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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】測定装置及び測定装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20230523BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
G01C15/00 103A
G01S7/481 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019006779
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020115116
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-189576(JP,A)
【文献】特開2018-173346(JP,A)
【文献】特開2018-13350(JP,A)
【文献】特開2010-151577(JP,A)
【文献】特開2007-212264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-5/14
G01B 11/00-11/30
G01S 7/48-7/52
17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光を発する発光素子と、前記測定光を射出する測定光射出部と、反射測定光を受光する受光部と、前記反射測定光を受光して受光信号を発生する受光素子とを有し、前記受光素子からの受光信号に基づき測定対象物の測距を行う測距部と、
前記測定光の射出方向を基準光軸に対して偏向するとともに所定の中心に対して周方向に前記測定光を走査可能な偏向部と、
前記測距部および前記偏向部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記測距部の測距結果と前記偏向部により偏向される前記射出方向に基づいて直線状に形成される前記測定対象物と前記測定光の走査軌跡との交点の座標を検出し、複数の前記交点の座標に基づいて前記測定対象物の配列方向を特定し、
前記測定対象物は、第1方向に沿って直線状に延びる第1の測定対象物と、前記第1方向に直交する第2方向に沿って直線状に延びる第2の測定対象物と、を備え、
前記第1の測定対象物と前記第2の測定対象物とが隣接した状態で方眼状に配置されており、
前記制御部は、前記第1の測定対象物と前記第2の測定対象物が交差する交差位置に前記所定の中心が配置されるように前記偏向部の偏向作動を制御し、前記所定の中心に対して点対称の位置に配置される2対の前記交点の座標を検出し、前記2対の交点の一方の座標に基づいて前記第1の測定対象物の配列方向を特定し、前記2対の交点の他方の座標に基づいて前記第2の測定対象物の配列方向を特定することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、4つの前記交点を検出した場合に該4つの交点の座標の重心が前記所定の中心と一致するように前記偏向部の偏向作動を制御することを特徴とする請求項に記載の測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、複数の前記交点を検出した場合に、隣接して配置される一対の前記交点の座標に基づいて前記測定対象物の配列方向を特定することを特徴とする請求項に記載の測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、それぞれ隣接して配置される複数対の前記交点の座標に基づいて複数の配列方向を算出し、該複数の配列方向に基づいて前記測定対象物の配列方向を特定することを特徴とする請求項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記測定対象物は、第1方向に沿って直線状に延びる第1の測定対象物と、前記第1方向に直交する第2方向に沿って直線状に延びる第2の測定対象物と、を備え、
前記第1の測定対象物と前記第2の測定対象物とが隣接した状態で方眼状に配置されており、
前記制御部は、前記第1の測定対象物と前記第2の測定対象物とを含む略平面状の領域を設定し、該領域に含まれる座標を前記測定対象物と前記測定光の走査軌跡との交点の座標として検出することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記領域を直径の異なる複数の円形の走査軌跡で前記測定光を走査することにより複数対の前記交点の座標を検出することを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
測定対象物の測定を行う測定装置の制御方法であって、
前記測定装置は、
測定光を発する発光素子と、前記測定光を射出する測定光射出部と、反射測定光を受光する受光部と、前記反射測定光を受光して受光信号を発生する受光素子とを有する測距部と、
前記測定光の射出方向を基準光軸に対して偏向するとともに所定の中心に対して周方向に前記測定光を走査可能な偏向部と、を有し、
前記受光素子からの受光信号に基づき前記測定対象物の測距を行う測距工程と、
前記測距工程の測距結果と前記偏向部により偏向される前記射出方向に基づいて直線状に形成される前記測定対象物と前記測定光の走査軌跡との交点の座標を検出する交点検出工程と、
前記交点検出工程により検出された複数の前記交点の座標に基づいて前記測定対象物の配列方向を特定する特定工程と、を備え、
前記測定対象物は、第1方向に沿って直線状に延びる第1の測定対象物と、前記第1方向に直交する第2方向に沿って直線状に延びる第2の測定対象物と、を備え、
前記第1の測定対象物と前記第2の測定対象物とが隣接した状態で方眼状に配置されており、
前記制御部は、前記第1の測定対象物と前記第2の測定対象物が交差する交差位置に前記所定の中心が配置されるように前記偏向部の偏向作動を制御し、前記所定の中心に対して点対称の位置に配置される2対の前記交点の座標を検出し、前記2対の交点の一方の座標に基づいて前記第1の測定対象物の配列方向を特定し、前記2対の交点の他方の座標に基づいて前記第2の測定対象物の配列方向を特定することを特徴とする測定装置の制御方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置及び測定装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、土木、建築等の分野で距離測定、形状測定を行なうものとして点群データを取得するレーザスキャナが用いられている。従来のレーザスキャナでは、スキャン領域を事前に範囲設定し、一旦スキャン条件(例えば、スキャン速度、発光周波数)を設定すると、設定したスキャン条件でスキャン領域全体をスキャンする様になっている。
【0003】
このような従来のレーザスキャナは、いずれかの測定部位のスキャン密度(単位面積当たりの測定点データ数)を高くしたい場合、スキャン領域全体のスキャン密度を高くして膨大なスキャンデータを取得する必要があった。そこで、特許文献1では、高いスキャン密度が要求される部位を局所測定範囲として設定して高いスキャン密度でスキャンし、効率よくスキャンデータを取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-66571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるレーザスキャナにおいて、局所測定範囲は、作業者が目視で判断した部位、あるいは撮像部が取得した画像データからエッジが多く抽出された部位となっている。しかしながら、作業者が目視で局所測定範囲を設定する場合、作業者による設定作業が煩雑であるとともに設定作業に多大な時間を要する。また、画像データからエッジを抽出して局所測定範囲を設定する場合、画像データの処理に時間と処理負荷が必要であるとともに所望の測定対象物のみを効率よく測定することができない。
