(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】ドレーン杭、ドレーン杭施工装置およびドレーン杭の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20230523BHJP
E02D 7/08 20060101ALI20230523BHJP
E02D 31/02 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
E02D3/10 101
E02D7/08
E02D31/02
(21)【出願番号】P 2019200388
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014649
【氏名又は名称】日本地工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】管野 伯浩
(72)【発明者】
【氏名】福場 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直人
(72)【発明者】
【氏名】今井 裕介
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108677(JP,A)
【文献】特開平11-256625(JP,A)
【文献】実開昭56-116434(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00- 3/115
E02D 7/00-13/10
E02D 27/00-27/52
E02D 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱周りに埋設され、地盤の水を外部に排出可能なドレーン杭を地盤に埋設するためのドレーン杭施工装置であって、
前記ドレーン杭を地盤に打ち込むための力を前記ドレーン杭の上端に付与する打込装置と、
前記打込装置を支持するスライダと、
前記電柱の中心軸に対して傾斜した傾斜方向であって、かつ、前記電柱のテーパ面に沿う傾斜方向に、前記スライダを移動可能に支持する基体と、を備えることを特徴とするドレーン杭施工装置。
【請求項2】
前記基体は、
前記電柱の第1部位に接触する第1接触部と、
前記電柱の前記第1部位よりも下方の第2部位に接触する第2接触部と、を有することを特徴とする請求項
1に記載のドレーン杭施工装置。
【請求項3】
前記基体は、前記第1接触部および前記第2接触部よりも前記電柱から離れた位置に配置され、前記スライダを移動可能に支持するレール部を有し、
前記第1接触部および前記第2接触部が前記電柱に接触した状態において、前記レール部が前記傾斜方向に沿って延びていることを特徴とする請求項
2に記載のドレーン杭施工装置。
【請求項4】
前記傾斜方向から見て、前記打込装置が、前記第1接触部と前記レール部の間、および、前記第2接触部と前記レール部との間に配置されていることを特徴とする請求項
3に記載のドレーン杭施工装置。
【請求項5】
前記第1接触部および前記第2接触部が前記電柱に接触した状態において、前記基体が前記電柱に固定されることを特徴とする請求項
2から請求項
4のいずれか1項に記載のドレーン杭施工装置。
【請求項6】
前記ドレーン杭は、
孔のない外周壁を有する外管と、
前記外管内に収容可能であり、地盤の水を通すための複数の通水孔が形成されたベース部を有する内管と、を備え、
前記内管は、前記ベース部が前記外管内に配置された第1状態と、前記ベース部が前記外管の下端から下方に突出した第2状態とに移動可能であり、
前記第1状態において、複数の前記通水孔が前記外管によって覆われていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のドレーン杭施工装置。
【請求項7】
電柱周りに埋設され、地盤の水を外部に排出可能なドレーン杭であって、
孔のない外周壁を有する外管と、
前記外管内に収容可能であり、地盤の水を通すための複数の通水孔が形成されたベース部を有する内管と、を備え、
前記内管は、前記ベース部が前記外管内に配置された第1状態と、前記ベース部が前記外管の下端から下方に突出した第2状態とに移動可能であり、
