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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】火災報知システム、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/10 20060101AFI20230523BHJP
   A62C 2/06 20060101ALI20230523BHJP
   E05B 45/06 20060101ALI20230523BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20230523BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
E05B65/10 B
A62C2/06 503
E05B45/06 D
E05B49/00 Z
G08B17/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019026701
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020133195
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100171446
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-160588(JP,U)
【文献】特開平5-76617(JP,A)
【文献】特開2010-222833(JP,A)
【文献】実開昭62-28292(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
A62C 2/00-99/00
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機と、前記受信機に接続し、人の操作に基づいて火災に関する火災信号を前記受信機に送信する第1装置と、人の操作とは異なる条件に基づいて前記火災信号を前記受信機に送信する第2装置と、を備え、前記受信機に前記第1装置と前記第2装置とが複数接続可能な火災報知システムにおいて、
前記受信機は、
前記第1装置と前記第2装置との何れかから前記火災信号を受信すると、前記火災信号の送信元である送信元装置とは別の非送信元装置から前記火災信号を受信しているか否かに応じた判定ルールに基づいて、前記送信元装置に対応する所定の区域における、非常時の開錠である非常時開錠を行うか否かを判定し、前記送信元装置が複数である場合、前記非常時開錠を行うと判定する判定部、
を備える
火災報知システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記送信元装置が第1装置であって、前記非送信元装置から前記火災信号を受信しない場合、前記非常時開錠を行わないと判定する
請求項1に記載の火災報知システム。
【請求項3】
前記第2装置は、火災に関する感知結果、及び前記感知結果に基づく前記火災信号を前記受信機に送信し、
前記判定部は、前記送信元装置が第1装置であって、尚且つ、前記送信元装置が設けられた場所から所定の範囲内に設置された前記第2装置から、所定の閾値以上の前記感知結果を受信した場合、前記非常時開錠を行うと判定する
請求項1から請求項2の何れか一項に記載の火災報知システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記送信元装置が第1装置であって、前記非送信元装置から前記火災信号を受信しない場合、前記送信元装置から前記火災信号を受信してから所定時間以上が経過している場合に、前記非常時開錠を行うと判定する
請求項1に記載の火災報知システム。
【請求項5】
防災センタ通信装置、を更に備え、
前記受信機は、前記防災センタ通信装置と通信可能に接続し、
前記防災センタ通信装置は、前記火災信号に対応した火災が確認されたことを示す確認信号を前記受信機に送信し、
前記判定部は、前記火災信号が受信され、尚且つ、前記確認信号が受信された場合、前記非常時開錠を行うと判定する
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の火災報知システム。
【請求項6】
受信機と、前記受信機に接続し、人の操作に基づいて火災に関する火災信号を前記受信機に送信する第1装置と、人の操作とは異なる条件に基づいて前記火災信号を前記受信機に送信する第2装置と、を備え、前記受信機に前記第1装置と前記第2装置とが複数接続可能な火災報知システムにおける前記受信機の制御方法であって、
