(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】ホットメルト組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/02 20060101AFI20230523BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20230523BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230523BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230523BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230523BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20230523BHJP
C08L 23/20 20060101ALI20230523BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20230523BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230523BHJP
C09J 123/02 20060101ALI20230523BHJP
C09J 123/10 20060101ALI20230523BHJP
C09J 123/20 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
C08L23/02
B32B7/027
B32B27/00 D
B32B27/18 Z
B32B27/32 E
C08L23/10
C08L23/20
C08L91/06
C09J11/08
C09J123/02
C09J123/10
C09J123/20
(21)【出願番号】P 2019008877
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】土橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】森下 岳栄
(72)【発明者】
【氏名】白井 幸児
(72)【発明者】
【氏名】築野 晋吾
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/099107(WO,A1)
【文献】特開2009-057397(JP,A)
【文献】特開2016-155916(JP,A)
【文献】特開2018-030918(JP,A)
【文献】特開2009-126991(JP,A)
【文献】特開2016-029118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/02
B32B 7/027
B32B 27/00
B32B 27/18
B32B 27/32
C08L 23/10
C08L 23/20
C08L 91/06
C09J 11/08
C09J 123/02
C09J 123/10
C09J 123/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非晶性ポリαオレフィン、
(B
)重量平均分子量が35000以上の結晶性プロピレン系重合体、および
(C)粘着付与樹脂
を含むホットメルト組成物であって、
(A)非晶性ポリαオレフィンは、(A1)軟化点が150℃以上の非晶性ポリαオレフィンを含
み、
成分(B)は、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが5~350g/10分である結晶性プロピレン系重合体を含み、
成分(A)、(B)および(C)の総重量100重量部に対し、成分(A)の含有量は50~80重量部であり、成分(B)の含有量は1~18重量部であり、成分(C)の含有量は10重量部以上、40重量部以下であるホットメルト組成物
(ただし、下記(i)の接着性樹脂組成物を含まない);
(i)エチレン・酢酸ビニル共重合体(a)30~98重量%と
下記要件(b-1)および(b-2)を共に満たすプロピレン系重合体(b)60~0重量%、並びに下記要件(c-1)および(c-2)を満たすプロピレン系重合体(c)40~100重量%(ここで、成分(b)と成分(c)とは合計して100重量%)からなるプロピレン系樹脂組成物(P)70~2重量%(ここで、成分(a)と成分(P)は合計して100重量%)と
からなる接着性樹脂組成物、
(b-1)示差走査熱量計(DSC)で測定される融点Tm(b)が120~170℃である。
(b-2)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重下)が0.1~500g/10分である。
(c-1)示差走査熱量計(DSC)で測定される融点Tm(c)が120℃未満または融点が観測されない。
(c-2)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重下)が0.1~500g/10分である。
【請求項2】
(A)非晶性ポリαオレフィンは、(A1-1)軟化点が150℃以上の非晶性エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体と、(A2)軟化点が150℃未満の非晶性エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体とを含む、請求項1に記載のホットメルト組成物。
