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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】耐火部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20230523BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
E04B1/94 F
F16L5/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019011023
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020117965
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000165996
【氏名又は名称】株式会社古河テクノマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 道雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 周幸
(72)【発明者】
【氏名】灘友 滉
(72)【発明者】
【氏名】大庭 啓彦
(72)【発明者】
【氏名】三栖 厚男
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-025089(JP,U)
【文献】特開2004-232452(JP,A)
【文献】特開2011-052448(JP,A)
【文献】特開平11-279312(JP,A)
【文献】国際公開第2015/055855(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
F16L 5/00-5/04
A62C 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の区画部に形成された貫通孔の内周面と、該貫通孔に挿通される樹脂製の配管の外周面との間に配置され、火災時に上記貫通孔を介した延焼を抑制する耐火部材において、
上記貫通孔の内周面と上記配管の外周面との間において上記貫通孔の中心線方向に互いに間隔をあけて配置され、火災時の熱によって膨張する第1及び第2熱膨張性部材と、
上記第1及び第2熱膨張性部材を保持する不燃材料からなる保持部材と、
上記第1熱膨張性部材と上記貫通孔の内周面との間に配置され、上記第1熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第1外周側シール材と、
上記第1熱膨張性部材と上記配管の外周面との間に配置され、上記第1熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第1内周側シール材と、
上記第2熱膨張性部材と上記貫通孔の内周面との間に配置され、上記第2熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第2外周側シール材と、
上記第2熱膨張性部材と上記配管の外周面との間に配置され、上記第2熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第2内周側シール材とを備え
上記第1外周側シール材と上記第2外周側シール材とは、上記配管の延びる方向に互いに間隔をあけて配置され、
上記第1内周側シール材と上記第2内周側シール材とは、上記配管の延びる方向に互いに間隔をあけて配置されていることを特徴とする耐火部材。
【請求項2】
貫通孔が形成された建物の区画部に設けられ、火災時に上記貫通孔を介した延焼を抑制する耐火部材において、
上記貫通孔から中心線方向の両側にそれぞれ突出した状態で上記貫通孔の中心線方向に互いに間隔をあけて配置され、火災時の熱によって膨張する第1及び第2熱膨張性部材と、
上記第1及び第2熱膨張性部材を保持する不燃材料からなる保持部材と、
上記第1熱膨張性部材と上記貫通孔の内周面との間に配置され、上記第1熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第1外周側シール材と、
上記第1熱膨張性部材と上記貫通孔に挿通される樹脂製の配管の外周面との間に配置され、上記第1熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第1内周側シール材と、
上記第2熱膨張性部材と上記貫通孔の内周面との間に配置され、上記第2熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第2外周側シール材と、
上記第2熱膨張性部材と上記配管の外周面との間に配置され、上記第2熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第2内周側シール材とを備え
上記第1外周側シール材と上記第2外周側シール材とは、上記配管の延びる方向に互いに間隔をあけて配置され、
上記第1内周側シール材と上記第2内周側シール材とは、上記配管の延びる方向に互いに間隔をあけて配置されていることを特徴とする耐火部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の耐火部材において、
