(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】追跡装置、追跡方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/20 20170101AFI20230523BHJP
【FI】
G06T7/20 300B
(21)【出願番号】P 2019024020
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】関原 忠
(72)【発明者】
【氏名】深谷 安利
(72)【発明者】
【氏名】榊原 将城
(72)【発明者】
【氏名】名和 佑記
(72)【発明者】
【氏名】多田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】原田 久光
【審査官】片岡 利延
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-257321(JP,A)
【文献】特開2015-041383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離情報を有する第一の画像を用いて生成された三次元情報に基づいて、撮像された対象物に含まれる所定部位それぞれに対して三次元の追跡領域を設定する、設定手段と、
前記第一の画像が撮像された後、時系列に撮像された第二の画像において、前記追跡領域それぞれの移動先となる領域を追跡する、追跡手段と、
前記移動先となる領域間の距離と、対応する前記追跡領域間の距離との差が所定距離以上である場合、前記移動先となる領域を追跡に用いないように無効化する、領域無効化手段と、を有
し、
前記設定手段は、前記対象物が頭部である場合、鼻、右耳、左耳、頭頂部、顎のうち一つ以上に対して前記追跡領域を設定し、
前記移動先となる領域間の距離は、前記右耳と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記右耳と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記左耳と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記左耳と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離のうち一つ以上を用いる、
ことを特徴とする追跡装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の追跡装置であって、
前記移動先となる領域間の距離は、前記鼻と前記右耳とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記左耳とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻に対応する前記移動先となる領域と前記対象物の位置との距離のうち一つ以上を用いる
ことを特徴とする追跡装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の追跡装置であって、
前記移動先となる領域が無効化されている場合、無効化されていない前記移動先となる領域と、前記追跡領域間の距離とを用いて、無効化されている前記移動先となる領域の替わりの新たな領域を推定する、推定手段を有する
ことを特徴とする追跡装置。
【請求項4】
(a)距離情報を有する第一の画像を用いて生成された三次元情報に基づいて、撮像された対象物に含まれる所定部位それぞれに対して三次元の追跡領域を設定する、ステップと、
(b)前記第一の画像が撮像された後、時系列に撮像された第二の画像において、前記追跡領域それぞれの移動先となる領域を追跡する、ステップと、
(c)前記移動先となる領域間の距離と、対応する前記追跡領域間の距離との差が所定距離以上である場合、前記移動先となる領域を追跡に用いないように無効化する、ステップと、を有
し、
前記(a)のステップにおいて、前記対象物が頭部である場合、鼻、右耳、左耳、頭頂部、顎のうち一つ以上に対して前記追跡領域を設定し、
前記移動先となる領域間の距離は、前記右耳と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記右耳と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記左耳と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記左耳と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離のうち一つ以上を用いる、
ことを特徴とする追跡方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の追跡方法であって、
前記移動先となる領域間の距離は、前記鼻と前記右耳とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記左耳とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻に対応する前記移動先となる領域と前記対象物の位置との距離のうち一つ以上を用いる
ことを特徴とする追跡方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の追跡方法であって、
(d)前記移動先となる領域が無効化されている場合、無効化されていない前記移動先となる領域と、前記追跡領域間の距離とを用いて、無効化されている前記移動先となる領域の替わりの新たな領域を推定する、ステップを更に有する
ことを特徴とする追跡方法。
【請求項7】
コンピュータに、
(a)距離情報を有する第一の画像を用いて生成された三次元情報に基づいて、撮像された対象物に含まれる所定部位それぞれに対して三次元の追跡領域を設定する、ステップと、
(b)前記第一の画像が撮像された後、時系列に撮像された第二の画像において、前記追跡領域それぞれの移動先となる領域を追跡する、ステップと、
(c)前記移動先となる領域間の距離と、対応する前記追跡領域間の距離との差が所定距離以上である場合、前記移動先となる領域を追跡に用いないように無効化する、ステップと、を実行させ
、
前記(a)のステップにおいて、前記対象物が頭部である場合、鼻、右耳、左耳、頭頂部、顎のうち一つ以上に対して前記追跡領域を設定し、
