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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】通信システム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/0457 20230101AFI20230523BHJP
   H04W 28/22 20090101ALI20230523BHJP
【FI】
H04W72/0457
H04W28/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021561169
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2020033389
(87)【国際公開番号】W WO2021106302
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2019215152
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】北村 亘
(72)【発明者】
【氏名】下地 龍二
(72)【発明者】
【氏名】八木 敬太
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-250178(JP,A)
【文献】特開2018-170596(JP,A)
【文献】特開2018-036867(JP,A)
【文献】特開2018-125685(JP,A)
【文献】特開2004-297119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋内における所定の走行領域を走行する走行台車と、無線基地局と、前記無線基地局を介して前記走行台車と通信するコントローラと、を備える通信システムであって、
前記走行台車は、
前記無線基地局との間で無線通信を行う台車無線通信部と、
前記走行領域における自車の走行位置を示す走行位置情報を、前記台車無線通信部を介して前記無線基地局へ送信可能な台車制御部と、
を備え、
前記無線基地局は、
前記走行台車との間で無線通信を行う第1無線基地局通信部と、
前記コントローラとの間で通信を行う第2無線基地局通信部と、
を備え、
前記コントローラは、
前記無線基地局との間で通信を行うコントローラ通信部と、
前記走行領域において前記走行台車が走行可能な複数の位置を示すそれぞれの位置情報と、前記各位置にある前記走行台車と前記無線基地局とが無線通信を行う場合に推奨される少なくとも1つの送信レートと、の対応関係を示す送信レートテーブルを記憶するコントローラ記憶部と、
前記無線基地局を介して受信した前記走行台車の前記走行位置情報に対応する前記位置情報に基づいて、前記送信レートテーブルから少なくとも1つの前記送信レートを取得し、取得した前記送信レートから送信レート情報を生成し、生成した前記送信レート情報と、前記走行台車へ送信するための送信情報とを、前記コントローラ通信部を介して前記無線基地局へ送信するコントローラ制御部と、
を備え、
前記無線基地局は、前記第2無線基地局通信部と前記コントローラ通信部との通信により前記送信レート情報及び前記送信情報を受信した場合に、当該送信情報を、前記第1無線基地局通信部を介して、前記送信レート情報から得られた前記送信レートで前記走行台車へ送信することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信システムであって、
前記無線基地局は、前記第1無線基地局通信部を介して、前記送信情報及び前記送信レート情報を前記走行台車へ送信し、
前記台車無線通信部は、前記無線基地局から受信した前記送信レート情報から得られた前記送信レートで、前記無線基地局と無線通信を行うことを特徴とする通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の通信システムであって、
前記台車無線通信部は、前記無線基地局との通信時に当該無線基地局が用いた送信レートと同じ送信レートで、前記無線基地局と無線通信を行うことを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の通信システムであって、
前記コントローラの前記コントローラ制御部は、
前記走行台車の前記位置に対応して推奨される前記送信レートによって前記無線基地局と走行台車とが無線通信を行った場合の通信品質を、通信品質情報として取得する通信品質取得部と、
前記通信品質取得部により取得された前記通信品質情報に基づいて、前記コントローラ記憶部に記憶された前記送信レートテーブルを更新する送信レートテーブル更新部と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の通信システムであって、
前記無線基地局は、前記第2無線基地局通信部を介して前記コントローラから受信した前記送信レート情報から前記送信レートを取得する無線基地局制御部を備え、
前記第1無線基地局通信部は、前記無線基地局制御部により前記送信レート情報から取得された前記送信レートが複数ある場合、複数の前記送信レートのうち選択された前記送信レートで、前記送信情報を前記走行台車に送信することを特徴とする通信システム。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の通信システムであって、
前記コントローラは、前記コントローラ通信部を介して、複数の前記無線基地局との間で通信が可能であり、
前記走行台車の前記走行位置により、当該走行台車の無線通信相手である前記無線基地局を切り換える必要が生じた場合、前記コントローラ制御部は、前記コントローラ通信部を介して、前記走行台車の前記無線通信相手の切換先である前記無線基地局に、前記走行台車が走行する前記位置に対応する前記送信レート情報と、前記送信情報と、を送信することを特徴とする通信システム。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の通信システムであって、
前記送信レートテーブルは、予め前記走行台車が、各前記位置において、異なる複数の送信レートで前記無線基地局との間で無線通信を行い、当該無線通信に用いられた複数の前記送信レートのうち所定以上の品質で通信できた少なくとも1つの前記送信レートと、前記位置毎の前記位置情報と、を対応付けて作成されることを特徴とする通信システム。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の通信システムであって、
前記コントローラ通信部が前記無線基地局へ送信する通信フレームに、前記送信レート情報と、前記送信情報と、が記述されることを特徴とする通信システム。
【請求項9】
請求項8に記載の通信システムであって、
前記送信レート情報及び前記送信情報は、何れも、前記通信フレームにおけるデータ本体部に記述されることを特徴とする通信システム。
【請求項10】
建屋内における所定の走行領域を走行する走行台車と、無線基地局と、前記無線基地局を介して前記走行台車と通信するコントローラと、を備える通信システムにより用いられる通信方法であって、
前記走行台車が、前記走行領域における自車の走行位置を示す走行位置情報を前記無線基地局へ送信する走行位置情報通知工程と、
前記コントローラが、前記無線基地局を介して受信した前記走行台車の前記走行位置情報に基づいて、当該走行位置情報が示す前記走行台車の前記走行位置において当該走行台車と前記無線基地局とが無線通信を行う場合に推奨される少なくとも1つの送信レートを示す送信レート情報を、当該無線基地局へ送信する送信レート指示工程と、
前記無線基地局が、前記コントローラから受信した前記送信レート情報から得られた前記送信レートで前記走行台車との無線通信を行う通信工程と、