上記貫通孔の内周面と、上記貫通孔に挿通される配管の外周面との間に配置される断熱材を備えていることを特徴とする耐火部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の耐火部材において、
上記保持部材は網状部材であることを特徴とする耐火部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の耐火部材において、
上記熱膨張性部材を覆うフィルム状または箔状の不燃部材を備えていることを特徴とする耐火部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の耐火部材において、
上記耐火部材は、上記貫通孔に挿通される配管の外周面に沿った形状に変形する可撓性を有していることを特徴とする耐火部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の配管が貫通する貫通孔を有する区画部に設けられる耐火部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば集合住宅のような建物の場合、床に貫通孔を設けて排水管等の配管を貫通孔内に配置し、排水を上の階の部屋から下へ流すことができるようになっている。一般的に、配管の外径は貫通孔の内径よりも小さくなっているので配管の外周面と貫通孔の内周面との間には隙間ができてしまう。この隙間には、例えば特許文献1、2にそれぞれ開示されている耐火部材を配設して下の階の部屋で火災が発生した場合に炎が上の階の部屋に達しないようにすることが行われている。
【0003】
特許文献1の部材は、貫通孔の内周面と配管の外周面との間に装着可能な厚みを有し、かつ、配管の外周に沿って巻くことが可能な長さを有する熱膨張性耐熱シール材と、このシール材の側面に貼り付けられる粘着テープとを備えている。この特許文献1の部材を用いて施工する際には、配管の外周面に熱膨張性耐熱シール材を巻き付け、この状態を粘着テープで保持する。熱膨張性耐熱シール材と、貫通孔の内周面との間には隙間があるので、その隙間にモルタルや耐火パテ等の充填材を充填して隙間を塞ぐ。
【0004】
特許文献2の部材は、熱膨張体と、熱膨張体を変形させた際に形状を維持する形状維持部と、係止具とを備えている。この特許文献2の部材を用いて施工する際には、熱膨張体を貫通孔内に配置して係止具を貫通孔の上縁部に係止させる。その後、貫通孔の内周面と配管の外周面との隙間に上方からコーキング材を充填して隙間を塞ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-240854号公報
【文献】特開2017-109069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように配管の外周面と貫通孔の内周面との隙間に熱膨張性部材を設けることで火災が発生した部屋から別の部屋への延焼を抑制するようにしているが、その延焼抑制の効果をより一層向上させたいという強い要求がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱膨張性部材による封止効果を高めて延焼抑制の効果をより一層向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、建物の区画部に形成された貫通孔の内周面と、該貫通孔に挿通される配管の外周面との間に配置され、火災時に上記貫通孔を介した延焼を抑制する耐火部材において、上記貫通孔の内周面と上記配管の外周面との間において上記貫通孔の中心線方向に互いに間隔をあけて配置され、火災時の熱によって膨張する第1及び第2熱膨張性部材と、上記第1及び第2熱膨張性部材を保持する不燃材料からなる保持部材と、上記第1熱膨張性部材と上記貫通孔の内周面との間に配置され、上記第1熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第1外周側シール材と、上記第1熱膨張性部材と上記配管の外周面との間に配置され、上記第1熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第1内周側シール材と、上記第2熱膨張性部材と上記貫通孔の内周面との間に配置され、上記第2熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第2外周側シール材と、上記第2熱膨張性部材と上記配管の外周面との間に配置され、上記第2熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第2内周側シール材とを備え、上記第1外周側シール材と上記第2外周側シール材とは、上記配管の延びる方向に互いに間隔をあけて配置され、上記第1内周側シール材と上記第2内周側シール材とは、上記配管の延びる方向に互いに間隔をあけて配置されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、複数の熱膨張性部材が区画部の貫通孔の中心線方向に互いに間隔をあけて配置されているので、これら熱膨張性部材の間には隙間が形成されることになる。例えば、区画部によって区画された一方の部屋で火災が発生した場合、その火災の熱により、一方の部屋側に位置する熱膨張性部材が膨張する。このとき、他方の部屋側に位置する熱膨張性部材との間には隙間が形成されているので、一方の部屋の熱が他方の部屋側の熱膨張性部材に伝達しにくくなる。また、膨張する熱膨張性部材を貫通孔内へ誘導して熱膨張性部材が貫通孔の内部において膨張して熱膨張性部材によって貫通孔が閉塞され、貫通孔を介した延焼が抑制される。他方の部屋で火災が発生した場合も同様に、一方の部屋への延焼が抑制される。
