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特許7283647ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物及びガラス繊維強化樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物及びガラス繊維強化樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/097 20060101AFI20230523BHJP
   C03C 3/064 20060101ALI20230523BHJP
   C03C 13/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
C03C3/097
C03C3/064
C03C13/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023507226
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2022040584
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2022032970
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】栗田 忠史
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】野中 貴史
(72)【発明者】
【氏名】平山 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】鵜沼 英郎
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-503233(JP,A)
【文献】特開平04-228455(JP,A)
【文献】国際公開第2020/256143(WO,A1)
【文献】特開2021-178764(JP,A)
【文献】特開2022-021666(JP,A)
【文献】特開昭52-107015(JP,A)
【文献】特開昭54-139624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
C08J 5/04
H05K 1/03
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維用ガラス組成物であって、
全量に対し、36.0質量%以上48.0質量%未満の範囲のSiOと、18.0質量%以上32.0質量%以下の範囲のBと、12.0質量%以上24.0質量%以下の範囲のAlと、2.5質量%以上8.9質量%以下の範囲のPと、合計で5.0質量%以上13.0質量%以下の範囲のCaO及びMgOとを含むことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
【請求項2】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SiOの含有率S、前記Pの含有率P、前記CaOの含有率C及び前記MgOの含有率Mが、次式(1-1)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
0.38≦(C+M)/(S/P)≦1.52 ・・・(1-1)
【請求項3】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SiOの含有率S、前記Bの含有率B、前記Alの含有率A、前記Pの含有率P、前記CaOの含有率C及び前記MgOの含有率Mが、次式(2-1)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
0.91≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦2.31 ・・・(2-1)
【請求項4】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、B、A、P、C及びMが、次式(2-2)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
0.92≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦2.24 ・・・(2-2)
【請求項5】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、B、A、P、C及びMが、次式(2-3)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
0.93≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦1.92 ・・・(2-3)
【請求項6】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラスフィラメントを含むことを特徴とする、ガラス繊維。
【請求項7】
請求項6記載のガラス繊維において、前記ガラスフィラメントのフィラメント径が3.0μm未満であることを特徴とする、ガラス繊維。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載のガラス繊維からなることを特徴とする、ガラス繊維織物。
【請求項9】
請求項6又は請求項7記載のガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維強化樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物及びガラス繊維強化樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス繊維強化樹脂成形品、とりわけガラス繊維織物を含むプリント配線板において軽薄短小化が進んでおり、それに合わせてガラス長繊維においても、極めて細いものが求められるようになってきている。そのため、今後、ガラス長繊維においても生体溶解性が重要な特性になっていくと考えられる。そこで、本発明者らは、生体溶解性を備え、長繊維化が可能な、ガラス繊維用ガラス組成物を提案している(特願2020-213162号明細書参照)。
【0003】
一方、ガラス繊維強化樹脂成形品は、近年、電子機器の筐体又は部品に用いられることが増えているが、一般に、ガラスは交流電流に対してエネルギーを熱として吸収するので、前記ガラス繊維強化樹脂成形品を前記電子機器の筐体又は部品に用いると、該筐体又は部品が発熱するという問題がある。
【0004】
ここで、ガラスに吸収される誘電損失エネルギーWはガラスの成分及び構造により定まる誘電率ε及び誘電正接tanδに比例し、次式(A)で表される。
W=kfv×ε1/2×tanδ ・・・(A)
【0005】
式(A)において、kは定数、fは周波数、vは電位傾度を表す。式(A)から、誘電率ε及び誘電正接tanδが大きい程、また周波数fが高い程、誘電損失が大きくなり、前記ガラス繊維強化樹脂成形品の発熱が大きくなることがわかる。
【0006】
近年、前記電子機器に用いられる交流電流の周波数(前記式(A)のf)が高まっていることを受けて、誘電損失エネルギーWを低減するために、前記電子機器の筐体又は部品に用いられるガラス繊維として、より低い誘電率ε及びより低い誘電正接tanδを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6927463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特願2020-213162号明細書記載のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラスフィラメントを含むガラス繊維は、生体溶解性を備え、長繊維化が可能である。しかしながら、前記ガラス繊維は、高周波の影響を受ける環境下におかれるガラス繊維強化樹脂成形品に用いられる場合には、十分に低い誘電正接を備えることができないという不都合がある。
【0009】
本発明は、かかる不都合を解消して、生体溶解性を備え、長繊維化が可能であり、しかも低い誘電正接を備えるガラスフィラメントを含むガラス繊維を得ることができるガラス繊維用ガラス組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、前記ガラス繊維用ガラス組成物から形成されるガラス繊維、該ガラス繊維を含むガラス繊維織物及びガラス繊維強化樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、全量に対し、36.0質量%以上48.0質量%未満の範囲のSiOと、18.0質量%以上32.0質量%以下の範囲のBと、12.0質量%以上24.0質量%以下の範囲のAlと、2.5質量%以上8.9質量%以下の範囲のPと、合計で5.0質量%以上13.0質量%以下の範囲のCaO及びMgOとを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成を備えることで、ガラス繊維としたときに、生体溶解性を備え、長繊維化が可能であり、しかも低い誘電正接を備えることができる。
【0012】
なお、ここで、ガラス繊維が生体溶解性を備えるとは、後述の方法で測定される、SiとBとAlとCaとの合計溶出速度が110μg/h以上であることを意味する。また、ガラス繊維の長繊維化が可能であるとは、後述の方法で測定される、1000ポイズ温度と液相温度との差として算出される、作業温度範囲が30℃以上であることを意味する。
また、ガラス繊維が低い誘電正接を備えるとは、測定周波数10GHzにおける誘電正接が0.0030未満であることを意味する。
