(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】ヒンジ
(51)【国際特許分類】
G03B 27/62 20060101AFI20230523BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20230523BHJP
E05D 3/02 20060101ALI20230523BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20230523BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G03B27/62
G03G21/16 161
E05D3/02
F16C11/04 F
H04N1/00 519
(21)【出願番号】P 2018204275
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 禎治
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142308(JP,A)
【文献】特開2014-152904(JP,A)
【文献】特開2011-247954(JP,A)
【文献】特開2017-155837(JP,A)
【文献】特開2010-060719(JP,A)
【文献】特開2006-023333(JP,A)
【文献】特開2003-295358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 27/62
G03G 15/00、21/16
E05D 3/00 - 3/18
F16C 11/00 - 11/12
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カム部を備える第一ウイング部材と、
一方端部に開口部を有し、他方端部に底部を有する筒状の部材であり、前記開口部に繋がった収容部を備え
、前記カム部を前記開口部付近に位置させつつ、前記第一ウイング部材に回動軸を介して回動可能に連結される第二ウイング部材と、
当接部を備え
、前記収容部内に収容されつつ前記カム部に
対して接近
する方向および離間する方向に移動可能なスライダと、
前記スライダを前記接近する方向に付勢することにより前記当接部を前記カム部に当接させる付勢部材と、を具備し、
前記スライダは、前記第二ウイング部材の回動時に、前記付勢部材による付勢により前記接近する方向に移動し、及び、前記カム部と前記当接部との当接により前記離間する方向へ移動し、
前記第一ウイング部材に対して前記第二ウイング部材が閉状態のとき、前記当接部と前記カム部との当接する部分が第二ウイング部材の収容部内に位置し、
前記第二ウイング部材は、前記開口部の縁部から前記スライダの移動方向に沿って突出した突出部を有し、
前記第一ウイング部材は、前記突出部を間に挟む一対の支持部を有し、
前記突出部と、前記一対の支持部とには、前記回動軸が挿入される貫通孔が設けられている、
ヒンジ。
【請求項2】
前記カム部は、前記第一ウイング部材に対して前記第二ウイング部材が閉状態のとき、前記突出部と対向するように前記開口部から前記収容部内へ延びた構成であり、先端部が前記当接部と当接する、
請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記回動軸の軸方向に垂直な前記第二ウイング部材の断面において、前記スライダの移動方向に直交する幅方向に沿って前記収容部を挟む前記第二ウイング部材の周壁部のうち、前記突出部が設けられた側は、他方側よりも、前記幅方向の長さが大きい、
請求項1または請求項2に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記当接部と前記カム部とは、互いの先端部からオフセットした位置で当接し、
前記第一ウイング部材に対して前記第二ウイング部材が閉状態のとき、前記当接部と前記カム部との当接する部分が、少なくとも、前記スライダの移動方向と直交する方向に対して20°の前記回動軸から引いた線よりも前記スライダが前記離間する方向側に位置する、
請求項1
から請求項3のいずれか一つに記載のヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば事務機器の本体に事務機器の原稿圧着板を開閉可能に連結する等、第一連結対象物に第二連結対象物を開閉可能に連結するヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、スキャナー等、オフィスで使用される事務機器の多くは、その本体の上面に原稿読み取り部(コンタクトガラス)を具備するとともに、当該原稿読み取り部を覆う原稿圧着板を具備する。原稿圧着板は、原稿読み取り部に載置された原稿を原稿読み取り部に密着させるとともに原稿読み取り部に対する原稿の位置を保持するものである。
【0003】