【0010】
第2の発明は、貫通孔が形成された建物の区画部に設けられ、火災時に上記貫通孔を介した延焼を抑制する耐火部材において、上記貫通孔から中心線方向の両側にそれぞれ突出した状態で上記貫通孔の中心線方向に互いに間隔をあけて配置され、火災時の熱によって膨張する第1及び第2熱膨張性部材と、上記第1及び第2熱膨張性部材を保持する不燃材料からなる保持部材と、上記第1熱膨張性部材と上記貫通孔の内周面との間に配置され、上記第1熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第1外周側シール材と、上記第1熱膨張性部材と上記貫通孔に挿通される配管の外周面との間に配置され、上記第1熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第1内周側シール材と、上記第2熱膨張性部材と上記貫通孔の内周面との間に配置され、上記第2熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第2外周側シール材と、上記第2熱膨張性部材と上記配管の外周面との間に配置され、上記第2熱膨張性部材に固定された弾性材料からなるスポンジ製の第2内周側シール材とを備え、上記第1外周側シール材と上記第2外周側シール材とは、上記配管の延びる方向に互いに間隔をあけて配置され、上記第1内周側シール材と上記第2内周側シール材とは、上記配管の延びる方向に互いに間隔をあけて配置されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、複数の熱膨張性部材が互いに離れた状態で貫通孔から中心線方向の両側にそれぞれ突出することになる。例えば、区画部によって区画された一方の部屋で火災が発生した場合、その火災の熱により、一方の部屋側に位置する熱膨張性部材が膨張する。この熱膨張性部材は保持部材によって保持されているので、熱膨張性部材が落下することなく、貫通孔に向かって膨張して当該貫通孔が熱膨張性部材によって閉塞される。これにより、貫通孔を介した延焼が抑制される。他方の部屋で火災が発生した場合も同様に、一方の部屋への延焼が抑制される。
【0012】
また、シール材によって貫通孔の内周面と配管の外周面との間がシールされる。よって、不定形な充填材を貫通孔の内周面と配管の外周面との間に充填する作業が不要になり、現場での施工作業性が良好になるとともに、施工時間が短くなる。また、シール材を貫通孔の内周面と配管の外周面との間に配置することで、配管が偏心することなく、貫通孔の中心に来るように調整することができる。
【0013】
第3の発明は、上記貫通孔の内周面と、上記貫通孔に挿通される配管の外周面との間に配置される断熱材を備えていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、例えば一方の部屋で火災が発生した場合、一方の部屋の熱が断熱材によって他方の部屋に伝達されにくくなるので、延焼抑制の効果がより一層高まる。
【0015】
また、上記貫通孔の内周面と、上記貫通孔に挿通される配管の外周面との間に配置される熱膨張性部材を備えていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、熱膨張性部材が貫通孔の内部において膨張して熱膨張性部材によって貫通孔が閉塞されるので、延焼抑制の効果がより一層高まる。
【0017】
また、上記貫通孔の内周面と上記配管の外周面との間に配置される上記熱膨張性部材と、上記貫通孔から中心線方向の両側にそれぞれ突出した上記熱膨張性部材とは、上記貫通孔の中心線方向に互いに間隔をあけて配置されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、隣合うように配置される複数の熱膨張性部材の間に隙間が形成されているので、例えば一方の部屋で火災が発生した場合に、その熱が他方の部屋側の熱膨張性部材に伝達しにくくなる。また、熱膨張性部材が膨張するスペースを確保しておくことが可能になる。
【0019】
第4の発明は、上記保持部材は網状部材であることを特徴とする。
【0020】
第5の発明は、上記熱膨張性部材を覆うフィルム状または箔状の不燃部材を備えていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、熱膨張性部材を不燃部材で覆っておくことで、熱膨張性部材の膨張時に熱膨張性部材が部分的に落下しにくくなる。また、不燃部材がフィルム状または箔状で薄いものであることから熱膨張性部材の膨張を阻害することはない。
【0022】
第6の発明は、上記耐火部材は、上記貫通孔に挿通される配管の外周面に沿った形状に変形する可撓性を有していることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、耐火部材の形状を配管の外周面に沿った形状にすることが容易に行えるようになる。
【0024】
また、建物の区画部に形成された貫通孔の内周面と、該貫通孔に挿通される配管の外周面との間に、火災時の熱によって膨張する複数の熱膨張性部材が上記貫通孔の中心線方向に互いに間隔をあけて配置され、複数の上記熱膨張性部材が不燃材料からなる保持部材によって保持されていることを特徴とする耐火構造である。
