(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】固相抽出材及び核酸の濃縮・検出におけるその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20230523BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20230523BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230523BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20230523BHJP
B01J 20/282 20060101ALI20230523BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20230523BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20230523BHJP
G01N 1/34 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12Q1/6844 Z
C12M1/00 A
B01J20/281 X
B01J20/282 J
G01N30/88 D
G01N1/28 J
G01N1/34
(21)【出願番号】P 2020501537
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(86)【国際出願番号】 CN2018095600
(87)【国際公開番号】W WO2019011322
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】201710575341.5
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】504278260
【氏名又は名称】キャピタルバイオ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CapitalBio Corporation
【住所又は居所原語表記】18 Life Science Parkway,Changping District,Beijing,102206,People’s Republic of China
(73)【特許権者】
【識別番号】513244281
【氏名又は名称】チンファ ユニヴァーシティ
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, フー
(72)【発明者】
【氏名】シン, ワンリー
(72)【発明者】
【氏名】リュー, イン
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第1721796(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第105300950(CN,A)
【文献】韓国登録特許第1442418(KR,B1)
【文献】Pham XH. et al.,Graphene Oxide Conjugated Magnetic Beads for RNA Extraction ,Chem Asian J. ,2017年06月22日,12(15),pp.1883-1888,doi: 10.1002/asia.201700554
【文献】Wang YH. et al.,Partially reduced graphene oxide as highly efficient DNA nanoprobe,Biosensors and Bioelectronics,2016年,Vol.80,p.140-145 ,http://dx.doi.org/10.1016/j.bios.2016.01.052
【文献】Zhu X. et al.,Detection of microRNA SNPs with ultrahigh specificity by using reduced graphene oxide-assisted rolling circle amplification,Chemical Communications,No.51, Issue 49,p.10002-10005,doi:/10.1039/c5cc02039e
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C12M
C12Q
G01N
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAPLUS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル
を固相抽出材と混合し、抽出した後、固相抽出材を分離し、清洗し、溶出した後、核酸溶液を得ることを含み、前記固相抽出材が、
短い1本鎖核酸を吸着する固相抽出材であり、かつ、表面が還元型酸化グラフェンで修飾されたガラスビーズ又は磁気ビーズであり、前記ガラスビーズの直径は、100μm~300μmであり、前記磁気ビーズの直径は、10nm~5μmであ
り、前記短い1本鎖核酸がmiRNAである、
前記短い1本鎖核酸の濃縮方法。
【請求項2】
前記還元型酸化グラフェンの横方向サイズは、0.5μm~2μmである、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
サンプル
を固相抽出材と混合し、抽出した後、固相抽出材を分離し、特異的なプローブ及びインサイチュ増幅用試薬と混合し、
