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  • 特許-索道用握索機の走行ローラー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】索道用握索機の走行ローラー
(51)【国際特許分類】
   B61B 12/00 20060101AFI20230523BHJP
   B61B 10/04 20060101ALI20230523BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20230523BHJP
   F16C 35/077 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B61B12/00 A
B61B10/04 Z
F16C13/00 Z
F16C35/077
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019098437
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020192845
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】荒本 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 高志
(72)【発明者】
【氏名】植原 美咲紀
(72)【発明者】
【氏名】杉本 悠
(72)【発明者】
【氏名】坂本 潤
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-176817(JP,A)
【文献】実開昭48-051976(JP,U)
【文献】特開2009-270644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 10/00
B61B 12/00
F16C 13/00
F16C 35/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
索道の握索機に回転自在に備えて停留場の走行レールを転動する走行ローラーであって、該走行ローラーは、合成樹脂で形成したローラー本体と、金属で形成され、該ローラー本体に嵌挿した軸受と、金属で形成され、該軸受と前記ローラー本体とを固定する一対の止め輪と、を備え、
前記軸受の外輪の外側面に前記軸受の外輪の回転軸方向に離間して一対の止め輪溝が設けられ、該止め輪溝に前記止め輪が夫々に嵌着され、
前記軸受の前記外輪の外側に設けられた前記ローラー本体は、前記軸受側に突出して、前記一対の前記止め輪の間に嵌挿される凸部が形成され、
前記走行ローラーが前記走行レール上を走行する際、前記ローラー本体から前記軸受に掛かるスラスト荷重を前記一対の止め輪が受けるように構成されたことを特徴とする索道用握索機の走行ローラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動循環式索道等の搬器に備えて索条を握放索するとともに、停留場内では走行レール上を走行する索道用握索機の走行ローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動循環式索道は、停留場に枢設した滑車間に索条を無端状に張架して高速で循環移動させ、索道線路中において搬器に備えた握索機が索条を握索し、索条の移動とともに搬器が高速で移動する。停留場内においては、握索機が索条を放索して停留場内に架設した走行レール上を走行し、この間に搬器の減速、加速及び低速で回送移送を行って乗客の乗降が行われる。走行レールは、上部に凹状の溝が形成された形状であって、停留場内で平面視においてU字状に架設されており、握索機に備えた走行ローラーが走行レールの溝の中を転動することにより握索機が誘導される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、従来技術の一例を示す走行ローラーの断面図である。図において走行ローラー105は、ローラー本体108と、軸受106と、止め輪107とを備えている。ローラー本体108は、合成樹脂により形成されており、中央に円形空洞を有するとともに、この円形空洞に止め輪溝が形成されている。円形空洞には軸受106が嵌挿され、軸受106の外輪の両側に止め輪107を装着してローラー本体108と軸受106とが固定されている。軸受106は、以下説明するように握索機ボディー101に嵌着したシャフト102に回転自在に支持されている。シャフト102の軸受106側端部にはフランジ部104が形成されており、他方の握索機ボディー101側端部にはネジが形成されてナット103が装着されている。そしてナット103を締め込むことにより、軸受106の内輪がフランジ部104と握索機ボディー101とに挟み込まれて固定されている。以上の構成により、走行ローラー105が走行レール109上を転動し握索機が移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-176817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、走行レールは停留場内において平面視U字状に架設されており、握索機が走行レールの曲線部分を通過するときには、走行ローラーが走行レールの溝の内面に接触しながら転動することになり、このときに軸受にはスラスト方向の外力が作用する。