【0013】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成を備えるガラス繊維用ガラス組成物において、前記SiOの含有率S、前記Pの含有率P、前記CaOの含有率C及び前記MgOの含有率Mが、次式(1-1)を満たすことが好ましい。
0.38≦(C+M)/(S/P)≦1.52 ・・・(1-1)
【0014】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成を備え、前記S、P、C及びMが、前記式(1-1)を満たすことにより、より確実に、ガラス繊維としたときに、生体溶解性を備え、長繊維化が可能であり、しかも低い誘電正接を備えることができる。
【0015】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成において、前記SiOの含有率S、前記Bの含有率B、前記Alの含有率A、前記Pの含有率P、前記CaOの含有率C及び前記MgOの含有率Mが、次式(2-1)を満たすことが好ましい。
0.91≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦2.31 ・・・(2-1)
【0016】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成において、前記S、B、A、P、C及びMが、前記式(2-1)を満たすことにより、ガラス繊維としたときに、生体溶解性を備え、長繊維化が容易であり、しかも低い誘電正接を備えることができる。
【0017】
なお、ここで、ガラス繊維の長繊維化が容易であるとは、後述の方法で測定される、1000ポイズ温度と液相温度との差として算出される、作業温度範囲が100℃以上であることを意味する。
【0018】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成を備えるガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、B、A、P、C及びMが、次式(2-2)を満たすことが好ましい。
0.92≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦2.24 ・・・(2-2)
【0019】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成を備えるガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、B、A、P、C及びMが、前記式(2-2)を満たすことにより、ガラス繊維としたときに、生体溶解性を備え、長繊維化が容易であり、しかも低い誘電正接を備えることができ、さらに、優れた耐水性を備えることができる。
【0020】
なお、ここで、ガラス繊維が優れた耐水性を備えるとは、80℃の水中に繊維サンプルを24時間浸漬させた際の試験後の質量減少率が1.0質量%未満であることを意味する。
【0021】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成を備えるガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、B、A、P、C及びMが、次式(2-3)を満たすことが好ましい。
0.93≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦1.92 ・・・(2-3)
【0022】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成を備えるガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、B、A、P、C及びMが、前記式(2-3)を満たすことにより、ガラス繊維としたときに、生体溶解性を備え、長繊維化が容易であり、しかも低い誘電正接を備えることができ、さらに、優れた耐水性を備えることができ、分相の発生を抑制することができる。
【0023】
なお、ここで、ガラス繊維の分相の発生を抑制することができるとは、誘電率測定用のバルク外観を観察した際に、透明又は若干白濁はあるがほぼ透明であることを意味する。
【0024】
また、本発明のガラス繊維は、前記いずれかのガラス繊維用ガラス組成物からなるガラスフィラメントを含むことを特徴とする。本発明のガラス繊維は、前記ガラスフィラメントのフィラメント径が3.0μm未満であることが好ましい。
【0025】
また、本発明のガラス繊維織物は前記ガラス繊維からなることを特徴とする。
【0026】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は前記ガラス繊維を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0028】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量に対し、36.0質量%以上48.0質量%未満の範囲のSiOと、18.0質量%以上32.0質量%以下の範囲のBと、12.0質量%以上24.0質量%以下の範囲のAlと、2.5質量%以上8.9質量%以下の範囲のPと、合計で5.0質量%以上13.0質量%以下の範囲のCaO及びMgOとを含む。
【0029】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成を備えることにより、ガラス繊維としたときに、生体溶解性を備え、長繊維化が可能であり、しかも低い誘電正接を備えることができる。
【0030】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対し、SiOが36.0質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の強度、及び、弾性率が低下し、樹脂との複合材料に用いたときに、樹脂を補強する効果が不十分になる。一方、全量に対し、SiOが48.0質量%以上であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の生体溶解性を低下させる可能性がある。
【0031】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対するSiOの含有量は、好ましくは、37.0質量%以上47.9質量%以下の範囲であり、より好ましくは、38.0質量%以上47.4質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、39.0質量%以上45.0質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、39.5質量%以上44.9質量%以下の範囲であり、殊に好ましくは、40.0質量%以上44.8質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、40.5質量%以上44.4質量%以下の範囲である。
【0032】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対し、Bが、18.0質量%未満であると溶融ガラスの失透温度が高くなり、長繊維化が困難になる可能性があり、また、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の生体溶解性が低下する可能性がある。一方、全量に対し、Bが、32.0質量%超であると、溶融ガラスに分相が発生し、長繊維化が困難になる。
【0033】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対するBの含有量は、好ましくは、20.5質量%以上29.4質量%以下の範囲であり、より好ましくは、21.0質量%以上28.0質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、21.5質量%以上27.0質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、21.8質量%以上25.9質量%以下の範囲であり、殊に好ましくは、22.0質量%以上24.9質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、23.0質量%以上24.4質量%以下の範囲である。
【0034】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対し、Alが12.0質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の強度、及び、弾性率が低下し、樹脂との複合材料に用いたときに、樹脂を補強する効果が不十分になる。一方、全量に対し、Alが24.0質量%超であると、溶融ガラスの失透温度が高くなり、長繊維化が困難になる可能性がある。
【0035】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対するAlの含有量は、好ましくは、14.0質量%以上23.0質量%以下の範囲であり、より好ましくは、15.0質量%以上22.0質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、16.0質量%以上21.0質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、17.0質量%以上20.5質量%以下の範囲であり、殊に好ましくは、17.5質量%以上20.3質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、18.1質量%以上19.9質量%以下の範囲である。