【0025】
また、複数の熱膨張性部材が、建物の区画部に形成された貫通孔から中心線方向の両側にそれぞれ突出した状態で上記貫通孔の中心線方向に互いに間隔をあけて配置され、複数の上記熱膨張性部材が不燃材料からなる保持部材によって保持されていることを特徴とする耐火構造である。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明によれば、保持部材で保持した状態の複数の熱膨張性部材を貫通孔の内周面と配管の外周面との間において貫通孔の中心線方向に互いに間隔をあけて配置したので、火災時に膨張する熱膨張性部材を貫通孔内へ誘導して貫通孔の内部において膨張させることができるとともに、熱伝達を抑制することができる。これにより、熱膨張性部材による封止効果を高めることができるので、延焼抑制の効果をより一層向上させることができる。
【0027】
第2の発明によれば、保持部材で保持した状態の複数の熱膨張性部材を貫通孔の両側からそれぞれ突出させるようにしたので、火災時に膨張する熱膨張性部材を落下させることなく貫通孔へ向けて誘導して貫通孔を閉塞することができる。これにより、熱膨張性部材による封止効果を高めることができるので、延焼抑制の効果をより一層向上させることができる。
【0028】
また、シール材によって配管の外周面と貫通孔の内周面との間をシールすることができるので、現場での施工作業性を良好にすることができるとともに、施工時間を短くすることができる。
【0029】
第3の発明によれば、断熱材を配管の外周面と貫通孔の内周面との間に配置することで、延焼抑制の効果をより一層高めることができるとともに、遮煙性能も得ることができる。
【0030】
第4の発明によれば、保持部材を網状部材としたので簡単かつ安価な構成としながら、火災時の膨張を阻害することなく熱膨張性部材を保持できる。
【0031】
第5の発明によれば、熱膨張性部材を覆うフィルム状または箔状の不燃部材を備えているので、火災時に熱膨張性部材の膨張を阻害することなく、熱膨張性部材の部分的な落下を防止することができる。
【0032】
第6の発明によれば、耐火部材の形状を配管の外周面に沿った形状にすることが容易になるので、現場での施工作業性をより一層良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態1に係る耐火部材を外周側から見た図である。
図2】実施形態1に係る耐火部材を内周側から見た図である。
図3】実施形態1に係る耐火部材の端面図である。
図4】実施形態1に係る耐火構造の縦断面図である。
図5】実施形態2に係る図1相当図である。
図6】実施形態2に係る図2相当図である。
図7】実施形態2に係る図3相当図である。
図8】実施形態2に係る図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
(実施形態1)
図1図3は、本発明の実施形態1に係る耐火部材1を示すものであり、図4は、本発明の実施形態1に係る耐火構造Aを示すものである。この耐火部材1は、図4に示すように、建物の区画部100に形成された貫通孔101の内周面101aと、該貫通孔101に挿通される配管102の外周面102aとの間に配置されて使用される部材である。この耐火部材1を貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置しておくことで、火災時に貫通孔101を介した延焼を抑制することができる。この実施形態では、建物が集合住宅である場合について説明するが、建物としては、集合住宅以外であってもよく、同一階に少なくとも2つの部屋を有する戸建て住宅、事務所、工場、店舗等であってもよい。また、区画部100は、例えば強化石膏ボードやALC((軽量気泡コンクリート))等の耐火性を有する壁を挙げることができるが、これに限られるものではなく、床であってもよい。図4に示す例では、区画部100が2枚の強化石膏ボードで構成されている例であり、1枚の強化石膏ボードの厚みは約21mmである。
【0036】
区画部100は鉛直に延びており、区画部100よりも図4の左側が一方の部屋R1とされ、区画部100よりも図4の右側が他方の部屋R2とされている。したがって、区画部100によって一方の部屋R1と他方の部屋R2とが区画されている。この区画部100の所定の部位に水平方向に貫通する貫通孔101が形成されている。貫通孔101を介して一方の部屋R1と他方の部屋R2とが連通可能になっている。貫通孔101は断面が略円形となっている。
【0037】
また、配管102は、例えば排水管等を挙げることができるが、これに限られるものではない。配管102は、貫通孔101に挿通された状態で一方の部屋R1から他方の部屋R2まで略水平に延びている。配管102は、例えば塩化ビニル製の管103と、管103の外周面を覆うように設けられる不織布104と、不織布104の外周面を覆うように設けられるゴムシート105とを備えた多重構造にすることができるが、これに限られるものではない。また、配管102は樹脂製とすることができる。樹脂製とした場合、火災の熱によって縮径したり、焼け落ちたりする可能性があるが、後述するように熱膨張性部材2が貫通孔101の内部で膨張することで貫通孔101を閉塞して上の階への延焼が抑制される。
【0038】