を含むことを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、無線通信装置と無線基地局との無線通信に関する。詳細には、移動する無線通信装置の位置に応じた送信レートの決定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無線通信を行う機器同士の間で、通常の無線通信を開始する前に、無線通信で用いる送信レートを試行的な通信によって決定する無線通信装置が知られている。特許文献1は、この種の無線通信装置を開示する。
【0003】
特許文献1の無線通信装置は、データ送信(通常の無線通信)を行う前に通信先の通信装置との間の受信電波強度等の信号品質をもとにベース送信レートを設定して記憶部に格納し、データ送信時に用いる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-019307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の構成は、無線通信装置の通信先の通信装置が移動する場合、通信装置の移動に伴って受信電波強度が変わるので、通信装置が移動するたびにベース送信レートの再設定が必要となり、送信の遅延が頻繁に発生してしまう。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、移動する走行台車との間で行う無線通信に用いられる送信レートを素早くかつ適切に指示できる通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の通信システムが提供される。即ち、この通信システムは、建屋内における所定の走行領域を走行する走行台車と、無線基地局と、前記無線基地局を介して前記走行台車と通信するコントローラと、を備える。前記走行台車は、台車無線通信部と、台車制御部と、を備える。前記台車無線通信部は、前記無線基地局との間で無線通信を行う。前記台車制御部は、前記走行領域における自車の走行位置を示す走行位置情報を、前記台車無線通信部を介して前記無線基地局へ送信可能である。前記無線基地局は、第1無線基地局通信部と、第2無線基地局通信部と、を備える。前記第1無線基地局通信部は、前記走行台車との間で無線通信を行う。前記第2無線基地局通信部は、前記コントローラとの間で通信を行う。前記コントローラは、コントローラ通信部と、コントローラ記憶部と、コントローラ制御部と、を備える。前記コントローラ通信部は、前記無線基地局との間で通信を行う。前記コントローラ記憶部は、前記走行領域において前記走行台車が走行可能な複数の位置を示すそれぞれの位置情報と、前記各位置にある前記走行台車と前記無線基地局とが無線通信を行う場合に推奨される少なくとも1つの送信レートと、の対応関係を示す送信レートテーブルを記憶する。前記コントローラ制御部は、前記無線基地局を介して受信した前記走行台車の前記走行位置情報に対応する前記位置情報に基づいて、前記送信レートテーブルから少なくとも1つの前記送信レートを取得し、取得した前記送信レートから送信レート情報を生成する。前記コントローラ制御部は、生成した前記送信レート情報と、前記走行台車へ送信するための送信情報とを、前記コントローラ通信部を介して前記無線基地局へ送信する。前記無線基地局は、前記第2無線基地局通信部と前記コントローラ通信部との通信により前記送信レート情報及び前記送信情報を受信した場合に、当該送信情報を、前記第1無線基地局通信部を介して、前記送信レート情報から得られた前記送信レートで前記走行台車へ送信する。
【0009】
これにより、走行台車の走行位置に応じて、無線基地局が走行台車へ送信情報を無線で送信する場合の適切な送信レートを決めることができる。従って、不適切な送信レートでの無線送信を原因とする再送を抑制できる。
【0010】
前記の通信システムにおいて、以下の構成とすることができる。即ち、前記無線基地局は、前記第1無線基地局通信部を介して、前記送信情報及び前記送信レート情報を前記走行台車へ送信する。前記台車無線通信部は、前記無線基地局から受信した前記送信レート情報から得られた前記送信レートで、前記無線基地局と無線通信を行う。
【0011】
この場合、走行台車は、走行位置に応じた適切な送信レートで無線通信を行うことができる。
【0012】
前記の通信システムにおいては、以下の構成とすることができる。即ち、前記台車無線通信部は、前記無線基地局との通信時に当該無線基地局が用いた送信レートと同じ送信レートで、前記無線基地局と無線通信を行う。
【0013】
この場合も、走行台車は、走行位置に応じた適切な送信レートで無線通信を行うことができる。
【0014】
前記の通信システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記コントローラの前記コントローラ制御部は、通信品質取得部と、送信レートテーブル更新部と、を備える。前記通信品質取得部は、前記走行台車の前記位置に対応して推奨される前記送信レートによって前記無線基地局と走行台車とが無線通信を行った場合の通信品質を、通信品質情報として取得する。前記送信レートテーブル更新部は、前記通信品質取得部により取得された前記通信品質情報に基づいて、前記コントローラ記憶部に記憶された前記送信レートテーブルを更新する。
【0015】
これにより、無線通信環境の変化等に応じて、推奨される送信レートを柔軟に変化させることができる。この結果、無線基地局は、無線通信に関する状況が変化しても、送信情報を安定して走行台車に送信することができる。
【0016】
前記の通信システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記無線基地局は、前記第2無線基地局通信部を介して前記コントローラから受信した前記送信レート情報から前記送信レートを取得する無線基地局制御部を備える。前記第1無線基地局通信部は、前記無線基地局制御部により前記送信レート情報から取得された前記送信レートが複数ある場合、複数の前記送信レートのうち選択された前記送信レートで、前記送信情報を前記走行台車に送信する。
【0017】
これにより、推奨された複数の送信レートを場合に応じて使い分けながら、無線基地局が送信情報を走行台車に送信することができる。
【0018】
前記の通信システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記コントローラは、前記コントローラ通信部を介して、複数の前記無線基地局との間で通信が可能である。前記走行台車の前記走行位置により、当該走行台車の無線通信相手である前記無線基地局を切り換える必要が生じた場合、前記コントローラ制御部は、前記コントローラ通信部を介して、前記走行台車の前記無線通信相手の切換先である前記無線基地局に、前記走行台車が走行する前記位置に対応する前記送信レート情報と、前記送信情報と、を送信する。
【0019】
これにより、走行台車の無線通信相手となる無線基地局が切り換えられても、切換先の無線基地局は、コントローラによって推奨される送信レートを用いて、走行台車との良好な無線通信を即座に開始することができる。
【0020】
前記の通信システムにおいて、前記送信レートテーブルは、予め前記走行台車が、各前記位置において、異なる複数の送信レートで前記無線基地局との間で無線通信を行い、当該無線通信に用いられた複数の前記送信レートのうち所定以上の品質で通信できた少なくとも1つの前記送信レートと、前記位置毎の前記位置情報と、を対応付けて作成されることが好ましい。
【0021】
これにより、推奨される送信レートを的確に決めることができる。
【0022】
前記の通信システムにおいて、前記コントローラ通信部が前記無線基地局へ送信する通信フレームに、前記送信レート情報と、前記送信情報と、が記述されることが好ましい。
【0023】
これにより、2つの情報を1つの通信フレームにまとめることで、情報の取扱いが容易になるとともに、効率的な通信が可能になる。
【0024】
前記の通信システムにおいて、前記送信レート情報及び前記送信情報は、何れも、前記通信フレームにおけるデータ本体部に記述されることが好ましい。
