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特許7283741受信機、受信方法、及び、受信処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】受信機、受信方法、及び、受信処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/38 20060101AFI20230523BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
H04L27/38
H04L7/00 970
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019078638
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2020178212
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】599161890
【氏名又は名称】NECネットワーク・センサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】家城 大輔
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-109639(JP,A)
【文献】特表2006-522553(JP,A)
【文献】特開2010-041138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/38
H04L 7/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機からシングルキャリア伝送によって送信された無線信号を受信して受信信号を出力するRF信号受信部と、
予め取得されている所定の同期ワードと、前記受信信号に含まれる、前記所定の同期ワードに対応する同期ワードと、をスライドさせながらシンボル毎に比較することにより、シンボル毎に伝送路応答の推定を行う伝送路応答推定部と、
前記伝送路応答推定部によって推定された前記伝送路応答の推定値に基づいて、前記受信信号の周波数偏差を算出する周波数偏差算出部と、
前記周波数偏差算出部によって算出された前記周波数偏差の算出値に基づいて、シンボル毎に前記受信信号の周波数を補正した、第1受信信号を出力する第1周波数補正部と、
前記第1受信信号に含まれる前記同期ワードと、前記所定の同期ワードと、の間の相関関係から、前記第1受信信号に含まれる前記同期ワードを検出する同期ワード検出部と、
前記同期ワード検出部によって前記同期ワードが検出されたタイミングに同期して、前記周波数偏差算出部によって算出された前記周波数偏差の算出値を取り込んで出力する周波数保持部と、
有する、周波数偏差検出回路を少なくとも備えた受信機であって、
前記受信機は、
前記周波数偏差検出回路によって検出された周波数偏差の検出値に基づいて、前記受信信号の周波数を補正した、第2受信信号を出力する第2周波数補正部をさらに備えた、
受信機。
【請求項2】
前記周波数保持部は、前記同期ワード検出部によって前記同期ワードの最後のシンボルが検出されたタイミングに同期して、前記周波数偏差算出部によって算出された前記周波数偏差の算出値を取り込んで出力するように構成されている、
請求項1に記載の受信機
【請求項3】
送信機からシングルキャリア伝送によって送信された無線信号を受信して受信信号を出力するRF信号受信部と、
予め取得されている所定の同期ワードと、前記受信信号に含まれる、前記所定の同期ワードに対応する同期ワードと、をスライドさせながらシンボル毎に比較することにより、シンボル毎に伝送路応答の推定を行う伝送路応答推定部と、
前記伝送路応答推定部によって推定された前記伝送路応答の推定値に基づいて、前記受信信号の周波数偏差を算出する周波数偏差算出部と、
前記周波数偏差算出部によって算出された前記周波数偏差の算出値に基づいて、シンボル毎に前記受信信号の周波数を補正した、第1受信信号を出力する第1周波数補正部と、
前記第1受信信号に含まれる前記同期ワードと、前記所定の同期ワードと、の間の相関関係から、前記第1受信信号に含まれる前記同期ワードを検出する同期ワード検出部と、
前記同期ワード検出部によって前記同期ワードが検出されたタイミングに同期して、前記周波数偏差算出部によって算出された前記周波数偏差の算出値を取り込んで出力する周波数保持部と、
有する、周波数偏差検出回路を少なくとも備えた受信機であって、
前記受信機は、
