(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】異物検出を備える超音波レンズクリーニングシステム
(51)【国際特許分類】
G03B 17/02 20210101AFI20230523BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20230523BHJP
G03B 15/00 20210101ALN20230523BHJP
【FI】
G03B17/02
G02B7/02 D
G03B15/00 V
G03B15/00 S
(21)【出願番号】P 2019551242
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(86)【国際出願番号】 US2017064530
(87)【国際公開番号】W WO2018106602
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-01
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】デビッド パトリック マギー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ジョン フェディガン
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0266379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
G02B 7/02
G02B 7/08
G03B 15/00
G03B 17/00
G02B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
レンズにトランスデューサを介して結合されるように適合されるドライバ出力を有するドライバであって、
前記ドライバ出力に結合されるフィードバック入力と、フィードバック出力とを有し、前記フィードバック入力に応答して前記トランスデューサの電気的特性を表すフィードバック信号を前記フィードバック出力に提供するように構成されるフィードバック回路
であって、前記フィードバック信号が、前記トランスデューサの電圧を表す電圧フィードバック信号と前記トランスデューサに流れる電流を表す電流フィードバック信号とを含む、前記フィードバック回路と、
前記フィードバック出力と前記ドライバ出力との間に結合されるコントローラであって、
前記トランスデューサが或る周波数範囲内の周波数で前記レンズを振動させるために発振駆動信号を前記ドライバ出力に提供し、
前記電圧フィードバック信号の電圧フェーザ値と前記電流フィードバック信号の電流フェーザ値との比としての周波数応答値を判定し、
前記
周波数応答値に応答して前記周波数範囲内の前記レンズの共振周波数を判定し、
前記判定された共振周波数と前記レンズのベースライン共振周波数との差に応答して、前記トランスデューサがレンズクリーニング動作において前記レンズを振動させるために前記ドライバ出力に前記駆動信号を選択的に提供する、
ように構成される、前記コントローラと、
を含む、前記ドライバを含む、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記コントローラが、
前記判定された共振周波数と前記ベースライン共振周波数との間の差の絶対値を計算し、
前記差の絶対値が非ゼロの周波数閾値より大きいか否かに応答して、前記レンズが汚染物質の閾値量を有するか否か判定する、
ように更に構成される、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
前記コントローラが、
前記周波数応答値に応答して前記レンズの周波数応答プロファイルを判定し、
前記周波数応答プロファイルの局所的最小値又は局所的最大値として前記共振周波数を判定する、
ように更に構成される、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、
前記コントローラが、前記判定された共振周波数に応答して、クリーニング電力レベル又はクリーニング期間を用いて前記レンズクリーニング動作において前記トランスデューサが前記レンズを振動させるために前記駆動信号を前記ドライバ出力に選択的に提供するように更に構成される、装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の装置であって、
前記コントローラが、
前記周波数応答値に応答して前記レンズの周波数応答プロファイルを判定し、
前記周波数応答プロファイルの局所的最小値又は局所的最大値として前記共振周波数を判定する、
ように更に構成される、装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
前記コントローラが、
前記周波数応答値に応答して前記レンズの周波数応答プロファイルを判定し、
前記周波数応答プロファイルの局所的最小値又は局所的最大値として前記共振周波数を判定する、
ように更に構成される、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、
前記コントローラが、
前記周波数応答値に応答して前記レンズのベースライン周波数応答プロファイルを判定し、
前記ベースライン周波数応答プロファイルをストアし、
前記ベースライン周波数応答プロファイルの局所的最小値又は局所的最大値として前記ベースライン共振周波数を識別する、
ように更に構成される、装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、
前記ドライバ出力と前記フィードバック回路と前記コントローラとが、単一集積回路の一部である、装置。
【請求項9】
装置であって、
レンズにトランスデューサを介して結合されるように適合されるドライバ出力を有するドライバであって、
前記ドライバ出力に結合されるフィードバック入力と、フィードバック出力とを有し、前記フィードバック入力に応答して前記トランスデューサの電圧を表す電圧フィードバック信号と前記トランスデューサに流れる電流を表す電流フィードバック信号とを含むフィードバック信号を前記フィードバック出力に提供するように構成されるフィードバック回路と、
前記フィードバック出力と前記ドライバ出力との間に結合されるコントローラであって、
前記トランスデューサが或る周波数範囲内の周波数で前記レンズを振動させるために発振駆動信号を前記ドライバ出力に提供し、
前記トランスデューサが前記レンズを前記周波数範囲内の周波数で振動させる間に、前記電圧フィードバック信号と前記電流フィードバック信号とに応答して周波数応答値を判定し、
前記周波数応答値に応答して前記周波数範囲内の前記レンズの共振周波数を判定し、
前記判定された共振周波数と前記レンズのベースライン共振周波数との差に応答して、前記トランスデューサがレンズクリーニング動作において前記レンズを振動させるために前記ドライバ出力に前記駆動信号を選択的に提供し、
前記判定された共振周波数と前記ベースライン共振周波数との間の差の絶対値を計算し、
前記
差の絶対値が第1の周波数閾値
より大きいか否かに応答して、前記レンズが汚染物質の閾値量を有するか否か判定し、
