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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】透明ジグソーパズル
(51)【国際特許分類】
   A63F 9/10 20060101AFI20230523BHJP
   A63H 33/00 20060101ALI20230523BHJP
   B32B 27/06 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
A63F9/10 Z
A63F9/10 G
A63H33/00 304B
B32B27/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020029512
(22)【出願日】2020-02-25
(62)【分割の表示】P 2019022736の分割
【原出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2020131043
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】517294587
【氏名又は名称】神田 昌秀
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】神田 昌秀
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-249851(JP,A)
【文献】登録実用新案第3025974(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 9/00-9/20
9/26-11/00
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピース(p)を組み合わせて遊ぶジグソーパズであって、各ピース(p)が透明なプラスチック材料から成り、ジグソーパズの全てのピース(p)が画像や印刷が施されていない透明で無地である無地の透明プラスチックジグソーパズルであって、
各ピース(p)が下記(i)~(iii)によって構成されていることを特徴とする透明プラスチックジグソーパズル:
(i)透明なプラスチックシ-トから成るジグソーパズル本体層(1)と、
(ii)ジグソーパズル本体層(1)の上側および/または下側に配置される透明な二軸延伸ポリプロピレン(OPP)または高密度ポリエチレン(HDPE)から成る透明表面層(2、2')と、
(iii)上記ジグソーパズル本体層(1)と上記の各透明表面層(2、2')との間に配置された無延伸ポリプロピレン(CPP)または低密度ポリエチレン(LPE)から成る熱積層用中間層(3、3')。
【請求項2】
複数のピース(p)を組み合わせて遊ぶジグソーパズルであって、各ピース(p)が透明なプラスチック材料から成るプラスチックジグソーパズルであって
各ピース(p)が下記(i)~(iii):
(i)透明なプラスチックシ-トから成るジグソーパズル本体層(1)と、
(ii)ジグソーパズル本体層(1)の上側および/または下側に配置される透明な二軸延伸ポリプロピレン(OPP)または高密度ポリエチレン(HDPE)から成る透明表面層(2、2')と、
(iii)上記ジグソーパズル本体層(1)と上記の各透明表面層(2、2')との間に配置された無延伸ポリプロピレン(CPP)または低密度ポリエチレン(LDPE)から成る熱積層用中間層(3、3')と、
によって構成され
上記透明表面層(2、2')の表面上および/またはジグソーパズル本体層(1)と接する背面上に設けられた印刷層(4-1、4-2)を有することを特徴とする遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズル。
【請求項3】
画像データを入力/処理するコンピュータ(A)と、処理済みの画像データを受けて透明な二軸延伸ポリプロピレン(OPP)または高密度ポリエチレン(HDPE)から成る透明表面層(2、2')の少なくとも一方の表面上に画像を印刷するデジタルプリンター(B)と、デジタルプリンター(B)からの印刷画像を有する上記透明表面層(2、2')、プラスチックシ-トから成るジグソーパズル本体層(1)およびこのジグソーパズル本体層(1)と上記透明表面層(2、2')との間に配置された無延伸ポリプロピレン(CPP)または低密度ポリエチレン(LPE)から成る熱積層用中間層とを熱間圧着する熱間圧着装置(R)と、熱間圧着された積層組立体をジグソーパズルの形に打ち抜く打ち抜き機(M)と、ち抜き処理の終わった積層組立体を個々のジグソーパズルシートにカットする切断装置(C)とを含むことを特徴とする遠近感のある画像を有する請求項2に記載の遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明ジグソーパズルと、その製造方法に関するものである。
本発明はさらに、遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙のジグソーパズルの分野では、画像が印刷されていない無地のジグソーパズルを組み立てて楽しむ「白パズル」「ホワイトパズル」等とよばれる種類のジグソーパズルがある。ホワイトパズルはピースを組み合わせる時のヒントになる絵柄がないので、集中力と忍耐力が必要で、パズルとしての難易度が桁違いに高い。一般的に、ジグソーパズルは一枚のシートを切断刃で打ち抜いて作られるが、切断刃の形状は各ピース毎に微妙に相違し、同じ形状パターンのピースでも全てのピースの形状は微妙に異なる。「白パズル」「ホワイトパズル」ではいくつかの形状パターンに分け、それを頼りにジグソーパズルを完成させていくことになる。
【0003】
白パズルではない通常の紙のジグソーパズルは表面上に画像を有する不透明なジグソーパズルであるため、その画像の表現方法は限られる。すなわち、画像の表現方法は画像を紙の表面上に印刷したり、エンボスしたり、装飾物を接着する方法等に限られる。
【0004】
また、従来の紙のジグソーパズルの分野では、無地の紙ジグソーパズルの表面上に顧客のオーダーに応じた画像を印刷、例えば、記念写真を印刷するということも行なわれている。
[特許文献1](実用新案第3007219号公報)には、無地の紙ジグソーパズルの表面上にモチーフを印刷することが記載されている。
[特許文献2](特開平10-137441号公報)にも無地の紙ジグソーパズルの表面上にインクジェット印刷機を用いて画像を印刷することが記載されている。
【0005】
上記の公知方法は全て不透明な無地のジグソーパズルの表面上に印刷をするものでジグソーパズルの背面は見えない(すなわちジグソーパズルの背面は利用されていない)。従って、ジグソーパズルに立体感のある画像を表示させることはできない。立体感のあるジグソーパズルにするための方法としては表面画像をエンポス加工したり、凹凸のある肉厚印刷にしたり、ホログラム印刷する方法が知られている。
【0006】
また、これまでの大抵のジグソーパズルでは絵柄(画像)が紙の表面に印刷されているので、絵柄が磨耗したり、傷付くという欠点もあった。さらに、紙のジグソーパズルは誤ってコーヒーをこぼした時に汚染され、汚れた場合に水洗することもできない。
【0007】
また、白パズル、ホワイトパズルを含めて、公知の紙のジグソーパズルは組み立てたジグソーパズルはバラバラになり易く、ハンドリング性が悪い。フィト感を得るためにプラスチックジシートを発泡体にし、軽量化すると透明性が失われる。
【0008】
本出願人は「プラスチックジグソーパズルと、その製造方法および装置」と題する特願2017-159462号において背面に印刷層(4)を有する透明表面層(2)とプラスチックシ-トから成るジグソーパズル本体層(1)とを積層したプラスチックのジグソーパズを開示した。このジグソーパズルは印刷層(4)が透明表面層(2)の背面上にあるので印刷層(4)が剥がれることがないという利点がある。しかし、この特許出願には透明ジグソーパズルとして遊ぶという発想はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実用新案第3007219号公報