前記周波数偏差検出回路によって検出された周波数偏差の検出値に基づいて、前記受信信号の周波数を補正した、第2受信信号を出力する第2周波数補正部と、
をさらに備え、
前記RF信号受信部は、フィードバックされた前記周波数偏差算出部によって算出された前記周波数偏差の算出値を観測しながら、当該周波数偏差の算出値が小さくなるように前記受信信号の周波数を調整して出力するように構成されている、
受信機。
【請求項4】
送信機からシングルキャリア伝送によって送信された無線信号を受信して受信信号を出力するRF信号受信ステップと、
予め取得されている所定の同期ワードと、前記受信信号に含まれる、前記所定の同期ワードに対応する同期ワードと、をスライドさせながらシンボル毎に比較することにより、シンボル毎に伝送路応答の推定を行う伝送路応答推定ステップと、
推定された前記伝送路応答の推定値に基づいて、前記受信信号の周波数偏差を算出する周波数偏差算出ステップと、
算出された前記周波数偏差の算出値に基づいて、シンボル毎に前記受信信号の周波数を補正した、第1受信信号を出力する周波数補正ステップと、
前記第1受信信号に含まれる前記同期ワードと、前記所定の同期ワードと、の間の相関関係から、前記第1受信信号に含まれる前記同期ワードを検出する同期ワード検出ステップと、
前記同期ワードが検出されたタイミングに同期して、周波数偏差算出ステップにおいて算出された前記周波数偏差の算出値を取り込んで出力する周波数偏差出力ステップと、
前記周波数偏差出力ステップにおいて出力された前記周波数偏差の算出値に基づいて、前記RF信号受信ステップにおいて出力される前記受信信号の周波数を補正した、第2受信信号を出力する受信信号出力ステップと、
を備えた、受信方法。
【請求項5】
送信機からシングルキャリア伝送によって送信された無線信号を受信して受信信号を出力するRF信号受信ステップと、
予め取得されている所定の同期ワードと、前記受信信号に含まれる、前記所定の同期ワードに対応する同期ワードと、をスライドさせながらシンボル毎に比較することにより、シンボル毎に伝送路応答の推定を行う伝送路応答推定ステップと、
推定された前記伝送路応答の推定値に基づいて、前記受信信号の周波数偏差を算出する周波数偏差算出ステップと、
算出された前記周波数偏差の算出値に基づいて、シンボル毎に前記受信信号の周波数を補正した、第1受信信号を出力する周波数補正ステップと、
前記第1受信信号に含まれる前記同期ワードと、前記所定の同期ワードと、の間の相関関係から、前記第1受信信号に含まれる前記同期ワードを検出する同期ワード検出ステップと、
前記同期ワードが検出されたタイミングに同期して、周波数偏差算出ステップにおいて算出された前記周波数偏差の算出値を取り込んで出力する周波数偏差出力ステップと、
前記周波数偏差出力ステップにおいて出力された前記周波数偏差の算出値に基づいて、前記RF信号受信ステップにおいて出力される前記受信信号の周波数を補正した、第2受信信号を出力する受信信号出力ステップと、
を備えた、受信方法であって、
前記RF信号受信ステップでは、前記周波数偏差出力ステップにおいて出力された前記周波数偏差の算出値を観測しながら、当該周波数偏差の算出値が小さくなるように前記受信信号の周波数を調整して出力する、
受信方法。
【請求項6】
送信機からシングルキャリア伝送によって送信された無線信号を受信して受信信号を出力するRF信号受信処理と、
予め取得されている所定の同期ワードと、前記受信信号に含まれる、前記所定の同期ワードに対応する同期ワードと、をスライドさせながらシンボル毎に比較することにより、シンボル毎に伝送路応答の推定を行う伝送路応答推定処理と、
推定された前記伝送路応答の推定値に基づいて、前記受信信号の周波数偏差を算出する周波数偏差算出処理と、
算出された前記周波数偏差の算出値に基づいて、シンボル毎に前記受信信号の周波数を補正した、第1受信信号を出力する周波数補正処理と、
前記第1受信信号に含まれる前記同期ワードと、前記所定の同期ワードと、の間の相関関係から、前記第1受信信号に含まれる前記同期ワードを検出する同期ワード検出処理と、
前記同期ワードが検出されたタイミングに同期して、周波数偏差算出処理において算出された前記周波数偏差の算出値を取り込んで出力する周波数偏差出力処理と、
前記周波数偏差出力処理において出力された前記周波数偏差の算出値に基づいて、前記RF信号受信処理において出力される前記受信信号の周波数を補正した、第2受信信号を出力する受信信号出力処理と、
をコンピュータに実行させる受信処理プログラム。
【請求項7】
送信機からシングルキャリア伝送によって送信された無線信号を受信して受信信号を出力するRF信号受信処理と、