配管102の外径は、貫通孔101の内径よりも小さく設定されており、このため、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間には全周に亘って所定の隙間が形成されることになる。この隙間を塞ぐように上記耐火部材1が設置されることによって本発明の耐火構造Aを構成することができる。
【0039】
尚、この実施形態の説明では、耐火構造Aを構成した状態において耐火部材1の配管102側となる側を「内周側」といい、反対側、即ち耐火部材1の貫通孔101側を「外周側」というものとする。
【0040】
(耐火部材1の構成)
耐火部材1は、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置され、火災時の熱によって膨張する第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bと、第1外周側シール材3A及び第1内周側シール材4Aと、第2外周側シール材3B及び第2内周側シール材4Bと、保持部材5と、フィルム状不燃部材6とを備えている。
【0041】
第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bは、建物に使用されている熱膨張性部材であればよく、種類は特に限定されないが、火災時の熱によって膨張する部材を挙げることができる。例えば、膨張黒鉛とホウ酸との化合物を第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bとして使用することができる。この膨張黒鉛としては、炎で加熱したときに例えば100倍以上に膨張するものを使用することができる。
【0042】
第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bの性状は、特に限定されるものではないが、例えば、パテ状、ペースト状等のように、長期間に亘って垂れ落ちない性状とすることができる。好ましいのは、第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bを、数mm厚のテープ状に成形しておくことであり、外力を加えたときに撓ませることが可能な可撓性を有しているのが好ましい。
【0043】
このような性質を持つ第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bは、例えば柔軟なゴムまたは熱可塑性エラストマーに、膨張黒鉛、ホウ砂、可塑剤等を混合することによって得ることができる。ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソブレンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム等を挙げることができる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。また、第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bとしては、例えば、厚みが2~8mm(4mmが好ましい)であり、かつ、膨張黒鉛を配合したブチルゴムシーリング材が好ましい。
【0044】
第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bは、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間において貫通孔101の中心線方向に互いに間隔をあけて配置されるとともに、貫通孔101の内周面101aに沿って周方向に連続して延びるように配置される。
【0045】
第1熱膨張性部材2Aは、貫通孔101内において一方の部屋R1側に配置される部分を有しており、この貫通孔101内に配置される部分と、当該一方の部屋R1に向けて貫通孔101から突出する部分も有している。貫通孔101内に配置される部分から一方の部屋R1に向けて突出する部分まで連続している。第2熱膨張性部材2Bは、貫通孔101内において他方の部屋R2側に配置される部分を有しており、この貫通孔101内に配置される部分と、当該他方の部屋R2に向けて貫通孔101から突出する部分も有している。貫通孔101内に配置される部分から他方の部屋R2に向けて突出する部分まで連続している。
【0046】
第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bにおける貫通孔101内に配置される部分の長さ(貫通孔101の中心線方向の寸法)は10mm以上30mm以下に設定することができる。また、第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bにおける貫通孔101から突出する部分の長さ(貫通孔101の中心線方向の寸法)は、例えば30mm以上50mm以下に設定することができる。また、第1熱膨張性部材2Aと第2熱膨張性部材2Bとの間隔は、例えば当該熱膨張性部材2A、2Bの厚みと同程度の寸法以上とするのが好ましく、この例では4mm以上である。第1熱膨張性部材2Aと第2熱膨張性部材2Bとの間隔は、10mm程度にすることができ、また、上限寸法は20mmとすることができる。第1熱膨張性部材2Aと第2熱膨張性部材2Bとの間隔を当該熱膨張性部材2A、2Bの厚みと同程度以上にしておくことで、例えば一方の部屋R1で火災が発生した場合に、その熱が第2熱膨張性部材2Bに伝達されにくくなる。
【0047】
