(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】歩行型除雪機
(51)【国際特許分類】
E01H 5/10 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
E01H5/10 Z
(21)【出願番号】P 2019221057
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(73)【特許権者】
【識別番号】592226729
【氏名又は名称】和同産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】下山 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】中村 栄作
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚之
(72)【発明者】
【氏名】大内 博一
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 敬
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-021108(JP,A)
【文献】特開2014-177765(JP,A)
【文献】特開2002-275848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前方に設けられ、除雪作業を行う除雪部と、
前記走行機体から後方に延ばされた操縦ハンドルと、
前記除雪部と前記操縦ハンドルとの間において、前記走行機体に形成された原動部と、が備えられ、
前記原動部に、エンジンと、前記エンジンを覆うエンジンカバーと、前記エンジンの上方に設けられ、前記エンジンからの排ガスを走行機体横外側に向けて流出するように案内する排ガスガイドと、が備えられ、
前記エンジンカバーは、前記エンジン及び前記排ガスガイドを上方から覆う上カバー部と、前記エンジン及び前記排ガスガイドを後方から覆う後カバー部と、前記エンジンを両横側方から覆う横カバー部と、前記上カバー部の内面側に設けられた断熱材と、を有し
、
前記エンジンに沿う状態で機体上下向きに設けられ、前記エンジンに沿って上昇する空気を前記排ガスガイドの内部に流入するよう案内する空気ガイドが備えられている歩行型除雪機。
【請求項2】
前記エンジンカバーの内部において前記排ガスガイドを覆うガイドカバーが備えられている請求項1に記載の歩行型除雪機。
【請求項3】
前記上カバー部、前記横カバー部における上部、及び、前記後カバー部における上部のそれぞれは、樹脂製であり、前記横カバー部における下部、及び、前記後カバー部における下部のそれぞれは、金属製である請求項1
または2項に記載の歩行型除雪機。
【請求項4】
前記エンジンカバーの後方において、前記操縦ハンドルの基部にバッテリーが支持されている請求項1から
3のいずれか一項に記載の歩行型除雪機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型除雪機に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行型除雪機には、走行機体の前方に設けられ、除雪作業を行う除雪部と、走行機体から後方に延ばされた操縦ハンドルと、除雪部と操縦ハンドルとの間において、走行機体に形成された原動部と、が備えられたものがある。
【0003】
この種の歩行型除雪機としては、たとえば特許文献1に示されるものがある。特許文献1に示されるものでは、オーガによって雪を掻き集める除雪部、走行機体の後部に設けられた操縦ハンドル、除雪部と操縦ハンドルとの間に位置するエンジンが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した歩行型除雪機では、一般に原動部にエンジンが備えられるので、エンジンの排熱によって温度上昇した熱気が後方に流れると、操縦ハンドルに支持される部材や、操縦ハンドルの付属部品に悪影響を与えるので、原動部から後方に熱気が流れにくいものを要望されている。
【0006】
本発明は、原動部から操縦ハンドルへの熱気流れを効果的に防止できる歩行型除雪機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による歩行型除雪機は、
走行機体の前方に設けられ、除雪作業を行う除雪部と、
前記走行機体から後方に延ばされた操縦ハンドルと、
前記除雪部と前記操縦ハンドルとの間において、前記走行機体に形成された原動部と、が備えられ、
前記原動部に、エンジンと、前記エンジンを覆うエンジンカバーと、前記エンジンの上方に設けられ、前記エンジンからの排ガスを走行機体横外側に向けて流出するように案内する排ガスガイドと、が備えられ、
前記エンジンカバーは、前記エンジン及び前記排ガスガイドを上方から覆う上カバー部と、前記エンジン及び前記排ガスガイドを後方から覆う後カバー部と、前記エンジンを両横側方から覆う横カバー部と、前記上カバー部の内面側に設けられた断熱材と、を有し、
前記エンジンに沿う状態で機体上下向きに設けられ、前記エンジンに沿って上昇する空気を前記排ガスガイドの内部に流入するよう案内する空気ガイドが備えられている。
【0008】
本構成によると、エンジンの放熱の拡散がエンジンカバーの上カバー部、後カバー部及び横カバー部によって防止される。その上、エンジンの放熱による上カバー部の昇温が断熱材によって防止されて、上カバー部による放熱拡散の防止が効果的に行われる。さらに、エンジンの排ガスが排ガスガイドによって案内されて走行機体横外側に向けて流出するので、排ガスが後向きに流れ難くでき、かつ、排ガスによるエンジンカバーの温度上昇を防止できるので、原動部から操縦ハンドルに熱気が流れることを効果的に防止できる。