事務機器の本体と原稿圧着板とを連結する器具としては、第一ウイング部材と、第一ウイング部材に回動軸を介して回動可能に連結される第二ウイング部材と、カム部と、当接部を備えカム部に接近または離間する方向に移動可能なスライダと、スライダをカム部に接近する方向に付勢することによりスライダの当接部をカム部に当接させる付勢部材、を具備するヒンジが知られている(特許文献1参照)。
また、前記ヒンジには、第一ウイング部材がカム部を備え、第二ウイング部材が収容部を備え、スライダが第二ウイング部材の収容部内に収容されつつ第一ウイング部材のカム部に接近または離間する方向に移動可能に構成されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ヒンジには、スライダの当接部と第一ウイング部材のカム部との当接する部分から引いた作用線に対する回動軸からの最短距離(腕の長さ)を比較的長く構成されるものがある。このような構成の場合、第二ウイング部材が閉状態の近傍においてはヒンジトルクが高く、例えば、第二ウイング部材を開状態から閉状態とする際に作業者の意思に反して第二ウイング部材が閉状態の手前で回動を停止して原稿圧着板が本体に接地しない場合があった。このように、前記ヒンジでは、第二ウイング部材を開状態から閉状態とする動作をスムーズに行うことができない場合があった。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、第二ウイング部材が閉状態の近傍においてヒンジトルクを低下させて、第二ウイング部材を開状態から閉状態とする動作をスムーズに行うことができるヒンジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、カム部を備える第一ウイング部材と、一方端部に開口部を有し、他方端部に底部を有する筒状の部材であり、前記開口部に繋がった収容部を備え、前記カム部を前記開口部付近に位置させつつ、前記第一ウイング部材に回動軸を介して回動可能に連結される第二ウイング部材と、当接部を備え、前記収容部内に収容されつつ前記カム部に対して接近する方向および離間する方向に移動可能なスライダと、前記スライダを前記接近する方向に付勢することにより前記当接部を前記カム部に当接させる付勢部材と、を具備し、前記スライダは、前記第二ウイング部材の回動時に、前記付勢部材による付勢により前記接近する方向に移動し、及び、前記カム部と前記当接部との当接により前記離間する方向へ移動し、前記第一ウイング部材に対して前記第二ウイング部材が閉状態のとき、前記当接部と前記カム部との当接する部分が第二ウイング部材の収容部内に位置し、前記第二ウイング部材は、前記開口部の縁部から前記スライダの移動方向に沿って突出した突出部を有し、前記第一ウイング部材は、前記突出部を間に挟む一対の支持部を有し、前記突出部と、前記一対の支持部とには、前記回動軸が挿入される貫通孔が設けられているものである。
【0009】
請求項2においては、前記カム部は、前記第一ウイング部材に対して前記第二ウイング部材が閉状態のとき、前記突出部と対向するように前記開口部から前記収容部内へ延びた構成であり、先端部が前記当接部と当接するものである。
【0010】
請求項3においては、前記回動軸の軸方向に垂直な前記第二ウイング部材の断面において、前記スライダの移動方向に直交する幅方向に沿って前記収容部を挟む前記第二ウイング部材の周壁部のうち、前記突出部が設けられた側は、他方側よりも、前記幅方向の長さが大きいものである。
【0011】
請求項4においては、前記当接部と前記カム部とは、互いの先端部からオフセットした位置で当接し、前記第一ウイング部材に対して前記第二ウイング部材が閉状態のとき、前記当接部と前記カム部との当接する部分が、少なくとも、前記スライダの移動方向と直交する方向に対して20°の前記回動軸から引いた線よりも前記スライダが前記離間する方向側に位置するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、第二ウイング部材が閉状態の近傍においてヒンジトルクを低下させて、第二ウイング部材を開状態から閉状態とする動作をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るヒンジを具備する複合機を示す側面図。
【
図9】同じくヒンジの閉状態を示す側面拡大断面図。
【
図10】同じくヒンジの回動部材の回動角度とトルクとの関係を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では
図1を用いて本発明に係るヒンジが用いられる事務機器の実施の一形態である複合機1について説明する。
図1に示すように、複合機1は本体2および原稿圧着板3を具備する。本実施形態において、複合機1は本発明の実施形態に係るヒンジ100を具備する構成とするが、複合機1が他の実施形態に係るヒンジを具備する構成とすることも可能である。
【0015】
本体2は本発明に係る第一連結対象物の実施の一形態である。
本体2は原稿読み取り装置、制御装置、印刷装置、表示装置および入力装置を具備する。