前記移動先となる領域間の距離は、前記右耳と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記右耳と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記左耳と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記左耳と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離のうち一つ以上を用いる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項
7に記載のプログラムであって、
前記移動先となる領域間の距離は、前記鼻と前記右耳とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記左耳とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻に対応する前記移動先となる領域と前記対象物の位置との距離のうち一つ以上を用いる
ことを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項
8に記載のプログラムであって、
前記コンピュータに、
(d)前記移動先となる領域が無効化されている場合、無効化されていない前記移動先となる領域と、前記追跡領域間の距離とを用いて、無効化されている前記移動先となる領域の替わりの新たな領域を推定する、ステップを更に実行させる
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を追跡する、追跡装置、追跡方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ジェスチャにより機器を操作する、ジェスチャ操作が普及している。例えば、自動車の運転中において、運転者が、運転に支障がないように、音響映像機器を操作する、ジェスチャ操作などが知られている。
【0003】
ところで、運転中のジェスチャ操作において、運転者のジェスチャを特定するためには、運転者の頭部、手などの部位を精度よく追跡する必要がある。
【0004】
関連する技術として、動画像から高速に顔と当該顔の部位を追跡する技術が開示されている。その技術によれば、まず、最初のフレーム画像を用いて求めた顔領域に基づいて、顔の部位の位置を検出する。続いて、以降のフレーム画像に対して、検出した顔の部位の位置に基づいて設定された探索領域において顔の部位を追跡する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、顔の部位をノードとして生成した二次元グラフの変形に基づいて、顔の向き、位置を推定しているため、顔の部位にオクルージョン、ノイズなどが発生した場合、顔の部位を精度よく追跡することが困難となる。
【0007】
本発明の目的の一例は、対象物の追跡を精度よく行う追跡装置、追跡方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における追跡装置は、
距離情報を有する第一の画像を用いて生成された三次元情報に基づいて、撮像された対象物に含まれる所定部位それぞれに対して三次元の追跡領域を設定する、設定部と、
前記第一の画像が撮像された後、時系列に撮像された第二の画像において、前記追跡領域それぞれの移動先となる領域を追跡する、追跡部と、
前記移動先となる領域間の距離と、対応する前記追跡領域間の距離との差が所定距離以上である場合、前記移動先となる領域を追跡に用いないように無効化する、領域無効化部と、
を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における追跡方法は、
(a)距離情報を有する第一の画像を用いて生成された三次元情報に基づいて、撮像された対象物に含まれる所定部位それぞれに対して三次元の追跡領域を設定する、ステップと、
(b)前記第一の画像が撮像された後、時系列に撮像された第二の画像において、前記追跡領域それぞれの移動先となる領域を追跡する、ステップと、
(c)前記移動先となる領域間の距離と、対応する前記追跡領域間の距離との差が所定距
離以上である場合、前記移動先となる領域を追跡に用いないように無効化する、ステップと、
を有することを特徴とする。
【0010】
更に、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるプログラムは、
コンピュータに、
(a)距離情報を有する第一の画像を用いて生成された三次元情報に基づいて、撮像された対象物に含まれる所定部位それぞれに対して三次元の追跡領域を設定する、ステップと、
(b)前記第一の画像が撮像された後、時系列に撮像された第二の画像において、前記追跡領域それぞれの移動先となる領域を追跡する、ステップと、
(c)前記移動先となる領域間の距離と、対応する前記追跡領域間の距離との差が所定距離以上である場合、前記移動先となる領域を追跡に用いないように無効化する、ステップと、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、対象物の追跡を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図3は、追跡装置1を有するシステムの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、特徴量の抽出を説明するための図である。
【
図6】
図6は、特徴量の抽出を説明するための図である。
【
図7】
図7は、追跡領域ごとの頻度分布(ヒストグラム)を示す図である。
【
図8】
図8は、領域の無効化を説明するための図である。
【
図9】
図9は、領域の無効化を説明するための図である。
【
図11】
図11は、追跡装置を実現するコンピュータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について、
図1から
図11を参照しながら説明する。
【0014】
[装置構成]
最初に、
図1を用いて、本実施の形態における追跡装置1の構成について説明する。
図1は、追跡装置の一例を示す図である。
【0015】
図1に示す追跡装置1は、追跡を精度よく行う装置である。また、
図1に示すように、追跡装置1は、設定部2と、追跡部3と、領域無効化部4とを有する。
【0016】
