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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/20 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
B29C65/20
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020544177
(86)(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 GB2018053264
(87)【国際公開番号】W WO2019092444
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】1718751.9
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520156948
【氏名又は名称】ピンウェルド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PINWELD LIMITED
【住所又は居所原語表記】VWV LLP Narrow Quay House Narrow Quay Bristol England BS1 4QA United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】ケヴェン チャッペル
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05460317(US,A)
【文献】中国特許出願公開第1593834(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料の溶接帯域に沿ってポリマー材料を溶接する溶接装置であって、キャリアと、前記ポリマー材料を溶融せしめるために溶融帯域に熱を供給する加熱エレメントとを備え、前記加熱エレメントは、引っ込んだ状態と伸長した状態との間を前記キャリアに対して往復運動するように設けられていて、前記加熱エレメントが引っ込んだ状態から伸長した状態に移動すると、前記加熱エレメントがポリマー材料の表面を溶融してこの表面に浸入するようにし、前記キャリアは、前記溶接帯域に溶融ポリマー材料を拘束するように配置されて前記溶接帯域に沿って前記加熱エレメントを追跡する追跡接触面を更に含み、前記加熱エレメントも前記追跡接触面に対して往復運動するように配置され、前記加熱エレメントは、ヘッドまで延び、前記ヘッドは、前記溶融帯域の溶融材料を加熱すると共に、前記キャリアの前記溶融帯域に沿って移動する方向に対して後方に前記溶融帯域の溶融材料を駆動する駆動面から成っている溶接装置。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接装置であって、横並びの配向で設けられた隣接するポリマー材料を溶接するものであり、前記溶接帯域は、横並びの隣接するポリマー材料の両方の一部を包囲している溶接装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の溶接装置であって、前記キャリアは、前記溶接帯域に沿って前記加熱エレメントを導く誘導接触面を更に含んでいる溶接装置。
【請求項4】
請求項3に記載の溶接装置であって、前記誘導接触面は、前記追跡接触面より大きい摩擦係数を有する溶接装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の溶接装置であって、前記キャリアは、前記誘導接触面を経て熱を供給するヒーターエレメントを更に含んでいる溶接装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の溶接装置であって、前記ヒーターエレメントが前記追跡接触面に対して鈍角で往復運動する溶接装置。
【請求項7】
請求項6に記載の溶接装置であって、前記鈍角が100度と135度の間、一層好ましくは、110度と120度の間である溶接装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の溶接装置であって、前記加熱エレメントからの熱出力を制御する温度調節システムを更に含んでいる溶接装置。