原稿読み取り装置は本体2の上面に配置される。原稿読み取り装置は本体2の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。
制御装置は複合機1の各部の動作、より詳細には原稿読み取り装置、後述する印刷装置および後述するADFの動作を制御する。
また、制御装置は原稿読み取り装置が生成した画像情報および本体2に接続された回線(インターネット回線等)を通じて取得した画像情報を記憶することが可能である。
印刷装置は原稿読み取り装置の下方に配置される。印刷装置は制御装置が記憶した画像情報に基づいて所定の用紙に画像を印刷する。
表示装置は例えば液晶パネルからなり、複合機1の動作状況等に係る情報を表示する。
入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者が複合機1に対する指示等を入力する際に操作する。表示装置および入力装置は本体2の上面前部に配置される。
【0016】
原稿圧着板3は本発明に係る第二連結対象物の実施の一形態である。
原稿圧着板3は原稿読み取り装置の上に載置された原稿を原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動く(原稿読み取り装置との相対的な位置が変化する)ことを防止する。
原稿圧着板3は読取前原稿収容トレイ、ADF(Auto Document Feeder)および読取後原稿収容トレイを具備する。
ADFは読取前原稿収容トレイに積層状態で収容された複数枚の原稿を一枚ずつ順に取り出して原稿読み取り装置の上の所定の読取位置に載置する。原稿読み取り装置による原稿の読み取りが終了した後、ADFは読取位置に載置された原稿を読取後原稿収容トレイに搬送する。
【0017】
「事務機器」は、少なくとも原稿を読み取る(原稿の画像情報を取得する)機能を具備する装置を指す。
事務機器の具体例としては、(a)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報を他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に送信する機能を具備するスキャナー、(b)原稿を読み取る機能、読み取った原稿に係る画像情報を通信回線を介して他の機器に送信する機能および他の機器から取得した画像情報をプリントアウトする機能を具備するファクス、(c)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報をプリントアウトする機能を具備するコピー機、(d)上記スキャナー、ファクス、およびコピー機としての機能を兼ねる複合機、等が挙げられる。
【0018】
以下で詳述する各実施形態に係るヒンジはいずれも複合機1の本体2に原稿圧着板3を開閉可能(回動可能)に連結する用途に用いられるが、本発明に係るヒンジの用途はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るヒンジは、「二つの部材のうちの一方の部材(第一連結対象物)に他方の部材(第二連結対象物)を開閉可能に連結する用途」に広く適用可能である。
本発明に係るヒンジが適用される他の用途の具体例としては、事務機器の本体にトナーカートリッジを交換するためのハッチ(蓋)を開閉可能に連結する用途、自動車の車体にボンネットを開閉可能に連結する用途、便器に便座を開閉可能に連結する用途、等が挙げられる。
【0019】
以下の説明では、原稿圧着板3が閉じているとき(原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接しているとき)の原稿圧着板3の回動角度θ(より厳密には、本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ)を「0°」とし、原稿圧着板3が開く方向に回動した場合に回動角度θが増加する(回動角度θが正になる)ように原稿圧着板3の回動角度θを定義する(
図1参照)。本実施形態において、本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θは、後述する第二ウイング部材の第一ウイング部材に対する閉状態からの回動角度とも一致する。このため、本実施形態では双方とも「回動角度θ」と記載する。
【0020】
以下では、
図1から
図11を用いて本発明に係るヒンジの一実施形態であるヒンジ100について説明する。
図1に示す如く、ヒンジ100は複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する。
図2から
図9に示す如く、ヒンジ100は、固定部材10と、回動部材20と、回動ピン30と、スライダ40と、一対の付勢部材50・50と、を具備する。
以下では便宜上、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(回動角度θ=0°のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ100の上下方向、前後方向および左右方向に対応させて)ヒンジ100についてを説明する。