【請求項3】
さらに、(D)ワックスを含む、請求項1又は2に記載のホットメルト組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のホットメルト組成物が塗布されたポリオレフィン系基材。
【請求項5】
請求項4に記載のポリオレフィン系基材を備えた車輌用内装材。
【請求項6】
請求項5に記載の車輌用内装材を有する車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト組成物、および該ホットメルト組成物が塗布された基材等に関する。詳しくは、車輌用内装材のラミネーションにおいて、表皮材等にプレコートするのに好適なホットメルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車輌用内装材であるインスツルメントパネル、ドアトリムなどは、ベース基材としてポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂等が用いられる。通常、これらベース基材に、さらに意匠性および良好な手触り感を付与するために、ポリプロピレンフォーム、ウレタンフォームなどの表皮材がラミネーションされる。
【0003】
ベース基材と表皮材とのラミネーションに用いられる接着剤には、ゴム系またはウレタン系の溶剤系接着剤が用いられることが多いが、溶剤系接着剤については、保管時または塗布時の安全性および環境面の問題、ならびに残留溶剤による臭気の問題があった。また、ゴム系接着剤を用いる場合、ベース基材と表皮材とをラミネーションする直前での塗布が必要となり、現場での作業工数が多くなる問題もあった。
【0004】
一方、現場での作業工数を低減できる接着剤として、一液の湿気硬化型ウレタン系接着剤を表皮材にプレコートしたものを、ラミネーション工程において加熱により再活性化し、ベース基材と貼りつける方法がある。しかしながら、湿気硬化型ウレタン系接着剤は、適正な反応速度を得るための調湿設備が必要であり、長期保管時の安定性にも問題があった。
【0005】
これらの問題を解決する接着剤として、特許文献1および特許文献2には、自動車内装材用の非反応性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4095972号
【文献】特開2009-126991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のホットメルト接着剤は、プレコート後の表皮材を積層保管した際に、接着剤塗布面から、積層により接触する表皮材の表層面へ接着剤が一部転写してしまい、意匠性を損ねる問題があった。また、特許文献2における耐熱性は80℃において検討されているが、昨今の地球温暖化等における環境問題より、車両室内の耐熱性の要求が厳しくなっており、90℃以上、場合により100℃での耐熱性が要求されることもある。実際に夏場の炎天下でのダッシュボードは90℃以上になることも判明しており、特許文献2の接着剤では、耐熱性が不十分であった。
【0008】
そこで、本発明は、車輌用内装材のラミネーションに用いることができ、接着性と、耐熱性に優れ、かつ、表皮材等の基材にプレコートした後、基材を積み重ねて保管しても基材の表層に転写がないホットメルト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、所定の軟化点を有する非晶性ポリアルファオレフィン、結晶性プロピレン系重合体および粘着付与樹脂を組み合わせることにより、高温での耐熱性を備えたホットメルト接着剤が得られることを見出した。
【0010】
本発明および本発明の好ましい態様は下記の通りである。
【0011】
1.(A)非晶性ポリαオレフィン、(B)結晶性プロピレン系重合体、および(C)粘着付与樹脂を含むホットメルト組成物であって、(A)非晶性ポリαオレフィンは、(A1)軟化点が150℃以上の非晶性ポリαオレフィンを含む、ホットメルト組成物。
【0012】
2.(B)結晶性プロピレン系重合体は、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが5~400g/10分である結晶性プロピレン系重合体を含む、上記1に記載のホットメルト組成物。
【0013】
3.さらに、(D)ワックスを含む、上記1又は2に記載のホットメルト組成物。
【0014】
4.上記1~3のいずれかに記載のホットメルト組成物が塗布されたポリオレフィン系基材。
【0015】
5.上記4に記載のポリオレフィン系基材を備えた車輌用内装材。
【0016】
6.上記5に記載の車輌用内装材を有する車輌。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、接着性および耐熱性が高いホットメルト組成物を提供できる。また、本発明のホットメルト組成物がプレコートされた基材は、積層保管したときホットメルト組成物の転写が起こるのを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一態様は、(A)非晶性ポリαオレフィン、(B)結晶性プロピレン系重合体、および(C)粘着付与樹脂を含むホットメルト組成物であって、(A)非晶性ポリαオレフィンは、(A1)軟化点が150℃以上の非晶性ポリαオレフィンを含む、ホットメルト組成物に関する。