判定部が、前記第1装置と前記第2装置との何れかから前記火災信号を受信すると、前記火災信号の送信元である送信元装置とは別の非送信元装置から前記火災信号を受信しているか否かに応じた判定ルールに基づいて、前記送信元装置に対応する所定の区域における、非常時の開錠である非常時開錠を行うか否かを判定し、前記送信元装置が複数である場合、前記非常時開錠を行うと判定する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知システム、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
室内への不法侵入を防止する高セキュリティなシステムにおいて、非常時に部屋のドアを自動的に開錠する非常時開錠(パニックオープン)を行う技術がある(例えば、特許文献1参照)。これにより、救助等を行う人が外部から入退出することができる。特許文献1では、実験室などの室内に設けられた複数の各種防災用センサのうち、2つ以上のセンサが作動した場合に扉が自動開錠する技術が開示されている。これにより、室内の作業者が何らかの事故により扉を開けることができなくなったとしても、外部から緊急の対応をすることができる。
一方、非常時開錠の技術は、火災報知システムに連携させることで、火災が発生した時にセキュリティのある扉を開ける場合に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-134570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、火災報知システムにおいては、発信機の押し釦を押したり、非常電話装置の受話器を取り上げたりする操作で、非常時開錠が行われる場合がある。そのため、実際には火災が発生していなくとも、火災が発生したかのように見せかけて非常時開錠させるような悪用が防止されることが望ましい。但し、実際に火災が発生した際に発信機等が操作されたときは、非常時開錠する必要がある。つまり、火災報知システムにおいては、火災の発生状況に応じて適切に非常時開錠する必要がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、火災の発生状況に応じて適切に非常時開錠することができる火災報知システム、及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態は、受信機と、前記受信機に接続し、人の操作に基づいて火災に関する火災信号を前記受信機に送信する第1装置と、人の操作とは異なる条件に基づいて前記火災信号を前記受信機に送信する第2装置と、を備え、前記受信機に前記第1装置と前記第2装置とが複数接続可能な火災報知システムにおいて、前記受信機は、前記第1装置と前記第2装置との何れかから前記火災信号を受信すると、前記火災信号の送信元である送信元装置とは別の非送信元装置から前記火災信号を受信しているか否かに応じた判定ルールに基づいて、前記送信元装置に対応する所定の区域における、非常時の開錠である非常時開錠を行うか否かを判定し、前記送信元装置が複数である場合、前記非常時開錠を行うと判定する判定部、を備える火災報知システムである。
【0007】
また、本発明の一実施形態の火災報知システムでは、前記判定部は、前記送信元装置が第1装置であって、前記非送信元装置から前記火災信号を受信しない場合、前記非常時開錠を行わないと判定する。
【0009】
また、本発明の一実施形態では、前記第2装置は、火災に関する感知結果、及び前記感知結果に基づく前記火災信号を前記受信機に送信し、前記判定部は、前記送信元装置が第1装置であって、尚且つ、前記送信元装置が設けられた場所から所定の範囲内に設置された前記第2装置から、所定の閾値以上の前記感知結果を受信した場合、前記非常時開錠を行うと判定する。
【0010】
また、本発明の一実施形態では、前記判定部は、前記送信元装置が第1装置であって、前記非送信元装置から前記火災信号を受信しない場合、前記送信元装置から前記火災信号を受信してから所定時間以上が経過している場合に、前記非常時開錠を行うと判定する。
【0011】
また、本発明の一実施形態では、防災センタ通信装置、を更に備え、前記受信機は、前記防災センタ通信装置と通信可能に接続し、前記防災センタ通信装置は、前記火災信号に対応した火災が確認されたことを示す確認信号を前記受信機に送信し、前記判定部は、前記火災信号を受信し、尚且つ、前記確認信号を受信した場合、前記非常時開錠を行うと判定する。
【0013】