前記第1状態において、複数の前記通水孔が前記外管によって覆われるドレーン杭の施工方法であって、
前記内管が前記第1状態となった状態のドレーン杭を、前記電柱の中心軸に対して傾斜した傾斜方向であって、かつ、前記電柱のテーパ面に沿う傾斜方向に沿うように地面に設置する工程と、
打込装置によって、前記内管を前記外管とともに前記傾斜方向に沿って地盤に打ち込む工程と、
前記外管の内径よりも小さく、かつ、前記内管の上端に接触可能な治具を、前記内管と前記打込装置の間に配置する工程と、
前記打込装置によって前記治具を打ち込むことで、前記内管を前記第1状態から前記第2状態にする工程と、を備えることを特徴とするドレーン杭の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化現象時に地盤の水を地上に排水するためのドレーン杭、ドレーン杭施工装置およびドレーン杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドレーン杭として、直線状の鋼管からなり、鋼管の外周壁に、地盤の水を鋼管内に吸水するための複数の吸水口を有し、鋼管の上端の開口を排水口とするものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、複数の吸水口が、鋼管の外周面の上端から下端にわたって配列されている。また、この技術では、鋼管を長手方向に複数分割した複数のパーツに分け、各パーツを順次地盤に打ち込むことで、ドレーン杭の打込作業を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、ドレーン杭の打込作業において、1つ目のパーツを地盤に打ち込んだ後、1つ目のパーツの上端に2つ目のパーツを連結して、これらのパーツを打ち込んでいる。そのため、連結された2つのパーツを地盤に打ち込む際に、2つのパーツのそれぞれの外周面と地盤との間に摩擦力がかかるので、ドレーン杭を地盤に打ち込み難くなるという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、ドレーン杭を打ち込む際におけるドレーン杭と地盤との摩擦力を小さくして、ドレーン杭の打込作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るドレーン杭は、電柱周りに埋設され、地盤の水を外部に排出可能なドレーン杭であって、孔のない外周壁を有する外管と、前記外管内に収容可能であり、地盤の水を通すための複数の通水孔が形成されたベース部を有する内管と、を備える。
前記内管は、前記ベース部が前記外管内に配置された第1状態と、前記ベース部が前記外管の下端から下方に突出した第2状態とに移動可能であり、前記第1状態において、複数の前記通水孔が前記外管によって覆われている。
【0007】
この構成によれば、内管を第1状態にした状態でドレーン杭を地盤に打ち込む際には、外管の外周面と地盤との間に摩擦力はかかるが、外管内に配置される内管と地盤との間には摩擦力がかからない。内管を内部に収容した状態の外管を地盤に打ち込んだ後、内管のみを地盤に打ち込んでいくと、内管が外管に対して移動して、第1状態から第2状態へ変位する。この際、外管が動かないため、外管の外周面と地盤との間には摩擦力がかからない。したがって、従来の構造のドレーン杭と比べ、ドレーン杭の打込作業に必要な摩擦力を小さくすることができるので、ドレーン杭の打込作業を容易にすることができる。
また、打込みのための動力が小さくても施工が可能となるため、ドレーン杭施工装置を軽量コンパクトとすることができる。
【0008】
さらに、外管の外周壁に孔がないので、内管を第1状態にした状態でドレーン杭を地盤に打ち込む際に、土砂が外管内に入ることが抑制される。これにより、内管のみを地盤に打ち込む際に、外管の内周面と内管の外周面との間には、土砂を噛み込むことによる抵抗が生じにくいので、内管の打込作業を容易にすることができる。
【0009】
また、前記ドレーン杭は、前記内管の内周面に沿って設けられ、前記通水孔から前記内管内に土砂が流入するのを抑制するフィルタと、前記フィルタを前記内管の内周面に沿わせるように保持する保持体と、をさらに備えていてもよい。
【0010】
