(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】無線電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/50 20160101AFI20230523BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20230523BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20230523BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20230523BHJP
H01Q 25/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
H02J50/50
H02J50/20
H02J50/80
H01Q3/26 B
H01Q25/00
(21)【出願番号】P 2019057378
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591161014
【氏名又は名称】河野 隆二
(73)【特許権者】
【識別番号】519105784
【氏名又は名称】UNIVERSITY OF OULU RESEARCH INSTITUTE JAPAN-CWC日本株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】801000038
【氏名又は名称】よこはまティーエルオー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河野 隆二
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-123346(JP,A)
【文献】特開2009-261157(JP,A)
【文献】特開2013-169100(JP,A)
【文献】特開2008-211868(JP,A)
【文献】特開2003-152786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 -50/90
H02J 7/00
H01Q 3/26
H01Q 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波により電力を無線伝送する無線電力伝送システムであり、
電力を伝送する送電元のノードを成す送電機と、伝送された電力を受電するノードを成す受電機と、前記送電機と前記受電機の間で電力の受け渡しを行うノードを成す複数の中継器と、前記送電機と前記受電機と前記中継器の各ノードで構成される第1層の物理層と、前記第1層の物理層における前記各ノードの電力の無線伝送を制御する第2層のMAC層と、第3層のネットワーク層と、を備え、
前記第1層の物理層は、上記した複数のノードが、前記送電機と前記受電機との間で前記複数の中継器のノードを経由するネットワークを形成し、前記ネットワークが、前記送電機と前記受電機との間を、前記中継器をリレーして電力伝送を行うマルチホップリレーを構成するものであり、
前記第2層のMAC層は、前記第1層の物理層の各ノードが、各ノード間の電力の受け渡しを制御するノード間のアクセス制御によって受電機から送電機への給電制御を行うものであり、
前記第3層のネットワーク層は、前記送電機が、前記第1層の物理層のマルチホップリレーにおいて、各ノード間で受け渡す電力の1ホップ当たりの電力伝送効率及び/又は干渉レベルを各ノード間の経路の重みに対応付け、前記送電機と前記受電機との間の経路において、前記ノード間の経路に対応づけた重みの和が最大となる給電経路を、前記第1層の物理層のネットワークの複数の給電経路の中から最適な給電経路として選択するものである
ことを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項2】
前記第1層の物理層において前記ノードを成す前記中継器の最適個数は、中継器間の距離減衰により送られる給電率(1-exp(-Ar
2
/(λ
2
・Di
2
)))の対数について中継器の個数iで微分演算により得られる個数である、(なお、Arは中継器ノードのアンテナ開口面積、λはマイクロ波の波長、Diは中継器の中継器距離である)
ことを特徴とする、請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項3】
前記第1層の物理層において、前記中継器が2個を越えるマルチホップリレーモデルの前記中継器の
最適距離は、前記送電機と前記中継器との間の距離減衰により送られる給電率(1-exp(-At・Ar/(λ
2
・Di
2
)))と、前記中継器間の距離減衰により送られる給電率(1-exp(-Ar
2
/(λ
2
・Di
2
))と、を用いて表される給電量
に関して、当該給電量の対数の中継距離の微分演算において中継器が1個のときに得られる中継距離D1と総送電距離Dとの関係を、前記中継器が2個を越えるマルチホップリレーモデルの他の中継距離Diに順に対応付けることで求められる中継距離である
(なお、前記式において、PCEはレクテナの電力変換効率、LOSSは中継ノードの損失、Atは送電機のアンテナの開口面積、Arは中継ノードのアンテナ開口面積、λはマイクロ波の波長、mは距離減衰の回数である)
ことを特徴とする、請求項
1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項4】
前記中継器は、受電電力を電力増幅し、当該電力増幅した電力を送電する
ことを特徴とする、請求項
1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項5】
前記中継器の個数は、受電機の要求電力量に対する、中継器の電力増幅量の総和の総増幅量を最小化する個数である
ことを特徴とする、請求項4に記載の無線電力伝送システム。
【請求項6】
前記ノードの送電周波数は、
中継器間距離と直接波の周波数から求まる直接波の位相と、前記中継器と大地との間の距離と大地反射波の周波数から求まる大地反射波の位相と、の位相ずれが設定範囲となる周波数であり、
前記直接波と前記大地反射波の前記位相ずれは、中継器間距離に基づいて算出される直接波と大地反射波の2波の経路差と、前記マイクロ波の波長に基づいて算出される
ことを特徴とする、請求項
1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項7】
前記受電機は、
多対一電力伝送において、複数の送電機から直接に受電、又は複数の中継器を介して受電し、前記複数の送電機又は複数の中継器は時刻同期により送電し、
前記マイクロ波の位相を揃え、
前記時刻同期は、位相誤差=2π・周波数・Δtの関係から、複数の前記送電機の時刻誤差Δtが最大許容時刻誤差内に収まり、2波の送信波の位相誤差が最大許容位相誤差内に収まる周波数の制御である
ことを特徴とする、請求項
1記載の無線電力伝送システム。
【請求項8】
前記複数のノードから受電機への
多対一電力送電において、
前記ノードは、
受電機から各ノードの方位角に基づいて受電機と各ノードとの距離を求め、前記距離に基づいて
受電機での電力のノード間の位相ずれ量を求め、前記位相ずれに基づいて送電の位相を補償し
、前記受電機での位相ずれによる電力の打ち消しを低減する
ことを特徴とする、請求項
1記載の無線電力伝送システム。
【請求項9】
前記送電機は、
前記送電機と、
前記中継器又は
前記受電機とが成す方位角(Δθ)及び仰角(Δφ)、
ビーム幅θ
HP
及び仰角の幅φ
HP
に基づいて定まる
前記送電機の送電アンテナの
ゲインGt(Δθ,ΔΦ)
を最大とするビーム幅θ
HP
を前記送電機の送電アンテナの最適化ビーム幅とする
ことを特徴とする、請求項
1記載の無線電力伝送システム。
【請求項10】
一つの送電元から複数の受電端に送電を行う一対多電力伝送において、前記送電機のビーム形状はマルチビームである
ことを特徴とする、請求項
1記載の無線電力伝送システム。
【請求項11】
前記送電機は、単一の送電機から複数の受電機へのビーム、又は複数の送電機から単一の受電機へのビームを放射するアンテナ指向性を有する
ことを特徴とする、請求項
1記載の無線電力伝送システム。
【請求項12】
前記ネットワーク層は、
前記経路の重みにおいて、重み1を境界と
し、1以上の重みを設定する能動的な経路選択を行うアクティブルーティング、及び
1未満の重みを設定する受動的な経路選択を行うパッシブルーティング
を含むルーティングを行うものであり、前記ルーティングにより前記ネットワークの給電経路の最適化を行う
ことを特徴とする請求項
1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項13】
前記パッシブルーティングは、干渉がある経路、反射体がある経路に対して負を含む1未満の重みを設定する
ことを特徴とする請求項
12に記載の無線電力伝送システム。
【請求項14】
前記ネットワーク層において、
前記重みの和が最大となる前記最適な給電経路の選択は、重み付きグラフを用いたダイクストラ法による最適給電ルートを選択するものであり、前記電力伝送効率と電力変換効率の積で表される給電効率の逆数が最小となる給電経路を選択する
ことを特徴とする、請求項
1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項15】
前記ネットワーク層において、
前記受電機は位置情報を含む給電要求パケット(EREGパケット)をブロードキャストし、
前記中継器は、前記給電要求パケット(EREGパケット)を再
ブロードキャストし、
前記送電機は、受信した
前記給電要求パケット(EREGパケット)に含まれる位置情報に基づいてノード間距離を求め、当該ノード間距離に基づいて
前記電力伝送効率を取得する
ことを特徴とする、請求項
1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項16】
前記送電機は、前記給電要求パケット(EREGパケット)により給電を要求する受電機に対して、
電力をパケット化した電力パケットにより電力供給する
ことを特徴とする、請求項
15に記載の無線電力伝送システム。
【請求項17】
前記MAC層は、
前記各ノードが前記第1層の物理層の各ノード間で行う電力送電の前記アクセス制御において、前記ノード間で行う電力送電の送電間隔をパケット化し、
前記複数ノードからの
電力をパケット化した電力パケットの衝突をキャリアセンスにより検出し回避し、
前記電力パケットを再送するプロトコルを備える
ことを特徴とする、請求項
1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項18】
前記MAC層は、
前記各ノードが前記第1層の物理層の各ノード間で行う電力送電の前記アクセス制御において、通信制御に係る情報パケットにより時分割で時間スロットを割り当てるプロトコルと、
前記情報パケットの後に電力をパケット化した電力パケットを送る時系列制御を行うプロトコル
と、の両プロトコルを備える
ことを特徴とする、請求項
1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項19】
前記MAC層は、
前記各ノードが前記第1層の物理層の各ノード間で行う電力送電の前記アクセス制御において、前記ノード間で行う電力送電の送電間隔をパケット化し、
前記複数ノードからの電力パケットの衝突をキャリアセンスにより検出し回避し、
前記電力パケットを再送するプロトコルと、
前記複数ノードからの通信制御に係る情報パケットを時分割し時間スロットを割り当て、供給電力をパケット化した電力パケットと情報パケットとの衝突回避を行うプロトコル
と、の両プロトコルを備える
ことを特徴とする、請求項
1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項20】
前記MAC層は、
前記各ノードが前記第1層の物理層の各ノード間で行う電力送電のアクセス制御において、前記複数ノードからの
電力をパケット化した電力パケットを位相合成し、受電力を最大化する
プロトコルを備える
ことを特徴とする、請求項
1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項21】
電力及び情報を無線伝送する無線電力・情報伝送システムであり、
電力を伝送する送電元のノードを成す送電機と、伝送された電力を受電するノードを成す受電機と、前記送電機と前記受電機の間で電力及び情報の受け渡しを行うノードを成す複数の中継器と、前記送電機と前記受電機と前記中継器の各ノードで構成される第1層の物理層と、前記第1層の物理層における前記各ノードの電力の無線伝送及び情報の情報伝送を制御する第2層のMAC層、及び第3層のネットワーク層と、を備え、
前記第1層の物理層は、上記した複数のノードが、前記送電機と前記受電機との間で前記複数の中継器のノードを経由するネットワークを形成し、
前記ネットワークが、前記送電機と前記受電機との間を、前記中継器をリレーして電力伝送及び情報伝送を行うマルチホップリレーを構成するものであり、
前記第2層のMAC層は、前記第1層の物理層の各ノードが、各ノード間の電力及び情報の受け渡しを制御するノード間のアクセス制御によって受電機から送電機への電力と情報の同時多重伝送を行うものであり、
前記第3層のネットワーク層は、前記送電機が、前記第1層の物理層のマルチホップリレーにおいて、各ノード間で受け渡す電力の1ホップ当たりの電力伝送効率及び/又は干渉レベルを各ノード間の経路の重みに対応付け、前記送電機と前記受電機との間の経路において前記ノード間の経路に対応づけた重みの和を電力伝送経路の給電効率とし、前記第1層の物理層のネットワークの複数の経路の中から前記給電効率が最大となる経路を最適な電力伝送経路として選択するものであり、
前記第1層の物理層のマルチホップリレーにおいて、隣接するノード間の信号雑音比(S/N比)を経路の重みに対応付け、前記送電機と前記受電機との間の経路において前記ノード間の経路に対応づけた重みの和を情報伝送経路の経路信号雑音比とし、
前記第1層の物理層の前記ネットワークにおける複数の経路の中から、前記経路信号雑音比及び/又は通信路容量が最大となる経路が最適な情報伝送経路として選択され、電力と情報が同時多重伝送される
ことを特徴とする無線電力・情報伝送システム。
【請求項22】
前記ネットワーク層において、
前記送電機と受電機との間の電力伝送経路の重みの和、及び前記送電機と受電機との間の情報伝送経路の重みの和は、重み付きグラフにおいて2つのノード間の経路の重みの和が最小となる経路を求めるダイクストラ法により求められ、
前記MAC層において、
