(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】パウチ容器の残気量制御装置及びその残気量制御方法
(51)【国際特許分類】
B65B 7/02 20060101AFI20230523BHJP
B65B 51/10 20060101ALI20230523BHJP
B65B 3/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B65B7/02 Z
B65B51/10 300
B65B3/00
(21)【出願番号】P 2019042341
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】502138359
【氏名又は名称】イーエヌ大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(72)【発明者】
【氏名】三田 亮一
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-002233(JP,A)
【文献】特開2000-190942(JP,A)
【文献】特開2014-034413(JP,A)
【文献】特開2011-191074(JP,A)
【文献】特開平11-314603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 7/00
B65B 51/00
B65B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウチ容器内に流動体が収容された状態で前記パウチ容器内の容積を拡げる容積拡大手段と、
前記パウチ容器を把持し前記パウチ容器を一定の位置に保持する容器把持手段と、
前記容積拡大手段にて容積が拡げられた状態で、前記パウチ容器の前面及び後面であって前記流動体の液面より下側の部分を前記パウチ容器の外部から挟む挟み込み幅を変えて前記パウチ容器内の前記流動体の液面の高さを調整可能とした一対の
外部から挟み込む部材を有する液面高さ調整手段と、
前記パウチ容器の前面及び後面を前記パウチ容器の外部から挟んで脱気する一対の脱気手段と、
前記パウチ容器を
開口部の近傍のシール部位でシールする容器シール手段と、
前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅を検出する挟み込み幅検出手段と、
前記挟み込み幅検出手段により検出された前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅と前記流動体の液面の高さとの関係があらかじめ記憶されている記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅と前記流動体の液面の高さとの関係に基づいて前記流動体の液面の高さを所定の高さに制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記
液面高さ調整手段による前記一対の
外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅に基づいて前記流動体の液面の高さを調整して前記パウチ容器内の残気量を制御するように構成されていることを特徴とするパウチ容器の残気量制御装置。
【請求項2】
前記一対の
外部から挟み込む部材は、前記パウチ容器の前面及び後面を挟む一対の板状部材
であり、
前記液面高さ調整手段は、これらの板状部材の前記パウチ容器への挟み込み幅に基づいて前記流動体の液面の高さを調整することを特徴とする請求項1に記載のパウチ容器の残気量制御装置。
【請求項3】
パウチ容器内に流動体が収容された状態で前記パウチ容器内の容積を拡げる容積拡大工程と、
前記パウチ容器の上下方向を把持し前記パウチ容器を一定の位置に保持する上下方向容器把持工程と、
前記容積拡大工程にて容積が拡げられた状態で、前記パウチ容器の前面及び後面であって前記流動体の液面より下側の部分を前記パウチ容器に対して一対の外部から挟み込む部材により挟む挟み込み幅を変えて前記パウチ容器内の前記流動体の液面の高さを調整可能とした液面高さ調整工程と、
前記パウチ容器の前面及び後面を前記パウチ容器の外部から挟んで脱気する脱気工程と、
前記パウチ容器を開口部の近傍のシール部位でシールする容器シール工程と、
前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅を検出する挟み込み幅検出工程と、
前記挟み込み幅検出工程により検出された前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅と前記流動体の液面の高さとの関係があらかじめ記憶されている記憶工程と、
前記記憶工程で記憶された前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅と前記流動体の液面の高さとの関係に基づいて前記流動体の液面の高さを所定の高さに制御する制御工程と、を有し、
前記制御工程では、前記液面高さ調整工程による前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅に基づいて前記流動体の液面の高さを調整して前記パウチ容器内の残気量を制御することを特徴とするパウチ容器の残気量制御方法。