ローリングサークル増幅(RCA)で増幅させた後、電気泳動により増幅産物を検出することを含
み、
前記固相抽出材が短い1本鎖核酸を吸着する固相抽出材であり、前記固相抽出材の固相支持体の表面が還元型酸化グラフェンで修飾されており、前記固相支持体は、ガラスビーズ又は磁気ビーズであり、前記ガラスビーズの直径は、100μm~300μmであり、前記磁気ビーズの直径は、10nm~5μmであり、前記短い1本鎖核酸がmiRNAである、前記短い1本鎖核酸の検出方法。
【請求項4】
サンプルを固相抽出材と混合し、抽出した後、固相抽出材を分離し、特異的なプローブ及びインサイチュ増幅用試薬と混合し、ローリングサークル増幅(RCA)で増幅させた後、電気泳動により増幅産物を検出することを含み、
前記固相抽出材が短い1本鎖核酸を吸着する固相抽出材であり、前記固相抽出材の固相支持体の表面が還元型酸化グラフェンで修飾されており、前記固相支持体は、ガラスビーズ又は磁気ビーズであり、前記ガラスビーズの直径は、100μm~300μmであり、前記磁気ビーズの直径は、10nm~5μmであり、前記短い1本鎖核酸がmiRNAであり、前記還元型酸化グラフェンの横方向サイズは、0.5μm~2μmである、前記短い1本鎖核酸の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[相互参照]
本出願は、2017年7月14日に中国特許庁へ提出された、出願番号が201710575341.5、発明の名称が「固相抽出材及び核酸の濃縮・検出におけるその応用」である中国特許出願に基づき優先権を主張し、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、分析化学及び生物学的検出の技術分野、特に固相抽出材及び核酸の濃縮・検出におけるその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
MicroRNA(miRNA)は、内在性遺伝子でコードされた、塩基長が約22個ヌクレオチドである非コード1本鎖RNA分子であり、主に転写後遺伝子発現の調節に関与し、標的mRNAと結合して標的遺伝子サイレンシングが生じ又は発現を低下させることができるので、生体を調節する役割を果たす。miRNAは、その含有量の変化が癌の発生と密接に関連することが多いため、その検出が多くの核酸検出技術の重要なステップである。現在、一般的に使用されるmiRNAの検出方法は、主にポリ(A)尾部RT-PCR、及びステムループプライマーRT-PCRなどがある。前者は、サンプル調製中に介在するpri-miRNA又はpre-miRNAを区別できないため、miRNAの正確な定量を行うことができない。後者は、一般的にpre-miRNAにアニールしないが、プライマー設計が難しく、ステムループ形成の条件が比較的に厳しい。近年、科学者は、miRNA検出のためのさまざまな新しい技術を開発しており、中でも、ローリングサークル増幅(RCA)がmiRNAの検出に広く用いられている。miRNAは、短い一本鎖RNAであり、RCAの検出ターゲット(短い一本鎖核酸)に一致する。環状プローブの存在下で、miRNAは、その一部と相補的にペアリングされ、Bst酵素又はphi29酵素の作用下で等温増幅が完了する。しかし、通常のRCAは、相同miRNA、即ち、1塩基または2塩基のみ異なるmiRNAを区別できない。
【0004】
グラフェンは、炭素原子がsp2混成軌道でハニカム状の六方格子構造を形成する単原子層を形成する2次元結晶である。現在、関連文献により、酸化グラフェン(GO)又は還元型酸化グラフェン(rGO)は、π電子雲及び酸素含有基が豊富であり、π-π相互作用、水素結合及び静電相互作用により短い一本鎖核酸をグラフェンの表面に速く吸着させるが、長鎖核酸及び2本鎖核酸に対する吸着能力及び吸着速度が弱く、且つrGO又はGOは近くの蛍光基を消光できる。固相抽出技術は、分析化学におけるサンプル前処理技術であり、サンプルを濃縮し、検出感度を大幅に向上させることができる。しかし、現在の報道により、反応系中の高濃度のrGO又はGOがRCA反応を阻害することが示されているが、グラフェンが短い一本鎖核酸を吸着できるという性質と固相抽出技術とを組み合わせてmiRNAの濃縮及び増幅に適用する文献や特許報告はまだない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、解決すべき技術的問題は、固相抽出材及び核酸の濃縮・検出におけるその応用を提供することにあり、本発明により提供される固相抽出材は、表面に酸化グラフェン(GO)又は還元型酸化グラフェン(rGO)を担持されたものであり、miRNAを抽出、濃縮し、RCAによるmiRNAの検出限界を低減させ、微量のmiRNAの検出に役立つ。また、rGOの使用により、RCAが相同miRNAを識別する能力は大幅に向上する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により提供される固相抽出材は、その固相支持体の表面が酸化グラフェン又は還元型酸化グラフェンで修飾された。
【0007】
本発明において、前記固相支持体は、ガラスビーズ又は磁気ビーズである。ガラスビーズの直径は、その比表面積に影響を与え、さらに吸着効率に影響を与え、本発明において、前記ガラスビーズの直径は、100μm~300μmである。幾つかの具体的な実施例において、前記ガラスビーズの直径は、200μmである。前記磁気ビーズの直径は、10nm~5μmである。
【0008】
本発明の実施例において、前記固相抽出材は、表面が酸化グラフェンで修飾されたガラスビーズ、表面が還元型酸化グラフェンで修飾されたガラスビーズ、表面が酸化グラフェンで修飾された磁気ビーズ、又は表面が還元型酸化グラフェンで修飾された磁気ビーズである。