【請求項9】
請求項8に記載の溶接装置であって、前記温度調節システムは、前記加熱エレメントが引っ込んだ状態と伸長した状態との両方にある時、前記加熱エレメントが加熱せしめられるように構成され、及び/又は、前記温度調節システムは、前記加熱エレメントからの熱出力を監視して、測定された熱出力に基づいて前記加熱エレメントへの入力を調節するように構成されている溶接装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の溶接装置であって、前記加熱エレメントが前記伸長状態にあるキャリアから突出寸法だけ突出するように配置され、前記溶接装置は、突出寸法を調整できるように構成されている溶接装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の溶接装置であって、前記加熱エレメントは、ヘッドまで延び、前記ヘッドは、円形、半円形、ダイヤモンド形又は四角形の外郭を有する溶接装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の溶接装置であって、前記キャリアは、前記追跡接触面を有する足部と前記ヒーターエレメントを収容するハウジング とを含み、前記足部に対する前記ハウジングの位置は、複数の動作位置の間を調節可能である溶接装置。
【請求項13】
請求項12に記載の溶接装置であって、前記複数の動作位置で足部に対してハウジングを固定する手段を含んでいる溶接装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の溶接装置であって、前記キャリアは、ユーザーによって把持されるハンドル装置を含んでいる溶接装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の溶接装置であって、前記溶接帯域に沿ってキャリアの回転運動を可能にするために回転可能に取り付けられたエレメントを更に含んでいる溶接装置。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれかに記載の溶接装置であって、前記キャリアは、加熱エレメントを収納するハウジングを含み、前記ハウジングと前記加熱エレメントの間に隔離ギャップが形成されている溶接装置。
【請求項17】
キャリアがポリマー材料を溶解せしめるために溶接帯域に熱を供給する加熱エレメントを保持して前記ポリマー材料の溶接帯域に沿って前記ポリマー材料に対してキャリアを移動する工程と、前記キャリアに対して前記加熱エレメントを引っ込んだ状態と伸長した状態との間を往復動して前記加熱エレメントが引っ込んだ状態から伸長した状態に移動すると、前記加熱エレメントが前記ポリマー材料の表面を溶解してこの表面に侵入する工程と、前記加熱エレメントを溶接帯域に沿って追跡しつつ前記ポリマー材料を拘束する工程とを含み、前記加熱エレメントは、ヘッドまで延び、前記ヘッドは、前記溶融帯域の溶融材料を加熱すると共に、前記キャリアの前記溶融帯域に沿って移動する方向に対して後方に前記溶融帯域の溶融材料を駆動する駆動面から成っているポリマー材料を溶接する方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
―加熱エレメントがポリマー材料の表面を溶解して侵入する伸長状態に加熱エレメントを伸長すること、
―加熱エレメントを引っ込んだ位置に引っ込めること、
―溶接帯域に沿ってポリマー材料とキャリアの相対的な動きを生ぜしめること、
溶接帯域に沿ってこの順序を繰り返すことを含む方法。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の方法であって、横並びの配向で隣接したポリマー材料を設け、前記溶接帯域は、隣接する横並びの両ポリマー材料の一部を包囲している方法。
【請求項20】