【0021】
固定部材10は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。固定部材10は上下方向を長手方向とする略棒状の部材である。固定部材10は複合機1の本体2に固定される。
固定部材10は、左右一対の支持部11・11と、カム部12と、を備える。
【0022】
固定部材10の支持部11は、固定部材10の上後部において左部及び右部からそれぞれ上方に突出する。固定部材10の支持部11は、回動ピン30を介して回動部材20を回動可能に支持する。固定部材10の支持部11には、回動ピン30が挿入される貫通孔が形成される。
【0023】
固定部材10のカム部12は、固定部材10の上前部において上方に突出し、上端部が曲面で構成される。固定部材10のカム部12の上端は、支持部11の上端(回動軸)よりも上方に位置する。固定部材10のカム部12は、支持部11の前方(回動軸よりも前方)に配置され、カム部12の後端部と支持部11の前端部とが連続する。
【0024】
回動部材20は本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態である。回動部材20は、回動ピン30を介して固定部材10に回動可能に支持される。回動部材20は、複合機1の原稿圧着板3に固定される。
回動部材20は、下部に開口部23を有し、上部に底部を有する略筒状の部材である。回動部材20の前後方向の長さは、固定部材10の前後方向の長さよりも長く構成される。回動部材20は、後面左右において後方に行くに従って縮幅される傾斜面で構成され、後面左右中央において後方に突出するように形成される。
回動部材20は、突出部21と、スライダ収容部22と、を備える。
【0025】
回動部材20の突出部21は、後部左右中央の下端から下方に突出する。回動部材20の突出部21は、回動部材20の開口部23の後下端縁部から回動部材20の開口部23の外側に突出する。回動部材20の突出部21の前面は、回動部材20の内部後面から連接するようにして形成され、回動部材20の内部後面と面一に構成される。回動部材20の突出部21は、固定部材10の一対の支持部11・11の間に挟まれるように配置される。回動部材20の突出部21には、回動ピン30が挿入される貫通孔が形成される。
【0026】
回動部材20のスライダ収容部22は、本発明に係る収容部の実施の一形態である。回動部材20のスライダ収容部22は、回動部材20の内部および突出部21の前面で囲まれる空間で構成される。回動部材20のスライダ収容部22は、突出部21および回動ピン30よりも前方に配置される。回動部材20のスライダ収容部22には、スライダ40が収容される。
【0027】
回動ピン30は本発明に係る「第一ウイング部材に対する第二ウイング部材の回動軸(第二ウイング部材を第一ウイング部材に回動可能に連結する回動軸)」の実施の一形態であり、概ね円柱形状の部材である。回動ピン30は、固定部材10の支持部11の貫通孔及び回動部材20の突出部21の貫通孔に挿通される。
【0028】
ここで、ヒンジ100では、回動部材20が固定部材10に最も近接して固定部材10に対して回動部材20が閉じている状態(回動角度θ=0°)を閉状態とし、固定部材10に対して回動部材20が開いている状態を開状態とする。また、ヒンジ100では、回動部材20が固定部材10に最も離間している状態(回動角度θ=60°)を全開状態とする。なお、ヒンジ100では、固定部材10に対して回動部材20が閉状態の時の回動角度θ、また、固定部材10に対して回動部材20が全開状態の時の回動角度θについては、それぞれこのような角度に限定するものではなく、仕様に応じて適宜設定することができる。
【0029】
スライダ40は、回動部材20の開口側または底部側、即ち、固定部材10のカム部12に近接または離間する方向(回動部材20が閉状態において上下方向)に摺動可能に、回動部材20のスライダ収容部22に収容される。スライダ40は、回動部材20が開く方向または閉じる方向に回動したときに、回動部材20のスライダ収容部22に収容された状態で、回動部材20の内面および突出部21の前面に当接した状態で移動可能に構成される。スライダ40は、上部に開口部を有し、下部に底部を有する筒状の部材である。スライダ40は樹脂材料からなる。
スライダ40は、一対の付勢部材収容部41・41と、当接部42と、を備える。
【0030】
スライダ40の付勢部材収容部41は、スライダ40の内部の空間で構成される。スライダ40の内部において左方の空間と右方の空間とを隔てる壁が立設されることによって、スライダ40の内部の空間において左方と右方とにそれぞれ付勢部材収容部41が形成される。スライダ40の左方と右方との付勢部材収容部41にはそれぞれ付勢部材50が収容される。
【0031】