【0025】
これにより、特別な構造の通信フレームを用いることなく、無線基地局への送信レートの指示を実現することができる。
【0026】
本発明の第2の観点によれば、以下の通信方法が提供される。即ち、この通信方法は、建屋内における所定の走行領域を走行する走行台車と、無線基地局と、前記無線基地局を介して前記走行台車と通信するコントローラと、を備える通信システムにより用いられる。この通信方法は、走行位置情報通知工程と、送信レート指示工程と、通信工程と、を含む。前記走行位置情報通知工程では、前記走行台車が、前記走行領域における自車の走行位置を示す走行位置情報を前記無線基地局へ送信する。前記送信レート指示工程では、前記コントローラが、前記無線基地局を介して受信した前記走行台車の前記走行位置情報に基づいて、当該走行位置情報が示す前記走行台車の前記走行位置において当該走行台車と前記無線基地局とが無線通信を行う場合に推奨される少なくとも1つの送信レートを示す送信レート情報を、当該無線基地局へ送信する。前記通信工程では、前記無線基地局が、前記コントローラから受信した前記送信レート情報から得られた前記送信レートで前記走行台車との無線通信を行う。
【0027】
これにより、走行台車の走行位置に応じて、無線基地局が走行台車へ送信情報を無線で送信する場合の適切な送信レートを決めることができる。従って、不適切な送信レートでの無線送信を原因とする再送を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの構成を示す概略図。
図2】通信システムの構成を示すイメージ図。
図3】送信レートテーブルの一例を示す図。
図4】管理側送信情報の通信フレームの一例を示す図。
図5】通信管理部、無線基地局、及び走行台車の間のやり取りを示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る通信システム100の構成を示す概略図である。図2は、通信システム100の構成を示すイメージ図である。
【0032】
図1に示す通信システム100は、例えば、複数の処理装置(図略)を有する半導体製造工場や、複数のスタッカラック(図略)を有する自動倉庫等に用いられる。通信システム100は、図1に示すように、主として、複数の走行台車1(図1においては1台のみ図示)と、複数の無線基地局2と、通信管理部(コントローラ)3と、有線LAN4と、を備えて構成される。
【0033】
走行台車1は、軌道5から構成された走行領域を走行する搬送装置である。軌道5は、半導体製造工場や、自動倉庫等の建屋内に敷設される。走行台車1は、例えば、処理装置、スタッカラック等の間で、FOUP(Front Opening Unify Pod)等の搬送対象物を搬送するために用いることができる。
【0034】
走行台車1としては、例えば天井走行車のOHT(Overhead Hoist Transfer)、OHS(Over Head Shuttle)、有軌道式無人搬送車のRGV(Rail Guided Vehicle)等が考えられるが、これに限定されない。
【0035】
軌道5は、例えば天井から吊り下げられて設けられる。しかし、これに限定されず、例えば無人搬送車のAGV(Automated Guided Vehicle)をはじめとする無軌道の走行台車に本実施形態の通信システム100が適用されても良い。この場合、走行台車の走行経路及び走行領域は、床面に貼り付けられた磁気テープ等の誘導用テープ、或いはバーコード等からなるガイド部等によって実質的に定められる。
【0036】
走行台車1は、図2に示すように、台車無線通信部11と、台車制御部12と、を備える。走行台車1には、公知のコンピュータが内蔵されている。このコンピュータは、CPU、HDD、ROM、RAM等を備える。HDD、ROM及びRAMは、無線通信に関する各種の情報を記憶する台車記憶部を構成している。HDD及びROMからなる台車記憶部の不揮発性メモリには、無線通信を実現するためのプログラム等が記憶されている。上記のハードウェアとソフトウェアの協働により、当該コンピュータを、台車無線通信部11及び台車制御部12として動作させることができる。
【0037】
台車無線通信部11は、所定の無線通信規格に準拠して、無線基地局2との間で無線通信を行う。無線通信規格としては、例えば、IEEE802.11、IEEE802.15、及びARIB STD-108等を用いることができるが、これに限定されない。無線通信は、上記で例示した無線通信規格等に適合する無線LANによって実現することができる。
【0038】
台車無線通信部11は、複数の無線基地局2のうち、走行台車1の走行位置に対応する1つの無線基地局2との間で無線通信を行う。複数の無線基地局2の無線通信可能エリアは、それぞれ異なっている。従って、走行台車1の走行位置に応じて、台車無線通信部11が無線通信を行う相手の無線基地局2が変化し得る。
【0039】
台車制御部12は、台車側送信情報を作成するとともに、台車無線通信部11における無線通信を制御する。台車側送信情報は、通信管理部3へ送信するための情報である。台車側送信情報には、走行台車1の走行位置を示す走行位置情報等が含まれている。走行位置情報は、走行台車1の目標位置、速度、加減速度、動作状態等の台車状態を含むものであっても良い。台車位置情報は、走行台車1の付近における環境情報を含むものであっても良い。台車制御部12は、無線通信に用いる送信レートを、台車無線通信部11に指示する。この送信レートの指示の詳細は後述する。
【0040】
台車制御部12は、走行台車1に取り付けられた図略の位置センサ等を介して、走行領域内における自車の走行位置を示す走行位置情報を取得する。この走行位置情報の取得は、例えば以下のように行われる。
【0041】
即ち、走行台車1に取り付けられた位置センサは、例えば光受信器から構成される。走行台車1が走行する軌道5に沿って、複数の光送信器が設けられている。走行領域における各光送信器の座標は、各光送信器の識別情報と対応付けられた状態で、予め台車記憶部により記憶される。各光送信器は、自機器を識別するための識別情報を含む光信号を送信する。走行台車1が軌道5の所定の位置を通過するとき、位置センサ(光受信器)は、光送信器から送信されてきた光信号を受信する。走行台車1の台車制御部12は、受信した光信号に基づいて光送信器を特定することで自車の走行位置情報を取得する。あるいは、走行台車1が走行する軌道5に沿って、複数の指標(例えば、バーコード等)が設けられており、走行台車1の台車制御部12は、図略の指標リーダにより読み取られた情報に基づいて指標を特定することで自車の走行位置情報を取得するものであってもよい。あるいは、走行台車1が走行する軌道5に沿って所定の間隔を空けて基準マーク(IDタグ)が設けられており、走行台車1の台車制御部12は、車輪エンコーダ出力をカウントすることで基準マークからの距離を算出することで自車の走行位置情報を取得するものであっても良い。
【0042】
台車制御部12は、上記のように取得した自車の走行位置情報を、台車側送信情報に記述して、台車無線通信部11を介して無線基地局2へ送信する。これにより、走行台車1の位置を後述の通信管理部3に通知することができる。
【0043】
光送信器の識別情報と当該光送信器の座標の対応関係は、走行台車1ではなく通信管理部3側で記憶されても良い。この場合、台車制御部12は、受信した光送信器の識別情報を、走行位置情報として、無線基地局2を経由して通信管理部3へ送信する。
【0044】
無線基地局2は、所謂アクセスポイントであり、LANケーブルを用いる有線LAN4を介して通信管理部3と接続され、通信管理部3との間で有線通信を行う。図1に示すように、有線LAN4には、適宜の数のスイッチングハブ40が設けられている。
【0045】
無線基地局2は、通信管理部3との間で有線通信を行うとともに、自身を中心とした無線ネットワークを形成する。無線基地局2は、自身を中心とした無線通信可能エリアに存在する走行台車1との間で、無線通信を行うことができる。