このうち、設定部2は、距離情報を有する画像(第一の画像:距離画像)を用いて生成された三次元情報に基づいて、撮像された対象物の画像に含まれる所定部位それぞれに対して三次元の追跡領域を設定する。追跡部3は、第一の画像が撮像された後、時系列に撮像された画像(第二の画像:距離画像)において、追跡領域それぞれの移動先となる領域を追跡する。領域無効化部4は、移動先となる領域間の距離と、対応する追跡領域間の距離との差が所定距離以上である場合、移動先となる領域を追跡に用いないように無効化する。
【0017】
距離情報は、対象物と撮像装置との距離を示す情報である。また、距離情報は、例えば、画素に関連付けられている。
【0018】
対象物は、例えば、人間の頭部、動物の頭部、ロボットの頭部などの追跡をする対象である。所定部位は、頭部の場合、頭部に含まれる部位である。例えば、耳、鼻、頭頂部、顎などである。ただし、所定部位は、上述した部位に限定されるものではない。
【0019】
追跡について、
図2を用いて具体的に説明する。
図2は、追跡を説明するための図である。例えば、距離画像20aに撮像された人間の頭部21aを追跡する場合、設定部2は、まず、鼻に対して追跡領域22a、頭頂部に対して追跡領域23a、右耳に対して追跡領域24a、左耳に対して追跡領域25a、顎に対して追跡領域26aを設定する。追跡領域は、撮像された所定部位それぞれに対して設定する三次元の領域である。
【0020】
続いて、追跡部3は、距離画像20aが撮像された後に撮像された距離画像20bにおいて、追跡領域22a、23a、24a、25a、26aそれぞれが移動したと考えられる領域を推定する。すなわち、追跡部3は、追跡領域22a、23a、24a、25a、26aそれぞれの移動先となる領域22b、23b、24b、25b、26bを追跡する。
【0021】
このように、本実施の形態においては、距離画像を用いて追跡領域を設定し、設定した追跡領域の移動先となる領域を推定することで、撮像した対象物の追跡を精度よく行うことができる。
【0022】
また、本実施の形態においては、オクルージョンの影響により、追跡領域の移動先となる領域が、誤った領域となった場合でも、誤った領域を無効化して、正常な領域を用いて対象物の追跡ができる。
【0023】
更に、本実施の形態においては、オクルージョンの影響がなくなった場合、移動先となる領域が正常になると、移動先となる領域を有効化して、新たな追跡領域にすることができる。
【0024】
[システム構成]
続いて、
図3を用いて、本実施の形態における追跡装置1の構成をより具体的に説明する。
図3は、追跡装置1を有するシステムの一例を示す図である。
【0025】
図3に示すように、本実施の形態におけるシステム30は、追跡装置1に加えて、撮像装置31を有する。また、追跡装置1は、設定部2、追跡部3に加え、領域無効化部4、推定部5、領域有効化部6を有する。設定部2は、部位識別器34、領域設定部35を有する。追跡部3は、基準特徴量抽出部36、周辺領域設定部37、領域検出部38を有する。
【0026】
撮像装置31は、距離画像を生成する装置である。撮像装置31は、例えば、TOF(Time of Flight)カメラなどである。
【0027】
追跡装置について具体的に説明する。
入力処理部33は、撮像装置31から距離画像を取得して、取得した距離画像を三次元情報に変換し、設定部2へ出力する。三次元情報は、対象物の表面の座標を表す情報で、例えば、3D(Three Dimensions)点群などである。
【0028】
設定部2は、運用時において、オクルージョン、ノイズなどが発生していない時間(正常時)に撮像した基準となる距離画像(第一の距離画像)に基づいて生成された三次元情報を用いて、撮像された所定部位の画像それぞれに対して三次元の追跡領域を設定する。
【0029】
具体的には、設定部2が有する部位識別器34は、運用時において、まず、基準となるデータを入力とし、部位の領域を推定する。続いて、設定部2が有する領域設定部35は、推定した所定部位の領域それぞれに対して、推定した所定部位の領域の一部又は全体を含む三次元の追跡領域を設定する。
【0030】
設定部2の詳細について説明する。
部位識別器34は、所定部位を推定するために用いる学習モデルである。具体的には、部位識別器34は、学習時において、あらかじめ用意した複数の距離画像を用いて抽出した所定部位の特徴量を入力とし、機械学習をさせる。
【0031】
例えば、所定部位が耳、鼻、頭頂部、顎である場合、部位識別器34は、耳、鼻、頭頂部、顎に対応する領域を推定するために用いる学習モデルである。機械学習の方式としては、例えば、ニューラルネットワーク、線形判別分析法(Linear Discriminant Analysis:LDA)、サポートベクトルマシン(Support Vector Machine:SVM)、ブースティング、ランダムフォレスト(Random Forests:RFs)などがあげられる。なお、ブースティングとしては、例えば、AdaBoost(Adaptive Boosting)、又はReal AdaBoostなどがあげられる。なお、所定部位ごとに識別器を用意してもよい。
【0032】
また、部位識別器34は、上述したように、直接、所定部位を推定してもよいが、最初に、頭部の領域を推定し、その後、推定した頭部の領域を用いて、耳、鼻、頭頂部、顎を推定してもよい。
【0033】
領域設定部35は、推定した所定部位の領域の一部又は全体を含むように追跡領域を設定する。追跡領域は、例えば、
図2に示した追跡領域22aから26aのような直方体、又は立方体などの形状をした三次元領域などである。なお、追跡領域の形状は、直方体、立方体に限定されるものでなく、三次元形状であればよい。
【0034】
追跡部3は、追跡領域の移動先となる領域を追跡する。具体的には、追跡部3が有する基準特徴量抽出部36は、まず、基準となる距離画像(第一の距離画像)に基づいて設定部2により設定された追跡領域それぞれについて、特徴量を抽出する。
【0035】
続いて、追跡部3が有する周辺領域設定部37は、基準となる距離画像が撮像された後に撮像された距離画像(第二の距離画像)に、基準となる距離画像に設定された追跡領域に基づいて、周辺領域を設定する。
【0036】
続いて、追跡部3が有する領域検出部38は、周辺領域それぞれについて、特徴量を算出する。続いて、領域検出部38は、追跡領域の特徴量と、追跡領域に対応する周辺領域の特徴量とを比較し、比較した結果に基づいて追跡領域の移動先となる領域を検出し、検出した周辺領域を新たな追跡領域とする。
【0037】
追跡部3の詳細について、
図4、
図5、
図6を用いて説明する。
図4は、追跡を説明するための図である。
図5、
図6は、特徴量の抽出を説明するための図である。
【0038】
基準特徴量抽出部36は、基準となる距離画像を用いて設定された追跡領域から特徴量
を抽出する。具体的には、基準特徴量抽出部36は、