前記電力の無線伝送は、前記マイクロ波の搬送波の振幅による電力伝送により行われ、前記情報の無線伝送は、前記マイクロ波の搬送波の位相による情報伝送により行うことにより電力と情報の同時多重伝送が行われる
ことを特徴とする、請求項21に記載の無線電力・情報伝送システム。
【請求項23】
前記ネットワーク層において、
前記送電機と受電機との間の電力伝送経路の重みの和、及び前記送電機と受電機との間の情報伝送経路の重みの和は、重み付きグラフにおいて2つのノード間の経路の重みの和が最小となる経路を求めるダイクストラ法により求められ、
前記MAC層において、
前記電力をパケット化した電力パケットをオン/オフ変調して時分割し、当該時分割された電力パケットと情報通信の情報パケットの時系列制御を行うことにより、電力と情報の同時多重伝送が行われる
ことを特徴とする請求項21に記載の無線電力・情報伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサーなどのIoT機器や、ドローンなどの無線航空機(Unmanned aerial vehicle, UAV)などの電力に制約がある機器、使用される個数も増加している。これらの機器は工場、災害時など様々な場面での活躍が期待されているが、バッテリーの取り換えや充電の手間がかかること、またその間に機器が停止してしまうこと、人体への影響や周辺機器への干渉などが問題点としてあげられる。この問題への解決策として、WPT(無線電力伝送)技術の適用が考えられる。無線電力伝送の中でも、IoT機器やUAVなどへの給電に必要な長距離伝送が可能であるものとしてマイクロ波による無線電力伝送が有望視されている。
【0003】
無線電力伝送(Wireless Power Transfer あるいは、Wireless Power Transmission:WPT)は、無線による電力供給自体の他、伝送技術も含んでいる。無線電力伝送は大きく分けて以下の3つに分類される。
(1)電磁誘導による電力伝送方式。この電力伝送方式では、コイルを貫く磁束密度を変化させることによって生じる起電力を利用することで電力を伝送する。
(2)磁界共振による電力伝送方式。この電力伝送方式では、送電側と受電側のコイルを磁気的に同じ周波数でLC共振させることにより、磁気エネルギーを通して電力供給を行う。
(3)電磁波を利用した電力伝送方式。この電力伝送方式では、アンテナを用いて受電した電磁波を整流して直流に変換することによって電力伝送を行う。電磁波を用いた伝送方法では、アンテナ理論より伝送効率が比較的よくなることから、マイクロ波帯(GHz帯)、もしくはより周波数の高い高周波数帯域を用いることが多い。この場合の電力伝送方法は特にマイクロ波空間伝送方式と呼ばれている。マイクロ波を用いた無線電力伝送について、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線電力伝送において、一般的に検討を要する要件として、無線給電の大容量化、長距離化、高効率化、高信頼化、人体に対する障害や他の無線機器への干渉の回避等があり、複数の中継器(ノード)を経由するネットワークを検討すると、ネットワーク全体の電力消費を低減する高効率化のためや、人体や他の機器への障害や干渉を低減する高信頼性化のために給電経路やアンテナの指向性の最適化が求められる。マイクロ波を用いた無線電力伝送では、送信源の近傍から離れると給電距離の二乗に比例して電力密度が小さくなるため、長距離で給電を行う際には給電効率、伝送効率の大幅な向上が課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、送電機と受電機の間に中継器(ノード)を加え、電力を中継させて伝送するマルチホップリレーを用いる。本発明は、マルチホップリレーを用いて電力を伝送することにより、伝送系統において送電機、受電機、及び中継器の各ノード間の距離が短くなり、伝送距離による減衰の影響は低下される。本発明によれば、送電機と受電機の間を直接給電するときと比較して、マルチホップリレーを用いて中継器を介して電力伝送することにより、中継距離、中継経路や中継法に応じて長距離の給電効率が上昇する。
【0007】
なお、送電機は電力を伝送する送電元のノードであり、受電機は送電された電力を受電するノードであり、中継器は送電機と受電機の間で電力の受け渡しを行うノードである。送電機については、電力を給電する意味合いから送電機に代えて給電機の用語で表す場合もあるが、本発明は受電機と対を成す送電機に用語を用いる。
【0008】
マルチホップリレーにおいて、中継器のノードの候補が複数ある場合には、複数の給電経路(ルート)が設定可能となる。本発明は、これらの複数の給電ルートの中から、送電機と受電機の間のend-to-endの給電効率が最も高くなるような給電ルートを選択し得る。また、本発明は、人体や他の無線機器への干渉を最小にするルーティング(経路選択)を選択し得る。本発明は、中継器を設けることにより、送電距離が長い電力送電の他、通常の見通し(Line of Sight:LOS)環境ばかりでなく、建物内などの非見通し(Non Line of Sight:NLOS)環境においても干渉を回避した電力給電が可能となる。なお、中継器は電池や電源を備え、増幅する機能を有する場合もあり、この場合には、中継器は送電機としても機能する。
【0009】
本発明は、マルチホップリレーにおいて、給電量を最大にする他、人体や他の無線機器への干渉妨害を最小にする最適な中継器の個数を導出する。
【0010】
本発明は、マルチホップリレーにおいて、送電中の電力低下の課題に対して、中継器に電力増幅機能(ET 機能)を持たせ、中継増幅を行うことにより、電力電送中において電力を増幅し、送電中の電力低下を補う。
【0011】
さらに、ノード間の電力伝送の間において、マイクロ波が大地や、ビルあるいは壁等の人工物等の反射物した反射波が次のノードに入力すると、直接波と反射波の2波の位相ずれの影響により給電量が小さくなるという課題がある。本発明は、この位相ずれによる課題に対して、ノードからの電力伝送の周波数を変更することにより給電量を改善する。
【0012】
本発明は、マイクロ波により電力を無線伝送する無線電力伝送システムであり、
(a)ノード間の電力伝送をマルチホップリレーにより行うための第1層の物理層と、
(b)複数ノード間の送受電を制御するための第2層のMAC(Media Access Control)層と、
(c)複数ノードからなるネットワークの給電経路、ルーティング(routing)を最適化する第3層のネットワーク層を備える。
【0013】
無線電力伝送システムは、第1層の物理層を構成する複数のノードを通して行う電力伝送において、各複数ノード間の送受電の制御を第2層のMAC層で行い、複数ノードから構成される複数のネットワークの中から、給電効率を評価指標として最適な給電経路を選択する。
【0014】
給電経路の選択は、
(1)中継器の他に、人や中継器以外の通信機器に対する侵襲や干渉による障害を回避するためにリレーを行うノードを選択する能動的な経路選択(アクティブルーティング)。
(2)大地や人工物等の反射体を経路の一部とする受動的な経路選択(パッシブルーティング)を含み、これら能動的な経路選択(アクティブルーティング)、及び受動的な経路選択(パッシブルーティング)において、ネットワークを構成するノードや反射体を選択して給電効率を最大化することにより最適な給電経路を選択する。
(3)既存の中継器(ノード)間で最適ルーティング化された給電経路において、目的とする最終給電対象の受電機への給電効率を最大化するために、追加する中継器(ノード)を配置する最適な配置を選択する。
【0015】
[物理層]
本発明の無線電力伝送システムは、ノード間の電力伝送をマルチホップリレーにより行うための第1層の物理層を備える。
【0016】
物理層のノードは、送電機、受電機、及び各ノード間の送受電を行う中継器であり、中継器を介して送電機から受電機へマルチホップリレーにより送電を行う。
【0017】
(中継器)
中継器は、送電電力を中継することにより送電中の電力低減を軽減する一構成であるが、配置する個数、及び中継器間距離は無線電力伝送システムのコストに影響するため、適切は中継器の個数、及び適切な中継器間距離が求められる。
【0018】
・中継器の個数:
中継器の個数は、送受電間の給電量と、中継器の個数、距離減衰、及び中継器の損失の関係に基づいて、給電量を最大化する個数により最適な個数を得る。
【0019】
・中継器間の距離:
中継器間の距離は、送受電間の給電量と、中継器の個数、距離減衰、及び中継器の損失の関係に基づいて、給電量を最大化する距離により最適な中継器距離を得る。
【0020】
・中継器の電力増幅機能:
中継器に受電電力を電力増幅する機能を持たせ、電力増幅した電力を送電する構成とすることにより、送電中の電力低減を軽減する。これにより、受電機側の要求電力に対して総送電力は低減する。ここで、総送電力は送電機側の送電電力と中継器の電力増幅に要した電力とを加算した電力である。
【0021】
中継器に受電電力を電力増幅する機能を持たせた構成において、中継器の個数は、受電機の要求電力量に対する、中継器の電力増幅量の総和の総増幅量を最小化する個数である。
【0022】
・周波数変更:
送電機及び中継器のノード間では、主に空間伝搬による直接波の他に、伝搬環境により大地で反射されて届く反射波が含まれる場合がある。直接波と反射波の2波は、ノード間距離により位相ずれが生じる場合があり、この位相ずれは受電端末側での受電電力に影響し電力低下を招くおそれがある。この反射波の影響を低減するために、送電機及び中継器のノードで送電する送電周波数を、ノード間において直接に届く直接波と大地で反射されて届く反射波と位相ずれなどの無線伝搬空間の周波数伝搬特性に適した周波数から選択した周波数とする。
【0023】
送電機は、各ノード間の距離に基づいて各ノード間の周波数を選択することにより、各ノード間において最適な周波数で電力伝送を行うことができる。
【0024】
第1層の物理層の各ノードにおいて、複数ノード間の送受電を制御するための第2層のMAC層と協働して、マイクロ波の位相調整、ビーム幅の調整、及びマルチビームの形成を行う。
【0025】
・位相調整:
多数の送電元から一受電端に送電を行う多対一電力伝送(multipoint-to-one)では、受電端での位相ずれによる電力の打ち消しを低減する。この電力減少を低減する構成として、送電元間において時刻同期、及び位相ずれ補償を行う。
【0026】
時刻同期:受電機は、複数の送電機から直接に受電、又は複数の中継器を介して受電し、複数の送電機又は複数の中継器は時刻同期により送電する。
【0027】
位相ずれ補償:複数のノードから受電機への電力送電において、ノードは、受電機から各ノードの方位角に基づいて受電機と各ノードとの距離を求め、距離に基づいてノード間の位相ずれ量を求め、位相ずれに基づいて送電の位相ずれを補償する。
【0028】
・最適ビーム幅:
受電端と送電元のアンテナビームのメインローブ間に方位角及び/又は仰角の角度誤差による位相ずれにより受電電力が低下する。
【0029】
送電機は、送電機と、中継器又は受電機とが成す方位角(Δθ)及び仰角(Δφ)に基づいて定まる送電機の送電アンテナのゲインにより、送電機の送電アンテナのビーム幅を最適化する。
【0030】
・最適ビーム形状
一送電元から複数の受電端に送電を行う一対多電力伝送(one-to-multipoint)では、アンテナのマルチビームにより複数の受電ノードに給電する。送電機は、マルチビームにより複数の受電機に送電するために最適なビームを形成する。
・アンテナの指向性
送電機は、電波放射方向にビームを絞り込む(ビームフォーミング)と共に、電波放射方向以外の方向にはビームが放射されない(ヌルステアリング)ように、アンテナの指向性を設計する。
・振動する給電対象に帯するアンテナの指向性
送電機は、ドローンのように移動したり、揺動する受電機(給電対象)に対して、送電機のアンテナから放射するビームを絞ることで最適な指向性を設計する。この指向性の最適化は、受電機(給電対象)の振動により位置が分散する振動分散に対して、分散に応じてビーム幅を広げることで受電効率を向上させる。
・複数の送電機あるいは複数の受電機に帯するアンテナの指向性
送電機は、複数の送電機(給電機)から一つの受電機への給電、および一つの送電機から複数の受電機に対して給電を行うアンテナの指向性の広がりを設計する。
【0031】
[ネットワーク層]
本発明の無線電力伝送システムは、複数ノードからなるネットワークの給電経路(ルート)を最適化する第3層のネットワーク層を備える。ネットワーク層は、マルチホップリレーにおける給電効率を最大となる最適給電ルートを選択する。
【0032】
ネットワーク層は、一対の送受電機と複数の中継器をノードとする経路において、経路の重みを隣接する中継器間の電力伝送効率に対応させた重み付きグラフを用い、給電効率を評価指標として最適給電リートを選択する。ダイクストラ法により送電機と受電機との間の経路の重みの和を給電効率とし、給電効率が最大となる経路を最適化したネットワークの給電経路とする。
【0033】
物理層において、(1)能動的な経路選択(アクティブルーティング)、及び(2)受動的な経路選択(パッシブルーティング)において、ネットワークを構成するノードや反射体を選択して給電効率を最大化することにより最適な給電経路を選択する。ネットワーク層は、重み付きグラフの経路の重みを用いることにより、物理層の給電効率の最大化する経路選択と協働して最適な給電経路を選択する。
【0034】
例えば、能動的な経路選択(アクティブルーティング)では重みを1以上の値に設定し、受動的な経路選択(パッシブルーティング)では重みを1未満に設定する。なお、受動的な経路選択(パッシブルーティングの重みにおいて、減衰することなく反射される場合には、重み1を含めた重み付けとしても良い。
経路選択、給電経路の選択において、給電効率や伝送効率を基準とする選択の他、人体や無線機器への干渉を避けることを基準とする選択を行う。この二つの選択基準による経路選択、給電経路の選択は、重み付けにより一元的に扱うことができる。例えば、人体や無線機器への干渉を避けることを基準とする選択では、干渉の危険がある経路の重みを零やマイナスの値に設定する等、危険度に応じて重みを設定することにより、給電効率や伝送効率の基準と干渉回避の基準とを同時に考慮した経路線絡(ルーティング)を選択することができる。
【0035】
また、中継器間の電力伝送効率の取得において、
(1)受電機は位置情報を含む給電要求パケット(EREGパケット)をブロードキャストし、
(2)中継器は給電要求パケット(EREGパケット)を再ロードキャストし、
