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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】フォトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/00 20120101AFI20230523BHJP
   G03F 1/32 20120101ALI20230523BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G03F1/00 Z
G03F1/32
G03F7/20 505
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018226748
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020091330
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】302003244
【氏名又は名称】株式会社エスケーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】田邉 勇
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-173949(JP,A)
【文献】特開2002-367900(JP,A)
【文献】特開2017-098285(JP,A)
【文献】特開2012-008545(JP,A)
【文献】特開2010-267978(JP,A)
【文献】特開2006-313202(JP,A)
【文献】特開2014-126748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86、7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画装置を用いたフォトマスクの製造方法であって、
前記描画装置は、半導体レーザーから照射されたレーザー光の光路中に傾斜角度を独立して変更可能な複数のマイクロミラーで構成されるマイクロミラーアレイを含み、
フォトレジスト膜を形成したフォトマスク基板を設置するステップと、
前記マイクロミラーアレイにレーザー光を照射するステップと、
前記マイクロミラーアレイに照射される前記レーザー光の強度分布とパターン幅の変動量の閾値とから、前記強度分布が面内で均一な照射領域であるマイクロミラー制御領域を設定し、前記マイクロミラー制御領域の前記マイクロミラーの各々に対して、レーザーによる強度分布とパターン幅の変動量の閾値との相関関係から、前記傾斜角度を制御することにより、前記レーザー光の照射状態を時間的に制御するステップと、
前記フォトマスク基板に対する前記レーザー光の照射位置を相対的に変化させるステップと
を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記マイクロミラーアレイは、第1の領域、第2の領域及び第3の領域に区分され、
前記第1の領域に配置されたマイクロミラーは、第1の制御時間の間、第1の状態を維持しつつ、その他の時間は第2の状態を維持し、
前記第2の領域に配置されたマイクロミラーは、第2の制御時間の間、第1の状態を維持しつつ、その他の時間は第2の状態を維持し、
前記第3の領域に配置されたマイクロミラーは、第3の制御時間の間、第1の状態を維持しつつ、その他の時間は第2の状態を維持し、
第1の制御時間、第2の制御時間、第3の制御時間は互いに異なるように設定されることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記フォトレジストの前記レーザーによる露光量とパターン幅変動量との相関関係から、前記第1の領域、第2の領域及び前記第3の領域をマイクロミラー単位で補正することを特徴とする請求項2記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項4】
前記フォトレジストを露光するステップと
前記マイクロミラー制御領域からの反射レーザーにより照射される領域を相対的に移動させるステップとを繰り返すことを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項5】
前記フォトマスク基板は、透明基板上に半透過膜及び遮光膜がこの順に形成されていることを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか1項記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項6】
半導体レーザーから照射されたレーザー光の光路中に傾斜角度を独立して変更可能な複数のマイクロミラーで構成されるマイクロミラーアレイを含む描画装置を用いたフォトマスクの製造方法であって、
透明基板上に半透過膜及び遮光膜がこの順に形成されたフォトマスク基板を準備するステップと、
前記フォトマスク基板上にフォトレジストを形成するステップと、
前記マイクロミラーアレイに照射される前記レーザー光の強度分布とパターン幅の変動量の閾値とから、前記強度分布が面内で均一な照射領域であるマイクロミラー制御領域を設定し、前記マイクロミラー制御領域の前記マイクロミラーアレイにおける第1の領域、第2の領域及び第3の領域に配置されたマイクロミラーの各々に対して、レーザーによる強度分布とパターン幅の変動量の閾値との相関関係から、前記傾斜角度で決定される第1の状態及び第2の状態を維持する時間を制御するステップと、
前記第1乃至第3の領域に配置されたマイクロミラーの傾斜角度を個別に制御することにより、
