右側の端部)に位置する。しかし、左第2クレーン7Bの下第2センサ74と上第2センサ94は、左第2クレーン7Bの停止位置P2に到達するまでの間、右第1クレーン7C用のドグ85,87から常に一定以上の距離を保っている。すなわち下第2センサ74と上第2センサ94によりドグ85,87は検出されない。同様に、図8(b)及び図9(b)に示される右第1クレーン7Cの停止位置P2は、左第2クレーン7Bの平面視における中心がセンターラインCLを越えて中央メンテナンスエリアM2の左ストッカ2に近い端部(図示左側の端部)に位置する。しかし、右第1クレーン7Cの下第2センサ74と上第2センサ94は、右第1クレーン7Cの停止位置P2に到達するまでの間、左第2クレーン7B用のドグ84,86から常に一定以上の距離を保っている。すなわち下第2センサ74と上第2センサ94によりドグ84,86は検出されない。
【0038】
下第2センサ74及び上第2センサ94が、走行部71及び補助走行部90の端部(収容される中央メンテナンスエリアM2とは反対側の端部)に設けられているので、このような干渉の回避が容易に実現されている。なお、下エンコーダ76及び上エンコーダ96の配置に関しても、同様である。これらのエンコーダは走行部71及び補助走行部90の端部(収容される中央メンテナンスエリアM2とは反対側の端部)に設けられている。
【0039】
このように、左第2クレーン7Bの下第2センサ74及び右第1クレーン7Cの下第2センサ74は、左第2クレーン7Bの停止位置P2への到達及び右第1クレーン7Cの停止位置P2への到達をそれぞれ独立して検出可能である。左第2クレーン7Bの上第2センサ94及び右第1クレーン7Cの上第2センサ94は、左第2クレーン7Bの停止位置P2への到達及び右第1クレーン7Cの停止位置P2への到達をそれぞれ独立して検出可能である。
【0040】
続いて、図3及び図10を参照して、操作装置50を用いたクレーン7の引出し操作(移動操作、移動制御方法)について説明する。図3に示されるように、操作装置50は、操作部51と表示部52と通信部53とを有する。操作装置50は、作業者が容易にクレーン7を操作できるように、例えばタブレットのような端末であってもよい。操作部51は、例えば表示部52に設けられたタッチパネル等である。表示部52は、例えば液晶ディスプレイ等である。通信部53は、無線通信又は有線通信により、コントローラ30と情報通信可能である。上位のコントローラであるコントローラ30は、例えば各メンテナンスエリアに設けられてもよいし、クレーン7の走行部71等に搭載されてもよい。コントローラ30は、CPU(プロセッサ)、ROM及びRAM等によって構成された電子制御ユニットである。コントローラ30は、走行用モータ78を含むクレーン7の各部を制御する。
【0041】
作業者は、まず、クレーン7のメンテナンス作業を行う場合、ストッカ1を停止させる。例えば、左第1クレーン7A、左第2クレーン7B、右第1クレーン7C、及び右第2クレーン7Dのすべてが停止する。続いて、いずれか1台のクレーン7を、対応するメンテナンスエリアに移動させる。例えば、左第2クレーン7Bを中央メンテナンスエリアM2に移動させる場合を例に挙げて説明する。作業者は、左第2クレーン7Bに対応した操作装置50において、操作装置50の表示部52に表示されている「メンテナンスドックへの移動」と書かれた操作部51を指で押す。あるいは、操作装置50を用いて、移動させるクレーン7を選択できるように、操作装置50が構成されてもよい。
【0042】
操作部51が指で押されると、コントローラ30は走行用モータ78を制御して、左第2クレーン7Bを走行させる。このとき、コントローラ30は、中央メンテナンスエリアM2に他のクレーン(この場合は右第1クレーン7C)が存在しないことを条件として、左第2クレーン7Bを走行させる。コントローラ30は、クレーン7の走行速度に関する少なくとも2種類の指示値を記憶している。1つは、クレーン7がメインエリアMA内のある地点からある地点まで移動する際に適用され得る通常の走行速度に対応する指示値である。この通常の走行速度は、移動距離に応じて、コントローラ30によって演算により求められてもよい。移動距離は、クレーン7の現在位置から進入位置P1までの距離として演算が行われるが、その場合、コントローラ30は、下エンコーダ76及び上エンコーダ96からの出力信号に基づいて、左第2クレーン7Bの現在位置を認識し、進入位置P1までの移動距離を求める。コントローラ30は、通常の走行速度に対応する指示値を走行用モータ78に向けて出力し、左第2クレーン7Bを中央メンテナンスエリアM2に向けて走行させる。この状態で、第2ケーブル部10Bは第1センサ6上に載っており、スイッチ部6aが没入している。第1センサ6は、被検出部分10dの存在を検出する。図10(b)に示されるように、操作装置50は、表示部52において「移動中」のランプが例えば点滅することにより、作業者に、クレーン7が移動中であることを報知する。
【0043】