また、本発明の一実施形態は、受信機と、前記受信機に接続し、人の操作に基づいて火災に関する火災信号を前記受信機に送信する第1装置と、人の操作とは異なる条件に基づいて前記火災信号を前記受信機に送信する第2装置と、を備え、前記受信機に前記第1装置と前記第2装置とが複数接続可能な火災報知システムにおける前記受信機の制御方法であって、前記第1装置と前記第2装置との何れかから前記火災信号を受信すると、前記火災信号の送信元である送信元装置とは別の非送信元装置から前記火災信号を受信しているか否かに応じた判定ルールに基づいて、前記送信元装置に対応する所定の区域における、非常時の開錠である非常時開錠を行うか否かを判定し、前記送信元装置が複数である場合、前記非常時開錠を行うと判定する、制御方法である
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、この発明によれば、火災の発生状況に応じて適切に非常時開錠することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態の火災報知システム1の構成例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態の受信機10の構成例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態の記憶部107に記憶される情報の構成例を示す図である。
図4】第1の実施形態の受信機10の動作例を示すフローチャートである。
図5】第2の実施形態の感知器20の構成例を示すブロック図である。
図6】第2の実施形態の感知器20の回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、第1の実施形態の火災報知システム1の構成例を示すブロック図である。火災報知システム1は、例えば、受信機10、発信機20、非常電話装置30、感知器40、電子鍵制御装置50、防災センタ通信装置60及び監視対象装置70を備える。ここで、発信機20、及び非常電話装置30は「第1装置」の一例である。また、感知器40は、「第2装置」の一例である。
【0018】
受信機10は、発信機20、非常電話装置30、感知器40及び電子鍵制御装置50と通信可能に接続し、火災に関する各種信号をやり取りする。
発信機20は、押釦が押下されることにより火災信号を受信機10に送信する装置である。非常電話装置30は、受話装置が取り上げられることにより、受信機10に火災信号を送信する装置である。つまり、発信機20及び非常電話装置30は、人の操作により火災信号を送信する装置であり、「第1装置」の一例である。
【0019】
感知器40は、感知器40が設置された設置場所における火災に関する感知を行い、定期的、或いは受信機10からの要求に従って、感知結果を受信機10に送信する装置である。感知器40は、火災に関する感知として、火災の発生に伴って生じ得る各種現象、例えば、煙、熱、又は炎などの度合いを測定することである。煙の度合いは例えば煙濃度である。熱の度合いは例えば温度である。炎の度合いは例えば赤外線量である。
感知器40は、感知結果が所定の閾値以上である場合、火災が感知されたことを示す火災信号を受信機10に送信する。つまり感知器40は、人の操作とは異なる条件により火災信号を送信する装置であり、「第2装置」の一例である。
【0020】
電子鍵制御装置50は、建物の自動ドアや入退場ゲート、或いは建物内の各部屋の出入り口に設けられた扉に設けられた電子鍵を施錠又は開錠する装置である。
電子鍵制御装置50は、火災が発生していない通常時においては、所定の認証処理が正常に行われた場合に、電子鍵を開錠する。ここでの認証処理とは、建物への入退場を認証する処理であり、例えば、予め登録されたICカードがカードリーダにかざされることで、そのICカードを所持する人の入退場が認められる処理である。
電子鍵制御装置50は、火災が発生した非常時においては、受信機10からの電子鍵の開錠を命ずる制御信号に基づいて、電子鍵を開錠する。これにより、自動ドアが開放され、ICカードをかざさなくとも入退場ゲートが通過できるようになり、建物内にいる人が直ちに避難することができ、また建物の外から消火や救助を行う人が入室することができるようになる。この、非常時における電子鍵制御装置50による電子鍵の開錠は、「非常時開錠」の一例である。
【0021】
なお、図1の例では、受信機10に発信機20、非常電話装置30及び感知器40がそれぞれ一つ接続される場合を示したが、これに限定されない。受信機10には、発信機20、非常電話装置30又は感知器40の何れかが、併せて複数接続可能であればよい。
また、受信機10には、電子鍵制御装置50の他、ガス漏れ警報器、防火扉及び防煙ダンパー等、他の監視装置や制御装置が接続されてもよい。この場合、受信機10は。これらの監視装置からの監視結果を受信したり、これらの制御装置に当該制御装置を制御する信号を送信したりする。