【請求項4】
前記パウチ容器の前面及び後面を挟む一対の外部から挟み込む部材が板状部材であり、前記液面高さ調整工程では、前記一対の板状部材の前記パウチ容器への挟み込み幅に基づいて前記流動体の液面の高さを調整することを特徴とする請求項3に記載のパウチ容器の残気量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食用、医療用、その他の用途の流動体を収容するためのパウチ容器の残気量制御装置及びその残気量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パウチ容器を脱気する装置には、例えば特許文献1に記載された技術がある。この技術は、袋(パウチ容器)の開口部を挟圧する際、一対の脱気棒のうちの外側脱気棒はほぼ水平方向から、内側脱気棒は斜め下方向から挟圧することで、スプリングや把持アーム等に邪魔されることなく適正な個所を挟圧するものである。
【0003】
また、特許文献2に記載された技術は、一対の脱気部材でパウチ容器を挟むことにより、パウチ容器内の残気の大部分を脱気した後、一対の液面上昇部材でパウチ容器を挟むことにより、流動体の液吹きを回避しつつ、パウチ容器内に僅かに残った残気を脱気するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-2428号公報
【文献】特許第5996964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、充填物である製剤の流動性やパウチ容器内の残気量の許容量によっては、パウチ容器内に所定量の残気量を保持させる場合がある。この場合、従来の脱気装置では、製剤の流動性やパウチ容器内の残気量の許容量に応じて、その特性に合わせた専用の充填機を用いる必要がある。
【0006】
また、従来の脱気装置では、パウチ容器内の残気量をゼロにしなくてもよい場合、パウチ容器の側面を押え棒で押してパウチ容器内の開口時の容積を大きくすることで、流動体の充填が可能である。しかし、この脱気装置では、パウチ容器内の残気量をゼロにすることができない。
【0007】
一方、パウチ容器内の残気量をほぼゼロにする場合は、パウチ容器の前面及び後面に対して板状部材で緩く押すことにより、パウチ容器内の残気量をほぼゼロにすることができる。しかし、この脱気装置では、パウチ容器内の開口時の容積を大きくすることができないため、残気量をほぼゼロにしなくてもよい製剤の種類によっては、シール部に液面が上昇し、シール性能が損なわれるという問題点がある。
【0008】
本発明では、かかる問題点を解決するために、一台の装置でパウチ容器内の残気量を確実かつ容易に制御可能なパウチ容器の残気量制御装置及びその残気量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、パウチ容器内に流動体が収容された状態で前記パウチ容器内の容積を拡げる容積拡大手段と、前記パウチ容器を把持し前記パウチ容器を一定の位置に保持する容器把持手段と、前記容積拡大手段にて容積が拡げられた状態で、前記パウチ容器の前面及び後面であって前記流動体の液面より下側の部分を前記パウチ容器の外部から挟む挟み込み幅を変えて前記パウチ容器内の前記流動体の液面の高さを調整可能とした一対の外部から挟み込む部材を有する液面高さ調整手段と、前記パウチ容器の前面及び後面を前記パウチ容器の外部から挟んで脱気する一対の脱気手段と、前記パウチ容器を開口部の近傍のシール部位でシールする容器シール手段と、前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅を検出する挟み込み幅検出手段と、前記挟み込み幅検出手段により検出された前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅と前記流動体の液面の高さとの関係があらかじめ記憶されている記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅と前記流動体の液面の高さとの関係に基づいて前記流動体の液面の高さを所定の高さに制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記液面高さ調整手段による前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅に基づいて前記流動体の液面の高さを調整して前記パウチ容器内の残気量を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記一対の外部から挟み込む部材は、前記パウチ容器の前面及び後面を挟む一対の板状部材であり、前記液面高さ調整手段は、これらの板状部材の前記パウチ容器への挟み込み幅に基づいて前記流動体の液面の高さを調整することを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、パウチ容器内に流動体が収容された状態で前記パウチ容器内の容積を拡げる容積拡大工程と、前記パウチ容器の上下方向を把持し前記パウチ容器を一定の位置に保持する上下方向容器把持工程と