(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230523BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20230523BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230523BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20230523BHJP
C09D 161/28 20060101ALI20230523BHJP
C09D 171/00 20060101ALI20230523BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/00 101
B32B27/00 103
B32B27/42 102
B32B3/30
C08J7/04 Z CFD
C09D161/28
C09D171/00
C09D183/04
(21)【出願番号】P 2021570451
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(86)【国際出願番号】 KR2020007091
(87)【国際公開番号】W WO2020242276
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0063572
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501380081
【氏名又は名称】東レ先端素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA, INC.
【住所又は居所原語表記】93-1, Imsu-dong, Gumi-si, Gyeongsangbuk-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】シン, ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ミン ウ
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078161(JP,A)
【文献】特開2019-166706(JP,A)
【文献】特開2009-143091(JP,A)
【文献】特開2017-144636(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0022141(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0096963(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 7/04-7/06
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一面に形成された離型層とを含み、
前記離型層は、メラミン樹脂、ポリジメチルシロキサンとポリエーテル共重合体樹脂及びポリエチレングリコールを含む離型コーティング組成物から形成された、離型フィルム
であって、
前記離型層はメラミン樹脂、ポリジメチルシロキサンとポリエーテル共重合体樹脂及びポリエチレングリコールを重量比1.0:0.01~0.10:0.1~1.0で含み、
前記基材の両面の十点平均粗さ(SRz)は500nm以下であり、且つ
前記離型フィルムは、下記数式1を満たし、
[数式1]
0.25<(F_SRz/B_SRz)<0.90
であり、式中、F_SRzは、離型層表面の十点平均粗さで、B_SRzは、離型層と当接しない基材の一面の十点平均粗さである、離型フィルム。
【請求項2】
前記離型コーティング組成物は、酸触媒と有機溶剤をさらに含むものであり、
前記メラミン樹脂100重量部に対して0.1ないし10重量部の酸触媒をさらに含む、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記離型層の乾燥後厚さは、前記基材の
両面の十点平均粗さ(SRz)の0.5ないし3.0倍である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記メラミン樹脂は、二つ以上のアルコキシまたはアルコキシアルキル基を有するメラミン樹脂を含む、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記メラミン樹脂は、メトキシ基、メトキシメチル基及びブトキシメチル基のうち、少なくとも二つ以上の官能基を有する、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記ポリエーテルは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールのうち、少なくとも一つを含む、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記ポリジメチルシロキサンとポリエーテル共重合体樹脂は、両末端にヒドロキシ