【文献】特開平10-137441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一つの目的は、透明な透明ジグソーパズルを提供することにある。
本発明の他の目的は、完成後にジグソーパズルが正しく完成したか否かを確認する手段を有する無地の透明ジグソーパズルを提供することにある。
本発明の他の目的は、完成したジグソーパズルを垂直に吊り下げたときでもバラバラにならない透明ジグソーパズルを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記透明ジグソーパズルの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記の遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズの製造方法を提供することにある。
【0011】
なお、以下の説明では各構成要素の後に参照記号を付けて示すが、これらの参照記号は本発明の理解を容易にするためのもので、本発明を限定するためのものではない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の対象は、複数のピース(p)を組み合わせて遊ぶジグソーパズであって、各ピース(p)が透明なプラスチック材料から成り、各ピース(p)に画像や印刷が施されていないことを特徴とする無地の透明プラスチックジグソーパズル(P)にある。
【0013】
この無地の透明プラスチックジグソーパズル(P)は単層の透明な任意のプラスチック材料、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、シリコン樹脂、これらの共重合体、アロイおよび混合物、およびこれらを組み合わせた材料で作ることができる。
【0014】
本発明の第1の対象の一つの実施例では、各ピース(p)が下記(i)~(iii)の複数の層で構成される:
(i)透明なプラスチックシ-トから成るジグソーパズル本体層(1)と、
(ii)ジグソーパズル本体層(1)の上側および/または下側に配置される透明なプラスチック材料から成る透明表面層(2、2')と、
(iii)上記ジグソーパズル本体層(1)と上記の各透明表面層(2、2')との間に配置された熱積層(サーマルラミネーション)用中間層(3、3')。
【0015】
上記のジグソーパズル本体層(1)、透明表面層(2、2')および熱積層用中間層(3、3')は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、シリコン樹脂、これらの共重合体、アロイおよび混合物、およびこれらの組み合わせの中から選択することができる。
【0016】
本発明の第1の対象の一つの実施態様では、本発明は複数のピース(p)を組み合わせて遊ぶプラスチックのジグソーパズであって、各ピース(p)が透明であり、各ピース(p)が下記(i)~(iii)を積層一体化したことを特徴とする透明なプラスチックのジグソーパズルを提供する:
(ii)ジグソーパズル本体層(1)の上側および/または下側に配置される透明な二軸延伸ポリプロピレン(OPP)または高密度ポリエチレン(HDPE)から成る透明表面層(2、2')と、
(iii)上記ジグソーパズル本体層(1)と上記の各透明表面層(2、2')との間に配置された無延伸ポリプロピレン(CPP)または低密度ポリエチレン(LLPE)から成る熱積層用中間層(3、3')。
【0017】
低密度ポリエチレンは一般にLDPEと表現されるが、本発明では主として一般にポリ袋等の用途でローデンと呼ばれる市販の直鎖低密度ポリエチレン(LLPE)を使用するので、低密度ポリエチレンをLLPEと表記する。本発明ではLDPE、LLDPE、LLPE等の表現は同じものを意味する。
【0018】
公知の紙の白パズル、ホワイトパズルでは裏表の区別が比較的容易であるが、本発明の透明プラスチックジグソーパズルは透明であり、裏表の区別が困難であり、ピースの選択時にホワイト印刷の微妙な変化を利用することができないので、公知の紙の白パズル、ホワイトパズルに比べてジグソーパズルを完成させるための困難性がさらに増す。すなわち、本発明の第1の対象の透明プラスチックジグソーパズルは無地のジグソーパズルとして公知の紙の白パズル、ホワイトパズルと同様に遊ぶことができるが、パズルとしての難易度は高い。
【0019】
本発明の透明プラスチックジグソーパズルはプラスチックで作られているため、各ピースは相対的に柔らかいので、間違った場所に無理に押し込むことができてしまう場合がある。そうした間違いを確認するために、不可視インク、隠顕インクとよばれる特定の処理を施すことができる。例えば、本発明の透明プラスチックジグソーパズルに特殊な光を当てた時にだけ見える画像や印刷、例えば格子状ライン、連続した数字、所定パターン等を印刷しておき、ジグソーパズルの完成時に特殊光を当てて、誤って挿入したピースの有無を確認することができる。特殊光の例とてしは紫外線、熱線等があり、化学変化を利用することもできる。あるいは、透明プラスチックジグソーパズルにホログラム印刷し、ホログラム用参照光を当てて誤って挿入したピースの有無を確認することもできる。
【0020】
本発明の第1の対象の透明プラスチックジグソーパズルは、無地のジグソーパズルとして遊ぶ他に、「写し絵」の手段として利用することができる。すなわち、透明であることを利用して、背面に置いた画像を透明プラスチックジグソーパズルの表面上に写し取って、自分が描いた画像を有するジグソーパズルとして遊ぶことができる。この用途は特に子供向けジグソーパズルとして有用である。写し取る画像を選択することによって教育用ジグソーパズルとして使用することもできる。
【0021】
本発明の第1の対象の透明プラスチックジグソーパズルは完全にバラバラにしてから出荷されるが、「写し絵」の手段として利用される場合には、透明シートをカッターを用いてプラスチックジグソーパズルの形に切断した後に、ジグソーパズルをバラバラにせずに包装し、出荷する。
【0022】
本発明の第2の対象は、上記の本発明の第1の対象の透明プラスチックジグソーパズルを応用した遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルにある。この本発明の第2の対象のプラスチックジグソーパズルは、複数のピース(p)を組み合わせて遊ぶプラスチックのジグソーパズであって、各ピース(p)が透明なプラスチック材料のシートで構成され、この透明なプラスチック材料のシートの表面上に印刷層が形成されていることを特徴としている。
【0023】
本発明の第2の対象の一つの実施態様でも、各ピース(p)はポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂およびこれらの共重合体、アロイまたは組み合わせの中から選択される透明プラスチック材料で作ることができる。
【0024】
本発明の第2の対象の一つの実施態様では、各ピース(p)が下記(i)~(iv)の複数の層によって構成される遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルが提供される:
(i)透明なプラスチックシ-トから成るジグソーパズル本体層(1)と、
(ii)ジグソーパズル本体層(1)の上側および/または下側に配置される透明なプラスチックから成る透明表面層(2、2')と、
(iii)上記ジグソーパズル本体層(1)と上記の各透明表面層(2、2')との間に配置された熱積層用中間層(3、3')と、
(iv)上記透明表面層(2、2')の表面上および/またはジグソーパズル本体層(1)と接する背面上に設けられた印刷層(4-1、4-2)。