図4に示す時間t1において、追跡領域22aから26aそれぞれの特徴量を抽出する。
【0039】
基準特徴量抽出部36は、まず、時間t1において、追跡領域に複数のボクセルを設定する。例えば、
図5に示すように、追跡領域に複数のボクセル51を設定する。ボクセル51は、例えば、一つ以上の三次元座標を有する三次元領域である。
【0040】
続いて、基準特徴量抽出部36は、ボクセル51を順次選択し、
図6に示すように、選択したボクセル51を中心ボクセルPとした二つの三次元領域R、Sを設定する。三次元領域Rは、例えば、ボクセルPを中心とした一辺がrの立方体で、複数のボクセル51により構成される。また、三次元領域Sは、例えば、ボクセルPを中心とした一辺がs(>r)の立方体で、三次元領域Rより多くのボクセルにより構成される。また、三次元領域R、Sの大きさは、実験又はシミュレーションなどにより決定する。
【0041】
なお、三次元領域R、Sは、ボクセルPが追跡領域に含まれる場合に算出対象とする。対して、三次元領域R、Sが追跡領域からはみ出ている場合には、追跡領域の外側のボクセルを使用する。なお、ボクセルは、頭部を検出したい領域全体に設定するが、その領域から三次元領域R、Sがはみ出る場合は、追跡領域を無効化する。
【0042】
続いて、基準特徴量抽出部36は、三次元領域R内にあるボクセル51に対して、分散共分散行列を生成し、生成した分散共分散行列の最小固有値λr0を算出する。また、基準特徴量抽出部36は、三次元領域S内にあるボクセル51に対して、分散共分散行列を生成し、生成した分散共分散行列の最小固有値λs0を算出する。
【0043】
続いて、基準特徴量抽出部36は、最小固有値λr0、λs0の単位ベクトル、すなわち三次元領域R、Sそれぞれについて法線ベクトルNr、Nsを算出する。続いて、基準特徴量抽出部36は、法線ベクトルNr、Nsの内積を算出する。なお、内積を算出することにより、回転に対して不変とすることができる。また、内積を算出することにより、計算量(ベクトルの次元数)を減らすことができる。
【0044】
続いて、基準特徴量抽出部36は、追跡領域に含まれる他のボクセル51を選択して、上述したように選択したボクセル51に対して内積を算出する。例えば、基準特徴量抽出部36は、追跡領域内のボクセル51の一部又は全てに対して、内積を算出する。
【0045】
続いて、基準特徴量抽出部36は、算出した複数の内積を用いて特徴量を算出する。具体的には、基準特徴量抽出部36は、
図4に示す時間t1において、追跡領域22aから26aそれぞれの特徴量を抽出する。特徴量は、例えば、ボクセル51ごとに算出した内積の頻度分布などである。
図7は、追跡領域ごとの頻度分布(ヒストグラム)を示す図である。なお、頻度分布をボクセル数で正規化して、特徴量としてもよい。
【0046】
周辺領域設定部37は、基準となる距離画像が撮像された後に撮像された距離画像を用いて、追跡領域それぞれに対応する位置に周辺領域を設定する。具体的には、周辺領域設定部37は、
図4に示す時間t2において、基準となる距離画像が撮像された後に撮像された距離画像に、追跡領域22aに対応する位置に周辺領域42を設定し、追跡領域23aに対応する位置に周辺領域43を設定し、追跡領域24cに対応する位置に周辺領域44を設定し、追跡領域25aに対応する位置に周辺領域45を設定し、追跡領域26aに対応する位置に周辺領域46を設定する。
【0047】
なお、周辺領域46の大きさは、例えば、フレーム間の経過時間を元に、静止状態から想定する最大の速度で移動した場合の移動距離とする。なお、単位はボクセルとする。ま
た、周辺領域46の中心位置は、例えば、追跡中の対象物が移動中の場合、前々回、前回における顔位置から移動ベクトルを算出し、前回の顔位置に加算した位置を中心とする。
【0048】
領域検出部38は、周辺領域を用いて移動先となる領域を検出する。具体的には、領域検出部38は、
図4に示す時間t3において、周辺領域42、43、44、45、46それぞれから移動先となる領域42′、43′、44′、45′、46′を検出する。
【0049】
領域検出部38は、まず、時間t3において、上述したボクセル51を設定したように、周辺領域に複数のボクセルを設定する。続いて、領域検出部38は、設定したボクセル51を順次選択し、
図6に示すように、選択したボクセル51を中心ボクセルPとした二つの三次元領域R、Sを設定する。続いて、領域検出部38は、三次元領域R内にあるボクセル51に対して、分散共分散行列を生成し、生成した分散共分散行列の最小固有値λr0を算出する。また、領域検出部38は、三次元領域S内にあるボクセル51に対して、分散共分散行列を生成し、生成した分散共分散行列の最小固有値λs0を算出する。
【0050】
続いて、領域検出部38は、最小固有値λr0、λs0の単位ベクトル、すなわち三次元領域R、Sそれぞれについて法線ベクトルNr、Nsを算出する。続いて、領域検出部38は、法線ベクトルNr、Nsの内積を算出する。
【0051】
続いて、領域検出部38は、周辺領域に含まれる他のボクセル51を選択して、上述したように選択したボクセル51に対して内積を算出する。例えば、領域検出部38は、周辺領域内のボクセル51の一部又は全てに対して、内積を算出する。
【0052】
続いて、領域検出部38は、時間t3において、周辺領域内に、追跡領域と同じ大きさの複数の領域を設定して、設定した領域ごとに、設定した領域に含まれる複数の内積を用いて特徴量を算出する。特徴量は、例えば、設定した領域内のボクセル51ごとの内積の頻度分布などである。なお、頻度分布をボクセル数で正規化して、特徴量としてもよい。
【0053】
続いて、領域検出部38は、基準特徴量抽出部36で抽出した特徴量と、領域検出部38で抽出した複数の特徴量(設定した領域それぞれの特徴量)とを比較する。領域検出部38は、領域検出部38で抽出した複数の特徴量のうち、基準特徴量抽出部36を用いて抽出した特徴量に最も類似している特徴量に対応する設定した領域を検出する。なお、類似度は、例えば、カイ二乗検定、ヒストグラムインタセクション、バタチャリヤ距離などを用いる。
【0054】
続いて、領域検出部38は、時間t4において、検出した領域42′、43′、44′、45′、46′それぞれを、新たな追跡領域22b、23b、24b、25b、26bに設定する。
【0055】
領域無効化部4は、移動先となる領域間の距離に基づいて、移動先となる領域を無効化する。具体的には、領域無効化部4は、まず、正常時に設定した追跡領域を用いて、追跡領域間の距離を算出する。続いて、領域無効化部4は、追跡領域の移動先となる領域を用いて、移動先となる領域間の距離を算出する。