【0022】
また、受信機10は、防災センタの通信装置である防災センタ通信装置60と通信可能に接続する。ここでの防災センタは、建物における防災の観点から建物を監視する機関であり、火災の発生、エレベータの故障、停電、水漏れなど、各種の監視装置や利用者からの非常呼出等に対応する。例えば、防災センタでは、火災の発生等を示す警報信号を受信すると、警備員等が現場に急行して火災を確認して報告したり、応急措置を講じたりする。
【0023】
防災センタ通信装置60は、受信機10から火災が発生した可能性がある旨を示す警報信号を受信する。防災センタ通信装置60は、警報信号に対応した警備員等により火災の発生が確認された場合、火災の発生が確認されたことを示す確認信号を受信機10に送信する。
また、防災センタ通信装置60は、監視対象装置70と通信可能に接続する。監視対象装置70は、防災センタにより監視の対象とする対象物における異常が検知された場合に、異常警報信号を防災センタ通信装置60に送信する装置である。防災センタが監視の対象とする対象物は、建物におけるインフラシステムであり、例えば、エレベータ装置、電気監視装置、水道監視装置などである。
【0024】
図2は、第1の実施形態の受信機10の構成例を示すブロック図である。受信機10は、例えば、通信部101、判定部102、制御部103、表示部104、入力部105、出力部106及び記憶部107を備える。
【0025】
通信部101は、発信機20、非常電話装置30、感知器40、電子鍵制御装置50と通信を行う。通信部101は、発信機20、非常電話装置30、及び感知器40から火災信号を受信する。また、通信部101は電子鍵制御装置50に制御信号を送信する。
また、通信部101は、防災センタ通信装置60と通信を行う。通信部101は、防災センタ通信装置60に、火災信号を送信する。通信部101は、防災センタ通信装置60から確認信号を受信する。
【0026】
判定部102は、通信部101により受信された火災信号に基づいて、非常時開錠を行うか否かを判定する。以下の説明において、発信機20、非常電話装置30及び感知器40のうち、火災信号を受信機10に送信した装置を、「送信元装置」と称する。また、発信機20、非常電話装置30及び感知器40のうち、送信元装置とは別の装置を、「非送信元装置」と称する。
【0027】
判定部102は、送信元装置の種別、及び非送信元装置から火災信号を受信しているか否かに応じた判定ルールに基づいて、送信元装置に対応する所定の区域における、非常時の開錠である非常時開錠を行うか否かを判定する。
【0028】
ここで、送信元装置の種別とは、火災信号を送信した装置の種類であり、火災信号が人の操作により送信されたか否かに対応する情報である。例えば、送信元装置の種別が発信機20、又は非常電話装置30である場合、火災信号が人の操作により送信されたことを示す。一方、送信元装置の種別が感知器40である場合、火災信号が人の操作とは異なる感知結果に基づいて送信されたことを示す。
【0029】
非送信元装置から火災信号を受信しているか否かに応じた判定ルールとは、送信元装置により火災信号が送信された際に、非送信元装置において火災、或いは火災に対する警戒が感知されていたかにより、火災報知システム1が悪用されたか、実際に火災が発生したかを判定するための規定(ルール)である。例えば、送信元装置により火災信号が送信された場合に、非送信元装置においても火災信号が送信されていた場合には非送信元装置においても火災が感知されおり、実際に火災が発生した可能性が高い。或いは、非送信元装置が感知器40である場合、火災信号を送信するレベルではないが火災を警戒するレベルの感知結果が感知されていた場合には、非送信元装置においても火災に対する警戒が感知されおり、実際に火災が発生した可能性が高い。このような、実際に火災が発生した可能性が高い場合には非常時開錠を行う必要がある。一方、非送信元装置により火災信号が送信されておらず、尚且つ、非送信元装置が感知器40である場合に火災を警戒するレベルの感知結果が感知されていない場合、送信元装置からは火災信号が送信されたが、非送信元装置においては火災、或いは火災に対する警戒が感知されていない。このような場合には、火災報知システム1が悪用された可能性が高いため、非常時開錠を行わないようにする必要がある。
【0030】
判定部102は、送信元装置が発信機20、又は非常電話装置30、すなわち人の操作により火災信号が送信される装置であり、尚且つ、非送信元装置から火災信号が送信されない場合、非常時開錠を行わないと判定する。
【0031】