【0036】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対し、Pが2.5質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接の低減と、長繊維化を可能にすることの両立ができなくなる。一方、全量に対し、Pが8.9質量%超であると、液相温度の上昇により作業温度範囲が小さくなり、長繊維化が困難になる可能性がある。
【0037】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対するPの含有量は、好ましくは、2.7質量%以上8.5質量%以下の範囲であり、より好ましくは、2.9質量%以上8.3質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、3.1質量%以上8.1質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、4.0質量%以上7.9質量%以下の範囲であり、殊に好ましくは、5.0質量%以上7.7質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、5.5質量%以上7.5質量%以下の範囲である。
【0038】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対し、CaO及びMgOの合計が5.0質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の生体溶解性が低下する可能性がある。一方、全量に対し、CaO及びMgOの合計が、13.0質量%超であると溶融ガラスの失透温度が高くなり、長繊維化が困難になる可能性がある。
【0039】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対するCaO及びMgOの合計含有率は、好ましくは、5.5質量%以上11.0質量%以下の範囲であり、より好ましくは、5.7質量%以上10.0質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、5.8質量%以上9.0質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、6.0質量%以上8.5質量%以下の範囲であり、殊に好ましくは、6.5質量%以上8.0質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、6.7質量%以上7.5質量%以下の範囲である。
【0040】
ここで、全量に対するCaOの含有率は、例えば、2.0質量%以上8.0質量%以下の範囲であり、好ましくは、2.5質量%以上7.5質量%以下の範囲であり、より好ましくは、3.0質量%以上7.0質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、3.5質量%以上6.5質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、4.0質量%以上6.0質量%以下の範囲であり、殊に好ましくは、4.2質量%以上5.8質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、4.5質量%以上5.5質量%以下の範囲である。
【0041】
また、全量に対するMgOの含有率は、例えば、5.0質量%以下の範囲であり、好ましくは、0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲であり、より好ましくは、0.8質量%以上3.5質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、1.0質量%以上3.0質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、1.1質量%以上2.9質量%以下の範囲であり、殊に好ましくは、1.3質量%以上2.7質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、1.5質量%以上2.5質量%以下の範囲である。
【0042】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、好ましくは、前記SiOの含有率S、前記Pの含有率P、前記CaOの含有率C及び前記MgOの含有率Mが、次式(1-1)を満たす。
0.38≦(C+M)/(S/P)≦1.52 ・・・(1-1)
【0043】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成を備え、前記S、P、C及びMが、前記式(1-1)を満たすことにより、より確実に、ガラス繊維としたときに、生体溶解性を備え、長繊維化が可能であり、しかも低い誘電正接を備えることができる。
【0044】
ここで、式(1-1)中、「C+M」が高い程、長繊維化が容易になり、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の生体溶解性が高まるが、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接が高くなる傾向にある。一方、「S/P」の値が高い程、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接が低くなるが、長繊維化が困難になり、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の生体溶解性が低くなる傾向にある。式(1-1)は、これらの傾向の拮抗により、ガラス繊維としたときに、生体溶解性を備え、長繊維化が可能であり、しかも低い誘電正接を備える範囲を表現しているものと推定される。
【0045】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は前記S、P、C及びMが、より好ましくは、次式(1-2)を満たし、さらに好ましくは、次式(1-3)を満たす。
0.55≦(C+M)/(S/P)≦1.50 ・・・(1-2)
0.87≦(C+M)/(S/P)≦1.36 ・・・(1-3)
【0046】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、好ましくは、前記組成において、前記SiOの含有率S、前記Bの含有率B、前記Alの含有率A、前記Pの含有率P、前記CaOの含有率C及び前記MgOの含有率Mが、例えば、次式(2-0)を満たすことにより、生体溶解性を備え、長繊維化が可能であり、低い誘電正接をより確実に備えることができる。
0.77 ≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦ 2.43 ・・・(2-0)
【0047】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成において、前記S、B、A、P、C及びMが、より好ましくは次式(2-1)を満たし、さらに好ましくは、次式(2-2)を満たし、中でも好ましくは、次式(2-3)を満たし、とりわけ好ましくは次式(2-4)を満たし、特に好ましくは、次式(2-5)を満たし、殊に好ましくは、式(2-6)を満たし、最も好ましくは、式(2-7)を満たす。
0.91≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦2.31 ・・・(2-1)
0.92≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦2.24 ・・・(2-2)
0.93≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦1.92 ・・・(2-3)
0.97≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦1.61 ・・・(2-4)
0.97≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦1.41 ・・・(2-5)
1.10≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦1.41 ・・・(2-6)
1.22≦(S/P)×(C+M)/(A+B)≦1.41 ・・・(2-7)
【0048】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記式(2-5)を満たすことで、ガラス繊維としたときに、より優れた生体溶解性を備え、長繊維化が容易であり、しかも低い誘電正接を備えることができ、さらに、優れた耐水性を備えることができ、分相の発生を抑制することができる。ここで、より優れた生体溶解性を備えるとは、SiとBとAlとCaとの合計溶出速度が120μg/h以上であることを意味する。
【0049】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記式(2-6)を満たすことで、ガラス繊維としたときに、より優れた生体溶解性を備え、長繊維化が容易であり、しかも低い誘電正接及び低い誘電率を備えることができ、さらに、優れた耐水性を備えることができ、分相の発生を抑制することができる。ここで、低い誘電率を備えるとは、測定周波数10GHzにおける誘電率が4.50以下であることを意味する。
【0050】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記組成において、前記S、B、A、C及びMが、好ましくは次式(3)を満たし、より好ましくは、次式(4)を満たし、さらに好ましくは、次式(5)を満たし、特に好ましくは次式(6)を満たす。
4.0≦S×(C+M)/(A+B)<11.3 ・・・(3)
5.9≦S×(C+M)/(A+B)≦9.9 ・・・(4)
6.6≦S×(C+M)/(A+B)<9.2 ・・・(5)
6.6≦S×(C+M)/(A+B)<8.3 ・・・(6)