【0009】
本発明により提供される固相抽出材は、正に帯電した固相支持体が酸化グラフェン又は還元型酸化グラフェンで吸着されたものである。GO又はrGOはガラスビーズの表面に薄膜を形成するか、またはGO又はrGOの表面は球状磁気ビーズと結合するため、作製された固相抽出材が核酸を吸着できる。ここで、磁気ビーズを固相支持体として使用される場合には、磁気ビーズはグラフェン表面における負に帯電した基の近くに結合し、グラフェンの平坦な表面に1つ又は複数の磁気ビーズを結合させる。
【0010】
GO及びrGOで修飾された固相抽出材は、静電気力、水素結合、及びπ-π相互作用により核酸を吸着し、且つ2本鎖核酸及び長い1本鎖核酸と比較して、短い1本鎖核酸(例えば、ssDNA又はmiRNA)に対する吸着能力及び吸着速度がより高く、また、GOと比較して、rGOが短い1本鎖核酸を吸着する能力はより強い。本発明により提供される固相抽出材の製造方法は、酸化グラフェン又は還元型酸化グラフェンの分散液を固相支持体と混合し、吸着させて固相抽出材を作製することであり、前記固相支持体は、ガラスビーズ又は磁気ビーズである。
【0011】
グラフェンを吸着できるようにするために、固相支持体の表面には正に帯電した基があることにより、グラフェンの表面の負に帯電した基と静電相互作用により結合できる。
【0012】
本発明の実施例において、固相抽出材を製造するためのガラスビーズは、表面に正電荷を帯びているガラスビーズであり、幾つかの実施例において、シラン化によって修飾されたガラスビーズが使用される。シラン化ガラスビーズは、市販されているものでもよく、自分で作製したものでもよく、これは本発明において限定されていない。シラン化ガラスビーズの製造方法は、ガラスビーズ表面を濃硫酸及び過酸化水素で活性化し、エタノール溶媒中のAPTESでシラン化することにより調製する。シラン化されたガラスビーズは、表面にアミノ基を有するため、正電荷を帯びている。核酸をより十分に吸着するように適当な比表面積を確保するために、ガラスビーズの直径は、200μmである。
【0013】
本発明では、固相抽出材を調製するための磁気ビーズは、表面に正電荷を帯びている磁気ビーズであり、幾つかの実施例において、アミノ基磁気ビーズが使用される。
【0014】
本発明の実施例において、前記酸化グラフェン又は還元型酸化グラフェンの分散液における溶媒は、水である。つまり、GO又はrGOの水分散液を使用し、その分散液は、購入されてもよく自分で作製されてもよく、これは本発明において限定されない。本発明の実施例において、GOは、横方向サイズが0.5~2μmであり、濃度が1mg/mLである。rGOは、横方向サイズが0.5~2μmであり、濃度が1mg/mLである。
【0015】
本発明に係る製造方法では、吸着の条件は、室温で0.5h~2h振とうする。具体的な実施例において、吸着の条件は、室温で1h振とうする。
【0016】
具体的なGOで修飾されたガラスビーズの製造方法は、シラン化されたガラスビーズとGOの分散液とを混合し、室温で1h振とうして反応させた後、水洗し、乾燥し、GOで修飾されたガラスビーズを得る。前記GOの分散液では、GOは、横方向サイズが0.5~2μmであり、濃度が1mg/mLである。前記乾燥温度は、80℃である。
【0017】
具体的なrGOで修飾されたガラスビーズの製造方法は、シラン化されたガラスビーズとrGOの分散液とを混合し、室温で1h振とうして反応させた後、水洗し、乾燥し、rGOで修飾されたガラスビーズを得る。前記rGOの分散液では、rGOは、横方向サイズが0.5~2μmであり、濃度が1mg/mLである。前記乾燥の温度は、80℃である。
【0018】
シラン化ガラスビーズは、市販として購入されてもよく、自分で作製されてもよい。
【0019】
本発明に用いられるシラン化ガラスビーズの製造方法は、以下の通りである。即ち、
ガラスビーズを濃硫酸と混合した後、それに過酸化水素をゆっくりと加え、シェーカーで1h振盪して反応させ、その後、純水でガラスビーズを10回洗浄した後、干燥させ、
干燥されたガラスビーズをシラン化試薬及び溶媒と混合し、2h振とうして反応させた後、純水で10回洗浄し、シラン化されたガラスビーズを得る。
【0020】
前記過酸化水素と濃硫酸との体積比は、3:7である。酸洗浄済みガラスビーズ0.5gあたり濃硫酸7mLを混合する。前記濃硫酸における硫酸の質量分率は、98%である。
【0021】
前記シラン化試薬は、APTESであり、前記溶媒は、エタノール、水及び氷酢酸の混合物であり、ここで、エタノールと水と氷酢酸との体積比は、900:100:1である。前記シラン化試薬と溶媒との体積比は、1:50である。
【0022】
具体的なGOで修飾された磁気ビーズの製造方法は、アミノ基磁気ビーズをGOの分散液と混合し、室温で1h振とうして反応させた後、水洗して、乾燥し、GOで修飾された磁気ビーズを得る。前記GOの分散液では、GOは、横方向サイズが0.5~2μmであり、濃度が1mg/mLである。前記乾燥温度は、80℃である。
【0023】
具体的なrGOで修飾された磁気ビーズの製造方法は、アミノ基磁気ビーズをrGOの分散液と混合し、室温で1h振とうして反応させた後、水洗し、乾燥し、rGOで修飾された磁気ビーズを得る。前記rGOの分散液では、rGOは、横方向サイズが0.5~2μmであり、濃度が1mg/mLである。前記乾燥温度は、80℃である。
【0024】
前記アミノ基磁気ビーズは、APTESで修飾された磁気ビーズであり、粒径が500nmである。本発明では、海狸公司から購入された、濃度が10mg/mLのアミノ基磁気ビーズ懸濁液を採用する。GO又はrGOの修飾を行う前に、純水で磁気ビーズを3回洗浄し、その後、磁気ビーズを遠心して収集し、水分を除去する。磁気ビーズ懸濁液100μLから收集した磁気ビーズをrGO分散液300μL、又はGO分散液300μLに加える。
