(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】形状記憶高分子を含む血管吻合用部材
(51)【国際特許分類】
A61L 27/50 20060101AFI20230523BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20230523BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20230523BHJP
A61F 2/06 20130101ALI20230523BHJP
A61L 33/10 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
A61L27/50 300
A61L27/18
A61L27/58
A61F2/06
A61L33/10
(21)【出願番号】P 2021544081
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 KR2019012945
(87)【国際公開番号】W WO2020071806
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0117631
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521141040
【氏名又は名称】ティーエムディー ラブ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ハク-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヨン ミン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ボク
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522992(JP,A)
【文献】Iranian polymer Journal,Vol.20(4),2011年,pp.329-340
【文献】Polymer Journal,Vol.46,2014年,pp.598-608
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 24/00
A61F 2/00
A61L 27/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表され、平均30~48℃の融点を有し、架橋後に平均28~42℃の融点を有する形状記憶高分子を含む血管吻合用部材
:
【化1】
前記化学式1で
、
xおよびyは、反復単位のモル%を示し、
x+yは、100であり、xは、88~94である。
【請求項2】
血管吻合用部材は、
第1血管および第2血管端部の内側に挿入されるチューブ(tube)形態であることを特徴とする、請求項1に記載の血管吻合用部材。
【請求項3】
血管吻合用部材は、
平均28~42℃以上の温度で第1血管および第2血管の内径によって形態が変形されることを特徴とする、請求項
2に記載の血管吻合用部材。
【請求項4】
血管吻合用部材の断面厚さは、50~200μmであることを特徴とする、請求項
2に記載の血管吻合用部材。
【請求項5】
血管吻合用部材の内径は、0.2~5mmの範囲であり、
前記血管吻合用部材の内径は、第1方向から第2方向に行くほど次第に増加する形態であることを特徴とする、請求項
2に記載の血管吻合用部材。
【請求項6】
血管吻合用部材の外周面に血管に固定される複数の固定突起を含むことを特徴とする、請求項
2に記載の血管吻合用部材。
【請求項7】
血管吻合用部材は、血管の損傷した部位をかばうシート状であり、
平均28~42℃以上の温度で血管の外径をかばうように形態が変形されることを特徴とする、請求項1に記載の血管吻合用部材。
【請求項8】
血管吻合用部材の一領域に穿孔が形成され、
穿孔と対応する領域に分岐管が一体型に連結されることを特徴とする、請求項
7に記載の血管吻合用部材。
【請求項9】
穿孔と分岐管の内径が対応し、
前記分岐管は、血管の損傷した部位と連通することを特徴とする、請求項
8に記載の血管吻合用部材。
【請求項10】
分岐管は、
内周面にガイド突起が形成され、
前記ガイド突起は、分岐管の軸に沿って長さ方向に拡張されたことを特徴とする、請求項
8に記載の血管吻合用部材。
【請求項11】
分岐管は、
ポリエチレングリコール、ポリグリコライド、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D、L-ラクチド、ポリ(ラクチド-co-グリコライド)およびヒアルロン酸よりなる群から選ばれる1種以上の生体適合性高分子を含むことを特徴とする、請求項
8に記載の血管吻合用部材。
【請求項12】
血管吻合用部材は、
背面に位置して血管に固定される複数の突起を含むことを特徴とする、請求項
7に記載の血管吻合用部材。
【請求項13】
血管吻合用部材は、
抗血栓物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の血管吻合用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶高分子を含む血管吻合用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
急激に都市化が進行され、人々の運動不足、食習慣の西欧化等が蔓延するに伴って、人体の血管が狭くなったり、相当部分詰まる、いわゆる血管閉鎖疾患が次第に増加している。特に、心臓疾患の大部分は、心臓に栄養と酸素を供給する血管が詰まる虚血症(ischemia)により現れることができるが、代表的に心筋梗塞、狭心症等がこれに該当することができる。
【0003】
このような閉鎖血管、またはほぼ閉鎖された血管を治療するためには、たびたび手術治療法が適用され得る。例えば、血管閉鎖が進行された部位を切り出した後、切れた血管を吻合する施術法が使用され得る。また、このような血管閉鎖疾患が、治療だけでなく、臓器移植術(organ transplantation)や、切断された血管の吻合手術時にも血管吻合手術が行われ得る。
【0004】
上記のような心臓の血管閉鎖疾患の治療だけでなく、皮弁移植手術による再建手術や切断された血管の吻合手術時に微細手術専門医師が直接縫合糸(suture)を使用して顕微鏡や高倍率拡大鏡で手術視野を確保し、手作業(manual)によりいちいち縫い合わせる方法が使用されているので、このような縫合手術は、高度で熟練した専門医師によってのみ施行され得、このような専門家を育成するためには、多くの時間と努力を必要とする。
【0005】
また、このような縫合糸による血管吻合手術は、各種癌手術など組織除去手術後に再建のためにlocal flapや自由皮弁を利用しなければならないし、特に自由皮弁の場合、血管と血管を連結する微細吻合術を必須的に施行しなければならないので、これによる手術時間の増加、費用の増加等が問題になる。
【0006】
したがって、このような縫合糸(suture)を使用していちいち手で血管を直接縫い合わせることを避けるために多数の血管吻合装置が開発されてきた。そのうち、血管が端部対端部方式の吻合を容易に施行できるようにする装置として、米国特許第3,774,615号、米国特許第4,214,586号および米国特許第4,917,087号等があり、すでに商品化されている例としては、米国Synovis Micro Companies Alliance社の微細血管吻合用カプラー(microvascular anastomotic coupler)がある。
【0007】
米国登録特許第3,774,615号は、断絶された血管を手術せずに吻合する装置が開示されている。しかしながら、この装置は、吻合される部位で血管を完全に固定させることなく、切断された2つの血管周辺をまんべんなく接着させることが容易ではなく、断絶された部分が互いに会う部位の面積が非常に小さいため、吻合が良好に行われず、血液が漏れる可能性がある。
【0008】
また、米国登録特許第4,214,586号は、前記米国登録特許第3,774,615号と同様に、断絶された血管の終端部を良好に固定させる装置について開示されているが、この装置は、血管の断絶された部分が互いに会う部位の面積が非常に小さいため、吻合が十分に行われない問題点がある。
【0009】
また、米国特許第4,917,087号には、固定された管形状(tubular shape)からなる血管吻合装置が開示されており、この装置は、端部対端部(end-to-end)または端部対側部(end-to-side)吻合に使用できるが、2つの血管の直径が同じ場合にのみ使用することができ、内層と内層の吻合後に内層部分と関連した固定する力が弱くて、吻合前に戻ってこようとする傾向にあるので、効率的でない問題点がある。
【0010】
すなわち、上述したような多くの従来の血管吻合器の場合、施術方法が血管を回外(eversion)して特定部位に固定した後、物理的な方式で血管を吻合する方式を利用しているが、このような血管の回外を通した物理的吻合方法は、血管の特性上、比較的血管壁の筋肉組織が薄い静脈には施術が可能であるが、相対的に血管壁の筋肉組織が厚い動脈には使用が難しい問題点があり、特に血管疾患がある患者には、このような物理的血管回外を通した施術を進行できないので、その活用分野が非常に制限的である。
【0011】
一方、最近では、人体の血管や臓器等に適用するための生体適合性の合成高分子に関する研究が活発に進行されている。
【0012】
より具体的に、人体の血管や臓器等に適用するための合成高分子としては、poly(lactic acid)(PLA)、poly(glycolic acid)(PGA)、poly(lactic-co-glycolic acid)(PLGA)、poly(ε-caprolactone)(PCL)等がある。
【0013】
そのうち、poly(ε-caprolactone)(PCL)は、生体適合し、形状記憶高分子(SMPs)形態で光架橋および化学的変形ができる生体医学アプリケーションのための米国FDA承認を受けた生分解性高分子と知られている。
【0014】
しかしながら、その融点(Tm)は、45~65℃であり、生理学の応用機構等(37℃)に適用するには温度があまり高い。これに伴い、poly(ε-caprolactone)(PCL)のような形状記憶高分子は、血管および他の症状の治療の臨床的能力を制限しているのが現状である。また、治療目的のための他の形状記憶高分子の使用は、メタクリル酸塩の機能化段階またはモノマーの合成段階等が要求されるので制限的であった。
【0015】
したがって、比較的非侵襲性であり、苦痛がなく、低い費用で適用できる血管治療のための形状記憶高分子の開発が必要なのが現状であり、特に、人工血管や血管吻合時に使用できるように適合した融点を有する医療機器または素材に使用可能な形状記憶高分子の開発が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前述した問題点を解決するためのものであって、生体移植に適合した融点を有する形状記憶高分子を含む血管吻合用部材を提供しようとする。
【0017】
ひいては、本発明は、血管吻合を容易に施行することができ、血管の回外(eversion)による損傷を防止することによって、血流の流れに悪影響を最小化させることができる血管吻合用部材を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、
本発明の実施例において、
下記化学式1で表される形状記憶高分子を含む血管吻合用部材を提供する:
【0019】
【0020】
前記化学式1で、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素(H)または炭素数1~6のアルキル基であり、
mおよびnは、互いに独立して、1~20の整数であり、
A、B1およびB2は、互いに独立して、酸素(O)または硫黄(S)であり、
xおよびyは、反復単位のモル%を示し、
x+yは、100であり、xは、80~95である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施例による人工血管は、架橋が可能な官能基が含まれた形状記憶高分子を含むことによって、生体移植に適合した融点を有する血管吻合用部材を提供することができる。
【0022】
特に、本発明の一実施例による血管吻合用部材は、縫合糸の使用なしに速やかにかつ便利に血管吻合を行うことができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による血管吻合用部材の形態変化過程を示す図である((a)初期形態、(b)臨時形態(変形された状態)、(c)永久形態(回復した状態))。
【
図2】本発明による血管吻合用部材の形態変化過程を示す図である((a)初期形態、(b)臨時形態(変形された状態)、(c)永久形態(回復した状態))。
【
図3】本発明の血管吻合用部材を示す図である((a)端部対端部血管吻合用部材、(b)端部対側部血管吻合用部材)。
【
図4】本発明の血管吻合用部材を多様な様態で実施した形態を示す図である((a)血管縫合用、(b)端部対端部血管吻合用、(c)端部対側部血管吻合用)