前記差の絶対値と前記第1の周波数閾値より大きい第2の周波数閾値とに応答して、クリーニングフェーズと前記クリーニングフェーズの電圧レベルと前記クリーニングフェーズの周波数掃引範囲と前記クリーニングフェーズの周波数掃引レートとを判定する
、
ように 構成される、
前記コントローラと、
を含む、装置。
【請求項10】
レンズクリーニングシステムであって、
レンズと、
前記レンズに機械的に結合されるトランスデューサと、
前記トランスデューサに結合されるドライバ出力を有するドライバであって、
前記ドライバ出力に結合されるフィードバック入力と、フィードバック出力とを有し、前記フィードバック入力に応答して前記トランスデューサの
電圧を表す
電圧フィードバック信号と前記トランスデューサに流れる電流を表す電流フィードバック信号とを含むフィードバック信号を前記フィードバック出力に提供するように構成されるフィードバック回路と、
前記フィードバック出力と前記ドライバ出力との間に結合されるコントローラであって、
前記トランスデューサが或る周波数範囲内の周波数で前記レンズを振動させるために発振駆動信号を前記ドライバ出力に提供し、
前記電圧フィードバック信号の電圧フェーザ値と前記電流フィードバック信号の電流フェーザ値との比としての周波数応答値を判定し、
前記
周波数応答値に応答して前記周波数範囲内の前記レンズの共振周波数を判定し、
前記判定された共振周波数とベースライン共振周波数との差に応答して、前記トランスデューサがレンズクリーニング動作において前記レンズを振動させるために前記ドライバ出力に前記駆動信号を選択的に提供する、
ように構成される、前記コントローラと、
を含む、前記ドライバと、
を含む、レンズクリーニングシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のレンズクリーニングシステムであって、
前記コントローラが、
前記判定された共振周波数と前記ベースライン共振周波数との間の差の絶対値を計算し、
前記差の絶対値が非ゼロの周波数閾値より大きいか否かに応答して、前記レンズが汚染物質の閾値量を有するか否か判定する、
ように更に構成される、レンズクリーニングシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のレンズクリーニングシステムであって、
前記コントローラが、
前記周波数応答値に応答して前記レンズの周波数応答プロファイルを判定し、
前記周波数応答プロファイルの局所的最小値又は局所的最大値として前記共振周波数を判定する、
ように更に構成される、レンズクリーニングシステム。
【請求項13】
請求項11に記載のレンズクリーニングシステムであって、
前記周波数閾値が第1の周波数閾値であり、
前記コントローラが、前記差の絶対値と前記第1の周波数閾値より大きい第2の周波数閾値とに応答して、クリーニングフェーズと前記クリーニングフェーズの電圧レベルと前記クリーニングフェーズの周波数掃引範囲と前記クリーニングフェーズの周波数掃引レートと前記クリーニングフェーズの期間とを判定するように更に構成される、レンズクリーニングシステム。
【請求項14】
請求項10に記載のレンズクリーニングシステムであって、
前記コントローラが、前記判定された共振周波数に応答して、クリーニングフェーズと前記クリーニングフェーズの電圧レベルと前記クリーニングフェーズの周波数掃引範囲と前記クリーニングフェーズの周波数掃引レートと前記クリーニングフェーズの期間とを用いて、前記トランスデューサが前記レンズクリーニング動作において前記レンズを振動させるために前記駆動信号を前記ドライバ出力に選択的に提供するように更に構成される、レンズクリーニングシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のレンズクリーニングシステムであって、
前記コントローラが、
前記周波数応答値に応答して前記レンズの周波数応答プロファイルを判定し、
前記周波数応答プロファイルの局所的最小値又は局所的最大値として前記共振周波数を判定する、
ように更に構成される、レンズクリーニングシステム。
【請求項16】
請求項10に記載のレンズクリーニングシステムであって、
前記コントローラが、
前記周波数応答値に応答して前記レンズの周波数応答プロファイルを判定し、
前記周波数応答プロファイルの局所的最小値又は局所的最大値として前記共振周波数を判定する、
ように更に構成される、レンズクリーニングシステム。
【請求項17】
請求項10に記載のレンズクリーニングシステムであって、
前記コントローラが、
前記周波数応答値に応答して前記レンズのベースライン周波数応答プロファイルを判定し、
前記ベースライン周波数応答プロファイルをストアし、
前記ベースライン周波数応答プロファイルの局所的最小値又は局所的最大値として前記ベースライン共振周波数を識別する、
ように更に構成される、レンズクリーニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
カメラシステムは、車両カメラ、防犯カメラ、産業オートメーションシステムなど、オートモーティブ及びその他の応用例において、並びに、その他の応用例及び最終用途システムにおいて、一層普及してきている。カメラ及び照明システムの動作はクリーンな光路によって促進され、こうした光路は、例えば、車載カメラシステム、屋外防犯カメラシステム、産業施設におけるカメラシステム等、特に屋外の応用例において、汚れ、水分又はその他のデブリによって妨げられることがある。例えば、カメラ又は光源レンズは、周囲の気象条件、汚れ及びデブリ、並びに、レンズを通した光透過を妨害し得る又は光透過と干渉し得るその他の汚染物質に影響され得る。レンズ又はレンズカバーをセルフクリーニングするために車両及び防犯カメラに対して自動レンズクリーニングシステム(LCS)が開発されてきている。そのようなシステムは、レンズ表面を洗浄するために、空気又は水噴霧装置や、機械的ワイパーを含み得る。その他のレンズクリーニングシステムが、汚染物質、水分、又はその他の望ましくない材料をレンズカバーから取り除いて画質又は光透過効率を改善するために、レンズを電子的に振動させる。超音波による機械的励起又は振動が、特に、オートモーティブカメラシステムレンズ(例えば、リアビュー及びサラウンドビューシステム)をクリーニングするために、水噴霧、機械的ワイパー、又は空気ジェット解決策よりも費用効果の高いアプローチであることが証明されている。多くの応用例において、クリーンなレンズが正確なシステム動作にとって重要である。しかし、超音波クリーニングシステムは連続使用によって摩耗することがある。また、レンズを振動させるためにトランスデューサを作動させると電力が消費され、不必要なクリーニングが過度の電力消費となる。バッテリ電力を用いる車両システム又はその他の応用例において、電力を節約する一方で、カメラシステム及び照明応用例のためのレンズの適切なクリーン度を維持することが望ましい。
【発明の概要】
【0002】
説明される例が、レンズに機械的に結合されるトランスデューサと、発振駆動信号をトランスデューサに提供するためのドライバと、注目の範囲の周波数でレンズを振動させるように駆動信号周波数を制御するためのコントローラとを含む、レンズクリーニングシステム、ドライバ、及び動作方法を含む。コントローラは、トランスデューサフィードバック信号に従って、注目の周波数範囲のレンズクリーニングシステムの測定された共振周波数を判定し、測定された共振周波数が、クリーンなレンズのためのレンズクリーニングシステムのベースライン共振周波数とは異なる場合、レンズクリーニング動作を選択的に行う。例えば、レンズクリーニングシステムの周波数応答は、注目の共振周波数を評価するために用いられる。周波数応答は、インピーダンス応答、アドミタンス応答、又はその他の周波数ドメイン等価物として測定され得る。