【0006】
特に、測定対象物が建築物の建造に用いられる鉄筋等の直線状に形成される測定対象物である場合、効率よく測定を行なうためには、測定対象物のみを局所測定範囲として設定し、その他を局所測定範囲として設定しないのが望ましい。しかしながら、作業者が目視で局所設定範囲を設定する設定作業が煩雑であり、画像データを処理して局所設定範囲を設定するためには多大な処理負荷が必要である。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、作業者による設定作業や多大な処理負荷を要することなく、直線状に形成される測定対象物の配列方向を特定して局所的な測定を効率よく実行することが可能な測定装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明によれば、測定光を発する発光素子と、前記測定光を射出する測定光射出部と、反射測定光を受光する受光部と、前記反射測定光を受光して受光信号を発生する受光素子とを有し、前記受光素子からの受光信号に基づき測定対象物の測距を行う測距部と、前記測定光の射出方向を基準光軸に対して偏向するとともに所定の中心に対して周方向に前記測定光を走査可能な偏向部と、前記測距部および前記偏向部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記測距部の測距結果と前記偏向部により偏向される前記射出方向に基づいて直線状に形成される前記測定対象物と前記測定光の走査軌跡との交点の座標を検出し、複数の前記交点の座標に基づいて前記測定対象物の配列方向を特定し、前記測定対象物は、第1方向に沿って直線状に延びる第1の測定対象物と、前記第1方向に直交する第2方向に沿って直線状に延びる第2の測定対象物と、を備え、前記第1の測定対象物と前記第2の測定対象物とが隣接した状態で方眼状に配置されており、前記制御部は、前記第1の測定対象物と前記第2の測定対象物が交差する交差位置に前記所定の中心が配置されるように前記偏向部の偏向作動を制御し、前記所定の中心に対して点対称の位置に配置される2対の前記交点の座標を検出し、前記2対の交点の一方の座標に基づいて前記第1の測定対象物の配列方向を特定し、前記2対の交点の他方の座標に基づいて前記第2の測定対象物の配列方向を特定することを特徴とする測定装置により解決される。
【0009】
本構成の測定装置によれば、制御部により、測距部の測距結果と偏向部により偏向される射出方向に基づいて、直線状に形成される測定対象物と測定光の走査軌跡との交点の座標が検出される。そして、制御部は、複数の交点の座標に基づいて測定対象物の配列方向を特定する。測定対象物の配列方向が特定されるため、特定された配列方向に沿って測定対象物の局所的な測定を効率よく実行することができる。
また、本構成の測定装置によれば、直線状に延びる第1の測定対象物と、それに直交する方向に沿って直線状に延びる第2の測定対象物が交差する交差位置に測定光の走査軌跡の所定の中心を配置することにより、所定の中心に対して点対称の位置に配置される2対の交点の座標が検出される。そして、この2対の交点の一方の座標と他方の座標に基づいて、第1の測定対象物と第2の測定対象物の双方の配列方向を同時に特定することができる。
【0011】
本発明の測定装置において、好ましくは、前記制御部は、4つの前記交点を検出した場合に該4つの交点の座標の重心が前記所定の中心と一致するように前記偏向部の偏向作動を制御することを特徴とする。
本構成の測定装置によれば、4つの交点を検出した場合にこれらの交点の座標の重心を測定光の走査軌跡の中心と一致させることにより、所定の中心に対して点対称の位置に配置される2対の交点の座標を確実に検出することができる。
【0012】
本発明の測定装置において、好ましくは、前記制御部は、複数の前記交点を検出した場合に、隣接して配置される一対の前記交点の座標に基づいて前記測定対象物の配列方向を特定することを特徴とする。
本構成の測定装置によれば、隣接して配置される一対の交点の座標は同一の測定対象物の測定結果である可能性が極めて高いため、隣接して配置される一対の交点の座標に基づいて測定対象物の配列方向を確実に特定することができる。
【0013】
本発明の測定装置において、好ましくは、前記制御部は、それぞれ隣接して配置される複数対の前記交点の座標に基づいて複数の配列方向を算出し、該複数の配列方向に基づいて前記測定対象物の配列方向を特定することを特徴とする。
本構成の測定装置によれば、複数対の交点の座標に基づいて複数の配列方向を算出し、例えば、平均化処理等を行うことにより、測定対象物の配列方向を高精度に特定することができる。
【0014】
本発明の測定装置において、好ましくは、前記測定対象物は、第1方向に沿って直線状に延びる第1の測定対象物と、前記第1方向に直交する第2方向に沿って直線状に延びる第2の測定対象物と、を備え、前記第1の測定対象物と前記第2の測定対象物とが隣接した状態で方眼状に配置されており、前記制御部は、前記第1の測定対象物と前記第2の測定対象物とを含む略平面状の領域を設定し、該領域に含まれる座標を前記測定対象物と前記測定光の走査軌跡との交点の座標として検出することを特徴とする。
本構成の測定装置によれば、方眼状に配置された直線状の第1の測定対象物と第2の測定対象物とを含む略平面状の領域に含まれる座標を交点の座標として検出し、その領域に含まれない座標は交点の座標として検出しない。そのため、測定対象物以外の他の構造物が(例えば、測定対象物である最上段の鉄筋と、その鉄筋の下方に配置される他の鉄筋)を交点の座標として検出してしまうことがない。よって、測定対象物との交点から得られる座標のみを交点の座標として確実に検出することができる。
【0015】
本発明の測定装置において、好ましくは、前記制御部は、前記領域を直径の異なる複数の円形の走査軌跡で前記測定光を走査することにより複数対の前記交点の座標を検出することを特徴とする。
本構成の測定装置によれば、直径の異なる複数の円形の走査軌跡で第1の測定対象物と第2の測定対象物とを含む領域を円形の走査軌跡で走査することにより、この領域に含まれる測定対象物と測定光との複数の交点の座標を効率よく検出することができる。
【0016】
前記課題は、本発明によれば、測定対象物の測定を行う測定装置の制御方法であって、前記測定装置は、測定光を発する発光素子と、前記測定光を射出する測定光射出部と、反射測定光を受光する受光部と、前記反射測定光を受光して受光信号を発生する受光素子とを有する測距部と、前記測定光の射出方向を基準光軸に対して偏向するとともに所定の中心に対して周方向に前記測定光を走査可能な偏向部と、を有し、前記受光素子からの受光信号に基づき前記測定対象物の測距を行う測距工程と、前記測距工程の測距結果と前記偏向部により偏向される前記射出方向に基づいて直線状に形成される前記測定対象物と前記測定光の走査軌跡との交点の座標を検出する交点検出工程と、前記交点検出工程により検出された複数の前記交点の座標に基づいて前記測定対象物の配列方向を特定する特定工程と、を備え、前記測定対象物は、第1方向に沿って直線状に延びる第1の測定対象物と、前記第1方向に直交する第2方向に沿って直線状に延びる第2の測定対象物と、を備え、前記第1の測定対象物と前記第2の測定対象物とが隣接した状態で方眼状に配置されており、前記制御部は、前記第1の測定対象物と前記第2の測定対象物が交差する交差位置に前記所定の中心が配置されるように前記偏向部の偏向作動を制御し、前記所定の中心に対して点対称の位置に配置される2対の前記交点の座標を検出し、前記2対の交点の一方の座標に基づいて前記第1の測定対象物の配列方向を特定し、前記2対の交点の他方の座標に基づいて前記第2の測定対象物の配列方向を特定することを特徴とする測定装置の制御方法により解決される。