【0056】
図8は、領域の無効化を説明するための図である。
図8のAは、正常時に設定された追跡領域22aから26aを示す図である。
図8のBは、移動先となる領域22bから26bを示す図である。
【0057】
領域無効化部4は、まず、追跡領域22a、23a間の距離L1aと、追跡領域22a、24a間の距離L2aと、追跡領域22a、25a間の距離L3aと、追跡領域22a
、26a間の距離L4aとを算出する。また、領域無効化部4は、追跡領域23a、24a間の距離L5a、追跡領域23a、25a間の距離L6a、追跡領域24a、26a間の距離L7a、追跡領域25a、26a間の距離L8aとを算出する。
【0058】
続いて、領域無効化部4は、移動先となる領域22b、23b間の距離L1bと、移動先となる領域22b、24b間の距離L2bと、移動先となる領域22b、25b間の距離L3bと、移動先となる領域22b、26b間の距離L4bとを算出する。また、領域無効化部4は、移動先となる領域23b、24b間の距離L5b、移動先となる領域23b、25b間の距離L6b、移動先となる領域24b、26b間の距離L7b、追跡領域25b、26b間の距離L8bとを算出する。
【0059】
続いて、領域無効化部4は、追跡領域間の距離L1aからL8aと、移動先となる領域間の距離L1bからL8bとを用いて、追跡領域間の距離と移動先となる領域間の距離との差を算出する。すなわち、差として、sub1(=|L1a-L1b|)、sub2(=|L2a-L2b|)、sub3(=|L3a-L3b|)、sub4(=|L4a-L4b|)、sub5(=|L5a-L5b|)、sub6(=|L6a-L6b|)、sub7(=|L7a-L7b|)、sub8(=|L8a-L8b|)を算出する。
【0060】
続いて、領域無効化部4は、差sub1からsub8と、追跡領域間の距離L1からL8それぞれに対してあらかじめ設定された所定距離Lth1からLth8とを比較する。すなわち、sub1とLth1、sub2とLth2、sub3とLth3、sub4とLth4、sub5とLth5、sub6とLth6、sub7とLth7、sub8とLth8とをそれぞれ比較する。
【0061】
続いて、比較した結果、所定距離以上の差がある場合、領域無効化部4は、異常な位置にある移動先となる領域を検出する。
図8の例では、領域無効化部4は、sub1、sub2、sub4、sub5、sub7は正常であるが、sub3、sub6、sub8は異常であるので、領域25bが異常な位置にあることを検出する。
【0062】
異常な移動先となる領域の検出について説明する。
対象物が頭部で、所定部位が鼻、右耳、左耳、頭頂部、顎である場合を例に説明をする。
【0063】
(1)右耳、左耳、頭頂部、顎に対応する移動先となる領域の異常の検出について
移動先となる領域23b、24b、25b、26bの一部又は全部が、異常な位置にあるか否かは、
図8に示す追跡領域23a、24a、25a、26aと、移動先となる領域23b、24b、25b、26bとを用いて検出する。
【0064】
具体的には、領域無効化部4は、
図8の例では、距離L5a、L6a、L7a、L8aと、距離L5b、L6b、L7b、L8bとを用いて、差sub5、sub6、sub7、sub8を算出する。そして、領域無効化部4は、算出した差sub5、sub6、sub7、sub8と、対応する所定距離Lth5、Lth6、Lth7、Lth8とを用いて、異常な差であるか否かを検出する。
図8の例では、差sub5、sub7は正常で、差sub6、sub8は異常であるので、領域25bが異常な位置にある移動先となる領域となる。
【0065】
(2-1)鼻に対応する移動先となる領域の異常の検出について
図9は、領域の無効化を説明するための図である。
図9のAは、正常時に設定された追跡領域22aから26aを示す図である。
図9のBは、移動先となる領域22bから26bを示す図である。
【0066】
移動先となる領域22bが異常な位置にあるか否かは、
図9に示す追跡領域22a、23a、24a、25a、26aと、移動先となる領域22b、23b、24b、25b、26bとを用いて検出する。
【0067】
具体的には、領域無効化部4は、
図9の例では、距離L1a、L2a、L3a、L4aと、距離L1b、L2b、L3b、L4bとを用いて、差sub1、sub2、sub3、sub4を算出する。そして、領域無効化部4は、算出した差sub1、sub2、sub3、sub4と、対応する所定距離Lth1、Lth2、Lth3、Lth4とを用いて、異常な差であるか否かを検出する。
図9の例では、差sub1、sub2、sub3、sub4が異常であるので、領域22bは異常な位置にある移動先となる領域となる。
【0068】
なお、差sub1、sub2、sub3、sub4のうち一つでも異常がある場合には、領域22bを異常とする。
【0069】
(2-2)鼻に対応する移動先となる領域の異常の検出について
移動先となる領域22bが異常な位置にあるか否かは、
図9に示す追跡領域22a、頭部位置81aと、移動先となる領域22b、頭部位置81bとを用いて検出する。
【0070】
具体的には、領域無効化部4は、
図9の例では、距離L9aと距離L9bとを用いて、差sub9(=|L9a-L9b|)を算出する。そして、領域無効化部4は、算出した差sub9と、対応する所定距離Lth9とを用いて、異常な差であるか否かを検出する。
【0071】
図9の例では、差sub9が異常であるので、領域22bは異常な位置にある移動先となる領域となる。
【0072】
なお、距離L9aは、追跡領域22aと頭部位置81aとの距離を表している。距離L9bは、追跡領域22bと頭部位置81bとの距離を表している。また、頭部位置71aは、追跡領域22aから26aを用いて算出する。71bは、追跡領域22bから26bを用いて算出する。頭部位置の算出方法は、上述した方法に限定されない。
【0073】
続いて、領域無効化部4は、異常な位置にある移動先となる領域を、追跡に用いないように無効化する。
図8の例では、領域25bを無効化する。
図9の例では、領域22bを無効化する。
【0074】
推定部5は、移動先となる領域が無効化されている場合、無効化されていない移動先となる領域と、追跡領域間の距離とを用いて、無効化されている移動先となる領域の替わりの新たな領域を推定する。具体的には、推定部5は、移動先となる領域が三点以上有効である場合、有効な移動先となる領域と、正常時における追跡領域間の距離とを用いて、無効化された領域の替わりとなる新たな領域を推定する。
【0075】