【0003】
説明される例は、レンズ上の汚染物質の存在を検出して、適宜、インテリジェントなクリーニングを促進するため、及び、汚染物質がほとんどないか全くないときレンズクリーニングを選択的にやめるための、レンズクリーニング解決策を提供する。幾つかの例において、トランスデューサ電力レベル及び/又はクリーニング期間などのクリーニングレベルが、ベースライン共振周波数からの変化の量に従って判定される。この技法は、大量の汚染物質を除去するための高出力クリーニングを促進する一方で、少量の検出された汚染物質を除去するために簡単なクリーニングを用いることにより、又は、レンズがクリーンであると判定されるときクリーニングを遅延することにより、電力を節約する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】レンズクリーニングシステムの概略図である。
【0005】
【
図2】レンズクリーニングシステムを含むカメラレンズアセンブリの部分的断面側面図である。
【0006】
【
図3】例示のレンズクリーニングプロセス又は方法のフローチャートである。
【0007】
【
図4】クリーンなレンズを備えるレンズクリーニングシステムのための励起周波数を関数とした、例示のインピーダンスマグニチュード応答曲線のグラフである。
【0008】
【
図5】クリーンなレンズを備えるレンズクリーニングシステムのための励起周波数を関数とした、例示のインピーダンス位相角応答曲線のグラフである。
【0009】
【
図6】レンズクリーニングシステムのための質量の変化を関数とした、正規化された固有周波数変化のグラフである。
【
図7】レンズクリーニングシステムのための質量の変化を関数とした、正規化された固有周波数変化のグラフである。
【0010】
【
図8】クリーンなレンズを備え、水分及び泥汚染物質を有するレンズを備える、レンズクリーニングシステムのための励起周波数を関数とした、例示のインピーダンスマグニチュード応答曲線のグラフである。
【0011】
【
図9】クリーンなレンズを備え、水分及び泥汚染物質を有するレンズを備える、レンズクリーニングシステムのための励起周波数を関数とした、例示のインピーダンス位相角応答曲線のグラフである。
【0012】
【
図10】クリーンなレンズを備え、第1の範囲において様々な量の水分汚染物質を有するレンズを備える、レンズクリーニングシステムのための、注目の周波数範囲の励起周波数を関数とした、例示のインピーダンスマグニチュード応答曲線のグラフである。
【0013】
【
図11】クリーンなレンズを備え、第2の範囲において様々な量の水分汚染物質を有するレンズを備える、レンズクリーニングシステムのための、注目の周波数範囲の励起周波数を関数とした、例示のインピーダンスマグニチュード応答曲線のグラフである。
【0014】
【
図12】レンズクリーニングシステムのための質量の変化を関数とした、正規化された固有周波数変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面において、同様の参照数字は全体を通して同様の要素を指し、種々の特徴は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。本記載において、「結合する」という用語は、間接的又は直接的な、電気的又は機械的接続、或いは、それらの組み合わせを含む。例えば、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する、又は、第2のデバイスと結合される場合、そうした接続は、直接的電気接続を介するもの、或いは、一つ又は複数の介在デバイス及び接続を介する間接的電気接続を介するものであり得る。
【0016】
図1は、ドライバ集積回路(IC)100を備える超音波レンズクリーニングシステムを示し、
図2は、超音波レンズクリーニングシステムを含むカメラレンズアセンブリ200を示す。
図2に示すように、レンズアセンブリ200は、レンズ202を振動させるように機械的に結合される円筒状又は「環状」トランスデューサ102を含む。一例において、トランスデューサ102はレンズ202に接合される。カメラレンズシステムの文脈において例示されるが、本説明の種々の技法は、カメラを備える又はカメラの無い照明システム又はその他の光学システムにおいても用いられ得る。本明細書において説明されるように、装置及び技法は、レンズ202上の汚染物質の存在又は実質的不在の自動検出を促進し、閾値量の汚染物質が検出されたとき選択的レンズクリーニングのために有利に用いられ得る。また、幾つかの例が、レンズ202上に存在する汚染物質の量の判定に基づくクリーニング電力及び/又はクリーニング期間などの、一つ又は複数のクリーニングパラメータの閾値ベースの判定を提供する。本説明の技法は、汚染物質検出のみに用いられ得る。また、例えば、説明される装置及び方法は、自動レンズクリーニング動作のためにも用いられ得る、コントローラ130及びトランスデューサ102を有するレンズクリーニングシステムにおいて用いられ得る。本明細書において用いられるように、レンズは、焦点調整要素、又は、カメラ撮像を助けるために光学整形若しくはその他の光学効果を実装するその他のレンズであり得、或いは、いかなる撮像機能も行わない更なる光学要素のための保護を単に提供するレンズカバー又は光学窓であり得る。
【0017】
一例において、レンズ202は、
図2に示すように湾曲した外部表面を有する「魚眼」レンズである。その他の例において、平坦なレンズ又は様々な外形を有するレンズが用いられ得る。この例において、レンズアセンブリは、円筒状キャップファスナー201を用いて概ね円筒状のハウジング204に搭載され、ハウジング204の内部への水分又はデブリの進入を防ぐために、レンズ202の端部とファスナー201との間に延在するOリング208を用いて封止される。一例において、ハウジング204は、リアバックアップカメラ、前向きカメラ、又は横向きカメラのためのレンズカバーとして動作するように、自動車に搭載され得る。その他の例において、アセンブリ200は、防犯カメラ又は照明応用例のためなど、建物又は街灯に搭載され得る。その他の例において、アセンブリ200は、商業又は居住建物内などの内部防犯監視システムのために用いられ得る。この例において、一連の概ね平坦な二次レンズ210が、スペーサ206の内側表面内に配置される。二次レンズ210及び魚眼レンズ202は、カメラ212による撮像のための光路を提供する。トランスデューサ102は、ドライバIC100との接続のために、ハウジング204のベース214における開口216を介して延在する、リードワイヤ又は端子131a及び131bを含む。
図2の例において、レンズ202は円筒状内側スペーサ構造206を備える円筒状ハウジング204内に搭載される。この例において、トランスデューサ102は、内側スペーサ206とハウジング204の外壁との間に配置される、円筒状環状形状の圧電性トランスデューサである。
【0018】
