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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20230523BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230523BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230523BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20230523BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
H02J7/35 K
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/00 170
H02J7/00 X
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017198551
(22)【出願日】2017-10-12
(65)【公開番号】P2019075849
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】植嶋 美喜
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 一史
(72)【発明者】
【氏名】馬場▲崎▼ 忠利
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-091978(JP,A)
【文献】特開2017-011948(JP,A)
【文献】特開2017-011804(JP,A)
【文献】特開2015-177686(JP,A)
【文献】特開2013-070190(JP,A)
【文献】特開2006-325392(JP,A)
【文献】特開2012-023816(JP,A)
【文献】特開2014-183720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/35
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 3/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を発電する発電部と、
商用系統および前記発電部から供給された電力を充電可能であり、負荷に対して蓄えた電力を放電可能な蓄電部と、
前記蓄電部における充電可能な電力量である容量を、前記商用系統において停電が発生した際に前記負荷に供給する電力を確保するための容量であるバックアップ用容量、および、前記発電部により発電された電力を前記負荷に供給する際に一時的に蓄えるために用いられる容量である自家消費用容量に分け、充電および放電を制御するとともに、前記発電部における所定期間に発電される発電量の予測値である発電予測値および前記発電量の変動幅を表す信頼区間であって、前記負荷において停電が許容される予め定められた所要期間の長さを範囲とする前記信頼区間を含む計画発電量と、前記負荷における前記所定期間の需要電力量とに基づいて、前記商用系統および前記発電部による電力の供給が制限された場合に、当該制限されている間、前記負荷への電力の供給を可能とする前記蓄電部の前記バックアップ用容量を求める制御部と、が設けられていることを特徴とする給電装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記発電部における発電効率、および、前記蓄電部における充電効率の少なくとも一方に基づいて前記バックアップ用容量を求めることを特徴とする請求項1記載の給電装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記負荷に関する情報に基づいて、前記バックアップ用容量を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の給電装置。
【請求項4】
前記発電部は太陽光発電設備であり、気象予測情報に基づいて前記所定期間の前記計画発電量を求めることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電装置と蓄電池を有する給電システムであって、蓄電池を停電時のバックアップに用いるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、充放電時間を考慮して蓄電池の劣化状態を判定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-089938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その一方で、蓄電池を停電時のバックアップだけでなく自家消費にも用いる技術が知られている。この場合、停電が発生し、かつ、発電装置による発電がない最悪のケースでも所定の電力が供給できるように、蓄電池のバックアップ用容量が決定されていた。