コントローラ30は、通常の走行速度よりも遅い減速制御時の第2走行速度に対応する指示値を記憶している。左第2クレーン7Bが中央メンテナンスエリアM2に進入した進入位置P1(図8参照)に到達すると、第2ケーブル部10Bの被検出部分10dが第1センサ6から離れてスイッチ部6aが突出する。第1センサ6は、被検出部分10dの不在を検出する。コントローラ30は、第1センサ6から、左第2クレーン7Bが進入位置P1(図8(a)参照)に位置する旨の検出信号が入力されると、走行用モータ78の回転速度を低下させ、左第2クレーン7Bを減速制御する。第2走行速度は、通常の走行速度の半分以下であってもよいし、5分の1以下であってもよいし、10分の1以下であってもよい。第2走行速度は、クレーン7の大きさ(高さ)、重量又は中央メンテナンスエリアM2の大きさ等に基づいて、定められてもよい。このように、コントローラ30は、第1センサ6の検出結果に応じて左第2クレーン7Bを減速制御する。このときも、図10(b)に示されるように、操作装置50は、表示部52において例えば「移動中」のランプが点滅することにより、作業者に、クレーン7が移動中であることを報知する。減速制御を行っている最中は、例えばランプの点滅間隔を比較的長くする等により、作業者に、クレーン7が低速で移動中であることを報知してもよい。
【0044】
続いて、左第2クレーン7Bが中央メンテナンスエリアM2の停止位置P2(図8(a)及び図9(a)における仮想線参照)に到達すると、下第2センサ74がドグ84に対して近接(又は当接)すると共に、上第2センサ94がドグ86に対して近接(又は当接)する。コントローラ30は、下第2センサ74から、左第2クレーン7Bが停止位置P2に到達した旨の検出信号が入力されると、走行用モータ78を停止させ、左第2クレーン7Bを停止制御する。また、コントローラ30は、上第2センサ94から、左第2クレーン7Bが停止位置P2に到達した旨の検出信号が入力されると、補助走行部90の図示しない走行用モータを停止させ、左第2クレーン7Bを停止制御する。なお、コントローラ30は、下第2センサ74及び上第2センサ94の少なくとも一方から左第2クレーン7Bが停止位置P2に到達した旨の検出信号が入力されたときに、左第2クレーン7Bを停止制御してもよい。このように、コントローラ30は、下第2センサ74及び/又は上第2センサ94の検出結果に応じて左第2クレーン7Bを停止制御する。図10(c)に示されるように、操作装置50は、表示部52において例えば「移動完了」のランプが点滅することにより、作業者に、クレーン7の引出し(移動)が完了したことを報知する。
【0045】
以上一連の制御により、左第2クレーン7Bが中央メンテナンスエリアM2の停止位置P2まで引き出される(移動させられる)。左第2クレーン7Bの引出し操作を例として説明したが、他のクレーン7に関しても、コントローラ30は同様の引出し制御を行う。右第1クレーン7Cの引出し制御を行う場合は、上述したとおり、ドグ84及びドグ86は位置検出に関与せず、ドグ85及びドグ87によって右第1クレーン7Cの停止位置P2への到達が検出される。なお、左メンテナンスエリアM1及び右メンテナンスエリアM3に関しては、それぞれ1つの方向のみから左第1クレーン7A及び右第2クレーン7Dを受け入れるだけなので、それぞれ1つのドグが設けられる。
【0046】
本実施形態のストッカ1によれば、コントローラ30は、クレーン7を制御し、走行経路Tの延長線上に設けられたメンテナンスエリアに向けて、クレーン7を走行させる。このときのクレーン7の走行速度は、通常の走行速度とされる。クレーン7が進入位置P1に位置することが第1センサ6によって検出されると、コントローラ30によって、クレーン7が減速制御される。その後、クレーン7がメンテナンスエリアの停止位置P2に到達したことが下第2センサ74及び/又は上第2センサ94によって検出されると、コントローラ30によって、クレーン7が停止制御される。このように、メンテナンスエリアに進入するまではクレーン7は比較的大きな走行速度で移動し、メンテナンスエリア内では減速する。更にクレーン7は停止位置P2で自動的に停止する。このような二段階の変速を行うストッカ1によれば、クレーン7のメンテナンスエリアへの移動を迅速かつ容易に行うことができる。クレーン7はメンテナンスエリア内では低速で移動するので、安全性も保たれている。
【0047】
従来、重量のあるクレーンを手動で(人力で)メンテナンスエリアへ引き出す場合、作業者が、補助輪を出して走行ブレーキを解除し、クレーンを移動させていた。手押しによる移動は時間を要し、作業者への負担も大きかった。また、移動を完了させても、メンテナンスエリア内の停止位置にクレーンが正しく停止しているかは不明であり、プラットフォームを閉じて確認する必要があった。本実施形態のストッカ1によれば、従来の問題点が解消されている。クレーン7は走行用モータ78によって移動するので、迅速であり、作業者への負担も小さい。クレーン7が確実に停止位置P2で停止する。
【0048】
第1センサ6はケーブル装置8に対応して設けられ、下第2センサ74及び/又は上第2センサ94はクレーン7に対応して設けられる。第1センサ6と、下第2センサ74及び/又は上第2センサ94の設置位置を離すことができ、両センサの設置位置の自由度を高めることができる。
【0049】