スライダ40の当接部42は、固定部材10のカム部12に当接する。スライダ40当接部42は、スライダ40の底部の下面中央から下方に突出する。スライダ40の当接部42は、略半球状に形成される。
【0032】
付勢部材50は、金属製の巻きバネ(圧縮バネ)で構成される。一対の付勢部材50・50は、スライダ40の付勢部材収容部41に左右に並べて収納されて、回動部材20内に配置される。付勢部材50の上端部は回動部材20の底部の下面に当接し、付勢部材50の下端部はスライダ40の底部の上面に当接する。
付勢部材50は、その弾性力によって固定部材10のカム部12に近接する方向(回動部材20が閉状態において下方)にスライダ40を付勢する。付勢部材50は、スライダ40を付勢することによって、回動部材20が閉状態または閉状態においてもスライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12とが当接した状態とし、固定部材10に対して回動部材20を開く方向に付勢する。
付勢部材50の付勢力は、ヒンジ100または事務機1等の仕様に応じて適宜設定される。付勢部材50は、例えば、固定部材10に対する回動部材20の回動角度θが所定の角度の範囲にあるときには回動部材20の回動位置を保持し、所定の角度以上のときには回動部材20が開く方向に回動し、また、所定の角度以下のときには回動部材20が閉じる方向に回動する、付勢力を有する設定とされる。
【0033】
ここで、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12とは、互いの先端部から若干オフセットした位置(スライダ40の当接部42の先端部の方が、固定部材10のカム部12の先端部よりも若干前方の位置)で当接する。このような状態で、付勢部材50によってスライダ40がカム部12側に付勢されることから、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分(作用点)から引いた作用線X(付勢部材50によってスライダ40がカム部12側に付勢されることによって生じる力の方向に引いた直線)は、側面視で後下方に引かれる(
図9参照)。
【0034】
このように構成されるヒンジ100では、固定部材10に対して回動部材20が閉状態においては、スライダ40は回動部材20のスライダ収容部22内の比較的上部(回動部材20の比較的底部側)に配置される。このとき、スライダ40の当接部42は、回動部材20の開口部23から最も離間した位置に配置される。
そして、回動部材20が閉状態から開く方向に回動していくと(固定部材10に対する回動部材20の回動角度θが大きくなっていくと)、付勢部材50によって付勢されることによって、スライダ40が固定部材10のカム部12に近接する方向(回動部材20の開口部23側)に移動していく。
また、回動部材20が開状態から閉じる方向に回動していくと(固定部材10に対する回動部材20の回動角度θが小さくなっていくと)、固定部材10のカム部12に押し込まれるようにして、スライダ40が固定部材10のカム部12に離間する方向(回動部材20の底部側)に移動していく。
【0035】
また、固定部材10に対して回動部材20が閉状態のとき、固定部材10のカム部12の先端部が、回動部材20のスライダ収容部22内に入り込んだ状態となる。つまり、回動部材20が閉状態のとき、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分が、回動部材20のスライダ収容部22内に位置し、また、回動ピン30の軸心よりも上方(回動部材20の底部側)に位置する。このとき、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分は、前後方向(スライダ40の移動方向に対して直交する方向)対して略40°の回動ピン30から引いた線上(40°よりも上方(スライダ40が固定部材10のカム部12から離間する方向))に位置する。またこのとき、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分は、回動部材20の開口部23から最も離間した位置に配置される。
そして、回動部材20が閉状態から開く方向に回動していくと(固定部材10に対する回動部材20の回動角度θが大きくなっていくと)、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分は、スライダ40が固定部材10のカム部12に近接する方向(回動部材20の開口部23側)に変遷していく。固定部材10に対する回動部材20の回動角度θ=50°以上となった状態で、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分は、回動部材20のスライダ収容部22外に位置する。
【0036】