これによれば、内管のみを地盤に打ち込む際に、通水孔から内管内に土砂が流入することがフィルタによって抑制されるので、内管内の一部が土砂で埋まることによる排水性能の低下を抑制することができる。また、保持体によってフィルタを内管の内周面にフィットさせることができるので、通水孔から内管内に土砂が流入するのをより抑制することができる。
【0011】
また、前記内管の下端には、先細り形状の先端部材が設けられ、前記先端部材は、前記外管の下端部の外径より大きな径を有する形状であり、前記外管の下に配置され、前記内管を前記第1状態にした状態で前記ドレーン杭を地盤に打ち込む際に、前記先端部材によって外管の内周面と内管の外周面との隙間から土砂が流入することが抑制され、前記内管を前記第1状態から前記第2状態へ変位させながら地盤に打ち込む際に、前記先端部材によって、前記内管と地盤との間に隙間が形成され、前記内管と地盤との摩擦が低減されるように構成されてもよい。
【0012】
また、本発明は、前記ドレーン杭を地盤に埋設するためのドレーン杭施工装置であって、前記ドレーン杭を地盤に打ち込むための力を前記ドレーン杭の上端に付与する打込装置と、前記打込装置を支持するスライダと、前記電柱の中心軸に対して傾斜した傾斜方向であって、かつ、前記電柱のテーパ面に沿う傾斜方向に、前記スライダを移動可能に支持する基体と、を備える。
【0013】
このドレーン杭施工装置によれば、ドレーン杭を電柱のテーパ面に沿って地盤に打ち込むことができるので、地盤でドレーン杭が電柱と干渉するのを抑制することができる。
【0014】
また、前記基体は、前記電柱の第1部位に接触する第1接触部と、前記電柱の前記第1部位よりも下方の第2部位に接触する第2接触部と、を有していてもよい。
【0015】
これによれば、電柱のテーパ面に対して基体を位置決めすることができるので、スライダを電柱のテーパ面に沿ってより精度良く移動させることができる。
【0016】
また、前記基体は、前記第1接触部および前記第2接触部よりも前記電柱から離れた位置に配置され、前記スライダを移動可能に支持するレール部を有し、前記第1接触部および前記第2接触部が前記電柱に接触した状態において、前記レール部が前記傾斜方向に沿って延びていてもよい。
【0017】
また、前記傾斜方向から見て、前記打込装置が、前記第1接触部と前記レール部の間、および、前記第2接触部と前記レール部との間に配置されていてもよい。
【0018】
これによれば、打込装置や当該打込装置で打ち込んでいるドレーン杭に、作業者が誤って触れるのを抑制することができる。
【0019】
また、前記第1接触部および前記第2接触部が前記電柱に接触した状態において、前記基体が前記電柱に固定されていてもよい。
【0020】
これによれば、例えば基体を地盤に固定させる構造と比べ、第1接触部および第2接触部を電柱により確実に接触させることができる。
【0021】
また、本発明は、前記ドレーン杭の施工方法であって、前記内管が前記第1状態となった状態のドレーン杭を、前記電柱の中心軸に対して傾斜した傾斜方向であって、かつ、前記電柱のテーパ面に沿う傾斜方向に沿うように地面に設置する工程と、打込装置によって、前記内管を前記外管とともに前記傾斜方向に沿って地盤に打ち込む工程と、前記外管の内径よりも小さく、かつ、前記内管の上端に接触可能な治具を、前記内管と前記打込装置の間に配置する工程と、前記打込装置によって前記治具を打ち込むことで、前記内管を前記第1状態から前記第2状態にする工程と、を備える。
【0022】
この方法によれば、ドレーン杭を電柱のテーパ面に沿って地盤に打ち込むことができるので、ドレーン杭が電柱と干渉するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ドレーン杭を打ち込む際におけるドレーン杭と地盤との摩擦力を小さくして、ドレーン杭の打込作業を容易にすることができる。また、ドレーン杭施工装置を軽量コンパクトとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るドレーン杭を示す図であり、内管が第2状態であるときのドレーン杭を示す図(a)と、内管が第1状態であるときのドレーン杭を示す図(b)である。
【
図2】ドレーン杭の内部の構造を示す断面図である。
【
図3】ドレーン杭施工装置を打込装置側から見た斜視図である。
【