【0019】
本発明のホットメルト組成物は、接着性及び耐熱性に優れ、特に接着後に高温条件下に置かれても高い接着性を維持できる。さらに、本発明のホットメルト組成物があらかじめ塗布(プレコート)された車輌用内装材の表皮材等を積み重ねて保管しても、該組成物の転写が起こりにくく非転写性に優れる。
【0020】
以下、各成分について説明する。
【0021】
<(A)非晶性ポリαオレフィン>
本発明において、非晶性ポリαオレフィンとは、αオレフィンを重合させることにより得られるポリマーのうち、非晶性のもの(明確な融点をもたないもの)を指す。非晶性ポリαオレフィンは、一般的にAPAO(アモルファス・ポリ・アルファ・オレフィン)と称される。本明細書において、非晶性ポリαオレフィンのことを、「成分(A)」または「APAO」とも記載する。
【0022】
「非晶性」とは、ポリαオレフィンが明確な融点を有しないことを意味し、例えば、DSC(示差走査熱量測定)で融点を測定した場合に明確なピーク(好ましくは0.5J/g以上のピーク)が観察されないことをいう。
【0023】
本明細書において、非晶性ポリαオレフィンは、αオレフィンに基づくモノマーユニットに加え、エチレンに基づくモノマーユニットを含んでもよい。非晶性ポリαオレフィンは、単独重合体であっても共重合体であってもよい。αオレフィンとしては、炭素数3~15のαオレフィンが好ましく、炭素数3~10のαオレフィンがより好ましい。非晶性ポリαオレフィンを構成するモノマーユニットは、特に限定されないが、好ましくは炭素数3~15のαオレフィンに基づくモノマーユニットとエチレンに基づくモノマーユニットとを含み、より好ましくは炭素数3~10のαオレフィンに基づくモノマーユニットとエチレンに基づくモノマーユニットとを含む。非晶性ポリαオレフィンを構成するポリαオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリブテン、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体、及び、エチレンと他のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。共重合体の場合、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。共重合体としては、例えば、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/1-ブテンの3元共重合体、プロピレン/1-ヘキセン/1-オクテンの3元重合体、プロピレン/1-ヘキセン/メチルペンテンの3元共重合体等で、非晶質であるものを例示できる。
【0024】
本発明のホットメルト組成物は、好ましくは軟化点が150℃以上の非晶性ポリαオレフィンを含み、より好ましくは軟化点が160℃以上の非晶性ポリαオレフィンを含む。本明細書において、(A1)軟化点が150℃以上の非晶性ポリαオレフィンのことを「成分(A1)」とも記載する。成分(A1)の軟化点の上限値は、特に限定はされないが、通常250℃以下であり、好ましくは230℃以下であり、より好ましくは210℃以下である。なお、本明細書において、軟化点とは、JIS K 2207に基づき、石油アスファルト試験に準拠した自動軟化点装置(環球式)で測定された値とする。
【0025】
成分(A1)の重量平均分子量は、特に限定はされないが、35,000~200,000であるのが好ましく、50,000~150,000であるのがより好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量を換算して求められる。
【0026】
ホットメルト組成物が成分(A1)を含むことにより、接着性に加え、耐熱性が向上する。
【0027】
(A1)軟化点が150℃以上のAPAOの市販品としては、エボニック社製の、ベストプラスト888、ベストプラスト828、ベストプラストEP807、ベストプラストEP827、ベストプラスト891、レックスタック社製のRT2104、RT2115、RT2119、RT2180、宇部興産社製UT2115などが挙げられる。
【0028】
成分(A1)は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明のホットメルト組成物は、成分(A)として、上記成分(A1)に加え、(A2)軟化点が150℃未満のAPAO(「成分(A2)」とも記載する。)を含んでもよい。成分(A1)と成分(A2)の両方を含むことにより、ホットメルト組成物の可とう性が向上する場合がある。
【0030】
成分(A2)の重量平均分子量は、特に限定はされないが、35,000~200,000であるのが好ましく、40,000~150,000であるのがより好ましい。
【0031】
(A2)軟化点が150℃未満のAPAOの市販品として、エボニック社製のベストプラスト308、ベストプラスト408、ベストプラスト520、ベストプラスト703、ベストプラスト704、ベストプラスト708、ベストプラスト750、ベストプラスト751、ベストプラスト792、レックスタック社製のRT2215、RT2535、RT2585、RT2730、RT2780、宇部興産社製UT2535、UT2780、UT2315などが挙げられる。
【0032】