【0017】
本構成の制御方法によれば、交点検出工程により、測距部の測距結果と偏向部により偏向される射出方向に基づいて、直線状に形成される測定対象物と測定光の走査軌跡との交点の座標が検出される。そして、特定工程により、複数の交点の座標に基づいて測定対象物の配列方向が特定される。測定対象物の配列方向が特定されるため、特定された配列方向に沿って測定対象物の局所的な測定を効率よく実行することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、作業者による設定作業や多大な処理負荷を要することなく、直線状に形成される測定対象物の配列方向を特定して局所的な測定を効率よく実行することが可能な測定装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係るレーザスキャナを具備する測量システムの外観図である。
図2図1に示すレーザスキャナの概略構成図である。
図3図1に示すレーザスキャナに於ける偏向部の概略図である。
図4図3に示す偏向部の作用説明図である。
図5】電線を基準光軸に沿ってみたX-Z平面図である。
図6】鉄筋および測量システムを上方からみたX-Y平面図である。
図7】鉄筋及び測量システムを側方からみたY-Z平面図である。
図8】演算制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
図9】演算制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
図10】鉄筋の交差点をスキャンした状態を示すX-Y平面図である。
図11】鉄筋の交差点の近傍を示す部分拡大図である。
図12】鉄筋の交差点の近傍を示す部分拡大図である。
図13】鉄筋の配列方向を示すX-Y平面図である。
図14】演算制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
図15】鉄筋をスキャンした状態を示すX-Y平面図である。
図16図15に示すX-Y平面図の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ本発明の第1実施形態を説明する。先ず、図1に於いて、本実施形態に係るレーザスキャナを具備する測量システム(測定装置)について概略を説明する。図1中、1は測量システムであり、Oは後述する偏向部35により偏向されていない状態での光軸を示し、この時の光軸を基準光軸とする。
【0021】
測量システム1は、主に支持装置としての三脚2、レーザスキャナ3、操作装置4、回転台5から構成される。回転台5は三脚2の上端に取付けられ、回転台5にレーザスキャナ3が横回転可能及び縦回転可能に取付けられる。又、回転台5は、レーザスキャナ3の横方向の回転角(水平方向の回転角)を検出する機能を具備している。
【0022】
回転台5には横方向に延びるレバー7が設けられる。レバー7の操作により、レーザスキャナ3を上下方向(鉛直方向)、又は横方向(水平方向)に回転させることができ、また所要の姿勢で固定することも可能となっている。
【0023】
レーザスキャナ3は、測距部3A、姿勢検出部17を内蔵し、測距部3Aは測定光23を測定対象物、或は測定範囲に射出し、反射測定光24を受光して測定を行う。又、姿勢検出部17は、レーザスキャナ3の鉛直(又は水平)に対する姿勢を高精度に検出可能である。
【0024】
操作装置4は、レーザスキャナ3との間で有線、無線等所要の手段を介して通信を行う通信機能を有する。又、操作装置4は、アタッチメント8を介してレーザスキャナ3に着脱可能となっており、取外した操作装置4は片手で保持し、操作可能であり、操作装置4によりレーザスキャナ3を遠隔操作可能となっている。
【0025】
更に、レーザスキャナ3からは、画像、測定状態、測定結果等が操作装置4に送信され、画像、測定状態、測定結果等が、操作装置4に記憶され操作装置4の表示部(図示せず)に表示される様になっている。操作装置4は、例えばスマートフォンであってもよい。
【0026】
図2を参照して、レーザスキャナ3について説明する。
レーザスキャナ3は、測定光射出部11、受光部12、測距演算部13、撮像部14、射出方向検出部15、モータドライバ16、姿勢検出部17、第1通信部18、演算制御部19、第1記憶部20、撮像制御部21、画像処理部22を具備し、これらは筐体9に収納され、一体化されている。尚、測定光射出部11、受光部12、測距演算部13等は測距部3Aを構成する。
【0027】
測定光射出部11は射出光軸26を有し、射出光軸26上に発光素子27、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、射出光軸26上に投光レンズ28が設けられている。更に、射出光軸26上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡29と、受光光軸31(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡32とによって、射出光軸26は、受光光軸31と合致する様に偏向される。第1反射鏡29と第2反射鏡32とで射出光軸偏向部が構成される。発光素子27はパルスレーザ光線を発し、測定光射出部11は、発光素子27から発せられたパルスレーザ光線を測定光23として射出する。
【0028】
受光部12について説明する。受光部12には、測定対象物(即ち測定点)からの反射測定光24が入射する。受光部12は、受光光軸31を有し、受光光軸31には、上記した様に、第1反射鏡29、第2反射鏡32によって偏向された射出光軸26が合致する。
【0029】
偏向された射出光軸26上に、即ち受光光軸31上に偏向部35(後述)が配設される。偏向部35の中心を透過する真直な光軸は、基準光軸Oとなっている。基準光軸Oは、偏向部35によって偏向されなかった時の射出光軸26又は受光光軸31と合致する。
【0030】
偏向部35を透過し、入射した受光光軸31上に結像レンズ34が配設され、また受光素子33、例えばフォトダイオード(PD)が設けられている。結像レンズ34は、反射測定光24を受光素子33に結像する。受光素子33は反射測定光24を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、測距演算部13に入力される。測距演算部13は、受光信号に基づき測定点迄の測距を行う。
【0031】
図3を参照して、偏向部35について説明する。偏向部35は、一対の光学プリズム36a,36bから構成される。光学プリズム36a,36bは、それぞれ円板状であり、受光光軸31上に直交して配置され、重なり合い、平行に配置されている。光学プリズム36a,36bとして、それぞれリズレープリズムが用いられることが、装置を小型化するために好ましい。偏向部35の中央部は、測定光23が透過し、射出される第1偏向部である測定光偏向部35aとなっており、中央部を除く部分は反射測定光24が透過し、入射する第2偏向部である反射測定光偏向部35bとなっている。
【0032】
光学プリズム36a,36bとして用いられるリズレープリズムは、それぞれ平行に形成されたプリズム要素37a,37bと多数のプリズム要素38a,38bによって構成され、円板形状を有する。光学プリズム36a,36b及び各プリズム要素37a,37b及びプリズム要素38a,38bは同一の光学特性を有する。