図8の例では、推定部5は、有効な領域22b、23b、26b、正常時の距離L3a、L6a、L8aを用いて、領域25bの替わりとなる新しい領域25b′を推定する。なお、有効な領域23b、24b、26bを利用して推定してもよい。その場合領域25b′が前述した三領域と同じ平面に存在すると仮定し、距離L6a、L8aを用いて算出をする。また、
図9の例では、推定部5は、有効な領域23b、24b、25b、26b、正常時の距離L1a、L2a、L3a、L4aを用いて、領域22bの替わりとなる新しい領域22b′を推定する。
【0076】
領域有効化部6は、推定部5を用いて推定した領域を有効化する。具体的には、領域有効化部6は、
図8の例では、無効化されている領域25bの替わりに、推定した領域25b′を有効化して新たな領域とする。
図9の例では、無効化されている領域22bの替わりに、推定した領域22b′を有効化して新たな領域とする。
【0077】
なお、領域有効化部6は、推定部5が推定できなかった場合、追跡領域と移動先となる領域を用いずに、例えば、頭部領域の3D点群を用いて、再度追跡領域を設定する。
【0078】
[装置動作]
次に、本発明の実施の形態における追跡装置の動作について
図10を用いて説明する。
図10は、追跡装置の動作の一例を示す図である。以下の説明においては、適宜
図2から
図9を参照する。また、本実施の形態では、追跡装置を動作させることによって、追跡方法が実施される。よって、本実施の形態における追跡方法の説明は、以下の追跡装置の動作説明に代える。
【0079】
図10に示すように、最初に、入力処理部33は、撮像装置31から距離画像を取得して、取得した距離画像を三次元情報に変換し、設定部2へ出力する(ステップA1)。
【0080】
続いて、設定部2は、運用時において、オクルージョン、ノイズなどが発生していない時間に撮像した基準となる距離画像(第一の距離画像)に基づいて生成した三次元情報を用いて、撮像された所定部位の画像それぞれに対して三次元の追跡領域を設定する(ステップA2)。
【0081】
具体的には、ステップA2において、設定部2が有する部位識別器34は、運用時において、まず、基準となる3D点群を入力とし、部位識別器34を適用して、部位の領域を推定する。なお、部位識別器34は、所定部位を推定するために用いる学習モデルである。具体的には、部位識別器34は、学習時において、あらかじめ用意した複数の距離画像を用いて抽出した所定部位の特徴量を入力とし、機械学習により生成された学習モデルである。
【0082】
続いて、ステップA2において、設定部2が有する領域設定部35は、推定した所定部位の領域それぞれに対して、推定した所定部位の領域の一部又は全体を含む三次元の追跡領域を設定する。
【0083】
追跡部3は、追跡領域の移動先となる領域を追跡する(ステップA3)。具体的には、ステップA3において、追跡部3が有する基準特徴量抽出部36は、まず、基準となる距離画像(第一の距離画像)に基づいて設定部2により設定された追跡領域それぞれについて、特徴量を抽出する。例えば、基準特徴量抽出部36は、
図4に示す時間t1において、追跡領域22aから26aそれぞれの特徴量を抽出する。
【0084】
続いて、ステップSA3において、追跡部3が有する周辺領域設定部37は、基準となる距離画像が撮像された後に撮像された距離画像を取得し、基準となる距離画像(第一の距離画像)に設定された追跡領域に基づいて、取得した距離画像(第二の距離画像)に周辺領域を設定する。
【0085】
例えば、周辺領域設定部37は、
図4に示す時間t2において、基準となる距離画像が撮像された後に撮像された距離画像に、追跡領域22aに対応する位置に周辺領域42を設定し、追跡領域23aに対応する位置に周辺領域43を設定し、追跡領域24cに対応する位置に周辺領域44を設定し、追跡領域25aに対応する位置に周辺領域45を設定
し、追跡領域26aに対応する位置に周辺領域46を設定する。
【0086】
続いて、ステップA3において、追跡部3が有する領域検出部38は、周辺領域それぞれについて、特徴量を算出する。続いて、ステップA3において、領域検出部38は、追跡領域の特徴量と、追跡領域に対応する周辺領域の特徴量とを比較し、比較した結果に基づいて追跡領域の移動先となる領域を検出し、検出した周辺領域を新たな追跡領域とする。
【0087】
例えば、領域検出部38は、
図4に示す時間t3において、周辺領域42、43、44、45、46それぞれから移動先となる領域42′、43′、44′、45′、46′を検出する。その後、領域検出部38は、時間t4において、検出した領域42′、43′、44′、45′、46′それぞれを、新たな追跡領域22b、23b、24b、25b、26bに設定する。
【0088】
続いて、領域無効化部4は、移動先となる領域間の距離に基づいて、移動先となる領域を無効化する(ステップA4)。具体的には、ステップA4において、領域無効化部4は、まず、正常時に設定した追跡領域を用いて、追跡領域間の距離を算出する。続いて、ステップA4において、領域無効化部4は、追跡領域の移動先となる領域を用いて、移動先となる領域間の距離を算出する。
【0089】
続いて、ステップA4において、領域無効化部4は、追跡領域間の距離と、移動先となる領域間の距離とを用いて、追跡領域間の距離と移動先となる領域間の距離との差を算出する。
【0090】
続いて、ステップA4において、領域無効化部4は、算出した差と、追跡領域間の距離それぞれに対してあらかじめ設定された所定距離とを比較する。比較した結果、所定距離以上の差がある場合、領域無効化部4は、領域無効化部4は、異常な位置にある移動先となる領域を検出する。
図8の例では、領域25bを無効化する。
図9の例では、領域22bを無効化する。
【0091】
推定部5は、移動先となる領域が無効化されている場合、無効化されていない移動先となる領域と、追跡領域間の距離とを用いて、無効化されている移動先となる領域の替わりの新たな領域を推定する(ステップA5)。具体的には、ステップA5において、推定部5は、移動先となる領域が三点以上有効である場合、有効な移動先となる領域と、正常時における追跡領域間の距離とを用いて、無効化された領域の替わりとなる新たな領域を推定する。
【0092】
図8の例では、推定部5は、有効な領域22b、23b、26b、正常時の距離L3a、L6a、L8aを用いて、領域25b′の替わりとなる新しい領域を推定する。また、
図9の例では、推定部5は、有効な領域23b、24b、25b、26b、正常時の距離L1a、L2a、L3a、L4aを用いて、領域22b′の替わりとなる新しい領域を推定する。
【0093】