請求項17乃至19のいずれかに記載の方法であって、前記加熱エレメントの動きは、前記伸長状態で休止される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料、限定的ではないが、特に、薄いかもろい材料を溶接するのに好適な溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両バンパー又はフェアリングの如き大型のポリマー品の修理には重大な問題が存在する。例えば、バンパーが損害を受けると、交替バンパーを簡単に取付けられる。しかし、これは、無駄であると共に高価である。更に、車両の複雑さが増加すると、バンパーは、修理中、新しいバンパーに移す必要がある近接センサーの如き多数のセンサー又は他の構成要素を含んでいることがある。しかし、コストは急速に法外に高くなり、車両は、比較的簡単なものを補修する費用による保険の損失処理として取り消されることがしばしばある。従来の溶接技術は、多くの異なるポリマー材料を補修するのには向いていない。これは、ポリマー材料が薄いかもろい場合に特に関連する。
【0003】
更に、たとえ、従来の溶接技術が望ましいと考えられていたとしても、適切なフィラーを選択するために、材料の組成を決定することが不可能である異なる高分子組成物が多数ある。このように、従来の溶接技術は非実用的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題を対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様によれば、ポリマー材料の溶接帯域に沿ってポリマー材料を溶接する溶接装置であり、この溶接装置は、キャリアと前記キャリアによって保持され前記ポリマー材料を溶融せしめるために前記溶接帯域に熱を供給する加熱エレメントとから成っており、前記加熱エレメントは、前記キャリアに対して引っ込んだ状態と伸長した状態との間を往復動するように構成されていて、前記加熱エレメントが引っ込んだ状態から伸長した状態に移動すると、前記加熱エレメントは、前記ポリマー材料の表面を溶融して侵入し、前記キャリアは、前記加熱エレメントを溶接帯域に沿って追跡する追跡(trailing)接触面を更に含んでいて、溶融されたポリマー材料を溶接帯域に拘束するようにし、前記加熱エレメントは、前記追跡接触面に対しても引っ込んだり伸長したりするように構成されている溶接装置である。
【0006】
この溶接装置は、薄くてもろく、今までは満足な基準まで溶接することができなかった多くのポリマー材料を溶接するのを可能にする。その意味することは、車のバンパーの如きコンポーネントを廃棄することなく、補修することができることである。溶接帯域に沿った連続的な溶接を達成することができる。
【0007】
更に、この溶接装置は、フィラー(溶加材)が必要とされないので、ユーザーが正しいフィラー材を選択することに依存することがない。これは、典型的には、複数の複合材料の混合物から成っているリサイクルされたポリマー材料を溶接することが必要である場合に、特に有益である。
【0008】
キャリアは溶接帯域に沿って動くことができ、従って、キャリアとポリマー材料との間には相対的な動きがある。キャリアは、動作中、静止したポリマー材料に対して動くのが好ましい。
【0009】
溶接帯域は、2つのポリマー材料の間の接合点を含んでいてもよいことは理解されるであろう。。代わりに、溶接帯域は、ポリマー材料のクラックを含んでいてもよい。溶接装置は、横並びに設けられた隣接するポリマー材料を溶接するのに有益であり、溶接帯域は、この隣接する横並びのポリマー材料の一部の両方を包囲している。この隣接した材料は、相互に対して異なる平面で配向されていてもよい。隣接する材料の各々は、衝合端縁を有し、溶接帯域は、それぞれの端縁まで延びている材料を包囲しているのが有利である。請求項に記載された発明による溶接装置は、突合せ溶接用の溶接装置と称することができる。
【0010】
溶接装置は、比較的に容易に操縦されて複雑な形状に適合することができるコンパクトで使いやすい装置を可能とするように携帯用とするのがよい。
【0011】
溶接装置は、単一の加熱エレメントを含んでいるのが好ましい。
【0012】
追跡接触面は、加熱エレメントの背後で移動方向に直接追跡するか、及び/又は加熱エレメントの側面で移動方向に追跡してもよいことは理解されることと思う。
【0013】
ポリマー材料を溶解して浸透することを経て、溶解したポリマー材料は、加熱エレメントの往復運動の先の動作によって形成されるスペースを有益に充填するように溶接帯域に移される。
【0014】
キャリアは、溶接帯域に沿って加熱エレメントを導く誘導(leading)接触面を更に含んでいるのが好ましい。これは、接合すべき材料の接合ラインに一層容易に倣うように、使用時に、キャリアに安定性を付与する利点を提供する。誘導接触面は、追跡接触面より大きい摩擦係数を有していてもよい。これは、誘導接触面と接合すべき材料との間に良い接触を確保する。