前記マイクロミラーの各々に対して、前記傾斜角度で決定される第1の状態及び第2の状態を維持する時間を制御するステップと、
前記第1の領域に設置された前記マイクロミラーは前記第2の状態を維持し、前記第2の領域に設置された前記マイクロミラーは前記第1の状態を第2の制御時間の間維持し、前記第3の領域に設置された前記マイクロミラーは前記第1の状態を前記第2の制御時間より短い第3の制御時間の間維持し、
前記第1の状態にある前記マイクロミラーにより反射された前記レーザー強度が均一な前記レーザーのみを前記フォトレジストに照射するステップと、
前記フォトレジストを現像し、開口部と第1の膜厚のフォトレジストと第2の膜厚のフォトレジストを有するフォトレジストパターンを形成するステップと、
前記フォトレジストパターンをマスクに前記遮光膜及び前記半透過膜をエッチングするステップと、
前記フォトレジストパターンを前記第2の膜厚より多く、前記第1の膜厚より少ない量だけエッチバックして前記フォトレジストパターンの膜厚を減少させるステップと、
膜厚が減少した前記フォトレジストパターンをマスクに前記遮光膜をエッチングするステップと、
前記フォトレジストパターンを除去するステップと、
を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの製造方法に関する。具体的には、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を用いたフォトマスクの描画装置を用いたフォトマスク、特に多階調マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置や半導体装置等の製造過程におけるリソグラフィー工程で使用するフォトマスクを製造する際、フォトマスクブランクス上のフォトレジストに所望のパターンを描画するために、例えば特許文献1、2記載のような描画装置が使用されている。
【0003】
このような公知のレーザ描画装置を用いてハーフトーンマスク(3階調のフォトマスク)を製造する主要工程について以下に説明する。
図12は、典型的なボトムハーフ型の多階調マスクの製造方法を示す工程断面図である。
先ず、石英等の透明基板100上に、Moシリサイド(MoSi)等の半透過膜101と、クロム(Cr)等の遮光膜102とがこの順に形成されたフォトマスクブランクスを準備し、その表面全体にフォトレジスト103を塗布法等により形成する(図12A)。
次に、フォトレジスト103を、描画装置により露光し、現像することによりフォトレジストのパターン103aを形成する(図12B)。
次に、フォトレジストのパターン103aをマスクに遮光膜102をエッチングすることにより、遮光膜のパターン102aを形成し(図12C)、さらに半透過膜101をエッチングすることにより半透過膜のパターン101aを形成する(図12D)。
次に、アッシング等によりフォトレジストのパターン103aを除去した後(図12E)、フォトレジスト104を形成する(図12F)。
次に、フォトレジスト104を、描画装置により露光し、現像することによりフォトレジストのパターン104aを形成する(図12G)。
次に、フォトレジストのパターン104aをマスクに、遮光膜のパターン102aを選択的にエッチングし、遮光膜のパターン102bを形成する(図12H)。
最後に、アッシング等によりフォトレジストのパターン104aを除去する(図12I)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-215782号公報
【文献】特開2014-95827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
公知の描画装置でハーフトーンマスク(多階調マスク)を製造するためには、半透過膜と遮光膜の積層とをエッチングするパターンと遮光膜のみをエッチングするパターンの2種類の描画データーをそれぞれ別個に作成する必要があり、2回のリソグラフィー工程が必要になる。その結果、製造工程の増大にともなう製造工期の長時間化、製造コストの高コスト化を招くことになる。
さらに、2回(複数)のリソグラフィー工程を必要とするため、それぞれのリソグラフィー工程で形成する描画パターンを合わせるための位置合わせが必要となる。この場合、位置合わせマージン(余裕)を考慮して描画パターンを拡張する等の対応が必要であるため、パターンの微細化、高集積化の障害となる。
また、4階調以上の多階調マスクを形成する場合、さらにリソグラフィー工程が増加することになる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、1回のリソグラフィー工程により多階調フォトマスクを形成することを可能とするフォトマスク描画装置及びこれを用いた多階調マスクの製造方法を提供することを課題とする。
なお、本発明にかかるフォトマスク描画装置は、多階調フォトマスクの製造に限定的に使用されるものではなく、例えばバイナリーマスクの製造にも使用可能であることは言うまでもない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記描画装置は、半導体レーザーから照射されたレーザー光の光路中に傾斜角度を独立して変更可能な複数のマイクロミラーで構成されるマイクロミラーアレイを含み、
フォトレジスト膜を形成したフォトマスク基板を設置するステップと、
前記マイクロミラーアレイにレーザー光を照射するステップと、
前記マイクロミラーアレイに照射される前記レーザー光の強度分布とパターン幅の変動量の閾値とから、前記強度分布が面内で均一な照射領域であるマイクロミラー制御領域を設定し、前記マイクロミラー制御領域の前記マイクロミラーの各々に対して、レーザーによる強度分布とパターン幅の変動量の閾値との相関関係から、前記傾斜角度を制御することにより、前記レーザー光の照射状態を時間的に制御するステップと、