基が結合されている、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項8】
前記離型フィルムの残留接着率は、90%以上である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項9】
前記離型フィルムは、常温カール(Curl)発生量が0ないし1mmである、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項10】
前記離型フィルムは、高温カール(curl)発生量が0ないし1mmである、請求項1に記載の離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムに関し、さらに詳細にはブロッキング及びカール現象から自由になり、表面粗さが低いからMLCC製造工程に適しており、高いコーティング厚にもかかわらずカールが発生しないから、MLCC製造工程に適用する際にセラミックシートの浮き及び積層不良を防止して、MLCCの生産費用と不良率の減少に寄与できる離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、離型フィルムは、通常粘着剤皮膜が付着されて粘着成分を大気中の異物または願わない被着剤から保護するための保護フィルムであって、基材フィルムの一面に高分子シリコンを主成分とする離型層を具備する。
【0003】
離型フィルムのさらに他の特殊な用途には、積層セラミックキャパシタ(以下、MLCC)製造工程用がある。MLCCは、薄膜のセラミックシートと金属電極を数百層積層することによって製造され、このとき、薄膜のセラミックシートを製造するためのキャリヤフィルムとして離型フィルムが使用される。すなわち、離型フィルム上にセラミックスラリーをコーティングした後乾燥されたセラミックスラリーを離型フィルムから剥離することによって、薄膜のセラミックシートを得ることである。このようなMLCC工程に適用される離型フィルムの場合、離型フィルム上の突起または凹凸がセラミックシートのピンホール(Pin hole)不良を引き起こすので、離型フィルムの表面粗さを表す表面粗さが最も重要な特性である。そのため、当業界においては表面粗さを低くするための努力をし続けている。
【0004】
当業界の一般的な離型フィルムは、基材として使用されるポリエステルフィルムの表面粗さが20ないし50nmであることに対し、離型層のコーティング厚が100nm水準で薄いので、離型フィルムの表面粗さは、通常の基材の表面粗さにより決定される。したがって、離型フィルムの表面粗さを低くするためには、さらに低い表面粗さを有するポリエステルフィルムを製造して基材として使用する方法が普遍的である。しかしながらポリエステルフィルム製造工程上、表面粗さを低くするのには特殊な粒子を必要とし、フィルムの収率及び生産性もまた落ちるので、このようなフィルムを基材として適用することは必然的に離型フィルムの製造費用の上昇を引き起こす。
【0005】
このため、離型フィルムの表面粗さを低くするために、基材の表面粗さに比べて離型層のコーティング厚を十分に厚くコーティングする方法を当業界の従事者であれば容易に考え出すことができるが、通常の離型層は、高分子シリコンを主成分としているから、一定水準のコーティング厚(約200nm)を超えるようになると、高分子シリコンの低い粘弾性により離型層が粘着性を帯びるいわゆるブロッキング現象が発生して、巻取工程(フィルムをロール形態で巻く工程)が不可能になる。
【0006】
このようなブロッキング現象を引き起こさなくかつさらに低い表面粗さを有する離型フィルムを得るための方法として基材上に別途の平滑化層をコーティングし、平滑化層上に再度離型層をコーティングする方法が提案されたことがある(韓国公開特許第10-2016-0127036号)。このような多層コーティングにおいて平滑化層が十分に緻密な組織を有する場合、コーティング層の粘性が低いのでブロッキングを引き起こさなくても表面粗さを低くすることができるという長所がある。しかしながら、このような方法は、別途のコーティング工程を要するので、工程費用が上昇し収率が落ちるという短所がある。
【0007】
また、断層のコーティング工程で上記の目的を達成するための方法には、ブロッキングを引き起こさない緻密な構造を有するメラミン樹脂と離型性調節に容易なポリオルガノシロキサン樹脂を混合して離型層を構成する方法が提案されたことがある(韓国公開特許第10-2018-0020945号)。しかしながら、このような離型フィルムは、メラミン樹脂の熱収縮によって離型フィルムがコーティング層側に曲がるいわゆるカール(curl)現象が発生し、特に高温、長時間加熱時にカール現象が目立つ問題があり、離型フィルムにおいてカールが発生する場合、離型フィルムにセラミックシートを成形及び積層する工程においてセラミックシートの積層不良や浮き現象が発生する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決し従来の要求事項に応えるために案出されたものであって、本発明の目的は、離型性と基材の表面粗さを低くする効果を共に有する離型層を具備することによって、従来に比べて表面粗さが低い離型フィルムを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、常温及び高温においてカールが発生しないからMLCCに適用する際にセラミックシートの積層不良及び浮きを防止できる離型フィルムを提供することにある。