【0015】
キャリアは、誘導接触面を通して熱を供給するヒーターエレメントを更に含んでいてもよい。これは、溶接時間を減少し溶接品質を改善するために溶接帯域を予熱するのに用いることができる。
【0016】
このヒーターエレメントは、追跡接触面に対して鈍角で往復動するのが有利である。これは、ヒーターエレメントが溶融溶接材料を効果的に溶解して後方に向けて押しやる時の溶接装置の機能性に有利である。この材料は、追跡接触面によって拘束されて、先の往復運動中、ヒーターエレメントの働きによって残されるギャップを有益に埋める。従って、ポリマー材料は、溶接帯域を埋めて欠陥又は接合部の両側のポリマー材料を均質化するために、溶接帯域に沿って後ろ向きに往復動ヒーターエレメントから移送される。
【0017】
鈍角は、100度と135との間が有益であり、更に110度と120度との間が一層有益である。
【0018】
この溶接装置は、単一の入力に応じて加熱エレメントの複数の往復運動を引き起こすように動作するアクチュエータを含んでいるのが好ましい。このアクチュエータは、引き金の如きユーザー入力であるのが好ましい。このように、ユーザー入力を用いると、いずれの複数の往復運動も単一の起動及び解放で出力され、又は、好ましくは、複数の往復運動は、ユーザー入力の継続的で単一の動作で出力される。例えば、これは、引き金を押込み状態に維持することによって達成され、これによって、加熱エレメントの繰り返しの往復運動を引き起こし、従って、溶接片とキャリアとの間の相対運動があって、溶接帯域に沿った溶接物が生成される。
【0019】
溶接装置は、加熱エレメントによる熱出力を制御するために、温度制御システムを更に含むことができる。この温度制御システムは、加熱エレメントが引っ込んだ状態と伸長した状態との両方で、加熱エレメントが加熱せしめられるように構成されるのが好ましい。この温度調節システムは、加熱エレメントからの熱出力を監視し、測定された熱出力に基づいて加熱エレメントの入力を調節するように構成されるのが好ましい。従って、加熱エレメントの熱出力は、溶接品質の一貫性を確実にするように積極的に調整されることができる。例えば、この調整は、例えば、加熱エレメントに設けられる加熱フィラメントを通して電気パラメータの形態で入力を変えることによって行うことができる。
【0020】
溶接装置は、加熱エレメントによって供給される熱を選択するために、ユーザー動作入力部を含んでいてもよい。温度調節システムは、その熱出力を、ユーザーによって選択された熱出力に維持するように構成されてもよく、それによって、一貫した熱出力が溶接帯域全体に沿って達成され、そして、それによって溶接品質の一貫性を確実にする。溶接装置は、相応するポリマー材料の温度データを記憶するデータ記憶装置を含んでいてもよい。従って、ユーザーは、溶接すべき材料のポリマーの詳細と供給される適切な温度とを入力することができる。
【0021】
加熱エレメントは、突出距離によってキャリアから伸長状態に突出するように構成されているのが好ましく、溶接装置は、突出距離の調整を可能にするように構成することができる。従って、加熱エレメントの深さの制御が可能となり、これは、溶接すべき材料の厚みに応じて突出寸法を制御して調節するのに有益である。より厚い材料を溶接するために、突出寸法が増加されることは有益である。この突出寸法は、使用中、積極的に制御することができる。
【0022】
加熱エレメントは、ヘッドまで延びているのが有利であり、このヘッドは、円形、半円形、ダイヤモンド形又は四角形の外形を有する。半円形のヘッドの外形を利用する場合には、まっすぐな端縁が溶接帯域に沿った運動方向のヘッドの追跡端縁である。
【0023】
キャリアは、追跡接触面を有する足部と加熱エレメントを収納するハウジングとを含んでいてもよく、足部に対するハウジングの位置は、複数の動作位置の間で調節することができる。これは、足部に対するハウジングの位置を変えることによって、足部に対する加熱エレメントの角度を変えることもできる点で利点がある。これは、溶接すべきポリマー材料が異なる場合及び/又は溶接すべきポリマー材料の厚みが異なる場合に用いるのに有益である。複数の動作位置で足部に対してハウジングを固定する手段が設けられているのが好ましく、これは、ハウジングと、従って加熱エレメントとの間の相対的な角度を変えて所望の角度で使用するために固定することを意味する。