図1に最も良く示されるように、ドライバIC100は、電力入力ピン又はパッド106を含み、電力入力ピン又はパッド106は、基準電圧(例えば、GND)を有する基準ノード108に対してバッテリ電圧信号VBを提供するバッテリなどの、電力供給又は電力源104から入力電力を受け取る。ドライバIC100は電力管理回路110を含み、電力管理回路110は、バッテリ電圧信号VBを受け取り、ドライバ100の内部回路要素を給電するために、一つ又は複数の供給電圧(図示せず)を提供する。また、IC100は、トランスデューサ102の、それぞれ、リードワイヤ131a及び131bへの接続のための端子112及び114を備える出力を含む。動作において、ドライバ100出力は、レンズ202を振動させるために、非ゼロ周波数Ftでの発振駆動信号VDRVをトランスデューサ102に提供する。下記でさらに説明されるように、トランスデューサ102の励起を介するレンズ202の制御された振動は、レンズ202の外側表面からの汚染物質又はデブリのクリーニング又は除去を促進する。また、トランスデューサ102は、レンズ202のクリーン度を評価するため、及び、レンズ202上の汚染物質の判定された存在及び量に従って適宜レンズ202を選択的にクリーニングするため、異なるモードでドライバ100によって制御される。また、幾つかの例において、ドライバIC100は、レンズ202上の汚染物質の存在又は不在の後続の判定を促進するため、クリーンなレンズ202を有するシステムのための共振周波数を識別するために、一つ又は複数のベースラインプロファイルを決定する。
【0019】
図1に示すように、ドライバIC100は、信号生成器116を備えるコントローラ又は制御回路130を含む。一例において、コントローラ130は、関連する電子メモリを備えるプロセッサである。コントローラ130は、トランスデューサ102の発振周波数Ftを制御することによって、種々のクリーニング、クリーン度検出、及び、任意選択の較正又はベースライン処理機能を実装する。一例において、コントローラ130は、所望の周波数Ftを信号生成器回路116に提供する出力124を備える、掃引及び共振トラッキングクリーン度検出回路122を含む。別の可能な実装において、コントローラ130は、DSP又はその他のプログラム可能なデジタル回路などのプロセッサにおいて実装され、こうしたプロセッサは、駆動信号VDRVの所望の周波数Ftを表すデジタル値として周波数Ftを生成するために、関連するメモリにストアされた命令の実行を介して、掃引及び共振トラッキングクリーン度検出及び較正機能を実装する。一例において、信号生成器116は、コントローラ130を実装するプロセッサのパルス幅変調(PWM)出力である。信号生成器回路116は、非ゼロ周波数Ftにおいて発振する出力信号VSを提供する。幾つかの実装において、コントローラ130は、集積された電子メモリを含み、又は、外部電子メモリ150に動作可能に接続される。外部電子メモリ150は、プロセッサによって実装されるプログラム命令をストアし、及び、下記でさらに説明されるようなクリーンなレンズ202を有するレンズクリーニングシステムの周波数応答を表すベースラインインピーダンス値152などの、ベースライン周波数応答値152を含むベースラインプロファイルをストアする。
【0020】
ドライバIC100はさらに、発振駆動信号VDRVを生成するために出力信号VSを増幅する増幅器118を含む。このようにして、コントローラ130は、駆動信号VDRVの所望の周波数Ftを提供し、それにより、レンズ202をクリーニングするため、及び/又は、本明細書において説明されるようなベースライン較正及びクリーン度検出機能を実装するために、トランスデューサ102の発振周波数を制御する。一例において、増幅器118は、発振駆動信号VDRVをトランスデューサ102に提供するためにトランスデューサ端子131a及び131bと個別に結合される第1及び第2の出力を備える、フルHブリッジ増幅器回路である。また、
図1の例において、L-Cフィルタ回路119が、増幅器出力とトランスデューサ端子131a及び131bとの間に接続される。一つの可能な実装において、フィルタ119は、増幅器118の第1の出力と第1のトランスデューサ端子131aとの間に接続される第1のフィルタ回路119a、及び、増幅器118の第2の出力と第2のトランスデューサ端子131bとの間に接続される第2のフィルタ回路119bを含む。種々の異なる信号生成器回路116が用いられ得、信号生成器回路116には、変調された矩形波信号VSを生成するPWMプロセッサ出力、又は、変調された正弦波形、変調された三角波形、変調された鋸歯波形、若しくは非ゼロ信号周波数Ftを有するその他の波形を提供するためのその他の信号生成器回路要素が含まれる。一例において、増幅器118の第1の出力は、発振駆動信号をトランスデューサ102に搬送し、第2の増幅器出力は、第1の出力に関して180度位相がずれた発振駆動信号をトランスデューサ102に搬送する。
【0021】
幾つかの例において、増幅器118は、第1のフィルタ回路119aを介して第1の出力端子112にシングルエンド出力を提供し得、トランスデューサ102からのリターン電流が、第2のフィルタ回路119bを介して流れて増幅器118の第2の出力に戻る。図示される例において、増幅器118は、フィルタ119a、119bに差動出力を提供する。この場合、個々のフィルタ回路119a及び119bは、各々、増幅された信号をトランスデューサ102に搬送するために、第2のインダクタ端子と共通基準電圧(例えば、GND)との間に接続される直列インダクタ及びコンデンサを含む。このようにして、増幅器118は、信号生成器出力信号VSを増幅し、発振駆動信号VDRVをトランスデューサ102に搬送する。フィルタ回路119は、トランスデューサ102及び機械的に結合されたレンズ202を振動させるため、概して正弦波の発振信号VDRVを提供するために、PWM信号生成器116からの変調された矩形波出力の使用を有利にも可能とする。
【0022】
また、ドライバIC100は、トランスデューサ102の電気的特性を表す一つ又は複数のフィードバック信号を生成するフィードバック回路を含む。一例において、フィードバック回路は、電流センサ又は電流トランスデューサ120、及び、トランスデューサ102を介して流れる電流IDRVを表す電流フィードバック信号IFBを含む。また、フィードバック回路要素は、トランスデューサ出力端子112及び114間に接続される入力を備える差動増幅器132と、トランスデューサ電圧を表す電圧フィードバック信号VFBを生成する増幅器出力とを含む。フィードバック信号IFB及びVFBはコントローラ130に提供される。一例において、コントローラ130は、それぞれ、電流及び電圧フィードバック信号IFB及びVFBをデジタル値に変換するために、アナログ-デジタル(A/D)コンバータ135及び134を含む。一つの可能な実装において、コントローラ130、増幅器118、出力フィルタ回路要素119、及びフィードバック回路要素は、単一集積回路100に製造される。ドライバ100は、一般に、種々の車両ベースのシステム及び/又は防犯カメラシステム又は照明システムのためのコンパクトな解決策を提供するために、カメラ212(又は光源)と共に単一印刷回路基板(PCB)上に提供され得る。
【0023】
ドライバIC100は、関連するトランスデューサ102に関連して、超音波レンズクリーニング機能を選択的に提供するため通常モードで動作する。