成分(A2)は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
成分(A)、(B)および(C)の総重量100部に対する成分(A)の含有量は、10~90部が好ましく、20~80部がより好ましく、30~70部がさらに好ましく、50~70部がよりさらに好ましい。
【0034】
成分(A)、(B)および(C)の総重量100部に対する成分(A1)の含有量は、20~80部が好ましく、30~70部がより好ましい。また、成分(A)、(B)および(C)の総重量100部に対する成分(A2)の含有量は、0~50部が好ましく、10~40部がより好ましい。
【0035】
成分(A)の総重量100重量部に対する成分(A1)の割合は、30重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましく、50重量部以上がさらに好ましく、100重量部であってもよい。
【0036】
<(B)結晶性プロピレン系重合体>
本発明における(B)結晶性プロピレン系重合体(「成分(B)」とも記載する。)とは、プロピレンの単独重合体(ポリプロピレン)、または、プロピレンを主体としこれと他のモノマー成分との共重合体であって、結晶性を有するもののことをいう。「結晶性を有する」とは、明確な融点が存在することをいい、例えば、DSC(示差走査熱量測定)で融点を測定した場合に明確なピーク(好ましくは0.5J/g以上のピーク)が観察されることをいう。
【0037】
成分(B)は、結晶性プロピレン系重合体の総重量に対し、プロピレンに基づくモノマーユニットの含有量が50重量%以上であるのが好ましく、70重量%以上であるのがより好ましく、100重量%であってもよい。
【0038】
成分(B)がプロピレンと他のモノマー成分との共重合体である場合、他のモノマー成分は、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン以外のα-オレフィン等を挙げることができる。プロピレン以外のα-オレフィンは炭素数4~10のα―オレフィンが好ましい。他のモノマー成分として、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられる。
【0039】
結晶性プロピレン系重合体は重量平均分子量が35,000以上のものが好ましく、40,000以上のものがより好ましく、上限は特に限定されないが、50万以下のものが好ましい。
【0040】
結晶性プロピレン系重合体としては、特に限定されないが、230℃のメルトフローレート(荷重2.16kg)が、好ましくは5~400g/10分、より好ましくは5~350g/10分である結晶性プロピレン系重合体を含むと、ホットメルト組成物の耐熱性が向上し、幅広い用途に使用できる。また、結晶性プロピレン系重合体が、結晶性ポリプロピレンを含むのが好ましく、230℃のメルトフローレート(荷重2.16kg)が5~400g/10分である結晶性ポリプロピレンを含むとより好ましい。結晶性ポリプロピレンにおける230℃のメルトフローレート(荷重2.16kg)は、5~350g/10分であることがより好ましい。なお、本発明におけるメルトフローレートとは、樹脂の流動性を示す指数を意味し、ヒーターで加熱された円筒容器内で一定量の合成樹脂を、定められた温度(例えば、230℃)で加熱、定められた荷重(例えば2.16kg)で加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間あたりに押出された樹脂量で示す。ASTM D1238で規定されている測定方法で測定し、単位としてg/10minが使用される。230℃のメルトフローレート(荷重2.16kg)が5~400g/10分である結晶性プロピレン系重合体の含有量は、成分(B)の総量100重量部に対し、30重量部以上であるのが好ましく、50重量部以上であるのがより好ましく、100重量部であってもよい。
【0041】
本発明の一態様において、成分(B)として、230℃のメルトフローレート(荷重2.16kg)が5~400g/10分である結晶性ポリプロピレンと、230℃のメルトフローレート(荷重2.16kg)が400g/10分を超え1000g/10分以下である結晶性ポリプロピレンとを併用すると、様々な条件下での塗布適性が向上するため好ましい場合がある。
【0042】
230℃のメルトフローレート(荷重2.16kg)が5~400g/10分である結晶性ポリプロピレンの市販品としては、三井化学製のタフマーPN2070、タフマーPN2060、タフマーPN3560、タフマーPN20300、出光興産製のL-MODU-S901、L-MODU-S600、サビック社製のサビックPP-FPC100、日本ポリプロ社製のノバテックPP-BC08F、サンアロマー社製のサンアロマーVMD81Mなどが挙げられる。
【0043】
230℃のメルトフローレート(荷重2.16kg)が400g/10分を超え1000g/10分以下である結晶性ポリプロピレンの市販品としては、プライムポリマー社製のプライムポリプロ E239、出光興産製のL-MODU-S400などが挙げられる。
【0044】
成分(B)は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
成分(B)の含有量は、成分(A)、(B)および(C)の総量100重量部に対し、好ましくは1~20重量部、より好ましくは2~18重量部、さらに好ましくは、3~15重量部である。