【
図5】本発明の血管吻合用部材の構造を示す図である。
【
図6】本発明の血管吻合用部材の構造を示す図である。
【
図7】本発明の一実施例による血管吻合用部材が血管の損傷した部位に適用されて血管吻合(端部対端部)が行われる過程を概略的に示す図である。
【
図8】本発明の他の一実施例による血管吻合用部材が血管の損傷した部位に適用されて血管吻合(端部対側部)が行われる過程を概略的に示す図である。
【
図9】本発明の実施例1-2で製造された形状記憶高分子の
1H NMRスペクトルとGPCを分析した結果を示す図である(94%PCL-co-6%PGMA)。
【
図10】本発明の実施例1-3で製造された形状記憶高分子の
1H NMRスペクトルを分析した結果を示す図である(92%PCL-co-8%PGMA)。
【
図11】本発明の実施例1-4で製造された形状記憶高分子の
1H NMRスペクトルを分析した結果を示す図である(90%PCL-co-10%PGMA)。
【
図12】本発明の実施例1-5で製造された形状記憶高分子の
1H NMRスペクトルを分析した結果を示す図である(88%PCL-co-12%PGMA)。
【
図13】本発明によって製造された実施例1-2と比較例1の高分子にUV処理した後に現れる現象を比較した図である。
【
図14】本発明によって製造された実施例1-2と比較例1のDSC分析を示すグラフである。
【
図15】本発明によって製造された実施例1-2と比較例1の高分子にUV処理した後にDSC分析を示すグラフである。
【
図16】本発明の形状記憶高分子の合成スキームおよび実施例1および実施例2で製造された形状記憶高分子の機械的および熱的特性を評価した結果である((a)形状記憶高分子合成スキームおよび構造、(b)UV架橋前後の形状記憶高分子に対する融点分析結果(DSC)、(c)~(e)PGMA含量変化による熱的特性(Tm、Tc、HmおよびHc)変化、(f)応力-変形曲線(stress-strain curves)分析を通した架橋後に形状記憶高分子濃度決定、(g)94%PCL-co-6%PGMAの最適架橋時間決定)。
【
図17】UV架橋された94%PCL-co-6%PGMAの形状記憶特性を評価した結果である。(a)7サイクル(N)以上の応力制御循環熱力学的引張試験(stress-controlled cyclic thermomechanical tensile tests)結果、(b)平均形状回復率[Rr(N)%]および形状高精度[Rf(N)%]測定結果、(c)(a)過程のプログラムされたタイムセッティング、(d)94%PCL-co-6%PGMAの温度による形状回復率。
【
図18】流体の流れをシミュレーションするための血管を示す図である(
図18(a)血管吻合用部材が適用された血管、(b)血管吻合用部材の断面図)。
【
図19】
図19(a)は、血管吻合用部材の断面厚さによる流線を示し、
図19(b)は、流体の速度および血管吻合用部材の断面厚さに対するグラフにおいて渦流形成の有無を示すグラフである。
【
図20】血管吻合用部材の断面厚さによる流線を示す図である。
【
図21】架橋前後の比較例1(PCL)の高分子と形状記憶高分子(96%PCL-co-4%PGMA高分子、94%PCL-co-6%PGMA高分子、92%PCL-co-8%PGMA高分子)の表面の上に蒸留水を一滴(10μg)落とし、接触角を測定した結果である。
【
図22a】血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図、(b)冠状動脈の収縮期および弛緩期での血流速度、(c)および(e)収縮期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(d)および(e)弛緩期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(f)~(h)移植材の形態を反映して製作した微細流体装置でのマイクロビーズおよびHUVEC流れで予測した血流方向および流れシミュレーション結果。血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図。
【
図22b】血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図、(b)冠状動脈の収縮期および弛緩期での血流速度、(c)および(e)収縮期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(d)および(e)弛緩期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(f)~(h)移植材の形態を反映して製作した微細流体装置でのマイクロビーズおよびHUVEC流れで予測した血流方向および流れシミュレーション結果。血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図。
【
図22c】血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図、(b)冠状動脈の収縮期および弛緩期での血流速度、(c)および(e)収縮期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(d)および(e)弛緩期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(f)~(h)移植材の形態を反映して製作した微細流体装置でのマイクロビーズおよびHUVEC流れで予測した血流方向および流れシミュレーション結果。血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図。
【
図22d】血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図、(b)冠状動脈の収縮期および弛緩期での血流速度、(c)および(e)収縮期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(d)および(e)弛緩期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(f)~(h)移植材の形態を反映して製作した微細流体装置でのマイクロビーズおよびHUVEC流れで予測した血流方向および流れシミュレーション結果。血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図。
【
図22e】血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図、(b)冠状動脈の収縮期および弛緩期での血流速度、(c)および(e)収縮期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(d)および(e)弛緩期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(f)~(h)移植材の形態を反映して製作した微細流体装置でのマイクロビーズおよびHUVEC流れで予測した血流方向および流れシミュレーション結果。血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図。
【
図22f】血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図、(b)冠状動脈の収縮期および弛緩期での血流速度、(c)および(e)収縮期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(d)および(e)弛緩期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(f)~(h)移植材の形態を反映して製作した微細流体装置でのマイクロビーズおよびHUVEC流れで予測した血流方向および流れシミュレーション結果。血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図。
【
図22g】血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図、(b)冠状動脈の収縮期および弛緩期での血流速度、(c)および(e)収縮期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(d)および(e)弛緩期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(f)~(h)移植材の形態を反映して製作した微細流体装置でのマイクロビーズおよびHUVEC流れで予測した血流方向および流れシミュレーション結果。血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図。
【
図22h】血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図、(b)冠状動脈の収縮期および弛緩期での血流速度、(c)および(e)収縮期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(d)および(e)弛緩期で移植材の形態による移植した血管末端での血流変化、(f)~(h)移植材の形態を反映して製作した微細流体装置でのマイクロビーズおよびHUVEC流れで予測した血流方向および流れシミュレーション結果。血管吻合に適合した形状記憶高分子を含む移植材の形態を決定するためのコンピュータおよび微細流体シミュレーション結果を示すものである:(a)拡張型(diffuser)モデルの血管内移植模式図。
【
図23】本発明の形状記憶高分子血管吻合用移植材の生体適合性を評価した結果である。
【
図24】豚の大腿動脈に本発明の形状記憶高分子血管吻合用移植材を移植した後の血管開通可否を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、具体的な内容に詳細に説明しようとする。
しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0025】
本発明において、「含む」、「有する」または「構成する」等の用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解されなければならない。
【0026】
また、本発明で添付の図面は、説明の便宜のために拡大または縮小して図示されたものと理解されなければならない。
【0027】
以下、本発明について図面を参考にして詳細に説明し、図面の参照符号に関係なく、同一または対応の構成要素は同じ参照番号を付与し、これに関する重複する説明は省略することとする。
【0028】
本発明において「吻合」というのは、血管が互いに連結されている状態を意味するものであり、「血管吻合用部材」は、血管が互いに連結されている状態に維持されるように血管を縫合または接合させて連結させるための吻合用部材を意味する。本発明において前記血管吻合用部材は、血管内に直接移植されるものであり、「移植材(graft material)」と通用され得る。また、「第1血管」、「第2血管」とは、チューブ形態の血管吻合用部材が挿入される血管であり、それぞれ端部がある切断された血管を意味し得る。ひいては、前記血管吻合用部材は、損傷した血管の代わりに血液の流れを連結する人工臓器を意味する人工血管を含むことができる。
【0029】
一方、第1血管と第2血管は、直径が互いに同一でありうるが、特定様態として、第1血管と第2血管の直径は互いに異なっていてもよい。すなわち、第1方向から第2方向に血流が通る方向から見るとき、本発明の血管吻合用部材は、第1方向から第2方向に行くほど直径が徐々に広くなり得る。本明細書でこのような形態の血管吻合用部材を「拡散型(diffuser type)」または「拡散型モデル」と称することができる。
【0030】
ここで、「第1方向」および「第2方向」は、血液の流れの方向を意味し得る。より具体的に、「第1方向から第2方向」というのは、血液が流れる方向を意味し得、第1血管から第2血管に流れる血液の方向を意味し得る。
【0031】
本発明の一実施例による血管吻合用部材は、形状記憶高分子を含むことを特徴とすることができる。
【0032】
ここで、「形状記憶高分子(SMP,shape memory polymer)」とは、初期の高分子形態を「記憶」して適切な刺激により変形された形態から本来の様子に戻ってくる高分子を意味する。言い換えれば、形状記憶高分子は、(1)加工処理により永久形状(初期形態)を付与することになり、(2)低温で臨時形状に変形(temporary shape)、(3)外部刺激(温度)によりさらに本来の永久形状に回復する3段階を経る高分子を意味する。
【0033】
本発明において前記刺激は、「温度」であり得、具体的に、形状記憶高分子は、転移温度(ガラス転移温度または融点)以上の温度で加熱するとき、本来の形態に戻ることができる。すなわち、本発明において「融点」は、高分子の融点を意味するのではなく、形状記憶高分子が本来の形態(初期形態)に戻る温度を意味し得る。
【0034】
