(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】溝ゲート構造およびシールド領域を備えた炭化ケイ素半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230523BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230523BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20230523BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20230523BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20230523BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20230523BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20230523BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20230523BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230523BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L21/28 301B
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L29/48 D
H01L29/50 M
H01L29/78 652D
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 657D
H01L29/78 658A
H01L29/78 658F
H01L29/86 301D
H01L29/86 301F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018223610
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】10 2017 128 633.0
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599158797
【氏名又は名称】インフィニオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Infineon Technologies AG
【住所又は居所原語表記】Am Campeon 1-15, 85579 Neubiberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ベアグナー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ シエミエニエツ
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-079251(JP,A)
【文献】特開2013-243207(JP,A)
【文献】特開2012-178536(JP,A)
【文献】特開2014-110402(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106876471(CN,A)
【文献】特開2016-163047(JP,A)
【文献】特開2014-053595(JP,A)
【文献】特開2010-021175(JP,A)
【文献】特開2008-117826(JP,A)
【文献】特開2015-072974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28、21/336、
21/8234、27/088、
29/12、29/417、29/47、
29/78、29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体モジュールにおいて、
前記半導体モジュールは、ゲート構造(150)と、コンタクト構造(315)と、シールド領域(160)と、を有しており、
前記ゲート構造(150)は、第1の表面(101)から出発して炭化ケイ素ボディ(100)内に延在しており、前記第1の表面(101)に対して平行な第1の水平方向(191)に沿った前記ゲート構造(150)の幅(w1)は、前記第1の表面(101)に対して垂直な前記ゲート構造(150)の垂直方向の寸法(v1)よりも小さく、
前記コンタクト構造(315)は、前記第1の表面(101)から出発して前記炭化ケイ素ボディ(100)内に延在しており、
前記ゲート構造(150)および前記コンタクト構造(315)は、前記第1の水平方向(191)に沿って交互に設けられており、
前記シールド領域(160)は、前記炭化ケイ素ボディ(100)内において、前記コンタクト構造(315)の底部に接しており、前記第1の水平方向(191)に沿って、前記ゲート構造(150)から間隔を空けて設けられて
おり、
前記ゲート構造(150)は、ゲート誘電体(159)およびゲート電極(155)を有しており、前記ゲート電極(155)は、前記ゲート誘電体(159)に接している、金属構造(170)の第1の区間(171)を有しており、
前記コンタクト構造(315)は、前記炭化ケイ素ボディ(100)に接している、前記金属構造(170)の第2の区間(172)を有している、
半導体モジュール。
【請求項2】
前記第1の水平方向(191)に沿った前記シールド領域(160)の幅(w4)は、前記コンタクト構造(315)の幅(w2)よりも大きい、
請求項1記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記ゲート構造(150)と前記コンタクト構造(315)との間に形成されている、前記炭化ケイ素ボディ(100)のメサ区間(190)は、ボディ領域(120)を有しており、前記ボディ領域(120)は、ドリフト構造(130)と共に第1のpn接合部(pn1)を形成しており、ソース領域(110)と共に第2のpn接合部(pn2)を形成しており、前記ドリフト構造(130)は、前記シールド領域(160)と共に第3のpn接合部(pn3)を形成している、
請求項1または2記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記ボディ領域(120)は、前記ゲート構造(150)に接している主区間(121)を有しており、前記主区間(121)と前記コンタクト構造(315)との間に、前記主区間(121)よりもドーパント濃度が高い、前記コンタクト構造(315)に接しているコンタクト区間(129)を有している、
請求項3記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記コンタクト区間(129)は、前記ソース領域(110)の下の前記炭化ケイ素ボディ(100)内に埋設されるので、前記ソース領域(110)は、前記コンタクト区間(129)を前記第1の表面(101)から分離し、
前記コンタクト区間(129)および前記ソース領域(110)の両方は、前記コンタクト構造(315)の側壁に接触し、
前記ゲート構造(150)および/または前記コンタクト構造(315)は、前記第1の表面(101)と同一平面上にある、
請求項4記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記第1の水平方向(191)に沿った前記メサ区間(190)のメサ幅(w3)は、前記ゲート構造(150)の前記垂直方向の寸法(v1)よりも小さい、
請求項3から5までのいずれか1項記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記ドリフト構造(130)に接している、前記コンタクト構造(315)の区間は、ショットキーコンタクト(SC)を形成している、
請求項3から6までのいずれか1項記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記コンタクト構造(315)の垂直方向の寸法(v2)は、前記ゲート構造(150)の前記垂直方向の寸法(v1)よりも大きい、
請求項1から7までのいずれか1項記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記金属構造(170)は、少なくとも1つの第1の部分層(173)および第2の部分層(174)を有しており、
前記ゲート構造(150)における前記第1の部分層(173
)は、前記ゲート誘電体(159)に接しており、前記コンタクト構造(315)における前記第1の部分層(173
)は、前記炭化ケイ素ボディ(100)に接しており、
前記第2の部分層(174)は、前記第1の部分層(173
)に載置されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の半導体モジュール。