このようにバックアップ用容量を決めると、自家消費に使える蓄電池の容量が限定されてしまい、蓄電池の容量を有効に活用することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、蓄電池に求められる容量を低減し、コスト削減を容易にすることができる給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の給電装置は、電力を発電する発電部と、商用系統および前記発電部から供給された電力を充電可能であり、負荷に対して蓄えた電力を放電可能な蓄電部と、前記蓄電部における充電および放電を制御するとともに、前記発電部における所定期間の計画発電量と、前記負荷における前記所定期間の需要電力量とに基づいて、前記商用系統および前記発電部による電力の供給が制限された場合に、当該制限されている間、前記負荷への電力の供給を可能とする前記蓄電部のバックアップ用容量を求める制御部と、が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の給電装置によれば、所定期間における計画発電量および需要電力量に基づいてバックアップ用容量を求めるため、予めバックアップ用容量を定めている場合と比較して、バックアップ用容量が過大になることを防止しやすい。そのため、発電部で発電した電力を蓄電部に蓄えた後に負荷で消費する自家消費に使われる蓄電部の容量を確保しやすくなる。言い換えると、蓄電部の容量を増やすことなく、バックアップ電源としての信頼性確保と自家消費率の向上の両立を図りやすくなる。
【0008】
上記発明において前記制御部は、前記発電部における発電効率、および、前記蓄電部における充電効率の少なくとも一方に基づいて前記バックアップ用容量を求めることが好ましい。このように発電効率および充電効率の少なくとも一方に基づいてバックアップ用容量を求めることにより、バックアップ用容量が過大になることを更に防止しやすくなる。
【0009】
上記発明において前記制御部は、前記負荷に関する情報に基づいて、前記バックアップ用容量を求めることが好ましい。
このように負荷に関する情報に基づいてバックアップ用容量を求めることにより、バックアップ用容量が過大になることを更に防止しやすくなる。ここで、負荷に関する情報としては、当該負荷が、電力供給の停止が許容されない重要設備である場合に、停電が許容される所定期間の長さ等の情報を例示することができる。
【0010】
上記発明において前記発電部は太陽光発電設備であり、気象予測情報に基づいて前記所定期間の前記計画発電量を求めることが好ましい。このように発電部が太陽光発電設備である場合、気象予測情報に基づいて計画発電量を求めることにより、バックアップ用容量が過大になることを更に防止しやすくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の給電装置よれば、所定期間における計画発電量および需要電力量に基づいてバックアップ用容量を求めることにより、蓄電池に求められる容量を低減し、コスト削減が容易になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る給電装置の構成を説明する模式図である。
図2図1の蓄電池におけるバックアップ用容量および自家消費用容量を説明する模式図である。
図3図1の制御用コンピュータの構成を説明する模式図である。
図4】天気予報および発電実績データの蓄積を行う演算処理を説明するフローチャートである。
図5図5(a)~(c)は、予報情報、天気情報および発電実績データの紐付け状態を説明する概念図である。
図6】バックアップ用容量を設定する演算処理を説明するフローチャートである。
図7図7(a)~(b)は、発電予測値および信頼区間を説明する図である。
図8】発電電力、需要電力、充放電電力およびSOCの時間変化を説明する図で得ある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の一実施形態に係る給電装置について、図1から図8を参照しながら説明する。図1に示す本実施形態の給電装置1は、発電部10で発電された電力を需要部(負荷)50に供給可能とするとともに、商用系統60に停電が発生した際にも需要部50に電力を継続して供給可能にするものである。
【0014】
給電装置1には、図1に示すように発電を行う発電部10と、電力を蓄える蓄電部20と、蓄電部20における充放電を制御する制御部30と、が主に設けられている。また、給電装置1には、外部の商用系統60から商用電力が供給可能に接続されている。
【0015】
発電部10は、発電した電力を蓄電部20や需要部50に供給するものである。本実施形態では発電部10が太陽光を用いて発電を行う太陽光発電である例に適用して説明する。
【0016】
発電部10には、太陽光により発電を行う太陽光パネルなどを備える太陽光発電設備11と、太陽光発電設備11により発電された直流電力を所望の電力に変換するPCS部12と、が主に設けられている。
【0017】
なお、太陽光発電設備11としては公知の太陽光発電に関連する技術を用いて構築されたものを用いることができ、その形式などを特に限定するものではない。PCS部12としては、公知の形式のパワーコンディショナを用いることができる。本実施形態では、PCS部12は太陽光発電設備11により発電された直流電力を交流電力に変換する例に適用して説明する。
【0018】
なお、PCS部12により変換される電力は、需要部50に供給する電力の形式に合わせることができ、例えば交流電力であってもよいし直流電力であってもよい。更には、供給される電圧も需要部50に基づいて定められる所望の電圧とすることができる。
【0019】
蓄電部20は、商用系統60や太陽光発電設備11から供給される電力を充電するものであり、また、充電された電力を需要部50に供給する蓄電池でもある。蓄電部20としては公知の充電および放電が可能な二次電池であればよく、その形式を特に限定するものではない。
【0020】