【0051】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、TiOを含んでいてもよく、TiOを含む場合に全量に対するTiOの含有率は、例えば、3.0質量%以下の範囲であり、好ましくは、1.0質量%以下の範囲であり、より好ましくは、0.4質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.2質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、0.1質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、0.001質量%以下の範囲である。
【0052】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの脱泡性を高めて、長繊維化の安定性を高めるという観点からは、Feを含んでもよい。Feを含む場合に全量に対するFeの含有率は、例えば、3.0質量%以下の範囲であり、好ましくは、1.0質量%以下の範囲であり、より好ましくは、0.4質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.2質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、0.1質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、0.001質量%以下の範囲である。
【0053】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの溶融粘度を低減させて長繊維化を容易とするという観点からは、ZrOを含んでもよい。ZrOを含む場合に全量に対するZrOの含有率は、例えば、3.0質量%以下の範囲であり、好ましくは、1.0質量%以下の範囲であり、より好ましくは、0.4質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.2質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、0.1質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、0.001質量%以下の範囲である。
【0054】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの脱泡性を高めて、長繊維化の安定性を高めるという観点からは、F及びClを含んでもよい。F及びClを含む場合に全量に対するF及びClの含有率は、合計で、例えば、3.0質量%以下の範囲であり、好ましくは、1.0質量%以下の範囲であり、より好ましくは、0.4質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.2質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、0.1質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、0.001質量%以下の範囲である。
【0055】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの失透温度の上昇を抑えて長繊維化を容易にするという観点からはSnOを含んでいてもよい。SnOを含む場合に全量に対するSnOの含有率は、例えば、3.0質量%以下の範囲であり、好ましくは、1.0質量%以下の範囲であり、より好ましくは、0.4質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.2質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、0.1質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、0.001質量%以下の範囲である。
【0056】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの失透温度の上昇を抑えて長繊維化を容易にするという観点からはZnOを含んでいてもよい。ZnOを含む場合に全量に対するZnOの含有率は、例えば、3.0質量%以下の範囲であり、好ましくは、1.0質量%以下の範囲であり、より好ましくは、0.4質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.2質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、0.1質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、0.001質量%以下の範囲である。
【0057】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量に対する、SiO、B、Al、CaO、MgO及びPの合計含有量が、例えば、91.0質量%以上であり、好ましくは、95.0質量%以上であり、より好ましくは、98.0質量%以上であり、さらに好ましくは、99.0質量%以上であり、とりわけ好ましくは、99.3質量%であり、特に好ましくは、99.5質量%以上であり、殊に好ましくは、99.7質量%以上であり、最も好ましくは、99.9質量%以上である。
【0058】
さらに、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、原材料に起因する不純物として、Li、K、Na、Ba、Mn、Co、Ni、Cu、Cr、Mo、W、Ce、Y、La、Bi、Gd、Pr、Sc、又は、Ybの酸化物を合計で、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、合計で3.0質量%未満の範囲で含んでもよく、好ましくは2.0質量%未満の範囲で含んでもよく、より好ましくは1.0質量%未満の範囲で含んでもよい。特に本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物が、不純物として、LiO、KO、NaO、BaO、CeO、Y、La、Bi、Gd、Pr、Sc、又はYb、含む場合、その含有量はそれぞれ独立に0.40質量%未満の範囲であることが好ましく、0.20質量%未満の範囲であることがより好ましく、0.10質量%未満の範囲であることがさらに好ましく、0.05質量%未満の範囲であることが特に好ましく、0.01質量%未満の範囲であることが最も好ましい。
【0059】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前述した各成分の含有率の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて行うことができる。また、その他の元素の含有率の測定は、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。
【0060】
測定方法としては、次の方法を挙げることができる。初めに、ガラスバッチを白金ルツボに入れ、電気炉中で、1550℃の温度に、4時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。あるいは、ガラス繊維を白金ルツボに入れ、電気炉中で、1600℃の温度に、4時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。
【0061】
前記ガラスバッチは、ガラス原料を混合して調合したものである。また、前記ガラス繊維は、ガラス繊維表面に有機物が付着している場合、又は、ガラス繊維が有機物(樹脂)中に主に強化材として含まれている場合には、例えば、300~650℃の範囲の温度のマッフル炉で0.5~24時間程度の範囲の時間加熱する等して、有機物を除去してから用いる。
【0062】
次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、該ガラスカレットを粉砕し粉末化してガラス粉末を得る。
【0063】
次に、軽元素であるLiについては前記ガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素は前記ガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。波長分散型蛍光X線分析装置を用いた定量分析は、具体的には、ファンダメンタルパラメーター法によって測定した結果をもとに検量線用試料を作製し、検量線法により分析することができる。なお、検量線用試料における各成分の含有量は、ICP発光分光分析装置によって定量分析することができる。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を算出し、これらの数値から前述した各成分の含有率(質量%)を求めることができる。
【0064】
次に、本実施形態のガラス繊維は、前記本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラスフィラメントを含む。
【0065】
本実施形態のガラス繊維は、以下のようにして製造される。初めに、ガラス原料となる鉱石に含まれる成分と各成分の含有率、及び、溶融過程における各成分の揮発量に基づき、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の組成となるように、ガラス原料を調合する。次に、調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給し、例えば、1450~1600℃の範囲の温度で溶融する。次に、溶融されたガラスバッチ(溶融ガラス)を所定の温度に制御された、ブッシングの1~20000個の範囲の個数のノズルチップから引き出して、急冷することで、ガラスフィラメントを形成する。