【0010】
本発明の前記及び他の目的と利点は、好ましい実施例を説明した下記の説明からより明らかになるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、基材と、基材の一面に形成された離型層とを含み、離型層は、メラミン樹脂、ポリジメチルシロキサンとポリエーテル共重合体樹脂及びポリエチレングリコールを含む離型コーティング組成物から形成された、離型フィルムにより達成される。
【0012】
ここで、離型層は、メラミン樹脂、ポリジメチルシロキサンとポリエーテル共重合体樹脂及びポリエチレングリコールの重量比が1.0:0.01~0.10:0.1~1.0であることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、離型コーティング組成物は、酸触媒と有機溶剤をさらに含むものであり、メラミン樹脂100重量部に対して0.1ないし10重量部の酸触媒をさらに含むことを特徴とする。
【0014】
好ましくは、基材の十点平均粗さ(SRz)は500nm以下であることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、離型層の乾燥後厚さは、基材の十点平均粗さ(SRz)の0.5ないし3.0倍であることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、メラミン樹脂は、二つ以上のアルコキシまたはアルコキシアルキル基を有するメラミン樹脂を含むことを特徴とする。
【0017】
好ましくは、メラミン樹脂は、メトキシ基、メトキシメチル基及びブトキシメチル基のうち、少なくとも二つ以上の官能基を有することを特徴とする。
【0018】
好ましくは、ポリエーテルは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールのうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0019】
好ましくは、ポリジメチルシロキサンとポリエーテル共重合体樹脂は、両末端にヒドロキシギが結合されていることを特徴とする。
【0020】
好ましくは、離型フィルムの残留接着率は、90%以上であることを特徴とする。
【0021】
好ましくは、離型フィルムは、常温カール(Curl)発生量が0ないし1mmであることを特徴とする。
【0022】
好ましくは、離型フィルムは、高温カール(curl)発生量が0ないし1mmであることを特徴とする。
【0023】
好ましくは、離型フィルムは、下記数式1を満たし、
[数式1]
0.25<(F_SRz/B_SRz)<0.90
であり、式中、F_SRzは、離型層表面の十点平均粗さで、B_SRzは、離型層と当接しない基材の一面の十点平均粗さであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基材に比べて低い離型層表面粗さを有する離型フィルムを一回のコーティング工程だけで得ることができ、従来に比べてブロッキング及びカール現象から自由ななどの効果がある。
【0025】
なお、本発明は、高いコーティング厚の離型層を有することによって、従来にくらべて表面粗さが低くてMLCC製造工程に適し、より低い厚さのセラミックシート製造に使用されうるなどの効果がある。
【0026】
なお、本発明は、特殊な樹脂配合比を有することによって、高いコーティング厚にもかかわらずカールが発生しないから、MLCC製造工程に適用する際、セラミックシートの浮き及び積層不良を防止して、MLCCの生産費用と不良率の減少に寄与できる等の効果がある。
【0027】
ただし、本発明の効果らは、以上で言及した効果に制限されず、言及していないさらに他の効果らは、以下の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって明確に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施例による離型フィルムの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例と図面を参照して、本発明を詳細に説明する。これらの実施例は、ただ本発明をより具体的に説明するために例示的に提示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であるはずである。
【0030】
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の熟練者により通常に理解されることと同じ意味を有する。相反する場合、定義を含む本明細書が優先するはずである。また、本明細書において説明されることと類似または同等な方法及び材料が本発明の実施または試験に使用されうるが、適合した方法及び材料が本明細書に記載される。