【請求項10】
前記ゲート構造(150)における前記第1の部分層(173)
および前記コンタクト構造(315)における前記第1の部分層(173)は、同一の組成を有している、
請求項9記載の半導体モジュール。
【請求項11】
前記ゲート構造(150)の相互に対向している側壁は、主格子面である、
請求項1から10までのいずれか1項記載の半導体モジュール。
【請求項12】
前記第1の表面(101)から、前記シールド領域(160)における最大ドーパント濃度までの距離(v4)は、前記ゲート構造(150)の前記垂直方向の寸法(v1)よりも大きい、
請求項1から11までのいずれか1項記載の半導体モジュール。
【請求項13】
前記ゲート構造(150)および前記コンタクト構造(315)は、前記第1の表面(101)に対して平行であり、前記第1の水平方向(191)に対して直交する第2の水平方向に対して平行な長手方向軸線を備えるように帯状に形成されている、
請求項1から12までのいずれか1項記載の半導体モジュール。
【請求項14】
前記ゲート構造(150)の相互に対向している側壁は、前記炭化ケイ素ボディ(100)の(11-20)格子面に対して平行にかつ前記第1の表面(101)に対して垂直に配向されている、
請求項1から13までのいずれか1項記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝ゲート構造およびシールド領域を備えた炭化ケイ素半導体モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)を基礎とする半導体モジュールでは、炭化ケイ素の大きいバンドギャップおよび高い絶縁破壊耐性という利点が得られる。もっとも、SiC半導体ボディと、誘電層、例えばSiC-MOSFET(SiC metal oxide semicondutor field effect transistor)のトランジスタセルのゲート誘電体との間の境界面においては、多数の状態の境界面が生じ、それらの境界面は、SiC-MOSFETの動作状態に依存して、より多くのキャリアまたはより少ないキャリアを有していると考えられる。多数の状態の境界面を生じさせるそれらのキャリアは、トランジスタセルのスイッチオン状態において電界制御式のトランジスタチャネルを形成する自由電荷の移動性および密度に影響を及ぼす。また通常は、ゲート誘電体に生じる電界強度およびゲート誘電体の堅固性によって、SiC-MOSFETの電圧耐性が制限されることが多いので、SiCの高い絶縁破壊耐性は完全には利用されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、炭化ケイ素が本来備えている電気的な絶縁破壊電界強度を十分に利用することができるSiC半導体モジュールを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の上述の目的は、独立請求項に記載の対象によって達成される。従属請求項は、別の実施形態に関する。
【0005】
本開示は、ゲート構造、コンタクト構造およびシールド領域を備えている半導体モジュールに関する。ゲート構造は、第1の表面から出発して炭化ケイ素ボディ内に延在している。第1の表面に対して平行な第1の水平方向に沿ったゲート構造の幅は、第1の表面に対して垂直なゲート構造の垂直方向の寸法よりも小さい。コンタクト構造も同様に、第1の表面から出発して炭化ケイ素ボディ内に延在している。ゲート構造およびコンタクト構造は、第1の水平方向に沿って交互に設けられている。シールド領域は、炭化ケイ素ボディにおいて、コンタクト構造の底部に接して形成されており、また第1の水平方向に沿ってゲート構造から間隔を空けて設けられている。
【0006】
さらに本開示は、それぞれが第1の表面から出発して炭化ケイ素ボディ内に延在している、ゲート構造およびコンタクト構造を備えている半導体モジュールに関する。ゲート構造およびコンタクト構造は、第1の表面に対して平行な第1の水平方向に沿って交互に設けられている。ゲート構造とコンタクト構造との間の炭化ケイ素ボディのメサ区間には、ボディ領域が形成されている。コンタクト構造の底部に沿って、ボディ領域の導電型のシールド領域が形成されており、またこのシールド領域は、第1の水平方向に沿って、ゲート構造から間隔を空けて設けられている。ドリフトゾーンを有しているドリフト構造は、ボディ領域と共に第1のpn接合部を形成しており、かつコンタクト構造と共にショットキーコンタクトを形成している。
【0007】
また本開示は、それぞれが第1の表面から出発して炭化ケイ素ボディ内に延在している、ゲート構造およびコンタクト構造を備えている半導体モジュールに関し、ここで、ゲート構造およびコンタクト構造は、第1の表面に対して平行な第1の水平方向に沿って交互に設けられている。ゲート構造は、ゲート誘電体およびゲート電極を有しており、ゲート電極は、ゲート誘電体に接している、金属構造の第1の区間を有している。コンタクト構造は、炭化ケイ素ボディに接している、金属構造の第2の区間を有している。コンタクト構造の底部に沿って、炭化ケイ素ボディには、シールド領域が形成されており、このシールド領域は、第1の水平方向に沿って、ゲート構造から間隔を空けて設けられている。
【0008】
最後に、本開示は、半導体モジュールを製造するための方法に関する。主層と、この主層の所定の区間に形成されているボディ層と、ボディ層の所定の区間に形成されているソース層と、を有している炭化ケイ素基板が形成され、この場合、ボディ層の導電型は、ソース層の導電型および主層に形成されているドリフト層の導電型とは逆の導電型である。ソース層およびボディ層を通って延在しており、かつ炭化ケイ素基板の第1の主面に対して平行な第1の水平方向に沿って交互に設けられている、ゲート溝およびコンタクト溝が形成される。ゲート溝には、ゲート誘電体が形成される。ゲート溝において、ゲート誘電体に接している第1の区間を有しており、かつコンタクト溝において、第2の区間を有している、金属構造が形成される。第2の区間は、ボディ層の区間から形成されたボディ領域に接しており、かつソース層の区間から形成されたソース領域に接している。第1の区間を第2の区間に接続している、金属構造の第3の区間が除去される。
【0009】
当業者は、下記の詳細な説明を読み、また図面を考察することによって、開示される対象の更なる特徴および利点を理解する。
【0010】
添付の図面によって、本発明をより一層理解することができ、またこの添付の図面は本出願に組み込まれ、本出願の一部を成すものである。図面は、本発明の実施形態を示し、またその説明と共に本発明の原理を説明する。本発明の別の実施形態および意図する利点は、以下の詳細な説明より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】1よりも大きいゲート構造のアスペクト比を有している、1つの実施形態による溝コンタクトおよびトレンチゲートを備えているSiC半導体モジュールの一部の概略的な断面図を示す。
【
図2A】トレンチゲートの垂直方向の寸法に相当する垂直方向の寸法を有している溝コンタクトにおけるショットキーコンタクトを含んでいる、1つの実施形態によるトレンチゲートおよび溝コンタクトを備えているSiC半導体モジュールの一部の概略的な断面図を示す。
【
図2B】トレンチゲートの垂直方向の寸法よりも大きい垂直方向の寸法を有している溝コンタクトにおけるショットキーコンタクトを含んでいる、1つの実施形態によるSiC半導体モジュールの一部の概略的な断面図を示す。
【
図3】トレンチゲートにおける第1の区間および溝コンタクトにおける第2の区間を有している金属構造を含んでいる、1つの実施形態によるトレンチゲートおよび溝コンタクトを備えているSiC半導体モジュールの一部の概略的な断面図を示す。
【
図4】溝コンタクトに沿ってより強くドープされたコンタクト区間を有しているボディ領域を含んでいる、1つの実施形態によるSiC半導体モジュールの一部の概略的な断面図を示す。
【
図5A】(11-20)格子面に対して平行に延在している側壁を有しているトレンチゲートを含んでいる、1つの実施形態によるトレンチゲートおよび溝コンタクトを備えているSiC半導体モジュールの一部の概略的な断面図を示す。
【
図5B】(1-100)格子面に対して平行に延在している側壁を有しているトレンチゲートを含んでいる、1つの別の実施形態によるSiC半導体モジュールの一部の概略的な断面図を示す。
【
図5C】溝コンタクトとのショットキーコンタクトおよび高ドープされたコンタクト区間を含んでいる、1つの別の実施形態によるSiC半導体モジュールの一部の概略的な断面図を示す。
【
図5D】深い溝コンタクトに沿って、高ドープされたコンタクト区間、シールド領域およびショットキーコンタクトを含んでいる、1つの別の実施形態によるSiC半導体モジュールの一部の概略的な断面図を示す。
【
図6】1つの実施形態による、トレンチゲートおよび溝コンタクトを含んでいる半導体モジュールを製造するための方法の簡略化されたフローチャートを示す。
【