【0024】
キャリアは、ユーザーによって把持するためのハンドル装置を含んでいることができる。従って、溶接装置は、溶接方向に溶接帯域に沿って引くことができる。
【0025】
一つ以上の車輪の如き回転可能に取り付けられたエレメントが溶接帯域に沿ってキャリアの回転運動を可能にするように設けられている。従って、溶接装置は、ユーザーによるか、又は、その代わりに機械によって、制御された方法で溶接帯域に沿って容易に押されるか引かれることができる。
【0026】
キャリアは、加熱エレメントを収納するハウジングを含んでいるのが好ましく、ハウジングと加熱エレメントとの間に隔離ギャップが設けられているのが好ましい。隔離ギャップは、エアギャップであるのが好ましい。この隔離ギャップは、加熱エレメントからハウジングまでの熱の移動を減少するために設けられており、ハウジングは、オペレーターによって握られる。
【0027】
また、本発明によれば、キャリアがポリマー材料を溶解せしめるために溶接帯域に熱を供給する加熱エレメントを保持してポリマー材料の溶接帯域に沿ってポリマー材料に対して前記キャリアを移動する工程と、前記加熱エレメントが引っ込んだ状態から伸長した状態に移動すると、前記加熱エレメントが前記ポリマー材料の表面を溶解してこの表面に侵入するように、前記キャリアに対して前記加熱エレメントを引っ込んだ状態と伸長した状態との間を往復運動する工程と、前記加熱エレメントを溶接帯域に沿って追跡しつつ前記ポリマー材料を拘束する工程とを含むポリマー材料を溶接する方法が提供される。
【0028】
キャリアは、溶接帯域に沿って移動することは理解されることと思う。好ましくは、キャリアは、ポリマー材料が静止したまま、物理的に移動する。
【0029】
この方法は、以下の順序で動作するのが好ましい。
―加熱エレメントがポリマー材料の表面を溶解して侵入する伸長位置に加熱エレメントを伸長すること、
―加熱エレメントを引っ込んだ位置に引っ込めること、
―溶接帯域に沿ってポリマー材料とキャリアの相対的な動きを生ぜしめること、
溶接帯域に沿ってこの順序を繰り返す。
【0030】
この方法は、横並びの配向で隣接したポリマー材料を設けるのが好ましく、溶接帯域は、隣接する横並びの両ポリマー材料の一部を包囲している。
【0031】
この方法は、加熱エレメントがより遅い速度で移動するか伸長した状態又はその付近で移動を休止するように、加熱エレメントの移動を制御するのが好ましい。好ましくは、加熱エレメントの動きは、溶接帯域への熱伝導が大きくなるように伸長した状態で休止される。
【0032】
本発明による溶接装置は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS及びポリカーボネート、PVC及びポリアミドの完全に網羅しているわけではないリストを含む多数のポリマー材料を溶接するのに用いることができる。更に、これらの材料の混合物を溶接してもよい。これは、特に、混合材料では困難であるフィラー材を溶接すべき材料と合わせる複雑な要件を回避する。ポリプロピレンと混合ポリプロピレンとの溶接は、例えば、複雑で高価な部品である車両のバンパー及び照明具取付け用のブラケットで広く用いられている場合に大きな利点がある。
【0033】
本発明の幾つかの態様は、以下の添付図面を参照して例示的のみ記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1(a)、図1(b)は、本発明の図示の実施例の概略横断面図及び斜視図であり、図1(a)は、溶接すべきポリマー材料がない本発明の図示の実施例による溶接祖プチの一部を示している。
図2図2(a)、図2(b)は、図示の実施例の概略横断面図及び斜視図である。
図3図3は、本発明の実施例の更なる概略横断側面図及び下側図である。