【0031】
本明細書に使用されたように、「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「備える(include)」、「備えている(including)」、「含有している(containing)」、「~を特徴とする(characterized by)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語またはこれらの任意のその他変形は、排他的でないを含みをカバーしようとする。例えば、要素らの目録を含む工程、方法、用品、または器具は必ずそういう要素だけに制限されず、明確に列挙されないか、またはそういう工程、方法、用品、または器具に内在的な他の要素を含むこともできる。また、明確に反対に述べられない限り、「または」は、包括的な「または」のことを意味し、排他的な「または」を意味することではない。
【0032】
本発明を説明し/するか、または請求するにおいて、用語「共重合体」は、二つ以上の単量体の共重合により形成された重合体を言及するために使用される。そういう共重合体は、二元共重合体、三元共重合体またはさらに高次の共重合体を含む。
まず、本発明の好ましい実施例による離型フィルムの断面模式図である
図1を参考にして、本発明の一様相による離型フィルムについて詳細に説明する。
【0033】
図1を参考にすれば、本発明の一実施例による離型フィルムは、基材と基材の一面に形成された離型層20とを含み、基材の一面に離型コーティング組成物をコーティングした後に加熱乾燥及び硬化させることによって、離型層を形成できる。
【0034】
一実施例において、基材10は、ポリエステルフィルムとして常用のポリエステルフィルムであれば、どれを使用しても構わなく、厚さ20ないし100μmの二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが使用されることができる。
【0035】
基材であるポリエステルフィルムの表面粗さは、接触式3次元粗さ測定器により測定される十点平均粗さであるSRzが500nm以下であることが好ましい。SRzが500nmを超過する場合、本発明において提案する離型層を具備しても離型フィルムの表面粗さが高いから、MLCC工程に使用する際、セラミックシートのピンホール不良を引き起こすことができる。また、表面粗さを低くするためには、より高いコーティング厚を有する離型層を必要とするので、経済性が落ちるという問題点がある。
【0036】
一実施例において離型層20を構成する離型コーティング組成物は、メラミン樹脂、ポリジメチルシロキサンとポリエーテルの共重合体樹脂及びポリエチレングリコールを含むことができる。
【0037】
離型コーティング組成物のうち、メラミン樹脂は、離型層の主成分であり離型層に高い弾性係数を有するようにすることによって、離型フィルムのブロッキング現象を抑制し、巻取工程が円滑になされるようにする。
【0038】
このようなメラミン樹脂は、二つ以上のアルコキシまたはアルコキシアルキル基を有するメラミン樹脂を含むことが好ましい。メラミン樹脂においてアルコキシまたはアルコキシアルキル基の数が一つあるいはない場合、樹脂の硬化がなされないから、離型層を構成することができない。さらに好ましくは、メトキシ基、メトキシメチル基及びブトキシメチル基のうち、二つ以上を含むことが好ましい。ブトキシメチル基より長い鎖のアルコキシアルキル基を有するメラミンの場合、メラミン樹脂の硬化に高い熱量を必要とするので、硬化工程のうち、基材がシワなどの熱変形が発生する問題がある。
【0039】
離型コーティング組成物のうち、ポリジメチルシロキサンとポリエーテル共重合体樹脂は、離型フィルムが優れた剥離性を有するようにし、主成分であるメラミン樹脂と固く結合して優れた耐久性を有する機能する。
【0040】
このようなポリジメチルシロキサンとポリエーテル共重合体樹脂は、メラミン樹脂と結合のために、両末端にヒドロキシ基を有することが好ましい。共重合体骨格のうち、ポリエーテル単位は、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールのうち、少なくとも一つを含むことが好ましい。共重合体を構成するポリエーテル樹脂の鎖長がポリプロピレングリコールより長い場合、メラミン樹脂との相溶性が落ちると共に、硬化に高い熱量を必要とするので、硬化工程のうち、基材がシワなどの熱変形が発生する問題がある。
【0041】
離型コーティング組成物のうち、ポリエチレングリコールは、本発明の最も大きな技術的特徴として、これを添加することで離型層の熱収縮が顕著に減るようにし、高温で長時間の熱処理にもカールが発生しない離型フィルムを製造できる。
【0042】
このようなポリエチレングリコールには特別な制約はないが、比較的粘度が低く反応が速く経済性がある分子量400内外のヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールを使用することが好ましい。
【0043】