前記フォトマスク基板に対する前記レーザー光の照射位置を相対的に変化させるステップと
を含むことを特徴とする。
【0008】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、フォトマスク基板(フォトマスクブランクス)上に形成されたフォトレジストに照射するレーザーの露光量を、パターン形成の画素単位で制御することができ、膜厚の異なるフォトレジストのパターンを1回の露光処理により形成することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記マイクロミラーアレイは、第1の領域、第2の領域及び第3の領域に区分され、
前記第1の領域に配置されたマイクロミラーは、第1の制御時間の間、第1の状態を維持しつつ、その他の時間は第2の状態を維持し、
前記第2の領域に配置されたマイクロミラーは、第2の制御時間の間、第1の状態を維持しつつ、その他の時間は第2の状態を維持し、
前記第3の領域に配置されたマイクロミラーは、第3の制御時間の間、第1の状態を維持しつつ、その他の時間は第2の状態を維持し、
第1の制御時間、第2の制御時間、第3の制御時間は互いに異なるように設定されることを特徴とする。
【0010】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、3種の異なる膜厚のフォトレジストを有するフォトレジストのパターンを1回の露光処理により形成することが可能となる。
また、例えばネガ型フォトレジストに対して、第1の制御時間をゼロとすることで、膜厚がゼロ、即ち開口部を有するフォトレジストパターンを形成することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記フォトレジストの前記レーザーによる露光量とパターン幅変動量との相関関係から、前記第1の領域、第2の領域及び前記第3の領域をマイクロミラー単位で補正することを特徴とする。
【0012】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、パターン幅の寸法変動が少ない異なる膜厚を有するフォトレジストパターンを形成することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記フォトレジストを露光するステップと
前記マイクロミラー制御領域からの反射レーザーにより照射される領域を相対的に移動させるステップとを繰り返すことを特徴とする。
【0014】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、ステップアンドリピート方式により、必要な領域の全てのフォトレジストを露光することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記フォトマスク基板は、透明基板上に半透過膜及び遮光膜がこの順に形成されていることを特徴とする。
【0016】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、容易に3階調のハーフトーンの製造が可能となる。
【0017】
本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
半導体レーザーから照射されたレーザー光の光路中に傾斜角度を独立して変更可能な複数のマイクロミラーで構成されるマイクロミラーアレイを含む描画装置を用いたフォトマスクの製造方法であって、
透明基板上に半透過膜及び遮光膜がこの順に形成されたフォトマスク基板を準備するステップと、
前記フォトマスク基板上にフォトレジストを形成するステップと、
前記マイクロミラーアレイに照射される前記レーザー光の強度分布とパターン幅の変動量の閾値とから、前記強度分布が面内で均一な照射領域であるマイクロミラー制御領域を設定し、前記マイクロミラー制御領域の前記マイクロミラーアレイにおける第1の領域、第2の領域及び第3の領域に配置されたマイクロミラーの各々に対して、レーザーによる強度分布とパターン幅の変動量の閾値との相関関係から、前記傾斜角度で決定される第1の状態及び第2の状態を維持する時間を制御するステップと、
前記第1乃至第3の領域に配置されたマイクロミラーの傾斜角度を個別に制御することにより、
前記マイクロミラーの各々に対して、前記傾斜角度で決定される第1の状態及び第2の状態を維持する時間を制御するステップと、
前記第1の領域に設置された前記マイクロミラーは前記第2の状態を維持し、前記第2の領域に設置された前記マイクロミラーは前記第1の状態を第2の制御時間の間維持し、前記第3の領域に設置された前記マイクロミラーは前記第1の状態を前記第2の制御時間より短い第3の制御時間の間維持し、
前記第1の状態にある前記マイクロミラーにより反射された前記レーザー強度が均一な前記レーザーのみを前記フォトレジストに照射するステップと、
前記フォトレジストを現像し、開口部と第1の膜厚のフォトレジストと第2の膜厚のフォトレジストを有するフォトレジストパターンを形成するステップと、
前記フォトレジストパターンをマスクに前記遮光膜及び前記半透過膜をエッチングするステップと、
前記フォトレジストパターンを前記第2の膜厚より多く、前記第1の膜厚より少ない量だけエッチバックして前記フォトレジストパターンの膜厚を減少させるステップと、
膜厚が減少した前記フォトレジストパターンをマスクに前記遮光膜をエッチングするステップと、
前記フォトレジストパターンを除去するステップと、
を含むことを特徴とする。