【0025】
上記のジグソーパズル本体層(1)、透明表面層(2、2')および熱積層用中間層(3、3')はポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂およびこれらの共重合体、アロイまたは組み合わせの中から選択される透明プラスチック材料で作ることができる。
【0026】
本発明の第2の対象の一つの実施態様では、上記印刷層(4-1、4-2)の各々の模様の少なくとも一部が同一でなく、互いに相違する。
【0027】
本発明の第2の対象の一つの実施態様では、上記印刷層(4-1、4-2)の各々の模様の少なくとも一部が互いに同一で、互いに色相、明度、彩度の少なくとも一つが互いに相違する。
【0028】
本発明はさらに、上記の遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルの製造方法を提供する。この方法は下記の工程を特徴とする:
1)透明な透明表面層(2、2')とプラスチックシ-トから成るジグソーパズル本体層(1)とを用意し、
2)透明表面層(2、2')および/またはジグソーパズル本体層(1)の少なくとも一方の表面上に画像を印刷し、
3)透明な透明表面層(2、2')とジグソーパズル本体層(1)との間に熱積層用シートを介して積層一体化して一体化された積層シートから成るジグソーパズル積立体を作り、
4)印刷された画像を有するジグソーパズル積立体をジグソーパズルに打抜く。
【0029】
本発明の一つの実施態様では、画像データをコンピュータ(A)で処理し、処理済みの画像データをデジタルプリンター(B)へ送り、このデジタルプリンター(B)を用いて透明な二軸延伸ポリプロピレン(OPP)または高密度ポリエチレン(HDPE)から成る透明表面層(2、2')の少なくとも一つの表面上に印刷して上記画像を形成する。
【0030】
本発明の一つの実施態様では、印刷された画像を有する透明表面層(2、2')をジグソーパズル本体層(1)と一緒に熱間圧着装置(R)に供給する。その際に、上記透明表面層(2、2')とジグソーパズル本体層(1)との間に無延伸ポリプロピレン(CPP)または低密度ポリエチレン(LLPE)から成る中間層(3、3')を配置し、透明表面層(2)/中間層(3)/ジグソーパズル本体層(1)/中間層(3')/透明表面層(2')から成る積層体を加熱加圧下に積層一体化してジグソーパズル積立体を作る。
【0031】
本発明はさらに、上記の遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルを製造する装置を提供する。この装置は画像データを入力/処理するコンピュータ(A)と、処理済みの画像データを受けて透明表面層(2、2')の少なくとも一方の表面上に画像を印刷するデジタルプリンター(B)と、デジタルプリンター(B)からの印刷画像を有する透明表面層(2、2')/ジグソーパズル本体層(1)/これらの間に配置される熱積層用中間層から成るジグソーパズル積立体を熱間圧着する熱間圧着装置(R)と、熱間圧着された積層組立体をジグソーパズルの形に打ち抜く打ち抜き機(M)と、抜く打ち抜き処理の終わった積層組立体を個々のジグソーパズルシートにカットする切断装置(C)とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の対象の透明プラスチックジグソーパズル(P)を手で吊り下げた状態を示す概念図。
図2】本発明の透明プラスチックジグソーパズルの個々のピースの概念的斜視図(左側)および概念的断面図(右側)で、(A)~(C)は3つの実施例を示している。
図3】透明プラスチックジグソーパズルを「写し絵」材料として利用した時の概念的部分斜視図で、透明プラスチックジグソーパズルの下側にキャラクター画像が描かれたシートを配置し、透明プラスチックジグソーパズルの表面上に描画手段を用いてキャラクター画像を「写し取る」る状態を示している。
図4】本発明の第2の対象の遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルの一つのピースの概念的斜視図(左側)および概念的断面図(右側)。
図5】2つの印刷層(4-1、4-2)の絵柄や色相、明度、彩度が互いに相違することを説明するための説明図。
図6】本発明の第2の対象の遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルの概念的斜視図で、構造を説明するために、2つの印刷層(200、201)を誇張してずらして示してあり、寸法は正確なものではない。
図7】大量生産に適した本発明のジグソーパズル製造装置の概念図。(a)は本発明のジグソーパズルの製造装置の概念図、(b)は[図7]の装置で作られるジグソーパズルのカット前の長尺状態を示す(a)のA区域の概念的平面図。
図8】画像データをコンピュータ(A)で処理し、デジタル印刷する本発明ジグソーパズルの製造装置の概念図。
図9】本発明の製造方法の変形実施例を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
I.本発明の第1の対象
本発明の第1の対象は複数のピース(p)を組み合わせて遊ぶジグソーパズであって、各ピース(p)が透明なプラスチック材料から成り、各ピース(p)に画像や印刷が施されていないことを特徴とする無地の透明プラスチックジグソーパズル(P)にある([図1]参照)。
以下、個々の構成について説明する。
【0034】
「透明プラスチックジグソーパズル」
本発明で使用する「透明」という用語には厳密な定義はなく、ジグソーパズルの片面から見た時にそのジグソーパズルの背面が目視できる状態にあれば、そのジグソーパズルは透明であるといえる。従って、半透明なポリエチレンのシートも本発明では透明といえる。好ましくは、「透明」とはヘーズ値が40程度まで、好ましくはヘーズ値が10程度まで、より好ましくはヘーズ値が5程度までの透明プラスチョク材料を使用するのが好ましい。
【0035】
ジグソーパズル本体層(1)
本発明で使用するジグソーパズル本体層(1)は透明なプラスチックシ-トであれば、その材料は特に限定されない。一般にはポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂およびこれらの共重合体、アロイまたは組み合わせの中から選択される。さらに、透明である限り、乳酸をベースにした再生可能資源から得られた材料も使用可能である。
【0036】
本発明の透明ジグソーパズルはジグソーパズル本体層(1)のみから成る単層構造でもよい。例えば、PVC、PE、PPの単層シートでもよい。しかし、ジグソーパズルにフィット感や高級感を与えるためには、透明表面層(2、2')を有する複数の層構成にするのが好ましい。
【0037】
ジグソーパズル本体層(1)は要求される透明度と、ジグソーパズルとして遊ぶ時のフィット感と、その上に積層される透明表面層(2、2')との接着性、カット性およびコスト等を考えて選択する。透明度は種々選択でき、完全透明(ヘーズ=0)である必要はない。ある程度の不透明度がジグソーパズルとして遊ぶ時に適している場合もある。本体層(1)を構成する材料の弾性がフィット感に大きく影響するので、一般的には本体層(1)の材料としてはある程度の弾性、エラストマー性を有する材料を選択する。このフィット感はジグソーパズルとして遊ぶ時の実際の感覚を調べることで実験で確認することができる。PVC等の場合には可塑剤を加えることでジグソーパズル本体層(1)の硬さを調節することもできる。オレフィン系材料の場合には一般的には弾性を付与するためにオレフィン系エラストマーやゴム材料を添加するのが好ましい。
【0038】
透明表面層(2、2')
単層の透明ジグソーパズルの場合には透明表面層(2、2')は無ないが、フィット感や高級感のある透明ジグソーパズルの場合には、ジグソーパズル本体層(1)の上側および/または下側に透明表面層(2、2')を配置するのが好ましい。
【0039】