図7A】ソース層、ボディ層およびドリフト層を含んでいる炭化ケイ素基板を形成した後の、トレンチゲートおよび溝コンタクトのための金属構造が同時に形成される、1つの実施形態によるトレンチゲートおよび溝コンタクトを含んでいる半導体モジュールを製造するための方法を説明するための、炭化ケイ素基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図7B】ゲート溝およびコンタクト溝を形成した後の、
図7Aの炭化ケイ素基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図7C】ゲート溝にゲート誘電体を形成した後の、
図7Bの炭化ケイ素基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図7D】ゲート溝における第1の区間およびコンタクト溝における第2の区間を含んでいる金属構造を形成した後の、
図7Cの炭化ケイ素基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図8A】ソース層、ボディ層およびドリフト層を含んでいる炭化ケイ素基板を形成した後の、トレンチゲートおよび溝コンタクトのための金属構造が同時に形成される、1つの別の実施形態によるトレンチゲートおよび溝コンタクトを含んでいる半導体モジュールを製造するための別の方法を説明するための、炭化ケイ素基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図8B】注入マスクを用いて、ボディ領域の高ドープされたコンタクト区間およびシールド領域のためのドープ領域を形成した後の、
図8Aによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図8C】注入マスクを除去した後の、
図8Bによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図8D】溝エッチングマスクを形成した後の、
図8Cによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図8E】ゲート溝およびコンタクト溝を形成した後の、
図8Dによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図8F】犠牲酸化物を形成した後の、
図8Eによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図8G】犠牲酸化物を除去した後の、
図8Fによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図8H】ゲート誘電体層を形成した後の、
図8Gによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図8I】エッチングマスクを形成した後の、
図8Hによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図8J】コンタクト溝からゲート誘電体層の一部を除去した後の、
図8Iによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図8K】ゲート溝における第1の区間およびコンタクト溝における第2の区間を含んでいる金属構造を形成した後の、
図8Jによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図8L】ゲート溝およびコンタクト溝の外部に位置する金属構造の第3の区間を除去した後の、
図8Kによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図9A】ボディ領域のコンタクト区間のためのドープ領域を形成した後に、溝底部を介する注入によってシールド領域が形成されている、1つの実施形態による炭化ケイ素基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図9B】溝エッチングマスクを形成した後の、
図9Aによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図9C】ゲート溝およびコンタクト溝を形成した後の、
図9Bによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図9D】犠牲酸化物を形成した後の、
図9Cによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図9E】注入マスクを用いて、シールド領域のためのドープ領域を形成した後の、
図9Dによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図9F】ゲート誘電体層を形成した後の、
図9Eによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図9G】コンタクト溝からゲート誘電体層の一部を除去した後の、
図9Fによる基板の一部の概略的な断面図を示す。
【
図10】1つの実施形態による、SiC半導体モジュールの一部の断面における、シールド領域内のドーパント分布の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明においては、本願の一部を成し、かつ例示を目的として特定の実施例が図示されている添付の図面を参照する。この関係において、方向に関する術語、例えば「上面」、「底部」、「前面」、「裏面」、「~の前」、「~の後ろ」などは、その時点において考察している図面の方向に関する。実施例の各コンポーネントを、種々の向きで位置決めすることができるので、方向に関する術語は、説明を目的として用いられているに過ぎず、限定的な記述と解されるべきではない。
【0013】
以下において、「持っている」、「含んでいる」、「備えている」、「有している」などの術語は、非限定的な術語であり、これらは一方では、言及している構成要素または特徴の存在を表しており、他方では別の構成要素または特徴の存在を排除するものではない。不定冠詞および定冠詞は、その関係から明示的に別個に記載がない限りは、複数形も単数形を含むものである。
【0014】
多数の図面において、ドープ型の隣の「-」または「+」の記載によって、相対的なドーパント濃度が表されている。例えば、「n-」は、「n」型ドープ領域のドーパント濃度よりも低いドーパント濃度を意味しており、他方、「n+」型ドープ領域は、「n」型ドープ領域のドーパント濃度よりも高いドーパント濃度を意味している。相対的なドーパント濃度の記載は、別個に記載がない限りは、同一の相対的なドーパント濃度が記載されているドープ領域が、同一の絶対的なドーパント濃度を有していなければならないことを意味しているのではない。例えば、2つの異なる「n」型ドープ領域が、同一または異なる絶対的なドーパント濃度を有していてもよい。
【0015】
術語「電気的に接続されている」は、電気的に接続されている構成要素間の低抵抗性の接続を表しており、例えば、該当する構成要素間の直接的なコンタクト、または金属および/または高ドープされた半導体を介する接続を表している。「電気的に結合されている」という表現は、「電気的に結合されている」構成要素間に、それらの構成要素間に介在する、信号伝送に適した1つまたは複数の構成要素、例えば、第1の状態においては低抵抗性の接続を生じさせることができ、また第2の状態においては高抵抗性の分離を生じさせることができるように制御することができる構成要素が設けられていてもよいことを含んでいる。
【0016】
図1には、トランジスタセルTCを備えている半導体モジュール500が示されている。半導体モジュール500は、IGFET(絶縁ゲート電界効果トランジスタ)であってよく、例えば、MOSFET(金属酸化物半導体FET)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)またはMCD(MOS制御型ダイオード)であってよく、この場合、半導体モジュール500は、トランジスタセルTCの他に、さらに別の半導体モジュール、例えば1つまたは複数のダイオード構造、例えばpnダイオードないしショットキーダイオードを有することができる。
【0017】
半導体モジュール500は、結晶性の炭化ケイ素(SiC)、例えば2H-SiC(2H-ポリタイプのSiC)、6H-SiCまたは15R-SiC、から成る炭化ケイ素ボディ100を基礎としている。1つの実施形態によれば、炭化ケイ素ボディ100の材料は、4H-SiCである。炭化ケイ素ボディ100の前面における第1の表面101は、平坦であるか、または波状である。平坦な第1の表面101または波状の第1の表面101の中央平面における垂線104は、垂直方向を規定している。平坦な第1の表面101ないし波状の第1の表面101の中央平面に対して平行な方向は、水平方向ないし横方向である。
【0018】
裏面において、炭化ケイ素ボディ100は、第1の表面101に対して平行な第2の表面102を有している。第1の表面101から第2の表面102までの炭化ケイ素ボディ100の層厚は、数100ナノメートルから数マイクロメートルまでであってよい。
