(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】骨伝導スピーカー
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20230523BHJP
H04R 13/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
H04R1/00 317
H04R13/00
(21)【出願番号】P 2018215487
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】517136575
【氏名又は名称】株式会社freecle
(73)【特許権者】
【識別番号】519304952
【氏名又は名称】ヒロサキ音響株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】久保 聡介
(72)【発明者】
【氏名】関口 太一
(72)【発明者】
【氏名】馬淵 信也
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079340(WO,A1)
【文献】特開2006-203709(JP,A)
【文献】特開2008-131470(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064340(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04R 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の表面と面状に接触する骨伝導スピーカーにおいて、
開口部を有する筒状ケースと、
前記筒状ケースの開口部を閉塞し、皮膚の表面と接触する平坦な接触面を有する蓋部と、
前記筒状ケースの開口部の近傍において、前記蓋部の接触面と間隔を空けて対向し、かつ、前記筒状ケースによって周囲が支持された金属製の板バネと、
前記筒状ケース内に収容された磁気ユニットと、
前記磁気ユニットを電磁誘導によって振動させるコイルと
を有し、
前記磁気ユニットは、前記板バネの中心に設けられた貫通孔と、前記板バネおよび前記磁気ユニットの間に介在するワッシャーと、前記磁気ユニットの中心に設けられた貫通孔とを貫通するハトメの端部をかしめることによって、前記板バネに取り付けられていることを特徴とする骨伝導スピーカー。
【請求項2】
前記板バネの周囲は、前記筒状ケースと、前記蓋部とによって、挟持されていることを特徴とする請求項1に記載された骨伝導スピーカー。
【請求項3】
前記板バネは、所定の形状にくり抜かれていることを特徴とする請求項1または2に記載された骨伝導スピーカー。
【請求項4】
前記磁気ユニットは、ヨークと、磁石とを有し、前記磁石の外周側と、前記ヨークの内周側との間のギャップに配置された前記コイルの電磁誘導によって、振動することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された骨伝導スピーカー。
【請求項5】
前記磁気ユニットは、ヨークと、第1の磁石と、前記第1の磁石の外周側に配置された第2の磁石とを有し、前記第1の磁石の外周側と、前記第2の磁石の内周側との間のギャップに配置された前記コイルの電磁誘導によって、振動することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された骨伝導スピーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の表面と接触する骨伝導スピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声信号を振動に変換して、骨導として視聴者に伝達する骨伝導スピーカーが知られている。例えば、特許文献1には、皮膚の表面と面状に接触する骨導振動子が開示されている。この骨導振動子50は、
図7に示すように、円筒状のフレーム51と、ヨーク57と、磁石58と、振動板56bと、クッション部材60aとを有する。フレーム51の内部には、磁束を集中させるためのヨーク57が収容されている。ヨーク57の内部には、磁石58が装着されており、磁石58の上面はヨーク57の底面に当接している。振動板56bは、フレーム51の上端に嵌挿され、その中心にはヨーク57が取り付けられている。振動子56bは、クッション部材60aを介して皮膚の表面と接触し、これによって、振動子56bの振動が頭部に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1では、面状の振動板がクッション部材を介して皮膚の表面と接触するため、皮膚に押し当てる圧力が大きくなると、振動板の振動が規制される。その結果、音の再現性に課題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、皮膚の表面と面状に接触する骨伝導スピーカーにおいて、音の再現性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、本発明は、筒状ケースと、蓋部と、金属製の板バネと、磁気ユニットと、コイルとを有し、皮膚の表面と面状に接触する骨伝導スピーカーを提供する。筒状ケースは、開口部を有する。蓋部は、筒状ケースの開口部を閉塞し、皮膚の表面と接触する平坦な接触面を有する。金属製の板バネは、筒状ケースの開口部の近傍において、蓋部の接触面と間隔を空けて対向し、かつ、筒状ケースによって周囲が支持されている。磁気ユニットは、筒状ケース内に収容され、板バネに取り付けられている。コイルは、磁気ユニットを電磁誘導によって振動させる。磁気ユニットは、板バネの中心に設けられた貫通孔と、板バネおよび磁気ユニットの間に介在するワッシャーと、磁気ユニットの中心に設けられた貫通孔とを貫通するハトメの端部をかしめることによって、板バネに取り付けられている。
【0007】
ここで、本発明において、上記板バネの周囲は、筒状ケースと、蓋部とによって、挟持されていることが好ましい。また、上記板バネは、例えばS字バネの如く、所定の形状にくり抜かれていることが好ましい。
【0008】