【0046】
<(C)粘着付与樹脂>
本発明における(C)粘着付与樹脂(「成分(C)」とも記載する)としては、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色~淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、樹脂等の水素化誘導体が好ましく、特に水素添加ジシクロペンタジエン系樹脂が望ましい。
【0047】
(C)粘着付与樹脂として用いることができる市販品として、例えば、東燃ゼネラル社製のT-REZ HB-103、荒川化学社製のアルコンP100、アルコンM100、アルコンP140、ヤスハラケミカル社製のクリアロンM105、エクソン社製のECR5400、ECR179EX、日本ゼオン社製のQuinton DX390を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0048】
成分(C)の含有量は、成分(A)、(B)および(C)の総量100重量部に対し、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上であり、また、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下である。
【0049】
本発明のホットメルト組成物の総重量100重量部に対し、成分(A)、(B)および(C)の合計の含有量は、特に限定はされないが、好ましくは60重量部以上、より好ましくは70重量部であり、上限は100重量部であってもよいが、好ましくは90重量部以下、より好ましくは85重量部以下である。
【0050】
<(D)ワックス>
本発明のホットメルト組成物は、(D)ワックス(「成分(D)」とも記載する。)を含むのが好ましい。本明細書において、「ワックス」とは、常温で固体、加熱すると液体となる重量平均分子量35,000未満の有機物であり、一般的に「ワックス」と称されるものを指す。ワックス状の性質を有するものであれば、本発明にかかるホットメルト組成物を得ることができる限り、特に制限されるものではない。ワックスは、カルボン酸等で変性された酸変性物であってもよい。
【0051】
ワックスとしては、例えば、
フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン/ポリプロピレンワックス)等の合成ワックス;
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス;
カスターワックスなどの天然ワックス
等が挙げられる。ワックスは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本発明のホットメルト組成物は、特に限定されないが、フィッシャートロプシュワックス(「FTワックス」とも記載する)を含むのが好ましい。本明細書において、FTワックスとは、フィッシャートロプシュ法によって合成され、一般的にフィッシャートロプシュワックスとされているものをいう。フィッシャートロプシュワックスは、成分分子が比較的幅広い炭素数分布を持つワックスから成分分子が狭い炭素数分布を持つようにワックスを分取したものである。FTワックスは、カルボン酸等の酸変性物を含んでもよい。ホットメルト組成物がFTワックスを含むことにより、ホットメルト組成物がプレコートされた表皮材を積層保管する際の組成物の転写を抑制しやすくなる。
【0053】
FTワックスの市販品としては、サゾールワックス社製の、サゾールH1、サゾールH8、サゾールH105およびサゾールC80;日本精蝋製の、パラフィンワックスFT―100、パラフィンワックスFT-0070などが挙げられる。
【0054】
本発明のホットメルト組成物は、FTワックス以外のワックスを含んでもよく、FTワックスとFTワックス以外のワックスとを含むのが好ましく、FTワックスとプロピレン系ワックス(好ましくはポリプロピレンワックス)とを含むのがより好ましい。2種類以上のワックスを含むことにより、プレコート処理された表皮材を積層保管する場合に、幅広い条件下で接着剤の転写を抑えることができる。
【0055】
FTワックス以外のワックスの市販品としては、三井化学社製のハイワックス NP-105、三洋化成社製のビスコール 660P(商品名)、ビスコール 550P(商品名)、ビスコール 440P(商品名)、ビスコール 330P(商品名)、Honeywell社製Honeywell A-C596Pなどが挙げられる。
【0056】
成分(D)の含有量は、成分(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対し、好ましくは15重量部以上、より好ましくは20重量部以上であり、また、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下である。また、成分(D)の含有量は、ホットメルト組成物の総量100重量部に対し、好ましくは8重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、また、好ましくは35重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。
【0057】
本発明におけるホットメルト組成物は、必要に応じて、更に各種添加剤を含むことができる。そのような添加剤として、例えば、安定化剤及び改質剤を例示することができる。