【0019】
炭化ケイ素ボディ100には、ドリフト構造130が形成されており、このドリフト構造130は、第2の表面102に沿った少なくとも1つの高ドープされたコンタクト区間139と、第1の表面101と高ドープされたコンタクト区間139との間の第1の導電型の、比較的弱くドープされたドリフトゾーン131と、を有している。トランジスタセルTCのスイッチオン状態においては、負荷電流が垂直方向においてドリフトゾーン131を通って流れる。ドリフトゾーン131におけるドーパントおよび垂直方向の寸法は、実質的に、半導体モジュール500の阻止能力を決定する。
【0020】
ドリフト構造130は、トランジスタセルTCと第2の表面102との間のすべてのドープ領域を含んでおり、またドリフトゾーン131およびコンタクト区間139の他に、さらに別のドープ領域を有することができ、例えば、ドリフトゾーン131よりも遥かに強くドープされており、かつドリフトゾーン131をコンタクト区間139から隔てるバッファ層138と、トランジスタセルTCとドリフトゾーン131との間の、ドリフトゾーン131の導電型の別のドープ領域と、を有することができる。
【0021】
トランジスタセルTCは、第1の表面101から出発して炭化ケイ素ボディ100内に延在しているゲート構造150に沿って形成されている。ゲート構造150の2つの側面が炭化ケイ素ボディ100の主格子面に対して平行に延びるように、ゲート構造150を結晶性の炭化ケイ素ボディ100の格子に整列することができる。例えば、横断面に対して直交して延びるゲート構造150の2つの側壁は、(11-20)格子面に位置している。
【0022】
ゲート構造150は、例えばゲート金属化部330を介して半導体モジュール500のゲート端子Gに電気的に接続することができるゲート電極155と、そのゲート電極150を炭化ケイ素ボディ100から隔てるゲート誘電体159と、を含んでいる。ゲート誘電体159の層厚は、200nm未満、例えば100nm未満であってよい。ゲート構造150は、帯状ゲートであってよく、この場合、第1の表面101に対して平行であり、かつ横断面に対して直交する第2の水平方向に沿った長手方向の寸法は、横断面における第1の表面101に対して平行な第1の水平方向191に沿ったゲート構造150の幅w1の少なくとも5倍である。
【0023】
隣接するそれぞれ2つのゲート構造150の間では、コンタクト構造315が、第1の表面101から出発して炭化ケイ素ボディ100内に延在している。ゲート構造150およびコンタクト構造315は、第1の水平方向191に沿って交互に設けられている。それぞれ1つのゲート構造150およびコンタクト構造315が、横方向において、炭化ケイ素ボディ100のメサ区間190を画定している。
【0024】
メサ区間190においては、第1の導電型に相補的な第2の導電型のボディ領域120が形成されている。ボディ領域120は、メサ区間190において、ドリフト構造130と共に、例えばドリフトゾーン131と共に第1のpn接合部pn1を形成しており、また第1の表面101とボディ領域120との間に形成されているソース領域110と共に第2のpn接合部pn2を形成している。ソース領域110およびボディ領域120は、それぞれ、各ゲート構造150ならびにコンタクト構造315に直接的に接している。
【0025】
各トランジスタセルTCのボディ領域120およびソース領域110は、第1の負荷電極310を介して、半導体モジュール500の第1の負荷端子L1に電気的に接続されている。高ドープされたコンタクト区間139は、第2の負荷電極320を介して、半導体モジュール500の第2の負荷端子L2に電気的に接続されている。
【0026】
コンタクト構造315とドリフト構造130との間には、シールド領域160が形成されており、このシールド領域160は、コンタクト構造315の底部に直接的に接している。シールド領域160は、ボディ領域120に接することができ、コンタクト構造315の中心軸線について対称的に形成することができ、またコンタクト構造315の垂直方向の側壁の下側の区間に沿って延在することができる。第1の水平方向191に対して平行なシールド領域160の水平方向の幅w4は、コンタクト構造の水平方向の幅w2よりも大きくてよいが、しかしながら、シールド領域160が横方向においてゲート構造150から間隔を空けて設けられているように寸法設計されている。第1の表面101から、シールド領域160における最大ドーパント濃度までの距離v4は、ゲート構造150の垂直方向の寸法v1よりも大きくてよい。
【0027】
ゲート電極155は、金属構造を有しているか、または金属構造から成るものであり、この場合、金属構造を異なる材料から成る複数の部分層から形成することができる。例えば、ゲート電極155は、ゲート誘電体159に直接的に接しており、かつ第1の金属ないし第1の金属化合物から成る第1の部分層と、第2の金属ないし第2の金属化合物から成る充填構造と、を含んでいる。
【0028】
コンタクト構造315は、ソース領域110、ボディ領域120およびシールド領域160に隣接しており、また同様に、金属構造を有しているか、または金属構造から成り、この場合、金属構造は、異なる組成の複数の部分層を有することができる。コンタクト構造315およびゲート電極155は、同一の構造を有することができる。
【0029】
金属構造を有しているゲート電極155を基礎としているゲート構造150においては、ゲート構造150が狭い場合であっても、第2の水平方向に沿ったゲート電極155の長手方向抵抗は十分に小さいままであるので、ゲート構造150の幅に対するゲート構造150の垂直方向の寸法v1の比率によって規定されている、ゲート構造150のアスペクト比が1よりも大きい、例えば1.5または2よりも大きく選択される場合であっても、トランジスタセルTCの十分に均一なスイッチングを保証することができる。
【0030】
トランジスタセルTCをより密に組み込むことができるようにするために、半導体モジュール500における電界制御式のトランジスタチャネルの総幅を拡大することができ、ひいては半導体モジュール500のスイッチオン抵抗を劇的に低減することができる。例えば、隣接するゲート構造150の中心間距離p1を2μm以下に、例えば1μmまたは800nm以下に低減することができる。ゲート構造150の幅w1を600nm未満に、例えば400nm未満または300nm未満に設定することができる。
【0031】
その他に、ゲートパッドから十分に離れたゲート電極155の区間を低抵抗に接続するための、第1の表面101にわたり形成される金属製のゲート線路を省略することができる。モジュール前面におけるその種のゲート線路の省略によって、アクティブなモジュール面の割合を高めることができる。
【0032】
ゲート構造150およびコンタクト構造315を基礎とする溝は、同一のフォトリソグラフィマスクによって規定することができるので、コンタクト構造315に対するゲート構造150の相対的な位置を非常に良好に規定することができ、また殆ど変動は生じないので、メサ区間190も非常に狭く形成することができる。例えば、メサ区間190のメサ幅w3は、500nm未満、例えば400nm未満である。
【0033】
ゲート電極155の材料の比抵抗が低いことから、ゲート構造150の垂直方向の寸法v1ならびにコンタクト構造315の垂直方向の寸法v2も低減することができる。さらに、ゲート構造150の垂直方向の寸法v1およびコンタクト構造315の垂直方向の寸法v2がより小さくなることによって、シールド領域160から第1の表面101までの距離が短縮され、またシールド領域160を規定するドーパントの注入に必要とされる注入エネルギがより低くなる。注入エネルギがより低くなった結果、ここでもまた、ドーパントの横方向におけるより僅かな分散が達成されるので、この態様も、隣接するゲート構造150ないしトランジスタセルTCのより短い中心間距離p1をサポートする。さらに、シールド領域160を規定するための注入マスクを、より薄いハードマスクないしフォトレジストマスクとして形成することができ、これによって、シールド領域160の横方向の寸法w4の偏差が一層低減される。
【0034】
コンタクト構造315の幅w2も同様に600nm未満、例えば400nm未満、例えば最大で300nmであってよく、この場合、ゲート構造150の幅w1およびコンタクト構造315の幅w2は同じ大きさであると考えられるか、または相互に僅かに異なると考えられる。例えば、コンタクト構造315の幅w2は、ゲート構造150の幅w1よりも少なくとも10%大きくてよい。
【0035】
さらに、コンタクト構造315を介するシールド領域160の低抵抗の接続は、スイッチング過程の際の、シールド領域160からのキャリアの高速な排出、またはシールド領域160へのキャリアの高速な供給を実現し、またそれによって半導体モジュール500のスイッチング特性を改善する。
【0036】