【0033】
プリズム要素37a,37bは、測定光偏向部35aを構成し、プリズム要素38a,38bは反射測定光偏向部35bを構成する。リズレープリズムは光学ガラスから製作してもよいが、光学プラスチック材料でモールド成形したものでもよい。光学プラスチック材料でモールド成形することで、安価なリズレープリズムを製作できる。
【0034】
光学プリズム36a,36bはそれぞれ受光光軸31を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。光学プリズム36a,36bは、回転方向、回転量、回転速度を独立して制御されることで、射出光軸26を通過する測定光23を任意の方向に偏向し、受光される反射測定光24を受光光軸31と平行に偏向する。光学プリズム36a,36bの外形形状は、それぞれ受光光軸31を中心とする円形であり、反射測定光24の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、光学プリズム36a,36bの直径が設定されている。
【0035】
光学プリズム36aの外周にはリングギア39aが嵌設され、光学プリズム36bの外周にはリングギア39bが嵌設されている。リングギア39aには駆動ギア41aが噛合し、駆動ギア41aはモータ42aの出力軸に固着されている。同様に、リングギア39bには駆動ギア41bが噛合し、駆動ギア41bはモータ42bの出力軸に固着されている。モータ42a,42bは、モータドライバ16に電気的に接続されている。
【0036】
モータ42a,42bは、回転角を検出することができるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いてモータの回転量を検出してもよい。モータ42a,42bの回転量がそれぞれ検出され、モータドライバ16によりモータ42a,42bが個別に制御される。尚、エンコーダを直接リングギア39a,39bにそれぞれ取付け、エンコーダによりリングギア39a,39bの回転角を直接検出する様にしてもよい。
【0037】
駆動ギア41a,41b、モータ42a,42bは、測定光射出部11と干渉しない位置、例えばリングギア39a,39bの下側に設けられている。
投光レンズ28、第1反射鏡29、第2反射鏡32、測定光偏向部35a等は、投光光学系を構成し、反射測定光偏向部35b、結像レンズ34等は受光光学系を構成する。
【0038】
測距演算部13は、発光素子27を制御し、測定光23としてパルスレーザ光線を発光させる。測定光23が、プリズム要素37a,37b(測定光偏向部35a)により、測定点に向うよう偏向される。
【0039】
測定対象物から反射された反射測定光24は、プリズム要素38a,38b(反射測定光偏向部35b)、結像レンズ34を介して入射し、受光素子33に受光される。受光素子33は、受光信号を測距演算部13に送出し、測距演算部13は受光素子33からの受光信号に基づき、パルス光毎に測定点(測定光23が照射された点)の測距を行い、測距データは第1記憶部20に格納される。而して、測定光23をスキャンしつつ、パルス光毎に測距を行うことで各測定点の測距データが取得できる。
【0040】
射出方向検出部15は、モータ42a,42bに入力する駆動パルスをカウントすることで、モータ42a,42bの回転角を検出する。或は、エンコーダからの信号に基づき、モータ42a,42bの回転角を検出する。又、射出方向検出部15は、モータ42a,42bの回転角に基づき、光学プリズム36a,36bの回転位置を演算する。
【0041】
更に、射出方向検出部15は、光学プリズム36a,36bの屈折率と回転位置に基づき、測定光23の射出方向を演算し、演算結果は演算制御部19に入力される。演算制御部19は、測定光23の射出方向から基準光軸Oに対する測定点の水平角θ1、鉛直角θ2を演算し、各測定点について、水平角θ1、鉛直角θ2を測距データに関連付けることで、測定点の3次元データを求めることができる。
【0042】
姿勢検出部17について説明する。姿勢検出部17は、フレーム45を有し、フレーム45は筐体9に固定され、或は構造部材に固定され、レーザスキャナ3と一体となっている。フレーム45にジンバルを介してセンサブロック46が取付けられている。センサブロック46は、直交する2軸を中心に360゜回転自在となっている。センサブロック46には、第1傾斜センサ47、第2傾斜センサ48が取付けられている。
【0043】
第1傾斜センサ47は水平を高精度に検出するものであり、例えば水平液面に検出光を入射させ反射光の反射角度の変化で水平を検出する傾斜検出器、或は封入した気泡の位置変化で傾斜を検出する気泡管である。又、第2傾斜センサ48は傾斜変化を高応答性で検出するものであり、例えば加速度センサである。
【0044】
センサブロック46のフレーム45に対する2軸についての相対回転角は、エンコーダ49,50によって検出される様になっている。又、センサブロック46を回転させ、水平に維持するモータ(図示せず)が2軸に関して設けられており、モータは、第1傾斜センサ47、第2傾斜センサ48からの検出結果に基づきセンサブロック46を水平に維持する様に、演算制御部19によって制御される。
【0045】
センサブロック46が傾斜していた場合(レーザスキャナ3が傾斜していた場合)、センサブロック46に対する相対回転角がエンコーダ49,50によって検出され、エンコーダ49,50の検出結果に基づき、レーザスキャナ3の傾斜角、傾斜方向が検出される。センサブロック46は、2軸について360゜回転自在であるので、姿勢検出部17がどの様な姿勢となろうとも(例えば、姿勢検出部17の天地が逆になった場合でも)、全方向での姿勢検出が可能である。
【0046】
姿勢検出に於いて、高応答性を要求する場合は、第2傾斜センサ48の検出結果に基づき姿勢検出と姿勢制御が行われるが、第2傾斜センサ48は第1傾斜センサ47に比べ検出精度が悪いのが一般的である。姿勢検出部17では、高精度の第1傾斜センサ47と高応答性の第2傾斜センサ48を具備することで、第2傾斜センサ48の検出結果に基づき姿勢制御を行い、第1傾斜センサ47により高精度の姿勢検出を可能とする。
【0047】
第1傾斜センサ47の検出結果で、第2傾斜センサ48の検出結果を較正することができる。即ち、第1傾斜センサ47が水平を検出した時のエンコーダ49,50の値、即ち実際の傾斜角と第2傾斜センサ48が検出した傾斜角との間で偏差を生じれば、偏差に基づき第2傾斜センサ48の傾斜角を較正することができる。
【0048】
従って、予め、第2傾斜センサ48の検出傾斜角と、第1傾斜センサ47による水平検出とエンコーダ49,50の検出結果に基づき求めた傾斜角との関係を取得しておけば、第2傾斜センサ48に検出された傾斜角の較正(キャリブレーション)をすることができ、第2傾斜センサ48による高応答性での姿勢検出の精度を向上させることができる。
【0049】
演算制御部19は、傾斜の変動が大きい時、傾斜の変化が速い時は、第2傾斜センサ48からの信号に基づき、モータを制御する。又、演算制御部19は、傾斜の変動が小さい時、傾斜の変化が緩やかな時、即ち第1傾斜センサ47が追従可能な状態では、第1傾斜センサ47からの信号に基づき、モータを制御する。
【0050】
尚、第1記憶部20には、第1傾斜センサ47の検出結果と第2傾斜センサ48の検出結果との比較結果を示す対比データが格納されている。第2傾斜センサ48からの信号に基づき、第2傾斜センサ48による検出結果を較正する。この較正により、第2傾斜センサ48による検出結果を第1傾斜センサ47の検出精度迄高めることができる。よって、姿勢検出部17による姿勢検出に於いて、高精度を維持しつつ高応答性を実現することができる。