一実施例において、メラミン樹脂、ポリジメチルシロキサンとポリエーテルの共重合体樹脂及びポリエチレングリコールの含有量比(重量比)は、1.0:0.01~0.10:0.1~1.0であることが好ましい。
【0044】
ポリジメチルシロキサンとポリエーテル共重合体樹脂の含有量が上記の好ましい範囲未満であると、離型フィルムの離型性が不足してセラミックシート剥離が円滑でないという問題があり、上記の好ましい範囲を超過する場合、離型フィルム使用中、離型層を構成する樹脂のうち、一部がセラミックシートに転写されるという問題がある。
【0045】
また、ポリエチレングリコールの含有量が上記の好ましい範囲未満である場合、離型層の熱収縮を緩和する作用が不足して、常温及び高温でカールが発生する問題があり、上記の好ましい範囲を超過する場合、離型層の硬化度が不足になるか、または弾性が不足して、離型フィルム巻取工程のうち、ブロッキングが発生するようになる。
【0046】
一実施例において離型層を構成する離型コーティング組成物は、上記の成分の他に酸触媒を含むことができる。
【0047】
酸触媒は、特に制約はなく、メラミン樹脂との相溶性が良く硬化を促進できるパラトルエンスルホン酸のような常用の製品を使用することができる。酸触媒は、メラミン樹脂100重量部に対して0.1ないし10重量部を含有することが好ましい。酸触媒の含有量が0.1重量部未満の場合、離型層の硬化に高い熱量を必要とするので、硬化工程基材の熱変形を引き起こすことができ、10重量部を超過する場合、離型コーティング組成物のポットライフ(potlife)が短くて、コーティング前に硬化が起きるという問題がある。
【0048】
一実施例において離型層を構成する離型コーティング組成物は、上記の成分の他に有機溶剤を含むことができる。
【0049】
有機溶剤は、メラミン樹脂と相溶性があるものであれば、どれでも構わなく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチルアセテート、ブチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンの中で一つまたは二つ以上を混合して使用することができる。
【0050】
一実施例において、離型コーティング組成物は、コーティング工程に適合するように全体固形分及び粘度を適当に調節して構成し、グラビアコーティングを活用する場合、1~10%の固形分及び50cps以下の粘度を有することが好ましい。
【0051】
また、離型コーティング組成物をコーティングする方法には特別な制限がなく、バーコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、コンマコーティングなどを活用できる。
【0052】
離型コーティング組成物のコーティング後、乾燥及び硬化のためには熱風乾燥器を適用することが好ましく、140℃の温度で30秒間加熱することで、硬化された離型フィルムを得ることができる。
【0053】
また、乾燥及び硬化が完了した後の離型層の厚さは、基材の十点平均粗さ(SRz)の0.5ないし3.0倍であることが好ましい。このような厚さの離型層は、基材の突出部を覆って平坦な表層を有するようになることによって、従来の離型フィルムに比べて離型層の表面粗さが低く形成される。乾燥後に離型層の厚さは、離型フィルムを製造した後に断面を走査電子顕微鏡で観察して測定されたコーティング厚である。
【0054】
離型層の厚さが上記の好ましい範囲未満である場合、離型コーティングによる表面粗さ減少効果が微々たるものであるから、使用時にセラミックシートのピンホール不良を引き起こすようになり、離型層の厚さが上記の好ましい範囲を超過する場合、離型フィルム巻取工程においてブロッキングが発生するようになる。
【0055】
また、離型層表面の十点平均粗さ(F_SRz)は、基材の離型コーティング層の反対側表面の十点平均粗さ(B_SRz)との関係が下記の数式1を充たすことが好ましい。
[数式1]
0.25<(F_SRz/B_SRz)<0.90
【0056】
一実施例において、離型フィルムの残留接着率は、90%以上であることが好ましく、離型フィルムの残留接着率が90%未満であると、離型フィルム使用中に離型コーティング層の一部成分がセラミックシートに転写されることによって、MLCCのショット不良を引き起こすことができる。
【0057】
一実施例において、離型フィルムは、常温カール(Curl)発生量が0ないし1mmであり、高温カール(curl)発生量が0ないし1mmであることが好ましい。離型フィルムにおいてカールが発生量が上記の範囲より超過する場合、離型フィルムにセラミックシートを成形及び積層する工程においてセラミックシートの積層不良または浮き現象が発生する問題がある。
【0058】
よって、本発明によれば、離型層が基材の表面粗さを緩和する機能を有することによって、従来に比べて表面粗さが低い離型フィルムを提供でき、また離型層の熱収縮が少なくて高温で加熱する際にもカール(curl)が発生しない離型フィルムを提供できる。
【0059】
特に、本発明による離型フィルムは、積層セラミックキャパシタ(MLCC)製造工程中にセラミックシート成形のためのキャリヤフィルム用途に適合でき、ピンホール及び蛇行などの工程不良を改善するのに寄与でき、より低い厚さのセラミックシートの生産を可能にすることによって、MLCCの物性向上に大きく寄与できる。