図4図4は、本発明の実施例の横断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図Iを参照すると、接合又は補修すべきポリマー材料8a、bの溶接帯域6に沿って可動するキャリア4を含むポリマー材料を溶接する溶接装置2が示されている。加熱エレメント10は、ポリマー材料を溶解せしめるために、溶接帯域6に熱を供給するように、キャリア4によって保持されている。矢印12は、加熱エレメント10の往復運動の方向を示し、図1(a)では、伸長状態で示されている。キャリアは、溶接帯域で溶解したポリマー材料を拘束するように配置されて溶接帯域に沿って加熱エレメント10を追跡する追跡接触面14を更に含んでいる。この追跡接触面14は、足部16によって保持され、典型的な具体例では、足部16は、加熱エレメント10を収納するハウジング18から突き出ている。加熱エレメントは、加熱エレメント10に埋め込まれて設けられた抵抗発熱エレメントの如き種々の手段によって加熱されることは理解されることと思う。加熱エレメント10は、追跡接触面14、従って足部16に対して往復運動することは理解されることと思う。
【0036】
16又はキャリアのハウジングの一部によって設けられた追跡接触面14は、溶接の終了部を増強するために加熱又は冷却装置を備えている。クッション性とすることができるローラー又はブレードを設けることができ、このローラー又はブレードは、溶接部の外観を修正するために設けられている。例えば、ローラー又はブレードは、溶接を滑らかにし、従って、必要とされる以後の処理を少なくすることができる。その代わりに、又は、それに加えて、一つ以上のセンサーを設けて、例えば、加熱エレメントの温度又は加熱エレメントの侵入深さの如き動作パラメータの修正を活発に引き起こすための制御システムに熱データをリレーすることができる。その上、例えば、溶接部の欠陥又は空所を検出するためのフライト(flight)測定装置の時間の如き溶接品質を決定する装置を設けることができる。
【0037】
キャリアは、溶接帯域6に沿って加熱エレメント10を導くように配置される誘導(leading)接触面22を更に含んでいる。この誘導接触面22は、足部16の一部を形成し、ハウジング18から前方に突き出ている。誘導接触面22は、粗面を設けることによって溶接すべき材料を掴むための面の形成している。この粗面は、溶接帯域6の材料とかみ合う複数の突起24から成っていてもよい。ヒーターエレメント(図示せず)は、誘導接触面22を経て熱を供給するように設けられている。これは、加熱エレメント10の動作前に溶接帯域を予熱して加熱エレメント10の往復運動に必要とされる時間を減らして溶接品質を改良している。誘導接触面の熱は、加熱エレメント10の熱から独立して制御することができる。
【0038】
加熱エレメント10は、追跡接触面14に対して鈍角で往復運動するっことが示されている。これは、溶接帯域6のポリマー材料が熱されて浸透されると、加熱エレメント10が溶融材料を後方に駆動して溶接帯域を埋め戻すことを意味する。鈍角は、100度と135度の間、更に好ましくは、110度と120度の間である。正確な鈍角は、以下に述べるように、ヘッド26により形成される駆動面の角度の修正によって修正することができる。従って、駆動面の形成によって有効に減少されることによって加熱エレメントの鈍角は、ヘッドの駆動面を面取りすることによって溶接帯域に対して駆動面を開くように形成される。
【0039】
加熱エレメントは、ヘッド26まで延びており、ヘッド26は、参照符号26で示される駆動面を含み、この駆動面は、好ましくは、溶接帯域で溶融材料を加熱し、キャリアと溶接帯域の相対的な運動の方向で後方にこの溶融材料を駆動している。ヘッド、従って駆動面は、例示だけであるが、円形、半円形、ダイヤモンド形又は四角いプロフィールの如き種々の形態とすることができ、これらは、各々、僅かに異なる溶接プロフィールを形成する。
【0040】
加熱エレメントは、突出寸法だけ伸長状態でキャリアから突出するように構成されており、溶接装置は、突出寸法の調整を可能にするように構成される。これは、動作中に、ハウジング18からの突出を制御するために、ハウジング18に対して加熱エレメントの配置換えを行うことによって、図面に存在しない種々の単純な手段によって達成することができる。これは、異なる厚み材料が適切に溶接するのを可能にする。
【0041】
図2a、図2bを参照すると、具体例による溶接装置が示されており、この溶接装置は、手持ちの形態である。ハウジング30は、オペレーターの手に捕まるように設けられている。アクチュエータ31は、入力に応答して加熱エレメントの往復運動を生ずるように動作する。複数の往復運動は、トリガー(引き金)形式のアクチュエータ31の継続的な押込みによって引き起こされるのが好ましい。
【0042】