さらに、シールド領域160のためのドーパントを、コンタクト構造315のために事前に形成されていた溝を介して導入することができ、この場合、注入を比較的低いエネルギで行うことができ、したがってドーパントの横方向の分散(ストラグリング)を低くすることができるので、その結果、ゲート構造150に対して相対的なシールド領域160の距離が良好に定義されており、また殆ど変動は生じず、したがって、シールド領域160の幅w4も非常に良好に調整することができ、つまり小さいメサ幅w3も同様にサポートされる。シールド領域160は、ボディ領域120へのドレイン電位の影響を低下させるので、比較的短いチャネルを備えている、つまりゲート構造150の比較的短い垂直方向の寸法v1を備えているトランジスタセルTCを設けることができる。製造技術的に規定される、ゲート構造150のアスペクト比の上限に関して、垂直方向の寸法v1の低減は、横方向の幅w1の更なる縮小をもたらす。
【0037】
コンタクト溝の底部を介する注入によって、所要注入エネルギが低減され、したがって炭化ケイ素ボディ100において結晶欠陥が発生する確率も低下する。そのような結晶欠陥が発生した場合、バイポーラ劣化作用が生じる可能性がある。
【0038】
図2Aには、シールド領域160がボディ領域120から間隔を空けて設けられており、その結果、コンタクト構造315の側壁の下側の区間がドリフト構造130に直接的に接している、半導体モジュール500が示されている。例えば、ドリフトゾーン131が、コンタクト構造315に接することができるか、またはドリフトゾーン131と同一の導電型を有しているドリフト構造130の別のドープ部分領域、例えば電流拡散層が、コンタクト構造315に直接的に接しており、またドリフトゾーン131よりも高い、例えば少なくとも2倍、5倍または10倍高いドーパント濃度を有している。コンタクト構造315とドリフト構造130との間の境界面は、ショットキーコンタクトSCを形成しており、このショットキーコンタクトSCは、その高さ全体において、第1の負荷端子L1とドリフト構造130との間のショットキーダイオードとして機能する。半導体モジュール500がSiC-MOSFETである場合には、ショットキーコンタクトSCは、その高さ全体において、真性ボディダイオードに電気的に並列に接続されているショットキーダイオードとして機能する。
【0039】
トランジスタセルTCへのショットキーコンタクトSCの集積によって、半導体モジュール500の逆方向動作時には、第3のpn接合部pn3を介してバイポーラ電流が流れる代わりに、先ず、ショットキーコンタクトSCを介してユニポーラ電流が流れる。ショットキーコンタクトSCによって形成されたショットキーダイオードの投入電圧は、第3のpn接合部によって形成されたpnダイオードの投入電圧よりも低いので、ショットキーコンタクトSCによって、ドリフトゾーン131内のバイポーラ電流の流れはある程度まで抑制され、それによってドリフトゾーン131における電荷の再結合、ならびに電荷の再結合に起因する局所的な熱発生も低減される。このようにして、ショットキーコンタクトSCは、積層欠陥の拡大を抑制ないし緩和させる。この積層欠陥は、十分な加熱時に、結晶欠陥から出発して、SiC結晶における主格子面に沿って伝播し、トランジスタセルTCのオン抵抗Rdsonを劣化させる可能性がある。
【0040】
図2Bにおいては、半導体モジュール500が、ゲート構造150の垂直方向の寸法v1よりも大きい垂直方向の寸法v2と、ゲート構造150の横方向の幅w1よりも僅かに大きい横方向の幅w2と、を備えている、コンタクト構造315を有している。ショットキーコンタクトSCの実効面積は、
図2Aの実施形態におけるものよりも大きい。さらに、
図2Bには、コンタクト構造315に沿って高ドープされたコンタクト区間129を有しているボディ領域120が示されている。コンタクト区間129においては、ドーパント濃度が、コンタクト区間129以外のボディ領域120の主区間121におけるドーパント濃度よりも遥かに高く、例えば主区間121におけるドーパント濃度よりも少なくとも2倍高い。トランジスタチャネルが形成される主区間121の部分領域は、その主区間121の横方向に配置されているコンタクト区間129に対して遮蔽されており、それによってこの領域が空になることが低減される。したがって、トランジスタセルTCに、より短いトランジスタチャネルを設けることができ、それによってメサ幅の更なる低減が実現される。
【0041】
図3には、同一の構造を有しており、また同時に形成することができるゲート電極155ならびにコンタクト構造315の詳細が示されている。ゲート電極155は、ゲート誘電体159に接している、金属構造170の第1の区間171を有している。コンタクト構造315は、炭化ケイ素ボディ100に直接的に接している、金属構造170の第2の区間172を有している。
【0042】
金属構造170は、金属、金属化合物または合金を含有しているか、またはそれらから成る、少なくとも1つの部分層を有している。1つの実施形態によれば、金属構造170が、第1の部分層173および第2の部分層174を有しており、この場合、ゲート構造150における第1の部分層173の第1の区間は、ゲート誘電体159に直接的に接しており、またコンタクト構造315における第1の部分層173の第2の区間は、炭化ケイ素ボディ100に直接的に接している。
【0043】
第1の部分層173を、第2の部分層174のための固着層として設計することができる。第1の部分層173の第1の区間は、1.5V~8Vまでの範囲のトランジスタセルTCの閾値電圧に関する適切な仕事関数を有することができる。第1の部分層173の第2の区間は、炭化ケイ素におけるn型ドープ領域およびp型ドープ領域に対して良好なオームコンタクトを形成することができる。
【0044】
第1の部分層173の第2の区間は、第1の部分層173の第1の区間とは異なる組成を有することができる。例えば、第1の部分層173の第2の区間は、金属/SiC材料(Metal/SiC材料)を有することができ、この金属/SiC材料は、少なくとも部分的にケイ素化された金属、例えばケイ化ニッケル、ケイ化白金またはケイ化チタンを含有することができる。
【0045】
1つの実施形態によれば、第1の部分層173の第1の区間および第2の区間が、同一の組成を有している。例えば、第1の部分層173の第1の区間および第2の区間は、少なくとも、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)またはタンタル(Ta)を含有している。1つの実施形態によれば、第1の部分層173の2つの区間が、チタン層、窒化チタン層、モリブデン層、または窒化モリブデン層、タンタル層、または窒化タンタル層を含んでいるか、またはそれらの層から成る。
【0046】
第2の部分層174は、良好な充填特性を備えた、金属、金属化合物または合金を含有することができる。例えば、第2の部分層174は、タングステン(W)を含有している。金属構造170の第2の区間172における第2の部分層174の区間は、金属構造170の第1の区間171における第2の部分層174の区間と同一の組成を有することができる。
【0047】
図4には、コンタクト構造315に沿って高ドープされたコンタクト区間129を有しているボディ領域120を備えている半導体モジュール500が示されている。この高ドープされたコンタクト区間129においては、ドーパント濃度が、コンタクト区間129以外のボディ領域120の主区間121のドーパント濃度よりも遥かに高い。
【0048】
半導体モジュール500は、第1の表面101から出発して炭化ケイ素ボディ100内に延在しているゲート構造150と、第1の表面101から出発して炭化ケイ素ボディ100内に延在しているコンタクト構造315と、を有しており、ゲート構造150およびコンタクト構造315は、第1の表面101に対して平行な第1の水平方向191に沿って交互に設けられている。ゲート構造150とコンタクト構造315との間の炭化ケイ素ボディ100のメサ区間190においては、ボディ領域120が形成されており、このボディ領域120は、ゲート構造150に接している主区間121と、その主区間121とコンタクト構造315との間において、コンタクト構造315に接しているコンタクト区間129と、を有している。ボディ領域120の導電型のシールド領域160は、コンタクト構造315の底部に延在しており、かつ第1の水平方向191に沿って、ゲート構造150から間隔を空けて設けられている。
【0049】
図5Aから
図5Dによる半導体モジュール500は、SiC-TMOSFET(SiC-トレンチMOSFET)である。モジュール前面における第1の負荷電極310は、中間誘電体層210における開口部を通り、コンタクト構造315に直接的に接続されており、またSiC-TMOSFETのソース端子Sを形成するか、またはその種のソース端子Sに電気的に接続されている。SiC-TMOSFETの裏面で第2の表面102に載置されており、かつコンタクト区間139に直接的に接している負荷電極320は、ドレイン端子Dを形成しているか、またはドレイン端子Dに電気的に低抵抗で接続されている。ゲート構造150は、炭化ケイ素ボディ100のSiC結晶における主格子面に対して平行である、垂直な側壁を有している。