【0018】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、3階調のハーフトーンの製造工数を削減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかるフォトマスクの製造方法によって、1回のリソグラフィー工程によって膜厚の異なるレジストを形成することができ、多階調フォトマスクの製造工程削減が可能となる。
また、重ね合わせマージンを考慮したパターン設計を不要とすることにより、パターンの微細化にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明にかかる描画装置の構成を示す図。
図2図2(A)は、光反射部上にレーザーが照射される様子を示し、図2(B)は、レーザー強度分布を模式的に示す。
図3図3(A)は、マイクロミラー制御領域Cの一部の拡大図、図3(B)は、マイクロミラー9により反射されたレーザーがフォトレジストに照射される状態を示す断面図。
図4】ステップアンドリピート方式によりフォトレジストを露光する状況を示す図。
図5図5(A)は、マイクロミラー制御領域CのA-A’部分から反射されたレーザーの強度分布の実測値を示し、図5(B)は、パターニングされたフォトレジストのライン幅の分布(実測値)を示す。
図6図6(A)は、光反射部の一部の領域を拡大した図。図6(B)は、マイクロミラーの第1の状態と第2の状態のタイミングを比較して示すグラフ。
図7】DMDにより領域毎に照射時間が制御されたレーザーによりパターニングしたフォトレジストの断面図。
図8】ハーフトンマスク(多階調マスク)の製造方法の主要工程を示す断面図。
図9】ハーフトンマスク(多階調マスク)の製造方法の主要工程を示す断面図。
図10】レーザーの露光量と現像後のレジストパターン幅の寸法変動量との関係を示すグラフ。
図11図11(A)は、レジストパターン幅の寸法変動量の実測値に基づき、マイクロミラーの領域の補正状況を示す図。図11(B)は露光量とレジストパターン幅の寸法変動量との相関データを取得するためのパターンを示す図。
図12】典型的なボトムハーフ型の多階調マスクの主要製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0022】
図1(A)は、描画装置1の主な構成を示す。
レーザー発生装置である半導体レーザー2から放射されたレーザーLD(例えばg線、h線、i線等)は、点線矢印で示すように反射鏡3によりDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)4へと誘導される。DMD4の光反射部8で反射されたレーザーは、点線矢印で示すように、例えばレンズからなる光学系5により、ステージ6上に載置されたフォトマスク基板7上に、等倍又は縮小投影される。
フォトマスク基板7は、例えば透明基板上に半透過膜と遮光膜が形成されたフォトマスクブランクスであり、さらにフォトマスクブランクス上に照射されるレーザーに対して感光性を有するフォトレジストが塗布されている。
ステージ7は、互いに直交するX方向及びY方向に移動し、フォトマスク基板7を所定の方向に所定の距離だけ、移動させることができる。
【0023】
DMD4の光反射部8は、後述するように複数のマイクロミラー9を有し、各マイクロミラー9の傾斜角度は電気的に制御され、レーザーの反射角度を、図1(A)、(B)の白塗り矢印又は黒塗り矢印で示すように、二者択一的に変更することができる。
白塗り矢印方向に反射されたレーザーは、光学系5を経由(通過)して、フォトマスク基板7に照射される。一方、黒塗り矢印方向に反射されたレーザーは、光学系5に入射することがなく、そのためフォトマスク基板7に照射されない。このように光学系5を配置することで、DMD4により、フォトマスク基板7にレーザーを照射する状態と照射しない状態を選択的に実現できる。
【0024】
図1(B)は、DMD4の光反射部8の表面の一部を示す斜視図である。
図1(B)に示すように、光反射部8は、例えば1辺が10~15[μm]の微小な鏡(マイクロミラー9)が複数個、例えば1980×1080個、碁盤の目状に整列し配置されたマイクロミラーアレイ(マイクロミラーの配列)により構成されている。各マイクロミラー9は独立して制御することができ、その傾斜角度を、第1の傾斜角度又は第2の傾斜角度、例えば-12[°]又は+12[°]に切り換えることができる。
【0025】
光反射部8に入射した(図1(B)中点線矢印で示される)レーザーは、例えば、第1の傾斜角度に設定されたマイクロミラー9aで反射された場合には、図1(B)中白塗り矢印で示すように光学系5に入射し、その後フォトマスク基板7に照射される。傾斜角が第2の傾斜角度に設定されたマイクロミラー9bで反射された場合には、図1(B)中黒塗り矢印で示すように光学系5に入射しない(フォトマスク基板7に照射されない)ように配置されている。
【0026】
マイクロミラー9毎に、傾斜角度によってレーザーの反射方向を制御することで、レーザーをフォトマスク基板7に照射するか否かを選択することができる。1つのマイクロミラー9から光学系5を経由してフォトマスク基板7に照射される領域が、フォトマスク基板7上の最小露光領域(画素)となる。
なお、傾斜角度は例示でありこれに限定されるものではない。
【0027】
このようにDMD4は、各マイクロミラー9の傾斜角を変更することにより、局所的に(各マイクロミラー9毎に)レーザーの進路を変更し、フォトマスク基板7上に照射する状態(第1の状態)、照射しない状態(第2の状態)を選択することができる。
【0028】
図2(A)は、光反射部8上にレーザーが照射される様子を示し、図2(B)は、図2(A)の一点鎖線Z-Z’断面におけるレーザー強度分布を模式的に示す。