図4】ドレーン杭施工装置をウインチ側から見た斜視図である。
【
図5】ドレーン杭施工装置を電柱に固定した状態を示す側面図である。
【
図6】ドレーン杭施工装置を上から見た上面図である。
【
図7】ドレーン杭の施工方法を示す図(a)~(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)に示すように、ドレーン杭1は、外管10と、内管20と、先端部材30とを備えている。
【0026】
外管10は、孔のない外周壁11を有する。外周壁11は、円筒状の本体部11Aと、本体部11Aの下端に形成される筒状のテーパ部11Bと、テーパ部11Bの下端に形成される筒状の小径部11Cとを有する。テーパ部11Bは、下方に向かうにつれて縮径している。小径部11Cの内径は、本体部11Aの内径よりも小さい。
【0027】
内管20は、地盤の水を通すための複数の通水孔HWが形成された外周壁21を有する。外周壁21は、複数の通水孔HWが形成されたベース部21Aと、孔のない、第1テーパ部21B、大径部21C、および、先端部材30との結合部21Dと、を有する。
【0028】
ベース部21Aは、円筒状に形成されている。ベース部21Aの外径は、外管10の小径部11Cの内径よりも小さい。複数の通水孔HWは、ベース部21Aの周方向に複数並んだ列が、上下方向に複数列配列されるように、ベース部21Aの上端から他端にわたって形成されている。
【0029】
第1テーパ部21Bは、ベース部21Aの上端に形成された筒状の部位である。第1テーパ部21Bは、上方に向かうにつれて拡径している。
【0030】
大径部21Cは、第1テーパ部21Bの上端に形成された円筒状の部位である。大径部21Cの外径は、外管10の小径部11Cの内径よりも大きい。
【0031】
結合部21Dは、ベース部21Aの下端に形成された筒状の部位である。
【0032】
先端部材30は、内管20の下端、詳しくは結合部21Dに設けられている。先端部材30は、下方に向けて先細りとなる先細り形状を有している。詳しくは、先端部材30は、円錐状に形成されている。なお、先端部材30は、外管10の下端部の外径より僅かに大きな径を有する形状とするとよい。これによれば、外管10と内管20との間への土砂流入の抑制効果と同時に、内管20を打込む際に内管20の外周面と地盤との間に摩擦力がかかり難くなる。先端部材30の材料は特に限定されない。また、先端部材30の内管20への取付方法は、例えば、嵌合、ボルト締結、溶接など、どのような方法であってもよい。
【0033】
図1(b)に示すように、内管20は、外管10内に収容可能となっている。詳しくは、内管20は、ベース部21Aが外管10内に配置された第1状態(
図1(b)の状態)と、ベース部21Aが外管10の下端から下方に突出した第2状態(
図1(a)の状態)とに移動可能となっている。第1状態において、複数の通水孔HWは、外管10によって覆われている。
【0034】
また、第1状態において、外管10の上端と内管20の上端の上下方向の位置は、同じ位置となっている。また、第1状態において、先端部材30は、外管10の下端の下に配置されている。なお、第1状態において、ベース部21Aの一部が外部に露出している。
【0035】
図2に示すように、第2状態において、内管20の上端部は、外管10の下端部に係合する。詳しくは、内管20の第1テーパ部21Bは、外管10のテーパ部11Bと係合する。
【0036】
内管20のベース部21A内には、通水孔HWから内管20内に土砂が流入するのを抑制するフィルタFと、フィルタFをベース部21Aの内周面に沿わせるように保持する保持体Kとが設けられている。
【0037】
フィルタFは、不織布などからなる透水シートであり、ベース部21Aの内周面に沿って設けられている。保持体Kは、樹脂などからなる円筒状の部材であり、水を通すための複数の孔を有している。なお、フィルタFや保持体Kは、通水可能な空隙が形成されて土圧に対抗できる反発力を有する部材であればよく、例えば、網目状に形成された繊維材とすることができる。
【0038】
図3に示すように、ドレーン杭施工装置2は、ドレーン杭1を地盤に埋設するための装置である。ドレーン杭施工装置2は、打込装置40と、スライダ50と、基体60と、ウインチ70とを備えている。なお、以下の説明では、便宜上、ドレーン杭1の打込方向を、「Z方向」とも称し、Z方向に直交する方向であって、打込装置40の中心と電柱Pの中心とを結ぶ線L1(