、前記容積拡大工程にて容積が拡げられた状態で、前記パウチ容器の前面及び後面であって前記流動体の液面より下側の部分を前記パウチ容器に対して一対の外部から挟み込む部材により挟む挟み込み幅を変えて前記パウチ容器内の前記流動体の液面の高さを調整可能とした液面高さ調整工程と、前記パウチ容器の前面及び後面を前記パウチ容器の外部から挟んで脱気する脱気工程と、前記パウチ容器を開口部の近傍のシール部位でシールする容器シール工程と、前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅を検出する挟み込み幅検出工程と、前記挟み込み幅検出工程により検出された前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅と前記流動体の液面の高さとの関係があらかじめ記憶されている記憶工程と、前記記憶工程で記憶された前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅と前記流動体の液面の高さとの関係に基づいて前記流動体の液面の高さを所定の高さに制御する制御工程と、を有し、前記制御工程では、前記液面高さ調整工程による前記一対の外部から挟み込む部材の前記パウチ容器への挟み込み幅に基づいて前記流動体の液面の高さを調整して前記パウチ容器内の残気量を制御することを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記パウチ容器の前面及び後面を挟む一対の外部から挟み込む部材が板状部材であり、前記液面高さ調整工程では、前記一対の板状部材の前記パウチ容器への挟み込み幅に基づいて前記流動体の液面の高さを調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、一対の外部から挟み込む部材を有する液面高さ調整手段によってパウチ容器の流動体の液面より下側の部分を挟む挟み込み幅を変えることで、パウチ容器内の流動体の液面の高さを調整してパウチ容器内の残気量を制御することにより、一台の装置でパウチ容器内の残気量を確実かつ容易に制御することが可能になる。そのため、パウチ容器内の残気量を変更するために他の装置を用いることがなくなる。
請求項1に記載の発明によれば、一対の外部から挟み込む部材のパウチ容器への挟み込み幅に基づいて流動体の液面の高さを所定の高さに制御するので、流動体の液面の高さを高精度に制御することができる。その結果、パウチ容器内の残気量を正確に制御することが可能になる。
【0016】
また、請求項1に記載の発明によれば、容器把持手段によってパウチ容器を把持しパウチ容器を一定の位置に保持することにより、パウチ容器の位置を安定させることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、一対の外部から挟み込む部材は、パウチ容器の前面及び後面を挟む一対の板状部材であり、前記液面高さ調整手段は、これらの板状部材のパウチ容器への挟み込み幅に基づいて流動体の液面の高さを調整することにより、流動体の液面の高さを容易に調整することができる。その結果、パウチ容器内の残気量を容易に制御することが可能になる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様に、一台の装置でパウチ容器内の残気量を確実かつ容易に制御することが可能になる。また、パウチ容器の位置を安定させることができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様に、パウチ容器内の残気量を正確に制御することが可能になる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明と同様に、パウチ容器内の残気量を容易に制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御装置の概要を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御装置の制御系を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御装置の制御系の動作を示すフローチャートである。
【
図4】同実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御方法の流動体充填工程を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【
図5】同実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御方法の容積拡大工程を示す正面図である。
【
図6】同実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御方法において残気量ほぼゼロの液面高さ調整工程を示す側面図である。
【
図7】同実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御方法において残気量ほぼゼロの脱気工程を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【