(3)送電機は受信した給電要求パケット(EREGパケット)に含まれる位置情報に基づいてノード間距離を求め、ノード間距離に基づいて電力伝送効率を取得する。
(4)送電機は、前記給電要求パケット(EREGパケット)により給電を要求する受電機に対して、パケット状の電力パケットにより電力供給する。
【0036】
(無線電力伝送及び無線情報伝送)
ネットワーク層は、物理層及びMAC層と共に、電力を無線伝送する無線電力伝送と、情報を無線伝送する無線情報伝送との同時伝送に対応することができる。
本発明は、電力を送る電力パケットと、位置や位相情報、およびパケットを送受するタイミングを連絡し合う情報通信の情報パケットとし、MAC層のアクセス制御プロトコルは電力パケットと情報パケットとを両方扱うことにより無線電力伝送及び無線情報伝送を行う。
【0037】
ネットワーク層において、
(1)無線電力伝送では、一対の送受電機と複数の中継器をノードとする経路において、経路の重みを隣接する中継器間の電力伝送効率に対応させた重み付きグラフにおいて、ダイクストラ法により送電機と受電機との間の電力伝送経路の重みの和を給電効率とする。
(2)無線情報伝送では、一対の送受電機と複数の中継器をノードとする経路において、経路の重みを隣接する中継器間の信号雑音比(S/N比)に対応させた重み付きグラフにおいて、ダイクストラ法により送電機と受電機との間の情報伝送経路の重みの和を経路信号雑音比とする。
(3)給電効率と経路信号雑音比とに重み付けして加算した和が最大となる経路を最適化したネットワークの給電経路とする。
(4)人体や無線機器への干渉を避けることを基準とする選択では、干渉の危険がある経路の重みを零やマイナスの値に設定する等、危険度に応じて重みを設定することにより、給電効率や伝送効率の基準と干渉回避の基準とを同時に考慮した経路線絡(ルーティング)を選択する。
これにより、無線電力伝送の電力伝送経路と無線情報伝送の情報伝送経路の両伝送経路の内から最適な経路を選択することができる。
【0038】
[MAC層]
本発明の無線電力伝送システムは、複数ノード間の送受電を制御するための第2層のMAC層を備える。複数ノード間の送受電は、複数の送電ノード(給電ノード)から1つの受電ノードへの送受電も含み、MAC層は複数のプロトコルを備える。
MAC層のプロトコルは、電力パケット同士の衝突回避を行う他、同じ周波数や空間を使用する無線情報伝送の情報パケットとの衝突回避を行うアクセル制御を行う。現在の電波法では、干渉を受ける受信側での受信電力で等価的に表されるEIRPの許容上限が電波法の技術条件となっており、情報であるか電力であるかに関わらず、アンテナからの放射電力が規定されている。本発明は、無線電力伝送のMACプロトコルと無線情報伝送のMACプロトコルとを共通化することにより、電波法上の技術条件を満足させることができる。
【0039】
(1)MAC層は、送電間隔をパケット化し、複数ノードからの送電パケット(電力パケット)の衝突をキャリアセンスにより検出し回避し、再送するプロトコルを備える。
(2)MAC層は、複数ノードから時分割で送信パケット(情報パケット)の時間スロットを割り当てるプロトコルを備える。
(3)MAC層は、送電間隔をパケット化し、複数ノードからの送電パケット(電力パケット)の衝突をキャリアセンスにより検出し回避し、再送するプロトコルと、複数ノードから時分割で送信パケットの時間スロットを割り当てるプロトコルの両プロトコルを備える。
(4)MAC層は、複数ノードからの送電パケット(電力パケット)を位相合成し、受電力を最大化するプロトコルを備える。
(5)MAC層は、複数の送電ノード(給電ノード)から直交や疑似直交符号を使って1つの受電ノードで同時に受けるCDMA方式のプロトコルを備える。
CDMA方式のプロトコルは、符号の直交性において、複数の互いに直交する符号を送信ノードのID(認識識別子)とすることにより、同一時間に同一周波数で電力パケット(給電パケット)が重なった場合であっても、分離し受電することができる。
TDMA方式のプロトコルは、同じ周波数で同じ空間であっても時間軸上で直交して重ならないことにより、送電の電力パケット(給電パケット)の衝突を回避することができる。
FDAM方式のプロトコルは、周波数軸上の直交性により、複数の送電機のノードからそれぞれ異なる周波数の送電の電力パケット(給電パケット)を送ることにより、時間、空間で分離することができる。
SDMA方式のプロトコルは、アンテナ指向性や給電経路(ルート)上の直交性により、同じ時間で同じ周波数で同じ符号で送った複数の送電の電力パケット(給電パケット)が重なる場合であっても分離することができる。
これらのCDMA方式、TDMA方式、FDAM方式、およびSDMA方式の各プロトコルは、任意の方式の組み合わせを適用することができる。
【0040】
第3層のMAC層は、第1層の物理層と協働して、マイクロ波の位相調整、ビーム幅の調整、及びマルチビームの形成を行う。
【0041】
[無線電力・情報伝送システム]
本発明は、電力と情報とを同時に無線伝送する無線電力・情報伝送システムを備える。無線電力・情報伝送システムは、
(1)ノード間の電力伝送、及び情報伝送をマルチホップリレーにより行うための第1層の物理層
(2)複数ノード間の電力の送受電を制御するための第2層のMAC層
(3)複数ノードからなるネットワークの電力の給電経路、及び情報の送電経路を最適化する第3層のネットワーク層
を備え、
(4)無線電力伝送はマイクロ波により電力を無線伝送し、
(5)無線電力伝送は、電力伝送の給電経路を給電効率に基づいて最適化し、
(6)無線情報伝送は、情報伝送の送信経路を信号雑音比(S/N比)及び/又は通信路容量に基づいて最適化する。
【0042】
電力と情報との同時無線伝送は複数の形態を適用することができる。
(第1の形態)
電力と情報との同時無線伝送の第1の形態は、マイクロ波の搬送波の振幅により電力伝送を行い、マイクロ波の位相による情報伝送を行う形態であり、これにより電力と情報を同時多重伝送する。搬送波は、マイクロ波帯域において、単一の波長により行う他に、複数波長を用いて行っても良い。複数波長として例えば2.4GHz、5.7GHz、24GHz等がある。第1の形態は、MAC層においてFDMA方式のプロトコルに対応する。
【0043】
(第2の形態)
電力と情報との同時無線伝送の第2の形態は、電力伝送を供給する電力をパケット化し、パケット化した電力パケットをオン/オフ変調する形態である。電力パケットによりパケットを単位として電力を伝送し、時分割された電力パケットに時間間隔により情報を伝送する。これにより電力と情報を同時多重伝送する。第2の形態は、MAC層においてTDMA方式のプロトコル、特にON/OFFkeyingの変調法に対応する。
【発明の効果】
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、無線電力伝送において、長距離給電の送電効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の無線電力伝送システムの概要を説明するための図である。
【
図2】ノード、及び複数のノードからなるネットワークを模式的に示す図である。
【
図4】周波数に対する電力変換効率(PCE)の関係を示す図である。
【
図5】周波数選択のシステムモデルを示す図である。
【
図7】自由空間伝搬における電力伝送効率の周波数特性を示す図である。
【
図8】電力変換効率(PCE)の周波数特性を示す図である。
【
図9】送電機の周波数選択の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図12】周波数選択による無線電力伝送システムと単一周波数を用いたシステムとの平均給電効率を比較する図である。
【
図13】マルチホップリレーによる給電モデルを示す図である。
【
図14】マルチホップリレーによる給電量を示す図である。
【
図15】マルチホップリレーによる給電モデルを示す図である。
【
図16】Distribution and Forward方式のブロック図である。
【
図17】Rectification and Forward方式のブロック図である。
【
図18】ホップ数とDifference of efficiencyの関係の一例を示す図である。
【
図19】ドローン等の移動可能な中継器ノード(受電端末)の測位誤差の概要を示す図である。
【
図21】最大角度ずれに対するEnd to end給電効率の評価を示す図である。
【
図22】周波数に対するEnd to end給電効率の評価を示す図である。
【
図23】周波数とEnd to end給電効率との関係を示す図である。
【
図24】要求電力量を送るための各中継器での総増幅量を示す図である。
【
図25】中継器で電力増幅する場合と送電機側で電力増幅する場合に各給電量を比較するための図である。
【
図26】中継器で電力増幅したときと送電機で電力増幅したときとを給電量で比較するための図である。
【
図27】反射波を考慮した直接波と反射波の2波モデルを示す図である。
【
図28】2波の重ね合わせにおいて位相が一致する面積で正規化した結果を示す図である。
【
図29】最適周波数を導出する手順を説明するためのフローチャートである。
【
図30】周波数を変更した場合の給電量を示す図である。
【
図31】周波数を変更した場合の総距離に対する最適なホップ数を示す図である。
【
図32】ノード間距離(受電端末距離)に対する指摘周波数シミュレーション例を示す図である。
【
図33】マルチホップリレーにより無縁電力伝送の概略構成を示す図である。
【
図34】給電ルートの環境を説明するための図である。
【
図35】重み付きグラフを説明するための図である。
【
図36】給電用のマルチホップリレーにおける位置情報の通信を説明するための図である。
【
図37】位置情報を送信する送電機側の手順を説明するための図である。
【
図38】位置情報を送信する中継器の手順を説明するための図である。
【
図39】位置情報を送信する手順を説明するための図である。
【
図40】位置情報を送信する受電機側の手順を説明するための図である。
【
図41】end-to-end給電効率のノード数と平均給電効率のシミュレーションについて結果総送電距離が10mの場合を示す図である。
【
図42】end-to-end給電効率のノード数と平均給電効率のシミュレーションについて総送電距離が20mの結果を示す図である。
【
図43】end-to-end給電効率のノード数と平均給電効率のシミュレーションについて総送電距離が30mの結果を示す図である。
【
図44】end-to-end給電効率のノード数と平均給電効率のシミュレーションについて総送電距離が40mの結果を示す図である。
【
図45】ノード数に対する通信による消費電力を示す図である。
【
図46】複数の送電機から給電を受ける概略構成を示す図である。
【
図47】複数の送電機から給電を受ける場合の複数のアンテナからの送電状態を示す図である。
【
図48】ノード(受電端末)Rx、アンテナTx1,Tx2の位置関係を示す図である。
【
図49】アンテナから見たドローンの方向と、アンテナのメインローブ方向との間に誤差がある状態を示す図である。
【
図50】最適ビーム幅のシミュレーション例を示す図である。
【
図53】伝送距離を変化させた場合のビーム幅のシミュレーションを示す図である。
【
図54】角度誤差を考慮した最適ビーム幅とドローンの移動量との関係を示す図である。
【
図55】ドローンが静止状態にある際の風に対する姿勢制御に伴う移動状態を示す図である。
【
図56】静止しようとしたドローンが風や姿勢制御で移動したときの給電効率を示す図である。
【
図57】遅延時間によるドローンの移動状態を示す図である。
【
図58】ドローンの平均移動量に対する給電効率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の無線電力伝送システムは、ノード間の電力伝送をマルチホップリレーにより行うための第1層の物理層と、複数ノード間の送受電を制御するための第2層のMAC層と複数ノードからなるネットワークの給電経路を最適化する第3層のネットワーク層を備える。本発明の層構造の無線電力伝送システムにより、第1層の物理層を構成する複数のノードを通して行う電力伝送において、各複数ノード間の送受電の制御を第2層のMAC層で行い、複数ノードから構成される複数のネットワークの中から、給電効率を評価指標として最適な給電経路を選択し、各ノード間のマイクロ波による無線電力伝送をマルチホップリレーにより行う。
【0047】
図1は本発明の無線電力伝送システムの概要を説明するための図である。無線電力伝送システム10は、
図1(a)に示すように、第1層の物理層11、第2層のMAC層、及び第3層のネットワーク層の複数の階層により構成される。
【0048】
第1層の物理層11は複数のノードにより構成され、マルチホップリレーリレーによりノード間を中継して電力伝送を行う階層である。複数のノードは、電力を供給する電力供給源である送電機、電力の供給を受ける受け手である受電機、送電機と受電機の間の給電経路において、電力を中継して次のノードに渡す中継器を備える。
【0049】
第2層のMAC層12は、所定のプロトコルに従って複数ノード間の送受電を制御する階層である。
【0050】
第3層のネットワーク層13は、複数ノードからなるネットワークの給電経路を、給電効率を評価指標として最適化する階層である。
【0051】
各層は協働して、第1層の物理層11の複数ノード間の電力伝送を、第2層のMAC層により制御し、第1層の物理層11の複数ノードから構成されるネットワークの複数の給電経路の中から、第3層のネットワーク層13により給電効率を評価指標として最適な給電経路を選択し、各ノード間のマイクロ波による無線電力伝送をマルチホップリレーにより行う。
【0052】
第3層のネットワーク層13の上層には、セキュリティを担保する第4層のアプリケーション層14を設ける構成としても良い。
【0053】
図2は、ノード、及び複数のノードからなるネットワークを模式的に示している。ここでは、ネットワーク4はノードとして複数の中継器3から構成される。なお、
図2では、ネットワーク4は複数の中継器3のみにより構成される例を示しているが、送電機1、受電機2、及び中継器3を含めた構成として良い。
【0054】
第2層のMAC層12は第1層の物理層11の各ノード間の電力の受け渡しをプロトコルに従って給電制御し、第3層のネットワーク層13は第1層の物理層11のネットワークが形成する複数の給電経路の中から給電効率を評価指標として最適な給電経路を選択する。
【0055】
(電力と情報の同時無線伝送)
図1(b)は、本発明の無線電力伝送100と無線情報伝送200との関係を示している。本発明の無線電力伝送100と無線情報伝送200とは、類似する階層構造とすることにより、電力と情報の両方を同時に無線で伝送することを可能とする。