【0058】
「安定化剤」とは、ホットメルト組成物の熱による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト組成物の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト組成物を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。「安定化剤」として、例えば酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0059】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト組成物の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト組成物の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的にホットメルト接着剤品に使用されるものであって、目的とするホットメルト組成物を得ることができるものであれば使用することができ、特に制限されるものではない。
【0060】
酸化防止剤として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0061】
安定化剤として、市販品を使用することができる。例えば、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、城北化学社製のJF77(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0062】
本発明のホットメルト組成物は、さらに改質剤を含んでもよい。改質剤として例えば、接着剤の強靭性を改善するために(F)スチレン系ブロック共重合体を添加してもよい。各種スチレン系ブロック共重合体の市販品としては、クレイトン社製のKRATON G1701(商品名)、KRATON G1702HU(商品名)、クラレ社製のセプトン4055(商品名)、セプトン4077(商品名)、セプトン1001(商品名)、セプトン1020(商品名)等が挙げられる。
【0063】
改質剤として、耐熱性をさらに向上させるために(G)酸化亜鉛を添加する事ができる。酸化亜鉛の市販品としては、AZO社製AZO(商品名)などが挙げられる。
【0064】
本発明のホットメルト組成物は、成分(A)、成分(B)、および成分(C)、ならびに、必要に応じて成分(D)および/または種々の添加剤を配合し、加熱して溶解し混合することで製造することができる。例えば、上記成分を撹拌機付きの溶融混合釜、または加温ニーダーに投入し、加熱混合することで製造することができる。目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0065】
ホットメルト組成物を塗布する方法は、目的とする製品を得ることができる限り、特に制限されるものではない。そのような塗布方法は、接触塗布、非接触塗布に大別される。「接触塗布」とは、ホットメルト組成物を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗布方法をいい、「非接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗布方法をいう。接触塗布方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗布方法として、例えば、螺旋状に塗布できるスパイラル塗工、波状に塗布できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗布できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工などを例示できる。
【0066】
本発明の一態様は、上記ホットメルト組成物が塗布された基材、好ましくは上記ホットメルト組成物が塗布されたポリオレフィン系基材に関する。本明細書において、ポリオレフィン系基材とは、ポリオレフィン系化合物を含む基材のことをいうものとする。ポリオレフィン系基材は、ポリオレフィン系化合物を含む層とポリオレフィン系化合物を含まない層が積層された構造であってもよいが、少なくとも一方の表面がポリオレフィン系化合物を含む層であるのが好ましい。ポリオレフィン系基材が複数の層から構成される場合、ホットメルト組成物は、ポリオレフィン系化合物を含む層の表面上に塗布されるのが好ましい。ポリオレフィン系化合物は、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィンの単独重合体または共重合体のことをいい、プロピレンに基づくユニットを有するプロピレン系化合物であるのが好ましく、ポリプロピレンであるのがより好ましい。ポリオレフィン系基材として、特に、車輌用内装材(自動車内装材等)の表皮材、または、表皮材とベース基材がラミネーションされた基材として用いられるものが好適である。本発明の一態様において、ポリオレフィン系基材としての自動車内装材の表皮材に上記ホットメルト組成物がプレコートされていてもよいし、表皮材とベース基材の少なくとも一方がポリオレフィン系基材であり、これらが上記ホットメルト組成物により貼り合わせられていてもよい。
【0067】