【0050】
図5AのSiC-TMOSFETは、ボディ領域120に直接的に接しているシールド領域160を含んでいる。ボディ領域120は、コンタクト構造315に沿って、高ドープされたコンタクト区間129を含んでいる。<0001>結晶方向は、横断面に対して垂直な平面において横断面に対して2°~12°の間の角度、例えば約4°の角度だけ偏差して傾斜している。<11-20>結晶方向は、第1の表面101に対して平行であり、かつ横断面に対して平行である。<1-100>結晶方向は、横断面に対して垂直な平面において、<0001>結晶方向に対して90°傾斜されている。メサ区間190の垂直な側面は、ほぼ同一の電荷移動性を有している、(11-20)格子面および(-1-120)格子面である。
【0051】
図5BのSiC-TMOSFETにおいては、<0001>結晶方向が、横断面に対して垂直な平面において、横断面に対して4°傾斜されている。<11-20>結晶方向は、横断面に対して垂直な平面において、<0001>結晶方向に対して90°傾斜されている。<1-100>結晶方向は、第1の表面101に対して平行であり、かつ横断面に対して平行である。メサ区間190の垂直な側面は、高い電荷移動性を有している、(1-100)格子面および(-1100)格子面に位置している。
図5AのSiC-TMOSFETとは異なり、シールド領域160は、横方向において、隣接するゲート構造150の方向にさらに延びている。
【0052】
図5Cにおいては、シールド領域160が、ボディ領域120から間隔を空けて設けられているので、ボディ領域120とシールド領域160との間のコンタクト構造315の側壁に沿って、ショットキーコンタクトSCが形成されている。
【0053】
図5DのSiC-TMOSFETは、コンタクト構造315を有しており、このコンタクト構造315は、炭化ケイ素ボディ100においてゲート構造150よりも深い位置まで到達しており、その結果、ボディ領域120とシールド領域160との間に形成されているショットキーコンタクトSCは、トランジスタセルTCあたり、より大きい面積を有している。
【0054】
図6は、例えば上述のような半導体モジュール500を製造する際に用いられる方法に関する。主層の所定の区間にボディ層が形成されており、かつボディ層の所定の区間にソース層が形成されている炭化ケイ素基板が形成され、ここでは、ボディ層の導電型が、ソース層の導電型ならびに主層に形成されているドリフト層の導電型とは逆の導電型を有している(902)。ソース層およびボディ層によって、炭化ケイ素基板の第1の主面に対して平行な第1の水平方向に沿って交互に設けられている、ゲート溝およびコンタクト溝が形成される(904)。ゲート溝には、ゲート誘電体が形成される(906)。ゲート溝においてゲート誘電体に接している第1の区間と、ボディ層の区間から形成されているボディ領域およびソース層の区間から形成されているソース領域に接している第2の区間と、を有している金属構造が形成される(908)。金属構造の第1の区間を第2の区間に接続する、金属構造の第3の区間が除去される(910)。
【0055】
ゲート溝およびコンタクト溝が同時に形成されることによって、ボディ溝とコンタクト溝との間の狭い間隔が実現される。ゲート溝においてもコンタクト溝においても金属構造が同時に形成されることによって、半導体技術においては一般的な金属ないし金属化合物、例えばケイ化金属、チタン、タンタル、窒化チタン、窒化タンタルおよびタングステンを、ゲート電極およびコンタクト構造の形成のために使用することができる。
【0056】
図7Aから
図7Dは、シールド領域を形成するためのドーパントがコンタクト溝の底部を介して導入される、SiC半導体モジュールのための製造方法の1つの実施形態に関する。
【0057】
先ず、少なくとも1つの強くドープされた基板区間739と、その基板区間739上に、例えばエピタキシによって形成された層区間790と、を有することができる、炭化ケイ素基板700が準備される。基板区間739と、その基板区間739に接している、層区間790の下側部分区間とが、主層730を形成しており、この主層730は、基板区間739に隣接して、少なくとも1つの弱くドープされたドリフト層731を含んでいる。主層730の所定の区間にはボディ層720が形成されており、またボディ層720の所定の区間にはソース層710が形成されている。炭化ケイ素基板700の前面における層区間790の露出された表面は、第1の主面701を形成しており、また炭化ケイ素基板700の裏面における基板区間739の露出された表面は、第2の主面702を形成している。炭化ケイ素基板700は、2H-SiC、4H-SiC、6H-SiC、15R-SiCまたは別のポリタイプの炭化ケイ素から成るものであってよい。
【0058】
図7Aには、ボディ層720が、主層730と共に、またソース層710と共に、第1の主面701に対して平行に延在するpn接合部を形成している。ドリフト層731と基板区間739との間おいて、主層730は、ドリフト層731の導電型のバッファ層738を有することができる。1つの実施例によれば、ボディ層720は、p型ドープされている。
【0059】
前面から、主層730まで延在するゲート溝750およびコンタクト溝715が形成される。選択的に、コンタクト溝715の底部を介して、ボディ層720の導電型のドーパントが導入される。
【0060】
図7Bによれば、ゲート溝750およびコンタクト溝715が、第1の水平方向191に沿って交互に設けられている。隣接するゲート溝750とコンタクト溝715との間の炭化ケイ素基板700の区間は、メサ区間190を形成しており、この場合、隣接するゲート溝750とコンタクト溝715との間の、
図7Aのソース層710の区間が、ボディ領域120、ソース領域110を形成しており、また隣接するゲート溝750とコンタクト溝715との間の、
図7Aのボディ層720の区間が、ボディ領域120を形成している。各ボディ領域120は、メサ区間190において、第1の主層730と共に第1のpn接合部pn1を形成しており、かつソース領域110と共に第2のpn接合部pn2を形成している。
【0061】
コンタクト溝715の底部を介して導入されたドーパントは、コンタクト溝715の領域においてのみ、シールド領域160を形成し、このシールド領域160は、隣接するゲート溝750から間隔を空けて設けられており、かつゲート溝750よりも深い位置まで炭化ケイ素基板700内に延在している。シールド領域160は、主層730と共に、例えばドリフト層731と共に別のpn接合部を形成している。
【0062】
ゲート溝750には、ゲート誘電体159が形成される。例えば、前面において露出している、炭化ケイ素基板700の面の熱酸化によって、酸化ケイ素が形成される。代替的または付加的に、1つまたは複数の誘電層を堆積させることができ、この誘電層によって、第1の主面701、ゲート溝750およびコンタクト溝715の底部、ならびにゲート溝750およびコンタクト溝715の側壁が同じ層厚で覆われる。続いて、ゲート溝750を選択的に充填するか、または覆うエッチングマスクを形成することができ、これによって、マスクエッチングプロセスにおいては、コンタクト溝715の領域において、成長または堆積した誘電層の区間を除去することができる。
【0063】
図7Cには、ゲート溝750におけるゲート誘電体159と、ゲート誘電体を有していないコンタクト溝715と、が示されている。
【0064】
2つまたはそれ以上の部分プロセスにおいて、金属構造170が被着され、この場合、各部分プロセスによって、金属構造の部分層または部分層の所定の区間が形成される。例えば、先ず、薄い第1の部分層173が堆積され、この第1の部分層173は、一方では、ゲート誘電体159に沿って少数の表面状態だけを許容する、かつ/または炭化ケイ素との低抵抗かつ確実なコンタクトを形成する、かつ/または適切なショットキーコンタクト、例えば窒化チタン層を形成する。
【0065】
第2のステップにおいては、第2の部分層を被着することができ、この第2の部分層は、
図7Cのゲート溝750およびコンタクト溝715の残りの内部を完全に充填する。この場合、金属構造170の第1の区間171がゲート溝750を充填し、金属構造170の第2の区間が、コンタクト溝715を充填する。更なるステップにおいては、第1の主面701の上方に形成され、かつ第1の区間171を第2の区間172に接続する金属構造170の第3の区間が除去される。
【0066】
図7Dには、上述の方法から生じる構造が示されており、ここでは、シールド領域160が、金属構造170の第2の区間172によって形成されたコンタクト構造315についてセルフアライメントされて形成されている。金属構造170の第1の区間171は、ゲート誘電体159と共に、ゲート構造150を形成している。
【0067】
図8Aから
図8Lは、シールド領域を形成するためのドーパントがコンタクト溝を形成する前に導入される、SiC半導体モジュールのための製造方法の1つの実施形態に関する。
【0068】