【0025】
GO又はrGOで修飾されていない磁気ビーズ又はガラスビーズは、いずれも核酸を吸着する能力を持たないが、本発明で提供される方法により固相抽出材を作製し、作製されたGO又はrGOが修飾されたガラスビーズ又は磁気ビーズは、黒色であり、核酸を吸着する能力を持つ。
【0026】
本発明にかかる固相抽出材の、核酸の濃縮及び/又は検出における応用。
【0027】
幾つかの実施例において、本発明により提供される固相抽出材は、短い1本鎖核酸の抽出及び/又は検出に用いられる。幾つかの具体的な実施例において、前記短い1本鎖核酸は、miRNA又はssDNAである。
【0028】
本発明の実験は、GOで修飾されたガラスビーズが、miRNA又はssDNAを濃縮させ、特異的なプローブを介して標的核酸分子を識別することができ、標的核酸分子の定性的または定量的検出を実現することを示している。また、GOで修飾されたガラスビーズは、主に静電気力、水素結合及びπ-π相互作用によるため、様々な核酸に適する。GOで修飾されたガラスビーズは、miRNA又はssDNAを迅速に吸着できるだけでなく、gDNA又はmRNAなどの他の核酸も吸着できる(長鎖核酸又は2本鎖核酸の吸着には長い時間が必要である)。従って、吸着時間が短い場合には、GOで修飾された固相抽出材は、短い1本鎖核酸を2本鎖核酸又は長鎖核酸から区別することもできる。本発明の実施例において、GOで修飾された固相抽出材は、短い1本鎖核酸に対する吸着時間が10minである。rGOで修飾された磁気ビーズは、主にπ-π相互作用を介して核酸を吸着するため、過剰なπ結合を持つ核酸、特にmiRNA又はssDNAなどの短い1本鎖核酸に対してより強い吸着能力を持つが、長い分子鎖を持つmRNAの場合には、吸着効率が低いため、短い1本鎖核酸と簡単に区別できる。
【0029】
本発明により提供されるGOで修飾された固相抽出材は、核酸の濃縮及び/又は検出における応用である。
【0030】
本発明により提供されるrGOで修飾された固相抽出材は、短い1本鎖核酸の濃縮及び/又は検出における応用である。
【0031】
本発明は、さらに、本発明に記載の固相抽出材を含む、核酸濃縮のためのキットを提供する。
【0032】
短い1本鎖核酸を特異的に濃縮するためのキットには、rGOで修飾された固相抽出材又はGOで修飾された固相抽出材を含む。実験の要件に応じて、そのキットには、さらに、EPチューブ、清洗バッファー、溶出バッファーを含む。
【0033】
多種の核酸を濃縮するためのキットには、GOで修飾された固相抽出材が含まれる。実験の要件に応じて、そのキットには、さらに、EPチューブ、清洗バッファー、溶出バッファーを含む。前記多種の核酸は、短い1本鎖核酸又は2本鎖核酸を含む。
【0034】
本発明は、サンプルを本発明に係る固相抽出材と混合し、抽出した後、固相抽出材を分離し、清洗し、溶出して核酸溶液を得る、核酸の濃縮方法を提供する。
【0035】
本発明は、サンプルをrGOで修飾された固相抽出材と混合し、抽出した後、固相抽出材を分離し、清洗し、溶出して核酸溶液を得る、短い1本鎖核酸の濃縮方法を提供する。前記抽出時間は、10minであり、抽出温度は、室温、具体的には18~30℃である。
【0036】
或いは、GO修飾固相抽出材でのGOによる短い1本鎖核酸の吸着が速いという特性に基づいて、抽出時間が10minとなるように制御し、GOで修飾された固相抽出材を使用して短い1本鎖核酸への特異的濃縮も達成できる。
【0037】
短い1本鎖核酸を濃縮する方法は、サンプルをGOで修飾された固相抽出材と混合し、室温で10min抽出した後、固相抽出材を分離し、清洗し、溶出して核酸溶液を得る。
【0038】
多種の核酸を濃縮する方法は、サンプルをGOで修飾された固相抽出材と混合し、抽出した後、固相抽出材を分離し、清洗し、溶出した後、核酸溶液を得る。多種の核酸を同時に濃縮するために、その方法に係る抽出時間は、1h以上である。
【0039】
本発明により提供される方法では、固相支持体がガラスビーズである場合には、抽出際に均質機を使用して均一に混合する。固相支持体が磁気ビーズである場合には、2minごとに1回渦巻きし振とうする。
【0040】
タンパク質などの不純物は、本発明に係る固相抽出材の抽出効果に影響を与える可能性があるため、本出願に係るサンプルは、核酸溶液である。例えば、核酸抽出プロセスにおいてタンパク質などの不純物を除去した後に得られた低濃度抽出液である。磁気ビーズ法又は膜濾過法は、従来技術において低濃度の核酸抽出液を濃縮するために使用されるが、微量の核酸分子を濃縮することが困難であり、主に200ntを超える核酸の抽出に適し、特にmiRNAへの吸着効果がさらに悪化するため、磁気ビーズ法又は膜濾過法により抽出されたRNA中のmiRNAの含有量が非常に低い。miRNAに適した特別なろ過膜を使用しても、抽出された生成物には無関係なRNAが大量に存在し、後の検出の精度及び感度に影響をもたらす。本出願で調製された固相抽出材は、微量の核酸分子に対しても良好な濃縮効果を有し、RCAの検出閾値を25倍低下させる。本発明の実施例において、実験の簡便及び厳密さのために、標準的な核酸溶液をサンプルとして使用する。
【0041】
標準溶液は、核酸とバッファーにより調製された、前記バッファーには、20mM Tris-HCl、5mM 塩化マグネシウム、50mM 塩化ナトリウムを含み、pH 8.0である。
【0042】
本発明は、さらに、本発明に係る固相抽出材、特異的なプローブ及びインサイチュ増幅用試薬を含む核酸検出用キットを提供する。