第1センサ6は、ケーブル部10の第1端10a寄りの被検出部分10dの存在又は不在に基づいて、クレーン7が進入位置P1に位置する又は位置しないことを検出する。第1端10aは左ストッカ2内の中央部に取り付けられているので、第1センサ6も中央部付近に設けられる(図5参照)。メンテナンスエリアには種々の機器が設置されるが、メンテナンスエリアの辺りに第1センサ6を設置しなくて済む。左ストッカ2内の中央部はメンテナンスエリアに比べてスペースに余裕があり、第1センサ6の設置位置の自由度を高めることができる。また、第1センサ6は、被検出部分10dの存在を検出することにより、クレーン7がメインエリアMAに位置していること(例えば、ストッカ1内で通常運転を行っていること)を検出するために用いることもできる。
【0050】
第1ケーブル部10Aと第2ケーブル部10Bとの間に走行経路Tが配置されている。言い換えると、第1ケーブル部10Aと第2ケーブル部10Bが、走行経路Tの両側(Y方向の両側)に配置される。よって、2つの第1センサ6を走行経路Tの両側に分散して配置することができ、全体としてストッカをコンパクトにすることができる。しかも、第1センサ6は、ガイド体21の内部に設けられているので、大型化が抑制されている。
【0051】
中央メンテナンスエリアM2において、左第2クレーン7Bの下第2センサ74及び右第1クレーン7Cの下第2センサ74は、左第2クレーン7Bの停止位置P2への到達及び右第1クレーン7Cの停止位置P2への到達をそれぞれ独立して検出可能である。左第2クレーン7Bの上第2センサ94及び右第1クレーン7Cの上第2センサ94は、左第2クレーン7Bの停止位置P2への到達及び右第1クレーン7Cの停止位置P2への到達をそれぞれ独立して検出可能である。それぞれの第2センサ74,94は、検出対象ではないクレーンの移動に影響されることなく、検出対象であるクレーンにおいて停止位置P2に関する正確な検出が可能である。
【0052】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、クレーン7において、上部の走行部(上記実施形態の補助走行部90)が省略されてもよい。補助レール32及び補助走行部90が省略されて、クレーン7が、走行レール31上のみを走行してもよい。左ストッカ2または右ストッカ3が、単一のクレーン7とラック4を備えてもよい。その場合に、1つのストッカに対し、単一のメンテナンスエリアが設けられてもよい。
【0053】
減速制御の契機となるクレーン7の位置は、進入位置P1に限られない。第1センサ6は、ケーブル装置8に対応して設けられ、ケーブル部10の移動を検出することにより、クレーン7がメンテナンスエリアに近接した近接位置に位置することを検出してもよい。詳細には、第1センサ6は、被検出部分10dが第1センサ6の設置位置に存在するか否かに基づいて、クレーン7がメンテナンスエリアに近接した近接位置に位置するか位置しないことを検出してもよい。近接位置では、クレーン7はメンテナンスエリアに到達していないが、クレーン7とメンテナンスエリアとの距離が所定の距離以下になっている。その場合、被検出部分10dは、近接位置に対応する適宜の位置に設定され、被検出部分10dが載置される位置に第1センサ6が設置される。第1センサ6は、左ストッカ2の中央部25(又は中央部25付近)に設置されるが、上記実施形態の第1センサ6の位置よりも、クレーン7が収容されるメンテナンスエリアから遠い位置に設置される。
【0054】
クレーン7がメンテナンスエリアに近接した近接位置に位置するか又はメンテナンスエリアに進入した進入位置に位置することを検出する第1センサは、上記実施形態とは異なる構成を有してもよい。クレーン7が停止位置P2に到達したことを検出するための第2センサは、上記実施形態とは異なる構成を有してもよい。例えば、メンテナンスエリアに対して第2センサが設けられ、クレーン7に対してドグが設けられてもよい。第1センサ及び第2センサとして、下エンコーダ76及び/上エンコーダ96が用いられてもよい。クレーン7の位置を、エンコーダではなくバーコード及びバーコードリーダ等によって検出してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…ストッカ、2…左ストッカ、3…右ストッカ、6…第1センサ、7…スタッカクレーン(クレーン)、7A…左第1スタッカクレーン(クレーン)、7B…左第2スタッカクレーン(クレーン、第2クレーン)、7C…右第1スタッカクレーン(別のクレーン)、7D…右第2スタッカクレーン(クレーン)、8…ケーブル装置、8A…第1ケーブル装置、8B…第2ケーブル装置、10…ケーブル部、10a…第1端、10b…第2端、10A…第1ケーブル部、10B…第2ケーブル部、11…電力ケーブル、15…保護案内部材、20…ケーブルガイド、25…中央部、30…コントローラ、31…走行レール、32…補助レール、40…ガイドローラ、41…ローラ、71…走行部、74…下第2センサ、78…走行用モータ、90…補助走行部、94…上第2センサ、M1…左メンテナンスエリア、M2…中央メンテナンスエリア、M3…右メンテナンスエリア、P1…進入位置、P2…停止位置、T…走行経路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10