【0056】
無線電力伝送100は、第1層の物理層11、第2層のMAC層12、第3層のネットワーク層13、及び第4層のアプリケーション層14に対応する構成として、マルチホップリレーの層101,無線給電制御の層102,最適給電経路の層103,セキュリティの層104を備える。
【0057】
一方、無線情報伝送200は、第1層の物理層11、第2層のMAC層、第3層のネットワーク層、及び第4層のアプリケーション層14に対応する構成として、変調・符号の層201,通信制御のプロトコルの層202,情報のルーティングの層203,セキュリティの層204を備える。無線電力伝送100及び無線情報伝送200において、無線電力伝送100は電力の伝送効率を評価する評価指標15として給電効率105を備え、無線情報伝送200は情報の伝送効率を評価する評価指標15としてS/N比205a、及び通信路容量205bを備える。
【0058】
無線電力伝送100と無線情報伝送200を類似の階層構造とすることにより、類似するノードのネットワークを利用すると共に、電力伝送制御と情報伝送制御を第1層の物理層11、第2層のMAC層、及び第3層のネットワーク層でのそれぞれの機能により干渉を回避して行う。
【0059】
また、複数のノードにより形成される複数の経路において、無線電力伝送100の給電効率105、及び無線情報伝送200のS/N比205a,通信路容量205bの各給電効率105を考慮して最適経路を選択する。
【0060】
(無線電力・情報伝送システム)
本発明の電力と情報とを同時に無線伝送する無線電力・情報伝送システムは、
(1)ノード間の電力伝送、及び情報伝送をマルチホップリレーにより行うための第1層の物理層
(2)複数ノード間の電力の送受電を制御するための第2層のMAC層
(3)複数ノードからなるネットワークの電力の給電経路、及び情報の送電経路を最適化する第3層のネットワーク層
を備える。
【0061】
無線電力・情報伝送システムは、上記各層において
(a)無線電力伝送はマイクロ波により電力を無線伝送し、
(b)無線電力伝送は、電力伝送の給電経路を給電効率に基づいて最適化し、
(c)無線情報伝送は、情報伝送の送信経路を信号雑音比(S/N比)及び/又は通信路容量に基づいて最適化する。
無線電力・情報伝送システムにおいて、経路選択は、給電効率や送伝効率を評価基準とする最適化の他、人体や無線機器への干渉レベルを評価基準とした最適化を適用することができる。無線機器としては、例えば、既存の無線通信機器、無線情報伝送機器、他の無線電力伝送機器、電波障害の影響を受ける機器、小腸大腸用無線カプセル内視鏡などの無線医療機器のように電波を送受する医療機器等がある。
【0062】
電力と情報との同時無線伝送は複数の形態を適用することができる。
(同時無線伝送の第1の形態)
電力と情報との同時無線伝送の第1の形態は、マイクロ波の搬送波の振幅により電力伝送を行い、マイクロ波の位相による情報伝送を行う形態であり、これにより電力と情報を同時多重伝送する。搬送波は、マイクロ波帯域において、単一の波長により行う他に、複数波長を用いて行っても良い。複数波長として例えば2.4GHz、5.7GHz、24GHz等がある。
【0063】
(同時無線伝送の第2の形態)
電力と情報との同時無線伝送の第2の形態は、電力伝送を供給する電力をパケット化し、パケット化した電力パケットをオン/オフ変調する形態であり、情報通信におけるON/OFFキーイング(OOK)に類似する形態である。電力パケットによりパケットを単位として電力を伝送し、時分割された電力パケットに時間間隔により情報を伝送する。これにより電力と情報を同時多重伝送する。
【0064】
[物理層]
以下、第1層の物理層に関連する構成について説明する。
(マイクロ波伝送)
マイクロ波を用いた無線電力伝送は、宇宙太陽光発電所や電気自動車,無人航空機(UAV)などの移動体への送電など,様々な分野での応用が期待されている。マイクロ波の利用周波数は1~30GHzであり、送電距離は数mから数km以上が可能であり、長距離電送に適している。マイクロ波伝送では受電アンテナにレクティファイアを用いて受電電力をDC変換する。人体への安全面や高効率伝送を考慮するとアレーアンテナ等の指向性を有した送電機が好適である。なお、受電機は、主に受電アンテナと整流器(レクティファイア)とで構成され、これらを合わせた造語としてレクテナと称される。
【0065】
(遠方界・近傍界)
アンテナ周囲の電磁界分布はアンテナのサイズと送受電間の距離によって異なる。アンテナから十分離れた領域は遠方界と呼ばれ、放射された電磁波は球面波であり、平面波近似が有効である。一方、遠方界では受電電力Prはフリスの公式より以下の式で表される。
【0066】
【数1】
(1)
ただし、λは波長、Gt及びGrはそれぞれ送電アンテナと受電アンテナの利得、At及びArはそれぞれ送電アンテナと受電アンテナの有効開口面積、Dは送受信間距離、Ptは送電電力である。
【0067】
本来、電磁波は球面波であるため、電磁波エネルギーが平面波近似できるほど拡散する遠方界では、送電効率は1%にもならない。
【0068】
一方、近傍界(フレネル界)では、アンテナとの距離が短くなるにつれてアンテナの放射パターンが徐々に変化するため、実用的なサイズのアンテナを用いて高効率の送電が行えるようになる。そこで、近傍界では、受電電力を受電アンテナ面で積分して計算する。近傍界におけるビーム収集効率は以下の式で表される。
【0069】
【0070】
【0071】
なお、式(2)は送電アンテナと受電アンテナとが正対する二つの開口面アンテナを仮定している。近傍界と遠方界の明確な領域の境界は決まっておらず、以下の式により距離が大きい場合は遠方界とみなせる。
【0072】
【数4】
(4)
ここで、Dは送電距離、Lはアンテナの最大サイズである。
本発明の無線電力伝送システムでは近傍界を想定している。
【0073】
(レクテナ)
マイクロ波を用いた無線電力伝送では、受電機としてレクテナと呼ばれる整流アンテナ(Rectifying Antenna)が用いられる。
【0074】
図3はリクテナの構成を示している。レクテナ20はアンテナ21と整流器22から構成される。整流器22は、整流ダイオード22bを備えた受動素子であり、アンテナ21で受電したマイクロ波電力を整流し、DC電力を生成し、負荷30に給電する。レクテナ20は、整流ダイオード22bに加えて整合回路22a及びフィルタ22cを備える。整合回路22aはアンテナ21とのインピーダンスを整合し、反射電力の発生を抑制える。フィルタ22cはローパスフィルタと出力フィルタを備える。ローパスフィルタは、整流ダイオード22bからの高周波の再放射を抑制し、出力フィルタはDC電流を安定させることにより電力変換効率(PCE)を高める。
【0075】
図4は周波数に対する電力変換効率(PCE)の関係を示している。電力変換効率(PCE)は高周波数まで低下する特性がある。
【0076】
(給電効率)
無線電力伝送において、給電効率は電力伝送効率と電力変換効率の積で表される。本発明は、給電効率を改善する形態として2つの形態を備える。
電力伝送効率と電力変換効率との間には、周波数についてトレードオフの関係がある。第1の形態は、この周波数により給電効率を改善する形態である。また、第2の形態は中継ノードにより給電効率を改善する形態である。
【0077】
(a)第1の形態:周波数選択による給電効率の改善形態
はじめに、周波数選択による第1の形態について説明する。第1の形態では、受電端末の位置によって給電効率を最適とする周波数が変わる特性に基づいて、受電端末の位置に応じて周波数を選択する。
【0078】
現在、マイクロ波の周波数帯域では法規制の観点からISMバンドである「2.4GHz」か「5.8GHz」等、あるいは「22-29GHz等」準ミリ波帯が用いられている、あるいは、用いられる予定である。電力伝送効率と電力変換効率に周波数トレードオフがあることや、電力伝送効率を最大にする周波数はビームチルト角の大きさに依存性を有することから給電効率を最大にする波数が存在する。
【0079】
第1の形態による周波数選択は、マイクロ波の周波数を可変とし、給電効率(=電力伝送効率×電力変換効率)を最大にする最適な周波数を選択し、さらに受電端末の位置に応じて給電周波数を適応的に変更する。
【0080】
(システムモデルと前提条件)
図5は周波数選択のシステムモデルを示している。ここでは、1つの送電機1と1つの受電機2が存在し、送電機1はアンテナ素子数n、素子間隔dの理想リニアアレーアンテナを有し、固定されている状況を示している。
【0081】
前提条件は以下のとおりである。
(1)素子間隔dは一定である。
(2)アンテナ素子は理想的な無指向性・広帯域を有する。
(3)送電機は受電機から受電機の位置情報を受け取り、内部で送電機から見たビームチルト角θ0と送電距離Dを計算し、その方向に電力を送電する。
(4)受電機は開口面積Arのアンテナを有する移動端末である。
(5)受電機は自身の位置情報を有し、一定間隔ごとに自身の位置を送電機に情報伝送する。
(6)送電機と受電機は正対し、直接波とマルチパス1波が存在する2波モデルの伝搬路環境である。
【0082】
(解析モデル)
以下、送電アレーアンテナのアンテナ利得と受電端末のレクテナの電力変換効率が周波数に依存することに基づいて、送電アンテナモデル及び電力伝送効率について解析する。
【0083】
・送電アンテナモデル
図6は送電アンテナモデルを示し、理想的な2次元リニアアレーアンテナの例を示している。2次元リニアアレーアンテナは、1~Nの直線状に配列されたアンテナ1~Nを備え、アンテナ間距離はdとする。ビームチルト角θ
0におけるアレー利得Gは以下の式で表される。
【0084】
【数5】
(5)
ここで,u=d/κ
0(sinθ-cosθ
0)であり、κ
0=2πλは波数、dはアンテナ素子間隔、Nはアンテナ素子数である。
【0085】
また、電力伝送効率(Power Transmission Efficiency:PTE) は以下の式により定義される
【0086】
【数6】
(6)
ここで,Prは受電マイクロ波電力であり、Ptは送電マイクロ波電力である。また、Prfree(t)は自由空間伝搬環境における受電電力である。
【0087】
電力伝送効率は伝搬モデルによって異なるが、一例として自由空間伝搬モデルにおける電力伝送効率(PTE)を以下の式7に示す。
【0088】
【数7】
(7)
ここで、Dは送受電端末間の距離、Arは受電アンテナの開口面積である。
【0089】
図7は自由空間伝搬における電力伝送効率の周波数特性を示している。アレーアンテナにおいて素子間隔dが固定のとき、周波数fが高いほどアレー利得Gが高くなる。このことから電力伝送効率(PTE)は周波数が高くなるにつれてが高くなる。なお、ある程度周波数が高くなると、グレーティングローブの発生によりアレー利得Gが低下し、電力伝送効率(PTE)が低下する。
【0090】
・電力伝送効率
端末内にレクテナを有し、移動可能な受電端末の電力変換効率を示す。ここで、受電端末は端末内にバッテリーを保有し、受電した電力はバッテリーに充電可能であるとする。レクテナの電力変換効率(Power Conversion Efficiency:PCE)は以下の式で表される。
【0091】
【数8】
(8)
ここで、PDCは出力DC電力,V
0は抵抗性負荷の出力自己バイアスDC電圧、Vbiはフォアードバイアス領域でのダイオードのビルトーイン電圧、Rsはダイオードの直列抵抗、RlはDC負荷抵抗である。
【0092】
θonとCjは以下の式で表される。
【0093】
【0094】
【数10】
(10)
ここで、Cは
j非線形ジャンクション容量であり、C
0はゼロバイアスジャンクション容量である。
図8はPCEの周波数特性を示している。一般的に、PCEは周波数が低いほど良い特性を示す。
【0095】
・送電機の周波数選択
以下、送電機の周波数選択の流れを
図9のフローチャートを用いて説明する。
(1)レクテナの電力伝送効率の情報PTE、電力変換効率の情報PCEを取得する。
(2)送電側において、レクテナの電力伝送効率の情報PTE、電力変換効率の情報PCEに基づいて電力伝送効率PTEを周波数ごとに計算し、同様に式(7)を用いて各ビームチルト角に対する電力伝送効率(PTE)の周波数特性を計算し、閾値θth、周波数flow、fhighを決定する。
(3)送電機が受電端末の位置情報を取得し、取得した位置情報と送電機自身の位置に基づいてビームチルト角θ
0(t)と送受電間距離D(t)を計算する。
(4)ビームチルト角θ
0(t)が閾値θthより大きいときflowを選択し電力伝送する。
(5)受電電力をフィードバックする。
(6)受電電力が自由空間伝搬環境における値Prfree(t)以下の場合、マルチパスの影響で逆相であると判断してfhighに周波数を変更する。
(7)ビームチルト角θ
0(t)が閾値θthより小さいときfhighを選択し同様に電力伝送する。
(8)(4)~(7)を繰り返して適応的に周波数を制御する。
・伝搬モデル
【0096】
図10に伝搬モデルを示す。ここでは直接波1波とマルチパス1波からなる2パスモデルの伝搬モデルを示している。直接波の到来時間を0とし、遅延波は振幅a倍、位相δだけ遅れて受電されるものとしている。このときの合成波は以下の式で表される。
【0097】
【0098】
2波の絶対値平均を式(12)により算出した後、式(13)を用いて受電電力を計算する。ここでZ0は電磁波の特性インピーダンスである。
【0099】
【0100】
【0101】
・シミュレーションによる性能評価
以下、評価関数f(θ0,ω)=PTE*PCEによりシミュレーションによる性能評価を示す。
送電アレーアンテナのパラメータ、レクテナのパラメータ、伝搬環境のパラメータを示す。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
図11は角度を15degずつ変更したときの給電効率の周波数特性を表している。ビームチルト角θ0を0degから60degまで変化させ給電効率を比較している。
図11の給電効率の周波数特性は、ビームチルト角が変わることにより給電効率を最大にする周波数が変化していることを示している。例えば、theta0=0[deg]のときは約2.8GHzの一番効率が高く、theta0を大きくしていくに従って効率を最大にする周波数が低い周波数にシフトし、theta0=30[deg]を境に高い周波数の効率が高くなっていることを示している。
【0106】
シミュレーション結果は、
(1)受電端末の位置に応じて周波数を可変させて電力伝送を行うことが有効であること。
(2)自由空間伝搬環境において、ビームチルト角θ0を変更したときの給電効率を最大化する最適な周波数が変わること。