図2におけるレンズ202の外側表面は、特に屋外設置の場合、本明細書において汚染物質と呼ぶ、汚れ、デブリ、水分、及びその他の光学障害物に晒され得る。ドライバ100は、レンズ202のクリーニングを促進又は助長するために、トランスデューサ102にレンズ202を振動させるため、発振信号を提供する。一例において、ドライバ100は、トランスデューサ102を作動させるため、及び、トランスデューサ102に、超音波を用いてレンズ202を機械的に振動させて、レンズ202の表面から汚れ及び/又は水分を除去するために、超音波駆動信号又は電圧波形VDRVを提供する。システム共振周波数における又はシステム共振周波数に近い周波数の超音波でのレンズ202の機械的発振又は動きが、レンズ202からの、水分、汚れ、及び/又はデブリのエネルギー効率の良い除去を促進し得る。一例において、ドライバIC100は、レンズクリーニング動作の間、フィードバック信号IFB及び/又はVFBを用いる閉ループシステムを提供する。一例において、ドライバIC100は、一つ又は複数のフィードバック信号から確認される電流又はインピーダンス信号値における局所的最小値又は最大値で、又はそれらの値辺りでの動作をレギュレートする。別の可能な実装において、コントローラ130は、レンズ202上の特定の検出された量の汚染物質の除去を促進するために、クリーン度検出動作の間に判定される測定された共振周波数FZMに従って周波数Ftを制御する。一例において、コントローラ130は、レンズクリーニング動作のためのトランスデューサ102の駆動において閉ループ制御を実装するために、A/Dコンバータ134及び/又は135からの変換された値を用いる。
【0024】
また、コントローラ130は、レンズ202上の汚染物質の存在又は不在を検出するためクリーン度検出モードで動作する。或る例示の実装において、コントローラ130は、クリーン度検出動作の間、測定された共振周波数FZMを判定し、クリーニングが適切であると判定された場合、判定された測定された共振周波数FZMに対応する周波数Ftでクリーニング動作を開始し、所与のクリーニング動作のための判定されたクリーニング期間にわたって、動作周波数Ftを、前もって判定されたベースライン共振周波数FZBに徐々に遷移させる。また、後述されるように、幾つかの例において、コントローラ130は、まず、クリーニングが適切かどうかを確かめ、クリーニングが適切である場合、為されるべきクリーニングの量又はレベルを確かめるために、所与のクリーニングサイクルにおいて選択的クリーニングを実装する。レンズ202が実質的にクリーンであると判定される場合、コントローラ130は、そのクリーニングサイクルにおいてクリーニング動作を行うことをやめる。このようにして、コントローラ130は、電力を有利に節約し、不要な場合、クリーニングを選択的に回避する。また、クリーン度検出モード動作の間の測定された共振周波数FZMの初期判定によって、コントローラ130は、測定された共振周波数FZMに基づきクリーニングの複数のレベルを選択的に用い得る。また、コントローラ130は、測定された共振周波数FZMに基づくクリーニング期間及び/又はクリーニング電力など、対応するクリーニングパラメータを選択的に判定する。また、
図1に示すように、幾つかの例において、コントローラ130は、レンズ202上の汚染物質の検出を示すために、信号CONTAMINANTをドライバIC出力146を介してホストシステム148に出力する。
【0025】
図1に示すように、アナログフィードバック信号VFB及びIFBは、A/Dコンバータ134及び135によってデジタル値に変換される。一例において、コントローラ130は、コンバータ134及び135からの時間ドメインデジタル電圧及び電流フィードバック値に基づいて、それぞれ、電圧及び電流フェーザ値138及び139を提供するために、離散フーリエ変換(DFT)構成要素136及び137を算出する。また、コントローラ130は、所与のサンプルのための電圧フェーザ値138に対する電流フェーザ値139の比として、掃引インピーダンス値142などの掃引周波数応答値を計算するために、複素数除算(DIVIDE)機能140を実装する。この点について、A/Dコンバータは、駆動されたトランスデューサ102に関連するフィードバック電圧及び電流を表すデジタル値のストリームを取得するために、充分に高いサンプル周波数で動作する。コントローラ130のプロセッサによるプログラム命令の実行によって実装される処理は、周波数応答値(例えば、インピーダンス値142)のストリームを提供する。注目の所定の周波数範囲における複数の周波数の掃引に対し、一連の周波数応答値142が、周波数の関数として周波数応答プロファイルを提供する。
【0026】
レンズ202上の汚染物質の存在又は不在は、レンズクリーニングシステムの質量に影響を及ぼし、それゆえ、共振周波数に影響する。測定された周波数応答(例えば、インピーダンス)プロファイルの局所的最小値及び/又は最大値が、レンズ202上の汚染物質の付加的な質量を含むレンズクリーニングシステムの機械的インピーダンスに関連する測定された共振又は測定された共振周波数FZMを識別又は判定するために用いられ得る。この原則に基づいて、一例において、コントローラ130は、異なる周波数におけるインピーダンス測定を介して判定される、測定された共振周波数値FZMを比較し、測定された共振周波数値を、実質的にクリーンなレンズ202を有するレンズクリーニングシステムに対応するベースライン共振周波数値FZBと比較する。これらの周波数値間の差は、一つ又は複数のアクションを自動的に取るために、又は、一つ又は複数の制御アクションをやめるために、一つ又は複数の閾値と比較され得る。例えば、第1の閾値量の差が検出されない場合、コントローラ130は、後続のクリーニングサイクルまでレンズクリーニング動作を行うことをやめ得る。幾つかの例において、この比較を介して周波数変化の初期閾値量が検出される場合、コントローラ130はさらに、この周波数差を第2の一層高い閾値と比較し得、それに応じて、一つ又は複数のクリーニングパラメータを設定し得る。
【0027】
図示される例において、コントローラ130は、注目の周波数範囲において複数の周波数でレンズ202を振動させるために、駆動信号VDRVの周波数Ftを制御する。一実装において、コントローラ130は、注目の一つ又は複数の所定の周波数範囲に対して周波数掃引を行う。コントローラ130は、周波数掃引の間、フィードバック信号をデジタル方式で変換し、周波数スペクトルフェーザ情報138及び139を取得し、注目の範囲の周波数に対応する掃引周波数応答値142を取得するためにこれらの値140を除算する。また、コントローラ130は、掃引周波数応答値142から、測定された共振周波数FZMを判定し、比較機能144を実装する。比較機能144は、測定された共振周波数FZMを、クリーンなレンズ202のための注目の所与の周波数範囲の周波数の対応する一つに関連するベースライン共振周波数値FZBと比較する。コントローラ130は、測定された共振周波数FZMとベースライン共振周波数値FZBとの差の絶対値に従って、レンズ202上の汚染物質の存在又は存在を選択的に判定するために、こうした比較を用いる。一例において、この比較は、一つ又は複数の閾値に従って行われ得る。コントローラ130は、連続的掃引を行う必要がなく、その代わりに、注目の所定の周波数範囲に含まれる一つ又は複数の周波数でレンズ202を振動させるために、レンズトランスデューサ駆動信号周波数Ftを制御し得、ドライバフィードバック信号VFB、IFBに従って、対応する周波数応答値142と、一つ又は複数の測定された共振周波数値FZMとを計算する。