図8Aには、n+型ドープされた、4Hポリタイプの基板区間739を備えている炭化ケイ素基板700が示されている。1つの実施形態によれば、横断面に対して垂直な平面における<0001>結晶方向が、2°~12°、例えば約4°の角度だけ偏差して、垂線104に対して傾斜しており、また横断面における<11-20>結晶方向が、第1の主面701に対して平行であり、その結果、(11-10)格子面に沿った垂直な側面を備えている溝を形成することができ、またそれによって、それらの格子面において良好なチャネル特性を利用することができる。1つの別の実施形態によれば、横断面に対して垂直な平面における<0001>結晶方向が、垂線104に対して所定の角度だけ偏差して傾斜しており、また<1-1000>結晶方向が、横断面および第1の主面701に対して平行であるので、その結果、更なる経過において、比較的良好なチャネル特性を有している(1-100)格子面に沿った垂直な側面を備えている溝を形成することができる。
【0069】
基板区間739の上には、エピタキシによって、n型ドープされたバッファ層738およびn-型ドープされたドリフト層731を順次形成することができる。ドリフト層731上には、p型ドープされたボディ層720が形成され、またボディ層720上には、n++型ドープされたソース層710が形成される。例えば、ボディ層720およびソース層710を、バッファ層738上に成長されたエピタキシャル層の区間へのドーパントの注入によって形成することができる。ボディ層720とバッファ層738との間のエピタキシャル層の残存する区間は、ここでは、ドリフト層731を形成する。ボディ層720ないしソース層710を形成するためのドーパントの注入を、マスクを用いて行うことができるので、炭化ケイ素基板700に規定されるモジュール領域の縁部端子領域へのドーパントの注入は行われない。
【0070】
図8Aには、基板区間739、バッファ層738およびドリフト層731を含んでいる主層730と、主層730におけるモジュール領域の活性領域にのみ形成されるボディ層720と、同様に活性領域にのみ形成されるソース層710と、を備えている炭化ケイ素基板700が示されている。
【0071】
ソース層710の露出された表面によって規定されている、炭化ケイ素基板700の第1の主面701上には、例えば酸化ケイ素層から成るか、または酸化ケイ素層を含んでいるハードマスク層が堆積される。ハードマスク層上には、第1のフォトレジスト層が堆積され、またリソグラフィ法によってパターニングされる。エッチング法によって、現像された第1のフォトレジスト層のパターンがハードマスク層に転写され、この場合、ハードマスク層から、第1の開口部415を備えている第1のハードマスク410が形成される。現像されたフォトレジスト層は除去される。第1のハードマスク410の第1の開口部415を介して、種々の注入エネルギで、ボディ層720の導電型のドーパントが注入される。
【0072】
図8Bには、ハードマスク層から形成されており、かつ第1の開口部415を備えている第1のハードマスク410が示されている。第1の開口部415の垂直な投影方向において、注入されたドーパントは、第1のドープ領域128および第2のドープ領域168を形成し、それらのドープ領域を垂直方向において相互に離隔させることができる。第1のドープ領域128および第2のドープ領域168の各々を、複数の異なる注入エネルギでの注入によって生じさせることができる。第1のドープ領域128は、実質的に、ボディ層720に形成されている。第2のドープ領域168は、主として、ボディ層720の下方の主層730に形成されている。第1のドープ領域128および第2のドープ領域168の横方向の幅は、分散作用(ストラグリング)に起因して、第1の開口部415の相応の幅よりも大きい。
【0073】
第1のハードマスク410は除去され、注入されたドーパントを活性化させることができ、その際、ドーパントの原子は、結晶格子における正規の格子位置を取る。
【0074】
図8Cには、活性化されたドーパントを含む、第1のドープ領域128および第2のドープ領域168が示されている。
【0075】
第2のハードマスク層を堆積することができ、また現像された第2のフォトレジスト層422をパターニングすることができ、この場合、第2のハードマスク層から、第1のマスク開口部425および第2のマスク開口部426を備えている溝エッチングマスク420が形成される。
【0076】
図8Dには、現像された第2のフォトレジスト層422、ならびに第1のマスク開口部425および第2のマスク開口部426を備えている溝エッチングマスク420が示されている。第1のマスク開口部425は、第1のドープ領域128および第2のドープ領域168の垂直方向に投影されている。第2のマスク開口部426は、それぞれ、隣接する2つの第1のマスク開口部425間の中心に形成されている。現像された第2のフォトレジスト層422を除去することができ、また溝エッチングマスク420のパターンを、炭化ケイ素基板700に転写することができ、ここでは、炭化ケイ素基板700には、ほぼ垂直な側面を備えている溝がエッチングされる。1つの別の実施形態によれば、連続的に2つの異なる溝エッチングマスクを形成することができ、その結果、コンタクト溝715およびゲート溝750を相互に独立して、かつ異なる深さで形成することができる。1つの別の実施形態によれば、コンタクト溝715およびゲート溝750は、先ず、溝エッチングマスク420を使用して一緒にエッチングされ、コンタクト溝715は、更なるステップにおいて選択的にゲート溝750より深く掘り下げられる。
【0077】
図8Eには、エッチングにより生じたコンタクト溝715が示されており、このコンタクト溝715は、
図8Dの第2のドープ領域168まで到達しており、第1のドープ領域128を、各コンタクト溝715の両側において、相互に離隔されたコンタクト区間129に離隔させている。
図8Dの第2のドープ領域168は、シールド領域160を形成している。ゲート溝750は、それぞれ、シールド領域160に対して間隔を空けて設けられており、またそれぞれ隣接する2つのコンタクト溝715間に形成されている。1つの実施形態によれば、溝底部に沿ったゲート溝750の内縁ないしコンタクト溝715の内縁、もしくは第1の主面701におけるゲート溝750の外縁およびコンタクト溝715の外縁を、例えば水素含有環境における熱処理(H
2アニール)によって丸くすることができる。
【0078】
酸素が十分な雰囲気における熱処理によって、炭化ケイ素基板700の前面において露出された区間を酸化させることができる。
【0079】
図8Fには、熱処理によって生じた犠牲酸化物層290が示されており、この犠牲酸化物層290は、均一な層厚で、炭化ケイ素基板700の前面を覆っている。犠牲酸化物層290は除去される。
【0080】
図8Gには、
図8Fの犠牲酸化物層290の材料選択性除去後の炭化ケイ素基板700が示されている。犠牲酸化物層290の形成および除去によって、表面近傍の結晶欠陥が除去される。
【0081】
例えば、炭化ケイ素基板700の熱酸化によって、ゲート誘電体層158が形成される。1つの別の実施形態によれば、ゲート誘電体層158の形成が、酸化ケイ素の堆積、1,100℃を上回る温度での、堆積された酸化ケイ素の凝縮、また必要に応じて行われる、水素が少ない環境でのポスト酸化を含んでいる。
【0082】
ゲート誘電体層158を、必要に応じて、窒素および酸素を含有する雰囲気における更なる熱処理によって事後処理することができる。高温での、また適切な周囲条件下での事後処理は、ゲート誘電体層158が侵食性の周囲条件、例えば金属堆積時の塩素含有雰囲気に晒される可能性がある後続のプロセスステップにおけるゲート誘電体層158の負荷耐性を高める。
【0083】
図8Hには、炭化ケイ素基板700の前面を均一な層厚で覆っているゲート誘電体層158が示されている。第3のフォトレジスト層が被着され、フォトリソグラフィによってパターニングされ、ここでは、現像された第3のフォトレジスト層430における第2の開口部435によって、コンタクト溝715が露出されている。
【0084】
図8Iには、ゲート溝750を充填しているか、または少なくとも覆っている、現像された第3のフォトレジスト層430が示されている。現像された第3のフォトレジスト層430における第2の開口部435によって、コンタクト溝715におけるゲート誘電体層158の区間が露出されている。現像された第3のフォトレジスト層430は、コンタクト溝715とゲート溝750との間の炭化ケイ素基板700のメサ区間190を覆うことができる。
【0085】
現像された第3のフォトレジスト層430をエッチングマスクとして使用して、ゲート誘電体層158の露出された区間が除去される。その後、現像された第3のフォトレジスト層430が除去される。
【0086】
図8Jには、
図8Jのゲート誘電体層158から生じたゲート誘電体159が示されており、このゲート誘電体159は、ゲート溝750の内面に設けられており、またメサ区間190の少なくとも一部を覆うことができる。コンタクト溝715の側面においては、ソース領域110ならびにボディ領域120のコンタクト区間129が露出されている。コンタクト溝715の底部においては、また必要に応じてコンタクト溝715の側面の下側の区間に沿って、シールド領域160が露出されている。