(3)マルチパス環境において、単一周波数を用いる場合の無線電力伝送システムに比べて給電効率が向上すること。
を示している。
【0107】
・無線電力伝送システムの角度平均効率
次に、実際のハードウェアと実装することを想定し、
図11で選択した2.4GHzと3.8GHz、及び5.8GHzの3周波数の例において、本発明による周波数切り替えの性能を評価する。
【0108】
ここでは、
図11の結果を参考にして給電効率の高かった2.4GHzと3.8GHzを選択しているが、給電効率を最適化する周波数はアンテナの素子間隔に依存するため、必ずしも上記の周波数を最適とするものではない。
【0109】
3.8GHzの単一周波数を既存方式として性能比較する。伝搬モデルは2波モデルとして受電端末が0[deg]から60[deg]までランダムに動いた場合の平均給電効率を評価する。試行回数は100回とする。
【0110】
図12は本発明のアルゴリズムを用いた周波数選択による無線電力伝送システムと単一周波数を用いたシステムとの平均給電効率を比較している。本発明の周波数選択によれば既存の周波数固定と比較して給電効率が向上する。
図12では、逆位相のマルチパスが受電された時にその周波数を使わず同位相の周波数を用いている。
【0111】
(b)第2の形態:マルチホップリレーによる給電効率の改善形態
次に、マルチホップリレーによる第2の形態について説明する。電力伝送効率の向上は電力伝送距離が大きい場合には困難であるという問題がある。第2の形態は、中継器ノード(ドローン)を配置し、電力をマルチホップリレーにより電力伝送することにより、給電効率を改善する。
【0112】
マイクロ波伝送の無線電力伝送では距離の二乗に減衰するため給電効率に影響を与える。例えば、ドローンへの給電では、無線電力伝送可能なドローン間隔が課題の一つとなる。本発明はマルチホップリレーにより長距離の電力伝送を可能にする。送電機と受電機との間に中継器を設け、中継器を介して送受電することによりマルチホップリレーによる電力給電を行う。これにより、送電距離による送電の電力減衰が小さくなり、給電量が向上する。
また、ドローンなどの移動(モビリティ)が想定される給電対象の受電ノードに関してはホバリングによる位置の揺らぎ、また、携帯電話などのモバイル端末やIoT機器においても固定に限らず、移動が想定される移動方向、速度、加速度などに応じた物理層での適応指向性制御(アダプティブビームフォーミング)や、MAC層での適応アクセス制御プロトコル、及びネットワーク層での適応経路選択(ルーティング)を適用することができる。
以下、マルチホップリレーの第1の形態、及び第2の形態について説明する。
【0113】
(b1)マルチホップリレーの第1の形態
マルチホップリレーの第1の形態について説明する。
図13はマルチホップリレーによる給電モデルを示している。ここでは、固定された送電機1から複数の中継器3を介して受電機2に電力給電を行う給電モデルを示している。ここでは、中継器3として移動可能な受電端末RS1~RSn-1を示している。受電端末RS1~RSn-1として、例えばドローンを用いることができる。
【0114】
送電機1は理想的なリニアアレーアンテナと仮定し、中継器3を含む受電端末RS1~RSn-1は移動可能とし、送電機1、各受電端末RS1~RSn-1と受電機2との間の距離はD1~Dnとし、全端末の送電パワーは同じであり、送電機1及び受電機2のアンテナ開口面積はAt,Arとし、ノイズ、干渉などの影響を無視し,自由伝搬による距離減衰のみを考慮し、中継器による損失率をLOSSとする。
【0115】
本発明の無線電力伝送によれば、全中継器による損失と全中継器間の距離減衰の総減衰量は、送電機と受電機の間を直接送電することによる総距離Dの減衰量よりも低減される。
【0116】
・End to End 給電効率
受電端末間の距離をD1,D2,・・・とすると、近傍界を考慮したフリスの公式を用いると、自由空間伝搬モデルでの給電量は以下の式で表される。
【0117】
【数14】
(14)
ここで、P
0は送電機の送電電力、PCEはレクテナの電力変換効率、LOSSは中継ノードの損失、Atは送電機のアンテナの開口面積、Arは中継ノードのアンテナ開口面積、λはマイクロ波の波長である。
【0118】
式(14)において、(1-exp(-At・Ar/(λ2・D12)))は送電機と中継器との間の距離減衰により送られる給電率を表し、(1-exp(-Ar2/(λ2・Di2))は中継器間の距離減衰により送られる給電率を表している。中継器数が(M-1)個のときには距離減衰はm回あり、中継器の損失LOSSは(m-1)回である。PCEはレクテナの電力変換効率である。
【0119】
・マルチホップリレーのシミュレーション例
以下に、本発明の無線電力伝送のシミュレーション例を示す。なお、ここでは、受電端末のドローンが風による影響は受けず、周りに人や建物がなどの障害物がなく、遅延波などの影響はないものとし、ノイズ,干渉を考えず,自由空間伝搬モデルで距離伝搬による減衰のみを考慮している。
【0120】
送電機から受電機まで各ノードの中継器が一直線上に配置され、高さや各ノードの送電パワーもすべて等しいとし、直接波は各アンテナ面に対して垂直に入射するとする。また、送電機は線形アレーアンテナを使用する。以下の表4はシミュレーション諸元を示している。
【0121】
【0122】
図14はマルチホップリレーによる給電量を示し、ホップ数に対する電力効率[%]を示している。中継器による中継器数を0から9まで変えた時の給電量は式(14)を用いて算出される。
【0123】
図14において、ホップ数0は中継器を設けずに直接波により電力伝送を行う場合であり、ホップ数1~9は中継器を介して電力伝送を行う場合である。
図14は、中継器をリレーしながら電力を送るマルチホップリレーの給電量は、直接波による電力伝送よりも大きくなり、ホップ数5による給電量が最大となることを示している。
【0124】
以下に、ポップの最適数の簡易例について説明する。
ポップの最適数、及び中継器の最適個数は式(14)に基づいて求めることができる。
【0125】
給電量を表す式(14)において、(1-exp(-Ar2/(λ2・Di2)))は中継器間の距離減衰により送られる給電率を表している。この給電率の対数について中継器の個数iで微分演算し、ln(i)=(-ln(Ar2/(λ2・Di2)))を満たす個数iから中継器の最適個数を求めることができる。
【0126】
・中継器間の最適距離
中継器間の最適距離について説明する。中継器間の最適距離は式(14)に基づいて求めることができる。
【0127】
総送電距離Dとしたとき、中継器が1個のマルチホップリレーモデルでは、中継器の中継距離D1及びD2にはD=D1+D2の関係がある。このときの式(14)の給電量の対数について中継距離D1で微分演算し、微分値が零となる中継距離D1から、中継器の最適距離としてD1=(D/2)1/2が得られる。
【0128】
中継器が2個を越えるマルチホップリレーモデルでは、中継距離D1を除く残りの中継距離を、中継器が1個のマルチホップリレーモデルの中継距離D1に対応付けることで求めることができる。例えば、中継器が2個の場合には、中継距離D1を除く残りの中継距離(D2+D3)を中継器が1個のマルチホップリレーモデルの中継距離D1に対応付けることにより、
D2=((D-(D/2)1/2)1/2)/21/2
D3=D-D1-D2
を用いて中継器間の最適距離を求める。
【0129】
(b2)マルチホップリレーの第2の形態
次に、マルチホップリレーの第2の形態について説明する。
【0130】
・システムモデル及び前提条件
システムモデルを
図15に示す。送電機Txと受電端末Rxとの間にリレーノード(中継ノード)RSを導入する。リレーノードRSは受電端末であり、中継器により構成することができる。
【0131】
リレーノードRSは以下の条件を備える。
(1)十分に開口面積Arの大きい受電アンテナを有する。
(2)十分に多いN本の送電アンテナ素子を有する。
(3)受電されたRF電力はリレーノード(中継ノード)内で分配され、その分配過程で位相制御可能である。
【0132】
・リレーノードの種類
リレーノードは、"Distribution and Forward方式" と"Rectification and Forward方式"の二種類を備える。
【0133】
(Distribution and Forward方式)
Distribution and Forward方式のブロック図を
図16に示す。Distribution and Forward方式とは、受電アンテナに受電されたマイクロ波電力を直流に変換せず、マイクロ波電力を直接分配器で分配し、位相を制御してアンテナから送電する完全なパッシブ回路の方式である。
【0134】
このDistribution and Forward方式のメリットは、電力を直流に変換しないため、リレーノード(中継ノード)における電力損失が少ない点にある。一方、リレーノード(中継ノード)は電力を受け取らないため、中継ノードがドローン等の移動体である場合には、飛行時間等の移動時間に課題がある。
【0135】
(Rectification and Forward方式)
Rectification and Forward方式のブロック図を
図17に示す. Rectification and Forward方式とは、リレーノード(中継ノード)に電力を整流してバッテリーに電力を貯め、再度マイクロ波を生成して電力を伝送する方式である. Rectification and Forward方式のメリットとは、リレーノード(中継ノード)に電力を伝送するため、中継ノードがドローン等の移動体である場合には、飛行時間等の移動時間が延びる可能性がある。一方、リレーノード(中継ノード)は整流して直流に変換した後、再度マイクロ波を生成するため、リレーノード(中継ノード)による損失が大きい点がある。
【0136】
(伝送効率の比較)
以下、ビームチルト角度ずれのない理想的な環境において、Difference of efficiency(n ホップ電力伝送時の効率―直接伝送時の効率)について説明する。Difference of efficiencyはn ホップ電力伝送時の効率と直接伝送時の効率との効率比較であり、Difference of efficiencyの値が正ならばマルチホップ伝送時のEnd to end 効率は直接伝送時の効率より高い。このことは、マルチホップ伝送が有効であるという意味する。なお、直接伝送を0ホップとする。
【0137】
図18は直接送電時の効率が2.9%であるときの、ホップ数とDifference of efficiencyの関係の一例を示している。
図18によれば、シミュレーションにおいて、
(1)あるホップ数n1まではホップするたびにマルチホップリレー特性が改悪する。
図18ではn1が2である場合を示している。
(2)ホップ数n1以降からマルチホップリレー特性が改善し、あるホップ数n2からマルチホップ伝送の有効性が確認される。
図18ではn2が3である場合を示している。
(3)ホップ数n2以降、nホップ伝送に比べて(n+1)伝送の効率が高くなる。
(4)ホップ数nを大きくし過ぎると、あるホップ数n3から効率が劣化する。
上記のホップ数n1からn3を求めることにより、伝送効率を良好とする最適なホップ数が求まる。
【0138】
(仮定及び変数)
以下の条件を仮定する。
(1) 一直線上に送電機・中継ノード・受電ノードが並んでいるものとする。
(2) 遠方界・自由空間伝搬モデルを仮定する。
(3) 各ノードの大きさを無視する
(4) 考慮する損失は以下とする。
伝搬路における損失
中継ノードにおいて、電力を分配して再放射する時の損失
受電ノードにおいて、マイクロ波電力を直流に変換する時の損失
【0139】
また、G(θ0,f)をアレーアンテナの利得、ArをRSとRxの受電アンテナの開口面積、DallをTxとRxの総合送電距離、PCE(f)を電力変換効率、LOSSDviを中継ノードでの損失、nをホップ数とする。以降、n∈Nである。
【0140】
以下、ホップ数n1、ホップ数n2、及びホップ数n3について説明する。
(ホップ数n1)
はじめに、ホップ数n1を求める。ホップ数n1は、(n+1)ホップがnホップよりも効率が高くなるようなホップ数であり、マルチホップリレーによる無線電力伝送が直接波による電力伝送よりも有効性を有することを示すものである。
n>√(1/β)のとき、(n+1)ホップがnホップよりも効率が高くなることを示す。このことは、次の式を満たすnを求めることと等価である。
【0141】
【0142】
式(15)から次の式(16)を満たす最小のnを求める。
【0143】
【0144】
βをβ=(G(θ0,f)・Ar)/(4π・(Dall)2))LOSSdvi とおくと、式(16)の左辺は以下の式で表される。
【0145】
【数17】
(17)
上記から、n>√(1/β)のとき、(n+1)ホップがnホップよりも効率が高くなる。
【0146】
(ホップ数n2)
次に、ホップ数n2を求める。ホップ数n2は、直接伝送時の効率よりもマルチホップ伝送時におけるEnd to endの給電効率が高くなるホップ数である。
直接伝送時の効率よりもマルチホップ電力伝送時におけるEnd to endの給電効率が高くなるホップ数n2は次の式を満たすnである。
【0147】
【0148】
式(18)は、βをβ=((θ0,f)・Ar)/(4π・(Dall)2))・LOSSdvi とおくと、(β*n2)n-β>0を解くことに相当し、ホップ数n2は以下の式を満たす数となる。
【0149】
【0150】
式(19)を満足するホップ数n2以上において、直接伝送時の効率よりもマルチホップ伝送時におけるEnd to endの給電効率のほうが高い効率となる。
【0151】
(ホップ数n3)
次に、ホップ数n3を求める。ホップ数n3は、End to endの給電効率を最大にするホップ数である。ホップ数n1を求める過程において、n>√(1/β)のとき、(n+1)ホップがnホップよりも効率が高くなることから、n<((4π・(Dall)2)/G(θ0,f)・Ar))1/2のとき(n + 1)ホップ伝送がnホップ伝送に比べてEnd to end 給電効率がよい。一方、n>((4π・(Dall)2)/G(θ0,f)・Ar))1/2のとき、End to end給電効率はRSの損失の影響が小さくなる。したがって、End to end給電効率を最大にするn3は以下の式で表される。
【0152】
【0153】
さらに、そのときの最大値は以下の式で表される。
【0154】
【0155】
次に、式(20)のどちらを選ぶかの閾値を求めるために、以下の式(22)で表される伝送経路中の損失と、式(23)で表される中継器ノードの損失とを比較する。
【0156】
【0157】
【0158】
二つの損失の比較は、以下の式の大小を比較することに相当する。