また、判定部102は、送信元装置が複数である場合、非常時開錠を行うと判定するようにしてもよい。
【0032】
また、判定部102は、送信元装置が発信機20、又は非常電話装置30、すなわち人の操作により火災信号が送信される装置であり、尚且つ、送信元装置が設けられた場所から所定の範囲内に設置された感知器40から、所定の閾値以上の火災に関する感知結果が感知された場合、非常時開錠を行うと判定するようにしてもよい。
ここで、感知器40が何れの区域を警戒するように設置されているかは、例えば、予め記憶部107に記憶されてよい。この場合、判定部102は、記憶部107を参照することにより火災報知システム1における感知器40が何れの区域を警戒する感知器であるかを取得する。そして、判定部102は、例えば、送信元装置が警戒する警戒区域と同じ区域を警戒する感知器40による感知結果が所定の閾値以上である場合、非常時開錠を行うと判定する。
なお、ここで判定部102に用いられる所定の閾値は、感知器40が火災信号を送信するか否かの判断に用いられる閾値とは異なる閾値であってよい。ここでの所定の閾値は、火災信号を送信する閾値よりは小さい値であるが、火災の発生につながる可能性があるため警戒すべき値である。例えば、感知器40により煙濃度7%が感知された場合に火災信号が送信される場合、判定部102は、火災信号を送信した装置から所定の範囲内に設置された感知器40から煙濃度3%以上が感知された場合に非常時開錠を行うと判定する。
【0033】
また、判定部102は、送信元装置が発信機20、又は非常電話装置30、すなわち人の操作により火災信号が送信される装置であり、尚且つ、非送信元装置から火災信号が送信されない場合、送信元装置から火災信号が送信されてから所定時間以上が経過した後に非常時開錠を行うと判定するようにしてもよい。
【0034】
また、判定部102は、送信元装置から火災信号が送信され、尚且つ、防災センタ通信装置60から火災信号に対応する火災が確認されたことを示す確認信号が送信された場合、非常時開錠を行うと判定するようにしてもよい。
【0035】
表示部104は、送信元装置から受信した火災信号に基づいて、火災警報、及び火災に関する表示を行う。表示部104は、例えば、火災の発生を示す表示と共に、火災信号を出力した送信元装置の設置場所を、火災が発生した場所として表示する。
入力部105は、例えば、受信機10に設けられた操作パネルや操作ボタンである。入力部105には、建物管理者や守衛、警備員等により操作入力される信号が入力される。建物管理者による操作入力される信号とは、例えば、避難指示や避難誘導及び警報解除、或いは訓練等を通知する信号である。
出力部106は、送信元装置から受信した火災信号に基づいて、火災警報を出力する。また、出力部106は、入力部105に入力された内容に応じたアナウンスを出力する。
【0036】
制御部103は、受信機10を統括的に制御する。制御部103は、判定部102により非常時開錠を行うと判定された場合、通信部101を介して電子鍵制御装置50に電子鍵の開錠を示す制御信号を送信する。また、制御部103は、例えば、通信部101により取得された送信元装置から受信した火災信号を、判定部102、表示部104、出力部106に出力させる。また、制御部103は、入力部105に入力された内容を、その内容に応じて、出力部106に出力させたり、通信部101を介して送信元装置に送信させたりする。
【0037】
記憶部107は、受信機10が接続する送信元装置に関する設置情報を記憶する。この設置情報は、受信機10が接続する装置の設置場所が示された情報である。以下、設置情報について、図3を用いて説明する。
【0038】
図3は、第1の実施形態の記憶部107に記憶される情報の構成例を示す図である。
図3に示すように、アドレス情報は、例えば、アドレス番号、装置、装置種別、設置場所、及び所定の範囲内に設置された感知器の各項目を有する。アドレス番号には、受信機10が通信の際に用いるアドレスの番号が示される。装置にはアドレス番号に対応する通信先の送信元装置の名称が示される。
【0039】
装置種別には、通信先の送信元装置が火災信号を送信する際のトリガが示される。この例では、発信機20及び非常電話装置30が人の操作により火災信号を送信することから、発信機20及び非常電話装置30送信種別は、「人の操作」として示される。また、感知器40が感知結果に基づいて火災信号を送信することから感知器40の送信種別は、「感知結果」として示される。
【0040】