図1及び図2に示すように、保持部材5は、複数の開口5aを有するとともに、第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bを保持する部材である。保持部材5は、不燃材料からなる網状部材、具体的には金網(ラス金網)等を使用することができるが、これ以外にも、板材に複数の開口を形成した部材、針金を編んで作った部材等で構成することができる。
【0048】
保持部材5は、第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bの内周側に配置することができる。保持部材5の一部が第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bに埋め込まれることによって第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bが保持部材5に固定されることになる。これにより、第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2を所定の間隔をあけた状態で維持することができる。保持部材5は、熱膨張性部材2A、2Bの全体に亘るように形成されている。また、保持部材5における第1熱膨張性部材2Aと第2熱膨張性部材2Bとの間の部分は、熱膨張性部材2A、2Bから露出している。
【0049】
保持部材5には、耐火部材1の外周側へ突出する係止部5bが設けられている。この係止部5bは、保持部材5の一部を外周側へ向けて屈曲させることによって形成されており、保持部材5の本体部分と一体化されている。係止部5bは、耐火部材1を設置する際に、貫通孔101の周縁部に対して外方から係合することによって耐火部材1の位置ずれを抑制するためのものである。また、係止部5bは、耐火部材1を区画部100に固定するための固定部としても利用することができる。
【0050】
保持部材5としては、例えば、0.20~1.0kg/m(0.5kg/mが好ましい)の亜鉛メッキ鋼線からなる金網を挙げることができる。また、保持部材5の端部は曲げ加工されており、作業者の怪我を防止している。
【0051】
第1外周側シール材3A及び第1内周側シール材4Aは第1熱膨張性部材2Aに固定され、また、第2外周側シール材3B及び第2内周側シール材4Bは第2熱膨張性部材2Bに固定されている。第1外周側シール材3Aは、第1熱膨張性部材2Aの外周側における貫通孔101内に配置される部分に接着されている。第1内周側シール材4Aは、第1熱膨張性部材2Aの内周側における貫通孔101内に配置される部分に接着されている。したがって、第1外周側シール材3A及び第1内周側シール材4Aは、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置されることになる。また、第2外周側シール材3Bは、第2熱膨張性部材2Bの外周側における貫通孔101内に配置される部分に接着されている。第2内周側シール材4Bは、第2熱膨張性部材2Bの内周側における貫通孔101内に配置される部分に接着されている。したがって、第2外周側シール材3B及び第2内周側シール材4Bは、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置されることになる。
【0052】
第1外周側シール材3A、第1内周側シール材4A、第2外周側シール材3B及び第2内周側シール材4Bは、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの隙間を覆って気密性を確保するための弾性材料からなる部材である。これらシール材3A、3B、4A、4Bは、例えばゴム製の発泡材(スポンジ)等を使用することができる。発泡材を使用する場合にはゴム製のものが好ましい。また、シール材3A、3B、4A、4Bは、保持部材5に対して例えば気密性を有する粘着テープ等によって固定することもできる。シール材3A、3B、4A、4Bと保持部材5とを密着させ、シール材3A、3B、4A、4Bと保持部材5との間には隙間ができないようにすることもできる。これにより、火災時の煙等が貫通孔101を通って別の部屋に侵入するのを抑制することができる。
【0053】
シール材3A、3B、4A、4Bの断面形状は略矩形状にすることができるが、これに限られるものではない。また、第1外周側シール材3A及び第2外周側シール材3Bの厚みは、第1内周側シール材4A及び第2内周側シール材4Bの厚みと同程度にすることができるが、一方を他方よりも厚くしてもよい。第1外周側シール材3A及び第2外周側シール材3Bの厚みと、第1内周側シール材4A及び第2内周側シール材4Bの厚みとを合わせた寸法が、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの隙間の寸法よりも長く設定されている。これにより、シール材3A、3B、4A、4Bを貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置した際に圧縮して弾性変形させることができる。
【0054】
シール材3A、3B、4A、4Bとしては、例えば、密度0.02~0.10g/cm(0.06g/cmが好ましい)のEPDMスポンジ、CRスポンジ、ウレタンスポンジなどスポンジ類を挙げることができるが、これらに限られるものではなく、シール性を発揮することができる弾性材であればよい。
【0055】