【0051】
撮像部14は、レーザスキャナ3の基準光軸Oと平行な撮像光軸43を有し、例えば50°の画角を有するカメラであり、レーザスキャナ3のスキャン範囲を含む画像データを取得する。撮像光軸43と射出光軸26及び基準光軸Oとの関係は既知となっている。又、撮像部14は、動画像、又は連続画像が取得可能である。
【0052】
撮像制御部21は、撮像部14の撮像を制御する。撮像制御部21は、撮像部14が動画像、又は連続画像を撮像する場合に、動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングとレーザスキャナ3でスキャンするタイミングとの同期を取っている。演算制御部19は画像と点群データとの関連付けも実行する。
【0053】
撮像部14の撮像素子44は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、撮像光軸43を原点とした座標系での画素座標を有し、画素座標によって画像素子上での位置が特定される。画像処理部22は、撮像部14で取得した画像データに操作装置4で表示させる情報を重ね合わせる画像処理等を行う。画像処理部22が生成した画像は、演算制御部19により操作装置4の操作画面に表示される。
【0054】
レーザスキャナ3の測定作動について説明する。三脚2を既知点、又は所定点に設置し、基準光軸Oを測定対象物に向ける。この時の基準光軸Oの水平角は、回転台5の水平角検出機能によって検出され、基準光軸Oの水平に対する傾斜角は姿勢検出部17によって検出される。
【0055】
偏向部35の偏向作用、スキャン作用について、図4を参照して説明する。尚、図4では説明を簡略化するため、光学プリズム36a,36bについて、プリズム要素37a,37bとプリズム要素38a,38bとを分離して示している。又、図4は、プリズム要素37a,37b、プリズム要素38a,38bが同方向に位置した状態を示しており、この状態では最大の偏向角が得られる。又、最小の偏向角は、光学プリズム36a,36bのいずれか一方が180゜回転した位置であり、光学プリズム36a,36bの相互の光学作用が相殺され、偏向角は0゜となる。従って、光学プリズム36a,36bを経て射出される測定光23と、光学プリズム36a,36bを経て受光される反射測定光24は、基準光軸Oと合致する。
【0056】
発光素子27から測定光23が発せられ、測定光23は投光レンズ28で平行光束とされ、測定光偏向部35a(プリズム要素37a,37b)を透過して測定対象物或は測定範囲に向けて射出される。ここで、測定光偏向部35aを透過することで、測定光23はプリズム要素37a,37bによって所要の方向に偏向されて射出される。測定対象物或は測定範囲で反射された反射測定光24は、反射測定光偏向部35bを透過して入射され、結像レンズ34により受光素子33に集光される。
【0057】
反射測定光24が反射測定光偏向部35bを透過することで、反射測定光24は、受光光軸31と合致する様にプリズム要素38a,38bによって偏向される(図4)。光学プリズム36aと光学プリズム36bとの回転位置の組み合わせにより、射出する測定光23の偏向方向、偏向角を任意に変更することができる。
【0058】
従って、演算制御部19は、発光素子27よりレーザ光線を発光させつつ、偏向部35を制御することにより、測定光23を円の軌跡でスキャンさせることができる。尚、反射測定光偏向部35bは、測定光偏向部35aと一体に回転していることは言う迄もない。
【0059】
更に、偏向部35の偏向角を連続的に変更して測定光23をスキャンしつつ測距を実行することでスキャン軌跡に沿って測距データ(スキャンデータ)を取得することができる。又、スキャン速度、スキャン密度等で定まるスキャン条件について、スキャン速度は、モータ42a,42b間の関係を維持して、回転速度を増減することで、増減し、スキャン密度は、スキャン速度と測定光23のパルス発光周期との関係を制御することで所望の値に設定できる。
【0060】
又、測定時の測定光23の射出方向角は、モータ42a,42bの回転角により検出でき、測定時の射出方向角と測距データとを関連付けることで、3次元の測距データを取得することができる。従って、レーザスキャナ3を、3次元位置データを有する点群データを取得するレーザスキャナとして機能させることができる。
【0061】
次に、本実施形態の測量システム1により測定対象物の点群データを取得する処理について説明する。本実施形態の測定対象物は、直線状に延びるように形成される鉄製の棒状部材である鉄筋100である。本実施形態の測量システム1は、鉄筋100を含む視野の全体の測定結果を第1記憶部20に記憶させるのではなく、鉄筋100部分の測定結果のみを第1記憶部20に記憶させる。
【0062】
図5は、鉄筋100を基準光軸Oに沿ってみたX-Z平面図である。図6は、鉄筋100および測量システム1を上方からみたX-Y平面図である。図7は、鉄筋100及び測量システム1を側方からみたY-Z平面図である。鉄筋100は、第1方向(図5の奥行方向)に沿って直線状に延びる鉄筋100a,100b,100c,100d,100e(第1の鉄筋)と、第2方向(図5の左右方向)に沿って直線状に延びる鉄筋100f,100g,100h,100i,100j,100k,100l(第2の鉄筋)と、を備える。第1の鉄筋100と第2の鉄筋100とは、隣接した状態で方眼状に配置されている。
【0063】
図5に示すように、第1方向に沿って延びる複数の鉄筋100(100a,100b,100c,100d,100e)は、第1方向と直交する第2方向に間隔を空けて平行に配置される。第2方向に沿って延びる複数の鉄筋100(100f,100g,100h,100i,100j,100k,100l)は、第1方向に間隔を空けて平行に配置される。第1方向に沿って延びる複数の鉄筋100と、第2方向に沿って延びる複数の鉄筋100とは、互いに隣接した状態で方眼状に配置される。
【0064】
図5から図7において、軸線X,軸線Y,軸線Zは、測量システム1のレーザスキャナ3の測定の基準点を通過する軸線である。軸線Yは、レーザスキャナ3の基準光軸Oと一致する軸線である。軸線X,Zは、互いに基準点で直交する軸線であり、それぞれ軸線Yと直交している。軸線X,軸線Y,軸線Zにより定められる3次元空間上の位置P(Px,Py,Pz)は、レーザスキャナ3を基準とした座標である。
【0065】
前述したように、軸線Yの水平角(水平面に対する傾斜角)は、姿勢検出部17により検出可能である。よって、演算制御部19は、姿勢検出部17が検出した水平角に基づいて位置P(Px,Py,Pz)を補正することにより、水平面を基準とした位置を算出することができる。また、本実施形態の測量システム1は、姿勢検出部17を備えないものとしてもよい。姿勢検出部17を備えず、水平面を基準とした位置を算出するものであっても、軸線X,軸線Y,軸線Zによる三次元空間上の鉄筋100の座標を検出し、鉄筋100の配置状態(鉄筋の方向、間隔等)を検出することができる。
【0066】
図5から図7において、測定光23は、鉄筋100a上の位置P(Px,Py,Pz)を通過するように偏向部35により偏向されている。Pxは位置Pの軸線X上の座標であり、Pyは位置Pの軸線Y上の座標であり、Pzは位置Pの軸線Z上の座標である。
【0067】
図6に示すように、X-Y平面(軸線X及び軸線Yが配置される平面)において、軸線Yと測定光23の射出方向とがなすX-Y平面上の角度は、水平角θ1となっている。図7に示すように、Y-Z平面(軸線Y及び軸線Zが配置される平面)において、軸線Yと測定光23とがなすY-Z平面上の角度は、鉛直角θ2となっている。射出方向検出部15は、光学プリズム36a,36bの屈折率と回転位置に基づき、測定光23の射出方向を示す水平角θ1及び鉛直角θ2を演算する。