この外力は、握索機が走行レールの曲線部分を通過するたびに繰り返し作用するものであり、軸受を固定している止め輪が経年使用等により性能劣化している場合には、外力の作用により走行ローラーがシャフトから外れてしまう場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、軸受に作用するスラスト荷重に対して取付強度を高めることのできる索道用握索機の走行ローラーの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、索道の握索機に回転自在に備えて停留場の走行レールを転動する走行ローラーであって、該走行ローラーは、合成樹脂で形成したローラー本体と、金属で形成され、該ローラー本体に嵌挿した軸受と、金属で形成され、該軸受と前記ローラー本体とを固定する一対の止め輪と、を備え、前記軸受の外輪の外側面に前記軸受の外輪の回転軸方向に離間して一対の止め輪溝が設けられ、該止め輪溝に前記止め輪が夫々に嵌着され、前記軸受の前記外輪の外側に設けられた前記ローラー本体は、前記軸受側に突出して、前記一対の前記止め輪の間に嵌挿される凸部が形成され、前記走行ローラーが前記走行レール上を走行する際、前記ローラー本体から前記軸受に掛かるスラスト荷重を前記一対の止め輪が受けるように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軸受の外周に止め輪溝を周設し、ここに止め輪を嵌着してローラー本体と軸受とを固定するようにしたことにより、より硬度の高い止め輪溝に止め輪が装着されるので、軸受に作用するスラスト荷重に対して取付強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】自動循環式索道の模式図
図2】停留場内における搬器の正面図
図3】握索機の側面図
図4】走行ローラー取付部の断面図
図5】従来技術の一例を示す走行ローラーの断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態においては、索道設備の代表例として自動循環式索道により説明を行う。図1は、自動循環式索道の模式図である。自動循環式索道10は、線路の両端部に停留場11及び停留場12を有しており、各停留場11、12には、原動滑車13及び従動滑車14を回転自在に備えている。原動滑車13と従動滑車14には、索条15が無端状に巻き掛けられており、原動滑車13を回転駆動することにより、索条15は両停留場11、12間を循環して移動する。索条15には、線路中で所定の間隔となるように複数の搬器18が懸垂される。
【0011】
搬器18は索条15に着脱自在であって、線路中では索条15に取り付けられて索条15とともに移動し、停留場11、12内では索条15から切り離される。停留場11、12には、平面視U字状の走行レール16及び走行レール17がそれぞれ敷設されており、索条15から切り離された搬器18は、走行レール16、17に沿って次のように移動する。まず、停留場11、12に到着した搬器18は、索条15から切り離されるとともに、走行レール16、17に乗り移り、走行レール16、17に沿って設けられた移送装置により減速させられる。乗客が乗降可能な速度まで搬器18が減速すると、その速度を保って停留場11、12内を出発側へ折返し、この間に乗客の乗降が行われる。出発側へ折り返した搬器18は、索条15の速度と同一速度にまで加速させられた後、索条15に取り付けられるとともに走行レール16、17から離脱して線路中へ出発する。
【0012】
図2は、停留場11、12内における搬器18の正面図である。搬器18は、握索機20とサスペンダー22と客車23とを備えている。握索機20は、索条15を握索及び放索するものであって、握索機20にはサスペンダー22が進行方向へ揺動自在に枢支されており、さらにサスペンダー22の下端部に弾性材を介して客車23が吊下されている。握索機20には、進行方向に沿って回転可能な走行ローラー21を備えており、停留場11、12内においては、握索機20が索条15を放索するとともに走行ローラー21が走行レール16、17上を転動して搬器18が移動する。。
【0013】
図3は、握索機20の側面図であり、図4は、握索機20の走行ローラー21取付部の断面図である。走行ローラー21は、ローラー本体24と軸受25と止め輪26とからなっている。ローラー本体24は、合成樹脂により形成されており、中心部を貫通して段付状に円形空洞が形成されており、この中心位置に軸受25が嵌挿されている。軸受25は、外輪31の幅が内輪32の幅よりも大きく形成されており、外輪31の幅はローラー本体24の幅と略同一となっている。外輪31の外周には、両端部の近傍に止め輪溝34が周設されており、この止め輪溝34に止め輪26を嵌着している。両止め輪26の軸方向内面間の間隔は、ローラー本体24の段付部外面間の間隔と同一となっており、これによりローラー本体24が軸受25に固定されている。
【0014】
次に、走行ローラー21は、以下のようにして握索機ボディー33に取付られている。握索機ボディー33には、軸受25の内径と同一径の取付孔35が穿孔されており、この取付孔35と軸受25とを通してシャフト27が挿通されている。シャフト27の軸受25側端部には、外形を大きくしたフランジ部28が形成されており、他方の握索機ボディー33側端部には、雄ネジ29が形成されている。この雄ネジ29には、ナット30が装着されており、これが締め込まれて軸受25の内輪32がフランジ部28と握索機ボディー33に挟まれ固定されている。このように取り付けられた走行ローラー21は、停留場11、12内で搬器18の荷重を支持するとともに、走行レール16、17上を転動して搬器18が移動する。
【0015】
以上の構成によれば、止め輪溝34を軸受25に設けたことにより、合成樹脂により形成されたローラー本体24には溝を形成する必要がない。したがって、走行レール16、17側面との接触によるスラスト荷重に対しては、止め輪26に作用する荷重を合金である軸受25の止め輪溝34で受けるので、ローラー本体24側に溝を形成した場合に比して取付強度を高めることができる。また、上記構成においては、ローラー本体24を軸受25に直接嵌着する構成としており、ローラー本体24に金心等を用いる必要がないので安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0016】
10 自動循環式索道
11 停留場
12 停留場
13 原動滑車
14 従動滑車
15 索条
16 走行レール
17 走行レール
18 搬器
20 握索機
21 走行ローラー
22 サスペンダー
23 客車
24 ローラー本体
25 軸受
26 止め輪
27 シャフト
28 フランジ部
29 雄ネジ
30 ナット
31 外輪
32 内輪
33 握索機ボディー
34 止め輪溝
35 取付孔
101 握索機ボディー
102 シャフト
103 ナット
104 フランジ部
105 走行ローラー
106 軸受
107 止め輪
図1
図2
図3
図4
図5