シール材3A、3B、4A、4Bの代わり、または、シール材3A、3B、4A、4Bに加えて、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置される断熱材を備えていてもよい。断熱材としては、例えばグラスウールやロックウール等を用いることができる。
【0056】
フィルム状不燃部材6は、第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bを覆う部材であり、例えばアルミニウム箔を有する基材に粘着層が設けられた不燃性のアルミテープ等で構成することができるが、これに限られるものではなく、薄い金属材に粘着層や接着層を設けたフィルム状の不燃部材や、箔状の不燃部材等を使用することができる。フィルム状不燃部材6は、必要に応じて設ければよい。
【0057】
第1熱膨張性部材2Aを覆うフィルム状不燃部材6は、第1熱膨張性部材2Aの内周側の面から外周側の面まで連続し、第1熱膨張性部材2Aにおける第1外周側シール材3Aの近傍まで延びている。第2熱膨張性部材2Bを覆うフィルム状不燃部材6は、第2熱膨張性部材2Bの内周側の面から外周側の面まで連続し、第2熱膨張性部材2Bにおける第2外周側シール材3Bの近傍まで延びている。フィルム状不燃部材6は2枚設けてもよいし、1枚であってもよい。フィルム状不燃部材6としては、例えば、厚みが50~500μm(200μmが好ましい)のアルミ箔、銅箔等を挙げることができる。
【0058】
上記のように、耐火部材1を構成する各部材は、一般の作業者が手で力を加えると容易に変形させることができるものであり、従って、耐火部材1は、配管102の外周面102aに沿った形状に変形する可撓性を有している。
【0059】
また、1つの耐火部材1で配管102の外周面102aを全周に亘って覆うことができるものであってもよいし、配管102の外周面102aに沿うように配置される複数の耐火部材1を備えた構成であってもよい。例えば、配管102の外周面102aの周長の1/2の長さを持った耐火部材1を2つ組み合わせることで、配管102の外周面102aの全周に亘って耐火部材1を配置することができる。3つ以上の耐火部材1を組み合わせることもできる。
【0060】
(耐火部材1の施工要領)
次に、上記のように構成された耐火部材1の施工要領について説明する。配管102が貫通孔101に挿通された後に、耐火部材1を設置する方法を後施工と呼ぶ。以下の説明では後施工について説明するが、本発明は後施工だけでなく、配管102が挿通される前の貫通孔101の内部に耐火部材1を固定し、その後、配管102を貫通孔101に挿通する施工方法にも対応できる。
【0061】
まず、耐火部材1を配管102の外周面102aに沿った形状に変形させる。このとき、2つの耐火部材1を使用することもでき、この場合、1つの耐火部材1は変形後に半円弧に近い形状をなす。
【0062】
その後、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に耐火部材1を差し込んでいき、外周側シール材3A、3B及び内周側シール材4A、4Bを貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に押し込む。貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置された外周側シール材3A、3B及び内周側シール材4A、4Bは、弾性変形して圧縮された状態になるので、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとに全周に亘って密着して隙間が覆われる。このとき、保持部材5の係止部5bが貫通孔101の周縁部に位置する。係止部5bを貫通孔101の周縁部に係合させることで、耐火部材1を位置決めすることができる。
【0063】
以上のようにして、建物の区画部100に形成された貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に、熱膨張性部材2A、2Bとシール材3A、3B、4A、4Bとが配置された耐火構造Aを構成することができる。上述したように、一方の部屋R1から差し込むだけで施工することができるので、施工性が良好である。尚、他方の部屋R2から施工することもできる。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bを区画部100の貫通孔101の中心線方向に互いに間隔をあけて配置しているので、第1熱膨張性部材2A及び第2熱膨張性部材2Bの間には隙間を形成することができる。例えば、区画部100によって区画された一方の部屋R1で火災が発生した場合、その火災の熱により、一方の部屋R1側に位置する第1熱膨張性部材2Aが膨張する。このとき、他方の部屋R2側に位置する第2熱膨張性部材2Bとの間に隙間が存在していることにより、一方の部屋R1の熱が他方の部屋R2側の第2熱膨張性部材2Bに伝達しにくくなる。また、膨張する第1熱膨張性部材2Aを貫通孔101内へ誘導して第1熱膨張性部材2Aが貫通孔101の内部において膨張し、第1熱膨張性部材2Aによって貫通孔101が閉塞され、貫通孔101を介した延焼が抑制される。他方の部屋R2で火災が発生した場合も同様に、一方の部屋R1への延焼が抑制される。また、遮煙性能を得ることもできる。
【0064】
また、シール材3A、3B、4A、4Bによって配管102の外周面102aと貫通孔101の内周面101aとの間をシールすることができるので、現場での施工作業性を良好にすることができるとともに、施工時間を短くすることができる。