本構成によると、エンジンの放熱によって温度上昇した空気が空気ガイドによって排ガスガイドの内部に流入して排ガスガイドによって案内されて走行機体横外側に向けて流出するので、エンジンの放熱によって温度上昇した空気を後方向きに流れ難くでき、原動部から操縦ハンドルに熱気が流れることをより効果的に防止できる。
【0009】
本発明においては、
前記エンジンカバーの内部において前記排ガスガイドを覆うガイドカバーが備えられていると好適である。
【0010】
本構成によると、排ガスガイドからエンジンカバーへの熱伝達がガイドカバーによって防止されるので、エンジンカバーの温度上昇を防止でき、原動部から操縦ハンドルに熱気が流れることをより効果的に防止できる。
【0011】
【0012】
【0013】
本発明においては、
前記上カバー部、前記横カバー部における上部、及び、前記後カバー部における上部のそれぞれは、樹脂製であり、前記横カバー部における下部、及び、前記後カバー部における下部のそれぞれは、金属製であると好適である。
【0014】
本構成によると、走行装置によって跳ね上げられた泥土などが後カバー部における下部、横カバー部における下部に当っても、下部が金属製によって破損や損傷し難い。上カバー部、横カバー部における上部、及び、後カバー部における上部が高温になり難い樹脂製なので、エンジンカバーを破損や損傷し難くしつつ、原動部から操縦ハンドルに熱気が流れることを防止できる。
【0015】
本発明においては、
前記エンジンカバーの後方において、前記操縦ハンドルの基部にバッテリーが支持されていると好適である。
【0016】
本構成によると、バッテリーの重量が走行機体の後部に掛かるので、バッテリーが原動部から流れる空気によって温度上昇することを防止しつつ、バッテリーを走行機体の後部に設けるバランスウエイトに活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】エンジンカバーの縦断状態での原動部を示す左側面図である。
【
図5】取り外し状態の排ガスガイド及びガイドカバー、分解状態のエンジンカバーなどを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、歩行型除雪機の走行機体に関し、
図1,2,3に示される矢印Fの方向を「機体前方」、矢印Bの方向を「機体後方」、
図1,2に示される矢印Uの方向を「機体上方」、矢印Dの方向を「機体下方」、
図3に示される矢印Lの方向を「機体左方」、矢印Rの方向を「機体右方」とする。
【0019】
〔歩行型除雪機の全体の構成〕
図1,2,3に示されるように、歩行型除雪機は、左右一対のクローラ式の走行装置1が装備された走行機体2を有している。走行機体2の前方に、除雪作業を行う除雪部3が設けられている。除雪部3では、オーガハウジング4の内部に回転可能に設けられた左右一対の雪掻きオーガ5によって作業対象箇所における雪が掻き取られ、掻き取られた雪がブロワ6によってシュータ7に噴出され、シュータ7によって排出箇所に向けて放出される。走行機体2が有する機体フレーム8の後部から操縦ハンドル9が後上方に向けて延ばされている。操縦ハンドル9は、左右一対のハンドル杆9aによって構成されている。除雪部3と操縦ハンドル9との間において、走行装置1及び除雪部3に向けて動力を出力するエンジン21を有する原動部20が走行機体2に形成されている。除雪部3の後部から走行機体2の前部にかけての部位が左右の横カバー10よって横側方から覆われいる。左右の横カバー10の間において、除雪部3の後部から走行機体2の前部にかけての部位が上カバー11によって上方から覆われている。シュータ7は、上カバー11に形成された貫通穴を挿通している。
【0020】
操縦ハンドル9には、左右の操向クラッチ(図示せず)を操作する握りレバー形の操向レバー12が設けられている。走行装置1の前後進切換えを行う前後進レバー13を有する操作盤14が操縦ハンドル9に支持されている。作業者が走行機体2の後方を走行機体2に追従して歩行しつつ、操縦ハンドル9において走行機体2の操縦を行うように構成されている。原動部20に備えられたエンジンカバー30の後方において、バッテリー15が操縦ハンドル9の基部に支持されている。バッテリー15は、バッテリーカバー16によって覆われた状態で支持されている。
【0021】
〔原動部の構成〕
図4に示されるように、原動部20には、機体フレーム8に支持されたエンジン21、エンジン21の上方に設けられた排ガスガイド22、エンジン21及び排ガスガイド22を覆い、エンジン21の放熱、及び排ガスガイド22の放熱の拡散を防止するエンジンカバー30、エンジン21の前方に設けられた空気ガイド23が備えられている。エンジン21は、上部が下部よりも左横上側に位置する傾斜状態で搭載されている。
【0022】
エンジンカバー30は、
図1,2,3,4に示されるように、エンジン21及び排ガスガイド22を上方から覆う上カバー部31と、エンジン21及び排ガスガイド22を後方から覆う後カバー部32と、エンジン21を左横側方から覆う左の横カバー部33と、エンジン21を右横側方から覆う右の横カバー部33と、を有している。
図4に示されるように、上カバー部31の内面側に、エンジン放熱による上カバー部31の温度上昇を防止する断熱材34が設けられている。本実施形態では、断熱材34は、グラスウールが採用されているが、これに限らない。たとえば、ロックウール、発砲スチロールなどの採用が可能である。