一方、本発明の一実施例による形状記憶高分子の融点は、平均30~48℃であり得、これを架橋する場合、融点は低くなり得る。具体的に、架橋後の形状記憶高分子の融点は、平均28~42℃でありうる。すなわち、本発明の人工血管または血管吻合用部材は、上述した形状記憶高分子を含むことによって、平均28~42℃以上の温度で本来の形態(初期形態)に戻ることができる。これに伴い、本発明による血管吻合用部材は、生体移植に適合することができる。ここで、架橋は、光架橋または熱架橋でありうる。一例として、合成した形状記憶高分子に光架橋反応を誘導することによって、血管吻合用部材に形態を付与することができ、形状記憶高分子の融点を28~42℃に下げることができる。
【0035】
形状記憶高分子において、「変形率」とは、臨時形態(temporary shape)から初期形態に復元されて永久形態(permanent shape)に維持されるとき、形状がある程度変わるかに対する割合を意味するものであり、臨時形態から永久形態に変わる割合を意味する。また、「変形回復率」とは、臨時形態から物理的力により変形される前の初期原形形態に復元されるときの回復割合を意味するものであり、初期形態と永久形態の割合を意味し得る。本発明において変形率は、形状記憶高分子に含まれる単量体の割合または条件(温度、UV等)によって変わることができ、具体的に5~350%でありうる。また、変形回復率は、90%以上でありうる。
【0036】
また、本発明の一実施例による人工血管および血管吻合用部材は、生分解性形状記憶高分子からなり得る。ここで、「生分解性」というのは、自然系に存在する微生物が分泌する酵素により分解される性質を意味するものであり、生体に適用すると、炎症反応をほとんど起こさず、生体内に分解される特性を意味する。また、「生分解性形状記憶高分子」というのは、時間経過によって人体内で分解されて人体に吸収され、温度変化によって形態を変形できる高分子物質を意味する。すなわち、温度変化により形態を変形できる形状記憶高分子のうち生分解性を有する高分子物質を意味する。
【0037】
また、本発明において、「前面」とは、図面上、前方面を意味するものであり、血管に接触せず、血管と接触しない側の面を意味し得、「背面」とは、図面上、後方面を意味するものであり、血管と接触する側の面を意味する。
【0038】
ひいては、本発明において、「端部」とは、終端部を意味するものであり、血管の端部を意味し得、具体的に血管の切れたり切断された部分を意味する。「側部」とは、側面の部分を意味するものであり、血管の側部を意味する。
【0039】
これと共に、本発明において、「端部対端部(end-to-end)」とは、第1血管の末端と第2血管の末端がかみ合うように連結するものであり、「端部対端部吻合術」は、第1血管の端部(末端)と第2血管の端部(末端)がかみ合うように連結する吻合術を意味する。また、「端部対側部(end-to-side)」とは、第1血管の端部(末端)と第2血管の側部(横面)がかみ合うように連結する吻合術を意味する。
【0040】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0041】
本発明は、生体移植に適合した融点を有する形状記憶高分子を含む血管吻合用部材を提供しようとする。
【0042】
ひいては、本発明は、血管吻合を容易に施行することができ、血管の回外(eversion)による損傷を防止することによって血流の流れに悪影響を最小化させることができる血管吻合用部材を提供しようとする。
【0043】
本発明は、一実施例において、
下記化学式1で表される形状記憶高分子を含む血管吻合用部材を提供する:
【0044】
【0045】
前記化学式1で、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素(H)または炭素数1~6のアルキル基であり、
mおよびnは、互いに独立して、1~20の整数であり、
A、B1およびB2は、互いに独立して、酸素(O)または硫黄(S)であり、
xおよびyは、反復単位のモル%を示し、
x+yは、100であり、xは、80~95である。
【0046】
具体的に、
前記化学式1で、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素(H)またはメチル基(CH3-)であり、
mおよびnは、互いに独立して、3c12の整数であり、
A、B1およびB2は、全部酸素(O)であり、
xおよびyは、反復単位のモル%を示し、
x+y=100であり、xは、88~94である。
【0047】
より具体的に、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素(H)であり、
mおよびnは、互いに独立して、5~6の整数であり、
A、B1およびB2は、互いに独立して、酸素(O)であり、
xおよびyは、反復単位のモル%を示し、
x+y=100であり、xは、88~94である。
【0048】
前記化学式1は、下記化学式2で表すことができる:
【0049】
【0050】
mおよびnは、互いに独立して、1~20の整数であり、
xおよびyは、反復単位のモル%を示し、
x+yは、100であり、xは、80~95である。
【0051】
本発明による形状記憶高分子は、ε-カプロラクトン単量体とグリシジル基を含むアクリル単量体が重合された共重合体の構造を有することができる。例えば、前記形状記憶高分子は、ε-カプロラクトン単量体(CL;caplolactone)とグリシジルメタクリレート(GMA)を重合した共重合体[PCL-co-PGMA)]の構造を有することができる。
【0052】
上述した本発明による形状記憶高分子は、ε-カプロラクトン単量体とアクリル単量体は、配列順序が特に制限されず、交互、ランダムまたはブロックで配列され得る。
【0053】
また、前記化学式1または2の単位を含む共重合体の末端には、ヒドロキシ基等が結合されていてもよい。このように末端にヒドロキシ基が結合されている共重合体は、末端にヒドロキシ基が結合されている開始剤等を使用して重合することによって製造することができる。
【0054】
ひいては、アクリル単量体に含まれるグリシジル基は、架橋性官能基であり得、光架橋性官能基または熱架橋性官能基でありうる。
【0055】
一方、本発明の一実施例による形状記憶高分子を成しているε-カプロラクトン単量体とグリシジル基を含むアクリル単量体量によって融点等を調節することができる。
【0056】
より具体的に、前記化学式1または2でxおよびyは、反復単位のモル%を示し、x+yは、100であり、xは、80~95、または88~94でありうる。
【0057】
ここで、モル%というのは、xおよびyの反復単位の割合を意味するものであり、具体的に、モル分率(ratio)を意味し得る。一例として、PCL-co-PGMAでPCLとPGMAの反復単位のモル分率を意味し得る。
【0058】
参考として、前記化学式1で、xが80未満の場合には、形状記憶高分子の架橋後に融点が28℃未満に低下して常温で形状変形によって人体に適用しにくいことがあり、xが95を超過する場合には、架橋後の融点が42℃を超過して形状復元のための形状記憶高分子相転移温度も高まって、人体温度(37℃)に適用しにくいことがある。
【0059】
これによる形状記憶高分子の融点は、30~48℃であり得、これを架橋する場合、融点は、これより低くなる。
【0060】
より具体的に、架橋後の形状記憶高分子の融点は、平均28~42℃でありうる。
【0061】
参考として、上述したように、架橋された形状記憶高分子の融点が28℃未満である場合には、常温で材料の形態変形が起こるので、生理学の応用機構への適用に限界があり、42℃を超過すると、変形回復率が90%以下であり、材料の形状記憶能力が低下する問題が発生することができる。
【0062】
特に、本発明の架橋後に形状記憶高分子は、体温の温度を含んでいる28~42℃以上の温度で90%以上の変形回復率を示すので、本発明の血管吻合用部材のような生理医学応用機構または医療用素材等に多様な適用が可能である。
【0063】
一方、上述した形状記憶高分子は、生分解性形状記憶高分子でありうる。より具体的に、「生分解性形状記憶高分子」は、時間経過によって人体内で分解されて人体に吸収され、温度変化によって形態を変形できる高分子物質を意味するものであり、温度変化によって形態が変形され、人体内で分解されて吸収が可能な高分子を意味する。例えば、前記生分解性形成記憶高分子は、架橋前と架橋後と関係なく生分解性形状記憶高分子でありうる。
【0064】
特に、本発明の一実施例による人工血管が生分解性形状記憶高分子からなるので、人体血管の物理的変形でなく、人工血管の外形的変形を与えて、血管の物理的変形による血流の流れに悪影響を与えることができる様々な原因を最小化させることができ、成長期の患者が人体内で半永久的に残存する物質で構成された人工血管を利用して施術を受ける場合、血管の成長を抑制して一定時間が経過後に反復的な血管施術を進行しなければならない問題点を解決できる長所がある。
【0065】
これに制限されるものではないが、化学式1で表される形状記憶高分子は、化学式3の化合物、化学式4の化合物、および化学式4の化合物を反応させて化学式1の形状記憶高分子を重合することを含む段階を通じて製造され得る。
【0066】
【0067】
前記化学式3~5で、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素(H)または炭素(C)数1~6のアルキル基(CnH2n+1-)であり、
mおよびnは、互いに独立して、1~20の整数であり、
A、B1およびB2は、互いに独立して、酸素(O)または硫黄(S)である。
【0068】
上述したように、本発明による形状記憶高分子は、ε-カプロラクトン単量体とグリシジル基を含むアクリル単量体が重合された共重合体の構造を有することができる。例えば、前記形状記憶高分子は、ε-カプロラクトン単量体(CL;caprolactone)とグリシジルメタクリレート(GMA)を重合した共重合体[PCL-co-PGMA)]の構造を有することができる。
【0069】
この際、前記化学式5の化合物は、重合反応をするために使用される開始剤であり得、1つの例として、1,6-ヘキサンジオールを開始剤に使用することができる。特に、重合反応時に化学式3の化合物と化学式4の化合物が化学式5の化合物を基準として縮合重合され得、化学式5の化合物を基準として交互、ランダムまたはブロックで配列され得る。
【0070】
1つの例として、共重合体[PCL-co-PGMA)]の構造を有する形状記憶高分子の製造方法は、まず、開始剤である1,6ヘキサンジオール(1,6-Hexandiol)と単量体であるε-カプロラクトン(CL)とグリシジルメチルアクリル酸(GMA)を適当なモル比で混合し、熱的に安定したと判断されたとき、触媒化合物を添加した後、反応温度80~140℃で共重合反応を実施する。
【0071】
その後、重合物を洗浄および濾過を通じて精製し乾燥して、化学式1の形状記憶高分子を製造することができる。
【0072】
1つの例として、本発明の一実施例によるPCL-co-PGMAの形状記憶高分子の重合メカニズムは、次の通りである。
【0073】
【0074】
このように、本発明の一実施例による形状記憶高分子の製造方法は、単量体としてε-カプロラクトン(CL)とグリシジルメチルアクリル酸(GMA)を共重合反応させる段階を含む。
【0075】
また、触媒は、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]-5-デセン(TBD;1,5,7-triazabicyclo[4.4.0]dec-5-ene)、スズ(II)(2-エチルキキサノエート)(tin(II)(2-ethylhexanoate))、トリメチロプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(trimethylopropane tris(3-mercaptopropionate))、またはコハク酸亜鉛(Zinc succinate)であり得、一例として、TBDは、収率が高く、少ない使用が可能で、触媒として使用することができる。
【0076】
触媒の使用量は、制限されないが、出発物質に対して0.5~1モル(mol)を使用することが良い。
【0077】
特に、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]-5-デセン(TBD;1,5,7-triazabicyclo[4.4.0]dec-5-ene)は、2つのモノマー(CL、GMA)の同時開環重合を誘導するための物質であり、形状記憶高分子の合成時間を短縮させることができる効果がある。
【0078】
重合転換率が殆どない時点、すなわち初期反応時にHD開始剤とともに同時に重合抑制剤をGMAモノマーを入れる前に投入して、温度に敏感なGMAアクリルグループ間の反応を抑制させることができる。
【0079】
これに加えて、重合抑制剤は、重合後半に局部的に発生する発熱反応の抑制と未反応の残留ラジカルを除去して反応を終結させる役割をするものであり、特に限定されるものではないが、ヒドロキノン(HQ;hydroquinone)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(hydroquinone monomethyl ether)、パラ-ベンゾキノン(p-benzoquinone)およびフェノチアジン(phenothiazine)よりなる群から選ばれる1種以上を使用することができる。