【0066】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記ガラス繊維の製造のために、前記範囲の温度で溶融された際に、作業温度範囲ΔTが30℃以上であることにより長繊維化が可能であり、ΔTが100℃以上であるあることにより長繊維化が容易になる。作業温度範囲ΔTは、1000ポイズ温度と液相温度から、ΔT=1000ポイズ温度-液相温度、により算出される。
【0067】
ここで、1個のノズルチップ又は孔から吐出され、冷却・固化されたガラス単繊維(ガラスフィラメント)は、通常、真円形の断面形状を有し、3.0μm未満の範囲の直径(フィラメント径)を有することが好ましい。一方、前記ノズルチップが、非円形形状を有し、溶融ガラスを急冷する突起部や切欠部を有する場合には、温度条件を制御することで、非円形(例えば、楕円形、長円形)の断面形状を有するガラスフィラメントを得ることができる。ガラスフィラメントが楕円形又は長円形の断面形状を有する場合、断面積を真円に換算したときの繊維径(換算繊維径)が3.0μm未満の範囲であることが好ましい。なお、前記フィラメント径の下限値は、例えば、0.5μmであり、好ましくは、1.0μmであり、より好ましくは2.0μmである。
【0068】
次に、形成されたガラスフィラメントに、塗布装置であるアプリケーターを用いて集束剤又はバインダーを塗布し、集束シューを用いて、1~20000本の範囲のガラスフィラメントを集束させながら、巻取り機を用いて、チューブに高速で巻取ることで、ガラス繊維を得ることができる。
【0069】
本実施形態のガラス繊維は、ガラスフィラメントの集束性の向上、ガラス繊維と樹脂との接着性の向上、ガラス繊維と樹脂又は無機材料中との混合物中におけるガラス繊維の均一分散性の向上等を目的として、その表面を有機物で被覆されてもよい。このような有機物としては、デンプン、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン(特にカルボン酸変性ポリプロピレン)、(ポリ)カルボン酸(特にマレイン酸)と不飽和単量体との共重合体等を挙げることができる。また、本実施形態のガラス繊維は、これらの樹脂に加えて、シランカップリング剤、潤滑剤、界面活性剤等を含む樹脂組成物で被覆されていてもよい。
【0070】
また、本実施形態のガラス繊維は、上記の樹脂を含まず、シランカップリング剤、界面活性剤等を含む処理剤組成物で被覆されていてもよい。このような樹脂組成物又は処理剤組成物は、樹脂組成物又は処理剤組成物に被覆されていない状態の本実施形態のガラス繊維の質量を基準として、0.03~2.0質量%の割合で、ガラス繊維を被覆する。なお、有機物によるガラス繊維の被覆は、例えば、ガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて樹脂溶液又は樹脂組成物溶液をガラス繊維に付与し、その後、樹脂溶液又は樹脂組成物溶液が付与されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。また、有機物によるガラス繊維の被覆は、織物の形態をとる本実施形態のガラス繊維を、処理剤組成物溶液中に浸漬し、その後処理剤組成物が付与されたガラス繊維を乾燥させることで行うこともできる。
【0071】
ここで、シランカップリング剤としては、アミノシラン、ウレイドシラン、クロロシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリルシラン、フェニルシラン、スチリルシラン、イソシアネートシラン等を挙げることができる。
【0072】
前記アミノシランとしては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0073】
前記ウレイドシランとしては、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等)、クロロシラン(γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0074】
前記エポキシシランとしては、β-(3,4 -エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0075】
前記メルカプトシランとしては、γ-メルカプトトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0076】
前記ビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0077】
前記(メタ)アクリルシランとしては、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0078】
前記フェニルシランとしては、フェニルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0079】
前記スチリルシランとしては、p-スチリルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0080】
前記イソシアネートシランとしては、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0081】
本実施形態では、前記シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0082】
潤滑剤としては、変性シリコーンオイル、動物油及びこの水素添加物、植物油及びこの水素添加物、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物系ワックス、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物、ポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミンアルキルアマイド誘導体、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0083】
前記動物油としては、牛脂等を挙げることができる。
【0084】
前記植物油としては、大豆油、ヤシ油、ナタネ油、パーム油、ひまし油等を挙げることができる。
【0085】
前記動物性ワックスとしては、蜜蝋、ラノリン等を挙げることができる。
【0086】
前記植物性ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス等を挙げることができる。
【0087】
前記鉱物系ワックスとしては、パラフィンワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
【0088】
前記高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物としては、ラウリルステアレート等のステアリン酸エステル等を挙げることができる。
【0089】
前記脂肪酸アミドとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物等を挙げることができる。
【0090】
前記第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0091】
本実施形態では、前記潤滑剤は、単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0092】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。
【0093】
前記ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物を挙げることができる。
【0094】
前記カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン酢酸塩、高級アルキルアミン塩酸塩、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩を挙げることができる。
【0095】
前記アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩を挙げることができる。
【0096】
前記両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤を挙げることができる。
【0097】
前記アミノ酸型両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩等を挙げることができる。
【0098】
本実施形態では、前記界面活性剤は、単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0099】
本実施形態のガラス繊維の測定周波数10GHzにおける誘電正接は、0.0030未満の範囲であり、好ましくは、0.0011~0.0029の範囲にあり、より好ましくは、0.0015~0.0028の範囲にあり、さらに好ましくは、0.0019~0.0027の範囲にあり、特に好ましくは、0.0020~0.0027の範囲にあり、最も好ましくは、0.0021~0.0026の範囲にある。
【0100】
また、本実施形態のガラス繊維の測定周波数10GHzにおける誘電率は、5.20未満の範囲であり、好ましくは、4.00~5.00の範囲にあり、より好ましくは、4.10~4.90の範囲にあり、さらに好ましくは、4.15~4.80の範囲にあり、とりわけ好ましくは、4.20~4.70の範囲にあり、特に好ましくは、4.25~4.65の範囲にあり、殊に好ましくは、4.31~4.60の範囲にあり、最も好ましくは、4.32~4.44の範囲にある。なお、本実施形態のガラス繊維の誘電率は、後述する誘電正接の測定方法と同一の試験片及び測定装置を用いて、JIS C 2565:1992に準拠して測定することができる。
【0101】