【0046】
本実施形態の通信システム100においては、走行台車1が走行する走行領域の全域が無線基地局2の無線通信可能エリアでカバーされるように、軌道5に沿って無線基地局2が複数設けられている。
【0047】
本実施形態の無線基地局2のそれぞれには、無線通信可能エリアに含まれた走行台車1の走行領域において、何れの位置に存在する走行台車1と無線通信するかについての情報が予め設定されている。特に、2つの無線基地局2の無線通信可能エリアの一部が重畳している部分において、当該重畳部分に含まれた走行領域の各位置を管轄する無線基地局2が予め定められている。
【0048】
本実施形態では、走行台車1の各位置と、当該走行台車1と無線通信を行う無線基地局2と、の対応関係が事前に決まっている。従って、各位置において走行台車1は、どの送信レートで無線通信を無線基地局2との間で行うことが好ましいかを事前に何らかの形で取得し、得られた結果に従って無線通信を行うことが可能になる。
【0049】
無線基地局2は、図2に示すように、第1AP通信部21と、第2AP通信部22と、AP制御部23と、を備える。ここで、APは、無線基地局の略称である。
【0050】
走行台車1と同様に、無線基地局2には公知のコンピュータが内蔵されている。このコンピュータは、CPU、HDD、ROM、RAM等を備える。HDD、ROM及びRAMは、無線通信に関する各種の情報を記憶するAP記憶部(不図示)を構成している。HDD及びROMからなるAP記憶部の不揮発性メモリには、無線通信を実現するためのプログラム等が記憶されている。上記のハードウェアとソフトウェアの協働により、当該コンピュータを、第1AP通信部21、第2AP通信部22、及びAP制御部23として動作させることができる。
【0051】
第1AP通信部21は、上述の無線通信規格に準拠して、走行台車1の台車無線通信部11との間で無線通信を行う。従って、走行台車1は無線通信装置に相当する。第1AP通信部21は、適宜の送信レートを用いて、第2AP通信部22により通信管理部3から受信した後述の管理側送信情報(送信情報)を走行台車1へ送信する。
【0052】
第2AP通信部22は、有線LAN4を介して通信管理部3との間で有線通信を行う。ここで、無線基地局2との関係において、通信管理部3は走行台車1とは異なる通信装置(他の通信装置)に相当する。第2AP通信部22は、第1AP通信部21により走行台車1から受信した台車側送信情報を通信管理部3へ送信する。
【0053】
AP制御部23は、第1AP通信部21及び第2AP通信部22で行う通信を制御する。AP制御部23は、無線通信で用いる送信レートを第1AP通信部21に指示する。この送信レートの指示の詳細は後述する。
【0054】
通信管理部3は、複数の走行台車1のそれぞれを管理するために用いられるコンピュータである。通信管理部3は、図1又は図2に示す上層の搬送管理部6等から与えられた複数の搬送タスクのそれぞれを、管理している複数の走行台車1の何れかに割り当て、それぞれの走行台車1の走行経路等を決定する。
【0055】
図2において、搬送管理部6は、通信システム100が適用されている搬送システムを統括的に制御する。搬送管理部6は、1又は複数のコンピュータにより構成され、搬送管理に伴う各種の制御を行う。
【0056】
通信管理部3は、図2に示すように、CTRL通信部31と、CTRL記憶部32と、CTRL制御部33と、を備える。ここで、CTRLは、コントローラの略称である。
【0057】
通信管理部3は、例えば、図示しないCPU、ROM、RAM、HDD等を有する公知のコンピュータとして構成される。ROM、RAM、HDDには、各種プログラム、管理に関するデータ等が記憶されている。このハードウェアとソフトウェアの協働により、コンピュータをCTRL通信部31、CTRL記憶部32及びCTRL制御部33として動作させることができる。
【0058】
CTRL通信部31は、有線LAN4を介して無線基地局2の第2AP通信部22と接続しており、第2AP通信部22との間で有線通信を行う。通信管理部3において、CTRL通信部31は、無線基地局2が備える第2AP通信部22との有線通信により、管理側送信情報を送信する。無線基地局2において、第2AP通信部22が管理側送信情報を受信すると、第1AP通信部21が当該管理側送信情報を対象の走行台車1へ無線通信により転送する。即ち、通信管理部3は、無線基地局2を介して走行台車1との間で通信を行っている。
【0059】
CTRL記憶部32は、HDD、ROM等から構成され、無線通信を実現するためのプログラム、及び、走行台車1と無線基地局2との間の無線通信に用いられる送信レートを指示するための送信レートテーブル等を記憶する。
【0060】
送信レートテーブルは、例えば図3に示すように、走行台車1が走行する走行領域に含まれる多数の位置(P1,P2,・・・,Pn)と、それぞれの位置(P1,P2,・・・,Pn)に走行台車1があるときに推奨される複数の送信レートと、それぞれの送信レートにおける通信品質情報と、の対応関係を示すものである。図1には、走行領域全域を網羅する多数の位置P1,P2,・・・,Pnのうち、2つの位置Pa,Pbだけが代表して示されている。送信レートテーブルに含まれる送信レートは、何れも、高品質な無線通信を行う観点から推奨されるものである。
【0061】
上記に限定されず、送信レートテーブルは、例えば、位置と送信レートとの対応関係のみを示しても良い。この場合、各送信レートと通信品質情報との対応関係を示すテーブルは別途に記憶されても良い。
【0062】
また、送信レートテーブルは、走行台車1が走行する走行領域に含まれる各位置と送信レートとの対応関係を示すものでなくともよく、例えば、走行領域に含まれる各経路範囲(所定長さの線分に相当)と送信レートとの対応関係を示すもの、あるいは走行領域に含まれる所定長のエリア(所定面積の面に相当)と送信レートとの対応関係を示すものであっても良い。
【0063】
送信レートテーブルは、事前に得られたデータに基づいて予め作成されている。具体的には、例えば通信システム100を試運転する時に、走行台車1の各位置において、当該位置を管轄する無線基地局2と高品質な無線通信を行うことが可能な送信レートに関する調査が行われる(サーベイ作業)。
【0064】
このサーベイ作業では、走行台車1は、走行領域における多数の位置P1,P2,・・・,Pnへ順に移動する。それぞれの位置で走行台車1は停止して、異なる複数の送信レートを用いて、当該位置を管轄する無線基地局2との間で試験的な無線通信を行う。無線基地局2は、データを走行台車1から正常に受信できた場合には、走行台車1が送信に用いた送信レートと同一の送信レートで、応答データを走行台車1に送信する。
【0065】
走行台車1及び/又は無線基地局2は、走行台車1の現在位置に対して、送信回数、及び送信してから所定時間内で受信できた回数等を集計する。これにより、異なる送信レートのそれぞれに対応する通信品質情報を取得することができる。
【0066】
通信品質情報の別の例としては、周知のパケットエラー率、タイムアウト発生率、送信成功率、及び再送回数等を挙げることができる。なお、送信レートによる無線通信の良否を判定できれば、通信品質を示す形式及びその算出(取得)方法等は特に限定されない。
【0067】
通信管理部3は、無線基地局2との間で有線通信を行うことにより、1つの位置につき、走行台車1及び/又は無線基地局2が行った無線通信で用いられた複数の送信レートのそれぞれに対応する通信品質情報を取得する。通信管理部3は、この通信品質情報を、多数の位置P1,P2,・・・,Pnのそれぞれに関して取得する。
【0068】
通信管理部3は、走行台車1の位置情報を、無線基地局2を経由して走行台車1から受信した台車側送信情報から取得することができる。上記通信管理部3は、走行台車1及び/又は無線基地局2側で集計した通信品質情報を直接取得しても良いし、無線基地局2を介した無線通信の成否を通信管理部3自身が集計することにより通信品質情報を取得しても良い。