【0080】
この際、形状記憶高分子を合成する段階は、平均80~140℃、または100~130℃で合成することができる。より具体的に、100℃未満で高分子合成が進行される場合、触媒反応が進行されないことがあり、130℃を超過した温度で高分子合成が進行されると、触媒反応速度が落ちる問題が発生することができる。
【0081】
このような形状記憶高分子に対して架橋結合を行うことになる。架橋結合は、形状記憶高分子を安定した形状に維持させるための段階である。具体的に、架橋結合は、化学的架橋を意味し得、架橋された高分子では、個々の高分子鎖が共有結合で構成されていて、前記形状記憶高分子を安定した形状に維持させることができる。
【0082】
架橋結合は、形状記憶高分子を安定した形状に維持させるためのものであり、初期形態を付与することができる。すなわち、架橋結合は、形状記憶高分子の合成時に構成されるものではなく、初期形態付与時に構成され得る。例えば、血管吻合用部材の製造時にモールドに形状記憶高分子を溶解した後に注ぐことができるが、形状記憶高分子の溶解時に架橋剤を添加し、架橋反応を誘導することができる。
【0083】
特に、合成した形状記憶高分子に光架橋反応を誘導することによって、融点をさらに下げることができ、一例として、320~500nmの紫外線(UV,ultraviolet)を照射して架橋結合を誘導すると、形状記憶高分子の融点を28~42℃の温度に下げることができる。例えば、化学式1の形状記憶高分子に320~500nmの紫外線(UV,ultraviolet)を照射することができ、このような場合、化学式1に含まれる官能基であるメタクリレート基が、他の鎖のメタクリレート基と反応して共有結合することができる。
【0084】
ひいては、本発明は、一実施例において、
上記で説明した形状記憶高分子を含む血管吻合用部材を提供する。
1つの例として、血管吻合用部材は、第1血管および第2血管の端部の内側に挿入されるチューブ(tube)形態でありうる。
【0085】
この際、血管吻合用部材は、チューブ形態であり得、形状記憶高分子からなるので、平均28~42℃以上の温度で第1血管および第2血管の内径によって形態が変形され得る。チューブ形態の血管吻合用部材は、血管の縫合および吻合に適用され得、吻合に適用されるときは、端部対端部(end-to-end)吻合に適用される場合でありうる。
【0086】
他の1つの例として、前記血管吻合用部材は、血管の損傷した部位をかばう形態である血管吻合用部材でありうる。
【0087】
この際、血管吻合用部材は、シート状であり得、形状記憶高分子からなるので、平均28~42℃以上の温度で血管の外径をかばうように形態が変形され得る。また、本発明による血管吻合用部材は、血管の縫合および吻合に適用され得、吻合に適用されるときは、端部対端部(end-to-end)吻合または端部対側部(end-to-side)に適用される場合を全部包括することができる。
【0088】
一方、本発明の一実施例による血管吻合用部材は、生分解性形状記憶高分子でありうる。
【0089】
より具体的に、「生分解性形状記憶高分子」は、上述したように、時間経過によって人体内で分解されて人体に吸収され、温度変化によって形態を変形できる高分子物質を意味するものであり、温度変化によって形態が変形され、人体内で分解されて吸収が可能な高分子を意味する。
【0090】
特に、前記血管吻合用部材が生分解性形状記憶高分子からなるので、人体血管の物理的変形でなく、前記血管吻合用部材の外形的変形を与えて、血管の物理的変形による血流の流れに悪影響を与えることができる様々な原因を最小化させることができ、成長期患者が人体内で半永久的に残存する物質で構成された血管吻合用部材を利用して施術を受ける場合、血管の成長を抑制して一定時間が経過後に反復的な血管施術を進行しなければならない問題点を解決できる長所がある。
【0091】
また、上述した生分解性形状記憶高分子を含む血管吻合用部材を血管の損傷部位に適用すると、炎症または異物反応なしに内皮細胞を成長させて前記血管の損傷部位に新しい血管壁を再生させることができ、血管壁が再生する間に外部環境から再生が妨害されないように遮断する遮蔽膜の役割をすることができ、前記血管吻合用部材の生分解性および血管の損傷部位の再生効果を向上させて効果的に血管を治癒することができる。
【0092】
一方、血管吻合用部材は、一領域に穿孔が形成され得、前記穿孔と対応する領域に分岐管が一体型に連結され得る。この際、穿孔と分岐管の内径が対応するように形成され、前記分岐管は、血管の損傷した部位と連通することができる。参考として、これは、端部対側部(end-to-side)吻合術に適用されるものであり、分岐管は、1つの血管端部と連結され得、シート状の血管吻合用部材は、血管の側部と連結され得る。より具体的な説明は、後述することとする。
【0093】
また、分岐管は、上述したように、1つの血管の端部と連結されるものであり、内周面にガイド突起が形成され得、分岐管の軸に沿って長さ方向に拡張されるように形成され得る。この際、分岐管は、ポリエチレングリコール、ポリグリコライド、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D、L-ラクチド、ポリ(ラクチド-co-グリコライド)およびヒアルロン酸よりなる群から選ばれる1種以上の生体適合性高分子を含むことができる。
【0094】
また、本発明は、形状記憶高分子を含む人工血管または血管吻合用部材の製造方法を提供する。例えば、前記人工血管または血管吻合用部材は、チューブ形態であり得、血管形状のモールドを利用してチューブ形態の人工血管および血管吻合用部材を製造することができる。より具体的に、溶媒に形状記憶高分子と開始剤を溶解して反応物を準備した後、チューブ形態のモールド内に前記反応水を注いで、架橋させる段階を含んで製造することができる。前記モールドは、ガラスまたはPDMS材質であり得、これは、架橋のための光の透過性を高めるためである。
【0095】
この際、モールドの直径は、適用する血管の内径によって相異に設定することができ、一例として、内壁モールドの外径は、2mmであり得、長さは、10mm以上でありうる。また、外壁モールドの内径は、2.2mm以下であるとき、製作される血管吻合用部材の厚さが100~200μmに維持することができる。
【0096】
一方、架橋過程での温度は、常温で反応させることができる。例えば、15~25℃で反応させることができ、17~23℃、19~21℃または20℃で反応させることができる。万一、反応温度が前記温度を超過すると、気泡の発生によって製造される血管吻合用部材に予想しない多孔構造が生じることができて、温度を下げるために冷却器(chiller)を使用することができる。
【0097】
この際、使用される溶媒は、ジメチルエーテル(diethyl ether)、クロロホルム(chloroform)、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)、ジクロロメタン(dichloromethane)、エチルアセテート(ethyl acetate)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、アセトン(acetone)、アセトニトリル(acetonitrile)、N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide)、N,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)、N-メチルピロリドン(Nmethylpyrrolidone)、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide)、アセトニトリル(acetonitrile)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、ジエチルケトン(diethyl ketone)よりなる群から選ばれた1つ以上でありうる。
【0098】
前記開始剤は、光開始剤であり得、紫外線の照射によってラジカルを形成することができるものであり、水溶液上で活用できるDMPA(2,2- dimethoxy-2-phenylacetonephenone)、HOMPP(2-hydroxy-2-methylpropipphenone)、LAP(Lithium phenyl-2,4,6-trimethylbenzoylphosphinate)、IRGACURE 2959(1-[4-(2-Hydroxyethoxy)-phenyl]-2-hydroxy-2-methyl-1-propane-1-one)よりなる群から選ばれるが、これに限定されるものではない。開始剤は、溶媒に対して0.1~0.5w/v%、または0.2~0.4w/v%、または0.3w/v%を含むことができる。光開始剤の濃度があまり低いと、光重合反応が効率的に進行されず、光開始剤の濃度があまり高いと、形状記憶高分子特性の消失が観察され得る。
【0099】
また、前記溶媒に対して、形状記憶高分子は、30~300w/v%を含むことができ、30~270w/v%、35~240w/v%、40~210w/v%、45~170w/v%、50~140w/v%、50~100w/v%、65~90w/v%または75w/v%でありうる。
【0100】
例えば、チューブ形態の血管吻合用部材の形態変化過程および血管吻合が行われる過程について調べると、初期形態(original shape)の血管吻合用部材を融点以下で両側に物理的力を加えて延伸させると、血管吻合用部材の長さ方向に伸張して外径が減少することになり、吻合しようとする血管の切断された断面を通じて血管の内部に挿入され得るように臨時形態(temporary shape)に変形される。
【0101】
この際、血管吻合用部材を臨時形態に維持しつつ、温度を0℃以下に温度を減少させると、血管吻合用部材は、臨時形態に固定され、さらに転移温度以上の温度(約28~42℃の温度)になるように熱を加えると、血管吻合用部材は、物理的力により変形される前の初期形態に復元されて永久形態(permanent shape)を維持することができる。すなわち、前記血管吻合用部材が前記切断された血管の内部で長さ方向に収縮し、その外径が増加することになり、前記胴体100の外周面が前記切断された血管の内部に密着した状態の前記永久形態で固定されることによって、血管吻合が行われ得る。
【0102】
形状記憶高分子において、「変形率」とは、臨時形態(temporary shape)から初期形態に復元されて永久形態(permanent shape)に維持されるとき、形状がある程度変わるかに対する割合を意味するものであり、臨時形態から永久形態に変わる割合を意味する。また、「変形回復率」とは、臨時形態から物理的力により変形される前の初期原形形態に復元されるときの回復割合を意味するものであり、初期形態と永久形態の割合を意味し得る。本発明で変形率は、形状記憶高分子に含まれる単量体の割合または条件(温度、UV等)によって変わることができ、具体的に5~350%でありうる。また、変形回復率は、90%以上でありうる。
【0103】
以下、本発明は、図面を通じてさらに詳細に説明する。ただし、下記図面に関する説明は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容がそれに限定されるものではない。
【0104】
図1は、本発明による血管吻合用部材の形態変化過程を示す図であり、
図2は、本発明による血管吻合用部材の形態変化過程を示す図である((a)初期形態、(b)臨時形態(変形された状態)、(c)永久形態(回復した状態))。
【0105】
図1と
図2を参照すると、本発明の血管吻合用部材100は、血管の第1血管と第2血管の内部に挿入されて、血管の内径によって形態が変形される形状記憶高分子であることを特徴とする。
【0106】
このように、本発明の一実施例による血管吻合用部材100は、血管の内部で適用される内径の形態によって変形されて、2つの血管を連結して血管を吻合する構造体を提案することによって、従来の縫合糸による吻合過程より非常に簡単かつ便利に、血管吻合手術時間を短縮できると共に、吻合手術過程で発生しうるミスが減少して手術安定性を高めることができる長所がある。
【0107】
ひいては、本発明による血管吻合用部材は、平均28~42℃以上の温度で第1血管および第2血管の内径によって形態が変形され得る。一例として、28℃未満の温度では、適用される血管より内径がさらに小さく形成され得、平均28~42℃以上の温度では、血管の内径の形態および大きさによって変形され得る。
【0108】
より具体的に、血管吻合用部材は、化学式1の形状記憶高分子からなるものであり、28~42℃以上の温度で物理的な力により変形される前の初期形態に復元されることによって、適用される血管の内部で血管の内径に固定されて1つの切断された2つの血管を吻合することができる。ここで、物理的な力は、血管吻合用部材の初期形態から臨時形態に変形されるとき、外部刺激を意味し得、これは、温度、光等の刺激であり得、または融点以下での機械的な力でありうる。