また、本実施形態のガラス繊維におけるSiとBとAlとCaとの合計溶出速度は、110μg/h以上の範囲であり、好ましくは、110~500μg/hの範囲にあり、より好ましくは、120~400μg/hの範囲にあり、さらに好ましくは、130~300μg/hの範囲にある。
【0102】
次に、本実施形態のガラス繊維織物は、本実施形態の前記ガラス繊維からなる。本実施形態のガラス織物は、それ自体公知の織機を用いて、本実施形態の前記ガラス繊維を経糸及び緯糸として製織することにより得ることができる。前記織機としては、例えば、エアージェット又はウォータージェット等のジェット式織機、シャトル式織機、レピア式織機等を挙げることができる。また、前記織機による織り方としては、例えば、平織、朱子織、ななこ織、綾織等を挙げることができ、製造効率の観点から平織が好ましい。
【0103】
本実施形態のガラス繊維織物に含まれる、本実施形態の前記ガラス繊維は、2.0μm以上9.0μm以下の範囲のフィラメント径を備えるガラスフィラメントからなり、0.35~70.0tex(g/1000m)の範囲の質量を備えることが好ましく、2.0μm以上3.0μm未満の範囲のフィラメント径を備えるガラスフィラメントからなり、0.35~1.5texの範囲の質量を備えることがより好ましい。
【0104】
ここで、本実施形態のガラス繊維織物に含まれる、本実施形態の前記ガラス繊維のフィラメント径は、前記ガラス繊維の断面少なくとも50点について、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S-3400N、倍率:3000倍)で、前記ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの直径を測定したときの測定値の平均値である。
【0105】
また、本実施形態のガラス繊維織物は、40~150本/25mmの範囲の織密度を備える経糸と、40~150本/25mmの範囲の織密度を備える緯糸から構成されることが好ましい。
【0106】
本実施形態のガラス繊維織物は、製織された後で、脱油処理、表面処理、及び開繊処理を施されてもよい。
【0107】
脱油処理としては、ガラス繊維織物を雰囲気温度が350℃~400℃の範囲の加熱炉内に40~80時間の範囲の時間配置し、ガラス繊維に付着している有機物を加熱分解する処理を挙げることができる。
【0108】
表面処理としては、前記シランカップリング剤、又は、前記シランカップリング剤及び前記界面活性剤を含む溶液中にガラス繊維織物を浸漬し、余分な水を絞液した後、80~180℃の範囲の温度で、1~30分間の範囲の時間、加熱乾燥させる処理を挙げることができる。
【0109】
開繊処理としては、例えば、ガラス繊維織物の経糸に20~200Nの範囲の張力をかけながら、水流圧力による開繊、液体を媒体とした高周波の振動による開繊、面圧を有する流体の圧力による開繊、ロールによる加圧での開繊等を行い、経糸及び緯糸の糸幅を拡幅する処理を挙げることができる。
【0110】
また、本実施形態のガラス繊維織物は、好ましくは、2.5~220g/mの範囲の質量を備え、より好ましくは、4.0~200.0μmの範囲の厚さを備える。
【0111】
また、本実施形態のガラス繊維織物は、前記シランカップリング剤、又は、前記シランカップリング剤及び前記界面活性剤を含む表面処理層を備えてもよい。本実施形態のガラス繊維織物が該表面処理層を含む場合、該表面処理層は、表面処理層を含むガラス繊維織物の全量に対して、例えば、0.03~1.50質量%の範囲の質量を備えることができる。
【0112】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、前述の本実施形態のガラス繊維を含む。具体的には、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、樹脂(熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂)、ガラス繊維、その他の添加剤を含むガラス繊維強化樹脂組成物において、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、10~90質量%の範囲のガラス繊維を含む。また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、90~10質量%の範囲の樹脂を含み、その他の添加剤を0~40質量%の範囲で含む。
【0113】
ここで、前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸樹脂、スチレン/マレイミド樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸メチル(ASA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(SAN)樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、アイオノマー(IO)樹脂、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、オレフィン/ビニルアルコール樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0114】
具体的に、前記ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン等を挙げることができる。
【0115】
前記ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0116】
前記ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等を挙げることができる。
【0117】
前記メタクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルのうち一種を単独重合した重合体、又は、二種以上を共重合した重合体等を挙げることができる。
【0118】
前記ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、又は、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、又は、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等を挙げることができる。
【0119】
前記ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリキシレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ナイロン4I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)等の成分のうち1種、もしくは2種以上の成分を組み合わせた共重合体やこれらの混合物等を挙げることができる。
【0120】
前記ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする単独重合体、および、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2~8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を含有する共重合体等を挙げることができる。
【0121】
前記ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、エチレングリコールとを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0122】
前記ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、1,4-ブタンジオールとを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0123】
前記ポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、1,3-プロパンジオールとを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0124】
前記ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得られる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法により得られる重合体を挙げることができる。
【0125】
前記ポリアリーレンサルファイドとしては、直鎖型ポリフェニレンサルファイド、重合の後に硬化反応を行うことで高分子量化した架橋型ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドサルフォン、ポリフェニレンサルファイドエーテル、ポリフェニレンサルファイドケトン等を挙げることができる。
【0126】
前記ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,3-ジメチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-クロロメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ〔2-(4’-メチルフェニル)-1,4-フェニレンエーテル〕、ポリ(2-ブロモ-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-ブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等を挙げることができる。
【0127】