【0060】
以下、実施例と比較例にて本発明をさらに詳細に説明しようとする。本実施例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例により限定されるものではない。
【0061】
[実施例1~9及び比較例1~7]
1.基材フィルム
基材フィルムとして十点平均粗さ(SRz)がそれぞれ130nm、400nm、900nmであるポリエチレンテレフタレートフィルム(製造社:東レ先端素材、製品名:EXCEL)を使用し、表1のように各々の実施例及び比較例に区分して適用した。そして基材フィルムの両面の表面粗さは同一である。
【0062】
2.離型コーティング組成物
(a)メラミン樹脂としてメトキシ基及びメトキシメチル官能基を有するメラミン樹脂(製造社:Cytec、製品名:Cymel-325)
(b)ポリジメチルシロキサンとポリエーテル共重合体樹脂として両末端にヒドロキシ基を有し、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの繰り返し単位を有する共重合体樹脂(製造社:DOW、製品名:OFX-3667)
(c)両末端にヒドロキシ基を有する分子量400のポリエチレングリコール樹脂(製造社:Sigma Aldrich、製品名:PEG-400)
(d)40重量%のパラトルエンスルホン酸と残量の有機溶剤で構成された酸触媒(製造社:Allnex、製品名:Cycat-4040)
(e)メチルエチルケトンとシクロヘキサノンを1:1で混合した有機溶剤
上記の(a)ないし(e)成分を下記の表1の実施例及び比較例のように各々重量比で混合することで離型コーティング組成物を製造した。
【0063】
3.離型コーティング及び硬化
上記で製造された離型コーティング組成物を基材フィルムの一面にマイヤーバー(cheminstruments社製、#5mesh)でコーティングした後、熱風乾燥器を利用して150℃の条件で30秒間加熱硬化させることによって、実施例1~9及び比較例1~7の乾燥後離型層厚を有する離型フィルムをそれぞれ製造した。
【0064】
【0065】
前記実施例1ないし9及び比較例1ないし7による離型フィルムを使用して、次のような実験例を通じて物性を測定し、その結果を次び表2に表した。
【0066】
[実験例]
1.表面粗さ測定
実施例及び比較例において製造された離型フィルムから接触式3次元表面粗さ測定器(KOSAKA社SE3300製品、カットオフ0.25)を使用して十点平均粗さであるSRzを測定した。離型層表面(F_SRz)及び離型層反対面(B_SRz)を各々測定して比較した。
【0067】
2.ブロッキング性評価
実施例及び比較例において製造された各々の離型フィルムを各々の基材フィルムに離型層が基材フィルム面と接するように重なっておいた後、100gf/cm2の荷重下で24時間放置した後のブロッキング現象の有無を評価した。重なった離型フィルムを蛍光灯下で肉眼で観察してブロッキングによる跡が観察されない場合は、‘良好’、ブロッキング跡が観察される場合は、‘不良’と判定した。
【0068】
3.セラミックシートのピンホール不良評価及び剥離力測定
平均粒径0.2μmのチタン酸バリウム粒子100g、ポリビニルブチラル10g、トルエン8g及びブタノール2gを混合した後、常温で12時間撹拌した後、500rpmで24時間ボールミル処理してセラミックスラリーを製造する。これを実施例及び比較例による離型フィルムの離型層にアプリケータを利用して一定厚でコーティングした後、80℃温度で5分間熱風乾燥することによって、平均厚1μmの離型フィルムを製造した。以後、干渉計顕微鏡で1mm2の面積を10回観測し、1μmを超過するピンホールの数が単位面積(mm2)当たりの平均1個以上であると、‘不良’と判定し、それ以外には‘良好’と判定した。
また、粘着テープ(製造社:Nitto、製品名:31B)をセラミックシート面に付け、これを180゜角度、10mpm速度で剥離させる時の剥離力を測定した。剥離力の測定にはcheminstrument社のAR-1000機器を使用した。
【0069】
4.カール(常温)測定
実施例及び比較例による離型フィルムをした一辺の長さが10センチメトールである正四角形で裁断した後、平らなガラス板上に離型層が上にくるように置き、カールを測定した。ガラス板から最も高く上がってきた部分の高さを尺で測定した後表記した。
【0070】
5.カール(高温)測定
実施例及び比較例による離型フィルムを熱風乾燥器を利用して150℃温度で30分間加熱した後、常温カールと同じ方法でカールを測定した。
【0071】
6.残留接着率測定
(1)サンプル剥離力測定
実施例及び比較例による離型フィルムに標準粘着テープ(TESA7475)を2kgローラで1回往復してこすって付着した。付着されていたテープを剥離した後、離型コーティングを実施しない基材フィルムに付着した後、再度剥離する時の剥離力を測定した。
このとき、剥離力は、0.3mpm、180゜角度で剥離時の剥離力を測定し、測定器は、Cheminstrument社のAR-1000製品を使用した。