設置場所には、アドレス番号に対応する通信先の送信元装置の設置場所が示される。また、所定の範囲内に設置された感知器には、アドレス番号に対応する通信先の送信元装置の設置場所から所定の範囲内に設置された感知器40のアドレス番号が示される。この例では、アドレス番号001の発信機20の設置場所は本館南1階の共用部エレベータ前であり、そこから所定の範囲内にアドレス番号003の感知器40が設置されている。
【0041】
図4は、第1の実施形態の受信機10の動作例を示すフローチャートである。
受信機10は、火災信号を受信する(ステップS10)。受信機10は、火災信号を受信した旨の警報信号を防災センタ通信装置60に通知する。
受信機10は、送信元装置が、発信機20又は非常電話装置30であるか否かを判定する(ステップS11)。
受信機10は、送信元装置が、発信機20又は非常電話装置30である場合、複数の装置から火災信号を受信したか否かを判定する(ステップS12)。受信機10は、例えば、最初に火災信号を受信した時間から予め定めた所定時間以内に、他の装置から火災信号を受信した場合に、複数の装置から火災信号を受信したと判定する。
【0042】
受信機10は、複数の装置から火災信号を受信していないと判定する場合、火災信号を送信した送信元装置が設置されている場所の近傍に設置された感知器40の感知結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップS13)。
受信機10は、ステップS13において、近傍に設置された感知器40の感知結果が所定の閾値未満である場合、防災センタ通信装置60から、警報信号に対する確認信号が送信されたか否かを判定する(ステップS14)。受信機10は、例えば、警報信号を防災センタ通信装置60に送信してから、所定の時間以内に確認信号を受信した場合に警報信号に対する確認信号が送信されたと判定する。
【0043】
受信機10は、ステップS14において、防災センタ通信装置60から確認信号が送信されないと判定する場合、最初の火災信号を受信してから所定の時間以上が経過したか否かを判定する(ステップS15)。
【0044】
受信機10は、ステップS11において送信元装置が感知器40である場合、ステップS12において複数の装置から火災信号が受信されたと判定する場合、ステップS13において傍に設置された感知器40の感知結果が所定の閾値以上である場合、ステップS14において確認信号を所定の時間以内に受信した場合、ステップS15において最初の火災信号を受信してから所定の時間以上が経過した場合、非常時開錠を行うと判定し、電子鍵制御装置50に電子鍵の開錠を示す制御信号を送信する(ステップS16)。
【0045】
以上説明したように、第1の実施形態の火災報知システム1において、受信機10は、火災信号を受信する通信部101と、発信機20、非常電話装置30及び感知器40のうち、送信元装置と非送信元装置の状態とに応じた判定ルールに基づいて、送信元装置に対応する所定の区域における非常時開錠を行うか否かを判定する判定部102を備える。これにより、第1の実施形態の火災報知システム1は、火災信号が送信されたことだけでなく、送信元装置と非送信元装置の状態とに基づいて、例えば、火災報知システム1が悪用されて火災信号が送信された可能性が高いと判断される場合には非常時開錠を行わないように、実際に火災が発生した可能性が高いと判断される場合には非常時開錠を行うようにできるために、火災の発生状況に応じて適切に非常時開錠することができる。
【0046】
また、第1の実施形態の火災報知システム1では、判定部102は、送信元装置が発信機20又は非常電話装置30であって、通信部101により非送信元装置からの火災信号が受信されない場合、非常時開錠を行わないと判定する。これにより、第1の実施形態の火災報知システム1では、人の操作により火災信号が送信され、他の装置から火災信号が送信されない場合には火災報知システム1が悪用された可能性が高いと判断して非常時開錠を行わないようにすることができる。
【0047】
また、第1の実施形態の火災報知システム1では、判定部102は、送信元装置が複数である場合、非常時開錠を行うと判定する。これにより、第1の実施形態の火災報知システム1では、複数の装置から火災信号が送信された場合には実際に火災が発生した可能性が高いと判断して非常時開錠を行うようにすることができる。
【0048】
また、第1の実施形態の火災報知システム1では、感知器40は、火災に関する感知結果、及び感知結果に基づく火災信号を送信し、通信部101は、感知器40から感知結果を受信し、判定部102は、送信元装置が発信機20又は非常電話装置30であって、尚且つ、送信元装置が設けられた場所から所定の範囲内に設置された感知器40から、所定の閾値以上の感知結果が通信部101により受信された場合、非常時開錠を行うと判定する。これにより、第1の実施形態の火災報知システム1では、人の操作により火災信号が送信され、他の装置から火災信号が送信されない場合であっても、送信元装置の周囲に設けられた感知器40による感知結果が所定の警戒レベルを超えていた場合には、実際に火災が発生した可能性が高いと判断して非常時開錠を行うようにすることができる。