図2(A)中点線で示される円で囲まれた領域は、レーザー照射領域Sを示し、この円がレーザースポット径(例えば1[mm])に対応する。また、図2(A)中実線で示される四角形の領域は、レーザー照射領域S内に設定されたマイクロミラー制御領域Cである。マイクロミラー制御領域Cは、レーザースポット径の変動や光軸の変動を考慮して、必ずレーザー照射領域S内に収まるように設定する。
図2(B)に示すように、レーザー照射領域Sの外部では、レーザーの強度が急激に減少し、そして0(ゼロ)となるが、レーザー照射領域Sの内部では、理想的にはレーザー強度が一定であり、マイクロミラー制御領域Cは強度分布の均一性の良い領域、例えば顧客要求の均一性以内となる領域に設定されている。
なお、DMD4の光反射部8の面は、レーザーの入射方向に対して必ずしも垂直でないため、レーザー照射領域Sは必ずしも円ではなく、正確には楕円となることがある。
【0029】
マイクロミラー制御領域C内部においては、各マイクロミラーは第1の状態、又は第2の状態を選択的して制御できる領域であり、マイクロミラー制御領域C以外の領域にあるマイクロミラーは、常時第2の状態に設定する。
【0030】
図3(A)は、マイクロミラー制御領域Cの一部を拡大した図を示し、各マイクロミラー9の制御状態の例を示す。図3(B)は、レーザーLDがマイクロミラー9により反射され、光学系5を経由してフォトマスク基板7に形成されたフォトレジスト10に照射される状態を示す断面図である。
図3(A)中、ハッチングされたマイクロミラー9aは第1の状態、ハッチングされていないマイクロミラー9bは第2の状態にあるマイクロミラーを示す。
第1の状態にあるマイクロミラー9aを所望のパターンに配置することにより、マイクロミラー9aにより反射されたレーザーは、所望のパターン形状でフォトマスク基板7上のフォトレジスト10に照射される(図3(B))。従って、フォトレジスト10を、所望のパターン形状に露光することができる。
マイクロミラー制御領域Cの各マイクロミラー9は、フォトマスク基板7上で1つの画素(ピクセル)を構成し、この露光領域の最小単位である画素の集合としてフォトレジストのパターンが形成されることになる。
【0031】
1回の露光処理(1回の描画処理)により露光可能なフォトレジスト10の露光領域(簡単のため露光区画と称す。)は、マイクロミラー制御領域Cから反射されたレーザーによって照射可能な領域である。
そのため、図4に示すように、マイクロミラー制御領域Cで確定する1つの露光区画の露光処理が完了すると、連続したパターン形成が可能なように、ステージ6によって露光区画の大きさに相当した距離(図中L)だけフォトマスク基板7を移動する。その後、次の露光区画に対して所望のパターンのマイクロミラー9の第1、第2の状態を制御することで露光処理を行う。
すなわちステップアンドリピート方式により、フォトマスク基板7表面の露光処理とフォトマスク基板7の移動とを繰り返すことで、所望のパターンをフォトマスク基板7の全面(又はフォトレジスト10に対してパターン形成が必要な領域)に形成することが可能となる。
【0032】
なお、移動するステージ6によりフォトマスク基板7を移動させたが、ステップアンドリピート方式によりフォトマスク基板7を露光する場合、フォトマスク基板7と光学系5とが相対的に移動すればよいため、光学系5(及びDMD4)を移動する構成としてもよく、光学系4とフォトマスク基板7との両方を移動する構成としてもよい。
【0033】
フォトレジストを感光させるためのレーザーの露光量は、マイクロミラー9aの第1の状態の時間で制御することができる。所定の時間経過後、マイクロミラー9aを第2の状態にすることで、容易に所望パターンの露光時間を設定することができる。
さらに、1個のマイクロミラー9は、フォトマスク基板7上で1つの画素を構成するため、画素毎に露光時間を制御することができる。
【0034】
図5(A)は、マイクロミラー制御領域CのA-A’部分から反射されたレーザーの強度分布の実測値を示し、図5(B)は、5[μm]幅のラインパターンの列を形成するように制御されたマイクロミラー9から反射されたレーザーによりパターニングされたフォトレジストのライン幅の実測値を示す。
【0035】
図5(A)に示すように、実際のレーザーの強度分布は、下に凸形状の強度分布を示し、有限の変動幅を有する。図5(B)に示すように、フォトレジストのライン幅の実測値は、レーザーの強度分布を反映して、わずかに周期的な変動が見られる。
フォトレジストのライン幅の変動は、反射されるレーザーの強度分布に依存する。そのため、もしライン幅の変動が許容範囲を超える場合には、レーザーの強度分布の変動幅を低減するようにマイクロミラー制御領域Cを設定すればよい。例えば図5(A)において、中央部分の領域(矢印B-B’で示す領域)に限定することで、さらにフォトレジストのライン幅の変動を抑制することができる。このように、最終製品の回路等の設計要求(又は微細化の目標)を反映して所望のライン幅の変動量のしきい値を決め、そのしきい値に対して、マイクロミラー制御領域Cを決定すればよい。
なお、B-B’に垂直な方向についても同様に設定する。
【0036】
図6(A)は、多階調フォトマスクを製造するためのDMD4の光反射部8の一部の領域を拡大した図である。図6(A)に示すように、光反射部8は3つの領域Ra(図中クロスハッチング領域)、領域Rb(図中シングルハッチング領域)、領域Rc(図中白塗り領域)、を有している。
【0037】
図6(B)は、1回の露光処理を行う際の、領域Ra、Rb、Rcにおいてマイクロミラー9a、9b、9cの第1の状態(”ON”状態)と第2の状態(”OFF”状態)のタイミングを示すグラフである。領域Rc(第1の領域)では各マイクロミラー9cは、第1の状態の時間がゼロ(第1の制御時間)、すなわち常に第2の状態を維持し、領域Rb(第2の領域)では各マイクロミラー9bは所定の期間(第2の制御時間tb)第1の状態、それ以外の期間は第2の状態を維持し、領域Ra(第3の領域)では各マイクロミラー9aは所定の期間(第3の制御時間ta)第1の状態、それ以外の期間は第2の状態を維持する。図6(B)に示すようにtbはtaより短く設定されている。例えばtaを100%とした場合、tbを30%~50%とする。