この透明表面層(2、2')は、透明なポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂およびこれらの共重合体、アロイまたは組み合わせの中から選択される。これらのポリマーは単独重合体でも、共重合体でも、アロイでもよい。これら以外にも透明表面層として使用可能なプラスチク材料は多数存在する(例えば、ABS,AS,ポリアミド、ポリアセタール、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等)。また、再生可能資源から得られる乳酸をベースにした材料も使用可能である。しかし、コストと硬度の関係から本発明ではジグソーパズルとして実用的に使用できる材料として上記のプラスチク材料を選択するのが好ましい。
【0040】
上記の樹脂は一般にヘーズ値が0.1~8程度である。ポリプロピレンやポリエチレンの場合には核剤を添加することでヘーズ値を下げることができる。
【0041】
この透明表面層(2、2')の主たる役目はジグソーパズル本体層(1)の上側および/または下側表面の磨耗防止(透明ジグソーパズルの場合)および印刷面の保護(遠近感のある画像を有する透明ジグソーパズルの場合)にある。耐引っ掻き性が必要な場合にはPET、ポリカーボネート(PC)を選択するのが好ましい。
【0042】
図2]は透明表面層(2、2')を有する場合の本発明の透明プラスチックジグソーパズル(P)の各ピース(p)の構成を説明するための概念図で、(A)~(C)は3つの実施例を示している。各図の左側は概念的斜視図、右側は概念的断面図である。[図2]の(A)では一方の透明表面層(2)のみを有しており、(B)では両方の透明表面層(2、2')を有している。(C)は(B)の変形例で、ジグソーパズル本体層(1)を2枚以上のシートで構成した場合を示している。
【0043】
ジグソーパズル本体層(1)と透明表面層(2、2')との接着性は実用上の重要なファクターであるので、熱積層(サーマルラミネーション)用中間層(3、3')の材料の選択は重要である。本体層(1)と透明表面層(2、2')との接着性が悪い場合には両者の間に透明性を損なわない範囲で接着剤を使用することができるが、コストが増加する。一般的には、本体層(1)と透明表面層(2、2')の材料を同じ種類のものにするか、類似の材料を使用するのが好ましい。
【0044】
本発明で使用するプラスチック材料の多くは難接着材料である。難接着材料を接着する接着剤も開発されているが、高価であり、材料の白化、割れ等の劣化の問題がある。従って、一般的には、コストと接着性の観点から、透明表面層(2、2')とジグソーパズル本体層(1)の材料を同じまたは類似する種類の材料にするのが好ましい。
【0045】
熱積層(サーマルラミネーション)用中間層(3、3')
中間層(3、3')の役目は透明表面層(2、2')とジグソーパズル本体層(1)とを熱接着(サーマルラミネーション)で接着することにある。従って、中間層(3、3')の材料は透明表面層(2、2')とジグソーパズル本体層(1)の材料よって変化する。
既に述べたとおり、本発明で使用するプラスチック材料は難接着材料であるので、サーマルラミネーション(熱接着)だけで透明表面層(2、2')とジグソーパズル本体層(1)を接着するには中間層(3、3')の材料の選択が重要になる。実際には、透明表面層(2、2')の材料として何を選択するかで、ジグソーパズル本体層(1)と熱積層用中間層(3、3')の材料の種類も決まる。
【0046】
透明表面層(2、2')の材料としてポリプロピレン(PP)を選択した場合には、ジグソーパズル本体層(1)もポリプロピレンにするのが好ましい。具体的には、透明表面層(2、2')を二軸延伸ポリプロピレン(OPP)とし、サーマルラミネーション用中間層(3、3')を無延伸ポリプロピレン(CPP)にすることでサーマルラミネーションだけで透明表面層(2、2')とジグソーパズル本体層(1)とを実用的な剥離強度で接着することができる。
【0047】
透明表面層(2、2')の材料としてポリエチレン(PE)を選択した場合には、ジグソーパズル本体層(1)もポリエチレンにするのが好ましい。具体的には、透明表面層(2、2')を高密度ポリエチレン(HDPE)のシートにし、熱積層用中間層(3、3')を低密度ポリエチレン(LLPE)のシートにすることができる。接着性が不足する場合にはプライマー処理、表面処理したり、接着剤を使用する。
【0048】
ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)は同じポリオレフィン材料であり、これらは適宜組み合わせて使用することができる。ポリオレフィン材料以外の材料、例えばPETを使用する場合にも、無延伸ポリプロピレン(CPP)や低密度ポリエチレン(LLPE)を使用することができ、必要な場合は相溶性のある他の熱積層用中間層(3、3')を使用することもできる。
【0049】
透明表面層(2、2')の材料としてポリ塩化ビニル(PVC)を選択した場合には、ジグソーパズル本体層(1)もポリ塩化ビニルにするのが好ましい。具体的には、透明表面層(2、2')を硬質ポリ塩化ビニルシートにし、熱積層用用中間層(3、3')を軟質ポリ塩化ビニルシートにすることができる。接着性が不足する場合にはプライマー処理、表面処理をしたり、接着剤を使用する。
【0050】
透明表面層(2、2')の材料としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)およびアクリル樹脂を選択した場合には、ジグソーパズル本体層(1)もこれらの材料にするのが好ましいが、ジグソーパズル本体層(1)としての特性である弾性、フイット性、柔軟性等を満たし、妥当なコストである材料は少ない。
【0051】
透明表面層(2、2')とジグソーパズル本体層(1)との間の接着性を上げるために、これらの層の表面を処理することもできる。具体的にはプライマー処理や物理的処理(紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等)をすることができる。必要な場合には接着剤をさらに使用してもよい。
【0052】
図3]は本発明の第1の対象の透明プラスチックジグソーパズルを「写し絵」の手段として利用する場合の部分的概念図である。[図3]はディズニーのキャラクターが記載された紙(100)の上に本発明の透明プラスチックジグソーパズル(P)を載せ、油性ペンで下側のディズニーのキャラクターを透明プラスチックジグソーパズル(P)の表面上に描く(写し取る)状態を示している。写し取る画像を選択することで本発明の透明プラスチックジグソーパズル(P)を教育素材として使用したり、記念の写真のプラスチックジグソーパズル(P)を作ることもできる。
【0053】
こうして「写し絵」を有するプラスチックジグソーパズル(P)はジグソーパズルとして遊ぶ他、お風呂場で湯船に浮かべて遊ぶこともできる。
【0054】
本発明の透明プラスチックジグソーパズル(P)は、完成したジグソーパズルを垂直に吊り下げてもバラバラにならない。この性質は紙のジグソーパズルにはない性質である([図1]参照)。
【0055】
II.本発明の第2の対象
「遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズル」
本発明の第2の対象は、上記の本発明の第1の対象の透明プラスチックジグソーパズルを応用した遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルにある。
【0056】
この本発明の第2の対象の遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルは、上記の本発明の第1の対象の透明プラスチックジグソーパズルを応用したもので、第1の対象とほぼ同じ構成であるが、第1の対象の透明プラスチックジグソーパズルが完全に透明であるのに対して、第2の対象のプラスチックジグソーパズルは遠近感のある画像を有する点が相違する。