前記変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖末端にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基等の官能基を導入したもの、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖側鎖にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基、メタクリル基等の官能基を導入したもの等を挙げることができる。
【0128】
前記ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等を挙げることができる。
【0129】
前記液晶ポリマー(LCP)としては、サーモトロピック液晶ポリエステルである芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族ジヒドロキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、脂肪族ジヒドロキシ単位、脂肪族ジカルボニル単位等から選ばれる1種以上の構造単位からなる(共)重合体等を挙げることができる。
【0130】
前記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)、ポリビニルフロライド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)等を挙げることができる。
【0131】
前記アイオノマー(IO)樹脂としては、オレフィン又はスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、カルボキシル基の一部を金属イオンで中和してなる重合体等を挙げることができる。
【0132】
前記オレフィン/ビニルアルコール樹脂としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体、プロピレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物、プロピレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物等を挙げることができる。
【0133】
前記環状オレフィン樹脂としては、シクロヘキセン等の単環体、テトラシクロペンタジエン等の多環体、環状オレフィンモノマーの重合体等を挙げることができる。
【0134】
前記ポリ乳酸としては、L体の単独重合体であるポリL-乳酸、D体の単独重合体であるポリD-乳酸、又はその混合物であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0135】
前記セルロース樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等を挙げることができる。
【0136】
また、前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ(EP)樹脂、メラミン(MF)樹脂、フェノール樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、変性ポリイミド(PI)樹脂、ユリア(UF)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、フラン(FR)樹脂、ベンゾグアナミン(BR)樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン(BT)樹脂、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)等を挙げることができる。
【0137】
具体的に、前記不飽和ポリエステル樹脂としては、脂肪族不飽和ジカルボン酸と脂肪族ジオールとをエステル化反応させることで得られる樹脂を挙げることができる。
【0138】
前記ビニルエステル樹脂としては、ビス系ビニルエステル樹脂、ノボラック系ビニルエステル樹脂を挙げることができる。
【0139】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂やフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0140】
前記メラミン樹脂としては、メラミン(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)とホルムアルデヒドとの重縮合からなる重合体を挙げることができる。
【0141】
前記フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、又は、アリールアルキレン型フェノール樹脂等を挙げることができ、この中の一種、もしくは、二種以上を組み合わせたものを挙げることができる。
【0142】
前記ユリア樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂を挙げることができる。
【0143】
前記熱可塑性樹脂又は前記熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0144】
前記その他の添加剤としては、ガラス繊維以外の強化繊維、ガラス繊維以外の充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、流動性改良剤、アンチブロッキング剤、潤滑剤、核剤、抗菌剤、顔料等を挙げることができる。
【0145】
前記ガラス繊維以外の強化繊維としては、例えば、炭素繊維、金属繊維を挙げることができる。
【0146】
前記ガラス繊維以外の充填剤としては、例えば、ガラスパウダー、タルク、マイカを挙げることができる。
【0147】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、本実施形態の前記ガラス繊維織物に、それ自体公知の方法により、前記樹脂を含浸させ、半硬化させたプリプレグであってもよい。
【0148】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、中空成形法、発泡成形法(超臨界流体法も含む)、インサート成形法、インモールドコーティング成形法、オートクレーブ成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法、スタンピング成形法、インフュージョン法、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、低圧RIM成形法、レジントランスファーモールディング法、シートモールディングコンパウンド法、バルクモールディングコンパウンド法、プルトルージョン法、フィラメントワインディング法等の公知の成形法で成形して種々のガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。また、前記プリプレグを硬化させることによっても、ガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
【0149】
このような成形品の用途としては、例えば、プリント配線板、電子部品(コネクタ等)、電子機器の筐体(アンテナ、レーダー等)、燃料電池のセパレーター等を挙げることができる。
【0150】
次に本発明の実施例、比較例及び参考例を示す。
【実施例
【0151】
〔実施例1~6、比較例1~5及び参考例〕
以下に示す方法で、生体溶解性、誘電正接、作業温度範囲、耐水性及び分相の評価を実施した。実施例1~6の結果を表1に、比較例1~5及び参考例の結果を表2に、それぞれ示す。
【0152】
なお、実施例1のガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の測定周波数10GHzにおける誘電正接は0.0026であり、測定周波数10GHzにおける誘電率は4.42であり、SiとBとAlとCaとの合計溶出速度は141μg/hであった。
【0153】
また、実施例2のガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の測定周波数10GHzにおける誘電正接は0.0027であり、測定周波数10GHzにおける誘電率は4.51であり、SiとBとAlとCaとの合計溶出速度は185μg/hであった。
【0154】
また、実施例3のガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の測定周波数10GHzにおける誘電正接は0.0023であり、測定周波数10GHzにおける誘電率は4.43であり、SiとBとAlとCaとの合計溶出速度は115μg/hであった。
【0155】
〔生体溶解性〕
まず、溶融固化後のガラス組成が、表1に示された実施例1~6及び、表2に示された比較例1~5及び参考例の各組成となるように、ガラス原料を混合し、ガラスバッチを得た。次に、得られたガラスバッチを白金ルツボに入れ、この白金ルツボを、1500~1600℃の範囲の温度の、各実施例、各比較例及び参考例のガラスバッチの溶融に適した温度条件で、電気炉中に4時間保持し、ガラスバッチに撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得た。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、冷却して塊状のガラスカレットを得た。
【0156】
次に、底部に1個のノズルチップを備えた白金製容器に得られたガラスカレットを投入し、白金製容器を1150~1350℃の範囲の温度に加熱して、ガラスカレットを溶融して溶融ガラスを得た。次いで、ノズルチップから溶融ガラスを引きだして巻き取り装置に巻き付けた。次いで、白金製容器の加熱温度及び巻き取り装置の巻き取り速度を調整し、1150~1350℃の範囲の温度の、各実施例、各比較例及び参考例のガラス組成に適した加熱温度、及び、800~1200rpmの範囲の巻き取り速度の、各実施例、各比較例及び参考例のガラス組成に適した巻き取り速度でガラス繊維を巻き取り装置に巻き取り、フィラメント径13.0μmのガラス繊維サンプルを得た。