【0038】
従って、1回の露光処理の間に、レーザーが3つの領域Ra、Rb、Rcにおいて反射されフォトマスク基板7に照射される期間(露光時間)は、それぞれta、tb、tc(0:無し)である。
なお、照射される期間(露光時間)は、必ずしも連続する必要はなく、合計がta、tb、tc(0:無し)となればよい。
【0039】
図7は、描画装置1を用いてパターニングしたフォトレジスト10の膜厚を示す。レーザーLDが、図7で示す領域Ra、Rb、Rcにおいて反射され、フォトマスク基板7上のフォトレジスト10の領域Pa、Pb、Pcをそれぞれ照射する。領域Pa、Pb、Pcのフォトレジスト10は、露光時間が異なるため、現像後のフォトレジストの膜厚も異なることになる。
例えば、ネガ型フォトレジストの場合、領域Rcを介して照射されるレーザーの露光時間は0であるため、領域Pcのフォトレジスト10の膜厚は0となる。領域Pbのフォトレジスト10の膜厚(Hb)及び領域Paのフォトレジスト10の膜厚(Ha)は、露光時間tbは露光時間taより短い(tb<ta)ため、Hb<Haとなる。
【0040】
所望の膜厚のフォトレジスト10は、フォトレジスト10の膜厚と露光時間との相関データ(感度曲線)により得ることができる。予め使用するフォトレジスト10の感度曲線のデータを取得しておくことで、各領域で所望の膜厚のフォトレジスト10を形成するための露光時間を決定することができる。決定された露光時間は、各マイクロミラー9に対して第1の状態を維持する時間設定により制御することができる。そのため、DMD4を用いてレーザー照射を制御することで、1個のマイクロミラー9を単位とした任意の領域において、任意の露光時間を設定できる。
【0041】
図7では3種類の膜厚(Ha、Hb、0)のフォトレジスト10を形成する例を示した。このように、光反射部8を複数の領域、例えば第1から第n(n≧3)の領域に区分し、各領域に配置された各マイクロミラーを第1の状態とする第1から第nの制御時間(時間0を含め)を設定することで、n種類(膜厚0を含め)の異なる膜厚を有するレジストパターンを形成することができる。従って3種類以上の膜厚のフォトレジストを形成することもできる。
また、階段状に傾斜する断面を有するフォトレジストを形成することも可能である。
【0042】
後述するように、光反射部8から反射されたレーザーを用いてフォトレジスト10を露光した後にフォトマスク基板7を移動し、ステップアンドリピート方式により、露光処理とフォトマスク基板7の移動を繰り返し、複数の膜厚を有するフォトレジスト10のパターンをフォトマスク基板7上に形成することができる。
なお、ポジ型フォトレジストに対しても、1回の露光処理により異なる複数の膜厚を有するフォトレジストを形成できる。
【0043】
もし従来の描画装置を用いた場合、このような膜厚の異なるフォトレジストのパターンを形成しようとすると、複数回の描画処理によりフォトレジストの露光を行う必要がある。そのため、異なる描画工程においてパターンの重ね合わせズレ(位置合わせズレ)を考慮して、重ね合わせ余裕(マージン)の相当する幅(寸法)をパターンに盛り込む必要がある。
しかし、本実施形態のようにDMD4を用いた描画装置1を用いた場合、1回の露光で異なる膜厚を有するフォトレジスト10をパターニングできるため、重ね合わせ余裕を考慮したパターン設計が必要が無く、重ね合わせ余裕に相当する寸法の微細化が可能となる。さらに、重ね合わせ余裕に対する設計ルールが緩和され、パターン設計が容易になり、パターン設計者の労力も軽減される。
【0044】
図8は、ハーフトンマスク(多階調マスク)の製造方法の主要工程を示す断面図である。
図8(A)に示すように、石英等の透明基板11上に、蒸着法やスパッタ法により、半透過膜12(例えばMoSi、Ti)と遮光膜13(例えばCr)とがこの順に形成されたフォトマスクブランクスを準備し、遮光膜13上にフォトレジスト10を塗布等により形成する。
なお、半透過膜12の光透過率は、透明基板11の光透過率と遮光膜13の光透過率と
の間で任意に設定されている。
【0045】
次に図8(B)に示すように、各マイクロミラー9単位での露光時間制御によりフォトレジスト10を露光し、その後現像することによりフォトレジスト10をパターニングする。
上記のように(図6、7参照)、マイクロミラー9毎に露光時間を制御できるため、1回の露光処理工程により、膜厚が異なる第1のフォトレジスト10a、第2のフォトレジスト10bを同時に形成することができる。また、さらに異なる3種類以上の膜厚を有するフォトレジスト10のパターンを形成することも可能である。
【0046】
次に図8(C)に示すように、フォトレジスト10(第1のフォトレジスト10a及び第2のフォトレジスト10b)をマスクに、公知のウェットエッチング法やドライエッチング法により、遮光膜13及び半透過膜12を順にエッチングする。
【0047】
次に図8(D)に示すように、アッシング法により第2のフォトレジスト10bの部分が除去されるまでフォトレジスト10を全面エッチング(エッチバック)する。
すなわち、膜厚Hbより多く、膜厚Haより少ない量だけエッチバックしフォトレジスト10の膜厚を減少させる。
第1のフォトレジスト10aの膜厚Haは、第2のフォトレジスト10bの膜厚Hbより大きいため、第1のフォトレジスト10aの膜厚は減少する(Ha-Hb以下となる)ものの残置せしめることが可能である。