【0065】
(実施形態2)
図5図7は、本発明の実施形態2に係る耐火部材1を示し、また、図8は、本発明の実施形態2に係る耐火構造Aを示すものである。この実施形態2では、区画部100の構造及び熱膨張性部材の配置が実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0066】
実施形態2の区画部100は、ALCからなる壁であり、実施形態1の区画部100に比べて厚く、厚みは75mm程度ある。
【0067】
実施形態2の耐火部材1は、貫通孔101が形成された建物の区画部100に設けられ、火災時に貫通孔101を介した延焼を抑制するための部材であり、貫通孔101から中心線方向の両側にそれぞれ突出した状態で貫通孔101の中心線方向に互いに間隔をあけて配置され、火災時の熱によって膨張する第1熱膨張性部材2C及び第2熱膨張性部材2Dを備えるとともに、第1熱膨張性部材2C及び第2熱膨張性部材2Dを保持する不燃材料からなる保持部材5(図8に示す)を備えている。さらに、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置される第3熱膨張性部材2E及び第4熱膨張性部材2Fも備えている。
【0068】
すなわち、第1熱膨張性部材2Cは、貫通孔101から一方の部屋R1側へ突出し、また、第2熱膨張性部材2Dは、貫通孔101から他方の部屋R1側へ突出している。第3熱膨張性部材2Eは、第1熱膨張性部材2Cと第2熱膨張性部材2Dの間において内周側に設けられ、また、第4熱膨張性部材2Fは、第1熱膨張性部材2Cと第2熱膨張性部材2Dの間において外周側に設けられている。第3熱膨張性部材2E及び第4熱膨張性部材2Fは、保持部材5に保持されている。第1熱膨張性部材2Cと、第3熱膨張性部材2E及び第4熱膨張性部材2Fとは貫通孔101の中心線方向に間隔をあけて配置され、また、第2熱膨張性部材2Dと、第3熱膨張性部材2E及び第4熱膨張性部材2Fとも貫通孔101の中心線方向に間隔をあけて配置されている。
【0069】
第1外周側シール材3A及び第1内周側シール材4Aは、第1熱膨張性部材2Cと、第3熱膨張性部材2E及び第4熱膨張性部材2Fとの間において保持部材5に固定されている。また、第2外周側シール材3B及び第2内周側シール材4Bは、第2熱膨張性部材2Dと、第3熱膨張性部材2E及び第4熱膨張性部材2Fとの間において保持部材5に固定されている。
【0070】
図8に示すように、この耐火部材1を建物の区画部100に取り付けることで、熱膨張性部材2C、2Dが、建物の区画部100に形成された貫通孔101から中心線方向の両側にそれぞれ突出した状態で貫通孔101の中心線方向に互いに間隔をあけて配置され、熱膨張性部材2C、2Dが不燃材料からなる保持部材5によって保持された耐火構造Aを得ることができる。
【0071】
この実施形態2によれば、第1熱膨張性部材2Cと第2熱膨張性部材2Dとが互いに離れた状態で貫通孔101から中心線方向の両側にそれぞれ突出することになる。例えば、区画部100によって区画された一方の部屋R1で火災が発生した場合、その火災の熱により、一方の部屋R1側に位置する第1熱膨張性部材2Cが膨張する。この第1熱膨張性部材2Cは保持部材5によって保持されているので、第1熱膨張性部材2Cが落下することなく、貫通孔101に向かって膨張して当該貫通孔101が第1熱膨張性部材2Cによって閉塞される。これにより、貫通孔101を介した延焼が抑制される。他方の部屋R2で火災が発生した場合も同様に、一方の部屋R1への延焼が抑制される。また、第1熱膨張性部材2Cと、第3熱膨張性部材2E及び第4熱膨張性部材2Fとの間の熱伝達が抑制されるとともに、第2熱膨張性部材2Dと、第3熱膨張性部材2E及び第4熱膨張性部材2Fとの間の熱伝達も抑制することができる。
【0072】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0073】
例えば、耐火部材1の係止部5bをタッカー(例えばステイプラー)等の固定手段によって石膏ボード等に固定することができる。固定手段は、タッカーに限られるものではなく、区画部100を構成している部材に差し込むことやねじ込むことができる部材を使用することができる。また、石膏ボードに限らず、例えばALC(軽量気泡コンクリート)等にも固定手段によって係止部5bを固定することができる。係止部5bを固定しておくことで、配管102の移動や地震、その他の振動による耐火部材1のズレを抑制することができ、所期の耐火性能を発揮できる。また、実施形態1において耐火部材1の係止部5bを固定手段によって区画部100に固定することもできる。耐火部材1は固定手段を備えた構成とすることもできる。また、耐火構造Aは固定手段を備えた構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本発明は、例えば床や壁等の建物の区画部に使用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 耐火部材
2A、2B 熱膨張性部材
3A、3B 外周側シール材
4A、4B 内周側シール材
5 保持部材
6 フィルム状不燃部材
100 区画部
101 貫通孔
101a 内周面
102 配管
102a 外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8