【0109】
一方、28~42℃以上の温度で初期形態に復元されるように形成させることは、人体の内部に本発明の血管吻合部材の施術時に体内で自発変形が起こるように誘導するためである。すなわち、体温に近い温度である36~38℃での自発変形を保障するためである。
【0110】
また、本発明の血管吻合用部材100は、第1血管および第2血管内に挿入されることが容易なチューブ形態であり、外周面には、血管に固定が容易となるように固定突起を含むことができる。
【0111】
前記固定突起は、前記血管吻合用部材100が血管に挿入されるとき、血管内壁を突き抜けて入って、前記血管吻合用部材が血管の内部に堅固に固定され得るようにする複数個のマイクロニードルでありうる。一方、前記固定突起は、人体内で時間経過によって分解されて吸収される生分解性高分子からなり得る。
【0112】
本発明による血管吻合用部材の長さは、5~20mmであり得、7~18mm、9~16mmまたは11~14mmであり得る。また、血管吻合用部材の内径は、血管に移植前には、0.1~4mmであり得、移植後には、0.2~5mmでありうる。一方、血管吻合用部材に含まれる形状記憶高分子の含量または架橋条件によって前記移植前の臨時形態(temporary shape)が移植後の永久形態(permanent shape)より直径がさらに大きいことがあるが、本発明では、手術時に前記血管吻合用部材を血管内に挿入することを容易にするために、移植前の直径がさらに小さく設定することができる。
【0113】
具体的に、移植前の臨時形態(temporary shape)であるときは、前記血管吻合用部材の内径が0.1~4mm、0.5~3.5mm、0.7~3.0mm、0.9~2.5mm、1.1~2.0mm、1.5mmであり得、移植後の永久形態(permanent shape)では、0.2~5mm、0.5~4mm、0.7~3.5mm、1.~3mmの範囲でありうる。一方、前記血管吻合用部材の直径は、適用される血管および部位によって異なっていもよい。
【0114】
一例として、血管吻合用部材の内径は、血管に移植前には、2mmであり得、移植後には、4mmでありうる。変化程度は、高分子の組成、架橋時間、架橋時のUVエネルギー等を制御することによって調節することができる。
【0115】
ひいては、本発明による血管吻合用部材の内径は、0.2~5mmの範囲であり得、前記血管吻合用部材の内径は、第1方向から第2方向に行くほど徐々に増加するフレア(flare)形態でありうる。ここで、「第1方向」および「第2方向」は、血液の流れの方向を意味し得る。より具体的に、「第1方向から第2方向」というのは、血液が流れる方向を意味し得、第1血管から第2血管に流れる血液の方向を意味し得る。
【0116】
一方、血管吻合用部材の断面厚さは、50~200μmであり得、好ましくは、100~200μmまたは100μmでありうる。より具体的に、血管吻合用部材の断面厚さを前記範囲に設定することによって、前記血管吻合用部材が挿入される第1血管と第2血管の内径と段差を減らすことによって、流体(血液)の渦流現象を減らすことができる。すなわち、前記血管吻合用部材の厚さは、血流の渦流生成を抑制し、機械的強度を維持するためであり、これは、人工血管または吻合器の厚さが対象血管内に血流が流れるとき、段差を最小化するためのComputational modelingおよび実験を通じて得られた結果でありうる。
【0117】
一例として、第1血管および第2血管端部の内径が2.0mmであるとき、血管吻合用部材の内径は、1.8mmまたは1.9mmでありうる。前記血管吻合用部材と血管の内径の段差が大きくないとき、流体の渦流現象を減らすことができる。
【0118】
一方、血管吻合用部材は、抗血栓物質を含んでいたり、表面に固定されていて、血管内部で血液と接触して発生しうる血液凝固および血栓等の問題を防止するように構成され得る。
【0119】
抗血栓物質は、ヘパリン、ヘパリンとCD133抗体混合物、またはNitric oxide(NO)を放出する機能性ペプチドであり得、一例としてヘパリン(heparin)でありうる。
【0120】
ひいては、血管吻合用部材の製造時に溶媒の体積に対して上述した形状記憶高分子の重量比を調節することによって、血管吻合用部材の強度(Young’s modulus)、架橋度、融点等を調節することができる。
【0121】
具体的に、形状記憶高分子の強度は、ヤング率を測定することによって確認できるが、前記形状記憶高分子のヤング率は、0.01~200MPa、0.1~150MPa、0.1~120MPaでありうる。例えば、血管の平均ヤング率(Young’s modulus)は、15N/mm2であり、内皮細胞が主な成分である微細血管である場合、約2-3N/mm2である。細動脈(Arteriole)や静脈(Vein)の場合、0.5N/mm2まで低下し、筋肉層が厚かったり脂肪が多く蓄積された血管の場合、100N/mm2以上になることがある。したがって、本発明の血管吻合用部材は、前記形状記憶高分子の成分および各成分の重量%を制御することによって、このような血管の物理的強度の範囲を全部カバーできる性質を示す。
【0122】
図3は、本発明による血管吻合用部材を示す図であり、
図3(a)は、端部対端部(end-to-end)血管吻合用部材を示す図である。
【0123】
図3(a)を参照すると、本発明の血管吻合用部材100は、血管の損傷した部位の外周面をかばうように配置されるシート状に血管の外径によって形態が変形される形状記憶高分子であることを特徴とする。
【0124】
このように、本発明の一実施例による血管吻合用部材100は、血管の外周面をかばうように形成されて、1つまたは2つの血管を連結して血管を吻合する構造体を提案することによって、従来の縫合糸による吻合過程より非常に簡単かつ便利であり、血管吻合手術時間を短縮できると共に、吻合手術過程で発生しうるミスが減少して手術安定性を高めることができる長所がある。
【0125】
特に、本発明の血管吻合用部材は、血管内部に挿入されて血管を支持するものではなく、吻合しようとする血管の外部で血管の外周面をかばう形態で形成されているので、血管内の血流が円滑に流れることができ、血管の内部で血液と接触して発生しうる問題を最小化することができる。
【0126】
ひいては、血管吻合用部材は、平均28~42℃以上の温度で血管の外径をかばうように形態が変形されることを特徴とする。
【0127】
より具体的に、血管吻合用部材は、形状記憶高分子からなるものであり、28~42℃以上の温度で機械的な力により変形される前の初期形態に復元されることによって、血管の外部をかばうように固定されて1つの血管を縫合または切断された2つの血管を吻合することができる。
【0128】
一方、28~42℃以上の温度で初期形態に復元されるように形成させることは、人体の内部に本発明の血管吻合部材の施術時に体内で自発変形が起こるように誘導するためである。すなわち、体温に近い温度である36~37℃での自発変形を保障するためである。
【0129】
参考として、
図3(a)は、扁平なシート状に図示されているが、これは、本発明を例示するものに過ぎず、これに限定されるものではない。1つの例として、図面上の扁平なシート状は、28~42℃以上の温度で変形された後の形態を示すものであり、28~42℃以上の温度では、変形初期形態である血管をかばう形態でありうる。
【0130】
図3(b)は、端部対側部(end-to-side)血管吻合用部材を示す図である。
【0131】
図3(b)を参照すると、本発明の血管吻合用部材100は、一領域に穿孔101が形成され得、前記穿孔101と対応する領域に分岐管200が一体型に連結され得る。
【0132】
ここで、「分岐管」というのは、本管から分かれて出た管を意味するものであり、前記血管吻合用部材100が血管をかばうことになって血管の吻合を成すことになって、人造血管で形成された場合、前記血管吻合用部材100から分かれて出た管を意味し得る。
参考として、血管吻合用部材が1つの血管(第1血管)をかばうように形成されると、前記分岐管は、他の血管(第2血管)の端部と連結され得る。
【0133】
ひいては、前記穿孔101と分岐管200の内径201が対応するように連通することができ、前記分岐管200は、血管の損傷した部位と連通することができる。
【0134】
また、分岐管は、ポリエチレングリコール、ポリグリコライド、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D、L-ラクチド、ポリ(ラクチド-co-グリコライド)およびヒアルロン酸よりなる群から選ばれる1種以上の生体適合性高分子からなり得、これに限定するものではない。
【0135】
図4は、本発明の一実施例による血管吻合用部材を多様な様態で実施した形態を示す図である。
【0136】
より具体的に、
図4(a)は、本発明のシート状の血管吻合用部材100を血管縫合用で実施した形態を示す図であり、血管11の損傷した部位10をかばうようにして血管11を縫い合わせるように形成することができる。
【0137】
図4(b)は、本発明の血管吻合用部材100を端部対端部(end-to-end)血管吻合用で実施した形態を示す図である。
【0138】
より具体的に、端部対端部血管吻合は、第1血管11の末端と第2血管12の末端がかみ合うように連結するものであり、本来互いに連結されていた血管が切れたとき、さらに1つの血管でかみ合うように連結する吻合術を意味し得る。
【0139】
図4(c)は、本発明の血管吻合用部材100を端部対側部(end-to-side)血管吻合用で実施した形態を示す図である。
すなわち、第1血管の側部11と第2血管の末端(不図示)がかみ合うように吻合術を実施することができる。
【0140】
図5は、本発明の一実施例による血管吻合用部材の構造を示す図である。
【0141】
本発明の一実施例による血管吻合用部材100は、損傷した血管に容易に適用されるように複数の固定突起110を含むことができる。より具体的に、血管吻合用部材110の背面に位置して血管にかばうように適用されるとき、固定が容易となるように複数の突起110が背面から突出することができる。
【0142】
参考として、前記複数の突起110は、少なくとも2つを含むことができ、この際、血管の縫合または端部対側部吻合術に適用され得る。
【0143】
より具体的に、前記複数の突起は、血管吻合用部材100が血管の損傷した部位をかばうとき、前記血管吻合用部材の両端が接合され得るが、この際、接合される部位に前記2つの突起110が両端に形成され得る。
【0144】
他の様態として、前記複数の突起110は、図面上、血管吻合用部材100のエッジに形成され得、これは、端部対端部吻合術に適用され得る。具体的に、前記複数の突起110が血管吻合用部材のエッジに形成されて互いに連結される第1血管11と第2血管12にそれぞれ固定され得る。
【0145】
一方、前記複数の突起110は、所定の角度を成すことができる。
【0146】
より具体的に、前記血管吻合用部材と90°の角度を成すことができ、端部対端部に適用されるときは、複数の突起110が血管吻合用部材100の中心に向かうように鋭角で形成されることが好ましい。この際、45~85°範囲の角度または60~75°範囲の角度を成すことができる。
【0147】
これは、血管吻合用部材100が血管の損傷した部位に堅固に打ち込まれて容易に抜けないようにするためであり、必要に応じて相異に設定して適用され得る。
【0148】
図6は、本発明の一実施例による血管吻合用部材の構造を示す図である。
【0149】
図6を参照すると、本発明の一実施例による分岐管200は、内周面にガイド突起210が形成され得る。
【0150】
ガイド突起210というのは、前記分岐管200に流れる血液の流れの方向を案内するものであり、分岐管200の軸に沿って長さ方向に拡張された形態で突起が形成され得る。このようなガイド突起210は、必要に応じて複数個で形成され得、組織工学で使用される通常のパターン形成方法により形成され得る。
【0151】
また、これに限定されるものではないが、分岐管は、例えば一定の直径を有する円柱形状の分岐管200であり得、または前記血管吻合用部材で連結される部分であるほど直径が増加するフレアー(flare)形状の分岐血管でありうる。参考として、人工血管内血流を容易にするためには、フレアー形状の分岐血管部材を使用することができる。
【0152】
参考として、頚動脈のような直径が広い動脈に適用される場合、血管吻合用部材の長さは、15~30mmであり得、分岐管200は、3~15mmであり得るが、これに限定されない。
【0153】
上記のように構成された本発明の血管吻合用部材の使用例を
図5と
図6を参照して簡単に説明すると、次の通りである。
【0154】
図7は、本発明の一実施例による血管吻合用部材が血管の損傷した部位に適用されて血管吻合(端部対端部)が行われる過程を概略的に示す図である。
【0155】
図7を参照して血管吻合が行われる過程について調べると、
図7(a)に示されたように、血管吻合用部材100を転移温度(transition temperature)以下の室温(約25℃)で両側に機械的力を加えて延伸(elongation)させて、血管への適用が容易なシート状の臨時形態(temporary shape)に変形させる。
