(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】支柱構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/52 20060101AFI20230523BHJP
E02D 27/16 20060101ALI20230523BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
E02D27/52 A
E02D27/16
E02D27/32 A
(21)【出願番号】P 2022179258
(22)【出願日】2022-11-09
【審査請求日】2022-12-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591224766
【氏名又は名称】ナカダ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092680
【氏名又は名称】入江 一郎
(72)【発明者】
【氏名】関 谷 勇 太
(72)【発明者】
【氏名】田 代 洋 一
(72)【発明者】
【氏名】大 江 浩 之
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106480853(CN,A)
【文献】特開平10-298953(JP,A)
【文献】特開2018-138745(JP,A)
【文献】特開昭54-090837(JP,A)
【文献】特許第7136411(JP,B1)
【文献】特開2011-137365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/52
E02D 27/16
E02D 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中詰め材が充填されて袋体を海底又は水底に敷設する敷設工程と、
この敷設工程の後、前記袋体を貫通し、海底又は水底の地中に支柱を打ち込む打ち込
み工程とを備えている
ことを特徴とする支柱構造体の施工方法。
【請求項2】
袋体は、複数の網目を有するネットで形成され、前記袋体の内部を複数の仕切り部材
により仕切られた複数の小部屋に形成され、前記小部屋毎に中詰め材が充填されている
ことを特徴とする請求項1記載の支柱構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱構造体の施工方法に係り、特に、支柱の打設前の袋体の敷設作業を迅速に行うことができる支柱構造体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洋上風力発電設備の代表的な基礎構造としては、例えば、欧州において実績のあるモノパイル式がある。このモノパイル式の基礎構造は、基礎周辺に石材を用いた2層構造の洗掘防止工が設置されている。洗掘防止工の下層は小粒径(例えば、0~80mm等)の石材で、海底砂の洗掘を防止する機能を有し、上層は大粒径(例えば、200mm~1000mm等)の石材で、下層の石材の海流や波浪、潮流による流失を防止する機能を有する。ところが、下層の石材の設置時においては、敷き詰めた石材が流出しやすく、ロスが多いことが問題である。これを改善するものとして、たとえば、下記特許文献1記載のものがある。
これは、構造物設置工事(例えば、洋上風力発電設備基礎工事)の施工効率を向上を図るために、水底又は海底に洗掘防止シートを敷設し、杭状体(例えば、鋼管杭)の立設前に洗掘防止工を設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記洗掘防止シートにあっては、洗掘防止シートが海流又は水流の影響で持ち上げられ、洗掘が促進するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされた支柱構造体の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の支柱構造体の施工方法は、中詰め材が充填された袋体を海底又は水底に敷設する敷設工程と、この敷設工程の後、前記袋体を貫通し、海底又は水底の地中に支柱を打ち込む打ち込み工程とを備えているものである。
【0010】
また、請求項2記載の支柱構造体の施工方法は、請求項1記載の支柱構造体の施工方法において、袋体は、複数の網目を有するネットで形成され、前記袋体の内部を複数の仕切り部材により仕切られた複数の小部屋に形成され、前記小部屋毎に中詰め材が充填されているものである。
【発明の効果】
【0015】
従来の洗掘防止シートにあっては、洗掘防止シートが海流又は水流の影響で持ち上げ
られ、洗掘が促進する不具合が生じるが、請求項1記載の支柱構造体の施工方法によれば
、従来の洗掘防止シートに比べ、袋体は、中詰め材が充填された分、海流又は水流の影響
を受けにくく、持ち上げられないため、洗掘防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例の支柱構造体の概略的断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の支柱構造体の長手方向を横断する方向の概略的断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の実施例と異なる他の実施例の概略的断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の実施例と異なる他の実施例の概略的断面図である。
【
図5】
図5は、
図4の実施例と異なる他の実施例の概略的断面図である。
【
図6】
図6は、
図5の実施例と異なる他の実施例の概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施例の支柱構造
体の施工方法を
図1及び
図2を参照して説明する。
図1に示すSは支柱構造体で、支柱構造体Sは、海底(又は水底)10に敷設(敷く
ようにして設置する)された第1の中詰め材が充填された第1の袋体(袋体)1と、この