【0069】
そして、通信管理部3は、走行台車1が走行する1つの位置に対して、当該位置で行われた無線通信に用いられた複数の送信レートのうち、予め設定された通信品質閾値以上の通信品質を実現できた1又は複数の送信レートを取り出して、通信品質の良い順に並べる。なお、上記条件を満たした送信レートが1つしかない場合、そのときの走行台車1の位置に関しては、1つの送信レートだけがテーブルに記述されることになる。
【0070】
通信管理部3は、上記のように作成した少なくとも1つの送信レートと、走行台車1の位置情報と、を対応付けることで、送信レートテーブルを作成する。
【0071】
しかしながら、送信レートテーブルは、上記のように作成されることに限定されない。実機を用いた調査に基づかずに、例えば、走行台車1が走行する位置と無線基地局2との配置関係が同一である他の半導体製造工場又は自動倉庫の運転履歴データに基づいて、送信レートテーブルが作成されても良い。走行台車1の各位置と無線基地局との位置関係、その間の障害物の有無、種類等、及びそれに対応する通信の送信レートを機械学習したモデルによって、送信レートテーブルが作成されても良い。また、送信レートテーブルは、通信管理部3とは別途に設けられた管理装置により作成されても良い。
【0072】
送信レートテーブルは、CTRL記憶部32のうち、内容を書換可能なメモリに記憶されている。従って、送信レートテーブルの内容は、適宜更新可能である。
【0073】
CTRL制御部33は、図2に示すように、送信情報生成部34と、通信品質取得部35と、送信レートテーブル更新部36と、を備える。
【0074】
送信情報生成部34は、管理側送信情報を生成する。管理側送信情報は、無線基地局2を経由して、通信管理部3から走行台車1へ送信される情報である。この管理側送信情報は、走行台車1の状態を問い合わせるための問合せ情報、又は、上記搬送タスクを走行台車1に指示するための搬送タスク情報等を含んで構成される。管理側送信情報は、通信管理部3から無線基地局2に送信される通信フレームに記述される。以下、管理側送信情報が記述された通信フレームを、管理側送信フレームと呼ぶことがある。この管理側送信フレームには、管理側送信情報とともに、無線基地局2と走行台車1との間の無線通信のための送信レート情報が記述される。送信レート情報は、送信レートテーブルを参照して求められた、走行台車1の位置に対応して推奨される1又は複数の送信レートからなる。送信レート情報の記述は、送信情報生成部34によって行われる。管理側送信フレームの例が図4に示されている。
【0075】
通信品質取得部35は、走行台車1と無線基地局2との間で行った無線通信に用いられる送信レート毎の通信品質情報を取得する。この通信品質情報は、例えば、上述の送信回数、送信してから所定時間内で受信できた回数、タイムアウト発生率、パケットエラー率、送信成功率、及び再送回数等のうち少なくとも何れかを含む。通信品質情報は、CTRL通信部31と無線基地局2との有線通信により取得することができる。
【0076】
通信品質情報の取得は、例えば、通信品質取得部35が、CTRL通信部31と無線基地局2との有線通信を経由して、走行台車1及び/又は無線基地局2で集計して得られた通信品質情報をそのまま取得することで実現することができる。また、通信品質情報は、通信品質取得部35側において、CTRL通信部31を介して管理側送信情報を送信してから、所定時間内に当該管理側送信情報への応答情報の台車側送信情報を受信できた回数等の関連データを集計することで取得することもできる。この通信品質情報は、対応する送信レート、及び、当該送信レートを用いる無線通信が行われた走行台車1の位置の位置情報等とともに取得することが好ましい。
【0077】
CTRL制御部33は、通信品質取得部35により取得された通信品質情報を、CTRL記憶部32に記憶させる。通信品質情報は、当該通信品質情報の取得において用いられた送信レート、この送信レートを用いる無線通信が行われた位置の位置情報(即ち、当該無線通信を行った走行台車1の走行位置情報)、及び、走行台車1の無線通信相手の無線基地局2を特定する情報(例えば、無線基地局番号、MACアドレス等)と対応付けた状態で、CTRL記憶部32に記憶される。
【0078】
送信レートテーブル更新部36は、CTRL記憶部32において記憶された送信レートテーブルの内容を更新することができる。例えば、位置情報に対応して複数の送信レートが送信レートテーブルに記述されている場合に、通信品質取得部35により通信品質情報を新しく取得した結果、送信レートを推奨する順位が変化する場合が考えられる。この場合、送信レートテーブル更新部36は、新しい通信品質情報を反映するように、送信レートテーブルを更新する。
【0079】
次に、上述の通信管理部3、無線基地局2、及び走行台車1の間の情報のやり取りについて、図5を参照して詳細に説明する。
【0080】
図5に示すように、通信管理部3は、送信情報生成部34により生成された管理側送信情報を、CTRL通信部31を介して、例えば100msec毎に無線基地局2へ送信する。このとき、通信管理部3は、管理側送信情報とともに、無線基地局2が走行台車1に対してどの送信レートで通信すべきかを示す送信レート情報を、無線基地局2に送信する。この送信レート情報は、通信管理部3により、送信レートテーブルを用いて作成される。
【0081】
無線基地局2は、受信した送信レート情報に基づいて、走行台車1との間で無線通信する場合の送信レートを決定する。無線基地局2は、この送信レートを用いて走行台車1との無線通信を行い、管理側送信情報及び送信レート情報を走行台車1へ送信する。
【0082】
走行台車1は、無線基地局2から管理側送信情報を受信した後、当該管理側送信情報への応答として台車側送信情報を生成する。この台車側送信情報には、位置センサにより得られた自車の走行位置情報が含められる。また、走行台車1は、受信した送信レート情報に基づいて、無線基地局2との間で通信する場合の送信レートを決定する。走行台車1は、この送信レートを用いて無線基地局2との無線通信を行い、台車側送信情報を無線基地局2へ送信する。無線基地局2は、走行台車1から受信した台車側送信情報を有線通信によって通信管理部3へ送信する。
【0083】
続いて、本実施形態の通信システム100において、無線通信を行う走行台車1及び無線基地局2が用いる送信レートの指示のために用いる通信方法について、図1から図5を参照して詳細に説明する。
【0084】
本実施形態の通信システム100においては、通信管理部3により、各々の走行位置において走行台車1及び無線基地局2が用いる少なくとも1つの送信レートを決定し、管理側送信フレームに記述する形で走行台車1及び無線基地局2に指示している。以下では、走行台車1が図1に示す位置Paから位置Pbへ向かって走行する例において、通信管理部3が走行台車1の走行位置に応じて決定した送信レートを無線基地局2及び走行台車1に指示する場合を説明する。
【0085】
通信管理部3は、所定の時間間隔で管理側送信情報を走行台車1に反復して送信し、走行台車1は、台車側送信情報を通信管理部3に送信している。台車側送信情報は管理側送信情報に対する応答の形で走行台車1によって送信されるので、以下では、台車側送信情報を応答情報と呼ぶこともある。相互の通信は、無線基地局2を経由して行われる。
【0086】
走行台車1は、図1に示す位置Paを走行しているときに管理側送信情報を受信した場合、これに対する応答である台車側送信情報を作成する。この台車側送信情報には、当該位置Paの位置情報が、自車の走行位置情報として含められる。位置情報としては、例えば、当該位置Paに設けられた光送信器の識別情報、又は、当該識別情報に基づく座標情報等とすることができる。
【0087】
走行台車1は、台車側送信情報を、無線基地局2へ無線送信する(走行位置情報通知工程)。上述のとおり台車側送信情報は管理側送信情報の応答として送信されるが、台車側送信情報の無線通信による送信は、その管理側送信情報とともに走行台車1が受信した送信レート情報に基づいて得られた送信レートで行われる。