【0049】
また、第1の実施形態の火災報知システム1では、受信機10は、防災センタ通信装置60と通信可能に接続し、通信部101は防災センタ通信装置60から火災信号に対応する火災が確認されたことを示す確認信号を受信し、判定部102は、火災信号が受信され、尚且つ、確認信号が受信された場合、非常時開錠を行うと判定する。これにより、第1の実施形態の火災報知システム1では、防災センタの警備員等により火災の発生が確認された場合に、実際に火災が発生した可能性が高いと判断して非常時開錠を行うようにすることができる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、受信機10が電子鍵制御装置50を制御する場合を例示して説明したが、これに限定されない。例えば、防災センタ通信装置60が電子鍵制御装置50を制御するようにしてもよい。この場合、受信機10は、判定部102による判定結果を防災センタ通信装置60に通知する。そして、防災センタ通信装置60は、受信機10から通知された判定結果に応じて電子鍵制御装置50を制御する。或いは、防災センタ通信装置60が、判定部102を備える構成であってもよい。この場合、受信機10は、発信機20、非常電話装置30及び感知器40からの火災信号や感知結果を受信した場合、その内容を防災センタ通信装置60に通知する。防災センタ通信装置は、受信機10から通知された火災信号や感知結果に基づいて、非常時開錠を行うか否かを判定し、判定結果に応じて電子鍵制御装置50を制御する。
【0051】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態について説明する。本実施形態では、感知器40に不正な操作がなされることにより火災信号が送信されることを抑制する点において、上述した実施形態と異なる。
【0052】
図5は、第2の実施形態の感知器40の構成例を示すブロック図である。本実施形態の感知器40は、火災を感知すると回線を短絡させることにより火災信号を出力するオンオフ式の感知器である。
感知器40は、例えば、ベース部401、感知部402及び送信制御部403を備える。
ベース部401は、感知器40が設置される設置場所の天井面や壁面などに固定され、感知部402を着脱可能に接続させることで感知器40を取り付け易くする土台である。
感知部402は、ベース部401に着脱可能に接続され、設置場所における火災に関する感知を行う。送信制御部403は、火災に関する感知結果に応じた火災信号の送信を制御する。送信制御部403は、ベース部401と感知部402とが接続していない場合、火災信号を送信しない。
【0053】
図6は、第2の実施形態の感知器40の回路の構成例を示す図である。本実施形態の感知器40は、受信機10と感知器40との通信回線である火災回線Kを構成する火報線Lとコモン線Cに接続している。
ベース部401は、例えば、端子T1、T2、T5~T8を備える。端子T1は火報線Lに接続し、端子T6はコモン線Cに接続する。また、端子T1、T2を接続する接続線における端子T2側の端が感知部402の端子T3と接続する。また、端子T5、T8を接続する接続線の端子T5側の端が感知部402の端子T4と接続すると共に、端子T8側の端が送信制御部403の端子T10と接続する。また、端子T6、T7を接続する接続線の端子T7側の端が送信制御部403の端子T9と接続する。
【0054】
感知部402は、例えば、端子T3、T4、及びスイッチSW1を備える。端子T3は、ベース部401の端子T2と接続する。端子T4は、ベース部401の端子T5と接続する。スイッチSW1は、端子T3とT4を接続、又は遮断する。
スイッチSW1は、煙濃度が所定の閾値以上になる等、火災を感知した場合に端子T3とT4を接続して回線を短絡させる。
【0055】
送信制御部403は、例えば、端子T9、T10、及びスイッチSW2を備える。端子T9は、ベース部401の端子T7と接続する。端子T10は、ベース部401の端子T8と接続する。スイッチSW2は、端子T9とT10を接続、又は遮断する。
スイッチSW2は、ベース部401と感知部402とが接続している場合に端子T9とT10を接続し、ベース部401と感知部402とが接続していない場合に端子T9とT10の間の導通を遮断する。
【0056】
このような回路構成により、感知器40は、ベース部401と感知部402とが接続している場合であって、尚且つ端子T3とT4が接続された場合に、火報線Lとコモン線Cが短絡して火災信号を出力する。