第1の袋体(袋体)1の上に載置され、前記第1の中詰め材より大きい第2の中詰め材が
充填された第2の袋体(袋体)2と、この第2の袋体(袋体)2及び第1の袋体(袋体)
1を貫通し、海底(又は水底)1の地中に撃ち込まれた支柱3とを備えている。
支柱3は、例えば、洋上風力発電設備に使用される風車のブレード(翼)を支えるも
のであり、その他、橋梁、桟橋等の支柱にも使用される。
図1に示す20は、海面である
。
【0020】
従来の洗掘防止シートにあっては、洗掘防止シートが海流又は水流の影響で持ち上げられ、洗掘が促進する不具合が生じるが、本実施例の支柱構造体Sによれば、従来の洗掘防止シートに比べ、第1、第2の袋体(袋体)1、2は、第1、第2の中詰め材が充填された分、海流又は水流の影響を受けにくく、持ち上げられないため、洗掘防止を図ることができる。
なお、望ましくは、
図4に示すように、支柱3の第2の袋体(袋体)2及び第1の袋体(袋体)1を貫通する部位Xの周囲を仕切り部材4により仕切って、支柱3の第2の袋体(袋体)2及び第1の袋体(袋体)1を貫通する部位には、中詰め材を充填しないようにして、支柱3の打ち込み作業を容易とすることができる。
【0021】
また、
図2に示す第1の袋体(袋体)1は、複数の網目を有するネットで形成され、第1の袋体(袋体)1の内部を複数の仕切り部材により仕切られた複数の小部屋に形成され、前記小部屋毎に中詰め材が充填されているもので、例えば、四角柱の小部屋を相互に連結し、砂利、砕石等の中詰め材を充填した「縦 約10m、横 約6m、高さ 約0.25m」の略直方体形状である。
第1の袋体(袋体)1に充填される中詰め材の重量は、例えば、4.0t~30tであり、その粒径は80mm以下である。第1の袋体(袋体)1に充填される中詰め材に小粒径(例えば、0~80mm等)の石材を用いても、第1の袋体(袋体)1が石材の流出を防止するため、設置時に石材が流出しにくくなり、ロスを減らすことができる。中詰め材に小粒径(例えば、0~80mm等)の石材を用いても、袋体で拘束されて1枚の高重量マットとして機能するため、流失しにくくなるため、上層の第2の袋体(袋体)2の大粒径(例えば、300~1000mm)の石材が不要とすることもできる。
第1の袋体(袋体)1は、厚み寸法が、例えば200~500mm程度、水平寸法が、例えば、10,000mmと、厚み寸法より水平寸法が大幅に大である。厚みが薄い分海流の影響を受けにくく、水平寸法が大きい分1枚のマットの重量が重くなることで安定性が得られる。また、支柱3で打ち抜く際にも厚みが薄いことで、容易に打ち抜くことができる(第2の袋体(袋体)2及び第1の袋体(袋体)1を貫通する部位Xを設けない場合)。
【0022】
また、第2の袋体(袋体)2に充填される中詰め材の重量は、例えば、4.0t~30tであり、その粒径は300mm以下である。なお、第2の袋体(袋体)2は第1の袋体(袋体)1の安定性を向上させるための役割であるため、第2の袋体(袋体)2は、袋体ではなく大粒径(例えば、300~1000mm)の石材としても良い。もしくは、袋体の形状を
図2、
図4に示す略直方体形状ではなく、中詰め材を詰めた饅頭型の袋体としても良いし、
図3に示す平面視、弧状でも良い。もしくは、コンクリートブロックとしても良い。
【0023】
上述したように、支柱構造体Sは、海底(又は水底)1に敷設(敷くようにして設置する)された第1の中詰め材が充填された第1の袋体(袋体)1と、この第1の袋体(袋体)1の上に載置され、前記第1の中詰め材より大きい第2の中詰め材が充填された第2の袋体(袋体)2と、袋体を複数積層したが、場合により、袋体は単数でも良い。
即ち、係る場合の支柱構造体Sは、海底(又は水底)10に敷設(敷くようにして設置する)された中詰め材が充填された袋体1と、この袋体1を貫通し、海底(又は水底)10の地中に撃ち込まれた支柱3とを備えているものである。
従来の洗掘防止シートにあっては、洗掘防止シートが海流又は水流の影響で持ち上げられ、洗掘が促進する不具合が生じるが、袋体1が単数の支柱構造体Sによれば、従来の洗掘防止シートに比べ、袋体は、中詰め材が充填された分、海流又は水流の影響を受けにくく、持ち上げられないため、洗掘防止を図ることができる。
なお、支柱構造体の施工方法は、中詰め材が充填されて袋体1を海底(又は水底)10に敷設する敷設工程と、この敷設工程の後、袋体1を貫通し、海底(又は水底)10の地中に支柱3を打ち込む打ち込み工程とを備えているものである。
この場合においても、上述同様、従来の洗掘防止シートにあっては、洗掘防止シートが海流又は水流の影響で持ち上げられ、洗掘が促進する不具合が生じるが、本実施例の支柱構造体の施工方法によれば、従来の洗掘防止シートに比べ、袋体は、中詰め材が充填された分、海流又は水流の影響を受けにくく、持ち上げられないため、洗掘防止を図ることができる。
【0024】
なお、望ましくは、支柱3の袋体1を貫通する部位には、中詰め材が充填されていないようにして、支柱3の打ち込み作業を容易とすることができる。
図示しないが、支柱3の袋体1を貫通する部位の周囲を仕切り部材により仕切って、支柱3の袋体1を貫通する部位には、中詰め材を充填しないようにする。
なお、
図1に示す51は第1の中詰め材、52は第2の中詰め材である。
【0025】
また、第2の袋体(袋体)2の重ね合わせは、上述記載に限らず、例えば、
図5に示すように、第2の袋体(袋体)2の短辺を重ねて第2の袋体(袋体)2を螺旋状に形成しても良いし、また、
図6に示すように、第2の袋体(袋体)2の長辺を重ねても良い。このように重ね合わせることで、設置時の細かい位置決めが不要となり、容易に施工可能となる。
【符号の説明】
【0026】
S 支柱構造体
1 第1の袋体(袋体)
2 第2の袋体(袋体)
3 支柱
10 海底(又は水底)
【要約】
【課題】
本発明の目的は、支柱の打設前の袋体の敷設作業を迅速に行うことができる支柱構造体及び支柱構造体の施工方法を提供するものである。
【解決手段】
支柱構造体Sは、海底(又は水底)10に敷設された中詰め材51が充填されて袋体1と、この袋体1を貫通し、海底(又は水底)10の地中に撃ち込まれた支柱3とを備えているものである。
【選択図】
図1