【0088】
通信管理部3が管理側送信情報を送信した後、CTRL制御部33は、その応答である台車側送信情報を、無線基地局2を介して走行台車1から受信するのを待機する。台車側送信情報は、走行台車1から無線基地局2の第1AP通信部21へ送信される。無線基地局2が受信した台車側送信情報は、第2AP通信部22とCTRL通信部31との有線通信により、通信管理部3へ送信される。
【0089】
CTRL通信部31が台車側送信情報を受信すると、CTRL制御部33は、走行台車1の走行位置情報を当該台車側送信情報から読み出す。CTRL制御部33は、CTRL記憶部32に記憶された送信レートテーブルから、前記走行位置情報に示す位置Paに対応する送信レート(例えば図3の太線により囲まれた部分)を取得する。図3の例では、送信レートテーブルには、位置Paに対応して、3つの送信レート(DBPS値)が記述されている。このDBPS値は、1シンボル当たりのビット数であって、Data Bit Per Symbolの略称である。
【0090】
なお、各通信規格に決められた符号化・変調方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)においては、各MCS値(MCSのIndex値)に対応する送信レートが定められている。従って、送信レートとしては、DBPS値に代えて、MCS値の形で表現することもできる。送信レートは、他の公知の形式で表現することもできる。
【0091】
送信情報生成部34は管理側送信情報を作成し、1つの通信フレームに、当該管理側送信情報を記述する。また、送信情報生成部34は、送信レートテーブルから上記のように取得された3つの送信レートからなる送信レート情報TRaを生成して、この送信レート情報TRaを、管理側送信情報が記述された通信フレームに記述する。これにより、管理側送信フレームが生成される。図4に示すように、管理側送信フレームは、公知のL2フレームに従ったものである。図4の太線で囲まれた部分で示すように、管理側送信フレームにおいては、L2フレームのデータ本体(ペイロード)の先頭に、送信レート情報TRaが記述される。送信レート情報TRaは、各送信レートに対応するDBPS値(又はMCS値)によって表現される。図3の例では、位置Paに対応する送信レート情報TRaは、3つの送信レートのDBPS値(208,104,52)からなる。これに対応して、3つのDBPS値が、L2フレームのデータ本体の先頭に、通信品質が最も良いもの、言い換えれば、最も推奨されるものから順に書き込まれる。本実施形態ではDBPS値を1つ記述するのに6バイトを使用するので、図4の例では、送信レート情報TRaのために6×3=18バイトがL2フレームのペイロードの先頭側に確保されている。ペイロードの19バイト目以降に、管理側送信情報(例えば、前述の問合せ情報)が記述される。このように、本実施形態では、管理側送信情報と、無線基地局2に対して指示する送信レートとが、同一のL2フレームのデータ本体に記述されている。
【0092】
CTRL制御部33は、送信情報生成部34により、送信レート情報及び管理側送信情報を、CTRL通信部31を介して、当該位置Paを管轄する無線基地局2aの第2AP通信部22へ送信する(送信レート指示工程)。
【0093】
無線基地局2aのAP制御部23は、第2AP通信部22を介して通信管理部3から受信した通信フレームから、そこに記述された送信レート情報(例えば複数のDBPS値)のうち第1番目の送信レートを読み出して、第1AP通信部21に指示する。
【0094】
第1AP通信部21は、第2AP通信部22を介して受信した管理側送信情報を、対応する走行台車1へ無線送信する(通信工程)。本実施形態において、この通信工程は、管理側送信フレーム(管理側情報に加えて送信レート情報を含む)を、そのまま走行台車1へ送信することにより実現される。このときの送信レートは、AP制御部23により指示された送信レート(DBPS値:208)に従う。
【0095】
第1AP通信部21により無線通信が行われている間、AP制御部23は、当該送信レート(DBPS値:208)による無線通信の通信品質情報を取得する。この通信品質情報は、上記のように、管理側送信情報を走行台車1へ無線送信してから、所定時間内に当該管理側送信情報への応答情報(台車側送信情報)を受信できたか否かを判断すること等により得ることができる。AP制御部23は、この集計結果に基づいて通信品質を監視する。
【0096】
通信品質情報は、例えば、特定の送信レートにおいて、無線基地局2aと走行台車1との間で行う無線通信で予め定めた施行回数(例えば5回)の内、再送が何回行われたかの結果を含んでもよい。更に具体的には、例えば3つの送信レートのDBPS値(208,104,52)のそれぞれにおいて、無線基地局2aと走行台車1との間で無線通信を行い、施行回数5回に対し、DBPS値208では3回再送が行われ、DBPS値104では2回再送が行われ、DBPS値52では1回再送が行われた旨の結果を通信品質情報に含めて、通信管理部3(通信品質取得部35)に無線基地局2aを介して通知する。
【0097】
例えば、無線通信中において、通信品質が何らかの原因によって所定の閾値より低くなる可能性がある。通信品質の低下としては、例えば再送回数が規定回数内で収まるか否かで判断することもできるが、これに限定されない。通信品質の低下を検出した場合、AP制御部23は、直前に受信した送信レート情報の第2番目のDBPS値(104)を、第1AP通信部21に指示する。第1AP通信部21は、AP制御部23からの指示に従って、送信レート(DBPS値:104)で無線通信を行う。
【0098】
AP制御部23は、上記の送信レートを変更する指示を第1AP通信部21に出力するとともに、送信レート(DBPS値:208)に対応する通信品質情報をまとめて、適切なタイミングで通信管理部3に通知する。なお、無線通信を行った送信レートのそれぞれに対する通信品質情報を適切なタイミングで通信管理部3に通知しても良い。
【0099】
前述の走行台車1は、台車無線通信部11を介して、無線基地局2aから送信してきた管理側送信情報を受信する。走行台車1は位置Paから位置Pbに向かって走行しているが、管理側送信情報の受信時点では、位置Pbにはまだ到達していない。
【0100】
走行台車1の台車制御部12は、台車無線通信部11を介して管理側送信情報を受信すると、台車側送信情報を生成する。この台車側送信情報には、自身の現在の走行位置情報(位置Pa)等が含まれている。更に、台車制御部12は、無線基地局2aに台車側送信情報を送信する場合の送信レートを台車無線通信部11に指示する。ここでは、走行台車1に対して無線基地局2aが、第1番目の送信レート(DBPS値:208)で管理側送信情報を送信した例で説明する。台車制御部12は、受信した送信レート情報(例えば複数のDBPS値)のうち、第1番目のDBPS値(208)を読み出して、このDBPS値を送信レートとして台車無線通信部11に指示する。
【0101】
台車無線通信部11は、台車制御部12により指示された送信レート(DBPS値:208)を用いて、台車側送信情報を、無線基地局2aの第1AP通信部21へ送信する。
【0102】
台車無線通信部11により無線通信が行われている間、台車制御部12は、当該送信レート(DBPS値:208)による無線通信の通信品質情報を上記のように取得することにより、通信品質を監視する。
【0103】
上述と同様に、無線通信中において、通信品質が何らかの原因によって所定の閾値より低くなる可能性がある。通信品質の低下を検出した場合、台車制御部12は、直前に受信した送信レート情報の第2番目のDBPS値(104)を台車無線通信部11に指示する。台車無線通信部11は、台車制御部12からの指示に従った送信レート(DBPS値:104)で無線通信を行う。
【0104】