予め取得されている所定の同期ワードと、前記受信信号に含まれる、前記所定の同期ワードに対応する同期ワードと、をスライドさせながらシンボル毎に比較することにより、シンボル毎に伝送路応答の推定を行う伝送路応答推定処理と、
推定された前記伝送路応答の推定値に基づいて、前記受信信号の周波数偏差を算出する周波数偏差算出処理と、
算出された前記周波数偏差の算出値に基づいて、シンボル毎に前記受信信号の周波数を補正した、第1受信信号を出力する周波数補正処理と、
前記第1受信信号に含まれる前記同期ワードと、前記所定の同期ワードと、の間の相関関係から、前記第1受信信号に含まれる前記同期ワードを検出する同期ワード検出処理と、
前記同期ワードが検出されたタイミングに同期して、周波数偏差算出処理において算出された前記周波数偏差の算出値を取り込んで出力する周波数偏差出力処理と、
前記周波数偏差出力処理において出力された前記周波数偏差の算出値に基づいて、前記RF信号受信処理において出力される前記受信信号の周波数を補正した、第2受信信号を出力する受信信号出力処理と、
をコンピュータに実行させる受信処理プログラムであって、
前記RF信号受信処理では、前記周波数偏差出力処理において出力された前記周波数偏差の算出値を観測しながら、当該周波数偏差の算出値が小さくなるように前記受信信号の周波数を調整して出力する、
受信処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数偏差検出回路、それを備えた受信機、周波数偏差検出方法、及び、周波数偏差検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおいて、受信機は、送信機から送信された無線信号の周波数と、受信機によって受信された無線信号(受信信号)の周波数と、のずれ(周波数偏差)を検出し、そのずれを補正した後、受信信号を復調させている。そのため、受信機には、周波数偏差を精度良く検出することが求められている。
【0003】
特許文献1には、シングルキャリア伝送における、同期ワード(SW:Synchronous Word)を用いた周波数偏差の検出方法が開示されている。特許文献1に開示された周波数偏差検出方法は、高SN比環境下や周波数偏差が小さい場合、受信信号に含まれる同期ワードと、既知の同期ワードと、の間の強い相関関係によって、受信信号に含まれる同期ワードの位置を特定することができる。それにより、この周波数偏差検出方法は、同期ワードの伝送路応答を推定して、周波数偏差を算出することができる。なお、SN比とは、Signal to Noise ratioの略であり、信号対雑音比のことである。
【0004】
その他、特許文献2及び特許文献3にも、周波数偏差の検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/147377号
【文献】特開2010-74284号公報
【文献】特開2006-279686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された周波数偏差検出方法は、低SN比環境下や周波数偏差が大きい場合には、受信信号に含まれる同期ワードと、既知の同期ワードと、の相関が弱くなるため、受信信号に含まれる同期ワードの位置を特定することができない。そのため、特許文献1に開示された周波数偏差検出方法では、周波数偏差を精度良く検出することができないという課題があった。
【0007】
特にビットレート(シンボルレート)に対する搬送波の周波数が高い場合には、周波数偏差が大きくなるため、この課題は顕著になる。例えば、搬送波の周波数が100MHz、変調方式がQPSK、シンボルレートが1ksym/s、送受信クロック偏差が1ppm、送信機及び受信機によって遅延検波される場合、受信機における最大周波数偏差は100(=1^8×1^(-6))Hzとなる。なお、QPSKは、Quadrature Phase Shift Keyingの略である。つまり、この場合、周波数偏差はシンボルレートの10%となる。これは、コンスタレーション点の位相が10%(36°)回転してしまうことを意味している。それにより、変調次数が高くなるほど、変調エラー率(MER:Modulation Error Ratio)が上昇してしまう。
【0008】