本発明のホットメルト組成物は、車輌用内装材(好ましくは自動車内装材)用の表皮材に予め塗布(プレコート)される接着剤として好適に用いることができる。表皮材としては上記ポリオレフィン系基材であるのが好ましい。また、表皮材として、例えば、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリオレフィン等のプラスチックスシート、もしくは、トリコット、織布、不織布等の繊維材料等の表層材層単独、または、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、もしくは、プロピレン、エチレンおよびブチレンから選ばれる2種以上の共重合体を主成分として製造されるポリオレフィン系発泡体と前記表層材層とを、接着あるいは熱融着等によりラミネートしてなるシート状材料等が挙げられる。表皮材の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.3mm~5mm程度である。また、本発明の一態様において、ホットメルト組成物は、表皮材等の表面に、例えば90~150g/m2となるように塗布される。
【0068】
本発明の一態様は、上記ホットメルト組成物が塗布された表皮材(好ましくはポリオレフィン系基材)を備えた車輌用内装材(好ましくは自動車内装材)に関する。車輌用内装材としては、例えば、インスツルメントパネル、ドア、天井材、リアトレイ、ピラー等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0069】
本発明の一態様は、上記ホットメルト組成物が塗布された表皮材(好ましくはポリオレフィン系基材)を備えた車輌用内装材(好ましくは自動車内装材)を有する車輌に関する。本発明に係る車輌は、特に限定はされないが、電車、汽車、列車等の鉄道車輌、戦車、装甲車等の軍用車輌、自動車、原動機付自転車(オートバイ)、バス、路面電車等に道路交通法上の車が車輌として挙げられる。なお、本明細書において、「自動車内装材」と記載しているところは、本発明のホットメルト組成物を適用できる範囲内で、自動車以外の車輌用の内装材であってもよい。
【0070】
本発明のホットメルト組成物は、接着性と耐熱性が高い。そのため、高温になるダッシュボード等の接着にも好適に使用することができる。また、本発明のホットメルト組成物は、車輌用内装材(好ましくは自動車内装用表皮材)に予め塗布(プレコート)されるのに好適である。本発明のホットメルト組成物がプレコートされた車輌用内装材(好ましくは表皮材)を積み重ねて保管しても、ホットメルト組成物が転写されることもない。すなわち、本発明のホットメルト組成物がプレコートされた表皮材は、ホットメルト接着剤層が経時的に劣化することなく、長期間にわたって積み重ねて保管することができるため、船便による輸出入のように一ヶ月以上かかる輸送においても、温度管理等を行うことなく輸送が可能である。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて説明するが、これらの例は、本発明を説明するためものであり、何ら本発明を制限するものではない。
【0072】
実施例および比較例のホットメルト組成物に用いた各成分を以下に示す。
【0073】
(A1)非結晶性ポリαオレフィン(軟化点150℃以上)
(以下、エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体)
(A-1)エボニック社製 商品名「ベストプラスト888」
軟化点161℃、重量平均分子量104,000
(A-2)エボニック社製 商品名「ベストプラスト828」
軟化点161℃、重量平均分子量61,000
(A-3)エボニック社製 商品名「ベストプラストEP807」
軟化点161℃
(以下、ポリプロピレンホモポリマー)
(A-4)REXtac社製 商品名「Rextac2180」
軟化点155℃、重量平均分子量70,700
【0074】
(A2)非結晶性ポリαオレフィン(軟化点150℃未満)
(以下、エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体)
(A’-5)エボニック社製 商品名「ベストプラスト792」
軟化点108℃、重量平均分子量118,000
(A’-6)エボニック社製 商品名「ベストプラスト750」
軟化点107℃、重量平均分子量92,000
(A’-7)エボニック社製 商品名「ベストプラスト520」
軟化点87℃、重量平均分子量63,000
(A’-8)エボニック社製 商品名「ベストプラスト408」
軟化点118℃、重量平均分子量48,000
(A’-9)エボニック社製 商品名「ベストプラスト308」
軟化点136℃、重量平均分子量49,000
【0075】
(B)結晶性プロピレン系重合体
(B-1)三井化学社製 商品名「タフマーPN2070」(230℃メルトフローレート:7g/10分、重量平均分子量450,000)
(B-2)出光興産社製 商品名「L-MODU S901」(230℃メルトフローレート:50g/10分、重量平均分子量130,000、ポリプロピレンホモポリマー)
(B-3)出光興産社製 商品名「L-MODU S600」(230℃メルトフローレート:350g/10分、重量平均分子量75,000、ポリプロピレンホモポリマー)
(B-4)プライムポリマー社製 商品名「プライムポリプロ E239」(230℃メルトフローレート540g/10分、重量平均分子量90,000)