このように、本実施形態では、管理側送信フレームに記述された送信レート情報は、実質的に、無線基地局2aに対してだけでなく、走行台車1に対しても送信レートを指示するために用いられている。
【0105】
台車制御部12は、上記の送信レートを変更する指示を台車無線通信部11に出力するとともに、送信レート(DBPS値:208)に対応する通信品質情報を、適切なタイミングで通信管理部3に通知する。
【0106】
無線基地局2aは、第1AP通信部21を介して受信した台車側送信情報を、第2AP通信部22を経由して通信管理部3のCTRL通信部31へ送信する。
【0107】
次に、走行台車1が、無線基地局2aから管理側送信情報を受信した時点で位置Pbに到達していた場合を考える。この場合、台車制御部12が作成する台車側送信情報には、自身の現在の走行位置情報として、位置Pbが記述される。この台車側送信情報は、無線基地局2aを介して、通信管理部3のCTRL制御部33に送信される。
【0108】
通信管理部3のCTRL制御部33は、台車側送信情報を受信すると、当該台車側送信情報に含まれた走行台車1の新たな走行位置情報である位置Pbに基づいて、当該位置Pbを管轄する無線基地局2を取得する。本実施形態において、当該位置Pbを管轄するのは、図1に示す無線基地局2bである。従って、無線基地局2bは、走行台車1が無線通信相手を無線基地局2aから切り換える切換先となる。CTRL制御部33は、CTRL記憶部32に記憶された送信レートテーブルに基づいて、当該位置Pbに対応する1又は複数の送信レートを取得し、送信レート情報TRbを生成する。
【0109】
送信情報生成部34は、管理側送信情報を新たに生成する。通信管理部3から無線基地局2bに送信される管理側送信フレームには、管理側送信情報に加えて、上記のように取得された送信レート情報TRbが記述される。
【0110】
CTRL制御部33は、CTRL通信部31を介して、送信情報生成部34で生成された新たな管理側送信情報を無線基地局2bへ送信する。
【0111】
これにより、これまでに走行台車1と無線通信を行っていない無線基地局2bにおいても、通信管理部3から受信した送信レート情報を参照することで、走行台車1との無線通信をスムーズに行うことができる。即ち、無線通信の最初の段階においても、送信レートを適切に決定することができる。従って、様々な送信レートでの通信を試行する必要がないので、通信の遅延を回避することができる。
【0112】
以上に説明したように、本実施形態の通信システム100は、走行台車1と、無線基地局2と、通信管理部3と、を備える。走行台車1は、建屋内における所定の走行領域を走行する。通信管理部3は、無線基地局2を介して走行台車1と通信する。走行台車1は、台車無線通信部11と、台車制御部12と、を備える。台車無線通信部11は、無線基地局2との間で無線通信を行う。台車制御部12は、走行領域における自車の走行位置を示す走行位置情報を、台車無線通信部11を介して無線基地局2へ送信可能である。無線基地局2は、第1AP通信部21と、第2AP通信部22と、を備える。第1AP通信部21は、走行台車1との間で無線通信を行う。第2AP通信部22は、通信管理部3との間で通信を行う。通信管理部3は、CTRL通信部31と、CTRL記憶部32と、CTRL制御部33と、を備える。CTRL通信部31は、無線基地局2との間で通信を行う。CTRL記憶部32は、走行領域において走行台車1が走行可能な複数の位置を示すそれぞれの位置情報と、各位置にある走行台車1と無線基地局2とが無線通信を行う場合に推奨される少なくとも1つの送信レートと、の対応関係を示す送信レートテーブルを記憶する。CTRL制御部33は、無線基地局2を介して受信した走行台車1の走行位置情報に対応する位置情報に基づいて、少なくとも1つの送信レート情報を送信レートテーブルから取得し、取得した前記送信レートから送信レート情報を生成する。CTRL制御部33は、生成した送信レート情報と、走行台車1へ送信するための管理側送信情報とを、CTRL通信部31を介して無線基地局2へ送信する。無線基地局2は、第2AP通信部22とCTRL通信部31との通信により送信レート情報及び管理側送信情報を受信した場合に、管理側送信情報を、第1AP通信部21を介して、送信レート情報から得られた送信レートで走行台車1へ送信する。
【0113】
これにより、走行台車1の走行位置に応じて、無線基地局2が走行台車1へ管理側送信情報を無線で送信する場合の適切な送信レートを決めることができる。従って、不適切な送信レートでの無線送信を原因とする再送を抑制できる。
【0114】
また、本実施形態の通信システム100において、無線基地局2は、第1AP通信部21を介して、送信レート情報とともに、管理側送信情報を走行台車1に送信する。台車無線通信部11は、無線基地局2から受信した送信レート情報から得られた送信レートで、無線基地局2と無線通信を行う。
【0115】
これにより、走行台車1は、走行位置に応じた適切な送信レートで無線通信を行うことができる。
【0116】
本実施形態の通信システム100において、通信管理部3のCTRL制御部33は、通信品質取得部35と、送信レートテーブル更新部36と、を備える。通信品質取得部35は、走行台車1の位置に対応して推奨される送信レートによって無線基地局2と走行台車1とが無線通信を行った場合の通信品質を、通信品質情報として取得する。送信レートテーブル更新部36は、通信品質取得部35により取得された通信品質情報に基づいて、CTRL記憶部32に記憶された送信レートテーブルを更新する。
【0117】
これにより、無線通信環境の変化等に応じて、通信管理部3が無線基地局2に対して推奨する送信レートを柔軟に変化させることができる。この結果、無線基地局2は、無線通信に関する状況が変化しても、管理側送信情報を安定して走行台車1に送信することができる。
【0118】
また、本実施形態の通信システム100において、無線基地局2は、AP制御部23を備える。AP制御部23は、第2AP通信部22を介して通信管理部3から受信した送信レート情報から、送信レートを取得する。第1AP通信部21は、AP制御部23により送信レート情報から取得された送信レートが複数ある場合、複数の送信レートのうち予め通信管理部3により選択された送信レートで走行台車1との無線通信を行う。
【0119】
これにより、推奨された複数の送信レートを場合に応じて使い分けながら、無線基地局2が管理側送信情報を走行台車1に送信することができる。
【0120】
また、本実施形態の通信システム100において、通信管理部3は、CTRL通信部31を介して、複数の無線基地局2との間で通信が可能である。走行台車1の走行位置により、無線通信相手の無線基地局2を切り換える必要が生じた場合、CTRL制御部33は、CTRL通信部31を介して、走行台車1の無線通信相手の切換先である無線基地局2に、走行台車1が走行する位置に対応する送信レート情報と、管理側送信情報と、を送信する。
【0121】
これにより、走行台車1の無線通信相手となる無線基地局2が切り換えられても、切換先の無線基地局2は、通信管理部3によって推奨される送信レートを用いて、走行台車1との良好な無線通信を即座に開始することができる。
【0122】
また、本実施形態の通信システム100において、送信レートテーブルは、予め走行台車1が、各位置において、異なる複数の送信レートで無線基地局2との間で無線通信を行い、当該無線通信に用いられた複数の送信レートのうち、所定以上の品質で通信できた少なくとも1つの送信レートと、位置毎の前記位置情報と、を対応付けて作成される。
【0123】
これにより、推奨される送信レートを的確に決めることができる。
【0124】
また、本実施形態の通信システム100において、CTRL通信部31が無線基地局2へ送信する通信フレームに、送信レートを示す送信レート情報と、管理側送信情報と、が記述される。
【0125】
これにより、2つの情報を1つの通信フレームにまとめることで、情報の取扱いが容易になるとともに、効率的な通信が可能になる。
【0126】