本発明において、上記磁気ユニットは、ヨークと、ヨークの内部に収容された磁石とを有していてもよい。この場合、磁気ユニットは、磁石の外周側と、ヨークの内周側との間のギャップに配置されたコイルの電磁誘導によって振動する。また、これに代えて、上記磁気ユニットは、ヨークと、第1の磁石と、第2の磁石とを有していてもよい。第1および第2の磁石は、ヨークの内部に収容され、第2の磁石は、第1の磁石の外周側に配置されている。この場合、磁気ユニットは、第1の磁石の外周側と、第2の磁石の内周側との間のギャップに配置されたコイルの電磁誘導によって振動する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、皮膚の表面と面状に接触する部材として、板バネとは別に、平坦な接触面を有する蓋部を設け、板バネと接触部との間に隙間を設けることで、接触面を皮膚に押し当てる圧力の如何を問わず、板バネの振動が規制されることがなくなり、音の再現性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】2コア構造の磁気ユニットを用いた骨伝導スピーカーの断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る骨伝導スピーカーの外観斜視図である。この骨伝導スピーカー1は、例えば直径12mm程度の円柱形状を有し、その上部には、視聴者の皮膚の表面と面状に接触する平坦な接触面2aが設けられている。また、骨伝導スピーカー1の下部には、一対の信号線3が接続されている。信号線4に音声信号を供給すると、骨伝導スピーカー1の内部において発生した電磁力によって接触面2aが振動し、この接触面2aを介して視聴者の骨に振動が伝達される。
【0012】
図2は、骨伝導スピーカー1の展開斜視図である。骨伝導スピーカー1は、蓋部2と、筒状ケース4と、板バネ5と、磁気ユニット6と、基板7と、コイル8とを主体に構成されている。筒状ケース4は、樹脂材で形成されており、上下が開口した円筒形状を有する。筒状ケース4の上開口部は、金属製の蓋部2によって閉塞されている。この蓋部2は、金属によって形成されており、円形の蓋形状を有する。また、蓋部2は、視聴者の皮膚の表面と接触する平坦な接触面2aを有する。
【0013】
筒状ケース4の内部には、ハトメ9によって一体化された、板バネ5および磁気ユニット6が収容されている。板バネ5は、金属製の薄板状の円形部材である。板バネ5は、その弾性力を高めるべく、一部が所定の形状にくり抜かれており、本実施形態ではステンレス製のS字バネを用いている。磁気ユニット6は、電磁誘導によって振動する振動源であり、その内部には磁石が設けられている。板バネ5および磁気ユニット6の双方の中心には、ハトメ9を挿通するための貫通孔が設けられている。板バネ5、ワッシャー10および磁気ユニット6が上から順に並んだ状態で上方からハトメ8を挿入し、ハトメ8の下端をかしめることで、これらが一体化される。板バネ5の周囲は、筒状ケース4によって支持されており、磁気ユニット4は、ハトメ9を介して、板バネ5の中央に取り付けられている。
【0014】
筒状ケース4の下開口部は、基板7によって閉塞されている。この基板7の下面には、上述した一対の信号線3が外部に引き出されている。また、基板7の上面には、金属細線を多重に巻回したコイル8が取り付けられている。このコイル8は、電磁誘導によって磁気ユニット6を振動させる。
【0015】
図3は、1コア構造の磁気ユニット6の展開斜視図である。この磁気ユニット6は、ヨーク6aと、磁石6bと、ポールピース6cとを有する。ヨーク6aは、円の周囲が軸方向に突出した形状を有しており、その内部には円筒状の磁石6bが収容されている。この磁石6bは、ヨーク6aと、ポールピース6cとによって挟持されており、これらはハトメ9によって一体化されている。
【0016】
図4は、骨伝導スピーカー1の断面図である。コイル8は、基板7の上面から上方に向かって突出しており、磁気ユニット6内のギャップ、具体的には、磁石6bの外周側と、ヨーク6aの内周側との間に形成された隙間に配置されている。板バネ5は、筒状ケース4の上開口部の近傍において、蓋部2が備える接触面2aと対向して配置されている。板バネ5および接触面2aは、接触面2aを皮膚に押し当てる圧力の影響や、ハトメ9と接触面2aとの干渉を防ぐために、所定の間隔を空けて配置されている。
【0017】
また、板バネ5の周囲は、筒状ケース4と蓋部2とによって挟持されている。具体的には、筒状ケース4の上開口部には、先端側に向かって内周径がR1に拡径するように、段差部4aが全周に亘って設けられている。一方、ほぼR1の外径を有する蓋部2には、平坦な接触面2aから下方に屈曲した屈曲部2bが全周に亘って設けられている。ほぼR1の外径を有する板バネ5は、段差部4aに配置された状態で、屈曲部2bの先端によって押さえられ、これによって、安定して支持される。
【0018】
磁気ユニット6としては、上述した1コア構造に代えて、2コア構造を用いてもよい。
図5は、2コア構造の磁気ユニット6を用いた骨伝導スピーカー1の断面図である。なお、
図4と同一の部材については同一の符号を付して、ここでの説明を省略する。
【0019】
この磁気ユニット6は、ヨーク6dと、内外の磁石6e,6fと、ポールピース6gとを有する。外磁石6fは、内磁石6eの外周側に配置されている。ヨーク6dおよびポールピース6gは、円板形状を有し、これらによって、内外の磁石6e,6fが挟持されている。基板7から突出したコイル8は、磁気ユニット6内のギャップ、具体的には、内磁石6eの外周側と、外磁石6fの内周側との間に形成された隙間に配置されている。
【0020】
図6は、2コア構造の磁気ユニット6を用いた骨伝導スピーカー1の出力特性に関する他社製品との比較図である。他社製の骨伝導スピーカーとして、BoCo、AfterShokz、Panasonicの3社の製品を用いた。この比較図から、本実施形態に係る骨伝導スピーカー1は、低音域の出力に優れ、高音域も業界最高レベルを実現していることが分かる。
【0021】
このように、本実施形態によれば、皮膚の表面と面状に接触する部材として、板バネ5とは別に、平坦な接触面2aを有する蓋部2を設け、板バネ5と接触面2aとの間に隙間を設けることで、接触面2aを皮膚に押し当てる圧力の如何を問わず、板バネ5の振動が規制されることがなくなり、骨伝導スピーカー1としての音の再現性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 骨伝導スピーカー
2 蓋部
2a 接触面
2b 屈曲部
3 信号線
4 筒状ケース
4a 段差部
5 板バネ
6 磁気ユニット
6a,6d ヨーク
6b,6e,6f 磁石
6c,6g ポールピース
7 基板
8 コイル
9 ハトメ
10 ワッシャー