本実施形態では、図2に示すように、蓄電部20における充電可能な電力量である容量は、バックアップ用容量21および自家消費用容量22に分けて扱われる。バックアップ用容量21は、商用系統60において停電が発生した際に需要部50に供給する電力を確保するための容量である。自家消費用容量22は、発電部10により発電された電力を需要部50に供給する際に一時的に蓄電部20に蓄えるために用いられる容量である。言い換えると、発電部10により発電される電力の変動と、需要部50における電力需要の変動との差を埋めるために用いられる容量である。
【0021】
制御部30は、蓄電部20に対する充電および放電の制御を行うものである。制御部30は、商用系統60から需要部50に延びる電力供給線61上であって、蓄電部20へ分岐する分岐線62が電力供給線61と交わる位置に配置されている。
【0022】
制御部30には、交流電力から直流電力へ、直流電力から交流電力へ変換する変換部31と、蓄電部20における充電および放電を制御する充放電部32および制御用コンピュータ(制御部)40と、が主に設けられている。なお、制御用コンピュータ40は、制御部30と一体に設けられていてもよいし、制御部30とは分離して設けられていてもよい。
【0023】
変換部31は、商用系統60または発電部10から蓄電部20へ充電する電力を供給する場合には、交流電力を直流電力へ変換し、逆に蓄電部20から放電された電力を需要部50に供給する場合には、直流電力から交流電力へ変換するものである。変換部31の構成としては、公知の構成を用いることができる。なお、需要部50へ直流電力を供給する場合には、変換部31は商用系統60から供給される交流電力を直流電力に変換するものである。
【0024】
充放電部32は、制御用コンピュータ40から入力される制御信号に基づいて、蓄電部20における充電および放電を制御するものである。充放電部32の形式や構成としては公知の形式や構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0025】
制御用コンピュータ40は、充放電部32による充放電を制御する制御信号を出力するものであり、蓄電部20のバックアップ用容量21を求めるものでもある。制御用コンピュータ40は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するコンピュータである。
【0026】
上述のROM等の記憶装置に記憶されているプログラムは、図3に示すように、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースを協働させて、入出力部41、演算部42、および、記憶部43として機能させるものである。
【0027】
入出力部41は、外部の気象情報を提供する気象会社46から天気予報の情報(気象予測情報)を取得するものである。なお、気象会社46には、気象庁などの気象情報を提供する公的な組織や、民間の組織が含まれる。気象情報には、晴れ、曇り、雨、晴れのち曇り、曇りのち雨、晴れ時々曇り、曇り時々雨などの翌日以降の天気予報の情報や、日射量や雲量等の情報が含まれる。
【0028】
また、入出力部41は充放電を制御する制御信号を充放電部32へ出力するものでもある。入出力部41は、情報通信網を介して外部の気象情報を提供する気象会社46と情報通信が可能に接続されている。さらに、充放電部32とも情報通信可能に接続されている。
【0029】
演算部42は、蓄電部20のバックアップ用容量21を求める演算を行うものである。また、充放電部32による充放電を制御する制御信号を生成するものでもある。演算部42によるバックアップ用容量21を求める演算の内容などについては後述する。
【0030】
記憶部43は、演算部42によるバックアップ用容量21を求める演算に用いられる情報が記憶されるものである。記憶部43に記憶される情報の内容については、演算部42の演算内容の説明とともに後述する。
【0031】
次に、上記の構成からなる給電装置1における制御内容について説明する。給電装置1の制御には、気象会社46が提供する天気予報および発電部10が発電した電力である発電実績データを蓄積する演算処理と、蓄電部20のバックアップ用容量21を求めて蓄電部20に蓄電されている電力量を調整する制御と、が含まれる。
【0032】
まず、図4および図5を参照しながら天気予報および発電実績データの蓄積を行う演算処理について説明する。なお、本実施形態では、天気予報および発電実績データの蓄積を行う例に適用して説明するが、日射量や雲量等と、発電実績データの蓄積を行ってもよい。
【0033】
給電装置1の制御用コンピュータ40は、例えば、一日のうちの予め定められた所定の時刻になると、気予報および発電実績データの蓄積を行う演算処理を開始する。本実施形態では、一日に一回の頻度で当該演算処理を行う例に適用して説明する。
【0034】
演算処理が開始されると制御用コンピュータ40の演算部42は、図4に示すように、入出力部41を介して気象会社46から天気予報の情報を取得する処理を行う(S11)。具体的には、気象会社46に対して翌日の天気予報と前日の天気情報の出力を要求する信号を出力し、気象会社46から送信されてきた翌日の天気予報と前日の天気情報を取得する処理を行う。なお、前日の天気情報とは、前日の実際の天気を表す情報である。
【0035】
翌日の天気予報と前日の天気情報を取得すると、演算部42は翌日の天気予報に翌日の日付情報を紐付けて記憶部43に記憶させる処理を行う(S12)。さらに演算部42は、前日の日付情報と一致する天気予報に、前日の天気情報を紐付けて記憶部43に記憶させる処理を行う。言い換えると、所定の日における天気予報と、その結果である天気情報とを紐付けして記憶する処理を行う。