領域有効化部6は、推定部5を用いて推定した領域を有効化する(ステップA6)。具体的には、ステップA6において、領域有効化部6は、
図8の例では、無効化されている領域25bの替わりに、推定した領域25b′を有効化して新たな領域とする。
図9の例では、無効化されている領域22bの替わりに、推定した領域22b′を有効化して新たな領域とする。
【0094】
なお、ステップA6において、領域有効化部6は、推定部5が推定できなかった場合、
追跡領域と移動先となる領域を用いずに、例えば、頭部領域の3D点群を用いて、再度追跡領域を設定する。
【0095】
続いて、追跡装置1は、上述したステップA1からA6に示した追跡処理を終了する指示を取得した場合、追跡処理を終了する(ステップA7:Yes)。また、追跡処理を継続する場合(ステップA7:No)、ステップA3に移行して、追跡処理を継続する。
【0096】
[本実施の形態の効果]
以上のように本実施の形態によれば、距離画像を用いて追跡領域を設定し、設定した追跡領域の移動先を推定することで、撮像した対象物の追跡を精度よく行うことができる。
【0097】
また、本実施の形態においては、オクルージョン、ノイズなどが発生しても、追跡領域を無効化し、有効な追跡領域を用いて対象物の推定ができる。
【0098】
更に、無効化した追跡領域の替わりの領域を推定し、その推定した領域を有効化して、無効化した追跡領域の替わりにすることで、撮像した対象物の追跡を精度よく行うことができる。
【0099】
[プログラム]
本発明の実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、
図10に示すステップA1からA7を実行させるプログラムであればよい。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態における追跡装置と追跡方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、入力処理部33、設定部2(部位識別器34、領域設定部35)、追跡部3(基準特徴量抽出部36、周辺領域設定部37、領域検出部38)、領域無効化部4、推定部5、領域有効化部6として機能し、処理を行なう。
【0100】
また、本実施の形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されてもよい。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、入力処理部33、設定部2(部位識別器34、領域設定部35)、追跡部3(基準特徴量抽出部36、周辺領域設定部37、領域検出部38)、領域無効化部4、推定部5、領域有効化部6のいずれかとして機能してもよい。
【0101】
[物理構成]
ここで、実施の形態におけるプログラムを実行することによって、追跡装置を実現するコンピュータについて
図11を用いて説明する。
図11は、本発明の実施の形態における追跡装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0102】
図11に示すように、コンピュータ110は、CPU111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。なお、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていてもよい。
【0103】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置である。また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実
施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであってもよい。
【0104】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置があげられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0105】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0106】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)などの汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体があげられる。
【0107】
[付記]
以上の実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。上述した実施の形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)から(付記15)により表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0108】
(付記1)
距離情報を有する第一の画像を用いて生成された三次元情報に基づいて、撮像された対象物に含まれる所定部位それぞれに対して三次元の追跡領域を設定する、設定部と、
前記第一の画像が撮像された後、時系列に撮像された第二の画像において、前記追跡領域それぞれの移動先となる領域を追跡する、追跡部と、
前記移動先となる領域間の距離と、対応する前記追跡領域間の距離との差が所定距離以上である場合、前記移動先となる領域を追跡に用いないように無効化する、領域無効化部と、
を有することを特徴とする追跡装置。
【0109】
(付記2)
付記1に記載の追跡装置であって、
前記設定部は、前記対象物が頭部である場合、鼻、右耳、左耳、頭頂部、顎のうち一つ以上に対して前記追跡領域を設定する
ことを特徴とする追跡装置。
【0110】
(付記3)
付記2に記載の追跡装置であって、
前記移動先となる領域間の距離は、前記右耳と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記右耳と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記左耳と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記左耳と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離のうち一つ以上を用いる
ことを特徴とする追跡装置。
【0111】
(付記4)
付記2又は3に記載の追跡装置であって、