【0068】
次に、演算制御部19が実行する処理について図8及び図9を参照して説明する。図8及び図9は、演算制御部19が実行する処理を示すフローチャートである。演算制御部19は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。
【0069】
ステップS801で、演算制御部19は、測定領域Rを設定する。測定領域Rは、鉄筋100と測定光23の走査軌跡との交点の座標として検出する座標を絞り込むために設定する領域である。測定領域Rは、例えば、図7に示すように、複数段に積層して配置される鉄筋のうち最上層に配置される鉄筋100のみを座標として検出するために設定される。測定領域Rは、鉄筋100a,100b,100c,100d,100e(第1の測定対象物)と、鉄筋100f,100g,100h,100i,100j,100k,100l(第2の測定対象物)とを含む略平面状の領域である。
【0070】
測定領域Rは、例えば、測量システム1の操作者が3次元空間上の4点を指定することにより設定される。また、測定領域Rは、直交する2本の鉄筋(例えば、鉄筋100aと鉄筋100g)が交差する位置のスキャンを行って4つの交点を検出し、これらの交点の座標が含まれるように設定してもよい。
【0071】
ステップS802で、演算制御部19は、スキャンによる測定光23の測定領域R上に照射される円のサイズを決定する。演算制御部19は、円の直径が予め設定された鉄筋の間隔の約0.5倍~約0.8倍となるように円のサイズを決定する。ここで、予め設定された鉄筋の間隔は、略平行に配列される鉄筋100a,100b,100c,100d,100eの間隔、あるいは略平行に配列される鉄筋100f,100g,100h,100i,100j,100k,100lの間隔である。
【0072】
ステップS803で、演算制御部19は、ステップS801で設定された測定領域Rのうち例えばレーザスキャナ3に最も近傍の位置など所定の位置にスキャンの中心位置Pcを設定する。所定の位置は、予め定められた位置や操作者により操作装置4の操作画面を介して指定された位置とすることができる。演算制御部19は、設定された中心位置Pcを中心にスキャンを行うように、基準光軸Oに対する測定点の水平角θ1及び鉛直角θ2を算出する。ここで、スキャンとは、所定の中心位置Pcに対して測定光23を円周方向に1回転分走査する動作をいう。
【0073】
ステップS804で、演算制御部19は、ステップS803またはステップS813で算出された水平角θ1及び鉛直角θ2に基づいて、スキャンを行う。この時、演算制御部19は、水平角θ1及び鉛直角θ2に応じた回転位置となるように光学プリズム36aと光学プリズム36bを回転させることにより、所定の中心位置Pcに対して測定光23を円周方向に1回転分走査する。測距演算部13は、測定光23に対する受光素子33からの受光信号に基づいて、測定光23に含まれる複数のパルス毎に測定点の測距を行う。演算制御部19は、測距演算部13により測距された測距データを第1記憶部20に格納する。
【0074】
図10は、鉄筋100bと鉄筋100hの交差点をスキャンした状態を示す図である。図11及び図12は、鉄筋100bと鉄筋100hの交差点の近傍を示す部分拡大図である。図10から図12において、符号Pcはスキャンの中心位置を示す。符号Tは中心位置Pcを中心にスキャンされる測定光23の走査軌跡を示す。図11及び図12の符号SPはパルス状の測定光23による複数の測定点を示す。
【0075】
図11に示すように、鉄筋100bと鉄筋100hとの交差点を所定の中心位置Pc(Pxc,Pyc,Pzc)を中心に円形の走査軌跡Tによりスキャンすると、測定光23の走査軌跡Tと鉄筋100bとが2箇所で交差する。また、測定光23の走査軌跡Tと鉄筋100hとが2箇所で交差する。鉄筋100b及び鉄筋100hからの測定光23が複数の測定点SPで反射し、受光素子33により受光される。
【0076】
ステップS805で、演算制御部19は、ステップS803またはステップS813で算出された測定光23の水平角θ1及び鉛直角θ2と、第1記憶部20に格納された複数の測定点SPの測距データとに基づいて、複数の測定点SPの3次元座標の集合体である点群データを取得する。具体的に、演算制御部19は、測定光23の水平角θ1及び鉛直角θ2を、各測定点SPの測距データに関連付けることで、点群データを取得する。演算制御部19は、取得した点群データを第1記憶部20に格納する。
【0077】
ステップS806で、演算制御部19は、ステップS805で第1記憶部20に格納された点群データから、測定光23の走査軌跡Tと鉄筋100bとが交差する位置を示す交点P2,交点P4の座標を検出する。交点P2,交点P4は、図11において中心位置Pcの上方と下方に配置される。演算制御部19は、例えば、中心位置Pcの下方の交点P4の座標を、中心位置Pcの下方の複数の点群データの座標の平均値を算出して求める。また、演算制御部19は、例えば、中心位置Pcの上方の交点P2の座標を、中心位置Pcの上方の複数の点群データの座標の平均値を算出して求める。
【0078】
また、演算制御部19は、ステップS805で第1記憶部20に格納された点群データから、測定光23の走査軌跡Tと鉄筋100hとが交差する位置を示す交点P1,交点P3の座標を検出する。交点P1,交点P3は、図11において中心位置Pcの左方と右方に配置される。演算制御部19は、例えば、中心位置Pcの左方の交点P1の座標を、中心位置Pcの左方の複数の点群データの座標の平均値を算出して求める。また、演算制御部19は、例えば、中心位置Pcの右方の交点P3の座標を、中心位置Pcの右方の複数の点群データの座標の平均値を算出して求める。
【0079】
ここでは、複数の点群データの座標の平均値を算出して交点P1,交点P2,交点P3,交点P4の座標を求めたが、他の態様であってもよい。例えば、複数の点群データの座標とともに各点群データに対応する反射測定光24の受光素子33による受光強度を記憶しておき、複数の点群データのうち最も受光強度が高いものを交点の座標としてもよい。
【0080】
また、演算制御部19は、ステップS806で交点の座標を検出する際に、ステップS801で設定した測定領域Rに含まれない交点の座標を除外する。このようにすることで、演算制御部19は、測定領域Rに含まれる座標を鉄筋100と測定光23の走査軌跡との交点の座標として検出することができる。これにより、測定対象ではない他の鉄筋や地面から得られる点群データ等を交点の座標から除外することができる。
【0081】
ステップS807で、演算制御部19は、ステップS806で4つの交点P1,交点P2,交点P3,交点P4の座標が検出されたかどうかを判断し、YESであればステップS808へ処理を進め、NOであればステップS803を再び実行する。演算制御部19は、NOと判断した後にステップS803を実行する場合、スキャンの中心位置を任意の方向に移動させる。これは、スキャンの中心位置を任意の方向に移動させることにより、2つの鉄筋100の交差点の周りの領域をスキャンして4つの交点の座標を検出するためである。
【0082】
ステップS808で、演算制御部19は、ステップS807で検出した4つの交点の重心Pgの座標を算出する。重心Pgの座標を算出するのは、スキャンの中心位置を鉄筋100bと鉄筋100hとの交差点と一致させるためである。重心Pgの座標(Pxg,Pyg,Pzg)は、交点P1の座標(Px1,Py1,Pz1),交点P2の座標(Px2,Py2,Pz1),交点P3の座標(Px3,Py3,Pz3),交点P4の座標(Px4,Py4,Pz4)に基づいて、以下の式(1)-(3)により算出される。