【0036】
次いで演算部42は、前日の発電実績データを取得する処理を行う(S13)。前日の発電実績データは、発電部10において蓄積されている例を挙げることができる。この場合、演算部42は、発電部10から発電実績データを取得する処理を行う。なお、発電実績データが蓄積される場所は、発電部10であってもよいし、発電部10の状態を監視する監視センターなど他の場所であってもよい。
【0037】
発電実績データを取得すると、演算部42は発電実績データを記憶部43に記憶させる処理を行う(S14)。発電実績データは、データを取得した日付情報と一致する天気予報および天気情報と紐付けして記憶部43に記憶される。言い換えると、所定の日における天気予報と、その結果である天気情報と、発電結果である発電実績データを紐付けして記憶する処理を行う。
【0038】
例えば、天気予報が晴れ、当日の天気情報が晴れ、その場合の発電実績データが紐付けされたものを図5(a)に示す。また、天気予報が晴れ、当日の天気情報が曇り、その場合の発電実績データが紐付けされたものを図5(b)に示す。さらに、天気予報が晴れ、当日の天気情報が雨、その場合の発電実績データが紐付けされたものを図5(c)に示す。
【0039】
発電実績データの記憶処理が行われると、その日における制御用コンピュータ40の演算処理は終了する。制御用コンピュータ40は、次の日の演算処理を開始する時刻まで待機する。
【0040】
次に蓄電部20のバックアップ用容量21を求めて蓄電部20に蓄電されている電力量を調整する制御について図6を参照しながら説明する。本実施形態では、商用系統60が1日停電する場合を想定して制御する例に適用して説明する。なお、商用系統60が停電する期間は上述の1日であってもよいし、1日よりも短い期間であってもよいし、1日よりも長い期間であってもよい。
【0041】
給電装置1の制御用コンピュータ40は、例えば、予め定められた所定の時刻になると、バックアップ用容量21を求めて蓄電部20に蓄電されている電力量を調整する制御を開始する。予め定められた所定の時刻としては、1時間ごとに定められる所定の時刻(例えば、0時30分、1時30分、2時30分のような時刻)であってもよいし、1分ごとに定められる所定の時刻(例えば、12時1分30秒、12時2分30秒、12時3分30秒のような時刻)であってもよい。
【0042】
制御が開始されると制御用コンピュータ40の演算部42は、図6に示すように、入出力部41を介して気象会社46から翌日の天気予報の情報を取得する処理を行う(S21)。天気予報の情報を取得する具体的な処理は、S11で行われる処理と同様である。
【0043】
なお、本実施形態では、翌日の天気予報の情報に基づいてバックアップ用容量21を求める例に適用して説明するが、翌日の日射量や雲量等などの情報に基づいてバックアップ用容量21を求めてもよい。
【0044】
翌日の天気予報の情報を取得すると、演算部42は、翌日の発電量(所定期間の計画発電量)を予測する演算処理を行う(S22)。翌日の発電量は、記憶部43に記憶されている天気予報と発電実績データに基づいて予測される。
【0045】
また、予測される発電量には、発電予測値PRと、発電量の変動幅を表す信頼区間REと、が含まれる。図7(a)は、天気予報が晴れの場合の発電予測値PRと、信頼区間REの例を示すものであり、図7(b)は、天気予報が雨の場合の発電予測値PRと、信頼区間REの例を示すものである。本実施形態では、信頼区間REの上限と発電予測値PRとの差の値、および、信頼区間REの下限と発電予測値PRとの差の値が等しい例に適用して説明するが、両者の値が異なっていてもよい。
【0046】
演算部42は、記憶部43に記憶されている天気予報および天気情報に基づいて、天気予報が当たる確率および外れる確率を求める。求められたこれら確率と、発電実績データに基づいて発電予測値PRおよび信頼区間REを求める演算処理を行う。
【0047】
信頼区間REの範囲は、需要部50に関連して定められる情報に応じて定められてもよい。予め定められている電力需要の情報としては、停電が許容される予め定められた所定期間(本実施形態では1日)の長さ等を例示することができる。例えば、需要部50の重要度、言い換えると停止が許容される所定期間の長さに応じて上述の設定が定められる。需所定期間の長さが長い場合には、信頼区間REの範囲が広く、または、信頼区間REの下限値が低くなるように定められる。なお、需要部50に関連して定められる情報は予め定められており、当該情報は、例えば記憶部43に記憶されている。
【0048】
次いで演算部42は、需要部50における翌日の電力需要(所定期間の需要電力量)を設定する演算処理を行う(S23)。例えば、需要部50の重要度(負荷に関する情報)が低い場合、言い換えると、需要部50の停止が許容される程度が高い場合には、演算部42は、予め定められている電力需要の情報を取得する処理を行う。予め定められている電力需要の情報は、記憶部43に記憶されていてもよいし、入出力部41を介して外部から取得してもよい。
【0049】
また、需要部50の重要度が高い場合、言い換えると、需要部50の停止が許容される程度が低い場合には、需要部50における電力需要の実績値を取得し、取得した実績値に基づいて翌日の電力需要を作成する処理が行われる。翌日の電力需要の作成に際しては、翌日の曜日や、予め設定されているイベントなどのカレンダ情報が参照されてもよい。電力需要の実績値は、需要部50において測定され記憶されている例や、制御用コンピュータ40が需要部50の消費電力量を取得して記憶している例などを挙げることができる。