また、本実施形態の通信システム100において、送信レート情報及び管理側送信情報は、何れも、通信フレームにおけるデータ本体部に記述される。
【0127】
これにより、特別な構造の通信フレームを用いることなく、無線基地局2及び走行台車1への送信レートの指示を実現することができる。
【0128】
次に、上記実施形態の第1変形例を説明する。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0129】
本変形例の通信システム100においては、通信管理部3は、走行台車1又は無線基地局2が管理側送信情報を受信する時点での走行台車1の走行位置を推定する。この推定は、走行台車1が直近に位置センサによって検出した自身の走行位置を基準にして、当該検出のタイミング以降に走行台車1が走行した方向、走行速度等の情報を利用して行うことができる。走行台車1が作成して通信管理部3に送信する台車側送信情報には、上記の推定に必要な情報が含まれている。
【0130】
通信管理部3は、直近の台車側送信情報から得られた走行台車1の走行位置の代わりに、上記のように推定された走行台車1の走行位置に対応する送信レート情報を、管理側送信情報とともに無線基地局2に送信する。
【0131】
これにより、走行台車1の実際の走行位置に応じた送信レート情報を走行台車1に指示することができる。
【0132】
次に、上記実施形態の第2変形例を説明する。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0133】
本変形例の通信システム100においては、無線基地局2は、管理側送信フレームに含まれる送信レート情報のうち、例えば第1番目の送信レートで走行台車1との無線通信を行う。
【0134】
走行台車1は、無線基地局2から管理側送信フレームを受信しても、当該管理側送信フレームから送信レートを取得しない。走行台車1は、無線基地局2が走行台車1へ管理側送信情報を送信するときのプリアンブルに含まれている情報等を読み取ることで、送信レートを取得する。即ち、この送信レートは、無線基地局2が無線通信で実際に用いた送信レートである。走行台車1は、管理側送信フレームから得られる送信レートではなく、実際の通信から取得した送信レートと同じ送信レートを用いて、無線基地局2との無線通信を行う。
【0135】
これにより、走行台車1は、上述の実施形態等と同様に、無線基地局2と同じ送信レートで無線通信を行うことができる。この構成では、無線基地局2から走行台車1へ送信する通信フレームにおいて、送信レート情報の記述を省略することもできる。
【0136】
次に、上記実施形態の第3変形例を説明する。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0137】
本変形例においては、送信レート情報は、複数の送信レートではなく、最も推奨される1つだけの送信レートから構成される。通信管理部3は、この送信レート情報を、管理側送信情報とともに無線基地局2に送信する。本変形例では、L2フレームのデータ本体において、先頭の6バイトだけ(DBPS値の1つ分だけ)が送信レート情報のために確保される。無線基地局2は、当該送信レートに従って、管理側送信情報を走行台車1に送信する。
【0138】
通信管理部3の通信品質取得部35は、各種の集計処理を行うことにより、通信品質情報を取得する。例えば、通信品質取得部35は、通信管理部3が管理側送信情報を送信した回数と、送信してから所定時間内に通信管理部3が台車側送信情報を受信できた回数と、をカウントする。通信品質取得部35は、2つのカウント値の比率を計算することにより、通信品質情報を取得する。
【0139】
通信品質取得部35は、得られた通信品質情報を監視する。通信品質の低下を検出した場合、通信管理部3が無線基地局2に送信する送信レート情報としては、2番目に推奨されるものとして送信レートテーブルに記憶されていた送信レートが使用される。また、通信管理部3は、今まで使用していた送信レートについて検出された通信品質の低下を反映するように、CTRL記憶部が記憶する送信レートテーブルを送信レートテーブル更新部36により更新する。
【0140】
これにより、全ての送信レートの管理を通信管理部3側で行うため、走行台車1及び無線基地局2で行う処理をより簡素化することができ、走行台車1及び無線基地局2の構成をよりシンプルにすることができる。
【0141】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0142】
送信レート情報は、通信フレームのデータ本体の先頭に代えて、任意の位置、例えば末尾に記述されても良い。通信フレームのデータ本体以外の部分に送信レート情報が記述されても良い。管理側送信情報と、送信レート情報とが、別々の通信フレームで送信されても良い。
【0143】
送信レートテーブルにおいて、走行台車1の1つの位置につき、推奨される送信レートを1つだけ記憶するように構成されても良い。この場合、送信レート情報は、常に1つだけの送信レートから構成される。
【0144】
軌道5は、同一平面内に限定されず、例えば3次元空間内に立体的に設けられても良い。
【0145】
図3に示すように、送信レートテーブルにおいて、送信レート毎に対応する通信品質情報が、送信レートと対応付けられて記録されている場合を考える。この場合、1つの位置に対応する複数の送信レートを、推奨される順に並べなくても良い。送信レートが事前にソートされていなくても、通信管理部3のCTRL制御部33は、各送信レートの通信品質情報を比較することにより、最も通信品質が良い1又は複数の送信レートを取得することができる。この構成で、通信品質取得部35により新しい通信品質情報が得られた場合には、送信レートテーブル更新部36は、送信レートテーブルにおいて送信レートの並べ替えを行わずに、単に新しい通信品質情報を反映させる。
【0146】
送信情報生成部34は、送信レートテーブルを参照して求められた、走行台車1の現在の位置に対応して推奨される1又は複数の送信レートに基づく送信レート情報を、当該走行台車1へ送信される管理側送信情報に記述するものであったが、送信レートテーブルを参照して求められた、走行台車1の将来の位置に対応して推奨される1又は複数の送信レートに基づく送信レート情報を、当該走行台車1へ送信される管理側送信情報に記述するものであってもよい。ここで、走行台車1の将来の位置は、例えば、位置センサにより求められる走行台車1の現在の位置及び当該走行台車1の速度等に基づいて算出される、当該走行台車1が所定時間後に存在すると予想される位置である。
【0147】
走行位置情報の取得は、上記に限定されず、例えば、軌道5に貼られたバーコード等のマーキング情報を光学的に読み取ることで行われても良いし、屋内GNSS等により行われても良い。
【0148】
送信レートテーブルは、走行台車1及び通信管理部3の両方で記憶されても良い。この場合、走行台車1は、自車の位置に基づいて、記憶された送信レートテーブルから読み出した送信レートで無線通信を行う。これにより、走行台車1は、遅延なく、自車の位置において推奨される送信レートで常に無線通信を行うことができる。
【0149】
送信レート情報について直近のものから変更する必要がないとき、管理側送信フレームにおいて、送信レート情報の記述が省略されても良い。この場合、無線基地局2及び走行台車1は、無線通信時の送信レートを、直近に受信した管理側送信フレームに記述された送信レート情報に基づいて定める。
【0150】
通信管理部3と無線基地局2との間の通信が、無線によって行われても良い。
【符号の説明】
【0151】
1 走行台車
11 台車無線通信部
12 台車制御部
2 無線基地局
21 第1AP通信部
22 第2AP通信部
23 AP制御部
3 通信管理部(コントローラ)
31 CTRL通信部
32 CTRL記憶部
33 CTRL制御部
34 送信情報生成部
35 通信品質取得部
36 送信レートテーブル更新部
4 有線LAN
5 軌道
6 搬送管理部
図1
図2
図3
図4
図5