本開示の目的は、上述した課題を解決する周波数偏差検出回路、それを備えた受信機、周波数偏差検出方法、及び、周波数偏差検出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態によれば、周波数偏差検出回路は、予め取得されている所定の同期ワードと、シングルキャリア伝送によって無線受信された受信信号に含まれる、前記所定の同期ワードに対応する同期ワードと、をスライドさせながらシンボル毎に比較することにより、シンボル毎に伝送路応答の推定を行う伝送路応答推定部と、前記伝送路応答推定部によって推定された前記伝送路応答の推定値に基づいて、前記受信信号の周波数偏差を算出する周波数偏差算出部と、前記周波数偏差算出部によって算出された前記周波数偏差の算出値に基づいて、シンボル毎に前記受信信号の周波数を補正する第1周波数補正部と、前記第1周波数補正部によって周波数補正された前記受信信号に含まれる前記同期ワードと、前記所定の同期ワードと、の間の相関関係から、前記受信信号に含まれる前記同期ワードを検出する同期ワード検出部と、前記同期ワード検出部によって前記同期ワードが検出されたタイミングに同期して、前記周波数偏差算出部によって算出された前記周波数偏差の算出値を取り込んで出力する周波数保持部と、を備える。
【0010】
一実施の形態によれば、周波数偏差検出方法は、予め取得されている所定の同期ワードと、シングルキャリア伝送によって無線受信された受信信号に含まれる、前記所定の同期ワードに対応する同期ワードと、をスライドさせながらシンボル毎に比較することにより、シンボル毎に伝送路応答の推定を行う伝送路応答推定ステップと、推定された前記伝送路応答の推定値に基づいて、前記受信信号の周波数偏差を算出する周波数偏差算出ステップと、算出された前記周波数偏差の算出値に基づいて、シンボル毎に前記受信信号の周波数を補正する周波数補正ステップと、周波数補正された前記受信信号に含まれる前記同期ワードと、前記所定の同期ワードと、の間の相関関係から、前記受信信号に含まれる前記同期ワードを検出する同期ワード検出ステップと、前記同期ワードが検出されたタイミングに同期して、周波数偏差算出ステップにおいて算出された前記周波数偏差の算出値を取り込んで出力する周波数偏差出力ステップと、を備える。
【0011】
一実施の形態によれば、周波数偏差検出処理プログラムは、予め取得されている所定の同期ワードと、シングルキャリア伝送によって無線受信された受信信号に含まれる、前記所定の同期ワードに対応する同期ワードと、をスライドさせながらシンボル毎に比較することにより、シンボル毎に伝送路応答の推定を行う伝送路応答推定処理と、推定された前記伝送路応答の推定値に基づいて、前記受信信号の周波数偏差を算出する周波数偏差算出処理と、算出された前記周波数偏差の算出値に基づいて、シンボル毎に前記受信信号の周波数を補正する周波数補正処理と、周波数補正された前記受信信号に含まれる前記同期ワードと、前記所定の同期ワードと、の間の相関関係から、前記受信信号に含まれる前記同期ワードを検出する同期ワード検出処理と、前記同期ワードが検出されたタイミングに同期して、周波数偏差算出処理において算出された前記周波数偏差の算出値を取り込んで出力する周波数偏差出力処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
前記一実施の形態によれば、受信信号の周波数偏差を精度良く検出することが可能な周波数偏差検出回路、それを備えた受信機、周波数偏差検出方法、及び、周波数偏差検出プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1にかかる周波数偏差検出部の概要を示すブロック図である。
図2】シンボルデータのフレーム構成の一例を示す図である。
図3図1に示す周波数偏差検出部が受信機に適用された通信システムの構成例を示すブロック図である。
図4図1に示す周波数偏差検出部のより具体的な構成例を示すブロック図である。
図5図4に示す周波数偏差検出部に設けられた周波数補正部の具体的な構成例を示すブロック図である。
図6】周波数偏差検出部によるシンボルデータの処理フローの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。ただし、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0016】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0017】
<実施の形態1>
まず、図1を用いて、実施の形態1に係る受信機に搭載された周波数偏差検出部(周波数偏差検出回路)の概要について説明する。図1は、実施の形態1に係る周波数偏差検出部23の概要を示すブロック図である。周波数偏差検出部23は、無線通信システムの受信機に設けられ、送信機から送信された無線信号の周波数と、受信機によって受信された当該無線信号(受信信号)の周波数と、のずれ(周波数偏差)を検出する。受信機では、周波数偏差検出部23によって検出された周波数偏差を用いて受信信号の周波数が補正された後、当該受信信号が復調される。