【0043】
本発明により提供される短い1本鎖核酸検出用キットでは、rGOで修飾された固相抽出材、特異的なプローブ及びインサイチュ増幅用試薬を含む。又は、GOで修飾された固相抽出材、特異的なプローブ及びインサイチュ増幅用試薬を含む。前記特異的なプローブは、標的核酸を検出するために設計されている。
【0044】
前記インサイチュ増幅用試薬には、RCA増幅酵素を含み、本発明では、RCAマスターミックスが使用される。
【0045】
実験の要件に応じて、そのキットには、さらにEPチューブ又は96ウェルプレートを含む。
【0046】
多種核酸検出用キットには、GOで修飾された固相抽出材、特異的なプローブ及びインサイチュ増幅用試薬を含む。前記特異的なプローブは、標的核酸を検出するために設計されている。
【0047】
前記インサイチュ増幅用試薬は、RCA増幅酵素を含み、本発明では、RCAマスターミックスが使用される。
【0048】
実験の要件に応じて、そのキットには、さらにEPチューブ又は96ウェルプレートを含む。
【0049】
本発明は、さらに、サンプルを本発明に記載の固相抽出材と混合し、抽出した後、固相抽出材を分離し、特異的なプローブ及びインサイチュ増幅用試薬と混合し、増幅した後、増幅産物を電気泳動で検出する、ことを含む核酸の検出方法を提供する。
【0050】
前記固相抽出材は、短い1本鎖核酸を検出するために、rGO又はGOで修飾されたものである。GO修飾固相抽出材料を使用して核酸に対する抽出時間を延長させた後、インサイチュ増幅により2本鎖核酸を検出することもできる。
【0051】
増幅後、電気泳動バンドの出現に応じて、サンプルでは特異的なプローブの目的とする標的核酸分子が存在するか否かを判断する。
【0052】
本発明の実施例において、サンプル溶液をGOで修飾されたガラスビーズと混合し、10min抽出した後、溶液を捨て、ガラスビーズを洗浄し、溶出してssDNA溶液を得る、ことを含むssDNAの濃縮方法を提供する。
【0053】
本発明の実施例において、さらに、サンプル溶液をGOで修飾されたガラスビーズと混合し、10min抽出した後、溶液を捨て、ガラスビーズ、RCAマスターミックス、環状プローブ及び水を混合し、65℃、1.5hで等温増幅を行った後、電気泳動により増幅産物を検出する、ことを含むssDNA(22nt)の検出方法を提供する。
【0054】
本発明の実施例において、サンプル溶液をrGOで修飾された磁気ビーズと混合し、10min抽出した後、溶液を捨て、磁気ビーズを洗浄し、溶出してmiRNA溶液を得る、ことを含むmiRNAの濃縮方法を提供する。
【0055】
本発明により提供されるrGOで修飾された固相抽出材は、miRNA又はssDNAを特異的に吸着できるが、gDNA又はmRNAを吸着できない。
【0056】
本発明の実施例において、サンプル溶液をrGOで修飾された磁気ビーズと混合し、10min抽出した後、溶液を捨て、磁気ビーズ、RCAマスターミックス、環状プローブ及び水を混合し、65℃、1.5hで等温増幅を行った後、電気泳動により増幅産物を検出する、ことを含むmiRNAの検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0057】
本発明で提供されるrGOで修飾された固相抽出材は、miRNAを効率的に吸着し、相同miRNAを識別する能力を保持することができる。
【0058】
本発明は、rGO又はGOで修飾された固相抽出材を提供し、GO又はrGOで修飾された固相抽出材は、静電気力、水素結合、及びπ-π相互作用により核酸、特に短い1本鎖核酸を吸着することができる。本発明で提供される固相抽出材は、核酸を濃縮することにより、サンプルの検出限界を低減させ、検出感度を向上させている。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】
図1は、GOで修飾されたガラスビーズによるssDNAの濃縮効果を示し、MがDNA マーカーであり、レーン1~4が原液増幅であり、レーン4~8がインサイチュ増幅である。
【
図2】
図2は、rGOで修飾された磁気ビーズによるmiRNA(let-7a)の濃縮効果を示し、MがDNA マーカーであり、レーン1~3が原液増幅であり、レーン4~6がインサイチュ増幅である。
【
図3】
図3は、実施例のrGOで修飾された磁気ビーズによる相同miRNAへの区別能力を示し、レーン1及び2が通常のRCAによるlet-7a及びlet-7bの増幅であり、レーン3及び4がそれぞれアミノ基磁気ビーズによる抽出後のlet-7a及びlet-7dのインサイチュ増幅であり、レーン5及び6がそれぞれrGOで修飾された磁気ビーズによる抽出後のlet-7a及びlet-7dのインサイチュ増幅であり、レーン7が陰性対照実験である。
【
図4】
図4は、miRNA、gDNA及びmRNAに対するrGOで修飾された磁気ビーズの選択的吸着を示し、PCは、吸着されていない元のサンプルにおける核酸の含有量の測定であり、上清は、吸着された上清における核酸の含有量の測定であり、縦軸は、PCRのCt値であり、中でも、
図4-aは、gDNAへの吸着効果を示し、
図4-bは、mRNAへの吸着効果を示し、
図4-cは、miRNAへの吸着効果を示す。
【
図5】
図5は、rGOで修飾された磁気ビーズによるmiRNAサンプルの濃縮効果を示し、
図5-aは、濃縮されていない場合に、RCAによるmiRNAサンプルの検出限界が1.318pM(3σ)であることを示し、
