(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】キャスター
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
B60B33/00 502B
(21)【出願番号】P 2021146997
(22)【出願日】2021-09-09
【審査請求日】2023-03-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596128160
【氏名又は名称】株式会社ナカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100148518
【氏名又は名称】松田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【氏名又は名称】野田 薫央
(72)【発明者】
【氏名】中村 明
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-112501(JP,A)
【文献】米国特許第05412838(US,A)
【文献】特開2003-072307(JP,A)
【文献】特開2015-009640(JP,A)
【文献】登録実用新案第3127621(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、
前記車輪が配置される第一の開口が設けられ、前記車輪を回転可能に支持する車輪支持部と、
前記車輪支持部における前記第一の開口の外周部を水平旋回可能に保持する旋回機構部とを備え
、
前記旋回機構部は、
下面に円環状の凹部が形成されたプレートと、
前記凹部に配置される複数の転動体と、
前記車輪支持部とともに前記プレートに対して水平旋回可能に取り付けられるブラケットとを備え、
前記外周部は、前記ブラケットに保持されるとともに、前記複数の転動体に下方から接することを特徴とするキャスター。
【請求項2】
前記プレートには、前記凹部の内側に第二の開口が設けられ、
前記ブラケットは、
前記プレートの上面で前記第二の開口の周縁部に係止する係止部と、
前記係止部から下方に延在して前記第二の開口を通り、前記外周部に係合する係合部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のキャスター。
【請求項3】
前記複数の転動体は、前記凹部により上方及び外方への移動が規制され、前記外周部により下方への移動が規制され、前記係合部により内方への移動が規制されることによって、円周方向に移動可能であることを特徴とする請求項2に記載のキャスター。
【請求項4】
前記プレートは、前記車輪による移動を可能とする被取付体に取り付けられる取付部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のキャスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪による移動を可能とする被取付体に取り付けられるキャスターに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビを支持するテレビ台等の使用用途に移動が含まれる場合、車輪による移動を可能とするために、そのテレビ台等にキャスターが取り付けられることがある。テレビ台等の被取付体に取り付けられるキャスターとしては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
同特許文献に記載のキャスターは、本体ケースと、本体ケースの下面に水平回転(旋回)可能に装着された回転ケースと、回転ケースに回転可能に取り付けられた車輪とを有する。
【0004】
そして、本体ケースは略円筒状をなし、その外周から全体として正方形の板状をなす取付フランジが突出し、取付フランジの突出角部に設けられた取付孔を介して、被取付部材(被取付体)にキャスターを取付可能となっている。本体ケース内側の高さ方向中間部には隔壁が設けられ、隔壁の中央に円筒状のボス部が突設され、ボス部の先端外周には環状突部が設けられている。環状突部は、後述する回転ケースの装着孔の裏面周縁に係合して、本体ケースの下面に回転ケースが水平回転可能に、かつ、抜け止め状態で装着される。隔壁の下面外周には環状溝が形成され、これに複数のボールが周方向に移動可能に配置されている。
【0005】
また、回転ケースは肉厚の円盤形状をなし、回転ケースの上面外周にはボール受け溝が形成され、本体ケースに回転ケースを装着したときに、ボールを受け止め支持する部分となっている。回転ケースの上面中央には、本体ケースのボス部が挿入される装着孔が形成され、装着孔の両側には、後述する一対の車輪の干渉を防ぐ一対の逃げ孔が形成されている。回転ケースの底面には、周方向所定範囲及び下面側が開口した取付凹部が設けられ、取付凹部は互いに平行な両側内面を有し、両側内面には水平方向に沿ってガイド溝がそれぞれ形成され、各ガイド溝の所定位置には、車輪を取り付けるための軸孔が回転ケースの周壁を貫通して形成されている。一方、車輪は、その中心に中心孔が形成され、中心孔の表裏周縁から円筒状のボス部が突設された形状をなしている。この車輪は、回転ケースの取付凹部内に同軸的に一対配置し、各車輪のボス部の外側面を回転ケースの両側内面に当接させるとともに、回転ケースの軸孔及び車輪の中心孔に軸を挿入することにより、その軸を介して一対の車輪が回転ケースに回転可能に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のキャスターは、車輪が取り付けられる回転ケースの本体ケースに対する水平旋回を可能とするために、車輪の上方に位置する回転ケースの上面に、本体ケースの環状突部が係合する装着孔が形成されるとともに、本体ケースの環状溝に配置される複数のボールを支持するボール受け溝が形成されており、車輪の上方に旋回機構がある分、全高が高くならざるを得ない。