【0018】
なお、本実施の形態では、変調方式として、位相偏移変調方式や直交振幅変調方式が採用されている場合を例に説明する。また、本実施の形態では、伝送方式として、シングルキャリア伝送が採用されている。
【0019】
さらに、本実施の形態では、受信信号のデータ構造として、図2に例示されるようなフレームが用いられる場合を例に説明する。具体的には、伝送される1つのフレームには、伝送されるデータに加えて、既知の同期ワード(SW)が含まれている。ここで、同期ワードは、同期対象となる送信機及び受信機において共通の固定化されたビットパターンを示している。なお、図2の例では、フレームの先頭以外の位置に同期ワードが配置されているが、フレームの先頭の位置に同期ワードが配置されていても良い。
【0020】
図1に示すように、周波数偏差検出部23は、伝送路応答推定部231と、周波数偏差算出部232と、周波数補正部233と、同期ワード検出部235と、周波数保持部236と、を備える。
【0021】
伝送路応答推定部231は、予め取得されている既知の同期ワードSWと、シングルキャリア伝送によって無線受信された受信信号RSのシンボルデータに含まれる、既知の同期ワードSWに対応する同期ワードと、をスライドさせながらシンボル毎に比較する。それにより、伝送路応答推定部231は、シンボル毎に伝送路応答の推定を行って伝送路応答の推定値を出力する。なお、詳しくは後述するが、伝送路応答推定部231に入力される受信信号RSのシンボルデータとは、受信信号RSをベースバンド信号に変換した後、波形成形等の処理を行うことによって生成された受信信号RSのシンボル系列のことである。
【0022】
周波数偏差算出部232は、伝送路応答推定部231によって推定された伝送路応答の推定値に基づいて、受信信号RSの周波数偏差を算出する。
【0023】
周波数補正部233は、周波数偏差算出部232によって算出された周波数偏差の算出値に基づいて、シンボル毎に、受信信号RSのシンボルデータに対する周波数の補正を行う。
【0024】
同期ワード検出部235は、周波数補正されたシンボルデータを復調することにより得られたビットデータに含まれる同期ワードと、予め取得されている既知(所定)の同期ワードと、の間の相関関係から、当該ビットデータに含まれる同期ワードを検出する。
【0025】
周波数保持部236は、同期ワード検出部235によって同期ワードが検出されたタイミングに同期して、周波数偏差算出部232によって算出された周波数偏差の算出値を取り込んで出力する。
【0026】
このように、本実施の形態に係る周波数偏差検出部23は、受信信号RSのシンボルデータに対して、スライディングウィンドウ方式を用いてシンボル毎に伝送路応答の推定、周波数偏差の算出、及び、周波数の補正を行っている。それにより、本実施の形態に係る周波数偏差検出部23は、低SN比環境下や周波数偏差が大きい場合でも、受信信号RSの同期ワードと、既知の同期ワードと、の間の相関関係を高めることができるため、受信信号RSの同期ワードを正確に検出することができる。そのため、本実施の形態に係る周波数偏差検出部23は、受信信号RSに含まれる同期ワードの検出タイミングにおける周波数偏差を正確に取得することができる。
【0027】
≪周波数偏差検出部23が搭載された無線通信システム100の例≫
図3は、周波数偏差検出部23が受信機に搭載された無線通信システム100の構成例を示すブロック図である。
【0028】
図3に示すように、無線通信システム100は、送信機1と、受信機2と、を備える。送信機1は、デジタル変調部11と、ベースバンド信号処理部12と、RF信号送信部13と、アンテナA1と、を少なくとも備える。受信機2は、RF信号受信部21と、ベースバンド信号処理部22と、周波数偏差検出部23と、周波数補正部24と、デジタル復調部25と、アンテナA2と、を少なくとも備える。
【0029】
送信機1において、デジタル変調部11は、入力された送信データに対して変調処理を行い、シンボル系列(シンボルデータ)を出力する。ベースバンド信号処理部12は、デジタル変調部11から出力されたシンボル系列に対して、波形整形等の処理を行って、ベースバンド信号を出力する。RF信号送信部13は、ベースバンド信号処理部12から出力されたベースバンド信号に対して、周波数変換及び電力増幅等の処理を行って、RF(Radio Frequency)信号を出力する。このRF信号は、アンテナA1を介して、無線送信される。
【0030】