図3,5に示されるように、エンジンカバー30の上部に、排ガスガイド22の横側方に位置するエンジン用の燃料タンク35のうちの注油口35aが備えられた上部を露出させる開口36が形成されている。エンジンカバー30における口縁部37に、燃料タンク35の上部にこぼれた燃料をエンジンカバー30の後外側に流下させるガイド溝38が形成されている。ガイド溝38は、
図3に示されるように、こぼれた燃料を流下案内する状態で燃料タンク35の上部に形成された凹入部35bに連通している。
【0023】
左右の横カバー部33は、
図1,2,5に示されるように、機体フレーム8に備えられたカバー支持部39に下端部33aが支持される横カバー部33の下部としての横下カバー部33Dと、横下カバー部33Dの上端部33bに対して下端部33cが連結ネジ40(
図1,2参照)によって脱着可能に連結される横カバー部33の上部としての横上カバー部33Uとを有している。後カバー部32は、左右のカバー支持部39に下端部32aが支持される後カバー部32の下部としての後下カバー部32Dと、下カバー部32Dの上端部32bに下端部32cが連結ネジ40によって脱着可能に連結される後カバー部32の上部としての後上カバー部32Uとを有している。
【0024】
上カバー部31、左右の横上カバー部33U、及び、後上カバー部32Uは、樹脂材の成型によって作製され、高温になり難いものになっている。上カバー部31、左右の横上カバー部33U、及び後上カバー部32Uは、
図5に示されるように、連結し合った状態で作製され、単一つの構造体になっている。
【0025】
左右の横下カバー部33D、及び、後下カバー部32Dは、金属製の板状部材によって作製され、走行装置1によって跳ね上げられた泥土などが衝突しても変形や破損し難いものになっている。
【0026】
排ガスガイド22は、
図4,5に示されるように、エンジン21の上部に備えられた上向きの排気口21aに対向する開口22aが下部に備えられた箱状に構成されている。排ガスガイド22の側壁部に、エンジンカバー30の左の横カバー部33に形成された切欠き部30aに向かって開口する排出口22bが形成されている。排ガスガイド22は、エンジン21の排気口21aから吐出された排ガスを開口22aを介して排ガスガイド22の内部に流入させ、流入した排ガスを排出口22bから吐出し、切欠き部30aを介してエンジンカバー30の外部に流出させる。エンジンカバー30の内部でエンジン21から排出された排ガスが排ガスガイド22によって案内されてエンジンカバー30の外部に走行機体2の横外側に向けて流出する。
【0027】
排ガスガイド22は、
図4に示されるように、エンジンカバー30の内部において、ガイドカバー41によって覆われている。排ガスガイド22の放熱のエンジンカバー30への伝達がガイドカバー41によって防止される。ガイドカバー41は、
図5に示されるように、排ガスガイド22のうちの排出口22bを有する側壁部、及び、排ガスガイド22の下部の開口22aを除く全ての部位を覆うように構成されている。ガイドカバー41は、
図4に示されるように、内面側に付設された断熱材、外面側に付設された段熱材を有している。ガイドカバー41は、ガイドカバー41とエンジンカバー30とを連結する連結部材(図示せず)を介してエンジンカバー30に支持されるよう構成されている。排ガスガイド22は、排ガスガイド22とガイドカバー41とを連結する連結部材(図支せず)、ガイドカバー41、ガイドカバー41とエンジンカバー30との連結部材を介してエンジンカバー30に支持されるよう構成されている。
【0028】
空気ガイド23は、
図4に示されるように、エンジン21よりも前側において、排ガスガイド22の下方にエンジン21の側部に沿う状態で機体上下向きに設けられている。空気ガイド23は、カバー支持部39から延ばされた支柱部材42に支持されている。エンジン21の放熱によって温度上昇してエンジン21に沿って上昇する空気が開口22aを介して排ガスガイド22に流入するように空気ガイド23によって案内される。エンジン21の放熱によって温度上昇した空気が排ガスガイド22によって案内され、エンジン21の排気と共にエンジンカバー30の外部に排出される。また、エンジン21の排気口21aから排出される排ガスが排ガスガイド22の内部に流入するように空気ガイド23によって案内される。
【0029】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、エンジンカバー30の上部が樹脂製であり、下部が金属製である構成が採用されているが、これに限らない。エンジンカバー30の全体が樹脂製、あるいは金属製であってもよい。
【0030】
(2)上記した実施形態では、ガイドカバー41が備えられているが、ガイドカバー41を備えないものであってもよい。
【0031】
(3)上記した実施形態では、空気ガイド23が備えられているが、空気ガイド23を備えないものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、走行機体の前方に設けられた除雪部と、走行機体から後方に延ばされた操縦ハンドルと、除雪部と操縦ハンドルとの間において、走行機体に形成された原動部と、が備えられた歩行型除雪機に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
2 走行機体
3 除雪部
9 操縦ハンドル
15 バッテリー
20 原動部
22 排ガスガイド
23 空気ガイド
30 エンジンカバー
31 上カバー部
32 後カバー部
32D 後カバー部の下部
32U 後カバー部の上部
33 横カバー部
33U 横カバー部の上部
33D 横カバー部の下部
34 断熱材