【0028】
また、
図3~
図5を参照すると、
図3は、超音波レンズクリーニングシステムを動作させるための例示のプロセス又は方法300を示す。幾つかの例において、方法300は、上記したレンズクリーニングシステムドライバコントローラ130などの、コントローラ又はプロセッサによって実装され得る。種々の実装において、方法300は、
図3に図示されるような、クリーン度検出動作、及び選択的超音波レンズクリーニング動作を含み得る。更なる可能な実装において、また、方法300は、対応するベースライン周波数応答値152と、クリーンなレンズ202を備える関連するレンズクリーニングシステムに対応する一つ又は複数のベースライン共振周波数値とを含む、メモリ150にストアされる一つ又は複数のベースラインプロファイルを確立するために、初期較正又はベースライン処理シーケンスを含み得る。一例において、
図1及び
図2のレンズクリーニングシステムのコントローラ130は、304~310でのレンズ202上の閾値量の汚染物質の検出のための、及び、314~318での選択的超音波クリーニングのための方法300を実装するようにプログラム又は構成される。クリーン度検出動作は、ベースライン周波数応答値(例えば、インピーダンス値)152と、ベースライン周波数応答値152から導出される一つ又は複数のベースライン共振周波数FZBとを含む、メモリ150(
図1)にストアされるベースライン周波数応答プロファイル情報を用いる。
【0029】
図4は、一例の実装において10~1000kHzなど、広い範囲403にわたるトランスデューサ励起周波数の関数として、例示のインピーダンスマグニチュード応答曲線402を示すグラフ400を提供する。インピーダンスマグニチュード応答曲線402は、範囲403にわたる異なる周波数における複数の周波数応答値など、メモリ150にストアされ得るベースライン周波数応答プロファイルを表す。一般に光学システムにおいて、特にレンズクリーニングシステムにおいて用いられる構造的構成要素の種々の質量に依る使用可能な範囲を好ましくはカバーするその他の範囲が用いられ得る。
図5は、同じ広い周波数範囲403にわたるトランスデューサ励起周波数の関数として、例示の位相角応答曲線502を示す、対応するグラフ500を提供する。この例では、インピーダンス曲線402は、機械的システムの極に対応するいくつかの局所的最大値、及び、システムゼロに対応するいくつかの局所的最小値を含む。位相曲線502の局所的最大値が、インピーダンス曲線402の極とゼロ周波数との間の幾何平均にある。グラフ400及び500は、対応する極FPB(局所的最大値)及びゼロFZM(局所的最小値)を有する注目の例示の周波数範囲404を示す。
【0030】
ベースライン処理又は較正は、工場での較正動作の間に実装され得、及び/又は、レンズ202がクリーンであると知られている又は信じられているとき、インストールされたホストシステムにおいて実装され得る。一例において、コントローラ130は、ベースライン周波数応答プロファイル150を測定する。ベースライン周波数応答プロファイル150は、
図4及び
図5における注目の周波数範囲404を含む周波数の広い範囲403にわたって、クリーンなレンズ202を備えるレンズクリーニングシステムのために測定される周波数応答値152を含む。コントローラ130は、ベースライン周波数応答プロファイルを、レンズクリーニングシステムのメモリ150にストアする。また、幾つかの実装において、コントローラ130は、注目の一つ又は複数の周波数範囲404を判定する。
図4及び
図5の例において、注目の識別される周波数範囲404は、例示の平面の(すなわち、平坦な)レンズ202に関して約20kHzから30kHzまで及ぶ。この例において、注目の識別される周波数範囲404は、約28.4kHzにおいて極FPBを、及び、約28.2kHzにおいてゼロFZBを含む。局所的ゼロFZBは、平面の又は平坦なレンズに関してレンズ202が実質的にクリーンである(すなわち、汚染物質がない)ときのレンズクリーニングシステムの固有共振周波数を表す。この例において、識別されるゼロFZBは、トランスデューサ102の面外運動に対応する。
【0031】
また、
図4及び
図5において、ベースライン周波数応答プロファイル402は、約44kHzにおいて図示されるものを含め、種々のその他の極-ゼロペアを含む。この例において、平坦な又は平面のレンズ202に関し、44kHzにおける極-ゼロペアは面内運動を表し、それゆえ、注目の周波数範囲として用いられない。というのも、レンズ202上の外側表面上の汚染物質が、トランスデューサ102のこの動作周波数におけるシステムの共振周波数に対して著しい影響を有する見込みがないからである。幾つかのシステムにおいて、物質がレンズ202に付加されても、共振モードの有効質量が変化しないので、汚染物質がレンズ202上に存在する場合、固有周波数の全てが変化するわけではない。例えば、
図4及び
図5における44kHzの固有周波数は、有効質量が変化しない半径方向モードに対応する。これは、レンズ202が半径方向に振動するとき、汚染物質を移動させるほど剪断力が充分に強くないからである。コントローラ130は、システムの共振周波数の変化がレンズ202上の汚染物質の存在を示す、任意の数の注目の適格周波数範囲を識別し得る。識別される一つ又は複数のベースライン共振周波数、並びに、識別及びストアされる注目の対応する周波数範囲を用いて、コントローラ130は、ホストシステム148の動作の間、周期的クリーニングサイクルスケジュールなど、クリーニング規則を実装するように動作し得る。
【0032】
また、
図6及び
図7を参照すると、
図1及び
図2のレンズクリーニング装置などの機械的システムの共振周波数は、固有周波数ω
nと呼ぶことがある。というのも、機械的システムは、この特定の周波数において正弦曲線によって励起されるとき、自然に振動するからである。固有周波数は、次の式(1)に従って数学的に表され得る。
ここで、kは、機械的システムの有効剛度(例えば、N/m単位)であり、mは、機械的システムの有効質量(例えば、kg単位)である。レンズカバー上の付加的な物質に起因する固有周波数の予測される変化は、次の式(2)によって数学的に表され得る。
ここで、
は、固有周波数の正規化された変化(無名数)であり、
は、質量の正規化された変化(無名数)である。
【0033】
図6は、質量の正規化された変化の関数として、固有周波数の正規化された変化を図示する曲線602を含むグラフ600を示す。グラフ600に示すように、固有周波数の正規化された変化は、質量の小さな正規化された変化(例えば、10%未満)に対して非常に敏感である。質量の大きな正規化された変化(例えば、40%以上)の場合、感度ははるかに低い。しかし、正規化された変化の値は、依然としてかなり大きく(例えば、約90%)、そのため、質量変化が依然として容易に検出し得る。
図7におけるグラフ700は、-5%から+17%の一層小さな質量変化範囲にわたる曲線702を含む。質量の変化に対する固有周波数感度は、小さな変化に対して特に顕著であり、質量の10%正規化された変化は、約70%の固有周波数の正規化された変化となる。固有周波数感度は、物質がレンズ202上に存在する場合を検出するために用いられ得る。