なお、図8(C)の工程において、遮光膜13及び半透過膜12の少なくとも一方をドライエッチング法によりエッチングする場合、エッチングガス(エッチャント)を最適化し選択比を調整することで、フォトレジスト10を同時にエッチングし、第2のフォトレジスト10bの部分を除去してもよい。
【0048】
次に図9(E)に示すように、フォトレジスト10(第1のフォトレジスト10a)をマスクに、ウェットエッチング法やドライエッチング法により遮光膜13を選択的にエッチングする。公知のエッチャント(エッチング液、エッチングガス)を使用し、選択比を十分に高く(例えば10以上)することで半透過膜12のエッチングが抑制される。
【0049】
次に図9(F)に示すように、アッシング法等によりフォトレジスト(第1のフォトレジスト10a)を除去する。
以上の工程により透明基板11が露出した領域、透明基板11上に半透過膜12のみが形成された領域、透明基板11上に半透過膜12と遮光膜13とが形成された領域を有する3階調のハーフトーンマスク14を得ることができる。
【0050】
なお、上記は3階調のハーフトーンマスクを形成する方法を示した。フォトレジスト10に対して、マイクロミラー9に対する第1の状態の時間を制御することで、3種以上の膜厚を有するようにフォトレジスト10をパターニングすることも可能である。
それにより、さらに多階調のフォトマスクを製造可能である。
異なる膜厚の半透過膜のパターンを形成するため、膜厚の異なるレジストパターンのエッチバックと半透過膜の部分的エッチング(ハーフエッチング)を順次繰り返せばよい。
【0051】
図10は、レーザーの露光量と現像後のレジストパターン幅の寸法変動量との関係を示し、縦軸に寸法変動量、横軸にレーザーの露光量をプロットしている。
露光量は、ライン幅5[μm]のレジストパターンが形成される露光量を1として規格化している。このような露光量と現像後のレジストパターン幅との関係は、使用するレジストに依存し、パターン幅毎に(例えば、複数のライン幅、スペース幅又は複数のホール径に対して)実測により求めることができる。
【0052】
図10に示すように、露光量が1より小さくなると、レジストパターン幅が小さくなり、露光量が1より大きくなるとレジストパターン幅が大きくなる。すなわち、形成するレジストの膜厚を薄くするため露光量を低減するとパターン幅が狭くなる。そのため、露光量の少ない領域(図7中領域Pb)においては、露光量の多い領域(図7中領域Pa)と比較して、レジストパターンが狭くなる。
このことは、描画装置1を用いて1回の露光処理によって同時にレジスト膜厚の厚い領域と薄い領域を形成する場合、レジスト膜厚の厚い領域に比べ薄い領域のパターン幅が狭くなることを意味する。
【0053】
そこで、所望の幅のレジストパターンを形成するためには、図11(A)に示すように、露光量の少ない領域に対応したマイクロミラー9bの領域(図11(A)中領域Rb)の幅を、マイクロミラー9aの領域(図11(A)中領域Ra)より広くなるよう設定(補正)すればよい。
ここで、図11(A)において、点線は補正前のマイクロミラー9bの領域(領域Rb)を示す。
なお、マイクロミラー9bの領域を補正する例を示したが、マイクロミラー9aの領域を補正してもよく、両方の領域を補正してもよく、所望のパターン形状が得られるよう適宜補正すればよい。
【0054】
また、露光量とレジストパターン幅の寸法変動量との相関は、例えば図11(B)に示すようにマイクロミラー9を複数列ならべた領域W1、W2、W3を準備し、それぞれの領域におけるマイクロミラー9の列数とレジストパターン幅との相関関係を、露光時間を変えて取得してもよい。この場合、レジストパターン幅の寸法に対して、マイクロミラー9の必要な個数(列数)を直接求めることができる。また、領域W1、W2、W3に対して露光時間の異なる領域を複数準備し(例えば図11(B)中領域Ra、Rb)1回の露光で複数の露光量を変化させるデータを取得することも可能である。この手法を用いることで、本描画装置1により、フォトレジストの感度曲線やパターン幅の変動量のデータを取得する労力も軽減でき、フォトマスク製造のみならず開発コストも軽減することができる。
【0055】
上記のように、予めレーザーの露光量と現像後のレジストパターン幅との相関関係についてのデータを取得しておけば、そのデータに基づいて反射部8のマイクロミラー9のパターンを補正することで、所望の膜厚でかつ所望の幅のレジストパターンを形成することができる。
マイクロミラー9は、個々に制御が可能であるため、容易にパターンの修正が可能である。例えば、ネガ型フォトレジストの場合、レジストパターンを拡張するためには、拡張する幅に合わせて、第1の状態にするマイクロミラー9を所定の個数だけ増やせばよく、レジストパターンを縮小するためには、縮小する幅に合わせて、第1の状態にするマイクロミラー9を所定の個数だけ減らせばよい。
【0056】
以下、フォトマスクの描画パターンを形成するためのDMD4の制御方法について説明する。
例えば3階調のハーフトーンマスクを形成する場合、以下の手順に従い、フォトマスク(ハーフトーンマスク)のレジストパターンを形成することができる。
【0057】
(1)CAD等の設計ツールを利用し、第1のパターン領域である透明部(光透過部又は透明基板露出部)のパターンデータ(座標データ)、第2のパターン領域である遮光部のパターンデータ(座標データ)、第3のパターン領域である遮光部と透明部の間の透過率を有する半透過部のパターンデータ(座標データ)の3つの領域に区分される所望のパターンデータ(例えば、電気回路パターン)を確定(設計)する。パターンデータは、描画装置1に内蔵された記憶装置又は外部の記憶装置に記憶する。
(2)上記各領域に対応して、形成するフォトレジストの膜厚を製造プロセスの要請から決定する。
【0058】