【0076】
なお、上記メルトフローレートは、ASTM D1238に記載の方法に基づき、230℃、荷重2.16kgで測定された値である。
【0077】
(C)粘着付与樹脂
(C-1)JXTGエネルギー社製 商品名「T-Rez HB-103」
軟化点103℃、重量平均分子量760
(C-2)荒川化学工業社製 商品名「アルコンP140」
軟化点140℃、重量平均分子量900
【0078】
(D)ワックス
(D-1)フィッシャートロプシュワックス サゾール社製 商品名「サゾールワックスH105」 重量平均分子量1,100 融点117℃
(D-2)三井化学社製 商品名「ハイワックス NP105」
重量平均分子量11,000 融点140℃
(D-3)三洋化成工業社製 商品名「ビスコール660P」
重量平均分子量8,000 軟化点145℃
(D-4)ハネウェル社製 商品名 「ハネウェルAC-596P」
重量平均分子量34,000、滴点141℃
【0079】
添加剤
(E)酸化防止剤
BASFジャパン社製 商品名「イルガノックス1010」
(F)スチレン系ブロック共重合体
クレイトンポリマー社製 商品名「クレイトンポリマー G 1657M」 SEBS
(G)酸化亜鉛
正同化学工業社製 商品名「活性亜鉛華AZO」 比表面積60~90m2/g
【0080】
約180℃の加温ニーダー(メック社製、他)にて、(A)~(G)の各成分を表1に示す割合で溶融混合し、実施例1~7および比較例1~7のホットメルト接着剤を調製した。なお、表中の配合量の単位は重量部である。調製したそれぞれのホットメルト接着剤を約180℃に加温したロールコーターにて、自動車内装用表皮材(表層材TPO(オレフィン系エラストマー)とPP(ポリプロピレン)発泡体とのラミネート品、厚さ3mm)の発泡体面へ、約100g/m2となるように塗布し、プレコート表皮材を得た。
【0081】
得られたプレコート表皮材を、室温にて1日以上静置した。続いて、180℃の乾燥機へ約3分間投入し、接着剤を再活性化(再溶融)した後に、オープンタイム10秒以内に、室温(約23℃)のポリプロピレン基材(ETS社製コウベポリシート PP-N-BN 厚さ2mm)と貼り合わせた。貼り合わせ後すぐに、0.01MPaとなるようにおもりを10秒間のせて、ラミネート板を得た。
【0082】
上記のようにして得られたラミネート板を、幅25mmにカットし、耐熱クリープ試験により、耐熱性の評価を行った。また、上記で得られたプレコート表皮材を用いて、非転写性の評価も行った。
【0083】
<耐熱性試験(熱間クリープ試験)、耐久性試験>
ラミネート板から表皮材をあらかじめ2cmほど剥離し、表皮材の剥離したところに、所定のおもり(100gまたは300g)を取り付けた。ラミネート板とおもりをとりつけた表皮材が90°となるように試験片をセットし、所定の温度(100gのおもりを用いた場合は90℃、300gのおもりを用いた場合は80℃)の乾燥機中で静置させた。24時間後に取り出して、表皮材と基材の接着界面の移動距離を測定し、クリープ長とした。さらに、クリープ長1mm以上の場合は、破壊モードを目視にて確認した。
【0084】
また、耐久性試験として、ラミネート板を200℃で48時間加熱した後、室温(約23℃)に冷却し、上記耐熱性試験と同様に、100gのおもり(90℃×24時間)の条件にて熱間クリープ試験を実施した。
【0085】
熱間クリープ試験の判定基準を以下に示す。
〇:クリープ長が5mm以下であった。
×:クリープ長が5mm超えであった。
【0086】
熱間クリープ試験における破壊モードの判定基準を以下に示す。
CF:凝集破壊(接着剤の内部で破壊)
AF:界面剥離(接着剤とPP基材の界面で破壊)
MF:材料破壊(表皮材の内部で破壊)
【0087】
<非転写性試験>
室温にて24時間以上静置したプレコート表皮材を50mm×50mmの大きさに切り出し、切り出したプレコート表皮材を、接着剤層と、表皮材の表層材層(TPO面側)とが接触するように3枚重ね、上部に400g(1.6kPa)の荷重を均一にかけた。これを、所定の温度(40℃、45℃、50℃)にて1週間静置した後に、表皮材の表層を目視にて観察し、光沢等から転写の有無を確認した。非転写性試験判定基準は以下のとおりである。
〇:転写がなかった。
×:顕著な転写が観察された。
【0088】
表1に実施例および比較例の各サンプルの成分とその配合量を示し、表2に耐熱性および非転写性についての試験結果を示す。
【0089】
【0090】
【0091】
上記表2に示されるように、実施例1~7のホットメルト接着剤は、各条件の耐熱クリープ試験で合格し、比較例1~7に比べ高い耐熱性を備えていることが分かった。
【0092】
また、非転写性試験の結果は、プレコート表皮材の積層保管の指標となる。上記表2のとおり、実施例1~7においては非転写性試験で合格となる(転写されない)ことから、実施例1~7は、プレコート表皮材の積層保管にも優れていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のホットメルト組成物は、高い耐熱性を有し、車輌用内装材(好ましくは自動車内装材)において好適に利用できる。また、自動車内装材等の製造工程において、本発明のホットメルト組成物をプレコートした表皮材は、積層して長期保管が可能であるため、プレコートした表皮材の状態で海外への輸出および輸入等が可能となり、自動車内装材の製造工程を短縮することができる。