一方、感知器40は、ベース部401と感知部402とが接続していない場合には、端子T3とT4が接続された場合には、火報線Lとコモン線Cが短絡しないために、火災信号を出力しない。
【0057】
以上説明したように、第2の実施形態の感知器40は、感知器40を設置場所に設置するベース部401と、ベース部401に着脱可能に接続され、設置場所における火災に関する感知を行う感知部402と、ベース部401とが接続していない場合、火災に関する感知結果に応じた火災信号を送信しない送信制御部403を備える。これにより、第2の実施形態の感知器40は、悪意ある者が、感知器40を不正に操作して火災信号を出力させようとした場合であっても、火災信号が出力されることを抑制することができる。
【0058】
例えば、従来の感知器40では、スイッチSW2を有しておらず、ベース部401と感知部402とが接続しているか否かに関わらず端子T9とT10とが接続されている。このため、悪意ある者が、感知器40を不正に操作して火災信号を出力させようとした場合、感知部402を取り外してベース部401の端子T2とT5を短絡させる。これにより、火報線Lとコモン線Cが短絡して不正に火災信号が出力されてしまう。
【0059】
一方、本実施形態の感知器40では、ベース部401と感知部402とが接続している場合にのみ、スイッチSW2が端子T9とT10を接続させる。これにより、悪意ある者が、感知部402を取り外した場合には、スイッチSW2端子T9とT10の接続が遮断される。このため、不正な操作によりベース部401の端子T2とT5とが短絡した場合でも火報線Lとコモン線Cが短絡することがなく、不正に火災信号が出力されてしまうことがない。つまり、不正な操作により火災信号が出力されることを抑制することが可能である。
【0060】
なお、上記においては、送信制御部403が、端子T9とT10とを、スイッチSW2により機構的に接続又は遮断する構成を例示して説明したが、これに限定されることはない。送信制御部403は、例えば、プログラム制御により動作してもよい。この場合、例えば、送信制御部403は、ベース部401と感知部402との接続状態を検出するセンサによる検出結果を取得し、ベース部401と感知部402とが接続している場合に火災信号を送信すると判定する。
【0061】
上述した実施形態において、進行方向が第1装置又は第2装置(つまり、発信機20、非常電話装置30、又は感知器40の少なくとも何れか一つ)から建物の出口側へ向かう方向へ扉を開ける動作が行われたときは、判定部102の判定結果に関わらず非常時開錠を行い、進行方向が第1装置又は第2装置から出口側へ向かう方向ではない方向へ扉を開ける動作が行われたときは判定部102の判定結果に従って非常時開錠を行うようにしても良い。
この場合、例えば、火災報知システム1は、扉開閉検知器を備える。扉開閉検知器は、建物の自動ドアや入退場ゲート、或いは建物内の各部屋の出入り口に設けられた扉を開く動作を検知する。そして、扉開閉検知器は、扉を開く動作を検知した場合にその動作が建物の内側から行われたか否かを検知する。扉開閉検知器は、例えば、扉の建物側に設けられ、扉を開く操作がなされた(例えば、把手が押された又は引かれた)ことを検知する。扉開閉検知器は、検知結果を受信機10に送信する。
受信機10の判定部102は、発信機20、非常電話装置30、又は感知器40の少なくとも何れかより火災信号を受信した場合であって、且つ建物の内側から扉を開く動作が検知された場合、非常時開錠を行うと判定する。一方、受信機10の判定部102は、火災信号を受信した場合であって、且つ建物の内側から扉を開く動作が検知されていない場合、上述した判定方法により火災報知システム1が悪用された可能性が高いと判断する場合には非常時開錠を行わず、実際に火災が発生した可能性が高いと判断した場合には非常時開錠を行うと判定する。
【0062】
上述した実施形態における火災報知システム1、受信機10及び感知器40の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0063】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1…火災報知システム
10…受信機
101…通信部
102…判定部
103…制御部
104…表示部
105…入力部
106…出力部
107…記憶部
20…発信機
30…非常電話装置
40…感知器
401…ベース部
402…感知部
403…送信制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6