【0034】
また、
図7及び
図8を参照すると、コントローラ130は、
図3における302で新たなクリーニングサイクルを開始する。一つの可能な実装において、コントローラ130は、ホストシステム148の動作の間、新たなクリーニングサイクルを周期的に開始する。例えば、レンズクリーニングシステムは、一つ又は複数の車両制御機能、ユーザインターフェース機能、又はその他の機能において用いるためにホスト車両の制御システムに情報を提供するために用いられる車両ベースのカメラシステムにインストールされ得、コントローラ130は、所定の又は構成可能な時間間隔に従って、及び/又は、ホストシステム148からの要求に応じて、新たな制御サイクルを周期的に実装し得る。
【0035】
図3における304で、コントローラ130は、注目の周波数範囲404において複数の周波数でレンズ202を振動させるために、駆動信号VDRVの周波数Ftを制御する。一例において、コントローラ130は、連続的掃引として注目の範囲404を掃引し、A/Dコンバータ134及び135による変換のためフィードバック信号VFB及びIFBのサンプルを取得する。その他の例において、302で、コントローラ130は、注目の周波数範囲404における複数の特定の周波数で周波数Ftを設定し、変換されたフィードバック信号に対応する、対応するデジタル値を取得する。コントローラ130は、注目の範囲404における複数の周波数に対応する、対応する測定された周波数応答値を判定するために、本明細書において説明されるような所与のサンプルのための電圧フェーザ値138に対する電流フェーザ値139の比として掃引周波数応答値142を計算する。
【0036】
306で、コントローラ130は、一つ又は複数のフィードバック信号IFB、VFBに従って、システムの測定された共振周波数を判定する。図示される実装において、コントローラ130は、測定された周波数応答値142を掃引から導出するためにフィードバック信号を用いる。一例において、コントローラ130は、注目の対応する周波数範囲404のための測定された周波数応答値142における局所的最大値又は局所的最小値を識別する。以下の説明において、コントローラ130は、著しい共振周波数変化を検出するためにゼロ位置を用いる。代替として、その他の実装において極位置が用いられ得る。
【0037】
308及び310で、コントローラ130は、ベースライン共振周波数値(例えば、FZB)を、測定された共振周波数値(例えば、FZM)と比較し、その差に従って、レンズ202上の閾値量の汚染物質の存在又は不在を選択的に判定する。
図3における308で、コントローラ130は、評価された注目の周波数範囲404のための測定された共振周波数値とベースライン共振周波数値との差の絶対値として共振周波数差値を計算する(例えば、|ΔFZ|=|FZB-FZM|)。310で、コントローラ130は、レンズが、クリーニングを必要とするのに充分な量の汚染物質を有するかどうかの初期判定をするために、共振周波数差値|ΔFZ|を、第1の閾値非ゼロFTHlと比較する。例えば、共振周波数差値|ΔFZ|がFTHlより大きい場合、コントローラ130は、閾値量の汚染物質がレンズ202上にあると判定する。共振周波数差値が閾値を超えない場合(310でNO)、コントローラ130は、312で、このクリーニングサイクルに対してクリーニングは必要ないと判定し、プロセス300は、上記したように302で次のクリーニングサイクルを開始するために戻る。
【0038】
図3における314で、閾値量の周波数変化が生じた場合(310でYES)、コントローラ130は、閾値量の汚染物質がレンズ202上にあると判定する。一例において、コントローラ130は出力146(
図1)を含む。出力146は、
図3における314で、レンズ202上の閾値量の汚染物質の存在の判定に応答して、ホストシステム148に信号CONTAMINANTを選択的に提供する。
【0039】
幾つかの例において、コントローラ130は、例えば、第2の閾値比較を用いて、レンズ202上の汚染物質の様々な量を区別するために、差値|ΔFZ|の振幅を用いる。このアーキテクチャは、ホストシステムによる適切な改善動作を促進する。316で、コントローラ130は、|ΔFZ|の振幅に従って、一つ又は複数のクリーニングパラメータを判定する。一例において、コントローラ130は、差値|ΔFZ|の振幅を第2の閾値FTH2と比較する。ここで、FTH2>FTH1である。また、幾つかの実装において、コントローラ130は、318で、例えば、クリーニングフェーズの数、各フェーズのクリーニング期間、各フェーズのクリーニング電力、各フェーズのクリーニング電圧、各フェーズのクリーニング周波数範囲、各フェーズのクリーニング周波数ランプレート等の、任意の実装されるクリーニングプロセスのための一つ又は複数のクリーニングパラメータを選択的に設定するため、差値|ΔFZ|の振幅を比較する。
【0040】
図8及び
図9は、クリーンなレンズを有するシステム、水分汚染を備えるレンズを有するシステム、及び泥汚染を備えるレンズを有するシステムのための例示の曲線を図示する、トランスデューサ励起周波数の関数として、インピーダンスマグニチュード及び位相角応答曲線を提供する。
図8及び
図9の例は、平坦なレンズ202に対して上記した
図4及び
図5において図示される広い周波数範囲403にわたるレンズクリーニングシステム応答に対応する。
図8におけるグラフ800は、(例えば、上記した
図4にも示したような)システムにおけるクリーンなレンズ202に対応する曲線402を含む。グラフ800はさらに、レンズ202上に水分汚染を備えるシステムのインピーダンスマグニチュード応答を表す曲線802、及びレンズ202上に泥汚染を備えるシステムのインピーダンスマグニチュード応答を示す曲線804を含む。
図9におけるグラフ900は、クリーンなレンズ202に対応する、対応するインピーダンス位相応答曲線402と、水分汚染及び泥汚染を備えるレンズ202のためのインピーダンス位相応答をそれぞれ示す、曲線902及び904とを示す。
図4に関連して上記したように、
図8におけるグラフ800は、注目の周波数範囲404内の、ベースライン極周波数FPB及びベースラインゼロ周波数FZBを示す。
図9における曲線402は、
図8の曲線402における局所的最小値(ゼロ)に対応する周波数FZBでの局所的最大値を含む。
図8及び
図9は、クリーンなレンズ202に対応した、水分及び泥に対する例示のインピーダンスマグニチュード及び位相応答変化を図示する。また、これらのグラフ800及び900は、注目の識別される周波数範囲404が、レンズ202上の汚染物質の存在又は不在を検出するために適切であること、及び、システムがレンズ202上の複数のタイプの汚染物質の存在を検出し得ることを示す。
【0041】
さらに
図8に示すように、コントローラ130は、レンズクリーニングシステムの周波数応答を表す、測定された周波数応答曲線802及び804を判定し得る。この例において、水分汚染曲線802は、FPM1と呼ばれる、注目の周波数範囲404にける局所的最大値と、FZM1と呼ばれる局所的最小値(ゼロ)とを有する。一例において、コントローラ130は、測定された周波数応答値142と、対応するフィードバック信号IFB及び/又はVFBとに基づいて、測定された共振周波数FZM1を判定し(上記した
図3における306)、