【0057】
図4]は印刷層(4)有する本発明の遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルの一つのピース(p)の概念図で、左側は概念的斜視図、右側は概念的断面図である。[図2]の透明ジグソーパズルとの基本的な相違点は印刷層(4-1、4-2)がある点である。
【0058】
この印刷層(4-1、4-2)は上記透明表面層(2、2')の表面上および/またはジグソーパズル本体層(1)と接する背面上に配置することができる。すなわち、印刷面は透明表面層(2、2')上、ジグソーパズル本体層(1)上、さらにはサーマルラミネーション用中間層(3、3')上のいずれでもよい。実際には、透明表面層(2、2')の表面上および/または背面上に印刷するのが好ましく、印刷面の剥離を防ぐには透明表面層(2、2')の背面上に印刷するのが好ましい。
【0059】
この印刷層(4-1、4-2)は公知に任意の印刷方法で形成することができる。実際にはグラビア印刷、オフセット印刷、デジタル印刷、ゼログラフィー、インクジェット印刷等が使用できる。一般に、大量印刷時にはグラビア印刷、中規模印刷時にはオフセット印刷またはデジタル印刷、小規模印刷時にはインクジェット印刷が用いられる。
【0060】
この印刷層(4-1、4-2)は2つの透明表面層(2、2')の少なくとも一方に形成するのが好ましく、2つの透明表面層(2、2')の両方に形成されていなくてもよい。換言すれば、印刷層のない場合は透明な印刷層があると見なされる。さらに、印刷層(4-1、4-2)の数は2つに限定されない。例えば、[図2]の(C)に示すように、ジグソーパズル本体層(1)を2枚以上のシート(1、1')で構成し、2枚以上のシート(1、1')の間に印刷層(4)を形成することもできる。
【0061】
印刷層(4-1、4-2)は一般に透明表面層(2、2')上に形成するのが好ましいが、透明表面層(2、2')上ではなくて、ジグソーパズル本体層(1)の表面上に形成してもよい。どちらに形成するかは製造上のメリットを考えて選択する。
以下では、説明を簡単にするために、2つ以上の印刷層(4-1、4-2)を透明表面層(2、2')上に形成する場合について説明するが、印刷層(4-1、4-2)の数および配置場所はこれに限定されない。
【0062】
本発明の第2の対象では、2つの印刷層(4-1、4-2)の絵柄の組み合わせで無限の数の遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズルを提供することができる。以下に、2つの印刷層(4-1、4-2)の絵柄の組み合わせの例を示す。
1)上側の表面上に設けられた印刷層(4)と下側の表面上に設けられた印刷層(4')の模様が互いに同一で、互いに色相、明度、彩度の少なくとも一つが互いに相違する。[図5]の(A)は上側印刷層(4-1)と下側印刷層(4-2)の模様の少なくとも一部が互いに同一で、互いに色相、明度、彩度の少なくとも一つが互いに相違する場合の例を示す。
【0063】
2)上側の表面上に設けられた印刷層(4-1)と下側の表面上に設けられた印刷層(4-2)の模様が同一でなく、互いに相違する。[図5]の(B)は上側印刷層(4-1)と下側印刷層(4-2)の模様の少なくとも一部が同一でなく、互いに相違する場合の例を示している。
3)上側の表面上に設けられた印刷層(4)と下側の表面上に設けられた印刷層(4')の模様、色相、明度、彩度の少なくとも一つが互いに相違する。
【0064】
具体的な例としては例えば下記のようなものがある:
1)モネの絵画の少女の部分を上側の透明表面層(200)に印刷し、その絵画の背景部分を下側の透明表面層(201)に印刷する([図6]参照)。
2)下側表面上に設けた印刷層(4-1)が遊園地の模様で、上側表面上に設けた印刷層(4-2)が同じ遊園地で撮影した家族写真やカップルの写真。
3)下側表面上に設けた印刷層(4-2)がグランドキャニオンの渓谷の低地部分の写真で、上側表面上に設けた印刷層(4-1)が同じグランドキャニオンの渓谷の断崖部分の写真。
4)下側表面上に設けた印刷層(4-2)がモダンアートの一つの絵柄で、上側表面上に設けた印刷層(4-1)が同じモダンアートの異なる色、形状等の絵柄。
5)上側の表面上に設けられた印刷層(4-1)を半透明な黒の絵画とし、下側の表面上に設けられた印刷層(4-2)を赤の絵画とするアートジグソーパズル。
6)上側の表面上に設けられた印刷層(4-1)と下側の表面上に設けられた印刷層(4-2)の色をそれぞれ赤と青にし、左右のレンズを赤と青に着色した眼鏡をかけて見たときに立体画像が見えるようにした立体ジグソーパズル。
【0065】
以下、添付の図面を参照して本発明の特定の具体例を説明するが、本発明が下記の具体例に限定されるものではない。
【0066】
本発明の第1の対象の一つの好ましい第1実施例では、本発明は複数のピース(p)を組み合わせて遊ぶプラスチックのジグソーパズであって、各ピース(p)が透明であり、各ピース(p)が下記(i)~(iii)を積層一体化したことを特徴とする透明なプラスチックのジグソーパズルを提供する:
(i)透明なプラスチックシ-トから成るジグソーパズル本体層(1)と、
(ii)透明な二軸延伸ポリプロピレン(OPP、Oriented Polypropylene)または高密度ポリエチレン(HDPE)から成るジグソーパズル本体層(1)の上側および/または下側に配置された透明表面層(2、2')と、
(iii)上記ジグソーパズル本体層(1)と上記の各透明表面層(2、2')との間に配置された無延伸ポリプロピレン(CPP、Cast Polypropylene)または低密度ポリエチレン(LLPE)から成るサーマルラミネーション用中間層(3、3')。
【0067】
上記ジグソーパズル本体層(1)の厚さに特に制限はないが、一般的には0.5~20mm、好ましくは0.6~15mm、より好ましくは0.7~10mmにするのが好ましい。
【0068】
透明表面層(2、2')の厚さにも特に制限はないが、一般的には0.05~2mm、好ましくは0.1~1mmにするのが好ましい。
【0069】
無延伸ポリプロピレン(CPP)または低密度ポリエチレン(LLPE)から成る中間層(3、3')の厚さは一般に0.05~1mm、好ましくは0.1~0.8mmにするのが好ましい。
【0070】
1.各ピース(p)の構造
図2]は単層ではない場合の本発明のジグソーパズルP(ジグソーパズルシートと呼ぶ場合もある)の一つのピース(p)の3つの実施例(A)~(C)の概念的な斜視図で、説明のために相対寸法は誇張して示してある。[図2]の(A)(B)(C)の各々の左側の図は一つのピースの斜視図、右側の図は左側の図の概念的断面図である。[図2]には正確に表現されていないが、各ピース(p)は「透明」である。
【0071】
各ピース(p)は基本的にプラスチックシ-トからなるジグソーパズル本体層(1)と、透明な二軸延伸ポリプロピレン(OPP)または高密度ポリエチレン(HDPE)から成る透明表面層(2、2')と、これらジグソーパズル本体層(1)と透明表面層(2、2')との間に配置された無延伸ポリプロピレン(CPP)または低密度ポリエチレン(LLPE)から成る中間層(3、3')との3層構造をしている。中間層(3、3')は熱積層(サーマルラミネーション)法によってジグソーパズル本体層(1)と透明表面層(2、2')とを互いに接着する役目をする。
以下、各層について詳細に説明する。
【0072】
ジグソーパズル本体層(1)
本発明ではジグソーパズル本体層(1)の材料は特に限定きれないが、透明表面層(2、2')との説着性の点からポリプロピレンまたはポリエチレンにゴム弾性材を加えたブレンドを使用するのが好ましい。本体層(1)のポリプロピレンまたはポリエチレンは弾性特性、硬さ、透明度等を考慮して市販の材料の中から当業者が適宜選択できる。本体層(1)を顔料、染料を用いて半透明に着色することもできるが、透明性を損なわないようにする必要がある。
ジグソーパズル本体層(1)の厚さは特に限定されないが、一般的には0.5~20mm、好ましくは0.6~15mm、より好ましくは0.7~10mmにすることができる。
【0073】
透明表面層(2)
透明表面層(2、2')は透明な二軸延伸ポリプロピレン(OPP、Oriented Polypropylene)または高密度ポリエチレン(HDPE)から成ることができる。これらのシートやフィルムは種々の厚さのシートの形で市場から安価、容易に入手可能であり、PPの例としては三井化学東セロ(株)のOPU-1等を挙げることができる。その他、東洋紡(株)、サントックス、フタムラ等から市販されている。
【0074】
ここで、「透明」とはJIS規格K7136に従って測定したへイズ値が1以下、より好ましくは0.5以下であるのが好ましい。ポリプロピレンやポリエチレンの透明度を上げる方法に関しては多くの特許が出されており、核剤を使用する方法、特定の共重合体を用いる方法、結晶化を制御する方法、これらの組合せ等が知られており、本発明では任意の方法を使用することができる。本発明の一つの実施例では核剤を使用する。特に、ソルビトール系の造核剤をポリプロピレンやポリエチレンに加えることができる。ソルビトール系の造核剤は例えばミリケン社等から市販されている。
【0075】
透明表面層(2、2')の上にハードコート等の表面処理をして耐引っ掻き強度を向上させることもできる。特に、透明表面層(2、2')上に印刷をした場合にはハードコートを付けるのが好ましい。
【0076】
透明表面層(2、2')の厚さは0.01~2mm、好ましくは0.02~1mmにすることができる。
【0077】
中間層(3)
本発明の中間層(3、3')は無延伸ポリプロピレン(CPP)または低密度ポリエチレン(LLPE)にするのが有利である。無延伸ポリプロピレン(CPP)または低密度ポリエチレン(LLPE)も広く使用されており、種々の厚さのシートの形で市場から容易に入手可能である。
【0078】
この中間層(3、3')の厚さは0.05~5mm、好ましくは0.1~1mm、好ましくは0.1~0.8mmにすることができる。
【0079】
透明表面層(2、2')と中間層(3、3')とを基本的に同じ種類のポリプロピレンまたはポリエチレンから作ることで、これらの間の接着力は十分なものになる。一方、ジグソーパズル本体層(1)の材料によっては、中間層(3、3')とジグソーパズル本体層(1)との間の接着力が不十分になる場合がある。その場合には、中間層(3、3')と接触するジグソーパズル本体層(1)の面を表面処理、例えばコロナ放電処理、租面加工したり、接着剤、好ましくは無溶剤接着剤を使用することができる。
【0080】
本発明の第2の対象
本発明の第1の対象と本発明の第2の対象との相違点は印刷層(4)が有るか無いかである。本発明の第2の対象では透明表面層(2、2')のいずれか一方の表面上、および/または、ジグソーパズル本体層(1)のいずれか一方の表面上に印刷層(4-1、4-2)が設けられる。好ましくは、透明表面層(2、2')のジグソーパズル本体層(1)と接する表面上に印刷層(4-1、4-2)を形成する。
【0081】
印刷層(4-1、4-2)
印刷層(4-1、4-2)は一般に透明表面層(2、2')上に印刷で形成される。透明表面層(2、2')上に印刷すること自体は周知であり、無用剤型のインキを使用して印刷できる。
【0082】
印刷層(4-1、4-2)が形成された透明表面層(2、2')上には熱積層時の熱による印刷層(4-1、4-2)のダレ(溶融流れ)を防止するためのダレ防止層(d、[図4])を形成するのが好ましい。このダレ防止層として、無溶剤(ノンソル)接着剤として知られている接着剤を使用することができる。
【0083】
本発明のジグソーパズルの製造方法および装置
本発明はさらに、本発明の第2の対象である遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズの製造方法を提供する。以下、[図7]を参照して説明する。
【0084】
本発明ではジグソーパズル本体層(1)と、透明表面層(2、2')と、中間層(3、3')とが積層装置(R)によって加熱加圧下に積層一体化される。この積層装置(R)は熱圧縮プレス、ロールラミネーション装置等の公知の任意の手段で構成できる。[図7]に示すように、圧着ローラを積層装置(R)として使用するのが有利である。積層装置(R)として熱圧縮プレス([図8]参照)を使用することもできる。積層一体化された積層シートはジグソーパズル打ち抜き機(M)を通ってジグソーパズルのピースの形に打ち抜かれる。この打ち抜きは一般には横方向打ち抜きと、縦方向打ち抜きの2工程で行われるが,単一打ち抜き機を使用して一回で打ち抜くこともできる。
【0085】
本発明では、打ち抜き工程でプラスチックジグソーパズルの個別のピースが作られるが、打ち抜き工程後でも個別のピースがバラバラになることはなく、各ピースが互いに係合し、全体としてはシートの形を保っている([図1]参照)。しかし、打ち抜き工程でピースの一部が飛び出し足り、落下してピースが欠ける危険がある。この「ピース不足」の問題を無くすために打ち抜き機の後にはセンサー(S)を設けるのが有利である。このセンサー(S)は厚さセンサー、イメージセンサー等にすることができる。イメージセンサーにした場合には入力画像とジグソーパズルの印刷画像とを比較して画像品質の検査を同時にすることもできる。さらに、入力画像/印刷画像のデータは個別製品の包装管理、パッケージジングへの顧客デーアの印刷、在庫管理等にも利用することができる。
【0086】
センサーを通過した積層シートはカッタ-(C)で一枚のジグソーパズルシート(P)に切断され、必要に応じてパラシ機(E)で個別のピースにバラされた後に、容器に入れられて製品となる。
以下、各装置について詳細に説明する。
【0087】
図7]はジグソーパズル(P)を製造するための設備の概念図で、この製造装置は基本的に下記の3つの装置を有している:
積層装置としての圧着ローラ(R)
ジグソーパズル打抜装置(M)
バラシ機(E)
【0088】
圧着ローラ(R)
図7]に示す圧着ローラ(R)はジグソーパズル本体層(1)と透明表面層(2)とを中間層(3)を介して上下のローラ(R1、R2)の間で熱積層(サーマルラミネーション)するもので、この熱積層方法自体は周知のものである。この圧着ローラ(R)を用いたサーマルラミネーションの条件(温度、ニップ間隙寸法、シート送り速度等)は当業者が適宜選択できる。
本発明では、ジグソーパズル本体層(1)、透明表面層(2)および中間層(3、3')の各プラスチックシ-トは市販のものを使用できる。これらの各層、特にジグソーパズル本体層(1)を押出機から押し出したシートにすることもできるが、設備投資を必要とし、生産コストも上がる。ロット数が少ない場合には市販のシートを使用するのが有利である。
【0089】
図7]では、印刷層(4、4')を形成した透明表面層(2、2')と中間層(3、3')とをデジタル印刷の現場でラミネータ(C)を用いて予めサーマルラミネーションした予備積層体(2+3+4)をジグソーパズル製造装置にセットして使用する。予備積層体(2+3+4)とは別体として供給されたジグソーパズル本体層(1)は圧着ローラ(R)で熱積層される。互いに対向する予備積層体(2+3+4)とジグソーパズル本体層(1)の表面はヒータ(h)によって加熱溶融させる。圧着ローラ(R)の運転条件は当業者が適宜選択することができる。
図9](a)の変形実施例では中間層(3)とジグソーパズル本体層(1)とを組み合わせたものを透明表面層(2)に積層している。
【0090】
圧着ローラ(R)に続く装置は一般に間欠運動(非連続運動)をする機械であるので、生産速度を調節するために、圧着ローラ(R)の後にダンサーローラ(R3)等の速度調節装置を設けるのがよい。本発明のジグソーパズル(P)の製造装置にプラスチックシート組立体(1+2+3)の供給を行うための駆動ロール(D1、D2、D3等)が適宜配置される。
【0091】
ジグソーパズル打抜装置(M)
ジグソーパズル(P)は圧着ローラ(R)で圧着一体化されたプラスチックシート組立体(1+2+3)を縦方向および横方向に所定の間隔で略平行に打ち抜いて作られ。
【0092】
ジグソーパズル(P)は圧着ローラ(R)で圧着一体化されたプラスチックシート組立体(1+2+3)を縦方向および横方向に所定の間隔で略平行に打ち抜いて作られ。この打抜き作業は一般に透明表面層(2)の側から行われる。一般には、プラスチックシートの送り方向(縦方向)に略平行に配列された複数の波形ブレードを用いて縦方向に打ち抜き、次に横方向に略平行に配列された複数の波形ブレードを用いて横方向に打ち抜くことで[図1]示す個々のピース(p)に打ち抜かれる。縦方向と横方向とを同時に打ち抜いてもかまわないが、[図7]では縦方向打抜機(M1)の後に横方向縦方向打抜機(M2)が配置されている。[図8]に示した例では、プラスチックシート組立体(1+2+3)は各打抜機(M)の所で一旦停止し、各打抜機(M)と下側受け盤(M3)との間で各ピースに打ち抜かれる。
【0093】
図7]の(b)は[図7]の(a)の矢印A方向から見た時のプラスチックシート組立体(1+2+3)の概念的平面図である。パターン(A1)は縦方向打抜機(M1)を用いてプラスチックシートの送り方向に略平行に打ち抜いた時のパターンであり、パターン(A2)は横方向縦方向打抜機(M2)でさらに縦方向に略平行に打ち抜いた時のパターンである。
【0094】
本発明の3層構造のプラスチックジグソーパズルでは、通常の打抜き操作で各ピースに打ち抜いた時に各ピースがバラバラにならないことが分かっている。逆に言えば、バラバラにならないように最後の打抜機(M2)を操作する。
【0095】
イメージセンサー(S)
本発明では得られたプラスチックジグソーパズル(P)の品質を確認するためのセンサー(S)、特にイメージセンサーまたは厚さセンサーを打抜機(M)の後に設けるのが好ましい。このセンサー(S)では例えば厚さを検知してピース欠けの有無を検出できる。また、イメージセンサーまたはカメラを用いて、得られたプラスチックジグソーパズル(P)の写真を撮り、それを製品バッケージに保証書として同封することもできる。この保証書にコンピュータ(A)で入力したデーアの一部をデジタル印刷機(B)で印刷することもできる。また、このイメージセンサー(S)で得られたプラスチックジグソーパズル(P)の写真を撮り、それをパズル完成見本として製品バッケージに同封することもできる。
【0096】
本発明では、得られた個々のプラスチックジグソーパズル(P)にバーコート等の形でコンピュータ(A)に入力したデータの一部を印刷し、品質管理や在庫管理等に利用することができる。さらには、保証書を印刷し、製品に同封することもできる。この場合には製品の輸送、包装装置の運動との連動システムが必要になる。
【0097】
カッター(C)
打抜き操作の終わったプラスチックシートはカッター(C)で個々のジグソーパズルパネル(7)に切断される。カッター(C)自体は周知のものである。図示した実施例ではジグソーパズルパネル(7)はガイド(G1)中を案内されて重力で「バラし機」(E)中に落下する。
【0098】
バラし機(E)
図7]には切断された各ジグソーパズル(7)を個々のピースにバラバラにする「バラし機」(E)が示されている。
【0099】
パッケーグ装置(K)
「バラし機」(E)でバラバラにされた一組のピースセット(p')は個別包装されてから出荷される。[図7]ではバラバラにされた一組のピースセット(p')はガイド(G2)中を案内されて重力で容器(10)中に落下する。各容器(10)はベルトコンベアによってガイド(G2)の真下に順次案内される。容器(10)をベルトコンベアで移送する代わりに、袋詰め装置を用いて一連のプラスチック袋を順次供給することもできる。
【0100】
図7]ではジグソーパズル打抜装置(M)は縦方向と横方向とを同時に打ち抜く単一打抜装置(M)を示しているが、上記で述べた縦方向打抜機(M1)と横方向縦方向打抜機(M2)の2つにすることもできる。
【0101】
図8]は本発明のプラスチックジグソーパズルの製造方法の好ましい一つの実施例を示している。この場合には、画像データをコンピュータ(A)で処理し、処理済みの画像データをデジタルプリンター(B)へ送り、このデジタルプリンター(B)を用いて透明表面層(2、2')の裏側表面上に画像を印刷し、印刷された画像を有する透明表面層(2)を熱間圧着装置(R)に供給し、それと同時に、プラスチックシ-トから成るジグソーパズル本体層(1)とこのジグソーパズル本体層(1)と上記透明表面層(2)との間に配置される中間層とを熱間圧着装置(R)に供給して、透明表面層(2、2')と、中間層と、ジグソーパズル本体層(1)とを加熱加圧下に積層一体化し、一体化された積層シートからジグソーパズルを打抜くことを特徴とする。
【0102】
本発明のさらに他の対象は、本発明のプラスチックジグソーパズルの製造装置にある。この装置は、画像データを入力、処理するコンピュータ(A)と、処理済みの画像データを受けて透明表面層(2、2')の裏側表面上に画像を印刷するデジタルプリンター(B)と、デジタルプリンター(B)からの印刷画像を有する透明表面層(2、2')、ジグソーパズル本体層(1)およびこのジグソーパズル本体層(1)と上記透明表面層(2、2')との間に配置された熱積層用中間層とを熱間圧着する熱間圧着装置(R)と、熱間圧着された積層組立体をジグソーパズルの形に打ち抜く打ち抜き機(M)と、抜く打ち抜き処理の終わった積層組立体を個々のジグソーパズルシートにカットする切断装置(C)とを含む。
【0103】
従来のプラスチックジグソーパズルはジグソーパズルに印刷する画像を一般にグラビア印刷機やオフセット印刷機を用いて印刷していた。これら印刷方法は個人の顧客からオーダーを受けた単品のジグソーパズルを製造するのには適していない。この実施例では、大量生産用プラスチックジグソーパズル(大量生産物)と、世界で一つだけのオーダーメードのプラスチックジグソーパズル(単品生産物)とを同じラインで製造できるようにするためにデジタル印刷機を使用する。
【0104】
プラスチックジグソーパズルの製造者/販売者は家族写真、記念写真、ペットの写真といった個人的な画像のデータを受け取る。一般にはネットを介してコンピュータ(A)にデータを直接受けることができる。その画像の寸法、色彩等をジグソーパズル(P)に合うように修正してから画像データをデジタル印刷機(B)へ送る。大量生産物のジグソーパズル用の商業的な画像データの場合も同様な方法でデジタル印刷機(B)へ送られる。デジタル印刷機(B)ではその画像データを用いて透明表面層(2、2')のジグソーパズル本体層(1)と接する裏面上に画像を印刷して印刷層(4-1、4-2)を形成する。透明表面層(2)の裏面上へのデジタル印刷は市販のデジタル印刷機を用いて容易に行うことができる。必要に応じて、透明表面層(2、2')の裏面を表面処理したり、プライマー、インク受理層等を用いることもできる。
【0105】
本発明の一つの観点から、印刷層(4-1、4-2)が形成された透明表面層(2、2')の上にはダレ防止層(d)を形成するのが好ましい。すなわち、本発明ではジグソーパズル本体層(1)と透明表面層(2、2')とを熱積層法によって互いに接着するが、この熱積層時に印刷層(4-1、4-2)が溶融して印刷層(4-1、4-2)の輪郭がダレる(輪郭のシャープさが無くなる)ことがある。このダレは画像のシャープさが要求されない場合には問題ないが、原画に対する忠実性が求められる場合にはダレ防止層を形成するのが好ましい。
【0106】
このダレ防止層は印刷の技術分野で公知の任意の方法、例えば定着剤、固定剤等を用いて形成することができる。本発明の一つの実施例では無溶剤(ノンソル)接着剤として知られている接着剤をダレ防止層として使用することでジグソーパズル本体層(1)と透明表面層(2、2')との間の接着状態を補助し、両者の熱積層時のズレを防止する。市販の無溶剤接着剤としては三井化学のタケラックA969V/A-fを挙げることができる。
【0107】
印刷層(4)を形成した透明表面層(2、2')を巻き取ってロール(2'')の形にし、それをジグソーパズル製造装置(D)へ送ることもできるが、一般にはデジタル印刷の現場で(C)の工程でラミネータを用いて印刷層(4-1、4-2)を形成した透明表面層(2、2')上に中間層(3)を積層して、両者をサーマルラミネーションする。そうして得られた印刷済みの透明表面層(2、2')上に中間層(3、3')を積層した積層体(2+3+4)をジグソーパズル製造装置(D)へ送る。
【0108】
印刷層(4-1、4-2)を形成した透明表面層(2、2')を中間層(3)を同時に巻き取り、熱圧着しないで透明表面層+中間層の積層体(2+3)の形でジグソーパズル製造装置(D)へ送ることもできる。この場合には上記のダレ防止層としての接着剤層、特に無溶剤接着剤層を付けるのが好ましい。
【0109】
本発明では、印刷層(4-1、4-2)を形成した透明表面層(2+4)またはそれと中間層との積層体(2+3+4)をデジタル印刷業者に外注することができる。デジタル印刷業者は印刷層(4-1、4-2)を有する透明表面層(2、2')またはそれと中間層との積層体(2+3+4)をロールの形に巻き取った形でジグソーパズル製造業者に納品する。ジグソーパズル製造業者はそれをジグソーパズル製造装置(D)にセットするだけでよい。
【0110】
図9]は本発明の各種の変形実施例を示している。[図9]の(a)は中間層とジグソーパズル本体層(1)とを一緒にしたもの(1+3)をサーマルラミネーション装置に送る変形例を示す。[図9]の(b)は本体層(1)を押出機から直接供給する場合を示している。
【0111】
ジグソーパズルを大規模に製造する場合には、透明表面層(2、2')とジグソーパズル本体層(1)とを共押出し成形で作ることもできる。この場合には一つの押出機からヘッドの所で2枚の透明表面層(2、2')に分離し、本体層(1)からの押出しシートと共押出し成形する。この場合には熱積層用相(3)を省略することができる場合が多いが、大きな設備投資を必要とする。
以下、本発明の実施例を示す。
【実施例
【0112】
実施例1
透明ジグソーパズル
テーブルカバー用等として市販の透明な軟質ポリ塩化ビニール(PVC)の厚さが約2mmのシートを、従来の紙用ジグソーパズルで使用している縦方向カッターおよび横方向カッターを用いてカットし、200ピースのジグソーパズルを製造した。得られたPVCの透明ジグソーパズルは難易度の高いジグソーパズルとして使用できた。
各ピースは材料が軟質であるため、無理やり押し込むとジグソーパズルが完成したように見える。これを防止するために、カット後のPVCの透明ジグソーパズルの片面上にブラックライト塗料として市販のインクを用いて格子状の線を印刷した。不正確に挿入したピースは紫外線を当てた時に格子状の線が不連続になることで確認できた。
一方、上記の透明ジグソーパズルは油性カラーペンで着色できるので、「写し絵」用の幼児用透明パズルとして使用することもできた。
【0113】
実施例2
遠近感のある画像を有するプラスチックジグソーパズル
二軸延伸ポリプロピレン(OPP)である厚さが1mmの三井化学東セロ(株)のOPU-1フィルムに市販のデジタル印刷機を用いてキャラクター画像の一部をカラー印刷した印刷面(4-1)を有する透明表面層(2)とし、同じキャラクター画像の残りの部分をカラー印刷した印刷面(4-2)を有する透明表面層(2')とした。
これら2枚の透明表面層(2、2')上に熱積層(サーマルラミネーション)時の熱による印刷層(4-1、4-2)のダレ(溶融流れ)を防止するためのダレ防止層(d)として市販の無溶剤(ノンソル)接着剤層を形成した。
こうして得られた透明表面層(2、2')を巻き取ったロールと、厚さが0.1mmの市販の無延伸ポリプロピレン(CPP)のフィルムからなる中間層(3、3')のロールとを「ロール積層装置]([図3]の(C)参照)の供給部にセットし、透明表面層(2、2')をヒーターで加熱しながら熱積層した。
得られた予備積層体(2+3+4+3'+2')[図5]を積層装置(R)にジグソーパズル本体層(1)と一緒に供給し、両者をヒーターで加熱し、圧着ローラによって完全に熱積層(サーマルラミネーション)した。この実施例ではジグソーパズル本体層(1)は厚さが3mmのポリプロピレンのシートにした。
熱積層(サーマルラミネーション)済みのプラスチックシート組立体(1+2+3+4)を打抜機(M)を用いてジグソーパズル(P)を製造した。
得られたジグソーパズル(P)の一つのピースにT型剥離試験を行ったが、各層が剥離することはなく、ジグソーパズルの通常使用時に十分な剥離強度があることが分かった。
本発明の第1の対象の透明ジグソーパズルは上記の印刷層(4-1、4-2)およびダレ(溶融流れ)を形成しない点以外は上記と同じ方法で製造できる。
【0114】
比較例1
実施例1と同様な操作を行ったが、無延伸ポリプロピレン(CPP)のフィルムの中間層(3)は使用しなかった。
この比較例では、厚さが3mmのポリエチレンシートのジグソーパズル本体層(1)を押出機から直接供給し、その溶融熱を利用して圧着ローラを積層装置(R)で印刷澄みの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)の厚さが1mmの三井化学東セロ(株)のOPU-1フィルムの透明表面層(2、2')に熱圧着した。
実施例1と同様なT型剥離試験を行ったが、接着強度が不足していているため本体層(1)と透明表面層(2、2')との間で剥離が起こった。
【0115】
実施例3
実施例2と同じ操作を行なったが、材料をポリエチレン(PE)に代えた。
透明表面層を市販の厚さが1mmのポリエチレンのフィルムにカラー印刷刷面(4-1)(4-2)をそれぞれ有する透明表面層(2、2')とした。熱積層用中間層(3、3')シートは「ローデン」とよばれる市販の厚さが0.1mmの低密度ポリエチレン(LLPE)にし、ジグソーパズル本体層(1)は厚さが3mmの市販の弾性のあるポリエチレンエラストマーシートにした。
得られたジグソーパズル(P)の一つのピースにT型剥離試験を行ったが、各層が剥離することはなく、ジグソーパズルの通常使用時に十分な剥離強度があることが分かった。
【0116】
本発明の第1の対象の透明ジグソーパズルは上記の印刷層(4-1、4-2)を形成しない点以外は上記と同じ方法で製造できる。
【0117】
実施例4
実施例2と同じ操作を行なったが、透明表面層(2、2')の材料をポリエチレンテレフタレート(PET)に代えた。
透明表面層を市販の厚さが1mmのPETフィルムにカラー印刷刷面(4-1)(4-2)をそれぞれ有する透明表面層(2、2')とした。熱積層用中間層(3、3')シートは「ローデン」とよばれる市販の厚さが0.1mmのLLPEにし、ジグソーパズル本体層(1)は厚さが3mmの市販の弾性のあるポリプロピレン組成物にした。
得られたジグソーパズル(P)の一つのピースにT型剥離試験を行ったが、各層が剥離することはなく、ジグソーパズルの通常使用時に十分な離強度があることが分かった。
【0118】
本発明の第1の対象の透明ジグソーパズルは上記の印刷層(4-1、4-2)を形成しない点以外は上記と同じ方法で製造できる。
【0119】
以上、本発明の具体例を添付図面を参照して説明したが、本発明が図示した実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0120】
P ジグソーパズル
p' ピース
C カッター
D 駆動ローラ
E バラし機
h ヒータ
M 打ち抜き機
R 積層装置(圧着ローラ)
S センサー
1 ジグソーパズル本体層
2、2' 透明表面層
3、3' 中間層
4-1、4-2 印刷層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9