【0083】
Pxg=(Px1+Px2+Px3+Px4)/4 (1)
Pyg=(Py1+Py2+Py3+Py4)/4 (2)
Pzg=(Pz1+Pz2+Pz3+Pz4)/4 (3)
【0084】
ステップS809で、演算制御部19は、ステップS803で設定した中心位置PcとステップS808で算出した重心Pgとの間の距離Lが所定距離以内であるかどうかを判定し、YESであればステップS810へ処理を進め、NOであればステップS813へ処理を進める。所定距離は、例えば、走査軌跡Tの円のサイズの10%~30%程度の長さである。
【0085】
ステップS813で、演算制御部19は、ステップS803で設定した中心位置PcとステップS808で算出した重心Pgとの間の距離Lが所定距離より大きいため、中心位置Pcを重心Pgと一致させるようにスキャンの中心位置Pcを設定する。演算制御部19は、設定された中心位置Pcを中心にスキャンを行うように、基準光軸Oに対する測定点の水平角θ1及び鉛直角θ2を算出する。演算制御部19は、ステップS809とステップS813の処理を繰り返し実行し、第1の鉄筋100と第2の鉄筋100が交差する交差位置にスキャンの中心位置Pcが配置されるように偏向部35の偏向作動を制御する。
【0086】
図12は、第1の鉄筋100と第2の鉄筋100が交差する交差位置にスキャンの中心位置Pcが配置された状態を示す。図12に示すように、重心Pgと中心位置Pcとの間の距離が所定距離以下となると、第1の鉄筋100と第2の鉄筋100が交差する交差位置にスキャンの中心位置Pcが配置された状態となる。
【0087】
ステップS810で、演算制御部19は、ステップS806で検出した交点P2の座標(Px2,Py2,Pz2)及び交点P4の座標(Px4,Py4,Pz4)に基づいて第1方向(図5の奥行方向)に沿って直線状に延びる鉄筋100b(第1の鉄筋)の配列方向AD1を特定する。演算制御部19は、交点P4と交点P2を結ぶベクトルを配列方向AD1として特定する。配列方向AD1は、鉄筋100bが配列される方向を示しており、配列方向AD1の延長線上に鉄筋100bが配置されていると推定される。
【0088】
ステップS811で、演算制御部19は、ステップS806で検出した交点P1の座標(Px1,Py1,Pz1)及び交点P3の座標(Px3,Py3,Pz3)に基づいて第2方向(図5の左右方向)に沿って直線状に延びる鉄筋100h(第2の鉄筋)の配列方向AD2を特定する。演算制御部19は、交点P1と交点P3を結ぶベクトルを配列方向AD2として特定する。配列方向AD2は、鉄筋100hが配列される方向を示しており、配列方向AD2の延長線上に鉄筋100hが配置されていると推定される。
【0089】
ステップS812で、演算制御部19は、鉄筋100の配列方向を特定するための測定を終了するかどうかを判定し、YESであれば本フローチャートの処理を終了させ、NOであればステップS803以降の処理を再び実行する。演算制御部19は、NOと判断した後にステップS803を実行する場合、スキャンの中心位置Pcを任意の方向に移動させる。
【0090】
スキャンの中心位置Pcを任意の方向に移動させるのは、すでに配列方向を特定した鉄筋100b及び鉄筋100hとは異なる他の鉄筋100の配列方向を特定するためである。例えば、演算制御部19は、図10に破線で示すように、鉄筋100aと鉄筋100iとの交差点を囲む走査軌跡Tとなるようにスキャンの中心位置Pcを移動させる。このような処理を繰り返すことにより、第1の鉄筋100と第2の鉄筋100とが交差する複数の交差点を検出し、各交差点における鉄筋100の配列方向を特定することができる。
【0091】
図13は、鉄筋100の配列方向を示すX-Y平面図である。図13に破線で示す鉄筋100a~100lは、それぞれ図8及び図9に示す鉄筋100の配列方向を特定する処理によって特定された鉄筋100の配列方向に基づいて設定された領域であり、鉄筋100が配置されると推定される領域である。演算制御部19は、スキャンの中心位置Pcが、鉄筋100が配置されると推定される領域に所定の間隔(例えば、軸線X,軸線Y,軸線Zの三次元空間上で等間隔)で移動するように、偏向部35の偏向作動を制御する。
【0092】
図13に示す中心位置Pcは、鉄筋100が配置されると推定される領域を測量システム1がスキャンする際のスキャンの中心位置を示す。演算制御部19は、中心位置Pcを設定した状態で測定光23による鉄筋100のスキャンを行って点群データを取得し、点群データの座標の平均値を算出して測定光23の走査軌跡Tと鉄筋100との交点の座標を検出する。
【0093】
演算制御部19は、図13に示すそれぞれの中心位置Pcについてスキャンを行うことにより、鉄筋100a~100lと測定光23の走査軌跡Tとの交点の座標を検出することができる。図8及び図9に示す鉄筋100の配列方向を特定する処理によって複数の鉄筋100の配列方向が予め特定されているため、特定された配列方向に沿ってスキャンの中心位置Pcを移動させることにより、複数の鉄筋100を確実に測定することができる。スキャンの中心位置Pcは、特定された配列方向に沿って鉄筋100上を移動してもよく、特定された配列方向に沿って複数の鉄筋100同士の間を通って移動してもよい。図13に表した例では、スキャンの中心位置Pcは、特定された配列方向に沿って鉄筋100上を移動している。
【0094】
以上説明した本実施形態の測量システム1が奏する作用及び効果について説明する。
本実施形態の測量システム1によれば、演算制御部19により、測距部3Aの測距結果と偏向部35により偏向される射出方向に基づいて、直線状に形成される鉄筋100と測定光23の走査軌跡Tとの交点の座標が検出される。そして、演算制御部19は、複数の交点の座標に基づいて鉄筋100の配列方向AD1,AD2を特定する。鉄筋100の配列方向AD1,AD2が特定されるため、特定された配列方向AD1,AD2に沿って鉄筋100の局所的な測定を効率よく実行することができる。
【0095】
また、本実施形態の測量システム1によれば、直線状に延びる第1の鉄筋100と、それに直交する方向に沿って直線状に延びる第2の鉄筋100が交差する交差位置に測定光23の走査軌跡Tの所定の中心位置Pcを配置することにより、所定の中心位置Pcに対して点対称の位置に配置される2対の交点の座標が検出される。そして、この2対の交点の一方の座標と他方の座標に基づいて、第1の鉄筋100の配列方向AD1と第2の鉄筋100の配列方向AD2を同時に特定することができる。
【0096】
また、本実施形態の測量システム1によれば、4つの交点を検出した場合にこれらの交点の座標の重心Pgを測定光23の走査軌跡Tの中心位置Pcと一致させることにより、所定の中心位置Pcに対して点対称の位置に配置される2対の交点の座標を確実に検出することができる。
【0097】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る測量システムについて説明する。
第1実施形態の測量システムは、直交する2本の鉄筋100が交差する交差点のスキャンを行って2対の交点の座標を検出し、2対の交点に基づいて鉄筋100の配列方向を特定するものであった。それに対して、本実施形態は、直径が異なる複数の走査軌跡Tにより鉄筋100のスキャンを行って複数の交点の座標を検出し、隣接する交点の座標から鉄筋100の配列方向を特定するものである。
【0098】
本実施形態の測量システムが備える演算制御部19が実行する処理について図14を参照して説明する。図14は、演算制御部19が実行する処理を示すフローチャートである。図15は、鉄筋100をスキャンした状態を示すX-Y平面図である。図16は、図15に示すX-Y平面図の部分拡大図である。