【0008】
したがって、デザイン上の理由で床面に設置されるベースを薄くしたテレビ台のような被取付体に、このようなキャスターを取り付けると、ベースの低床化を妨げ、被取付体のデザインを阻害するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、全高を低く抑えることが可能なキャスターを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るキャスターは、車輪と、前記車輪が配置される第一の開口が設けられ、前記車輪を回転可能に支持する車輪支持部と、前記車輪支持部における前記第一の開口の外周部を水平旋回可能に保持する旋回機構部とを備えることを特徴とする。
【0011】
前記旋回機構部は、下面に円環状の凹部が形成されたプレートと、前記凹部に配置される複数の転動体と、前記車輪支持部とともに前記プレートに対して水平旋回可能に取り付けられるブラケットとを備え、前記外周部は、前記ブラケットに保持されるとともに、前記複数の転動体に下方から接してもよい。
【0012】
このとき、前記プレートには、前記凹部の内側に第二の開口が設けられ、前記ブラケットは、前記プレートの上面で前記第二の開口の周縁部に係止する係止部と、前記係止部から下方に延在して前記第二の開口を通り、前記外周部に係合する係合部とを備えてもよく、さらに、前記複数の転動体は、前記凹部により上方及び外方への移動が規制され、前記外周部により下方への移動が規制され、前記係合部により内方への移動が規制されることによって、円周方向に移動可能であってもよい。
【0013】
また、前記プレートは、前記車輪による移動を可能とする被取付体に取り付けられる取付部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャスターの全高を低く抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】発明を実施するための形態に係るキャスターを示す平面図である。
【
図6】
図1のキャスターを上方から見た斜視図である。
【
図7】
図1のキャスターを下方から見た斜視図である。
【
図9】
図1のキャスターが被取付体に取り付けられた状態を示す説明図である。
【
図10】発明を実施するための形態に係る他のキャスターを上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1乃至
図8は、本実施の形態に係るキャスターを示す。このキャスター1は、車輪2と、車輪支持部3と、旋回機構部4とを備える。
【0018】
車輪2は、車輪本体5及び丸棒状のピン6からなり、車輪本体5の回転中心には貫通孔7が設けられ、ピン6は車輪本体5の両側方に突出するように貫通孔7に挿通される。
【0019】
車輪支持部3は、円板状を呈し、車輪2が配置される略矩形状の開口8が設けられている。開口8の左右にはピン6を支持するピン支持部9,9が設けられ、ピン支持部9,9の後方にはリベット孔10,10が設けられ、開口8の外周部11であってピン支持部9,9の前方及びリベット孔10,10の後方には、計4つの係合孔12が設けられている。
【0020】
車輪支持部3は、円板状のホルダー13及びカバー14が上下に積層されてなり、ホルダー13には、開口8を形成する開口15、ピン支持部9を形成する上方に凸の半円部16、リベット孔10を形成する丸孔17及び係合孔12を形成する角孔18が設けられている。
【0021】
カバー14には、開口8を形成する開口19、ピン支持部9を形成する下方に凸の半円部20、リベット孔10を形成する丸孔21及び係合孔12を形成する角孔22が設けられている。
【0022】
半円部16及び半円部20が車輪2のピン6を上下から挟んだ状態で、ホルダー13及びカバー14がリベット孔10に挿通されるリベット23により留められることによって、車輪2は車輪支持部3に回転可能に支持される。
【0023】
旋回機構部4は、板状のケース24と、ボール25と、スリーブ26とを備える。
【0024】
ケース24は、矩形板状の取付座27と、取付座27の下面に凹状に形成された円環状の段部28と、段部28の内側に形成された円形開口29とを有する。ここでは、段部28は、取付座27の上面側では凸状に突出し、取付座27から上方に延在する周壁部30と、周壁部30の上部から内方に(円形開口29に向けて)延在する上壁部31とからなり、ボール25は、周壁部30及び上壁部31に接するように、段部28の全周にわたって複数配置される。
【0025】
なお、取付座27の四隅には、テレビ台等の被取付体にネジ等により取り付けられる取付部32が設けられている。
【0026】
スリーブ26は、ケース24の上面で円形開口29の周縁部33(段部28の上部)に係止する係止部34と、係止部34から下方に延在して円形開口29を通る円筒部35と、円筒部35から下方に延在して4つの係合孔12に係合する4つの係合爪36とを有する。
【0027】