図6参照)に沿った方向を、「Y方向」とも称し、Z方向とY方向に直交する方向をX方向とも称する。
【0039】
打込装置40は、ドレーン杭1を地盤に打ち込むための力をドレーン杭1または後述する治具J(
図7(b)参照)の上端に付与する装置である。打込装置40は、Z方向に振動するピストンを内部に備えている。打込装置40は、ドレーン杭1または治具Jを保持する円筒状の保持筒41を有している。これにより、打込装置40とドレーン杭1または治具JとがX方向およびY方向にずれることなく、ピストンからの力がドレーン杭1または治具Jの上端に付与されて、ドレーン杭1をZ方向に打ち込むことが可能となっている。
【0040】
スライダ50は、打込装置40を支持する部材である。スライダ50は、本体部51と、フランジ部52と、車輪53とを備えている。本体部51は、矩形の枠状に形成されている。
【0041】
フランジ部52は、本体部51のX方向における両端に形成されている。フランジ部52は、本体部51から打込装置40とは反対側に向けて突出している。車輪53は、各フランジ部52に複数ずつ回転可能に設けられている。車輪53は、フランジ部52に対してX方向における外側に配置されている。
【0042】
基体60は、レール部61と、第1接触部T1と、3つの第2接触部T21,T22,T23と、複数の第1連結部材62と、2つの第2連結部材63とを有する。
【0043】
レール部61は、スライダ50を移動可能に支持する部位であり、2つのレール本体部61Aと、2つのレール本体部61Aを連結する複数のレール連結部61Bとを有する。各レール本体部61Aは、Z方向に長い長尺状の部材であり、断面視U字状に形成されている。各レール本体部61Aは、内部でスライダ50の車輪53を移動可能に支持している。スライダ50は、各レール本体部61Aの一端から他端の間を移動可能となっている。
【0044】
各レール連結部61Bは、X方向に長い長尺状の部材である。複数のレール連結部61Bは、各レール本体部61AのZ方向における一端同士、他端同士および一端と他端の間の複数の部位同士を連結している。なお、後述するようにZ方向は、上下方向から僅かに傾いているが上下方向に略沿っているため、以下の説明では、Z方向における一端を、「上端」とも称し、Z方向における他端を、「下端」とも称する。
【0045】
第1接触部T1は、
図5に示すように、電柱Pの第1部位P1(
図5参照)に接触する部位である。第2接触部T21,T22,T23は、電柱Pの第1部位P1よりも下方に位置する3か所の第2部位P21,P22,P23に接触する部位である。
【0046】
図3に示すように、第1接触部T1および第2接触部T21~T23は、Y方向において、レール部61から離れた位置に配置されている。第1接触部T1および第2接触部T21~T23は、略V字状に形成されている。詳しくは、第1接触部T1および第2接触部T21~T23は、電柱Pに接触する2つの傾斜面FAと、2つの傾斜面FAを繋ぐ平面FBとを有する。
【0047】
第1接触部T1は、Z方向において、レール部61の上端と略同じ位置に配置されている。第2接触部T23は、Z方向において、レール部61の下端と略同じ位置に配置されている。第2接触部T21は、Z方向において、レール部61の中央と略同じ位置に配置されている。第2接触部T22は、Z方向において、中央の第2接触部T21と下端の第2接触部T23の間であって、下端の第2接触部T23寄りの位置に配置されている。
【0048】
第1接触部T1および第2接触部T21,T23は、それぞれ2つの第1連結部材62によってレール部61に連結されている。第2接触部T22は、2つの第2連結部材63によって第2接触部T23に連結されている。
【0049】
図4に示すように、ウインチ70は、Z方向におけるレール部61の中央、詳しくはレール連結部61Bに固定されている。レール部61の上端に位置するレール連結部61Bの下面には、滑車PLが固定されている。ウインチ70に巻回されているワイヤWは、ウインチ70から上方に引き出された後、滑車PLに掛け回され、その後、スライダ50の上端に固定されている。これにより、ウインチ70のハンドル71を回動させることにより、スライダ50を上昇させることが可能となっている。