【0157】
次に、K.Sebastian. et al., Glass Science and Technology, Vol.75, pp.263-270 (2020)に準拠し、蒸留水約800mLに、次に示すNo.1~12の試薬を逐次加え、No.13の塩酸(1:1)でpHを調整しながら最終的に1Lになるようにして、肺内環境を模したpH4.5の人工肺液を調製した。
【0158】
前記No.1~12の試薬は、次の通りである。No.1:塩化ナトリウム、No.2:炭酸水素ナトリウム、No.3:塩化カルシウム、No.4:リン酸水素二ナトリウム、No.5:硫酸ナトリウム、No.6:塩化マグネシウム六水和物、No.7:グリシン、No.8:クエン酸三ナトリウム二水和物、No.9:酒石酸ナトリウム二水和物、No.10:ピルビン酸ナトリウム、No.11:90%乳酸、No.12:ホルムアルデヒド。
【0159】
この結果、前記人工肺液1Lは、塩化ナトリウム7.12g/L、炭酸水素ナトリウム1.95g/L、塩化カルシウム0.022g/L、リン酸水素二ナトリウム0.143g/L、硫酸ナトリウム0.079g/L、塩化マグネシウム六水和物0.212g/L、グリシン0.118g/L、クエン酸三ナトリウム二水和物0.152g/L、酒石酸ナトリウム二水和物0.18g/L、ピルビン酸ナトリウム0.172g/L、90%乳酸0.156g/L、ホルムアルデヒド3mL、塩酸(1:1)4-5mLの組成を備えている。
【0160】
次に、調製した人工肺液を24時間静置した。次いで、静置後の人工肺液においては、炭酸ガスの離脱に伴いpHの上昇が生じているので、塩酸を用いて、人工肺液のpHを4.5に再調整した。
【0161】
なお、繊維が肺に取り込まれるとマクロファージに取り込まれることが知られており、マクロファージ周囲のpHは4.5であるため、pH4.5の人工肺液に対する溶解性の高い繊維は肺内で溶解することが期待できる。
【0162】
次に、K.Sebastian. et al., Glass Science and Technology, Vol.75, pp.263-270 (2020)に準拠し、前述のガラス繊維サンプルを、インライン式フィルターホルダー内に収まる長さである1~3mmの長さに切断し、溶出試験用ガラス繊維サンプルとした。前記溶出試験用ガラス繊維サンプルを、インライン式フィルターホルダー内に設置したメンブレンフィルタ上に載置し、37℃に加温した前記人工肺液を140~170mL/日の範囲の流量になるようにポンプで送液してインライン式フィルターホルダー内に送り込み、試験用ガラス繊維サンプルとフィルターホルダーとを通過した濾液を容器内に溜めることにより溶出試験を実施した。このとき、人工肺液の流量(単位:μm/s)とサンプル表面積(単位:μm)との比(人工肺液の流量/サンプル表面積)が0.030±0.005μm/sとなるよう、メンブレンフィルタ上に載置するサンプルの質量を調整した。24時間経過後、容器から濾液を回収し、分析対象イオンをSi、Al、B、Caとして、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)を用いて濾液中の溶出イオン成分を定量し、Si、Al、B、Caに対するICP-AESの定量結果(μg)を24時間で除することで、各成分の溶出速度(μg/h)を算出した。
【0163】
次に、前述の方法で測定した、SiとBとAlとCaとの合計溶出速度が110μg/h以上の範囲である場合に、生体溶解性を「OK」、SiとBとAlとCaとの合計溶出速度が110μg/h未満の範囲である場合に、生体溶解性を「NG」と評価した。
【0164】
〔誘電正接〕
まず、溶融固化後のガラス組成が、表1に示された実施例1~6及び、表2に示された比較例1~5及び参考例の各組成となるように、ガラス原料を混合し、ガラスバッチを得た。次に、得られたガラスバッチを80mm径の白金ルツボに入れ、1500℃~1600℃の範囲の温度で7時間溶融したものを、ルツボから取り出し、ガラスバルクを得た。次いで、得られたガラスバルクを、580~700℃の範囲の温度で、8時間焼き鈍し、試験片を得た。
【0165】
次に、試験片を切断および研磨し、80mm×3mm(厚さ1mm)の研磨試験片を作成した。次いで、得られた研磨試験片を、絶乾後、23℃、湿度60%の室内に24時間保管した。次いで、得られた研磨試験片につき、JIS C 2565:1992に準拠し、株式会社エーイーティー製空洞共振器法誘電率測定装置ADMS01Oc1(商品名)を用いて、10GHzにおける誘電正接(散逸率Df)を測定した。
【0166】
次に、前述の方法で測定した誘電正接が0.0030未満の範囲である場合に、誘電正接を「OK」、誘電正接が0.0030以上の範囲である場合に、誘電正接を「NG」と評価した。
【0167】
〔作業温度範囲〕
回転粘度計付高温電気炉(芝浦システム株式会社製)を用い、白金ルツボ中で前述のガラスカレットを溶融し、回転式ブルックフィールド型粘度計を用いて溶融温度を変化させながら連続的に溶融ガラスの粘度を測定し、回転粘度が1000ポイズのときに対応する温度を測定することにより1000ポイズ温度を求めた。
【0168】
次に、前述のガラスカレットを粉砕し、粒径0.5~1.5mmの範囲のガラス粒子40gを180×20×15mmの白金製ボートに入れ、900~1400℃の範囲の温度勾配を設けた管状電気炉で8時間以上加熱した後、該管状電気炉から取り出し、偏光顕微鏡で観察して、ガラス由来の結晶(失透)が析出し始めた位置を特定した。管状電気炉内の温度をB熱電対を用いて実測し、析出が開始した位置の温度を求めて液相温度とした。
【0169】
次に、前述の方法で測定した1000ポイズ温度と液相温度から、作業温度範囲ΔT(ΔT=1000ポイズ温度-液相温度)を算出した。ΔTが100℃以上の範囲である場合に、作業温度範囲を「A」、ΔTが30℃以上100℃未満の範囲である場合に、作業温度範囲を「B」、ΔTが30℃未満の範囲である場合に、作業温度範囲を「C」と評価した。
【0170】
〔耐水性〕
生体溶解性の評価の際と全く同一の方法で、フィラメント径が13.0μmのガラス繊維サンプルを1.0g作製した。次に、80℃の温度の水中に前記ガラス繊維サンプルを24時間浸漬させた際の前後における、該ガラス繊維サンプルの質量減少率を測定した。
【0171】
次に、前述の方法で測定した質量減少率が1.0質量%未満の範囲である場合に、耐水性を「A」、質量減少率が1.0質量%以上の範囲である場合に、耐水性を「B」と評価した。
【0172】
〔分相〕
前記誘電正接測定用のガラスバルクの外観を観察した際に、透明又は若干白濁はあるがほぼ透明である場合に、分相を「A」、白濁が見られるが光は通す、又は、白濁している場合に、分相を「B」と評価した。
【0173】
【表1】
【0174】
【表2】
【0175】
表1から、全量に対し、36.0質量%以上48.0質量%未満の範囲のSiOと、18.0質量%以上32.0質量%以下の範囲のBと、12.0質量%以上24.0質量%以下の範囲のAlと、2.5質量%以上8.9質量%以下の範囲のPと、合計で5.0質量%以上13.0質量%以下の範囲のCaO及びMgOとを含む、実施例1~6のガラス繊維用ガラス組成物によれば、Si、B、Al、Caの4成分の合計溶出速度が110μg/h以上、作業温度範囲が30℃以上、かつ、誘電正接が0.0030未満であって、ガラス繊維にしたときに、生体溶解性を備え、長繊維化が可能であり、しかも低い誘電正接を備えることができることが明らかである。
【0176】
一方、表2から、全量に対し、36.0質量%以上48.0質量%未満の範囲のSiOと、18.0質量%以上32.0質量%以下の範囲のBと、12.0質量%以上24.0質量%以下の範囲のAlと、合計で5.0質量%以上13.0質量%以下の範囲のCaO及びMgOとを含むが、Pの含有率が2.5質量%未満、又は、8.9質量%超である、比較例1~5及び参考例のガラス繊維用ガラス組成物によれば、作業温度範囲が30℃未満であって、ガラス繊維にしたときに、長繊維化が困難であるか、誘電正接が0.0030以上であって、ガラス繊維にしたときに、低い誘電正接を備えることができないか、又は、ガラス繊維にしたときに、前述の方法で測定される、SiとBとAlとCaとの合計溶出速度が110μg/h以下であって、ガラス繊維にしたときに、生体溶解性を備えることができないかのいずれか又は複数の不都合が生じていることが明らかである。
【0177】
なお、参考例のガラス繊維用ガラス組成物は、特願2020-213162号明細書記載のガラス組成物であり、全量に対するPの含有量が0.0質量%である点で本願請求項1に係る発明と相違し、全量に対するPの含有量が0.0質量%であるために、式(1-1)、(2-1)、(2-2)、(2-3)が定義できない点で本願請求項2-5の発明と相違する。そして、表2から参考例のガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維は、生体溶解性を備え、長繊維化が可能であるものの、十分に低い誘電正接を備えることができないことが明らかである。
【要約】
生体溶解性を備え、長繊維化が可能であり、しかも低い誘電正接を備えるガラス繊維を得ることができるガラス繊維用ガラス組成物を提供する。本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、全量に対し、36.0質量%以上48.0質量%未満の範囲のSiOと、18.0質量%以上32.0質量%以下の範囲のBと、12.0質量%以上24.0質量%以下の範囲のAlと、2.5質量%以上8.9質量%以下の範囲のPと、合計で5.0質量%以上13.0質量%以下の範囲のCaO及びMgOとを含む。