さて、図3を参照すると、キャリア4は、追跡接触面と、この実施例では誘導接触面22を有する足部32とから成っている。足部に対するハウジング18の位置は、複数の動作位置での足部に対してハウジングを固定する手段を設けることによって複数の動作位置の間で調節される。このような機構は、ハウジング18、従って加熱エレメントを足部32に対して傾けることができ、固定エレメント34によって位置の固定を可能にする。図3の実施例でも、動作を補助するために照明36がある。
【0043】
図4の実施例を参照すると、追跡接触面は、加熱エレメント10のいずれかの側に隣接しており、追加の安定化部分38が設けられて溶接帯域6のいずれかの側で溶接装置を安定にしている。この実施例は、材料8a、8bの同一平面ではないが2つの部分を溶接するのに有益である。
【0044】
今まで提示されたいずれの実施例も、溶接帯域に沿ってキャリアの回転運動を可能にする回転可能に取り付けられた一つ以上の車輪の如きエレメントを更に含んでいてもよいことは理解されることと思う。これは、溶接帯域に沿って溶接装置を牽引にするのを補助する。
【0045】
簡略化された溶接装置2において、加熱エレメント10の温度は、一つの予め定められた温度に設定してもよいし、それに代えて、この温度は、溶接すべき材料の厚みを判断する場合の経験に基づいてオペレータによって選択してもよい。それに代えて、溶接装置は、データ記憶装置とプロセッサーを含んでいて、溶接すべき異なる材料毎に、適切な温度設定が記憶される、オペレータは、適切な溶接材料を選択し、加熱エレメント10は、所要の温度に加熱される。その上、材料の厚さが入力されて、これが加熱エレメントの温度の決定に対して考慮に入れられるのを許してもよい。
【0046】
他の実施例では、加熱エレメントの温度の選択は、自動化してもよい。このような実施例では、第1のセンサーが設けられて周囲温度を測定してもよい。その後、加熱エレメントの温度は、この読値を考慮に入れることができ、従って、より高い周囲温度に対しては、加熱エレメントの温度は、それに応じて減少することができる。その代わりに、又は、それに加えて、溶接装置は、追跡接触面に隣接して、センサー又は第2のセンサーを含んでいてもよい。この第2のセンサーは、温度を表す読値を取り入れ、加熱エレメントの温度に設定された温度と比較し、この情報は、加熱エレメント10の温度、及び/又は、適用できるならば、溶接帯域6を横切る車輪の動きの速度を制御するのに用いられる。
【0047】
今まで提示されたいずれの実施例でも、この溶接装置が自動機械に導入することができることを理解することができると思うが、この溶接装置が手持ちであっても溶接帯域の輪郭に倣うことができることは有益である。
【0048】
動作において、キャリアは、手動で又はオートメーションでポリマー材料の溶接帯域に沿って牽引され、加熱エレメントは、溶接帯域に熱を供給して引っ込んだ状態と伸長した状態との間の繰り返しの往復運動によってポリマー材料を溶解せしめる。加熱エレメントが引っ込み状態から伸長状態に移動すると、加熱エレメントは、補修すべきポリマー材料の溶接帯域の表面を熔解してこの表面に侵入する。同時に、溶融したポリマー材料の流れは、溶接帯域に沿って加熱エレメントを追跡する追跡接触面によって拘束される。これは、例えば、図1aにおける溶接材料50のコラムによって図示されている。
【0049】
動作において、本発明は、多数の有利な特徴を提供する。1つの重要な特徴は、追跡足部によって保持される追跡接触面の提供である。ヒーターエレメントを隔離して用いることによって、熱効果とヒーターエレメントの押し力とによって意図された溶接帯域から広がる溶融ポリマーの拡張がある。しかし、追跡接触面はこれを阻止し、往復運動するヒーターエレメントの先の働きによって残された地域に溶融したポリマー材料で満たされるのを確実とする。これは、ヒーターエレメントと追跡接触面とが一緒に作動して先の作動で残された容量を満たすことを意味する。この技術を使用すると、優れた溶接品質と溶接の均一性が確実にされる。溶接が完了した後、滑らかな完成を提供するために、溶接部は、研磨による軽い仕上げを必要とするだけである。
【0050】
本発明の幾つかの態様を例示的にのみ記述したが、以下に添付の特許請求の範囲によって付与される保護の範囲を逸脱することなく、種々の変形を行うことができることは、当業者に理解されることと思う。
図1
図2
図3
図4