このように、ヒンジ100では、固定部材10に対して回動部材20が閉状態のとき、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分が回動部材20のスライダ収容部22内に位置することから、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分が回動部材20のスライダ収容部22外に位置するものに比べて、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分から引いた作用線Xに対する回動ピン30(回動ピン30の軸心)からの最短距離Y(腕の長さ)を比較的短く構成することができる。
したがって、ヒンジ100によれば、回動部材20が閉状態の近傍においてヒンジトルクを低下させることができ(
図10参照)、例えば、固定部材10に対して回動部材20を開状態から閉状態とする際に作業者の意思に反して複合機1の原稿圧着板3が本体2に接地しない状態となることを抑制することができ、固定部材10に対して回動部材20を開状態から閉状態とする動作をスムーズに行うことができる。
【0037】
固定部材10に対して回動部材20が閉状態のとき、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分から引いた作用線Xに対する回動ピン30(回動ピン30の軸心)からの最短距離Yを比較的短く構成するにあたって、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分が、前後方向(スライダ40の移動方向に対して直交する方向)に対して40°の回動ピン30から引いた線上に位置することに限定されない。
もっとも、固定部材10に対して回動部材20が閉状態のとき、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分から引いた作用線Xに対する回動ピン30からの最短距離Yを比較的短く構成するにあたって、少なくとも、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分が、前後方向に対して20°の回動ピン30から引いた線よりも上方(スライダ40が固定部材10のカム部12から離間する方向)に位置する構成とすることが好ましい。
また、固定部材10に対して回動部材20が閉状態のとき、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分から引いた作用線Xに対する回動ピン30からの最短距離Yを比較的短く構成するにあたって、スライダ40の当接部42と固定部材10のカム部12との当接する部分が、前後方向に対して30°の回動ピン30から引いた線よりも上方に位置する構成とすることがより好ましい。
【0038】
回動部材20の開口部23における回動ピン30の周囲を構成する部分が切欠かれて構成される。回動部材20の開口部23は、後下縁部が前下後上に斜めに切欠かれ、さらに、後縁部の左右中途部が上方に切欠かれるように形成される。
このように構成さえることから、固定部材10に対して回動部材20が開く方向に回動したときに、回動部材20の後下端部またはスライダ40の底部等と、固定部材10の上部(例えば、固定部材10のカム部12)とが接触することによって回動部材20の回動範囲を狭くすることを抑制することができる。
【0039】
また、回動部材20の突出部21は開口部23の縁部から突出し、スライダ40は回動部材20の開口部23の外側において回動部材20の突出部21の前面に当接した状態で移動可能に構成されることから、例えば、回動部材20が全開状態近くまで回動してスライダ40が回動部材20の開口部23に近接する方向に移動したときでも、回動部材20の開口部23の外側においてスライダ40の後面と突出部21の前面とが当接した状態となっている。
このため、ヒンジ100では、固定部材10に対して回動部材20が回動してスライダ40が回動部材20の開口部23の近傍に移動したときでも、スライダ40が倒れ状態となることを防止しスライダ40の移動動作を安定させることができる。
【0040】
また、ヒンジ100では、付勢部材50はスライダ40の付勢部材収容部41に収納されて回動部材20内に配置され、回動部材20は、固定部材10の一対の支持部11・11の間に挟まれるように回動部20の突出部21が配置された状態で、固定部材10に対して回動可能に支持される。このように構成されることから、ヒンジ100によれば、スライダ40および付勢部材50が固定部材10内に配置されるものであって、固定部材10の一対の支持部11・11の間に挟まれるように回動部20の突出部21が配置された状態で回動部材20が固定部材10に対して回動可能に支持される構成のものに比べて、回動ピン30周り(回動ピン30左右方向の幅)の構成をコンパクトにすることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 複合機
2 本体
3 原稿圧着版
10 固定部材
11 支持部
12 カム部
20 回動部材
21 突出部
22 スライダ収容部
23 開口部
30 回動ピン
40 スライダ
41 付勢部材収容部
42 当接部
50 付勢部材