【0159】
【0160】
ここで、a=(G(θ0,f)・Ar)/(4π・Dall)であり、κ=LOSSdviとおくとnは以下の式で表される。
【0161】
【0162】
このnにより、最適なホップ数n3は以下の式で表される。
【0163】
【0164】
(ビームチルト角誤差を考慮したマルチホップリレーの性能評価)
次に、前記したマルチホップリレーの第1の形態及び第2の形態について、ビームチルト角誤差を考慮した性能評価について説明する。
【0165】
(測位誤差の影響)
図19は、ドローン等の移動可能な中継器ノード(受電端末)の測位誤差の概要を示している。中継器ノード(受電端末)の測位誤差は、屋外ではGNSSシステムを用いて測位される。一方、ビル等の人工物内部など、GNSSシステムの電波が届かないため領域やより高精度測位測距が必要な屋内外では、超広帯域(Ultra Wide Band:UWB)システムによる測位が行われる。このような環境の違いにより、
図20に示すように測位誤差の存在が想定され、また、UWBシステムの逐次測位によって測位誤差は累積的に蓄積されていく。
なお、現在の国内外の電波法では、UWB無線は、帯域幅450MHz(500MHz)以上か、比帯域幅(帯域幅/中心周波数)が20%以上の無線電波であり。マイクロ波帯ではLow Bandの3.4=4.8GHzと、High Bandの7.25-10.25GHzが日本の電波法で規定され、準ミリ波帯では、日本では自動車の衝突防止レーダ用に22-29GHzが規定され、海外では79GHzが規定されている。特に、無線電力伝送では、ISM帯以外に準ミリ波帯22-29GHzも対象になっており、準ミリ波帯UWBも電波法上において実用化される。
【0166】
(シミュレーション例)
・シミュレーション環境
マルチホップリレーの第2の形態において、受電ノードのパラメータを表5、リレーノードのパラメータを表6、伝搬モデルのパラメータを表7に示す。
【0167】
【0168】
【0169】
【表7】
なお、ビームチルト角誤差はドローンのピッチ角とビームチルト角の差と定義され、その誤差分布はガウス分布もしくは一様分布に従うものとしている。
【0170】
・想定環境
図20に想定する環境を示し、ここでは、受電ノードに近いノードほどUWBシステムの累積誤差の影響でビームチルト角誤差が大きくなるものとする。
【0171】
(シミュレーション結果)
以下、角度誤差が一様分布に従う場合と、ホップごとに送電周波数を変えた場合のシミュレーション結果を示す。
【0172】
・角度誤差が一様分布に従う場合
誤差の分布が一様分布に従う場合について、
図21は最大角度ずれに対するEnd to end給電効率の評価を示し、
図22は周波数に対するEnd to end 給電効率の評価を示している。
End to end給電効率は、角度ずれに対して負の傾きの特性を有し、低周波数域では周波数に対してほぼ正の傾きの特性を有し、角度ずれが大きいほど低い周波数が好適となることを示している。
【0173】
・ホップごとの送電周波数の変更
図23は、周波数とEnd to end給電効率との関係を示し、ホップごとに周波数を変更した場合のEnd to end給電効率をPropで示し、1,5GHz、2.0GHz、2.5GHz、及び3.00GHzの単一周波数場合のEnd to end給電効率と比較して示している。この結果は、ホップごとに周波数を変えるマイクロ波周波数選択型のマルチホップリレーによる無線電力伝送システムの有効性を示している。
【0174】
(増幅機能を有した中継器)
マルチホップリレーにより給電量の向上が図られるが、長距離の電力送電では給電量は小さくなる。
【0175】
本発明の中継器に増幅機能(ET(Energy Transmitter)機能を持たせる構成とすることにより、中継器で電力を増幅させて長距離送電における給電量の減少を緩和する。
【0176】
送電機の送電電力をP、受電機の要求電力量をYとし、n個の中継器数を用いてマルチホップリレーにより給電を行うとき、各中継器で電力xを増幅させるとする。
【0177】
このとき、一ホップ目で増幅された後の電力量P1と、送電元から送られる送電電力Pとの関係は以下の式で表される。
【0178】
【0179】
(n―2)ホップ目の電力量Pn-2と(n-1)ホップ目の電力量Pn-1の関係は以下の式で表される。
【0180】
【0181】
また、(n―1)ホップ目の電力量Pn-1とnホップ目の電力量Pnの関係は以下の式で表される。
【0182】
【0183】
ここで、Aは、
【0184】
【0185】
これらの式から、nホップ目の受電電力P(n)は以下の式で表される。
【0186】
【0187】
要求電力量Yと電力変換効率PCEと受電電力P(n)との間には、以下の式で表される関係がある。
【0188】
【数32】
(32)
各中継器で増幅する中継増幅量xは以下の式により導出される。
【0189】
【0190】
(増幅機能を有した中継器のシミュレーション例)
図24は要求電力量を送るための各中継器での総増幅量を示し、送電機から電力Pで送電を行い、最後の受電機の要求電力量をO.5PからPまでO.1の幅で変化させた場合のシミュレーション例を示している。なお、シミュレーションの諸元は表1と同様であり、自由空間伝搬モデルである。
【0191】
図24のシミュレーション例によれば、各中継器の総増幅量は中継器の個数を5とする5ホップの場合が最小となる。この結果は、総距離が10mでLOSS=0.8のときには、5ホップの総増幅量が最小となる結果と一致するものである。
【0192】
中継増幅の有効性を
図25及び表8を用いて比較する。
図25は中継器で電力増幅する場合と、送電機側で電力増幅する場合に各給電量を比較するための図であり、
図25(a)は中継器で電力増幅する場合を示し、
図25(b)は送電機側で電力増幅する場合を示し、総電力量は共に1.5Pとしている。
【0193】
図25(a)の中継器で電力増幅する構成では、要求電力量0.5Pに対して、送電機から送電電力量Pを送出し、各受電端末RSの中継器において増幅電力量O.1Pを増加する。一方、
図25(b)の送電機側で電力増幅する構成では、送電機でO.5Pを電力増幅して(P+0.5P)を送電する。
【0194】
図26、及び表8は、中継器で電力増幅したときと送電機で電力増幅したときとを、最後の受電ノードでの給電量で比較している。
【0195】
例えば、受電端末RSを2個の場合の最後の受電ノードの給電量は、送電機で電力増幅した場合は0.24Pであるのに対して、中継器で電力増幅した場合には0.5Pとなる。中継器で電力増幅することによる給電量の増加幅は、送電機での電力増幅と比較して0.14P~0.26Pであることを示している。
【0196】
【0197】
(反射波を考慮した周波数選択による給電効率の改善)
マイクロ波が伝搬する環境において、反射波を考慮しない自由空間伝搬モデルに対して、より現実的な環境の伝搬モデルでは反射波による影響を考慮することが求められる。
【0198】
図27は、反射波を考慮した、直接波と反射波の2波モデルを示している。送電機と受電端末RSの間、隣接する受電端末RS間、及び受電端末RSと受電機の間では、直接波に加えて大地で反射した反射波が受電される。この2波モデルの場合では、受電端末間等の距離によって2波の位相関係により給電電力に強弱が発生し、給電量が非常に小さくなる場合が生じる。
【0199】
2波モデルにおける位相ずれΔθを考慮した給電量P(Δθ)は以下の式で表される。
【0200】
【0201】
式(34)で2波の重ね合わせにおいて位相が一致する面積で正規化した結果を
図28に示す。ここでΔθは位相ずれである。
図28において、反射波を直接波の1/5(=-7[dB])とした場合には、位相ずれΔθが96°から180°のときに、直接波が伝送された場合よりも位相ずれによる給電量の低下が大きくなることを示している。
【0202】
本発明は、受電端末(中継器)間の距離に応じて送電するマイクロ波の周波数を最適周波数に選択する構成により位相ずれを解消し、2波の電力が強め合うように位相を合わせで給電量を大きくする。
【0203】
(最適周波数の導出フロー)
最適周波数を導出する手順を
図29のフローチャートを用いて説明する。はじめに、中継ノード間距離情報を送電機側に送り(S1)、送電機は中継ノード間距離情報を取得する(S2)。送電機は、取得した中継ノード間距離に基づいて、直接波と大地反射波の2波の経路差を算出し(S3)、経路差とマイクロ波の波長に基づいて直接波と大地反射波の2波の位相ずれΔθを算出する(S4)。
【0204】
図28に示す位相ずれΔθと電力との関係において、電力が設定電力量を下回る位相ずれΔθの範囲を求め、算出した直接波と大地反射波の位相ずれΔθが求めた範囲にあるとき、直接波と反射波の給電量は直接波のみの場合よりも小さいと判断し、マイクロ波の周波数を変更する。前記の位相ずれ96°から180°の範囲は、反射波が直接波の1/5(=-7[dB])を越えた場合には相当しており、位相ずれの範囲は設定値に応じた値に設定される。
【0205】
最適周波数の導出は、中継ノード間距離と直接波の周波数から求めた直接波の位相と、中継ノードと大地との間の距離と大地反射波の周波数から求めた大地反射波の位相との位相ずれが設定範囲となるような周波数により求められる。なお、直接波の周波数と大地反射波の周波数との間に周波数ずれがない場合には、送電機から送出するマイクロ波の周波数を共通して用いることができる(S5)。算出した最適周波数のマイクロ波で給電を行う(S6)。
【0206】
(周波数選択によるシミュレーション例)
図30は周波数を変更した場合の給電量を示している。ここでは、2波モデルにおいて直接波と反射波が位相ずれの影響により弱めあい、位相ずれが96°を越えたときに、マイクロ波の周波数を1,5GHzから3.0GHzに変更していき、この周波数変更の中で最も給電量が良好となる周波数を選択した場合の給電量を、周波数を変更する前の給電量と比較している。
図30によれば、周波数変更することにより給電量の改善が確認される。
【0207】
図31は周波数を変更した場合の総距離に対する最適なホップ数を示し、周波数を変更する前後で比較している。
図31によれば、周波数を変更した場合には、最適ホップ数が少なくなることが確認される。
【0208】
図30,及び
図31から、周波数選択により、最適ホップ数の減少、及び最適ホップ数のときの給電量の向上の有効性が確認される。
【0209】
図32はノード間距離(受電端末距離)に対する最適周波数シミュレーション例を示している。なお、ここではノードの大地からの高さを3mとしている。
【0210】
(無線電力伝送と無線情報伝送)
本発明のマルチホップリレーにより無線電力伝送(WPT)と無線情報伝送(WICT)とを同時に行う際、無線電力伝送における給電効率と、無線情報伝送における経路信号雑音比の和を評価指標として、最適な給電経路を選択することができる。
【0211】
一対の送受電機と複数の中継器をノードとする経路において、
(1)無線電力伝送においては、経路の重みを隣接する中継器間の電力伝送効率に対応させた重み付きグラフにおいて、ダイクストラ法により送電機と受電機との間の電力伝送経路の重みの和を給電効率とし、
(2)無線情報伝送においては、一対の送受電機と複数の中継器をノードとする経路において、経路の重みを隣接する中継器間の信号雑音比(S/N比)に対応させた重み付きグラフにおいて、ダイクストラ法により送電機と受電機との間の情報伝送経路の重みの和を経路信号雑音比とし、
(3)給電効率と経路信号雑音比とに重み付けして加算した和が最大となる経路を最適化したネットワークの給電経路とする。
【0212】
(物理層の関連技術)
複数のドローンやモバイル端末等の移動可能な受電端末間においてリレーにより長距離の無線電力伝送を可能とするマルチホップリレーWPT方式の他、物理層に適用される関連技術として以下の技術がある。
【0213】
(1)物理層における変調方式及び伝送路符号技術として、On/Off Keying(OOK),CODE Shift Keying(CSK)がある。
(2)物理層における誤り訂正技術として、制約条件付きRunLength制限・重み分布制限誤り訂正符号(LDPC/ポーラ符号等)がある。
(3)複数のアンテナからの送電と受電による空間ダイバーシティ・MIMO-WPT方式。
(4)複数の送電端末から単一の受電端末へのMISO-WPT方式、あるいは単数の送電端末から複数の受電端末へのSIMO-WPT方式。
(5)電力伝送路の特性や干渉等の擾乱に耐性があるスペクトル拡散伝送方式および、超広帯域(UWB)伝送方式。
(6)符号の直交性を用いた複数送受電モードによる符号分割多元接続CDMA-WPT方式。
(7)周波数・時間・空間・符号分割多元接続統合FDMA/TDMA/SDMA/CDMA-WPT送受電方式。
(8)送受電端末や伝送路環境に応じた適応指向性・送電力・DutyCycle制御方式。
【0214】
[ネットワーク層]
次に、第2層のネットワーク層に関連する構成について説明する。
(最適給電ルートの選択)
図33はマルチホップリレーによる無線電力伝送システムにおいて、送電機1、中継器3、及び受電機2の概略構成を示している。この構成において、伝搬モデルを自由空間伝搬とし、受電機及び中継器の損失は定数とし、送受電アンテナは十分に大きな素子数を保有していると仮定し、お互いに正対していることを前提とした場合の端から端までのend-to-end給電効率effは式(35)により定式化される。
【0215】
【0216】
なお、式(35)において、nはホップ数、Pt、Prは送受電電力、At、Arは送受電アンテナの実効面積、Diはiホップ間の距離、λは電磁波の波長、LOSSは中継による損失、PCE(Power Conversion Efficiency)はレクテナの電力変換効率である。
【0217】
図34に示すような、送電機と受電機のend-to-endの間に中継器(受電端末)の候補が複数存在する環境を想定し、この複数の中継器をつなぐ電力給電を行う複数の給電ルートから最適給電ルートを選択する。
【0218】
最適給電ルートの選択には、どのノードの中継器を利用するか、あるいは中継器を用いずに1ホップで直接に給電するかを選択肢がある。受信電力密度は伝送距離の二乗に比例して小さくなってしまうことから、利用する中継器によってはend-to-end給電効率が大きく低下する。
【0219】
本発明は、ダイクストラ法を用いてend-to-end給電効率が最もよくなる最適な給電ルートを選択する。
【0220】