前記移動先となる領域間の距離は、前記鼻と前記右耳とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記左耳とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻に対応する前記移動先となる領域と前記対象物の位置との距離のうち一つ以上を用いる
ことを特徴とする追跡装置。
【0112】
(付記5)
付記4に記載の追跡装置であって、
前記移動先となる領域が無効化されている場合、無効化されていない前記移動先となる領域と、前記追跡領域間の距離とを用いて、無効化されている前記移動先となる領域の替わりの新たな領域を推定する、推定部を有する
ことを特徴とする追跡装置。
【0113】
(付記6)
(a)距離情報を有する第一の画像を用いて生成された三次元情報に基づいて、撮像された対象物に含まれる所定部位それぞれに対して三次元の追跡領域を設定する、ステップと、
(b)前記第一の画像が撮像された後、時系列に撮像された第二の画像において、前記追跡領域それぞれの移動先となる領域を追跡する、ステップと、
(c)前記移動先となる領域間の距離と、対応する前記追跡領域間の距離との差が所定距離以上である場合、前記移動先となる領域を追跡に用いないように無効化する、ステップと、
を有することを特徴とする追跡方法。
【0114】
(付記7)
付記6に記載の追跡方法であって、
前記(a)のステップにおいて、前記対象物が頭部である場合、鼻、右耳、左耳、頭頂部、顎のうち一つ以上に対して前記追跡領域を設定する
ことを特徴とする追跡方法。
【0115】
(付記8)
付記7に記載の追跡方法であって、
前記移動先となる領域間の距離は、前記右耳と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記右耳と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記左耳と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記左耳と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離のうち一つ以上を用いる
ことを特徴とする追跡方法。
【0116】
(付記9)
付記7又は8に記載の追跡方法であって、
前記移動先となる領域間の距離は、前記鼻と前記右耳とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記左耳とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻に対応する前記移動先となる領域と前記対象物の位置との距離のうち一つ以上を用いる
ことを特徴とする追跡方法。
【0117】
(付記10)
付記9に記載の追跡方法であって、
(d)前記移動先となる領域が無効化されている場合、無効化されていない前記移動先となる領域と、前記追跡領域間の距離とを用いて、無効化されている前記移動先となる領域の替わりの新たな領域を推定する、ステップを更に有する
ことを特徴とする追跡方法。
【0118】
(付記11)
コンピュータに、
(a)距離情報を有する第一の画像を用いて生成された三次元情報に基づいて、撮像された対象物に含まれる所定部位それぞれに対して三次元の追跡領域を設定する、ステップと、
(b)前記第一の画像が撮像された後、時系列に撮像された第二の画像において、前記追跡領域それぞれの移動先となる領域を追跡する、ステップと、
(c)前記移動先となる領域間の距離と、対応する前記追跡領域間の距離との差が所定距離以上である場合、前記移動先となる領域を追跡に用いないように無効化する、ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【0119】
(付記12)
付記11に記載のプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記(a)のステップにおいて、前記対象物が頭部である場合、鼻、右耳、左耳、頭頂部、顎のうち一つ以上に対して前記追跡領域を設定する
ことを特徴とするプログラム。
【0120】
(付記13)
付記12に記載のプログラムであって、
前記移動先となる領域間の距離は、前記右耳と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記右耳と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記左耳と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記左耳と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離のうち一つ以上を用いる
ことを特徴とするプログラム。
【0121】
(付記14)
付記12又は13に記載のプログラムであって、
前記移動先となる領域間の距離は、前記鼻と前記右耳とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記左耳とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記頭頂部とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻と前記顎とに対応する前記移動先となる領域間の距離、前記鼻に対応する前記移動先となる領域と前記対象物の位置との距離のうち一つ以上を用いる
ことを特徴とするプログラム。
【0122】
(付記15)
付記14に記載のプログラムであって、
前記コンピュータに、
(d)前記移動先となる領域が無効化されている場合、無効化されていない前記移動先となる領域と、前記追跡領域間の距離とを用いて、無効化されている前記移動先となる領域の替わりの新たな領域を推定する、ステップを更に実行させる
ことを特徴とするプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上のように本発明によれば、対象物の追跡を精度よく行うことができる。本発明は、対象物の追跡、対象物の位置、向きの推定が必要な分野において有用である。
【符号の説明】
【0124】
1 追跡装置
2 設定部
3 追跡部
4 領域無効化部
5 推定部
6 領域有効化部
30 システム
31 撮像装置
33 入力処理部
34 部位識別器
35 領域設定部
36 基準特徴量抽出部
37 周辺領域設定部
38 領域検出部
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス