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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】スレーブアームの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
B25J3/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020163323
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055737
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2022-06-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520044922
【氏名又は名称】株式会社ゆめサポート南相馬
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 潤一
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレーブアームをマスターアームの動きに追従して動くように制御する、スレーブアームの制御装置において、
前記マスターアームを有するメインコントローラーと、複数の操作部を有するサブコントローラーと、を備え、
前記メインコントローラーは、前記スレーブアームを前記マスターアームの動きに追従して動くように制御する第1動作制御部を有し
前記マスターアームは、相互に関節でつながれた複数のリンクを含んで構成され、
前記サブコントローラーは、
前記サブコントローラーに対する操作に従って、前記スレーブアームの先端部を所定の方向に間欠的に移動させるように制御する第2動作制御部と、
一対の第1操作部と、該第1操作部の一方と他方とを結ぶ第1線分の向きを認識する操作部向き認識部と、を有し、
前記操作部向き認識部は、前記第1線分の向きが垂直よりも水平に近い第1状態と、該第1線分の向きが水平よりも垂直に近い第2状態とを認識し、
前記第2動作制御部は、前記操作部向き認識部の認識結果に基づいて、前記サブコントローラーが前記第1状態にある場合には、前記第1操作部への操作に従って前記スレーブアームの前記先端部を所定の基準面に対して奥行方向に向けて間欠的に移動させるように制御し、
前記サブコントローラーが前記第2状態にある場合には、前記第1操作部への操作に従って前記スレーブアームの前記先端部を前記基準面における上下方向に向けて間欠的に移動させるように制御する
ことを特徴とするスレーブアームの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスレーブアームの制御装置において、
前記スレーブアームは先端部にカメラを有しており、
前記カメラからの映像を表示する表示部を備え、
前記第2動作制御部は、前記操作部向き認識部の認識結果に基づいて、
前記サブコントローラーが前記第1状態にある場合には、前記第1操作部への操作に従って前記スレーブアームの前記先端部を前記表示部に表示された前記映像に対して奥行方向に向けて間欠的に移動させるように制御し、
前記サブコントローラーが前記第2状態にある場合には、前記第1操作部への操作に従って前記スレーブアームの前記先端部を前記表示部に表示された前記映像における上下方向に向けて間欠的に移動させるように制御する
ことを特徴とするスレーブアームの制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスレーブアームの制御装置において、
前記マスターアームは、該マスターアームの前記関節を駆動させるアクチュエーターを有し、
前記第2動作制御部は、前記操作部向き認識部の認識結果に基づいて、
前記サブコントローラーが前記第1状態にある場合には、前記第1操作部への操作に従って前記マスターアームの前記先端部を所定の基準面に対して奥行方向に向けて間欠的に移動させるように前記アクチュエーターを制御し、
前記サブコントローラーが前記第2状態にある場合には、前記第1操作部への操作に従って前記マスターアームの前記先端部を前記基準面における上下方向に向けて間欠的に移動させるように前記アクチュエーターを制御する
ことを特徴とするスレーブアームの制御装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載のスレーブアームの制御装置において、
前記サブコントローラーは、
一対の第2操作部を有し、
前記一対の第2操作部は、該第2操作部の一方と他方とを結ぶ第2線分が前記サブコントローラーの平面視において前記第1線分と直角に交わる位置に配置されており、
前記操作部向き認識部は、前記第2線分の向きが垂直よりも水平に近い第3状態と、該第2線分の向きが水平よりも垂直に近い第4状態とを認識し、
前記第2動作制御部は、前記操作部向き認識部の認識結果に基づいて、
前記サブコントローラーが前記第3状態にある場合には、前記第2操作部への操作に従って前記スレーブアームの前記先端部を所定の基準面における左右方向に向けて間欠的に移動させるように制御し、
前記サブコントローラーが前記第4状態にある場合には、前記第2操作部への操作に従って前記スレーブアームの前記先端部を前記基準面における上下方向に向けて間欠的に移動させるように制御する
ことを特徴とするスレーブアームの制御装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載のスレーブアームの制御装置において、
前記第2動作制御部は、いずれかの前記操作部による操作が継続している間は、所定の周期により繰り返して前記先端部を間欠的に移動させるように制御する
ことを特徴とするスレーブアームの制御装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載のスレーブアームの制御装置において、
前記第2動作制御部が前記スレーブアームの前記先端部を間欠的に移動させるように制御するときの、該先端部の一回分の移動量を設定する移動量設定部を備え、
前記移動量設定部は、前記第2動作制御部による前記先端部を間欠的に移動させる制御が予め定められた所定の期間中に連続して予め定められた所定の回数行われた場合には、前記移動量を現在の設定値より小さな値に変更する
ことを特徴とするスレーブアームの制御装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載のスレーブアームの制御装置において、
前記スレーブアームは先端部に、把持対象物を挟み込んで把持する把持部を有しており、
前記サブコントローラーは、把持部操作部を有し、
前記把持部操作部は、該把持部操作部に対する圧力を感知するセンサーを含んで構成され、
前記第2動作制御部は、前記センサーに対する圧力の強さに応じて、前記把持部が前記把持対象物を挟み込む動作の圧力又は速度を制御する
ことを特徴とするスレーブアームの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スレーブアームの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マニピュレータ制御システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-310873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明によれば、スレーブアームのコントローラーとして動作する、マスターアームと、ジョイスティックとを操作者が適宜に切り替えて用いて、スレーブアームの動作を制御することができる。
【0005】
ところで、このようなマスター・スレーブ型のコントローラーにおいては、一般的にスレーブアームの大きさに比して、マスター側のコントローラー(たとえばマスターアーム)の大きさは小さい。そのため例えばスレーブアームを1cm移動させたい場合には、操作者はマスターアームを数mmの単位で操作することが求められる。
【0006】
このように、マスター・スレーブ型のコントローラーは、操作者の動きに追従するので直感的な操作ができるためアバウトな位置決め操作をする場合に向く一方で、厳密な位置合わせをする際には非常に繊細な操作を操作者に求めるという課題を有している。
【0007】
しかしながら、特許文献1の発明においては、単に異なる操作手段を操作者が適宜に切り替えて用いることができるにとどまり、厳密な位置合わせをする際には非常に繊細な操作を操作者に求めるという課題を解決することはできない。
【0008】
そこで本発明は、厳密な位置合わせが求められる場合においても、簡便かつ直感的にスレーブアームの動作を制御できるスレーブアームの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスレーブアームの制御装置は、
スレーブアームをマスターアームの動きに追従して動くように制御する、スレーブアームの制御装置において、
前記マスターアームを有するメインコントローラーと、複数の操作部を有するサブコントローラーと、を備え、
前記メインコントローラーは、前記スレーブアームを前記マスターアームの動きに追従して動くように制御する第1動作制御部を有し
前記マスターアームは、相互に関節でつながれた複数のリンクを含んで構成され、
前記サブコントローラーは、
前記サブコントローラーに対する操作に従って、前記スレーブアームの先端部を所定の方向に間欠的に移動させるように制御する第2動作制御部と、
一対の第1操作部と、該第1操作部の一方と他方とを結ぶ第1線分の向きを認識する操作部向き認識部と、を有し、
前記操作部向き認識部は、前記第1線分の向きが垂直よりも水平に近い第1状態と、該第1線分の向きが水平よりも垂直に近い第2状態とを認識し、
前記第2動作制御部は、前記操作部向き認識部の認識結果に基づいて、前記サブコントローラーが前記第1状態にある場合には、前記第1操作部への操作に従って前記スレーブアームの前記先端部を所定の基準面に対して奥行方向に向けて間欠的に移動させるように制御し、
前記サブコントローラーが前記第2状態にある場合には、前記第1操作部への操作に従って前記スレーブアームの前記先端部を前記基準面における上下方向に向けて間欠的に移動させるように制御する
ことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第2動作制御部により、サブコントローラーに対する操作に従って、スレーブアームの先端部が所定の方向に間欠的に移動するように制御される。
【0011】
これにより、マスターアームのみでスレーブアームを操作する場合に比して、多様な動作を簡便にスレーブアームにさせることができる。
【0012】
また、操作部向き認識部により一対の第1操作部の一方と他方とを結ぶ第1線分の向きが認識される。
【0013】
そして、第2動作制御部により、第1線分の向きが垂直よりも水平に近い第1状態にある場合には、第1操作部への操作に従ってスレーブアームの先端部が所定の基準面に対して奥行方向に向けて移動するように制御される。
【0014】
また、第2動作制御部により、第1線分の向きが水平よりも垂直に近い第2状態にある場合には、第1操作部への操作に従ってスレーブアームの先端部が所定の基準面における上下方向に向けて移動するように制御される。
【0015】
すなわち、一対の第1操作部の向きと、スレーブアームの先端部の移動方向の向きとを一致させることができるので、操作者はサブコントローラーを用いて直感的にスレーブアームの動作を制御することができる。
【0016】
また、2つの操作部で、奥行方向の奥側及び手前側と、上下方向の上側及び下側の4つの側にスレーブアームの先端部が移動するように制御できるので、その操作は簡便である。
【0017】
このように本発明によれば、厳密な位置合わせが求められる場合においても、簡便かつ直感的にスレーブアームの動作を制御できる。
【0018】
本発明のスレーブアームの制御装置において、
前記スレーブアームは先端部にカメラを有しており、
前記カメラからの映像を表示する表示部を備え、
前記第2動作制御部は、前記操作部向き認識部の認識結果に基づいて、
前記サブコントローラーが前記第1状態にある場合には、前記第1操作部への操作に従って前記スレーブアームの前記先端部を前記表示部に表示された前記映像に対して奥行方向に向けて間欠的に移動させるように制御し、
前記サブコントローラーが前記第2状態にある場合には、前記第1操作部への操作に従って前記スレーブアームの前記先端部を前記表示部に表示された前記映像における上下方向に向けて間欠的に移動させるように制御する
ことが好ましい。
【0019】
スレーブアームが遠隔地にある場合に、操作者はスレーブアームが有するカメラからの映像を見ながら、スレーブアームに対する操作を行うことが考えられる。この場合には、カメラから見える方向と、サブコントローラーを操作した際にスレーブアームが移動する方向とが一致していることが望ましい。
【0020】
本発明によれば、表示部により、スレーブアームが先端部に有するカメラからの映像が表示される。
【0021】
そして、第2動作制御部により、第1線分の向きが垂直よりも水平に近い第1状態にある場合には、第1操作部への操作に従ってスレーブアームの先端部が表示部に表示された映像に対して奥行方向に向けて移動するように制御される。
【0022】
また、第2動作制御部により、第1線分の向きが水平よりも垂直に近い第2状態にある場合には、第1操作部への操作に従ってスレーブアームの先端部が表示部に表示された映像における上下方向に向けて移動するように制御される。
【0023】
すなわち、一対の第1操作部の向きと、表示部に表示された映像中のスレーブアームの先端部の移動方向の向きとを一致させることができるので、操作者は表示部の映像を見ながらサブコントローラーを用いて直感的にスレーブアームの動作を制御することができる。
【0024】
このように本発明によれば、厳密な位置合わせが求められる場合においても、表示部の映像を見ながら簡便かつ直感的にスレーブアームの動作を制御できる。
【0025】
本発明のスレーブアームの制御装置において、
前記マスターアームは、該マスターアームの前記関節を駆動させるアクチュエーターを有し、
前記第2動作制御部は、前記操作部向き認識部の認識結果に基づいて、
前記サブコントローラーが前記第1状態にある場合には、前記第1操作部への操作に従って前記マスターアームの前記先端部を所定の基準面に対して奥行方向に向けて間欠的に移動させるように前記アクチュエーターを制御し、
前記サブコントローラーが前記第2状態にある場合には、前記第1操作部への操作に従って前記マスターアームの前記先端部を前記基準面における上下方向に向けて間欠的に移動させるように前記アクチュエーターを制御する
ことが好ましい。
【0026】
マスターアームと、サブコントローラーとを適宜に切り替えて用いて、スレーブアームの動作を制御する場合に、サブコントローラーによる操作内容をスレーブアームのみに反映した場合は、スレーブアームの状態とマスターアームの状態とが不一致になる。そのため、次にマスターアームを用いた制御を開始しようとしたときに、直感的にスレーブアームの制御ができない不都合を生じさせる。
【0027】
そのような不都合を生じさせないためには、サブコントローラーによる操作内容をマスターアーム、サブコントローラー双方に反映させることが望ましい。
【0028】
本発明によれば、マスターアームは、マスターアームの関節を駆動させるアクチュエーターを有している。そして、第2動作制御部により、サブコントローラーに対して行われた操作が、アクチュエーターを介してマスターアームに反映される。
【0029】
スレーブアームは、マスターアームの動きに追従して動くように制御されるように構成されているので、マスターアームに反映された操作は、そのままスレーブアームにも反映され、結果として、スレーブアームの状態とマスターアームの状態とが一致することとなり、上記のような不都合を生じさせない。
【0030】
このように本発明によれば、厳密な位置合わせが求められる場合においても、スレーブアームの状態とマスターアームの状態とを一致させながら、簡便かつ直感的にスレーブアームの動作を制御できる。
【0031】
本発明のスレーブアームの制御装置において、
前記サブコントローラーは、
一対の第2操作部を有し、
前記一対の第2操作部は、該第2操作部の一方と他方とを結ぶ第2線分が前記サブコントローラーの平面視において前記第1線分と直角に交わる位置に配置されており、
前記操作部向き認識部は、前記第2線分の向きが垂直よりも水平に近い第3状態と、該第2線分の向きが水平よりも垂直に近い第4状態とを認識し、
前記第2動作制御部は、前記操作部向き認識部の認識結果に基づいて、
前記サブコントローラーが前記第3状態にある場合には、前記第2操作部への操作に従って前記スレーブアームの前記先端部を所定の基準面における左右方向に向けて間欠的に移動させるように制御し、
前記サブコントローラーが前記第4状態にある場合には、前記第2操作部への操作に従って前記スレーブアームの前記先端部を前記基準面における上下方向に向けて間欠的に移動させるように制御する
ことが好ましい。
【0032】
本発明によれば、サブコントローラーは一対の第2操作部を有している。なお一対の第2操作部は、第2操作部の一方と他方とを結ぶ第2線分がサブコントローラーの平面視において第1線分と直角に交わる位置に配置されている。
【0033】
また、操作部向き認識部により第2線分の向きが認識される。
【0034】
そして、第2動作制御部により、第2線分の向きが垂直よりも水平に近い第3状態にある場合には、第2操作部への操作に従ってスレーブアームの先端部が所定の基準面における左右方向に向けて移動するように制御される。
【0035】
また、第2動作制御部により、第2線分の向きが水平よりも垂直に近い第4状態にある場合には、第2操作部への操作に従ってスレーブアームの先端部が所定の基準面における上下方向に向けて移動するように制御される。
【0036】
すなわち、一対の第2操作部の向きと、スレーブアームの先端部の移動方向の向きとを一致させることができるので、操作者はサブコントローラーを用いて直感的にスレーブアームの動作を制御することができる。
【0037】
また、4つの操作部で、奥行方向の奥側及び手前側と、上下方向の上側及び下側と、左右方向の左側及び右側の6つの側にスレーブアームの先端部が移動するように制御できるので、その操作は簡便である。
【0038】
このように本発明によれば、厳密な位置合わせが求められる場合においても、奥行方向の奥側及び手前側と、上下方向の上側及び下側と、左右方向の左側及び右側の6つの側に簡便かつ直感的にスレーブアームの動作を制御できる。
【0039】
本発明のスレーブアームの制御装置において、
前記第2動作制御部は、いずれかの前記操作部による操作が継続している間は、所定の周期により繰り返して前記先端部を間欠的に移動させるように制御する
ことが好ましい。
【0040】
本発明によれば、第2動作制御部により、いずれかの操作部による操作が継続している間は、所定の周期により繰り返して先端部が間欠的に移動するように制御される。
【0041】
これにより、サブコントローラーを用いて、同一方向に向けて複数回連続して間欠的な移動をスレーブアームの先端部にさせたい場合には、当該方向に位置する操作部の操作を継続(例えば押したままに)すればよいので、操作は簡便である。
【0042】
このように本発明によれば、厳密な位置合わせが求められる場合においても、より簡便かつ直感的にスレーブアームの動作を制御できる。
【0043】
本発明のスレーブアームの制御装置において、
前記第2動作制御部が前記スレーブアームの前記先端部を間欠的に移動させるように制御するときの、該先端部の一回分の移動量を設定する移動量設定部を備え、
前記移動量設定部は、前記第2動作制御部による前記先端部を間欠的に移動させる制御が予め定められた所定の期間中に連続して予め定められた所定の回数行われた場合には、前記移動量を現在の設定値より小さな値に変更する
ことが好ましい。
【0044】
1回の間欠的な移動で移動する距離が、位置合わせをしたい対象物とスレーブアームの先端部の位置のずれの距離よりも大きい場合、何度間欠的な移動を繰り返しても正しく位置合わせをすることができない。
【0045】
このような場合には、1回の間欠的な移動で移動する量を小さくすることが望ましい。
【0046】
本発明によれば、第2動作制御部による先端部を間欠的に移動させる制御が予め定められた所定の期間中に連続して予め定められた所定の回数行われた場合には、移動量設定部により、間欠的に移動させるときの一回分の移動量の値が現在の設定値より小さな値に自動的に変更される。
【0047】
これにより、より厳密な位置合わせを簡便に行うことができる。
【0048】
このように本発明によれば、厳密な位置合わせが求められる場合においても、より簡便かつ直感的にスレーブアームの動作を制御できる。
【0049】
本発明のスレーブアームの制御装置において、
前記スレーブアームは先端部に、把持対象物を挟み込んで把持する把持部を有しており、
前記サブコントローラーは、把持部操作部を有し、
前記把持部操作部は、該把持部操作部に対する圧力を感知するセンサーを含んで構成され、
前記第2動作制御部は、前記センサーに対する圧力の強さに応じて、前記把持部が前記把持対象物を挟み込む動作の圧力又は速度を制御する
ことが好ましい。
【0050】
本発明によれば、サブコントローラーが有する把持部操作部の圧力センサーにより圧力が感知されて、第2動作制御部によりセンサーに対する圧力の強さに応じて、スレーブアームが有する把持部が把持対象物を挟み込む動作の圧力又は速度が制御される。
【0051】
これにより操作者は、スレーブアームが有する把持部に対しても直感的な操作が可能である。
【0052】
このように本発明によれば、厳密な位置合わせと把持動作とが求められる場合においても、簡便かつ直感的にスレーブアームの動作を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明のスレーブアームの制御装置の全体像を示すイメージ図。
図2】本発明のスレーブアームの制御装置の全体像を示すブロック図。
図3】本発明のスレーブアームの制御装置のサブコントローラーを示すイメージ図。
図4】本発明のスレーブアームの制御装置の処理内容を示すフローチャート。
図5】本発明のスレーブアームの制御装置の表示部の表示内容を示すイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0054】
<スレーブアームの制御装置の構成>
まず図1図2及び図3を用いて、本実施形態のスレーブアームの制御装置の構成について説明する。なお同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0055】
本実施形態のスレーブアームの制御装置は、スレーブアーム710をマスターアーム130の動きに追従して動くように制御する、スレーブアーム710の制御装置であり、メインコントローラー10と、サブコントローラー30を含んで構成される。メインコントローラー10とスレーブアーム710との間は例えば無線通信により相互に通信可能に接続され、メインコントローラー10とサブコントローラー30との間は例えばケーブルにより相互に通信可能に接続されるが、それに限定されず任意の通信手段が用いられてよい。
【0056】
メインコントローラー10は、メインコントローラー制御部110と、マスターアーム130と、を含んで構成される、例えばロボット70に搭載されたスレーブアーム710の遠隔操作装置である。メインコントローラー10は、表示部150を備えていてもよい。
【0057】
メインコントローラー制御部110は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置、メモリ、及びI/O(Input/Output)デバイスなどにより構成されている。メインコントローラー制御部110は、所定のプログラムを読み込んで実行することにより例えば第1動作制御部111として機能する。
【0058】
第1動作制御部111は、スレーブアーム710をマスターアーム130の動きに追従して動くように制御する。
【0059】
マスターアーム130は、相互にマスターアーム関節131でつながれた複数のマスターアームリンク133を含んで構成される。あるいはさらにマスターアーム130は、マスターアーム関節131を駆動させるマスターアームアクチュエーター135を有している。
【0060】
表示部150は、スレーブアーム710が先端部に有するカメラからの映像を表示する、例えばヘッドマウントディスプレイであるが、卓上型等の複数人が同時に見ることのできるディスプレイ装置であってもよい。
【0061】
サブコントローラー30は、サブコントローラー制御部310と、一対の第1操作部330と、を含んで構成される、スレーブアーム710の遠隔操作装置である。サブコントローラー30はさらに、一対の第2操作部350と、把持部操作部370と、を備えている。
【0062】
サブコントローラー制御部310は、CPU等の演算処理装置、メモリ、及びI/Oデバイスなどにより構成されている。サブコントローラー制御部310は、所定のプログラムを読み込んで実行することにより例えば第2動作制御部311、操作部向き認識部313、移動量設定部315として機能する。
【0063】
第2動作制御部311は、サブコントローラー30に対する操作に従って、スレーブアーム710の先端部を所定の方向に間欠的に移動させるように制御する。
【0064】
また第2動作制御部311は、把持部操作部370に対する圧力を感知するセンサーに対する圧力の強さに応じて、スレーブアーム710の先端部TAに設けられた把持部719が把持対象物を挟み込む動作の圧力又は速度を制御するように構成される。
【0065】
操作部向き認識部313は、一対の第1操作部330の一方と他方とを結ぶ第1線分L1の向きを認識する、例えばジャイロセンサ―である。あるいはさらに操作部向き認識部313は、一対の第2操作部350の一方と他方とを結ぶ第2線分L2の向きを認識するように構成される。
【0066】
移動量設定部315は、第2動作制御部311がスレーブアーム710の先端部TAを間欠的に移動させるように制御するときの、先端部TAの一回分の移動量を設定する。
【0067】
第1操作部330は、例えばサブコントローラー30の上面に設けられた2つのボタンである。
【0068】
第2操作部350は、例えばサブコントローラー30の上面に設けられた2つのボタンであり、第2操作部350の一方(350A)と他方(350B)とを結ぶ第2線分L2がサブコントローラー30の平面視(図3においては上方から見た場合。)において第1線分L1と直角に交わる位置に配置されている。
【0069】
把持部操作部370は、圧力を感知するセンサーを含んで構成される。把持部操作部370は、サブコントローラー30による操作を妨げない限りにおいて、サブコントローラー30の任意の箇所に設けられてよい。
【0070】
本実施形態のスレーブアームの制御装置の制御対象となるスレーブアーム710は、例えばクローラ等により任意の方向に移動可能なロボット70に設けられている。
【0071】
スレーブアーム710は、相互にスレーブアーム関節711でつながれた複数のスレーブアームリンク713と、スレーブアーム関節711を駆動させるスレーブアームアクチュエーター715を有している。あるいはさらにスレーブアーム710は、カメラ717と、把持部719と、を含んでいる。スレーブアーム710は、マスターアーム130と同じ動作をすることができるように構成されている。
【0072】
カメラ717は、スレーブアーム710の先端部TAからの映像を撮像し、表示部150に送信する。
【0073】
把持部719は、スレーブアーム710の先端部TAに設けられ、把持対象物を挟み込んで把持するように構成された、例えばロボットハンドである。
【0074】
<処理の概要>
次に、図4及び図5を参照して、スレーブアームの制御装置による一連の処理について説明する。図5は、把持対象Obであるバルブが表示部150に表示されている状態を示している。なお、マスターアーム130を用いたスレーブアーム710の制御には周知の手法が用いられてよいので、サブコントローラー30によるスレーブアーム710の制御を中心に説明する。
【0075】
<操作部向き認識処理>
処理を開始すると、操作部向き認識部313が、第1操作部及び第2操作部の向きを認識する(図4/S110)。
【0076】
すなわち例えば操作部向き認識部313は、サブコントローラー30の図5におけるYZ方向の傾きを認識して、当該認識結果に基づいて、一対の第1操作部330の一方(330A)と他方(330B)とを結ぶ第1線分L1の向きが垂直よりも水平に近い第1状態にあるか、第1線分L1の向きが水平よりも垂直に近い第2状態にあるかを認識する。例えば図の状態においては、第1線分L1の向きが水平であるので、操作部向き認識部313は第1状態にあると認識する。なお操作部向き認識部313は、第1線分L1の向きが水平よりも垂直に近い第2状態にある場合には、一対の第1操作部330の一方(330A)と他方(330B)のいずれが相対的に上方又は下方にあるのかを併せて認識する。
【0077】
同様に、操作部向き認識部313は、サブコントローラー30のXY方向の傾きを認識して、当該認識結果に基づいて、一対の第2操作部350の一方(350A)と他方(350B)とを結ぶ第2線分L2の向きが垂直よりも水平に近い第3状態にあるか、第2線分L2の向きが水平よりも垂直に近い第4状態にあるかを認識する。例えば図の状態においては、第2線分L2の向きが水平であるので、操作部向き認識部313は第3状態にあると認識する。なお操作部向き認識部313は、第2線分L2の向きが水平よりも垂直に近い第4状態にある場合には、一対の第2操作部350の一方(350A)と他方(350B)のいずれが相対的に上方又は下方にあるのかを併せて認識する。
【0078】
また操作部向き認識部313は、当該認識を非常に短い周期(例えば10ミリ秒に1回など)で繰り返し行う。
【0079】
<第2動作制御処理>
第2動作制御部311は、一対の第1操作部330(330A、330B)及び一対の第2操作部350(350A、350B)の何れかに対する操作が行われたときにスレーブアーム710の先端部TAを所定の基準面における所定の方向に向けて間欠的に移動させるように制御する。
【0080】
なお、所定の基準面とは、例えば表示部150に表示された映像VのXY方向の2次元に対応する面Pである。
【0081】
すなわち例えば第2動作制御部311は、サブコントローラー30が第1状態にある場合(図4/S200:CASE1)には、第1操作部330への操作に従ってスレーブアーム710の先端部TAを奥行方向であるZ方向に向けて間欠的に移動させる(図4/S210)。
【0082】
より具体的には、第1操作部の一方(330A)への操作に従ってスレーブアーム710の先端部TAを表示部150に表示された映像Vに対して奥行方向の奥側Z1に向けて間欠的に移動させるように制御し、第1操作部の他方(330B)への操作に従ってスレーブアーム710の先端部TAを表示部150に表示された映像Vに対して奥行方向の手前側Z2に向けて間欠的に移動させるように制御する。
【0083】
同様に第2動作制御部311は、サブコントローラー30が第2状態にある場合(図4/S200:CASE2)には、第1操作部330への操作に従ってスレーブアーム710の先端部TAを上下方向であるY方向に向けて間欠的に移動させる(図4/S230)。
【0084】
より具体的には、例えば第1操作部330の一方(330A)が他方(330B)よりも相対的に上方にある場合には、第1操作部の一方(330A)への操作に従ってスレーブアーム710の先端部TAを表示部150に表示された映像Vにおける上側Y1に向けて間欠的に移動させるように制御し、第1操作部の他方(330B)への操作に従ってスレーブアーム710の先端部TAを表示部150に表示された映像Vにおける下側Y2に向けて間欠的に移動させるように制御する。
【0085】
また第2動作制御部311は、サブコントローラー30が第3状態にある場合(図4/S300:CASE3)には、第2操作部350への操作に従ってスレーブアーム710の先端部TAを左右方向であるX方向に向けて間欠的に移動させる(図4/S310)。
【0086】
より具体的には、第2操作部の一方(350A)への操作に従ってスレーブアーム710の先端部TAを表示部150に表示された映像Vに対して左側X1に向けて間欠的に移動させるように制御し、第2操作部の他方(350B)への操作に従ってスレーブアーム710の先端部TAを表示部150に表示された映像Vに対して右側X2に向けて間欠的に移動させるように制御する。
【0087】
同様に第2動作制御部311は、サブコントローラー30が第4状態にある場合(図4/S300:CASE4)には、第2操作部350への操作に従ってスレーブアーム710の先端部TAを上下方向である方向に向けて間欠的に移動させる(図4/S330)。
【0088】
より具体的には、例えば第2操作部350の一方(350A)が他方(350B)よりも相対的に上方にある場合には、第2操作部の一方(350A)への操作に従ってスレーブアーム710の先端部TAを表示部150に表示された映像Vに対して上側Y1に向けて間欠的に移動させるように制御し、第2操作部の他方(350B)への操作に従ってスレーブアーム710の先端部TAを表示部150に表示された映像Vに対して下側Y2に向けて間欠的に移動させるように制御する。
【0089】
なお第2動作制御部311は、いずれかの操作部(330A、330B、350A、350B)が例えば押下されたままであるなど、操作部(330A、330B、350A、350B)に対する操作が継続している間は、所定の周期により繰り返して先端部TAを間欠的に移動させるように制御する。
【0090】
すなわち例えば、第1状態である場合に、第1操作部の一方が押下されたままの状態であれば、スレーブアーム710の先端部TAを表示部150に表示された映像Vに対して奥行方向の奥側Z1に向けて所定の周期により繰り返して間欠的に移動させるように制御する。所定の周期とは、例えば1秒間に数回であり、当該周期は任意の値に設定が可能である。
【0091】
また、第2動作制御部311はサブコントローラー30に対する操作に応じてマスターアーム130の先端部を間欠的に移動させるようにマスターアームアクチュエーター135制御し、マスターアームを介してスレーブアームを間欠的に移動させるように構成される。
【0092】
すなわち例えば第2動作制御部311は、サブコントローラー30が第1状態にある場合には、第1操作部330への操作に従ってマスターアーム130の先端部を表示部150に表示された映像Vに対して奥行方向に向けて間欠的に移動させるようにマスターアームアクチュエーター135を制御する。サブコントローラー30が第2状態、第3状態、第4状態にある場合にも第2動作制御部311は、マスターアーム130の先端部をサブコントローラー30の向きに応じた方向に向けて間欠的に移動させるようにマスターアームアクチュエーター135を制御する。
【0093】
当該制御に伴って、マスターアーム130が動作するので、スレーブアーム710の各スレーブアームアクチュエーター715は、当該動作に追随して動くように第1動作制御部111により制御される。
【0094】
<移動量設定処理>
移動量設定部315は、第2動作制御部311がスレーブアーム710の先端部TAを間欠的に移動させるように制御している間(図4/S210、S230、S310、S330)に、スレーブアーム710の先端部TAの一回分の移動量を設定する移動量設定処理を行うように構成される。
【0095】
より具体的には、例えば第1操作部の一方(330A)を1回押下し、第2操作部の一方(350A)を2回押下し・・・などと、スレーブアーム710の位置合わせのための操作部(330、350)による操作が複数回にわたって連続して行われたことにより、第2動作制御部311によるスレーブアーム710の先端部TAを間欠的に移動させる制御が連続して所定回数(例えば3回、5回など)行われた場合には、移動量設定部315は、移動量を設定値の初期値(例えば5mmなど)より小さな値(例えば3mmなど)に変更する。
【0096】
あるいはさらに多くの所定回数(例えば10回など)連続して、第2動作制御部311によるスレーブアーム710の先端部TAを間欠的に移動させる制御が行われた場合には、移動量設定部315は、当該移動量をさらに小さな値(例えば1mmなど)に変更するなど、第2動作制御部311による先端部TAを間欠的に移動させる制御が予め定められた所定の期間中に連続して予め定められた所定の回数行われた場合に、先端部TAの移動量を現在の値より小さな値にする制御を繰り返し行ってもよい。
【0097】
なお移動量設定部315は、第2動作制御部311がスレーブアーム710の先端部TAを間欠的に移動させる制御が一定期間(例えば数秒など。)行われない場合、すなわちいずれかの操作部(330A、330B、350A、350B)による操作が一定期間行われない場合に、移動量を初期値に再設定する。
【0098】
以上説明してきたように、本発明によれば、厳密な位置合わせが求められる場合においても、簡便かつ直感的にスレーブアームの動作を制御できるスレーブアームの制御装置を提供することができる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0100】
例えばサブコントローラー制御部310の機能の一部または全部が、メインコントローラー制御部110により実行されてもよい。サブコントローラー制御部310の機能の全部がメインコントローラー制御部110により実行される場合には、サブコントローラー制御部310は省略されてもよい。
【0101】
あるいは例えば上記においては、サブコントローラー30による操作がマスターアーム130を介してスレーブアーム710に反映される構成について説明したが、これに限定されない。すなわち例えば、サブコントローラー30による操作が、まずスレーブアーム710に反映されて、スレーブアーム710の状態がマスターアーム130にフィードバックされてもよい。
【符号の説明】
【0102】
30…サブコントローラー、111…第1動作制御部、130…マスターアーム、131…マスターアーム関節、133…マスターアームリンク、135…マスターアームアクチュエーター、150…表示部、311…第2動作制御部、313…操作部向き認識部、315…移動量設定部、330…第1操作部、350…第2操作部、370…把持部操作部、710…スレーブアーム、717…カメラ、719…把持部。
図1
図2
図3
図4
図5