ダイクストラ法は、重み付きグラフにおいて、ある2つのノード間の経路の重みの和が最小となる経路を求める方法である。本発明のダイクストラ法を用いた最適給電ルートの選択では、経路の重みを1ホップ当たりの電力伝送効率に対応させることにより、end-to-end給電効率が最大の給電ルートを求める。このとき、送電機は自身の位置情報、中継効率としての損失LOSS、レクテナの電力変換効率PCE、全てのノードの中継器のアンテナの開口面積、給電に使用する波長λは既知であるとする。また、中継器と受電機は自身と送電機の位置情報が既知であるとする。
【0221】
図35は重み付きグラフを説明するための図である。
図35において、丸印はノードを示し、Sの符号が付された始点ノードを示している。各ノードを結ぶ経路に付された数字は重みを示している。ダイクストラ法は、始点とノード間の経路の重みの和が最小となる経路を求める。
【0222】
(重み)
ダイクストラ法を用いた最適給電ルートの選択において、end-to-end給電効率effを最大にするような重み付けを行う。ダイクストラ法では重みの和が最小となるようなルートを選択するため、給電効率effの最大化は、給電効率effの逆数の(1/eff)を最小にする問題に帰着する。(1/eff)は以下の式で表される。
【0223】
【0224】
また、1ホップの(1/eff)を最小にするということは、log(1/eff)を最小にすることと等価である。log(1/eff)は以下の式で表される。
【0225】
【0226】
式(37)の i番目の項は(iホップでの電力)/(i-1ホップでの電力)の逆数に対数をとったものであり、iホップ間の効率の逆数の対数に相当する。
式(37)の各項を、送受電間をつなぐリンクからなる給電ルートの重みとする。最適給電ルートの選択は、送電機が重み付けを行い、この重みを用いてダイクストラ法を用いることによりend-to-end 給電効率が最もよい給電ルートを求める。
【0227】
この最適給電ルートの選択において、送電機が重み付けを行うためには、送電機は中継機及び受電機の位置情報が既知であることが求められる。中継機または受電機は、送電機に位置情報を送信することにより、送電機は中継機及び受電機の位置情報を取得する。
【0228】
(位置情報の送信方法)
次に、受電機及び中継機の位置情報の送電機への送信方法について説明する。 長距離の給電を想定すると、送電機と中継器(ノード)の距離が通信可能範囲を超える可能性がある。そのため、距離情報の通信においてもマルチホップリレーにより送信する必要性がある。この際、各中継器(ノード)が既存の通信用ルーティング手法 (AODV等) を用いて位置情報を送信する、消費電力が大きくなる場合がある。
【0229】
そこで、給電用のマルチホップリレーにおいて、本発明は以下に説明する送信方法により、消費電力が小さい位置情報の送信を行う。
【0230】
図36は給電用のマルチホップリレーにおける位置情報の通信を説明するための図である。位置情報は、受電機から各中継器を介して送電機に向かって位置情報を含むパケットをフラディングすることで送信する。受電機はEREQ(Energy Request)パケットをブロードキャストし、中継器は受信したEREQ(Energy Request)パケットを再ブロードキャストし、送電機は受信したEREQ(Energy Request)パケットに含まれる位置情報を取得して重み付けグラフを作成する。
【0231】
なお、ブロードキャストはブロードキャストMACアドレスへの伝送に基づいて意図的に全ポートから伝送を行うのに対して、フラディングはMACアドレステーブルに伝送先のMACアドレスが無い場合に全ポートから伝送を行う。
【0232】
以下、
図37,38,40のフローチャート、及び
図39を用いて位置情報の送信方法を説明する。
【0233】
・受電機のフロー
図37はEREQ(Energy Request)パケットをブロードキャストする受電機のフローを示している。EREQパケットは、受電機が給電を要求していることを送電機に知らせるためのパケットである。受電機と送電機間の距離が長距離の場合には直接通信できない可能性があるため、EREQパケットをフラッディングすることにより、送電機に給電要求を知らせる。この際、受電機の位置情報を EREQパケットに追加すること(S11)により、給電要求と同時に受電機の位置情報を送信する(S12)。
【0234】
・中継器(ノード)のフロー
図38は中継器(ノード)によるEREQパケットを再ブロードキャストのフローを示している。
【0235】
中継器(ノード)はEREQパケットを受信すると(S21)、EREQパケットを再ブロードキャストする。この際、以下の条件を同時に満たす場合(S22)に、中継機は自身の位置情報をEREQパケットに追加して(S23)からブロードキャストを行う(S24)。
条件1:受電機、送電機間の距離 > 中継器、受電機間の距離
条件2:受電機、送電機間の距離 > 中継器、送電機間の距離
【0236】
図39は、中継器の位置情報の送信条件を説明するための図である。
上記の条件1及び条件2を共に満たす中継機を中継に利用した場合には、
(受電機、中継機間の距離+中継機、受電機間距離)<(受電機、送電機間の距離)
の関係となるため、マルチホップリレーによる電力給電は、直接給電よりもend-to-end給電効率が高くなる。
図39中の星印のノードは条件1及び条件2を共に満たす中継機を示している。
【0237】
一方、条件1及び条件2を満たさない中継機を中継に利用した場合には、
(受電機、中継機間の距離+中継機、受電機間距離)>(受電機、送電機間の距離)
の関係となるため、マルチホップリレーによる電力給電は、直接給電よりもend-to-end給電効率が低い。
図39中の三角印のノードは条件1及び条件2を満たさない中継機を示している。
【0238】
したがって、条件1および条件2を満たさない中継器(ノード)は中継に利用することはないため、その中継器の位置情報を送信する必要がない。これにより、位置情報を送信するノードを限定することができ、不要な位置情報の送信を行わないことにより消費電力の削減を図ることができる。
【0239】
・送電機のフロー
図40は中継器(ノード)によるEREQパケットを再ブロードキャストのフローを示している。
送電機は、EREQパケットを受信した後(S31)、EREQパケットに含まれている受電機又は中継機の位置情報を取得して新規位置情報をリストに追加し(S32)、EREQパケットを受信してか一定時間経過した後に(S33)、重みを計算で求めて重み付きグラフを作成し(S34)、ダイクストラ法を用いて給電ルートを探索し(S35)、決定した給電ルートを用いて電力給電を行う。電力供給は、連続給電に代えて、パケット状に分割した電力パケットで行う(S36)。
【0240】
通信方法は、EREQパケット(給電要求パケット)と同時に位置情報の送信を行うことに加えて、位置情報を送信するノードを限定することにより、消費電力の削減が図られる。
【0241】
(シミュレーション例)
次に、マルチホップリレーによる無線電力給電の給電ルートの選択についてのシミュレーションを示す。この際、理想的な給電効率と、本発明を用いた給電効率と、1ホップ給電した場合のend-to-end給電効率を比較して示している。なお、理想的な給電効率とは、与えられた送電機、中継機、及び受電機の配置において、最も給電効率の高いルートの給電効率である。また、消費電力についても示す。
【0242】
なお、シミュレーションの前提条件は以下のとおりとしている。
・シミュレートする伝搬空間は二次元空間を仮定する。
・送電を行うノードを中心とする円内にノードを配置する。
・ノードは一様乱数を用いて配置する。
・送電機及び受電機以外のノードは、全て中継器(ノード)の候補とする。
・パケットの衝突や干渉などによる送電エラーは考慮しない。
・中継器(ノード)の移動は考慮しない。
・50回の平均値を評価する。
なお、シミュレーション諸元は以下のとおりである。
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
図41~
図44は、end-to-end給電効率のノード数と平均給電効率のシミュレート結果を示し、それぞれ総送電距離が10m,20m,30m,及び40mの場合を示している。
【0247】
送電範囲が10m~30mの場合には、理想的な給電効率と本発明によるマルチホップリレーによる給電ルートの給電効率が一致している。このことは、本発明による給電ルートは、end-to-end給電効率が最大となるような給電ルートを選択していることを示している。また、ノード数の増加に伴って1ホップの場合に比べて給電効率が増加している。このことにより、本発明のマルチホップリレーよる長距離給電の高効率化が確認される。
【0248】
図45は、ノード数に対する通信による消費電力を示している。
図45において、ノード数の増加に伴い、パケットの送受信が多くなるため消費電力が増加することを示している。また、送電範囲の拡大に伴って、位置情報が多いパケットの送受信が増え、消費電力が増加する。
【0249】
(ネットワーク層の関連技術)
ネットワーク層に適用される関連技術として以下の技術がある。
【0250】
(1)送電距離をパケット化し、複数のノードからの送電パケット(電力パケット)の集突(Contention)をキャリアセンスにより検知して回避すると共に衝突回避して再送させるContention BaseのCSMAS-CA型WPTプロトコル。
(2)複数のノードから時分割で送信パケット(情報パケット)の時間スロットを割り当てるPreserve 型、Contention FreeのTDMA型WPTプロトコル。
(3)医療用無線BANの標準であるContention FreeとContention BaseのハイブリッドWPTプロトコル。
(4)複数のノードからの送電パケット(電力パケット)の衝突を位相合成して受電力を最大化するWPTプロトコル。
【0251】
[MAC層]
次に、第2層のMAC層に関連する構成について説明する。
(MAC層によるアクセス制御)
本発明の無線電力伝送システムにおいて、複数ノード間の送受電を制御するための第2層のMAC層は複数のプロトコルを備え、複数の送電ノード(給電ノード)から1つの受電ノードへの送受電、1つの受電ノードから複数の送電ノード(給電ノード)への総受電の複数ノード間の送受電におけるアクセス制御を行う。
【0252】
このMAC層のアクセス制御は、ネットワーク層と協働して、電力と情報との同時多重伝送を制御する。MAC層のアクセス制御では、通信制御に係る情報パケットによりタイムスロットを確保した後に電力パケットを送るという、電力パケットと情報パケットの時系列制御を行うことにより、電力と情報の同時多重伝送を可能とする。
【0253】
以下に、MAC層のプロトコルの一例を示す。(1)~(3)のプロトコルは、電力パケットの衝突を回避するプロトコルの例である。なお、以下では電力パケットを送電パケットの用語を用い、情報パルスを送信パケットの用語を用いている。
(1)MAC層は、送電間隔をパケット化し、複数ノードからの送電パケットの衝突をキャリアセンスにより検出し回避し、再送するプロトコルを備える。
(2)MAC層は、複数ノードから時分割で送信パケットの時間スロットを割り当てるプロトコルを備える。
(3)MAC層は、送電間隔をパケット化し、複数ノードからの送電パケットの衝突をキャリアセンスにより検出し回避し、再送するプロトコルと、複数ノードから時分割で送信パケットの時間スロットを割り当てるプロトコルの両プロトコルを備える。
(4)MAC層は、複数ノードからの送電パケットを位相合成し、受電力を最大化するプロトコルを備える。
(5)MAC層は、複数の送電ノード(給電ノード)から直交や疑似直交符号を使って1つの受電ノードで同時に受けるCDMA方式のプロトコルを備える。
【0254】
以下、多対一(multipoint-to-one)電力伝送の場合と一対一(one-to-one)電力伝送の場合について示す。
(多対一(multipoint-to-one)電力伝送)
図46は複数の送電機から給電を受ける概略構成を示している。複数の送電機から給電を行う際、給電を受ける中継器や受電機の受電端では、複数のマイクロ波の打ち消しによる受電力の低下を回避する必要があり、複数の送電機から給電されるマイクロ波の位相調整が必要となる。本発明では、複数の送電機のマイクロ波の位相をそろえるために時刻同期を行う。
【0255】
本発明はMAC層の制御により、2つの送電機の時刻誤差が最大許容時刻誤差内に収まり、2波の位相差が最大許容位相誤差内に収まるような送電機のマイクロ波の周波数を制御し、時刻同期を行う。
【0256】
位相誤差Phase errorは、fをマイクロ波の周波数、Δtを位相差としたとき、Phase error=2πfΔtで表される。
【0257】
時刻同期の誤差は一般に数十ns~数百nsであり、2波の位相差が120(deg)以上になると負の影響が生じる。一例として、最大の時刻誤差を300nsとし、最大許容位相誤差を100(deg)としたとき、
(5π/9)>2πf・300ns
の演算から周波数fとしておよそ1MHzのマイクロ波を用いることにより時刻同期の誤差は回避される。
【0258】
図47は複数の送電機から給電を受ける場合の複数のアンテナからの送電状態を示し、
図48はノード(受電端末)Rx、アンテナTx1,Tx2の位置関係を示している。ここで、ノード(受電端末)Rxは給電電力を受ける受電端末であり、Tx1,Tx2は送電を行うアンテナである。位相情報は以下の手順で取得される。
【0259】
(1)ノード(受電端末)Rxは、パイロット信号(REF)をブロードキャストする。
(2)各アンテナTx1,Tx2は、パイロット信号(REF)の到来方向(DOA)を求め、(DOA)の情報をブロードキャストする。
(3)各アンテナTx1,Tx2は、他のアンテナからブロードキャストされた(DOA)の情報を用いて各アンテナ間の距離(distance)を演算する。
(4)アンテナ間の距離(distance)に基づいて、ノード(受電端末)Rxに最も近いアンテナの位相シフト量ΔΦを求め、位相シフト量ΔΦを他のアンテナにData(Ps)をブロードキャストする。
【0260】
位相シフト量ΔΦは以下の式で表される。
【0261】
【数38】
(38)
ノード(受電端末)RxとアンテナTx1,Tx2間の距離は以下の式で表される。
【0262】
【0263】
(一対一(one-to-one)電力伝送)
ここでは、ドローンとアンテナのメインローブ間に角度誤差があるときの最適ビーム幅について説明する。
図49は、アンテナから見たドローンの方向と、アンテナのメインローブ方向との間に誤差がある状態を示している。角度誤差として方位角Δθ及び仰角Δφがある。このようにドローンとアンテナのメインローブ間に方位角Δθ及び仰角Δφの角度誤差は、ドローンへの給電効率に影響を与える。
【0264】
本発明は、方位角Δθ及び仰角Δφの角度誤差に基づいてアンテナの受電電力は以下の式で表される。