受信機2は、送信機1から送信されたRF信号(以下、受信信号RSと称す)を、アンテナA2を介して受信する。RF信号受信部21は、アンテナA2を介して受信した受信信号RSに対して、周波数変換、電力増幅、及び、帯域制限等の処理を行って、ベースバンド信号を出力する。ベースバンド信号処理部22は、RF信号受信部21から出力されベースバンド信号に対して、波形整形等の処理を行って、シンボル系列を出力する。周波数偏差検出部23は、ベースバンド信号処理部22から出力された受信信号RSのシンボル系列に含まれる同期ワードのシンボル系列と、既知の同期ワードのシンボル系列と、の間の相関関係から、受信信号RSの周波数偏差を検出する。周波数補正部24は、受信信号RSのシンボル系列に対して、周波数偏差検出部23により検出された周波数偏差を用いて補正処理を行って、補正後の受信信号RSのシンボル系列を出力する。デジタル復調部25は、周波数補正部24から出力された補正後の受信信号RSのシンボル系列に対して復調処理を行って、受信データとして出力する。
【0031】
≪周波数偏差検出部23の詳細≫
図4は、周波数偏差検出部23の詳細を周波数偏差検出部23aとして示すブロック図である。
【0032】
図4に示すように、周波数偏差検出部23aは、伝送路応答推定部231と、周波数偏差算出部232と、周波数補正部233と、デジタル復調部234と、同期ワード検出部235と、周波数保持部236と、を備える。また、周波数偏差検出部23aは、遅延部237と、遅延部238と、遅延部239と、スイッチSW1,SW2と、をさらに備える。
【0033】
スイッチSW1,SW2は、ベースバンド信号処理部22から出力された受信信号RSのシンボル系列を、当該シンボル系列から周波数偏差を検出する経路、及び、周波数偏差の検出に要する時間分遅延させて出力する経路、の何れかに周期的に切り替えて出力する。
【0034】
伝送路応答推定部231は、予め取得されている既知の同期ワードSWと、シングルキャリア伝送によって無線受信された受信信号RSのシンボル系列に含まれる、既知の同期ワードSWに対応する同期ワードと、をスライドさせながらシンボル毎に比較する。それにより、伝送路応答推定部231は、シンボル毎に伝送路応答の推定を行って伝送路応答の推定値を出力する。
【0035】
周波数偏差算出部232は、伝送路応答推定部231によって推定された伝送路応答の推定値に基づいて、受信信号RSの周波数偏差を算出する。
【0036】
遅延部237は、受信信号RSのシンボルデータを、伝送路応答推定部231及び周波数偏差算出部232の処理に要する時間分遅延させて出力する。
【0037】
周波数補正部233は、周波数偏差算出部232によって算出された周波数偏差の算出値に基づいて、シンボル毎に、受信信号RSのシンボルデータに対する周波数の補正を行う。
【0038】
図5は、周波数偏差算出部232の具体的な構成例を示すブロック図である。周波数偏差算出部232は、数値制御発振器2331と、複素乗算器2332と、を有する。図5を参照すると、数値制御発振器2331は、周波数偏差算出部232によって算出された周波数偏差の算出値に応じた周波数の発振信号を出力する。複素乗算器2332は、数値制御発振器2331から出力された発振信号と、受信信号RSのシンボルデータと、の間で複素乗算処理を行って、周波数補正後のシンボルデータを出力する。
【0039】
図6は、周波数偏差検出部23に設けられた伝送路応答推定部231、周波数偏差算出部232、及び、周波数補正部233による処理フローを示す図である。図6に示すように、周波数偏差検出部23では、受信信号RSのシンボルデータに対して、スライディングウィンドウ方式を用いてシンボル毎に伝送路応答の推定、周波数偏差の算出、及び、周波数の補正が行われている。それにより、受信信号RSのシンボルデータに含まれる同期ワードの最後のシンボルのタイミングにおいてのみ、正確な周波数の補正が可能となる。
【0040】
デジタル復調部234は、周波数補正部233から出力された周波数補正されたシンボルデータに対して復調処理を行って、ビットデータを出力する。
【0041】
同期ワード検出部235は、デジタル復調部234から出力されたビットデータに含まれる同期ワードと、予め取得されている既知の同期ワードと、の間の相関関係から、当該ビットデータに含まれる同期ワードを検出する。なお、同期ワード検出部235は、波形相関から、ビットデータに含まれる同期ワードを検出しても良い。
【0042】
遅延部238は、周波数偏差算出部232から出力された周波数偏差の算出値を、周波数補正部233、デジタル復調部234、及び、同期ワード検出部235の処理に要する時間分遅延させて出力する。
【0043】
周波数保持部236は、同期ワード検出部235により同期ワードが検出されたタイミング(より詳細には、同期ワードの最後のシンボルが検出されたタイミング)に同期して、周波数偏差算出部232により算出された周波数偏差の算出値を取り込んで出力する。