【0156】
そして、切断された第1血管11と第2血管12が互いに接合されるように移動させて、前記血管吻合用部材100を前記接合させた第1血管11と第2血管12の近所で臨時形態に維持しつつ、徐々に温度を増加させると(ここで、増加する温度は、略常温程度の温度まで増加させる)、前記血管吻合用部材100は、臨時形態に固定される(
図7(b))。そして、さらに転移温度以上の温度である37℃になるように熱を加えると、前記血管吻合用部材は、機械的力により変形される前の初期原形形態に復元されて、
図7(c)に示されたように永久形態(permanent shape)を維持することになる。
【0157】
このようになって前記血管吻合用部材が血管の損傷した部位に永久固定されることによって、端部対端部(end-to-end)血管吻合が行われることになる。
【0158】
図8は、本発明の他の一実施例による血管吻合用部材が血管の損傷した部位に適用されて血管吻合(端部対側部)が行われる過程を概略的に示す図である。一方、端部対側部の血管吻合過程で血管の損傷した部位というのは、事故やミスによる血管の損傷でありうるが、他の様態によっては、血管吻合を実施するための意図的血管穿孔を意味し得る。
【0159】
したがって、端部対側部の血管吻合過程では、「血管の損傷した部位」は、「血管穿孔」と称することとする。
【0160】
図8を参照して端部対側部(end-to-side)血管吻合が行われる過程について調べると、まず、医療人は、血管11の血管穿孔13を実施する部位の流入部および流出部それぞれに遮蔽装置(不図示)を設置して血液の流れを遮断した後、血管11の側壁に血管穿孔13を生成する。
【0161】
次に、本発明の血管吻合用部材100を血管11の血管穿孔13された部位に締結するが、まず、血管吻合用部材100を転移温度(transition temperature)以下の25℃で両側に機械的力を加えて延伸(elongation)させて、血管への適用が容易なシート状の臨時形態(temporary shape)に変形させる(
図8(a))。
【0162】
そして、血管11の血管穿孔13された部位と血管吻合用部材100の穿孔201と連通するように位置させた後、臨時形態に維持しつつ徐々に温度を増加させると(ここで、増加する温度は略常温程度の温度まで増加させる)、前記血管吻合用部材100は、臨時形態に固定される(
図8(b))。
【0163】
一方、前記穿孔201と一体型に結合された分岐管200は、血管10の血管穿孔13された部位と連通することができる。
【0164】
そして、さらに転移温度以上の温度である37℃になるように熱を加えると、前記血管吻合用部材は、機械的力により変形される前の初期原形形態に復元されて、
図8(c)に示されたように、永久形態(permanent shape)を維持することになる。
【0165】
このようになって前記血管吻合用部材が血管の損傷した部位に永久固定されることによって、端部対側部(end-to-side)血管吻合が行われることになる。
【0166】
以下、本発明を実施例および実験例によりさらに詳細に説明する。
【0167】
ただし、下記実施例および実験例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0168】
<実験準備>
1.実験器具および方法
ε-カプロラクトン(CL;caprolactone)、ヒドロキノン(HQ;Hydroquinone)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]-5-デセン(TBD;1,5,7-triazabicyclo[4.4.0]dec-5-ene)、グリシジルメチルアクリル酸(GMA;Glycidyl methacrylate)、アセトニトリル(Acetonitrile)、クロロホルム(Chloroform)、ジクロロメタン(Dichloromethane)、ジエチルエーテル(Diethyl ether)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2-Dimethoxy-2-phenylacetophenone)および1,6-ヘキサンジオール(HD;1,6-Hexanediol)は、Sigma-Aldrichから購入した。
【0169】
一方、融点(Melting temperature(Tm))、結晶化温度(crystallization temperature(Tc))、ガラス転移温度(glass transition temperature(Tg))、(melting enthalpy(ΔHm))、and crystallization enthalpy(ΔHc)のような熱的特性は、TA Instrument社の示差走査熱量分析器(Discovery DSC25;Differential Scanning Calorimetry)装備を利用してアルミニウムファン内に5~10mgの間のサンプル質量をもって測定した。そして、昇温速度は10℃/minで-80℃から150℃まで1回繰り返して測定した。
【0170】
また、分子量(molecular weight)およびPDIは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC(Gel Permeation Chromatography)、Agilent technologies 1200 series)装備を利用して測定し、この際、使用されたカラムは、PLgel 5μm Mixed-D column(300mm、Φ=7.5mm)であり、使用された溶媒は、テトラヒドロフランであり、流速は、1.0mL/minと測定した。
【0171】
各サンプルに相当する結晶化度(Xc)は、次の方程式により計算された:
【0172】
【0173】
ここで、ΔH°C(139.5J・g-1)は、100%結晶性PCLのエンタルピーである。
【0174】
水接触角(Water contact angles)は、接触角測定システム(OCA20、Dataphysics)で蒸留水10μl液滴(sessile drop)を使用して測定した。
【0175】
機械的特性は、2%・min-1の変形率で制御された変形率モードで動的機械分析器(DMA、Discovery DMA850、TA instrument Inc.)を使用して応力-変形曲線(stress-strain curves)を分析することによって測定した。
【0176】
94%PCL-6%PGMAの流動学的挙動(rheological behavior)は、クロロホルムでポリマー濃度を100~250%(w/v)で変化させ、直径が4cmであり、円錐角1°である円錐形およびプレート形状を有する機器であるAR 2000 EX rheometer(TA instrument Inc.)を使用して150秒間20℃で当該粘度を決定して調査した。
【0177】
せん断粘度(Shear viscosity)は、0.01~350s-1範囲のせん断速度を有する流動モードで測定された。SMP分解(degradation)は、DPBS(Dulbecco’s phosphate-buffered saline)に94%PCL-6%PGMAフィルム(円形ディスク形状、直径=15.6mm)を37℃で28日間撹拌しつつ浸漬した後、非分解値から乾燥重量の累積損失%を計算した。
【0178】
実施例1.PCL-co-PGMA形状記憶高分子の合成
1-1.96%PCL-co-4%PGMAの合成
96%PCL-co-4%PGMAを合成するために、[CL]0/[GMA]0/[HD]0/[TBD]0/[HQ]0=94/6/0.6/1/0.5の反応物投入比で次のように合成した(表1参照)。
【0179】
【0180】
まず、ガラス反応器(250ml)にCL(94mmol、10.41ml)、HD(0.5mmol、60mg)とHQ(0.6mmol、66mg)を入れて混合し、10分後にGMA(6mmol、0.8ml)を前記ガラス反応器に注入した。そして、2つのモノマーを混合したガラス反応器内部の温度が熱的に安定したと判断されたとき、CLとGMAの同時開環重合を誘導するための触媒としてTBD(1mmol、140mg)をアセトニトリル1mlに溶解した後、ガラス反応器内に注入し、6時間の間110℃で撹拌させた。すべての過程は、高純度窒素下で実施した。
【0181】
反応後に反応物をクロロホルム15mlに溶解させ、ジエチルエーテル(400ml)に反応物を徐々に落として沈殿させた。次に、沈殿物を濾紙で濾過した後、回転蒸発器を用いて溶媒を除去し、減圧下で乾燥させて、PCL-co-PGMA高分子を合成した。
【0182】
1-2.94%PCL-co-6%PGMAの合成
94%PCL-co-6%PGMAを合成するために[CL]0/[GMA]0/[HD]0/[TBD]0/[HQ]0=90/10/1/1/0.5の反応物投入比で次のように合成した(表2参照)。
【0183】
【0184】
以下、重合方法は、実施例1-1と同一である。そして、合成された高分子の構成成分(PCLとPGMAの水素原子個数比を通したPCLとPGMAの反復単位比)を
1H NMR(nuclear magnetic resonance)を利用して測定し、測定結果を
図9(a)に示した。
【0185】
図9(a)を参照すると、合成高分子化学的構造に基づく
1H NMR分析を通じてPCLとGMAの反復単位比(PCL:PGMA=15:1)の反復単位割合(%)を計算し、実施例1-2で反復単位割合は、94%PCL-co-6%PGMAであることを確認した。
【0186】
また、
図9(b)を参照して94%PCL-co-6%PGMA(1-HD 0.5mmol、2-HD 0.25mmol)高分子のGPC分析を通した分子量を確認した結果、目標値であるMw 10kDa以下の水準であることを確認し、これは、開始剤の導入量の調節を通じて容易に調節できると予想した。
【0187】
1-3.92%PCL-co-8%PGMAの合成
92%PCL-co-8%PGMAを合成するために[CL]0/[GMA]0/[HD]0/[TBD]0/[HQ]0=86/14/1.4/1/0.5の反応物投入比で次のように合成した(表3参照)。
【0188】
【0189】
以下、重合方法は、実施例1-1と同一である。そして、合成された高分子の構成成分(PCLとPGMAの水素原子個数比を通したPCLとPGMAの反復単位比)を
1H NMR(nuclear magnetic resonance)を利用して測定し、測定結果を
図10に示した。
【0190】
図10を参照すると、
1H NMR分析を通じてPCLとPGMAの反復単位比(PCL:PGMA=12:1)の反復単位割合(%)を計算し、実施例1-3で反復単位割合は、92%PCL-co-8%PGMAであることを確認した。
【0191】
1-4.90%PCL-co-10%PGMAの合成
90%PCL-co-10%PGMAを合成するために[CL]0/[GMA]0/[HD]0/[TBD]0/[HQ]0=82/18/1.8/1/0.5の反応物投入比で次のように合成した(表4参照)。
【0192】
【0193】
以下、重合方法は、実施例1-1と同一である。そして、合成された高分子の構成成分(PCLとPGMAの水素原子個数比を通したPCLとPGMAの反復単位比)を
1H NMR(nuclear magnetic resonance)を利用して測定し、測定結果を
図9に示した。
【0194】
図11を参照すると、
1H NMR分析を通じてPCLとPGMAの反復単位比(PCL:PGMA=9:1)の反復単位割合(%)を計算し、実施例1-4で反復単位割合は、90%PCL-co-10%PGMAであることを確認した。
【0195】
1-5.88%PCL-co-12%PGMAの合成
88%PCL-co-12%PGMAを合成するために[CL]0/[GMA]0/[HD]0/[TBD]0/[HQ]0=78/22/2.2/1/0.5の反応物投入比で次のように合成した(表5参照)。
【0196】
【0197】
以下、重合方法は、実施例1-1と同一である。そして、合成された高分子の構成成分(PCLとPGMAの水素原子個数比を通したPCLとPGMAの反復単位比)を
1H NMR(nuclear magnetic resonance)を利用して測定し、測定結果を
図12に示した。
【0198】
図12をを参照すると、
1H NMR分析を通じてPCLとPGMAの反復単位比(PCL:PGMA=7:1)の反復単位割合(%)を計算し、実施例1-5で反復単位割合は、88%PCL-co-12%PGMAであることを確認した。
【0199】
実施例2.PCL-co-PGMA形状記憶高分子の合成
[CL]0/[GMA]0/[HD]0/[TBD]0/[HQ]0を次のような反応物投入比で高分子を合成した(実施例2-1~2-5)。
【0200】
【0201】
より具体的に、実施例2-1~2-5では、ガラス反応器(250ml)にCL、HDおよびHQを入れて混合した。そして、10分後にGMAを前記ガラス反応器に注入した(表6参照)。また、2つのモノマーを混合したガラス反応器内部の温度が熱的に安定したと判断されたとき、CLとGMAの同時開環重合を誘導するための触媒としてTBD(1mmol、140g)をアセトニトリル1mlにガラス反応器内に注入し、6時間の間110℃で撹拌させた。以下、重合方法は、実施例1-1と同一である。