【0050】
翌日の電力需要が設定されると演算部42は、バックアップ用容量21を設定する演算処理を行う(S24)。具体的には、S22において予測した翌日の発電量、および、S23において設定した翌日の電力需要に基づいてバックアップ用容量21を設定する演算処理を行う。
【0051】
具体的には、演算部42は、翌日の電力需要から翌日の発電量を除くことにより、蓄電部20に蓄える電力量を求める演算処理を行う。求められた電力量に基づいてバックアップ用容量21を設定する演算処理を行う。
【0052】
演算部42は、発電部10の発電効率、および、蓄電部20の充電効率の少なくとも一方にも基づいてバックアップ用容量21を設定する演算処理を行う。発電部10は定格の発電量において発電効率が高くなり、発電量が低下すると発電効率も低下する。この発電効率の低下を考慮してバックアップ用容量21を設定する演算処理を行う。また、蓄電部20の充電効率も、充電されている容量に応じて充電効率が変動する。この充電効率の変動を考慮してバックアップ用容量21を設定する演算処理を行う。
【0053】
バックアップ用容量21の設定が行われると、制御用コンピュータ40は、設定されたバックアップ用容量21に基づいて充放電部32を制御する処理を行う(S25)。充放電部32は、制御用コンピュータ40の制御に従い、蓄電部20の充放電を行う。
【0054】
上述の制御により蓄電部20のバックアップ用容量21が確保されている際に、1日停電が発生した場合について、図8を参照しながら説明する。図8には、発電部10による発電電力10Aと、需要部50における需要電力50Aと、蓄電部20の充放電電力20Aと、蓄電部20に蓄えられている電力量を示すSOC(State of Charge)20Bとが示されている。横軸は、停電が起きた時点を起点とした経過時間を示している。また、図8では午前0時に停電が起きた場合を示している。
【0055】
停電が発生した時点において蓄電部20にはバックアップ用容量21が確保されている。図8ではSOCで約50%のバックアップ用容量21が確保されている。停電が発生してから360分が経過するまでは、需要部50に対して蓄電部20から電力が供給されている。図8では蓄電部20の充放電電力20Aが負の値となっており、蓄電部20が放電していることが示されている。蓄電部20のSOCは、放電に伴い値が小さくなる。
【0056】
なお、需要部50における需要電力50Aは、停電が開始してから約540分までは一定の値、約540分を超えて約1020分までは需要電力50Aが増加し、約1020分を超えると元の一定の値に戻ると仮定している。
【0057】
停電開始から360分が経過すると朝となり発電部10による発電が始まる。発電部10により発電された電力は需要部50に供給される。これに伴い、蓄電部20から放電される電力は減少する。発電部10により発電される電力が需要部50の需要電力を超えると、余った電力は蓄電部20に蓄電される。蓄電部20のSOCは、充電および放電に伴い値が変化するが、変動幅は小さい。
【0058】
停電が開始してから約1020分で日が沈み発電部10による発電が終わる。これにより、蓄電部20の放電によって需要部50へ電力供給が供給される。停電が開始してから1日(1440分)経過した時点においても、図8に示すように、蓄電部20の放電によって需要部50へ電力供給が維持されている。
【0059】
上記の構成の給電装置1によれば、翌日の発電量および翌日の電力需要に基づいてバックアップ用容量21を求めるため、予めバックアップ用容量21を定めている場合と比較して、バックアップ用容量21が過大になることを防止しやすい。そのため、発電部10で発電した電力を蓄電部20に蓄えた後に需要部50で消費する自家消費に使われる蓄電部20の容量を確保しやすくなる。言い換えると、蓄電部20の容量を増やすことなく、バックアップ電源としての信頼性確保と自家消費率の向上の両立を図りやすくなる。
【0060】
更に、発電効率および充電効率の少なくとも一方に基づいてバックアップ用容量21を求めることにより、バックアップ用容量21が過大になることを更に防止しやすくなる。
【0061】
需要部50に関する情報に基づいてバックアップ用容量21を求めることにより、バックアップ用容量21が過大になることを更に防止しやすくなる。ここで、需要部50に関する情報としては、需要部50が、電力供給の停止が許容されない重要設備である場合に、停電が許容される予め定められた所定期間(本実施形態では1日)の長さ等の情報を例示することができる。
【0062】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施の形態においては、発電部10が太陽光を用いて発電を行う太陽光発電である例に適用して説明したが、その他に、風により発電を行う風力発電であってもよい。更には、水素等により発電を行う燃料電池や、発動機により発電を行うもののように、計画性を持って発電を行うものであってもよく、発電の形式を限定するものではない。その他に、力を供給できる他の蓄電池であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
給電装置…1、発電部…10、太陽光発電設備…11、蓄電部…20、バックアップ用容量…21、制御部…30、制御用コンピュータ(制御部)…40、需要部(負荷)…50、商用系統…60
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8