図5-bは、rGOで修飾された磁気ビーズによって濃縮された後、RCAによるmiRNAサンプルの検出限界が53.4fM(3σ)であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明は、固相抽出材及び短い1本鎖核酸の濃縮及び検出におけるその応用を提供し、当業者が本明細書に鑑みてプロセスのパラメータを適当に改良することができる。特に、全ての類似する置換および修正が当業者にとっては明らかになり、本発明に含まれるとみなされることを指摘すべきである。本発明に係る方法および応用を好ましい実施形態により説明してきたが、本発明に係る技術を実現・応用するために、本発明の内容、精神および範囲から逸脱することなく修正または適当な変更および組み合わせを加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0061】
本発明に係る磁気ビーズは、生物学的磁気ビーズであって、微粒子サイズの超常磁性ビーズである。
【0062】
本発明に係るガラスビーズは、実験用ガラスビーズであって、ガラスマイクロビーズとも呼ばれる。
【0063】
本発明に係る短い1本鎖核酸とは、短い1本鎖核酸分子、例えば、miRNA、ssDNAを指す。
【0064】
本発明に係る多種の核酸とは、様々なタイプの核酸、例えば、gDNA、cDNA、cpDNA、msDNA、mtDNA、rDNA、ssDNA、miRNA、mRNA、tRNA、rRNA、tmRNA、snRNA、snoRNA、piRNA又はaRNAを意味する。
【0065】
本発明に係る濃縮とは、サンプルから標的核酸を収集するステップを指し、抽出又は精製とも理解される。
【0066】
本発明に係る検出とは、特異的なプローブによる標的核酸の増幅結果に基づいて、サンプル中の核酸に定量的または定性的分析を行うプロセスを意味する。
【0067】
特に明記しない限り、本発明に係る室温は、18~30℃である。
【0068】
本発明に用いられる機器、材料は、いずれも普通の市販品であって、市場で入手可能である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例と組み合わせて本発明をさらに説明する。
【0070】
実施例1
酸洗浄済みガラスビーズ(Sigma)約0.5gをビーカーに加え、それに濃硫酸7mLを加えた後、過酸化水素3mLを徐々に加え、その反応系をシェーカーで1時間振盪して、ガラスビーズの活性化を完了させた。活性化後、ガラスビーズを純水で10回洗浄し、オーブンに入れて乾燥させた。
【0071】
乾燥されたガラスビーズを1.5mL遠心分離管に入れ、シラン化試薬及び溶媒(溶媒1mL、エタノールと水との割合9:1、且つ氷酢酸1μL、シラン化試薬としてAPTES、20μL)を加え、振とうしながら2h反応させた後、ガラスビーズを純水で10回洗浄した。
【0072】
ガラスビーズから余分な水を除去し、シラン化されたガラスビーズに水200μL及びGO分散液(先豊ナノ公司から購入、横方向サイズ0.5~2μm、初期濃度いずれも1mg/mL)50μLを加え、振とうしながら1h反応させた後、水洗し、80℃で乾燥させて準備した。
【0073】
実施例2
酸洗浄済みガラスビーズ(Sigma)約0.5gをビーカーに加え、それに濃硫酸7mLを加えた後、過酸化水素3mLを徐々に加え、その反応系をシェーカーで1時間振盪して、ガラスビーズの活性化を完了させた。活性化後、ガラスビーズを純水で10回洗浄し、オーブンに入れて乾燥させた。
【0074】
乾燥されたガラスビーズを1.5mL遠心分離管に入れ、シラン化試薬及び溶媒(溶媒1mL、エタノールと水の割合9:1、且つ1μL氷酢酸、シラン化試薬としてAPTES、20μL)を加え、振とうしながら2h反応させた後、純水で10回洗浄した。
【0075】
ガラスビーズから余分な水を除去し、シラン化されたガラスビーズに水200μL及びrGO分散液(先豊ナノ公司から購入、横方向サイズ0.5~2μm、初期濃度いずれも1mg/mL)50μLを加え、振とうしながら1h反応させた後、水洗し、80℃で乾燥させて準備した。
【0076】
実施例3
APTES修飾磁気ビーズは海狸公司から購入された(粒径500nm、初期濃度10mg/mL)。まず、磁気ビーズ100μLを1.5mL遠心分離管に入れ、磁気スタンドに置いて磁気ビーズを収集し、余分な水を除去し、その後、磁気ビーズを純水で3回洗浄し、余分な水を除去した。磁気ビーズには、GO分散液300μLを加え(先豊ナノ公司から購入、横方向サイズ0.5~2μm、初期濃度いずれも1mg/mL)、振とうしながら1h反応させ、磁気ビーズと十分に結合させた後、過剰の未結合GOを除去し、上清が透明になるまで磁気ビーズを水で洗浄し、得られたGO修飾磁気ビーズを水200μLに分散させ、4℃で保存して準備した。
【0077】
実施例4
APTES修飾磁気ビーズは、海狸公司から購入された(粒径500nm、初期濃度10mg/mL)。まず、磁気ビーズ100μLを1.5mL遠心分離管に入れ、磁気スタンドに置いて磁気ビーズを収集し、余分な水を除去し、その後、磁気ビーズを純水で3回洗浄し、余分な水を除去した。磁気ビーズにrGO分散液300μLを加え(先豊ナノ公司から購入、横方向サイズ0.5~2μm、初期濃度いずれも1mg/mL)、振とうしながら1h反応させ、磁気ビーズと十分に結合させた後、過剰の未結合GOを除去し、上清が透明になるまで磁気ビーズを水で洗浄し、得られたGO修飾磁気ビーズを水200μLに分散させ、4℃で保存して準備した。
【0078】
効果検証:
1.GO修飾ガラスビーズによる短い1本鎖DNA(22nt)の濃縮効果
まず、ssDNA(配列5’-TGAGGTAGTAGGTTGTATAGTT-3’;配列番号1)を含む最終濃度10nMのサンプル溶液25μLを調製し、実施例1で調製されたGO修飾ガラスビーズ0.005gを秤量して0.2mL遠心分離管に入れた。サンプル溶液20μLを抽出材料の入った遠心分離管に加え、渦巻きし振とうし抽出材料と溶液とを十分に混合し、室温で10min抽出した。抽出後、遠心分離管内の液体を吸引し、得られた抽出材料を後のRCAにかけた。