係合爪36が係合孔12に係合されることにより、車輪支持部3の外周部11は、スリーブ26に保持されるとともに、ボール25に下方から接する。このとき、スリーブ26の円筒部35がボール25に内方から接し、ボール25は、ケース24の段部28(上壁部31)により上方への移動が規制されるとともに、段部28(周壁部30)により外方への移動が規制され、車輪支持部3の外周部11により下方への移動が規制され、スリーブ26の円筒部35により内方への移動が規制されることによって、円周方向に移動可能でボールベアリングを構成し、スリーブ26は車輪支持部3とともにケース24に対して水平旋回可能に取り付けられ、旋回機構部4は車輪支持部3の外周部11を水平旋回可能に保持する。
【0028】
本実施の形態に係るキャスター1は、車輪2と、車輪2が配置される開口8が設けられ、車輪2を回転可能に支持する車輪支持部3と、車輪支持部3における開口8の外周部11を水平旋回可能に保持する旋回機構部4とを備えるので、車輪2が配置される開口8の外周部11と同程度の高さに旋回機構部4が位置することにより、キャスター1の全高を低く抑えることができる。
【0029】
本実施の形態では、旋回機構部4は、下面に円環状の段部28が形成されたケース24と、段部28に配置される複数のボール25と、車輪支持部3とともにケース24に対して水平旋回可能に取り付けられるスリーブ26とを備え、車輪支持部3の外周部11が、スリーブ26に保持されるとともに、複数のボール25に下方から接することにより、旋回機構部4が外周部11と同程度の高さに位置し、
図3及び
図4に示すように、旋回機構部4の上部が車輪2の上部よりも低く、キャスター1の全高が車輪2の全高と等しくなっている(
図9に示すように、キャスター1を被取付体37に取り付ける場合には、被取付体37の下方に車輪2の回転を許容する空間38を確保する必要はある。)。
【0030】
また、ケース24には、段部28の内側に円形開口29が設けられ、スリーブ26は、ケース24の上面で円形開口29の周縁部33に係止する係止部34と、係止部34から下方に延在して円形開口29を通り、外周部11に係合する円筒部35及び係合爪36とを備え、ボール25は、段部28により上方及び外方への移動が規制され、外周部11により下方への移動が規制され、円筒部35により内方への移動が規制されることによって、円周方向の移動が可能であるので、ボールベアリングが簡単に構成され、これにより部品点数を少なくして低廉化やメンテナンスの容易化を図ることができる。
【0031】
以上、本発明を実施するための形態について例示したが、本発明の実施形態は上述したものに限られず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更等してもよい。
【0032】
例えば、旋回機構部による車輪支持部の保持は、外周部を旋回可能に保持可能であればどのような構成によってもよく、キャスターの全高が車輪の全高を上回ってもかまわない。
【0033】
また、
図10乃至
図13に示すように、車輪支持部は板状でなくてもよい。
【0034】
図10乃至
図13において、キャスター39は、車輪2と、車輪支持部40と、旋回機構部41とを備える。
【0035】
車輪2は、車輪本体5及び丸棒状のピン6からなり、車輪本体5の回転中心には貫通孔7が設けられ、ピン6は車輪本体5の両側方に突出するように貫通孔7に挿通される。
【0036】
車輪支持部40は、キャスター1の車輪支持部3よりも厚みのある平面視円形のブロック状を呈し、車輪2が配置される開口42が設けられている。開口42は、車輪本体5の形状に沿った開口43と、開口43の上方で開口43と連通し、平面視で開口43よりも大きい円形に設けられた開口44とからなる。
【0037】
開口43の左右には、ピン6を支持するピン支持部45,45が設けられ、車輪2は、車輪支持部40に回転可能に支持される。
【0038】
車輪支持部40の外周には、全周にわたって断面L字状の段部46が形成され、段部46の上方には、開口44を囲う複数の周壁部47が形成されている。周壁部47の上部には、外方に突出する係止部48が設けられている。
【0039】
旋回機構部41は、ボール25と、スリーブ49とを備え、スリーブ49には、平面視円形の開口50と、開口50を囲う周面51から内方に突出するフランジ部52とが設けられている。
【0040】
車輪支持部40は、段部46にボール25が位置するように(段部46がボール25に内方及び下方から接するように)開口50に配置され、係止部48がフランジ部52の上面に係止する(係止部48がフランジ部52を下方から上方に向かって通過する際に、周壁部47は弾性変形して撓み、通過後に周壁部47の弾性変形が元に戻って係止部48がフランジ部52に係止する。)。これにより、ボール25は、フランジ部52の下面により上方への移動が規制されるとともに、周面51により外方への移動が規制されてボールベアリングを構成し、旋回機構部41は、車輪支持部40の開口42の外周部(周壁部47)を水平旋回可能に保持する。
【0041】
このキャスター39においても、車輪2と、車輪2が配置される開口42が設けられ、車輪2を回転可能に支持する車輪支持部40と、車輪支持部40における開口42の外周部を水平旋回可能に保持する旋回機構部41とを備えるので、車輪2が配置される開口42の外周部と同程度の高さに旋回機構部41が位置することにより、キャスター39の全高が低く抑えられる。
【符号の説明】
【0042】
1 キャスター
2 車輪
3 車輪支持部
4 旋回機構部
8 開口(第一の開口)
11 外周部
24 ケース(プレート)
25 ボール(転動体)
26 スリーブ(ブラケット)
28 段部(凹部)
29 円形開口(第二の開口)
34 係止部
35 円筒部(係合部)
36 係合爪(係合部)
39 キャスター
40 車輪支持部
41 旋回機構部
42 開口(第一の開口)