【0099】
ステップS1401で、演算制御部19は、測定領域Rを設定する。測定領域Rは、鉄筋100と測定光23の走査軌跡との交点の座標として検出する座標を絞り込むために設定する領域である。本実施形態で設定される測定領域Rは、第1実施形態で設定される測定領域Rと同様である。
ステップS1402で、演算制御部19は、スキャンによる測定光23の測定領域R上に照射される走査軌跡Tの円のサイズを決定する。
【0100】
ステップS1403で、演算制御部19は、ステップS1401で設定された測定領域Rの所定の位置にスキャンの中心位置Pcを設定する。所定の位置は、予め定められた位置や操作者により操作装置4の操作画面を介して指定された位置とすることができる。演算制御部19は、設定された中心位置Pcを中心にスキャンを行うように、基準光軸Oに対する測定点の水平角θ1及び鉛直角θ2を算出する。
【0101】
ステップS1404で、演算制御部19は、ステップS1403で算出された水平角θ1及び鉛直角θ2に基づいて、スキャンを行う。ステップS1404で演算制御部19が実行する処理は、第1実施形態のステップS804で演算制御部19が実行する処理と同様である。
【0102】
ステップS1405で、演算制御部19は、ステップS1403で算出された測定光23の水平角θ1及び鉛直角θ2と、第1記憶部20に格納された複数の測定点SPの測距データとに基づいて、複数の測定点SPの3次元座標の集合体である点群データを取得する。ステップS1405で演算制御部19が実行する処理は、第1実施形態のステップS805で演算制御部19が実行する処理と同様である。
【0103】
ステップS1406で、演算制御部19は、ステップS1405で第1記憶部20に格納された点群データから、測定光23の走査軌跡Tと鉄筋100とが交差する位置を示す交点Pの座標を検出する。図16に示す複数の交点Pは、測定光23の走査軌跡Tと鉄筋100とが交差する位置を示している。
【0104】
ステップS1407で、演算制御部19は、測定光23による鉄筋100のスキャンを終了するかどうかを判定し、YESであればステップS1408に処理を進め、NOであればステップS1402を再び実行する。ステップS1402を再び実行する場合、例えば、ステップS1402で円のサイズが一定の割合で大きくなるように円のサイズを設定する。また、例えば、ステップS1403でスキャンの中心位置Pcが変化しないようにする。
【0105】
ステップS1402からステップS1407までの処理を繰り返すことにより、スキャンの中心位置Pcを一定の位置としたまま、測定光23の測定領域Rでの走査軌跡Tの円のサイズが徐々に大きくなる。これにより、図15に示すように、中心位置Pcを同一とする複数の同心円形状の走査軌跡Tが生成される。
【0106】
ステップS1408で、演算制御部19は、ステップS1406で検出された複数の交点Pの中から隣接する複数の交点(例えば、隣接する2つの交点)の組を抽出する。図16に示すように、演算制御部19は、例えば、隣接する2つの交点の組として、交点P1bと交点P2b,交点P3bと交点P4b,交点P1cと交点P2c,交点P3cと交点P4c,交点P1iと交点P2i,交点P3iと交点P4iの6組を抽出する。
【0107】
ステップS1409で、演算制御部19は、ステップS1408で抽出された隣接して配置される一対の交点の座標に基づいて鉄筋100の配列方向を特定する。演算制御部19は、ステップS1409の処理が終了すると本フローチャートの処理を終了させる。演算制御部19は、鉄筋100bの配列方向を特定する場合、交点P1bと交点P2bを結ぶベクトルと、交点P3bと交点P4bを結ぶベクトルをそれぞれ算出し、2つのベクトルを平均化することにより鉄筋100bの配列方向を特定する。
【0108】
同様に、演算制御部19は、鉄筋100cの配列方向を特定する場合、交点P1cと交点P2cを結ぶベクトルと、交点P3cと交点P4cを結ぶベクトルをそれぞれ算出し、2つのベクトルを平均化することにより鉄筋100cの配列方向を特定する。同様に、演算制御部19は、鉄筋100iの配列方向を特定する場合、交点P1iと交点P2iを結ぶベクトルと、交点P3iと交点P4iを結ぶベクトルをそれぞれ算出し、2つのベクトルを平均化することにより鉄筋100iの配列方向を特定する。
【0109】
図14に示す処理により鉄筋100の配列方向を特定する処理が実行された後、演算制御部19は、スキャンの中心位置Pcが、鉄筋100が配置されると推定される領域に所定の間隔(例えば、軸線X,軸線Y,軸線Zの三次元空間上で等間隔)で移動するように、偏向部35の偏向作動を制御する。
【0110】
演算制御部19は、それぞれの中心位置Pcについてスキャンを行うことにより、鉄筋100a~100lと測定光23の走査軌跡Tとの交点の座標を検出することができる。図14に示す鉄筋100の配列方向を特定する処理によって複数の鉄筋100の配列方向が予め特定されているため、特定された配列方向に沿ってスキャンの中心位置Pcを移動させることにより、複数の鉄筋100を確実に測定することができる。第1実施形態に係る測量システムに関して前述したように、スキャンの中心位置Pcは、特定された配列方向に沿って鉄筋100上を移動してもよく、特定された配列方向に沿って複数の鉄筋100同士の間を通って移動してもよい。
【0111】
以上説明した本実施形態の測量システムが奏する作用及び効果について説明する。
本実施形態の測量システムによれば、隣接して配置される一対の交点の座標は同一の鉄筋100の測定結果である可能性が極めて高いため、隣接して配置される一対の交点の座標に基づいて鉄筋100の配列方向を確実に特定することができる。
【0112】
また、本実施形態の測量システムによれば、複数対の交点の座標に基づいて複数の配列方向を算出し、例えば、平均化処理等を行うことにより、鉄筋100の配列方向を高精度に特定することができる。
また、本実施形態の測量システムによれば、直径の異なる複数の円形の走査軌跡で第1の鉄筋100と第1の鉄筋と直交する方向に配列される第2の鉄筋100とを含む領域を円形の走査軌跡で走査することにより、この領域に含まれる鉄筋100と測定光23との複数の交点の座標を効率よく検出することができる。
【0113】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【0114】
以上の説明において、測定対象物は鉄筋であるものとしたが、直線状に形成されるものであれば、他の態様であってもよい。
【0115】
以上の説明においては、偏向部35を一対の光学プリズム36a,36bから構成するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、2軸ガルバノミラーを用いて一対の光学プリズム36a,36bと同様の機能を達成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1・・・測量システム、 3・・・レーザスキャナ、 3A・・・測距部、 4・・・操作装置、 11・・・測定光射出部、 17・・・姿勢検出部、 19・・・演算制御部、 23・・・測定光、 35・・・偏向部、 100・・・鉄筋、 AD1,AD2・・・配列方向、 O・・・基準光軸、 P・・・交点、 Pc・・・中心位置、 Pg・・・重心、 R・・・測定領域、 T・・・走査軌跡、 X,Y,Z・・・軸線、 θ1,θ2・・・水平角
図1
図2
図3
図4
図5
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図16