【0050】
図5に示すように、基体60は、第1接触部T1および第2接触部T21~T23が電柱Pに接触した状態において、電柱Pに固定されている。詳しくは、2本のバンドBDによって基体60の上部と下端部とが電柱Pに縛り付けられることで、第1接触部T1および第2接触部T21~T23が電柱Pに押し付けられた状態で基体60が電柱Pに固定されている。
【0051】
このように、第1接触部T1および第2接触部T21~T23が電柱Pに接触した状態においては、レール部61が、電柱Pの中心軸X1に対して傾斜した傾斜方向であって、かつ、電柱Pのテーパ面に沿う傾斜方向(Z方向)に沿って延びている。これにより、スライダ50で支持される打込装置40が、基体60に対して傾斜方向に移動可能となっている。また、この状態において、レール部61は、第1接触部T1および第2接触部T21~T23よりも電柱Pから離れた位置に配置される。
【0052】
詳しくは、
図6に示すように、傾斜方向(Z方向)から見て、打込装置40は、第1接触部T1および第2接触部T21~T23とレール部61の間に配置される。言い換えると、Y方向において、打込装置40は、第1接触部T1および第2接触部T21~T23とレール部61の間に配置される。
【0053】
次に、ドレーン杭1の施工方法について説明する。
まず、
図5に示すように、ドレーン杭1の配置位置において、ドレーン杭施工装置2を電柱Pのテーパ面に沿って配置する。その後、2本のバンドBDによってドレーン杭施工装置2を電柱Pに固定する。これにより、第1接触部T1および第2接触部T21~T23が電柱Pに密着して、レール部61が電柱Pのテーパ面に沿って配置される。
【0054】
その後、内管20を第1状態とした状態のドレーン杭1を、第2接触部T21~T23とレール部61との間を通して、ドレーン杭施工装置2および地面にセットする。詳しくは、第2接触部T21~T23のうち平面FBを有する部分とレール部61の間にドレーン杭1を配置するとともに、ドレーン杭1の先端を地面Eに差し込み、ドレーン杭1の上端を打込装置40の保持筒41内に入れる。
【0055】
ここで、第1接触部T1および第2接触部T21~T23のうち平面FBを有する部分とレール部61との間隔は、同一の寸法であり、ドレーン杭1の直径との差が僅かであるため、ドレーン杭施工装置2にセットされたドレーン杭1は、電柱Pのテーパ面に沿った傾斜方向に沿うように配置される。
【0056】
その後、
図7(a)に示すように、打込装置40を作動させることによって、内管20を外管10とともに傾斜方向に沿って地盤に打ち込む(第1打込工程)。なお、この第1打込工程では、打込装置40の内部のピストンの振動と、打込装置40およびスライダ50の重さによって、ドレーン杭1が地盤に打ち込まれていく。
【0057】
ドレーン杭1の上端部が地面Eから僅かに突出した状態までドレーン杭1を打ち込んだ後は、作業者がウインチ70のハンドル71を回すことで、
図7(b)に示すように、打込装置40を上方の初期位置まで戻す。
【0058】
次に、外管10の内径よりも小さく、かつ、内管20の上端に接触可能な治具Jを、内管20と打込装置40の間に配置する。その後、打込装置40によって治具Jを打ち込むことで、
図7(c)に示すように、内管20を第1状態から第2状態にする(第2打込工程)。
【0059】
これにより、内管20に形成された通水孔HWが地盤に臨むので、液状化現象時において、ドレーン杭1によって地盤の水を外部に排水することが可能となる。なお、ドレーン杭1は、電柱Pの周りに複数埋設するのが好ましい。また、第2打込工程終了後の内管20は、電柱Pの下端よりも下に打ち込まれるのが好ましい。この場合、例えば、先端部材30の下端から電柱Pの下端までの上下方向における距離は、1m以上とするのが好ましい。
【0060】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
第1打込工程では、外管10の外周面と地盤との間に摩擦力はかかるが、外管10内に配置される内管20と地盤との間には摩擦力がかからない。第2打込工程では、外管10が動かないため、外管10の外周面と地盤との間には摩擦力がかからない。したがって、従来の構造のドレーン杭と比べ、ドレーン杭1の打込作業に必要な摩擦力を小さくすることができるので、ドレーン杭1の打込作業を容易にすることができる。