図8】同実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御方法において残気量ほぼゼロの容器シール工程を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【
図9】同実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御方法において残気量をゼロまで要求しない容積拡大工程を示す正面図である。
【
図10】同実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御方法において残気量をゼロまで要求しない液面高さ調整工程を示す側面図である。
【
図11】同実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御方法において残気量をゼロまで要求しない脱気工程を示す正面図である。
【
図12】同実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御方法において残気量をゼロまで要求しない容器シール工程を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
【0025】
図1は、本発明の実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御装置の概要を示す側面図である。
【0026】
図1に示すように、実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御装置1は、機体2を有しており、一対の上部チャック9(
図4、
図5に示す)によってパウチ容器12の上部両端を挟んだ状態で、このパウチ容器12を矢印A、B方向(上下方向)に昇降自在に支持するように構成されている。
【0027】
また、機体2には、これらの上部チャック9で挟んで支持されたパウチ容器12内に流動体10を充填するための流動体充填手段であるノズル4が矢印C、D方向(上下方向)に昇降自在に取り付けられている。
【0028】
機体2には、これらの上部チャック9で挟んで支持されたパウチ容器12をシールするための容器シール手段である一対のシール熱板5が、矢印E、F方向(水平方向)に移動することにより、互いに近付いたり遠ざかったりできるように取り付けられている。
【0029】
機体2には、脱気手段である一対の平板状の脱気部材6が、シリンダ(図示せず)の駆動により、矢印G、H方向(水平方向)に移動して、互いに近付いたり遠ざかったりできるように取り付けられている。一対の脱気部材6は、上下方向において一対の上部チャック9と後述する一対の平板状の液面高さ調整手段との間に設置され、パウチ容器12の前面及び後面をパウチ容器12の外部から挟んでパウチ容器12内を脱気する。
【0030】
機体2には、上記一対の液面高さ調整手段を構成する板状部材7が、シリンダ25(
図2に示す)の駆動により、矢印I、J方向(水平方向)に移動して、互いに所定の距離だけ近付いたり遠ざかったりできるように取り付けられている。これら一対の板状部材7は、パウチ容器12内に流動体10が収容された状態で、パウチ容器12の前面及び後面であって流動体10の液面より下側の部分をパウチ容器12の外部から挟む挟み込み幅を変えることで、パウチ容器12内の流動体10の液面の高さを調整可能としている。なお、上記一対の液面高さ調整手段は、一対の板状部材7、シリンダ駆動部24及びシリンダ25によって構成されている。
【0031】
機体2には、一対の丸棒状の容積拡大部材8が、
図1及び
図5に示すようにシリンダ(図示せず)の駆動により、矢印K、L方向(水平方向)に移動して、互いに近付いたり遠ざかったりできるように取り付けられている。一対の容積拡大部材8は、流動体10を収容したパウチ容器12の側面をパウチ容器12の外部から挟んで容積を拡げる。
【0032】
機体2には、
図4(a)に示すように、パウチ容器12の上部両端を挟んで支持する一対の上部チャック9が、矢印M、N方向(水平方向)に移動して、互いに所定の距離だけ近付いたり遠ざかったりできるように取り付けられている。一対の上部チャック9は、パウチ容器12の開口部12aが上方に位置するようにパウチ容器12の上部両端を支持する。
【0033】
機体2には、
図5に示すように、パウチ容器12の下部両側を掴んで引っ張る容器把持手段としての一対の下部チャック11が、矢印O、P方向(上下方向)に昇降自在に構成されている。一対の下部チャック11は、パウチ容器12の下部両側を掴んで引っ張りパウチ容器12を把持しパウチ容器12を一定の位置に保持する。
【0034】
次に、実施の形態1の制御系について説明する。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御装置の制御系を示すブロック図である。
【0036】
図2に示すように、実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御装置の制御系は、挟み込み幅検出手段としての挟み込み幅検出部21と、入力部22と、制御手段としての制御部23と、を備える。この制御部23は、記憶手段としての記憶部23aを有している。