【0265】
【数40】
(40)
ここで、Gtはアンテナのゲイン、Arはアンテナの有効開口面積である。
【0266】
一方、アンテナのゲインGtは方位角Δθ及び仰角Δφを変数として以下の式で表される。
【0267】
【0268】
したがって、方位角Δθ及び仰角Δφに基づいてアンテナのゲインGtを最大化することにより、最適ビーム幅を得ることができる。
【0269】
(シミュレーション)
図50は最適ビーム幅のシミュレーション例であり、ビームチルト角とドローンの角度ずれに対する最適ビーム幅を示している。
【0270】
(アンテナ指向性ビームの最適化)
受電ノードにおいて、移動可能な受電端末としてドローンなどの産業用の無人航空機(UAV)が知られている。特に、災害時調査の分野においてドローンの空撮を用いた被害状況の把握、ドローンにUWBレーダを搭載し被災者の位置を特定するといった災害時における救助の効率化が検討されている。ドローンの課題の一つとしてドローンの滞空時間がある。ドローンの滞空時間はバッテリーの大きさとドローンの質量に関係しており、その二つはトレードオフの関係にある。
【0271】
つまり、バッテリーが大きいほど充電されている電力は増加するが、ドローンの全体の質量が増加するので消費電力が増加する。現状では、ドローンは充電がなくなる前に自動で給電地点まで戻り、給電地点で給電を行うというシステムが使われている。しかしながら、災害対策等での効率化を考慮すると、飛行中の給電が望ましい。給電方式として無線電力伝送(WPT)があり、無線電力伝送としてマイクロ波伝送を適用するにはドローンでの給電効率が課題である。
【0272】
マイクロ波伝送では、ビームを受電体に向けて照射することにより給電を行う。しかしながら、ドローンは上空の環境による影響やホバリングによって送電側が形成したビームの範囲から外れてしまう可能性があり、その場合には給電効率が著しく低下する。
【0273】
ドローンの特性を考慮した上での給電効率の向上を目標とし,ドローンへの伝送距離と推定誤差を考慮したビーム幅とその動的変化による給電効率の向上を図る。ビーム方向の推定誤差による影響はドローンまでの伝送距離が大きくなるほど小さくなるため、伝送距離が大きいほどビーム幅を狭くし、給電効率を高める。
【0274】
(フェーズドアレーによる無線給電)
マイクロ波給電方式としてフェーズドアレーを用いる給電が知られている。フェーズドアレーによる給電は、アンテナ素子を固定して配置し、アンテナ素子の放射電界を特定の方向で共相とする励振位相を各アンテナ素子に与えることによりメインローブの方向を変える。ドローンなどの移動する対象への給電では,対象がパイロット信号を送信し、送電側は受信したパイロット信号に基づいてメインローブの方向を給電対象の方向に合わせることにより給電を行う。
【0275】
ドローン等の移動体へのマイクロ波による給電では、ドローンの移動を考慮する必要があるという特有の課題がある。既存の給電方式は、ビーム幅を一定にして電力を放射するため、給電効率を向上させるためにはビーム幅を狭くする必要がある。しかしながら、ビーム幅を過剰に狭くしてしまうと、ドローンの移動によってドローンがメインローブから外れてしまう可能性がある。また、ドローンの移動に対して常にメインローブで捉えられるようビーム幅を広くした場合には、ビーム幅が過剰に広くなってしまうため、給電効率を向上させることは難しいという課題がある。
【0276】
(ドローンの移動によるビームチルト角との角度誤差)
アレーアンテナの指向特性のビームチルト角とドローンとの間には角度誤差があり、誤差の要因は主に次の3つがある。
【0277】
(1)アレーアンテナの位相制御における誤差
アレーアンテナにおけるビームフォーミングでは、移相器や増幅器を用いることによりメインビームを特定の方向に向けることができる。しかしながら、メインビームを向ける方向がアンテナ面の法線方向に対して±90°に近づくほど実際の方向に対して誤差が生じる。
【0278】
(2)ドローンの姿勢制御に伴う運動
ドローンが静止する際に、風などの外部の影響に対して姿勢制御を行うと、ドローンが移動し位置変動を起こし、角度誤差に影響を与える。この影響はドローンの大きさに左右される。
【0279】
(3)パイロット信号を送信してから給電されるまでの間におけるドローン自身の移動
ドローンからのパイロット信号の送信から給電されるまでの時間は、パイロット信号の伝搬時間、アレーアンテナにおける位相制御の処理時間、及び電力信号の伝搬時間の和で変動し、この時間は遅延時間として角度誤差に影響する。
【0280】
(評価指標)
アレーアンテナの指向特性の評価指標として給電効率を用いる。ただし、給電効率は電力伝送効率(PTE)と、RE-DC(高周波-直流)変換効率(PCE)の積で表されるが、ここではRE-DC変換効率を100%と仮定し、給電効率は電力伝送効率に等しいものとする。この条件では給電効率を次式で表される。
【0281】
【0282】
(ドローンの移動を考慮したビーム幅)
アレーアンテナの指向特性のビームチルト角とドローン間の角度誤差に対して、式(42)が最大となるビーム幅を求める。ここでは、ビームチルト角とドローンの間の角度誤差に対して、式(42)で表される給電効率が最大となるビーム幅を最適ビーム幅とし、角度誤差に対して利得Gtが最大になるビーム幅θHPを求める。
【0283】
また、本来ドローンの移動は伝送距離とビームチルト角との角度誤差の両方が影響因子であるが、ここでは角度誤差のみをドローンの移動の影響因子とし、ドローンの動きを円弧で仮定し,
図51のような単振り子とするモデルを用いる。
図51において、アレーアンテナの一アンテナ素子からドローンを見たときの角度誤差をΔθとし、アンテナ素子とドローンとの距離をD、アンテナ素子のメインローブとドローンとのずれ距離をxとしている。
【0284】
アレーアンテナの利得Gは、G=4π/ΩAで定義される。ΩAはビーム立体角であり、
dΩ=dA/r2=sinθ・dθ・dφ
で定義される。
また、ビーム立体角ΩAは次式で表される.
【0285】
【数43】
(43)
Pn(θ,φ)は電力パターンを正規化したものである。
【0286】
式(43)は次のように近似することができる。
【0287】
【数44】
(44)
式(44)は、ビーム立体角Ω
Aは、ビーム幅θHPと仰角φの幅φHPとの積で表され、ビーム幅θHPによって近似的に指向性利得が求められることを示している。
【0288】
次に、指向特性パターンのメインローブを、最大利得とビーム幅から二次曲線で近似すると、角度誤差Δθに対する利得G(θ)は次式で表される。
【0289】
【0290】
式(45)が最大となるビーム幅θHPは次式で表される。
【0291】
【0292】
【0293】
(システムフローチャート)
ドローンの移動によるビームチルト角との角度誤差は伝送距離Dによって変化する。ドローンの移動量がある平均値Δxであるとすると、メインローブの中心との角度誤差Δθは次式で表される。
【0294】
【数48】
(48)
式(48)は、伝送距離Dが大きい場合、ビームチルト角とドローンとの角度誤差Δθが小さくなるのでビーム幅θHPを狭くしてもドローンがメインローブから外れる確率は低くなることを示している。
【0295】
ドローンはパイロット信号を送信し、ドローンのパイロット信号の到来方向を二つの送電機で推定し、ドローンまでの距離を測距する。測距した距離とドローンの移動量を考慮してビーム幅を変化させることで給電効率を向上させる。また、送電機は、ドローンのように移動したり、揺動する受電機(給電対象)に対して、送電機のアンテナから放射するビームを絞ることで最適な指向性を設計する。この指向性の最適化は、受電機(給電対象)の振動により位置が分散する振動分散に対して、分散に応じてビーム幅を広げることで受電効率を向上させる。
【0296】
図52は本発明によるビーム形成のフローチャートを示している。
(1)ドローンは、パイロット信号(REF)を送信する。
(2)アレーアンテナは、パイロット信号(REF)の到来方向(DOA)をMUSIC法により求める。
(3)アレーアンテナは、到来方向(DOA)の情報を用いて三角測量によりアレーアンテナとドローンとの距離を測距する。
(4)距離に基づいて、アレーアンテナのビーム幅を調整する。
(5)ビームを形成し、電力をドローンに伝送する。
【0297】
(シミュレーション評価)
最適ビーム幅のシミュレーション評価を示す。以下では、最適ビーム幅の式(47)について、ドローンの移動を風や姿勢制御に伴う振動を考慮した場合と、遅延時間における移動を考慮した場合の2つにシミュレーション評価を示す。シミュレーションにおける送電機と受電機の諸元は以下のとおりである。
【0298】
【0299】
【表13】
(受電機の諸元)
なお、ここでは、マルチパスによる影響はないものとし、ドローンに搭載する受電アンテナは等方性アンテナとする。また、所望波がアンテナ面の法線方向に対して角度をもつ場合、各受電アンテナにおいて入力信号に位相差が生じることにより合成した出力信号の振幅が小さくなることを考慮して、所望波はアンテナ面に対して垂直に入射するものと仮定する。
【0300】
(最適ビーム幅)
図53は伝送距離を変化させた場合において、式(42)で示される給電効率を最大にするビーム幅のシミュレーション結果と、式(48)の近似式による最適ビーム幅を示している。伝送距離が短いには、ドローンの移動に対して最適ビーム幅が大きくなり、伝送距離が長くなるほど最適ビーム幅が狭くなることを示している。この諸元におけるビーム幅は3.4~38(deg)である。なお、
図53のシミュレーションでは、ドローンの移動量xは0.9(m)である。
【0301】
(ドローンの移動量を考慮した最適ビーム幅)
式(47)、及び式(48)は、最適ビーム幅θHPはドローンの平均移動量xと伝送距離Dにより定まることを示している。
図54は、角度誤差を考慮した最適ビーム幅とドローンの移動量との関係について、ドローンの移動量xが0.5m、0.8m、及び1.0mの場合を示している。
【0302】
静止に伴うドローンのずれを考慮した特性について示す。ドローンとビームチルト角の間の角度誤差としては、ドローンの移動による到来角の誤差とアレーアンテナの追従性による誤差の2つである。
【0303】
到来角の推定に伴う誤差については、アンテナの素子数が十分に多い場合には、誤差がアンテナ面の垂線方向に対して±90°に近づいても誤差がほとんどないことから、ドローンの静止時の風による移動と、遅延時間における移動の2つが主たる要因となる。ここで、ドローンの静止時の移動は、風等による移動を考慮してビームチルト角に対して振動的に動くものとする。
図55はドローンが静止状態にある際、風に対する姿勢制御に伴う移動状態を示している。
【0304】
風等による移動を考慮した特性のシミュレーション諸元は以下のとおりである。
【0305】
【0306】
図56は、各伝送距離において、静止しようとしたドローンが風や姿勢制御で移動したときの給電効率を示している。
図56は、最適ビーム幅とシミュレーションで最もビーム幅が狭くなる場合と、ドローンが常にメインローブ内に存在するビーム幅とを比較している。風などによるドローンの移動は角度のみの影響を考慮するために円弧上であると仮定している。
【0307】
図56に示す特性は、給電効率が低い方から順に、ビーム幅が3.4[deg]、20[deg]、及び本発明による最適ビーム幅を示し、最適ビーム幅の有効性が示されている。ドローンの移動による角度の影響は伝送距離が大きくなるほどが小さいため、この場合には既存方式によりビーム幅を狭くした場合と近い性能を示す。
【0308】
(伝搬遅延でのドローンの動きを考慮した最適ビーム幅)
図57は遅延時間によるドローンの移動状態を示している。ドローンは、パイロット信号を送信してから給電されるまでに移動することが予想され、パイロット信号と給電との間に遅延時間が生じる。
【0309】
ドローン自体の移動による遅延時間を考慮した特性のシミュレーション諸元は以下のとおりである。
【0310】
【0311】
図58はドローンの平均移動量に対する給電効率を示している。ビームチルト角とドローンの角度誤差は、遅延時間の間の移動に伴う平均値となることから、得られる給電効率も平均値となると想定される。
【0312】
図58に示す特性は、給電効率が低い方から順に、ビーム幅が3.4[deg]、20[deg]、及び本発明による最適ビーム幅を示し、既存方式としてビーム幅を狭くした場合とドローンの移動によってもメインローブから外れないビーム幅を用いている。
【0313】
ビーム幅が狭い場合には、ドローンがメインローブから外れる可能性が高いため、給電効率はドローンがメインローブから外れない場合と比較して低くなる。
【0314】
本発明において、伝送距離によってビーム幅を最適ビーム幅に適応的に変化させることにより給電効率は向上する。また、本発明の最適ビーム幅においても、ドローンの移動量が大きくなるほどビーム幅が広くなるため、給電効率は既存方式に近い性能を示す。
【0315】
固定の基地局からのドローンへのマイクロ波による無線電力伝送によれば、風などの外的要因や、パイロット信号を送信してから給電されるまでのドローン自身の移動による遅延時間の要因による、指向パターンのメインローブからの逸脱が予想される。
【0316】
本発明の無線電力伝送システムは、ドローンの移動を考慮に入れてビーム幅を適応的に変化させ給電効率の向上を図る。また、ビームチルト角とドローンの間の角度誤差に対して最大の給電効率となるビーム幅を近似的に求めて適応的に変化させることにより、給電効率の向上を図る。
【0317】
なお、上記実施の形態及び変形例における記述は、本発明に係る直流パルス電源装置の一例であり、本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0318】
本発明の無線電力伝送システムは、災害時の救助や常時のインフラ管理・宅配のためのドローン、携帯電話などのモバイル機器、カプセル内視鏡などのインプラント医療機器等を長時間使用に適用することができる。
【符号の説明】
【0319】
1 送電機
2 受電機
3 中継器
4 ネットワーク
10 無線電力伝送
11 物理層
12 MAC層
13 ネットワーク層
14 アプリケーション層
15 評価指標
20 レクテナ
21 アンテナ
22 整流器
22a 整合回路
22b ダイオード
22c フィルタ
30 負荷
100 無線電力伝送
101 マルチホップリレー
102 無線給電制御
103 最適給電経路
104 セキュリティ
105 給電効率
200 無線情報伝送
201 変調・符号化
202 プロトコル
203 ルーティング
204 セキュリティ
205a S/N比
205b 通信路容量
RS 受電端末
Rx(受電端末) ノード
Tx1、Tx2 アンテナ