【0079】
濃縮されていないサンプル溶液をコントロールとして増幅し、RCA反応の容量が20μLであり、RCAマスターミックス10μL、サンプル溶液2μL、環状プローブ(配列CACGCGATCCGCAACTATACAACCTACTACCTCAACACCCTCCAACCACCAAGGCAATGTACACGAATTCGCCGAACG;配列番号3)2μL及び水6μLを含み、調合が完了した後、反応系を十分に混合した後、等温増幅のために65℃でインキュベートし、反応時間が1.5hであり、これは、原液増幅と呼ばれる。
【0080】
固相抽出材の場合には、抽出材料の入った遠心分離管にRCA master mix 10μL、環状プローブ2μL及び水8μLを加え、調合が完了した後、反応系を十分に混合した後、等温増幅のために65℃でインキュベートし、反応時間が1.5hであり、これは、インサイチュ増幅と呼ばれる。
【0081】
原液増幅産物及びインサイチュ増幅産物は、それぞれ電気泳動にかけられた。結果は、
図1に示した。Mは、DNAマーカーであり、レーン1~4は、原液増幅の4つの複製であり、レーン5~8は、インサイチュ増幅の4つの複製である。
図1に示すように、濃縮前のサンプル溶液では、ssDNAの濃度は、ゲル電気泳動で明るいバンドを示すのに十分なRCA産物を生じる増幅するには不十分であるが、GO修飾ガラスビーズによる濃縮及び増幅を経て、RCA産物の量が大幅に増加し、且つ電気泳動像に明るいバンドが見られる。この実験は、GO修飾ガラスビーズが、短い1本鎖DNAを効率的に濃縮し、且つインサイチュ増幅を行うことができることを示している。
【0082】
2.rGOで修飾された磁気ビーズによるmiRNAlet-7a(22nt)の濃縮効果
まず、let-7a(配列5’-UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU-3’;配列番号3)を含む最終濃度10nMのサンプル水溶液25μLを調製し、実施例3で調製されたrGO修飾ガラスビーズ0.5μLを秤量して0.2mL遠心分離管に入れた。サンプル溶液20μLを抽出材料の入った遠心分離管に加え、渦巻きし振とうし抽出材料と溶液とを十分に混合し、室温で10min抽出した。抽出後、遠心分離管内の液体を吸引し、得られた抽出材料を後のRCAにかけた。
【0083】
濃縮されていないサンプル溶液をコントロールとして増幅し、RCA反応の容量が20μLであり、RCAマスターミックス10μL、サンプル溶液2μL、環状プローブ(配列CACGCGATCCGCAACTATACAACCTACTACCTCAACACCCTCCAACCACCAAGGCAATGTACACGAATTCGCCGAACG;配列番号3)2μL及び水6μLを含み、調合が完了した後、反応系を十分に混合した後、等温増幅のために65℃でインキュベートし、反応時間が1.5hであり、これは、原液増幅と呼ばれる。
【0084】
固相抽出材の場合には、抽出材料の入った遠心分離管にRCA master mix 10μL、環状プローブ2μL及び水8μLを加え、調合が完了した後、反応系を十分に混合した後、等温増幅のために65℃でインキュベートし、反応時間が1.5hであり、これは、インサイチュ増幅と呼ばれる。
【0085】
原液増幅産物及びインサイチュ増幅産物は、それぞれ電気泳動を行った。結果は、
図2に示した。レーン1~3は、原液増幅であり、レーン4~6は、インサイチュ増幅である。
図2に示すように、濃縮前のサンプル溶液では、let-7aの濃度は、ゲル電気泳動で明るいバンドを示すのに十分なRCA産物を生じる増幅するに不十分であるが、rGO修飾磁気ガラスビーズによる濃縮及び増幅を経て、RCA産物の量が大幅に増加し、且つ電気泳動像に明るいバンドが見られる。この実験は、rGO修飾磁気ガラスビーズが、miRNAを効率的に濃縮し、且つインサイチュ増幅を行うことができることを示している。
【0086】
3.アミノ基磁気ビーズ及びrGO修飾磁気ビーズによるSNPへの区別能力
アミノ基磁気ビーズは、主に静電吸着により核酸を捕捉するが、グラフェン固相抽出材は、主にπ-π相互作用により1本鎖核酸を捕捉する。miRNAへの捕捉については、両方は同様の効果があり、グラフェン修飾固相抽出材の利点を示さないが、この実験は、rGO修飾磁気ビーズがアミノ基磁気ビーズではなく、相同miRNAを効率的に区別できることを示している。
【0087】
本実施例に用いられるmiRNAは、let-7a及びlet-7dであり、両方に2つの塩基の違いがあり、本実施例に用いられる環状プローブは、いずれもlet-7aに応じて設計されたプローブである。
【0088】
まず、let-7a及びlet-7dのサンプル溶液のそれぞれを25μLずつ調製し、含まれるmiRNAの最終濃度いずれも10nMであった。実施例3で調製されたrGO修飾磁気ガラスビーズ0.5μLを0.2mL遠心分離管に秤量した。その後、let-7a及びlet-7dのサンプル溶液を20μLずつ採取して抽出材料を含むそれぞれの遠心分離管に入れ、渦巻き渦巻きし振とうしたり逆転させて混合したり、抽出材料と溶液とを十分に混合させ、室温で10min抽出した。抽出後、遠心分離管内の液体を吸引し、得られた抽出材料を後のRCAにかけた。濃縮されていない元のサンプル溶液は、RCA増幅のコントロールとして増幅された。修飾されていないアミノ基磁気ビーズで濃縮されたサンプルはRCA増幅のコントロール及び陰性コントロールとしても増幅された。