【0202】
そして、実施例2-1~2-5で合成した高分子に強さ265mW/cm2のUV光(250-500nm)を照射して人体に適用可能な形状記憶高分子を製造した。
【0203】
実施例3.血管狭窄防止のための血管吻合用移植材の製造
実施例1で製造した高分子を利用して血管吻合用移植材を製造した。
【0204】
チューブ形態の血管吻合用移植材を製造するために、チューブ型のモールドを準備し、高分子架橋のための光の透過性を高めるためにPDMSからなる内外壁モールドを準備した。この際、内壁モールドの外径は、2mmであり、長さは、10mmであった。また、外壁モールドの内径は、2.2mmであり、長さは、内壁モールドと同一にした。これに伴い、血管吻合用移植材の断面厚さが100~200μmを維持することができる。そして、内壁モールドを外壁モールド内に入れて、内壁モールドと外壁モールドとの間に空間が形成されたモールドを製造した。
【0205】
次に、溶媒THF 10gに対して実施例1で製造した高分子を内壁モールドと外壁モールドとの間の空間に注いで、UV架橋器内で架橋を実行した。具体的に、前記モールド内部の高分子に強さ265mW/cm2のUV光(365nm)で照射して血管吻合用移植材を製造した。
【0206】
比較例1.PCL(poly(ε-caprolactone))重合
[CL]0/[HD]0/[TBD]0=100/0.5/1の反応物投入比で次のように重合した。
【0207】
ガラス反応器(250ml)にCL(100mmol、9.97ml)とHD(0.5mmol、60mg)を入れて混合した(表7参照)。
【0208】
【0209】
そして、モノマーを混合したガラス反応器内部の温度が熱的に安定したと判断されたとき、CLの開環重合を誘導するための触媒としてTBD(1mmol、140mg)をアセトニトリル1mlに溶解した後、ガラス反応器内に注入し、30分間110℃で撹拌させた。以下、重合方法は、実施例1-1と同一である。
【0210】
比較例2.PCL(poly(ε-caprolactone))重合-2
[CL]0/[HD]0/[TBD]0=100/0.5/0.5の反応物投入比で次のように重合した。
【0211】
ガラス反応器(250ml)にCL(100mmol、9.97ml)とHD(0.5mmol、60mg)を入れて混合した(表8参照)。
【0212】
【0213】
そして、モノマーを混合したガラス反応器内部の温度が熱的に安定したと判断されたとき、CLの開環重合を誘導するための触媒としてTBD(0.5mmol、70mg)をアセトニトリル1mlに溶解した後、ガラス反応器内に注入し、1時間の間110℃で撹拌させた。以下、重合方法は、実施例1と同一である。
【0214】
実験例1.実施例1および2で製造された形状記憶高分子の特性分析
1-1.UV架橋による形状記憶高分子の製造
図13は、実施例1-2と比較例1で合成した高分子にUV(Ultraviolet ray)処理した後に現れる現象を比較した図である。
【0215】
図13を参照すると、実施例1-2で合成した高分子と比較例1で合成した高分子をそれぞれ光開始剤と10:1の体積比で混合した後、約400μLをそれぞれ透明なガラス容器に入れた。
【0216】
より具体的に、実施例1-2で合成した高分子と比較例1で合成した高分子は、それぞれジクロロメタン(dichloromethane)に50重量%分散させ、光開始剤は、ジクロロメタン(dichloromethane)に10重量%分散させて、前記分散させた溶液を10:1の体積比で混合した。
【0217】
そして、ガラス容器に強さ14W/cm2のUV光(320~500nm)で10分間照射した。
【0218】
そして、UV処理された容器をそれぞれ裏返した。
【0219】
その結果、実施例1-2で製造した高分子は、底面にくっついて離れないことから見て、UV処理時に改質されたアクリルグループ間の架橋によってゲルで架橋されたことを確認することができたが、比較例1は、液体状態で物質の状態変化が起こらないことを確認することができた。
【0220】
すなわち、実施例1-2で合成した高分子は、UVにより架橋が可能であることを確認することができた。
【0221】
1-2.DSC分析-1
図14と表9は、実施例1-2と比較例1のDSC分析を示すグラフと表である。
【0222】
より具体的に、高分子の成分およびデザイン変数が及ぼす物性を分析するために示差走査熱量測定機(DSC、Differential scanning calorimetry)を使用して測定した(Tm;melting temperature、ΔHm;melting enthalpy、Tc;crystallization temperature、ΔHc;crystallization enthalpy)。
【0223】
【0224】
図14と表9を参照して、融点を比較してみると、比較例1のPCLを単独で合成した時より実施例1-2で合成したPCL-co-PGMAの融点がさらに低くなったことを確認することができた。
【0225】
1-3.DSC分析-2
図15と表10は、実施例1-2と比較例1の高分子にUV処理した後、DSC分析を示すグラフである。
【0226】
【0227】
図15と表10を参照すると、比較例1のPCLを単独で合成した時より実施例1-2で合成したPCL-co-PGMAの融点がさらに低くなったことを確認することができ、特に、実施例1で合成した高分子にUVを処理した後には、融点が40.44℃であり、UVを処理しなかった時より低くなったことを確認することができた。
【0228】
実験例2.実施例1-1~1-3で製造された形状記憶高分子のUV架橋前後の特性分析
実験例2では、実施例1-1~1-3で合成した高分子のUV架橋前後の機械的および熱的特性を分析した。
【0229】
【0230】
【0231】
図16と表11を参照して、実施例1-1~1-3の特性を比較してみると、比較例2とともにPCLを単独で合成した時より実施例1-1~1-3で合成したPCL-co-PGMAの融点がさらに低くなったことを確認することができた(
図16b)。
【0232】
また、
図16を参照してGPC分析を通した分子量を確認した結果、目標値であるMw10kDa以下の水準であることを確認した。特に、GMAの含量が多くなるほど分子量が小さくなることを確認することができた。また、無定形のPGMAがPCL結晶性を崩壊させてTmと%結晶性を低下させることが分かる(表11)。
【0233】
特に、GMAの含量が多くなるほど融点およびエンタルピー値が低くなることを確認することができ、UVを処理した後の高分子の融点がUVを処理しなかった時の融点(Tm)より低くなったことを確認することができた(
図16b~16d)。特にUV架橋された94%PCL-6%PGMAの融点範囲が体温範囲内にあることを確認することができ(
図16e)、これに伴い、前記形状記憶高分子が血管吻合用部材として活用可能性が高いことを予想した。
【0234】
94%PCL-6%PGMA形状記憶高分子をUV架橋後に200秒に到達する時点に最大引張変形率が最大値(~100%)に到達したので、架橋時間は、200秒と決定した(
図16g)。
【0235】
実験例3.形状記憶高分子の復元能力確認
形状記憶特性は、DMAを通じて7サイクル(N)以上の応力制御循環熱力学的引張試験(stress-controlled cyclic thermomechanical tensile tests)で調査された(
図17a)。(i)94%PCL-6%PGMAフィルムを55℃に昇温し、10分間平衡を維持し[εp(0)、初期永久形態]、39kPaに到達するまで4kPa・min
-1で引張応力を加えて伸張させた。(ii)フィルムを2℃・min
-1の速度で0℃に冷却させ、10分間平衡化した後[ε1(N)、最大変形]、(iii)加えられた引張応力を除去(4kPa・min
-1)した[εu(N)、臨時形態]。(iv)次に、温度を2℃・min
-1の速度で42℃に増加させて永久形態[εp(N)]を回復させた。それぞれのサイクル(N)に対して、変形回復率[Rr(N)%]は、変形後にSMPが本来の永久形態[εp(N)]に回復する能力を意味し、変形高精度[Rf(N)%]は、引張応力除去後に臨時形態を維持する能力を意味し、次の方程式で計算される。
【0236】
【0237】
その結果、UV処理した94%PCL-co-6%PGMA形状記憶高分子材料の形状回復率は、96%以上であり、形状高精度は、95%以上であり、復元力に優れていることを確認することができた(
図17b)。また、変形率(%)の温度依存的変化は、特定時間フレームによって形状記憶能力をプログラミングすることができるようにした(
図17c)。
【0238】
温度依存的形状回復効率を調査した結果、温度が融点(Tm)未満であるとき、形状回復率は、30%未満であったが、当該融点でほぼ100%の回復率を示すことを確認した(
図17d)。
【0239】
実験例4.血管吻合用部材の特性
4-1.血管吻合用部材の特性
実施例3で製造した血管吻合用部材をモールドから分離した。
【0240】
前記血管吻合用部材の融点を考慮して35~40℃の温度の水に沈殿させて変形された血管吻合用部材の内径を測定した。
【0241】
その結果、35~40℃の温度で内径が4mmであり、血管の厚さは、100μmであった。内径が4mmの血管に適用できるものと判断した。
【0242】
4-2.血管吻合用部材の引張強度測定
万能物性測定機(Universal Testing Machine、3366、Instron)を利用して4-1の血管吻合用部材の引張強度を測定した。具体的に、血管吻合用部材の断面積を測定した後、ロードセルに連結されたジグに装着し、20mm/minの速度で引っ張って、破損するときの最大引張強度と変形率を測定した。測定された最大引張強度を単位面積当たり強度で計算した最大引張応力で比較を進めた。その結果、血管吻合用部材の引張強度は、0.03-150N/mm2で示し、変形率は、2-350%まで変化した。
【0243】
4-3.血管吻合用部材の厚さによる流体の流れ測定
実施例3と同じ方法で血管吻合用部材を製造し、これを血管に適用したとき、流体の渦流発生の有無を測定するために血管をモデリングし、血管内の流体の流れをシミュレーションした。
【0244】
流体の流れをシミュレーションするための装置は、ANSYSプログラムを使用し、前記プログラム内にFluentモジュールを使用した。そして、適用される血管の外径は、2.0mmに設定し、内径は、1.8mmに設定した。また、対象血管に適用される血管吻合用部材は、長さ5mm、外径1.8mmになるように設定した。一方、血管吻合用部材の断面厚さは、100、200および300μmに設定した。
【0245】
流体の流れをシミュレーションするための血管は、
図18に示した(
図18(a)血管吻合用部材が適用された血管、(b)血管吻合用部材の断面図)。
【0246】
シミュレーションシステムにおいて流量は、300~700ml/minに設定し、血管吻合用部材の断面厚さによる流線(streamline)を測定して
図19と
図20に示した。
図19(a)は、血管吻合用部材の断面厚さによる流線を示し、
図19(b)は、流体の速度および血管吻合用部材の断面厚さに対するグラフにおいて渦流形成有無を示すグラフである。
【0247】
また、
図20は、血管吻合用部材の断面厚さによる流線を示す図である。
【0248】
図19~
図20を参照すると、血管と血管吻合用部材の段差に起因して前記血管と血管吻合用部材が結合される部分に渦流が形成されることを確認することができる。具体的に、100、200および300μmの厚さに渦流生成をモデリングしたとき、300μmでは、渦流が強く生成され、200μmから顕著に減少して、100μmでは殆どないことが測定された。
【0249】
特に、血管吻合用部材の断面厚さが100μmであるときも、渦流が発生するが、流体の流れには影響を与えないと見られる。すなわち、前記血管吻合用部材の内径と血管の内径の段差が200μm未満に設定する場合、血液の流れが円滑であると判断することができた。
【0250】
実験例5.形状記憶高分子の特性
5-1.形状記憶高分子の濃度による特性分析測定
実施例1-2で合成した94%PCL-co-6%PGMA高分子の濃度を異ならせて架橋度および融点の変化を測定した。
【0251】
具体的に、下記のような方法で測定した。
【0252】
-架橋度(%)
合成された高分子の構成成分(PCLとPGMAの水素原子個数比を通したPCLとPGMAの反復単位比)を1H NMR(nuclear magnetic resonance)を利用して測定した。
【0253】
-融点(℃)
高分子の融点を分析するために、示差走査熱量測定法(DSC,Differential scanning calorimetry)を利用して測定した。
【0254】
【0255】