図8に示される水分汚染の例のための対応する共振周波数差値|ΔFZ1|を計算する。同様に、レンズ202上の泥汚染に対して、コントローラ130は、測定された共振周波数値FZM2を判定し、
図8に示した対応する共振周波数差値|ΔFZ2|を計算する。
【0042】
図10及び
図11はさらに、レンズ202上の様々な量の水分汚染に関して、注目の例示の周波数範囲404におけるレンズクリーン度検出のためのドライバ100の能力を図示する。
図10は、クリーンなレンズ202と、第1の範囲において様々な量の水分汚染を有するレンズ202とを備えるレンズクリーニングシステムのための注目の範囲404におけるトランスデューサ励起周波数の関数としてインピーダンスマグニチュード応答曲線を示すグラフ1000を提供する。例えば、曲線402は、クリーンなレンズ202に対するインピーダンスマグニチュード応答を示し、曲線1002は、レンズ202上において、50μLの水分に対するインピーダンスマグニチュード応答を示し、曲線1004は、100μLの水分に対するインピーダンスマグニチュード応答を示し、曲線1006は、150μLの水分に対するインピーダンスマグニチュード応答を示し、曲線1008は、200μLの水分に対するインピーダンスマグニチュード応答を示す。また、グラフ1000は、曲線1002に関してコントローラ130によって判定される例示の測定された共振周波数FZ1と、レンズ202上の50μLの水分の存在に起因する周波数応答差を示す、コントローラ130によって計算される計算された共振周波数差値|ΔFZ1|を図示する。別の例示の測定された共振周波数FZ2が、100μLの水分の存在に起因する変化を図示する曲線1004に対応する、対応する共振周波数差値|ΔFZ2|と共に、
図10に示されている。
【0043】
図11は、クリーンなレンズ202のために上記したような曲線402を含む、注目の周波数範囲404にわたるグラフ1100を提供する。また、グラフ1100はさらに、レンズ202上の2μL、5μL、10μL、15μL、20μL、及び25μLの水分の存在に起因するインピーダンスマグニチュード応答にそれぞれ対応する、曲線1102、1104、1106、1108、1110及び1112を含む。
図11はさらに、クリーンなレンズ202の場合の、上述したベースライン極及びゼロ周波数FPB及びFZBを示す。また、
図11は、ベースライン極周波数FPBと、ベースラインゼロ周波数FZBと、2μLの水分及び25μLの水分の存在のための測定された共振周波数にそれぞれ対応する、2つの例示の測定された共振周波数FZM1及びFZM2とを示す。また、グラフ1100は、2μL及び25μLの水分汚染の場合の対応する第1及び第2の共振周波数差値|ΔFZ1|及び|ΔFZ2|を示す。上記したように、幾つかの例において、コントローラ130は、計算された共振周波数差値|ΔFZ|を第1の閾値FTHlと比較する。
図11は、コントローラ130によって用いられ得る一つの可能な第1の閾値FTHlの例を示す。この場合、2μLの汚染物質の量に関し、コントローラ130は、対応する第1の共振周波数差値|ΔFZ1|を第1の閾値FTHlと比較し、|ΔFZ1|<FTHlなので、クリーニングが必要とされないと判定する(
図3における310)。それゆえ、図示される例において、コントローラ130は、現在のクリーニングサイクルのためのレンズクリーニング動作を行うことをやめることによって(例えば、
図3における312)、有利にもエネルギーを節約する。
【0044】
この例を続けると、レンズ202上の汚染物質の量が、代わって、25μLの水分である場合(
図11における曲線1112)、コントローラ130は、対応する共振周波数差値|ΔFZ2|を第1の閾値FTHlと比較し、|ΔFZ2|>FTHlなので、クリーニングが適切であると判定する(
図3における310)。また、この場合、コントローラ130は、共振周波数差値|ΔFZ2|を第2の閾値FTH2と比較する。|ΔFZ2|>FTH2なので、コントローラ130は、レンズ202上の25μLより著しく高い量の水分汚染を除去するために高レベルのクリーニングを提供するため、
図3における316で、例えば、クリーニング電力レベル及び/又はクリーニング期間を判定する。クリーニング期間、クリーニング電力レベル等、一つ又は複数のクリーニングパラメータの調整を通じて、構成可能なクリーニングの複数のレベルを提供するために複数の付加的な閾値判定が実施され得る。水分汚染を用いるこれらの例において、レンズ202上の質量の対応する変化についての周波数の変化が検出可能である。
【0045】
図12は、例示のレンズクリーニングシステムのための質量の変化の関数として、正規化された固有周波数変化を図示する曲線1202を含むグラフ1200を提供する。この例示の曲線1202は、上記した
図6及び
図7において示した理論モデルに相当し、レンズ202の相対的クリーン度を判定するため、レンズクリーニングシステムにおける小さな質量変化でも成功裏に検出するために共振周波数変化を用いるコントローラ130の能力を確証する。例えば、説明されるシステムは、5近辺の傾斜を有する曲線1202となり、これは、0.1%の質量変化が0.5%の周波数変化をもたらすことを示す。レンズ202上の2mLの水分汚染の場合、2mgの質量変化のみが影響され、これは、85Hzの検出可能な変化をもたらす。
【0046】
本明細書において説明される例は、レンズ202上の汚染物質の存在又は不在の識別を有利にも促進し、クリーン度検出能力に基づいてレンズクリーニングシステムの動作において種々の利点を提供する。例えば、コントローラ130は、周期的クリーニング動作構成においてクリーニングサイクルがいつスキップされ得るかを選択的に判定し得、また、コントローラ130は、レンズ202上に存在する汚染物質の量に対して(必要に応じて)クリーニングを有利にも調整し得る。例えば、この目的は、周期的クリーニング動作のための開始及び停止時間(例えば、クリーニング期間)を変更することによって達成され得、それにより、エネルギー消費を低減し得る。この点について、周波数応答分析(例えば、
図3における304~312)は、クリーニング動作(318)が消費するよりも少ない電力を消費し、クリーニングが必要とされないことをコントローラ130が選択的に判定するたびに(312)、全体的なレンズクリーニングシステムによってエネルギーが節約される。また、システムは、必要とされるときのみ、一層高い電力でのクリーニングをインテリジェントに用い得る。また、上記したように、測定された共振周波数の初期分析及び判定は、実際のクリーニング動作のための制御情報を提供し得る。例えば、コントローラ130は、測定された共振周波数でインテリジェントにクリーニングし得、及び/又は、測定された周波数でクリーニングを開始し得、付加的なクリーニングがシステム共振点をベースライン値に移動させるという想定の下、クリーニング周波数Ftをベースライン周波数に遷移させ得る。このようにして、318でクリーニング動作のための適切な開始周波数を識別することによって、システムは、検出された汚染物質を含むシステムの真の固有周波数を一層充分に利用し得、それにより、全体的なシステムの共振周波数でトランスデューサ102を励起することによってクリーニング効率を改善する。
【0047】
特許請求の範囲内で、説明された実施形態における改変が可能であり、その他の実施形態が可能である。