【0044】
遅延部239は、受信信号RSのシンボルデータを、周波数補正部233、デジタル復調部234、同期ワード検出部235、及び、周波数保持部236の処理に要する時間分遅延させて出力する。
【0045】
それにより、周波数偏差検出部23aは、受信信号RSのシンボル系列及びそれに対応する周波数偏差を出力する。その後、周波数補正部24は、周波数偏差検出部23から出力された受信信号RSのシンボル系列に対して、同じく周波数偏差検出部23から出力された周波数偏差を用いて補正処理を行って、補正後の受信信号RSのシンボル系列を出力する。
【0046】
このように、本実施の形態に係る周波数偏差検出部23aは、受信信号RSのシンボルデータに対して、スライディングウィンドウ方式を用いてシンボル毎に伝送路応答の推定、周波数偏差の算出、及び、周波数の補正を行っている。それにより、本実施の形態に係る周波数偏差検出部23aは、低SN比環境下や周波数偏差が大きい場合でも、受信信号RSの同期ワードと既知の同期ワードとの間の相関関係を高めることができるため、受信信号RSの同期ワードを正確に検出することができる。そのため、本実施の形態に係る周波数偏差検出部23aは、受信信号RSに含まれる同期ワードの検出タイミングにおける周波数偏差を正確に取得することができる。
【0047】
なお、周波数偏差検出部23(23a)は、シンボル毎に、仮の伝送路応答の推定、周波数偏差の算出、及び、周波数の補正を行ったうえで同期ワードの検出を行うことにより、受信信号RSの同期ワードと、既知の同期ワードと、の間の相関関係を高めている。このような手法は、シンボル毎に直接同期ワードの検出を行う特許文献2や、特許文献3の手法とは異なる。
【0048】
本実施の形態では、受信機2が、自動周波数制御(AFC:Automatic Frequency Control)の機能を有していない場合について説明したが、これに限られない。受信機2は、自動周波数制御の機能を有していても良い。その場合、例えば、受信機2に設けられたRF信号受信部21は、フィードバックされた周波数偏差算出部232による周波数偏差の算出値を観測しながら、当該周波数偏差の算出値が小さくなるように受信信号RSの周波数を調整するように構成される。受信信号RSの周波数の調整は、例えば、RF信号受信部21に設けられた発振器から出力される発振信号の発振周波数を調整することによって行われる。
【0049】
以上、図面を参照して、本開示の実施の形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等が可能である。
【0050】
上述の実施の形態では、本開示をハードウェアの構成として説明したが、本開示は、これに限定されるものではない。本開示は、周波数偏差検出部23の全部又は一部の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0051】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体は、例えば、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリを含む。磁気記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブなどである。光磁気記録媒体は、例えば光り磁気ディスクなどである。半導体メモリは、例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)などである。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0052】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0053】
100 無線通信システム
1 送信機
2 受信機
11 デジタル変調部
12 ベースバンド信号処理部
13 RF信号送信部
21 RF信号受信部
22 ベースバンド信号処理部
23 周波数偏差検出部
23a 周波数偏差検出部
24 周波数補正部
25 デジタル復調部
231 伝送路応答推定部
232 周波数偏差算出部
233 周波数補正部
234 デジタル復調部
235 同期ワード検出部
236 周波数保持部
237 遅延部
238 遅延部
239 遅延部
2331 数値制御発振器
2332 複素乗算器
A1 アンテナ
A2 アンテナ
SW1 スイッチ
SW2 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6