【0087】
金属または金属化合物から成る、金属含有性の第1の部分層173が、例えば原子層堆積(atomic layer deposition,ALD)によって、またはALDと熱処理の組合せから形成される。1つの実施形態によれば、第1の部分層173の形成が、ALDによる窒化チタン層の堆積を含んでいる。金属または金属化合物から成る第2の部分層174を、例えばタングステンのスパッタリングによって被着させることができる。
【0088】
図8Kには、第1の部分層173および第2の部分層174から形成されている金属構造170が示されている。第1の部分層173は、高い適合性でもって、ゲート溝750およびコンタクト溝715の内面に設けられている。第1の部分層173の層厚は、数ナノメートル、例えば数10ナノメートルであると考えられる。第2の部分層174は、
図8Jのコンタクト溝715の内部およびゲート溝750の内部を充填している。第1の部分層173は、例えば、ケイ化金属層、チタン層、タンタル層、窒化チタン層、窒化タンタル層、または少なくともチタンまたはタンタルを含有している別の層であってよいか、またはそれらの層を有することができる。
【0089】
図8Jのゲート溝750における金属構造170の第1の区間171は、ゲート電極155を形成しており、ここでは、ゲート電極155が、ゲート誘電体159と共にゲート構造150を形成している。
図8Jのコンタクト溝715における金属構造170の第2の区間172は、ソース領域110、ボディ領域120のコンタクト区間129ならびにシールド領域160との低抵抗の接合部を備えている、コンタクト構造315を形成している。第1の主面701にわたる金属構造170の第3の区間175は、第1の区間171を第2の区間172に接続している。
【0090】
金属構造170の第3の区間175は除去され、例えば湿式エッチングによって、また必要に応じて化学機械研磨(chemical-mechanical polishing,CMP)と組み合わされて除去され、この場合、メサ区間190におけるゲート誘電体159の区間の露出を、研磨に関する停止信号として使用することができる。
【0091】
図8Lには、
図8Kの金属構造170の第3の区間175の除去後の炭化ケイ素基板700が示されている。
【0092】
図9Aから
図9Gは、金属構造でもってコンタクト溝715を充填する前の、コンタクト溝715の底部を介する注入による、シールド領域160の形成に関する。
【0093】
図9Aには、
図8Aおよび
図8Cと関連させて説明したような、第1のドープ領域128を形成するためのドーパントの注入後の炭化ケイ素基板700が示されている。
【0094】
図9Bによれば、
図8Dと関連させて説明したように、第1の主面701上には、第1のマスク開口部425および第2のマスク開口部426を備えている溝エッチングマスク420が形成され、ここでは、第1のマスク開口部425が、第1のドープ領域128の垂直方向に投影されて形成され、また第2のマスク開口部426が、それぞれ、隣接する2つの第1のマスク開口部425間の中心に形成される。
【0095】
溝エッチングマスク420のパターンが、炭化ケイ素基板700に転写され、その際に、炭化ケイ素基板700には、コンタクト溝715およびゲート溝750が形成される。コンタクト溝715およびゲート溝750の底部および開口部における縁部を丸めることができ、例えば炭化ケイ素が酸化もされず、また窒化層も形成しない雰囲気における熱処理によって丸めることができ、この場合、熱処理によって炭化ケイ素結晶の原子が適切に再編される。
【0096】
図9Cには、エッチングにより生じたコンタクト溝715が示されており、このコンタクト溝715は、ドリフト領域731まで到達しており、第1のドープ領域128を、各コンタクト溝715の両側において、相互に離隔されたコンタクト区間129に離隔させている。コンタクト溝715とゲート溝750との間の、炭化ケイ素基板700のメサ区間におけるボディ層720の残存区間は、ボディ領域120を形成しており、またメサ区間におけるソース層710の残存区間は、ソース領域110を形成している。
【0097】
酸素が十分な雰囲気における熱処理によって、コンタクト溝715およびゲート溝750における炭化ケイ素基板700の露出された区間を酸化させることができる。
【0098】
図9Dから見て取れるように、熱処理によって形成された犠牲酸化物層290は、ほぼ均一な層厚で、コンタクト溝715およびゲート溝750の内面を覆っている。別のマスク層が堆積され、フォトリソグラフィによってパターニングされる。コンタクト溝715の底部を介して、ボディ領域120の導電型のドーパントが、炭化ケイ素基板700に導入され、例えば少なくとも2つの異なるエネルギレベルでの注入の注入プロセスによって包含される。
【0099】
図9Eによれば、別のマスク層から形成された注入マスク440のマスク開口部445によって、溝エッチングマスク420の第1のマスク開口部425が露出されており、また注入マスク440は、第2のマスク開口部426を充填しているか、もしくは覆っている。コンタクト溝715の下方においては、溝底部を介して導入されたドーパントが、シールド領域160を形成しており、このシールド領域160は、隣接するゲート溝750から間隔を空けて設けられており、かつ炭化ケイ素基板700においてゲート溝750よりも深い位置まで到達している。
【0100】
第1の主面701を介する注入によるシールド領域160の形成とは異なり、所要注入エネルギは、コンタクト溝715の垂直方向の寸法に応じた分だけ低減されている。これによって、同等の垂直方向の寸法を備えているシールド領域160に関しては、ドーパントの横方向の分散が低減されており、したがってゲート溝750とコンタクト溝715との間の達成可能な最小間隔が縮小されている。差し当たり節約されるエネルギバジェットを、ドリフト層731のより深い位置までシールド領域760を進入させるためにも部分的に利用することができる。
【0101】
注入マスク440、溝エッチングマスク420ならびに犠牲酸化物層290が除去され、この場合、犠牲酸化物層290の形成および除去でもって、表面近傍の結晶欠陥も除去される。ゲート誘電体層158が形成される。
【0102】
図9Fには、炭化ケイ素基板700の前面を均一な層厚で覆っているゲート誘電体層158が示されている。第3のフォトレジスト層が被着され、フォトリソグラフィによってパターニングされ、ここでは、現像された第3のフォトレジスト層430における開口部435によって、コンタクト溝715が露出されている。現像された第3のフォトレジスト層430は、コンタクト溝715とゲート溝750との間の炭化ケイ素基板700のメサ区間190を覆うことができる。現像された第3のフォトレジスト層430をエッチングマスクとして使用して、ゲート誘電体層158の露出された区間が除去される。
【0103】
図9Gには、ゲート溝750を充填しているか、または少なくとも覆っている、現像された第3のフォトレジスト層430が示されている。ゲート誘電体層158のエッチング時に、現像された第3のフォトレジスト層430を部分的にアンダーエッチングすることができる。このプロセスを、上述のようなコンタクト溝715およびゲート溝750における金属構造の形成と共に継続することができる。
【0104】
図10には、例えば
図9Aから9Gを参照して説明した方法から生じた、シールド領域160のドーパント分布が概略的に示されており、ここでは、ドーパントの注入が、異なる加速エネルギでの少なくとも2回の部分注入を含んでいる。
【0105】
シールド領域160は、正味ドーパント濃度p1を有している第1の部分領域161を含んでおり、この正味ドーパント濃度p1は、第2の部分領域162における正味ドーパント濃度p2よりも高く、この正味ドーパント濃度p2は、第3の部分領域163における正味ドーパント濃度p3よりも高く、またこの正味ドーパント濃度p3は、第4の部分領域164における正味ドーパント濃度p4よりも高い。第1の表面101からの、シールド領域160内で最も深くにあるドーパント最大値までの距離v4は、ゲート構造150の垂直方向の寸法v1よりも遥かに大きく、例えば、v4はv1の少なくとも150%である。コンタクト構造315の側壁を越えたシールド領域160の横方向の寸法w5は、メサ幅w3の最大で60%である。
【0106】
本明細書および図面は、特定の固有の実施形態を含んでいるにもかかわらず、当該技術分野の当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、固有の実施形態の代わりに想定することができる、複数の代替的なかつ/または等価の実施形態が存在することが分かる。本明細書は特定の実施形態のあらゆる種類の改造およびヴァリエーションを含むべきことが意図されていることは明白である。したがって、本発明の限界は、特許請求の範囲およびそれと等価のものにおいてのみ見出されることも同様に意図されている。