【0072】
(2)基準剥離力測定
離型コーティングを実施しない基材フィルムに標準粘着テープ(TESA7475)を2kgローラで1回往復してこすって付着した。これを剥離する時の剥離力を測定した。
【0073】
(3)残留接着率測定
[サンプル剥離力]/[基準剥離力]*100%の数式で残留接着率を計算した。
【0074】
【0075】
表2から分かるように、本発明において提供する好ましい構成を有する離型コーティング組成物から製造された実施例1~9による離型フィルムは多様な評価結果において全部良好な特性を見せた。比較的高い厚さの離型コーティングによって離型層表面の十点平均粗さ(F_SRz)が基材表面の十点平均粗さ(B_SRz)に比べて低くなる結果を見せており、これによってセラミックシート製造時にもピンホール不良が発生しないことを確認することができる。また、比較的高い離型層の厚さにもかかわらず、常温及び高温カール発生量が1mm以下に好ましい範囲を有することを確認することができる。
【0076】
また、離型コーティング組成物の構成において(b)ポリジメチルシロキサンとポリエーテル共重合体樹脂の含有量は、残留接着率とセラミックシートの剥離力に影響を及ぼす。MLCC業界において離型フィルムの残留接着率は、通常90%以上であることが好ましく、90%未満の場合、MLCC製造後ショット(short)不良を引き起こすことができることが知られている。また、セラミックシート剥離時の剥離力は通常5gf/inであることが好ましく、これを超過する場合、MLCC製造工程中にセラミックシートを剥離する過程でセラミックシートが一部剥離されずに裂けるか、またはシワが混入される積層不良が引き起こされることができる。本発明において提供する好ましい構成を有する離型コーティング組成物から製造された実施例1~9による離型フィルムは残留接着率及びセラミックシート剥離力において全部好ましい範囲の値を見せることを確認することができる。
【0077】
反面、ポリジメチルシロキサンとポリエーテル共重合体樹脂の含有量が本発明において提供する好ましい範囲未満である比較例1の場合、セラミックシート剥離力が14.1gf/inで極めて高く形成され、好ましい範囲を超過する比較例2の場合、残留接着率が84%で好ましい範囲に達しなかった。
【0078】
また、離型コーティング組成物の構成において(c)ポリエチレングリコールは、常温及び高温カールを低くする作用をするが、本発明において提供する好ましい含有量を有する実施例1~9とは異なり、比較例3の場合、ポリエチレングリコールの含有量が不足して常温及び高温カールがひどく発生することを確認することができる。また、比較例4の場合、ポリエチレングリコールの含有量が(a)メラミン樹脂の含有量に比べて高くて離型層の硬化が十分に起こらないから、残留接着率が好ましい範囲に達しない結果を見せる。
【0079】
また、基材フィルムの十点平均表面粗さ(B_SRz)と離型コーティング層の厚さにおいては、その相関関係が本発明において提供する好ましい範囲内にある実施例1~9の場合、離型コーティング層表面の十点平均粗さ(F_SRz)が110nm以下に極めて低く形成されるによって、セラミックシートのピンホール不良が発生しないことを確認することができる。
【0080】
これに対し、数式1の範囲を超過する比較例5の離型フィルムは、B_SRzに比べて離型コーティング層の厚さが薄くて離型層のF_SRzが139nmで高い値を見せることによって、セラミックシートのピンホール不良を引き起こすことを確認することができる。また、数式1の範囲未満である比較例6の離型フィルムは、B_SRzに比べて離型コーティング層の厚さが厚くて離型フィルム巻取工程においてブロッキングが発生することが分かる。
【0081】
また、比較例7の離型フィルムの場合、B_SRzと離型コーティング層厚との関係は、本発明において提案する好ましい範囲内にあるが、基材のB_SRz自体が本発明の好ましい範囲である500nmを超過することによって、離型コーティング後にも651nmの高いF_SRzを見せてセラミックシートのピンホール不良を引き起こすことが分かる。
【0082】
上述のように、本発明において提供する特殊な構成の離型コーティング組成物から離型フィルムを製造する場合、基材に比べて低い離型層表面粗さを有する離型フィルムを一回のコーティング工程だけで得ることができ、従来の技術とは異なってブロッキング及びカール現象から自由な離型フィルムを得ることができる。
【0083】
特に、本発明による離型フィルムは、MLCC製造工程に適合し、さらに低い厚さのセラミックシートをピンホール不良または積層不良無しで製造するのに寄与できる。また、MLCCにおいてセラミックシートの厚さは、製品の用量及び大きさと直結するので、本発明による離型フィルムは、工程上の不良率改善だけでなく完成品であるMLCCの物性を向上させるのにも寄与できる。
【0084】
本明細書では、本発明者らが行った多様な実施例のうち、いくつかの例のみを挙げて説明しているが、本発明の技術的思像はこれらに限定または制限されず、当業者により変形されて多様に実施できることはもちろんである。