図2に示すシリンダ駆動部24は、一対の板状部材7を駆動するためのシリンダ25を駆動する。
【0037】
挟み込み幅検出部21は、パウチ容器12内に流動体が収容された状態で、一対の板状部材7がパウチ容器12の前面及び後面であって流動体10の液面より下側の部分を挟む挟み込み幅を検出する。この挟み込み幅検出部21には、一対の板状部材7を駆動するシリンダ25に例えば油圧シリンダ、空圧シリンダ、油圧式サーボシリンダ、モータとボールねじを用いた電動シリンダ等が使用される。ピストンロッドを有するシリンダ25を用いた場合、シリンダ25のピストンロッドのストロークは、上記ピストンロッドに測長器や変位計等の移動量測定手段を取り付け、この移動量測定手段によりピストンロッドの移動量を測定することで、上記挟み込み幅を検出することができる。
【0038】
ここで、本実施の形態1は、一対の板状部材7がパウチ容器12の前面及び後面であって流動体10の液面より下側の部分を挟む挟み込み幅と、パウチ容器12内の流動体10の液面の高さとの関係をあらかじめ実験等により求めておく。この場合、パウチ容器12の大きさ、材質、及び容積と、流動体10の種類等、全て同一の条件にて求める。したがって、上記挟み込み幅と、流動体10の液面の高さとの関係が分かれば、上記挟み込み幅と、パウチ容器12内の残気量との関係が分かる。
【0039】
具体的には、一対の板状部材7でパウチ容器12の前面及び後面を押圧して挟み込む幅が狭くなればなるほど、パウチ容器12内の流動体10の液面の高さが上昇する。そして、液面の高さが上昇することで、パウチ容器12内の残気量が減少することとなる。逆に、一対の板状部材7でパウチ容器12の前面及び後面を押圧して挟み込む幅が広くなればなるほど、パウチ容器12内の流動体10の液面の高さが下降する。そして、液面の高さが下降することで、パウチ容器12内の残気量が増加することとなる。
【0040】
入力部22は、上記のような一対の板状部材7の挟み込み幅と、流動体10の液面の高さとの関係、パウチ容器12内の残気量との関係をあらかじめ実験した結果を入力する。入力部22としては、例えばキーボード等が用いられる。
【0041】
制御部23は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのROM(Read Only Memory)、I/O(Input / Output)等を備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成された制御装置である。
【0042】
このうち、上記ROMは、電源を切断しても記憶内容を保持する必要のあるデータやプログラムを記憶する。上記RAMは、データを一時的に格納する。上記CPUは、上記ROMにインストールされているプログラムを実行することで各機能を実現する。記憶手段には、ROM以外に例えば、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な電子媒体を含む。
【0043】
制御部23は、入力部22から入力された一対の板状部材7の挟み込み幅のデータと、流動体10の液面の高さデータとの関係、パウチ容器12内の残気量データとの関係があらかじめ上記ROMに記憶されている。なお、上記各データは、上記ROMに記憶することなく、別途設けたデータベースに記憶するようにしてもよい。
【0044】
次に、実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御方法について説明する。
【0045】
まず、
図4~
図8に基づいてパウチ容器12内の残気量をほぼゼロにする場合について説明する。
図4(a),(b)は流動体充填工程、
図5は容積拡大工程、
図6は液面高さ調整工程、
図7(a),(b)は脱気工程、
図8(a),(b)は容器シール工程をそれぞれ示している。
【0046】
まず、給袋工程で、
図4(a),(b)に示すように、一対の上部チャック9により、パウチ容器12を開口部12aが上方に位置するように保持して所定の位置に供給する。このとき、一対の上部チャック9を矢印M方向に移動させて互いに近付けることにより、
図4(b)に示すように、パウチ容器12の開口部12aを開く。
【0047】
次に、流動体充填工程に移行し、このパウチ容器12内に流動体10を所定量だけ充填する。それには、
図4(a),(b)に示すように、パウチ容器12の開口部12aが開いた状態で、ノズル4を矢印D方向に下降させてその先端の吐出孔4aをパウチ容器12のほぼ中央部の高さに位置決めし、この吐出孔4aからパウチ容器12内に流動体10を供給して収容する。
【0048】
その後、シート密着工程に移行し、
図5に示すように、一対の上部チャック9を矢印N方向に移動させて互いに遠ざけることにより、このパウチ容器12の両側面のシート12b同士を密着させる。すると、パウチ容器12の開口部12aが閉じ、パウチ容器12内に残気が生じた状態となる。
【0049】
次に、容積拡大工程に移行し、パウチ容器12の側面をパウチ容器12の外部から挟んで容積を拡げる。それには、
図5に示すように、パウチ容器12内に流動体10を収容した状態で、一対の丸棒状の容積拡大部材8を矢印K方向に移動させて互いに近付けることにより、パウチ容器12の側面をパウチ容器12の外部から挟んで容積を拡げる。その結果、パウチ容器12内に流動体10の液面が低下してパウチ容器12の開状態と、液面高さを安定させることができる。