【0061】
外管10の外周壁11に孔がないので、第1打込工程において、土砂が外管10内に入ることが抑制される。さらに、先端部材30は、外管10の下端部の外径より僅かに大きな径を有する形状のため、土砂流入が殆ど発生し無い。これにより、第2打込工程において、外管10の内周面と内管20の外周面との間には、土砂を噛み込むことによる抵抗が生じにくいので、内管20の打込作業を容易にすることができる。
【0062】
内管20の内周面に、土砂の流入を抑制するフィルタFを設けたので、第2打込工程において、通水孔HWから内管20内に土砂が流入することがフィルタFによって抑制される。そのため、内管20内の一部が土砂で埋まることによる排水性能の低下を抑制することができる。
【0063】
フィルタFを保持する保持体Kを設けたので、保持体KによってフィルタFを内管20の内周面にフィットさせることができ、通水孔HWから内管20内に土砂が流入するのをより抑制することができる。
【0064】
第2状態において内管20の上端部が外管10の下端部に係合するので、第2打込工程の際に、内管20が外管10から外れるのを抑制することができる。
【0065】
内管20の下端に、先細り形状の先端部材30を設けたので、第2打込工程において、内管20を地盤にスムーズに打ち込むことができる。また、先端部材30の径が外管10の下端部の外径より大きいので、内管20を第1状態にした状態でドレーン杭1を地盤に打ち込む際に、外管10の内周面と内管20の外周面との隙間から土砂が流入することが抑制される。また、内管20を第1状態から第2状態へ変位させながら地盤に打ち込む際には、先端部材30の径が外管10の下端部の外径より大きいことから、内管20を打ち込む過程において内管20と地盤との間に隙間ができるので、内管20と地盤との摩擦を低減することができる。
【0066】
第1状態において、外管10の上端と内管20の上端の上下方向の位置が同じであるとともに、先端部材30が外管10の下端の下に配置されているので、打込装置40の力を、外管10の上端と内管20の上端の両方に与えやすくなるとともに、先細り形状の先端部材30によって地盤にドレーン杭1が入りやすくなる。そのため、第1打込作業をより容易にすることができる。
【0067】
ドレーン杭施工装置2によってドレーン杭1を電柱Pのテーパ面に沿って地盤に打ち込むことができるので、地盤でドレーン杭1が電柱Pと干渉するのを抑制することができる。
【0068】
基体60が、電柱Pの第1部位P1に接触する第1接触部T1と、電柱Pの第2部位P21~P23に接触する第2接触部T21~T23とを有することで、電柱Pのテーパ面に対して基体60を位置決めすることができるので、スライダ50を電柱Pのテーパ面に沿ってより精度良く移動させることができる。
【0069】
打込装置40がY方向において第1接触部T1および第2接触部T21~T23とレール部61との間に配置されているので、打込装置40や当該打込装置40で打ち込んでいるドレーン杭1に、作業者が誤って触れるのを抑制することができる。
【0070】
第1接触部T1および第2接触部T21~T23が電柱Pに接触した状態において、基体60が電柱Pに固定されるので、例えば基体を地盤に固定させる構造と比べ、第1接触部T1および第2接触部T21~T23を電柱Pにより確実に接触させることができる。
【0071】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0072】
前記実施形態では、基体60を電柱Pに固定したが、本発明はこれに限定されず、例えば、基体を地盤に固定してもよい。また、基体を電柱に固定する方法は、バンドBDによる方法に限らず、どのような方法であってもよい。
【0073】
バンドBDの数は、2本に限らず、1本または3本以上であってもよい。また、第2接触部の数は、3つに限らず、1つ、2つ、または、4つ以上であってもよい。
【0074】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 ドレーン杭
10 外管
11 外周壁
20 内管
21A ベース部
HW 通水孔
P 電柱