【0089】
抽出後の材料を含む遠心分離管に、10μL RCA master mix、環状プローブ(配列CACGCGATCCGCAACTATACAACCTACTACCTCAACACCCTCCAACCACCAAGGCAATGTACACGAATTCGCCGAACG)2μL及び水8μLをそれぞれ加え、調合が完了した後、反応系を十分に混合した後、等温増幅のために65℃でインキュベートし、反応時間が1.5hであった。それぞれの増幅産物は、電気泳動にかけた。結果は、
図3に示した。
【0090】
図3に示すように、レーン1及び2は、反応容量が20μLである通常のRCAによるlet-7a及びlet-7bの増幅である。
【0091】
レーン1的増幅系にはRCAマスターミックス10μL、let-7a 2μL(総量が200nmol)、環状プローブ2μL和水6μLが含まれた。
【0092】
レーン2の増幅系には、RCAマスターミックス10μL、let-7d 2μL(総量が200nmol)、環状プローブ2μL及び水6μLが含まれた。
【0093】
レーン3及び4は、それぞれrGOで修飾されていないアミノ基磁気ビーズによるlet-7a及びlet-7dの抽出後のインサイチュ増幅(let-7a及びlet-7dの総量いずれも200nmol)であった。
【0094】
レーン5及び6は、それぞれrGO修飾磁気ビーズによるlet-7a及びlet-7dの抽出後のインサイチュ増幅(let-7a及びlet-7dの総量いずれも200nmol)であった。
【0095】
レーン7は、陰性対照実験であった。
【0096】
図3に示すように、レーン2及び4にはバンドが現れ、これは、通常のRCA及びアミノ基磁気ビーズがいずれも相同miRNAを区別できないことを示しているが、レーン6には明らかなバンドが現れなく、これは、rGO修飾磁気ビーズは相同miRNAを区別する能力を持つことを示した。
【0097】
4.異なるタイプの核酸に対するrGO修飾磁気ビーズの吸着能力の比較
本発明は、rGO修飾材料がmiRNAを効率的に吸着できるが、ゲノムDNA(gDNA)及びmRNAを吸着できないため、複雑な核酸溶液からmiRNAを抽出できるために使用できることを初めて見出・証明した。市販されているよく見られたシリコンマトリックス材料は、miRNA、gDNA又はmRNAを特異的に吸着することができない。
【0098】
実験では、20nM Tris-HCl pH=8.0、5mM MgCl2、100nMNaCl、核酸15ng(それぞれmiRNA、gDNA、mRNA)を含む抽出量を20μLに固定し、残量が水である。サンプル20μLをrGO修飾磁気ビーズで10 min抽出し、PCRにより抽出前のサンプル及び抽出後の上清における核酸含有量の変化を確認した。
【0099】
図4-aで用いられた核酸は、ヒトgDNAであり、増幅ターゲットは、β-actin遺伝子であり、PCRのCt値により分かるように、抽出前後でサンプルの核酸含有量に変化がないため、該材料はgDNAに対して吸着効果を持たないことを示した。
【0100】
図4-bで用いられた核酸は、トータルRNAであり、GAPDH mRNA含有量の変化は、RT-qPCRによって測定され、Ct値により分かるように、抽出前後でサンプル核酸含有量に変化がないため、該材料がmRNAに対して吸着効果を持たないことを示した。
【0101】
図4-cで用いられたサンプルは、let-7a miRNAであり、抽出前後の含有量の変化は、RT-qPCRによって測定され、抽出前後のCt値の差が7.8であることが分かり、増幅効率が2である場合、let-7a miRNAの99.55%が吸着された。
【0102】
図4-a~
図4-cでは、陰性対照のCt値は、それぞれ38.87、N/A(未検出)及び32.47であった。
【0103】
上記の実験は、rGO修飾磁気ビーズが、miRNAを効率的に吸着できるが、gDNA及びmRNAを吸着できないことを示した。
【0104】
5.rGO修飾磁気ビーズによるmiRNAサンプルの濃縮
濃縮されていない低濃度核酸抽出液は、インサイチュ増幅を行い、RCA反応系は、20μLで、RCAマスターミックス10μL、miRNA(let-7a)サンプル2μL、環状プローブ(配列CACGCGATCCGCAACTATACAACCTACTACCTCAACACCCTCCAACCACCAAGGCAATGTACACGAATTCGCCGAACG)2μL及び水6μLを含む。
【0105】
miRNAサンプル 100μLは、rGO修飾磁気的固相抽出材によって抽出された後、液体を吸出し、rGO修飾磁気的固相抽出材をin situ RCAにかけ、反応系は、20μLで、マスターミックス10μL、抽出されたrGO修飾磁気ビーズ、環状プローブ(配列CACGCGATCCGCAACTATACAACCTACTACCTCAACACCCTCCAACCACCAAGGCAATGTACACGAATTCGCCGAACG)2μL及び8μL水を含む。
【0106】
図5-aに示すように、濃縮されていない場合には、RCAによるmiRNAサンプルの検出限界は、1.318pM(3σ)(
図5-aを参照)であるが、磁気的材料によって濃縮された後、RCAによるmiRNAサンプルの検出限界は、53.4fM(3σ)(
図5-bを参照)に達し、検出限界は約25倍減少した。該磁性材料は、低濃度miRNAサンプルの検出に適用できることを示した。
【0107】
以上、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとっては本発明の原理から逸脱することなく、幾つかの変更及び改良を行うことができることを指摘すべきである。これらの変更及び改良も本発明の保護範囲と見なされるべきである。
【配列表】