その結果、表12のように、溶媒を基準として溶解する形状記憶高分子の濃度によって架橋度および融点が変わることを確認することができる。すなわち、溶媒に溶解する形状記憶高分子の濃度%を調節すると、架橋度および融点(形状復元温度)も調節が可能であることを確認することができた。追加で、前記94%PCL-6%PGMA高分子の濃度を異ならせて変形率による粘度およびせん断粘度をテストした結果、高分子濃度が100%(w/v)である場合には、テスト濃度のうち変形率を50%に増加させるとき、応力が約2MPaに増加し、これは、実際血管の挙動と一致することを確認した。高分子濃度が200%(w/v)である場合には、血管に損傷を与えることができる4MPaまで応力が増加することを確認した。高分子濃度が50%(w/v)である場合には、不十分な濃度によって架橋度が減少し、高分子間の結合が緩いため、5%変形率で裂けた(
図16f)。
【0256】
5-2.形状記憶高分子の接触角測定
比較例1(PCL)の高分子と形状記憶高分子(96%PCL-co-4%PGMA高分子、94%PCL-co-6%PGMA高分子、92%PCL-co-8%PGMA高分子)の表面の上に蒸留水一滴(10μg)を落とし、接触角を分析するために撮影をした後、その結果を
図21に示した。
【0257】
そして、比較例1の形状記憶高分子を実施例2と同じ方法でUV架橋をした後、上述したような方法で接触角を分析した。
【0258】
図21を参照すると、架橋前や架橋後に生分解性挿入物質として多く使用される高分子と代表されるPCLに比べて親油性(hydrophobicity)性質が組成ごとに大きく差異がないことを示す。
【0259】
実験例6.形状記憶高分子移植材の形態による血管吻合用途への適合性評価
6-1.血液の逆流および乱れた流れを最小化するための形状記憶高分子血管部材吻合用部材形態選別シミュレーション
流動場は、CAD(SolidWorks Co.)を使用して3個の移植部材形態(すなわち、直接階段型(direct stepped)、チャンファ型(chamfer)および拡散型(diffuser))に対して設計された。各流動場の数値シミュレーションは、Fluent(Ansys,Inc.)CFDソルバーを使用して行われた。流体要素内で質量と運動量の保存を制御する非線形Navier-Stokes方程式が求められた。ニュートン流体は、体温で血液の特性を有していると仮定した。非すべり境界条件(no-slip boundary condition)は、すべての血管壁に適用された。メッシュ独立性は、高密度メッシュを検査して検証された。SIMPLEアルゴリズムは、圧力-速度結合のために具現され、すべての空間離散化は、2次上向き式方式を使用して行われた。チューブ型移植材内部流体の特性に密度(1,060kg・m-3)および温度(310K)を適用した。流量入力条件に大動脈での脈動速度プロファイルを考慮した。このプロファイルは、動脈で血流を模倣するために縮小され、最大速度は、45.0cm・s-1に設定した。移植材の直径は、200μmであり、最大速度に基づくレイノルズ数(Reynolds number)は、318であり、これは、ラミナ領域(laminar regime)を示した。したがって、Fluentのラミナモデルが、このシミュレーションに使用された。シミュレーション分析のためにTecplot 360(Tecplot,Inc.)post-processing programを使用して収縮期および弛緩期ピークを生成した。
【0260】
CFDシミュレーション結果を検証するために3つの異なる類型(線形、直接階段型および拡散型)の微細流体装置を3Dプリンティングを用いて製作した。微細流体流動パターンは、赤色蛍光球を灌流させることによって決定された(直径=4μm、流速=10ml・min-1、Invitrogen)。流動中に細胞整列を評価するために、フィブロネクチンコーティング後に装置内でヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を24時間の間培養した(1μg・ml-1)。次に、培養培地を10ml・min-1の流速で48時間の間灌流させた。次に、HUVECをTRITC-標識されたファロイジン(Molecular Probes)で染色して、フィラメント性アクチン構造を視覚化した。微細粒子の流れの方向とHUVEC整列は、ImageJソフトウェア(National Institutes of Health)のoval profile plugin(William O’Connnellにより設計される)を使用してFFT分析を通じて分析された。すべてのFFT結果を標準化してORIGIN 8.0(登録商標)ソフトウェア(OriginLab Corporation)を使用して各微細流体装置から得られたデータセットを比較した。
【0261】
その結果、収縮期ピークでZ速度の分析を通じて直接階段型モデルは、階段位置で逆流とともに出口位置の周囲で乱流(Disturbed flow)が生成されることを確認した。チャンファ型モデルで前記乱流は多少減少したが、排出される出口血管壁の周囲で逆流停滞が依然として観察された。他方で、拡散型モデルでは、乱流が観察されなかった(
図22cおよび
図22e)。反対に、弛緩期ピークで同じ速度分析をした結果、直接階段型は、入口血管壁で乱流が生成された。この乱流は、チャンファ型モデルでは観察されなかった。逆流に起因して減少した乱流が拡散型モデルの入口血管壁に現れた(
図22dおよび
図22e)。しかしながら、このような入口血管壁に現れる流れパターンは、生体内冠状動脈では存在しない。確認された結果を通じて血管移植材の構造体として拡散型モデルを選択する場合、乱流を最小化することができることを確認した。
【0262】
追加で、3Dプリンティングで製造された3つの形態(線形、直接階段型および拡散型)の微細流体装置を使用して蛍光粒子の流れおよび血管内皮細胞(EC)整列分析を行った結果、拡散型モデルで乱流が最小化されることを確認した(
図22f)。これは、粒子移動方向とHUVECの整列方向が拡散型モデルの流れ方向と最も一致し(角度=0°)、この結果は、FFT分析によっても裏付けられた。このような結果は、狭窄症を最小化するためにも、拡散型モデルが適切であることを示す(
図22gおよび
図22h)。
【0263】
実験例7.形状記憶高分子部材の血管吻合用途へのIn vivo適合性評価
7-1.形状記憶高分子の血管吻合部材としての生体適合性評価
HUVECを94%PCL-6%PGMAフィルム上で24時間の間培養した。次に、生/死染色(生細胞:緑色;死んだ細胞:赤色)を利用して細胞生存力を評価した。HUVECの接着力(6時間)および増殖率(3日)を細胞計数キット-8を使用して決定した。各時点の相対細胞増殖は、相当する第1日値と比較して細胞生存率(%)を計算して示した。
【0264】
具体的に、HUVECの接着力評価は、Kwon,H.J.et al.Acta Biomater.61,169-179(2017)に記述された方法によって行われた。
【0265】
前記移植部材上での血液凝固防止のために、94%PCL-6%PGMAフィルムは、NO-放出ペプチド両親媒性物質(PA)でコーティングした。前記NO-放出PAは、Alexander,G.C.et al.ACS Biomater.Sci.Eng.4,107-115(2017)によって合成した。
【0266】
その結果、
図24aおよび
図24bに示されたように、94%PCL-6%PGMAフィルム上でHUVEC生存率は、TCP(tissue culture plastic)と比較して類似した水準であることが確認された。そして、細胞接着力は、TCPと比較して半分程度の接着力を有することが示された(
図24c)。また、94%PCL-6%PGMAフィルム上でHUVECの細胞増殖率もTCPと比較して優れていることが確認された(
図24d)。NO-放出PAでコーティングされた94%PCL-6%PGMAとそうでない場合において、細胞増殖率と細胞接着力を比較した結果(
図24d)、NO-放出PAでコーティングされた94%PCL-6%PGMAの細胞増殖率に優れ、細胞接着力は相対的に低いことが確認された(
図24eおよびf)。前記結果を総合すると、NO-放出PAでコーティングされた94%PCL-6%PGMAは、生体に適用するのに適合した材料であることを確認することができた。
【0267】
7-2.形状記憶高分子の血管吻合部材の動物移植評価
実施例3の方法で拡散型および直接階段型の移植材をオーダーメード型ガラスモールドでUV硬化を通じて製作した。延世大学校医科大学の承認されたIACUC(No.2017-0058)によって体重が30~40kgの雌ヨークシャー豚を手術手続きに使用した。それぞれの豚にアトロピン(0.04mg・kg-1)、ザイラジン(2mg・kg-1)およびアザペロン(2mg・kg-1)を筋肉内注射した。その後、Aalfaxan(登録商標)(1mg・kg-1)で麻酔を誘導し、手術中に2%イソフルランを器官内挿管して維持した。すべての動物を手術手続き全般にわたって喚起させ、モニタリングした。大腿動脈の近位および原位部分を一時的に固定し、各テスト移植材を横切開を通じて大腿動脈に挿入した後、6-0プロリーン縫合糸(Ethicon Inc.)で縫い合わせて吻合した。手術後18日目に、pulsed-wave Doppler ultrasonography(S22V、SonoScape Medical Co.)および血管造影術(C-arm radiograph system、OEC Series 9600、GE Healthcare)を使用して血流開放を視覚化した。血管造影術のために、腹部大動脈に4-Fr vascular sheath(Supersheath、Medikit Co.Ltd.)を挿入した後、非イオン性コントラスト(Omnipaque 300、Nycomed、Inc)を注射した。その後、豚を殺し、大腿部動脈を回収して組織学的分析を行った。
【0268】
組織学的分析は、収穫された大腿部動脈を10%ホルマリンで固定し、パラフィンワックスに埋め込め、厚さが4μmのスライスに切断した後、H&Eで染色した。開通性構造的因子の定量的分析のために、組織切片は、Movat pentachrome staining(Russell-Movat Pentachrome Stain Kit,American MasterTech)を実施した。
【0269】
EC機能障害および炎症活性化分析は、COX-2、VCAM-1およびvWFを免疫染色して測定した。組織セクションをキシレンで脱パラフィン化し、DPBS中0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)溶液で10分間室温(~25℃)で再水和させた。組織セクションをクエン酸緩衝剤(10mmol、pH6.0)とともに95℃で40分間インキュベーションすることによって、熱媒介抗原検索を行った。前記セクションを室温(~25℃)で1時間の間5%(w/v)BSA溶液で遮断した後、10分間0.5%Triton X-100を吸収させた。次に、組織セクションを4℃で一晩中COX-2、VCAM-1およびvWFのそれぞれの1次抗体とともにインキュベーションした後、2次抗体としてAlexa FluorTM 594-接合ヤギ抗マウスIgGと反応させた(1:500希釈、Invitrogen)。1次抗体(1:100希釈、Invitrogen)は、マウス抗COX-2単一クローン抗体、マウス抗VCAM-1単一クローン抗体およびマウス抗vWF単一クローン抗体を含む。抗SMAポリクロナル抗体(1:100希釈、Abcam)でα-SMAを染色した後、Alexa FluorTM 488-接合ヤギ抗ウサギIgG(1:500希釈、Invitrogen)とともに培養することによって、平滑筋細胞を確認した。核を4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で対照染色した後、共焦点イメージング(LSM700)でImageJ分析を行った。
【0270】
ドップラー超音波イメージ上で直接階段式モデルで血流開放は観察されなかった。他方で、移植後に1日から18日まで拡散型モデルでは最大血流開放が維持された(
図24a)。このような事実は、正常な大腿部動脈および直接階段型モデルと比較してさらに高い流速を示すことが裏付けられた(
図24b)。血管造影術の結果でも、直接階段型の血流開通は殆どないのに対し、拡散型モデルには、正常脈動血流を明確に確認することができた(
図24c)。このような結果は、直接階段型モデルでは、大腿動脈の近位および原位地点で血栓症および炎症反応を通じて狭窄病変の閉鎖性形成に起因したことを予想した(
図24dおよび24e)。
【0271】
これら病理学的反応は、炎症反応(COX-2(cyclooxygenase-2)およびVCAM-1(vascular cell adhesion protein-1))、EC血栓症(vWF(Willebrand factor))および平滑筋細胞の位置(SMA(smooth muscle actin))と関連したタンパク質マーカー発現様相で正常血管と類似組織学的特徴を示す拡散型移植材とは対照的に直接階段型移植材の場合において発現が大きく増加することを確認することによって前記予想を立証した(
図24f)。
【符号の説明】
【0272】
10 血管の損傷した部位
11 血管、第1血管
12 第2血管
13 血管穿孔
100 血管吻合用部材
101 穿孔
110 固定突起
200 分岐管
201 内径
210 ガイド突起