(3)各パターンデータをマイクロミラー制御領域で確定される露光区画(マイクロミラー制御領域により反射されたレーザーのフォトレジスト上での照射領域)に分割して、露光区画毎に、透明部(第1のパターン領域)、遮光部(第2のパターン領域)、半透過部(第3のパターン領域)、の各領域に対応したフォトレジストの露光時間を決定する。露光時間は、予め実測した感度曲線と、各領域に対して決定されたフォトレジスト膜厚とから算出する。
このとき、パターンデータの重要な回路部分が分割した露光区画の境界部分に重ならないように調整することも可能である。
そうすることで露光量の変動が発生した場合であっても重要な回路部分のパターン幅の変動を回避することが可能となる。
すなわち、予め重要な回路部分を、分割不能部として特定し、指定しておき、その分割不能部に露光区画の境界部分が重ならないよう、露光区画の大きさをその分割不能部の周囲で変更すればよい。
【0059】
算出された露光時間から、上記第1、第2及び第3のパターン領域に対応したDMD4の各マイクロミラー9の制御条件(傾斜角(即ち第1の状態又は第2の状態)とその保持時間)を暫定的に決定する。
ここで、第1、第2及び第3のパターン領域に対応したマイクロミラーとは、レーザーを反射し、それぞれ第1、第2及び第3のパターン領域に照射するマイクロミラーを意味する。第1、第2及び第3のパターン領域に対応したマイクロミラーからなる領域をそれぞれ第1、第2及び第3のマイクロミラー領域と称す。
なお、感度曲線は、記憶装置に記憶しておき、マイコン等の演算処理装置により算出してもよい。
【0060】
(4)予め取得した露光量とパターン幅変動量との相関関係から、マイクロミラー制御領域に対して、第1、第2及び第3のパターン領域に対応した第1、第2及び第3のマイクロミラー領域をマイクロミラー単位で補正し(拡大又は縮小し)、マイクロミラー9の制御条件(傾斜角と保持時間)を補正して、制御条件を確定する。
なお、第1、第2及び第3のマイクロミラー領域以外、すなわちマイクロミラー制御領域C以外の領域のマイクロミラー制御条件は、常時第2の状態を維持するという条件とする。
補正されたマイクロミラーの制御条件を露光区画毎に対応させて記憶装置に記憶する。
【0061】
(5)透明基板上に光透過部、遮光部をこの順に形成したフォトマスクブランクス上に、フォトレジスト10を形成したフォトマスク基板7を準備し、ステージ6上に載置する。
(6)記憶された各露光区画に対応したマイクロミラー制御条件に従って、DMD4の各マイクロミラー9を制御し、レーザーをフォトマスク基板7上のフォトレジスト10に照射する。
【0062】
(7)フォトマスク基板7を光学系5に対して1つの露光区画に相当する距離だけ移動する。
このステップは、フォトマスク基板7と光学系5との相対的距離を移動させるものであり、フォトマスク基板7若しくは光学系5の一方、又はフォトマスク基板7及び光学系5の両方を移動させてもよい。これによりフォトレジスト10上の露光区画を移動し、フォトレジスト10上の露光処理が必要な領域すべてを露光することができる。
相対的移動は、例えば所謂直交座標系の2つの直交軸、X軸、Y軸の各方向に対して行
うことができる。
【0063】
光学系5を移動させる場合、第1の状態のマイクロミラー9から反射されたレーザーが光学系5を経由してフォトマスク基板7に照射できるように構成する必要がある。そのため、光学系5と同時にDMD4を移動させてもよい。光学系5を移動させる方法は、例えば特許文献1、2に開示されている手法等、公知の手法を採用できる。
【0064】
(8)ステップアンドリピート方式に従って、(6)と(7)を繰り返し、フォトマスク基板7上に形成されたフォトレジスト10を順次露光する
以上の手順により、フォトマスク基板7上のフォトレジスト10の露光が完了し、その後現像処理によりフォトレジスト10のパターニングが完了する。
その後図8で説明した製造工程によりフォトマスクを完成させることができる。
【0065】
なお、(3)と(4)の工程を実質的に入れ替えることも可能である。
すなわち、予め取得した露光量とパターン幅変動量との相関関係から、半透過部のパターンデータ(座標データ)と、遮光部のパターンデータ(座標データ)を補正し、その後各パターンデータをマイクロミラー制御領域で確定する露光区画に分割して、露光区画毎に、光透過部、遮光部、透明部に対応したDMD4の各マイクロミラー9の制御条件(傾斜角とその保持時間)を決定し、記憶装置に記憶してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、1回の露光処理により膜厚の異なるフォトレジストのパターンをフォトマスク基板上に形成することが可能となり、多階調フォトマスクの製造工程の削減することが可能となり、さらにフォトマスクのパターンの微細化にも寄与することが可能である。本発明により製造されたフォトマスクは、電子デバイス等の製造過程のリソグラフィー工程に利用することができ、産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0067】
1 描画装置
2 半導体レーザー
3 反射鏡
4 DMD
5 光学系
6 ステージ
7 フォトマスク基板
8 光反射部
9、9a、9b、9c マイクロミラー
10 フォトレジスト
10a 第1のフォトレジスト
10b 第2のフォトレジスト
11 透明基板
12 半透過膜
13 遮光膜
14 ハーフトーンマスク
15 光量検出器
100 透明基板
101 半透過膜
101a 半透過膜のパターン
102 遮光膜
102a、102b 遮光膜のパターン
103 フォトレジスト
103a フォトレジストのパターン
104 フォトレジスト
104a フォトレジストのパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12