【0050】
次いで、容器把持工程に移行し、
図5に示すように、一対の下部チャック11を矢印O方向に上昇させてパウチ容器12の下部両側を掴んでP方向に引っ張る。これにより、一対の下部チャック11はパウチ容器12を把持しパウチ容器12を一定の位置に保持することができる。
【0051】
この容器把持工程と同時に液面高さ調整工程に移行し、
図5及び
図6に示すように、パウチ容器12内に流動体10が収容された状態で、一対の板状部材7は、シリンダ25(
図2に示す)の駆動により矢印I方向に移動して、互いに所定の距離だけ近付ける。そして、一対の板状部材7は、パウチ容器12の前面及び後面であって流動体10の液面より下側の部分をパウチ容器12の外部から挟んで液面高さを調整する。この場合、一対の板状部材7は、パウチ容器12の開口部12aをシールしたときに、パウチ容器12内の残気量をほぼゼロにするような挟み込み幅として流動体10の液面高さを上昇させる。このとき、パウチ容器12内には、ある程度残気を有している。一対の板状部材7は、挟み込み幅を調整することにより流動体10の液面の高さが調整され、その結果、パウチ容器12内の残気量を調整することができる。
【0052】
次に、脱気工程に移行し、
図7(a),(b)に示すように、一対の脱気部材6を矢印G方向に移動させて互いに近付けてパウチ容器12を圧着することにより、パウチ容器12の側面であって流動体10の液面より上側の部分をパウチ容器12の外部から挟む。すると、パウチ容器12内のヘッドスペースが潰れ、パウチ容器12内の残気の大部分(脱気部材6の底面より上側の部分)が開口部12aから排出されて脱気された状態となる。
【0053】
このとき、パウチ容器12は、上述したとおり、両側面のシート12b同士が密着しているので、一対の脱気部材6でパウチ容器12を挟んだときにパウチ容器12にしわが寄ることはなく、パウチ容器12内の残気(脱気部材6の底面より上側の部分の残気)を効率よく脱気することができる。
【0054】
最後に、容器シール工程に移行し、
図8に示すように、一対のシール熱板5を矢印E方向に移動させて互いに近付けてシール部位12cを圧着することにより、パウチ容器12をシール部位12cでシールする。このようにしてパウチ容器12内の残気量をほぼゼロした場合のパウチ容器の残気量制御方法が終了する。
【0055】
次に、
図9~
図12に基づいてパウチ容器12内の残気量をほぼゼロまで要求しない場合について説明する。
図9は容積拡大工程、
図10は液面高さ調整工程、
図11は脱気工程、
図12(a),(b)は容器シール工程をそれぞれ示している。
【0056】
なお、給袋工程、流動体充填工程、シート密着工程、及び容器把持工程は、
図4~
図8に示すパウチ容器12内の残気量をほぼゼロにする場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0057】
給袋工程、流動体充填工程及びシート密着工程を経た後の容積拡大工程では、
図9に示すようにパウチ容器12内に流動体10を収容した状態で、一対の丸棒状の容積拡大部材8を矢印K方向に移動させて互いに近付けることにより、パウチ容器12の側面をパウチ容器12の外部から挟んで容積を拡げる。
【0058】
ここで、パウチ容器12内の残気量をほぼゼロまで要求しない場合、一対の容積拡大部材8は、パウチ容器12内の残気量をほぼゼロにする場合と比べて、より矢印K方向に移動させて互いに近付けている。そのため、パウチ容器12内の流動体10の液面は、より低下した高さで安定している。
【0059】
その後、容器把持工程と同時に移行した液面高さ調整工程では、
図10に示すように、一対の板状部材7は、パウチ容器12の前面及び後面であって流動体10の液面より下側の部分をパウチ容器12の外部から挟む挟み込み幅をパウチ容器12内の残気量をほぼゼロにする場合と比べて、広くなるようにしている。そのため、液面の高さがほとんど上昇することなく、パウチ容器12内に所定の残気量が残った状態となる。
【0060】
次に、脱気工程に移行し、
図11に示すように、一対の脱気部材6を矢印G方向に移動させて互いに近付けてパウチ容器12を圧着することにより、パウチ容器12の側面であって流動体10の液面より上側の部分をパウチ容器12の外部から挟む。すると、パウチ容器12内に所定の残気量が残った状態が保持される。
【0061】
最後に、容器シール工程に移行し、
図12(a),(b)に示すように、一対のシール熱板5を矢印E方向に移動させて互いに近付けてシール部位12cを圧着することにより、パウチ容器12内に所定の残気量を残した状態でパウチ容器12をシール部位12cでシールする。このようにしてパウチ容器12内の残気量をほぼゼロまで要求しない場合のパウチ容器12の残気量制御方法が終了する。
【0062】
なお、上記の説明では、パウチ容器12内の残気量をほぼゼロまで要求しない場合、残気量をほぼゼロにする場合と全く同様の工程を使用するようにしたが、このような工程に限らず、容積拡大工程、容器把持工程、液面高さ調整工程、又は脱気工程の中から少なくとも一つの工程を選択的に使用するようにしてもよい。
【0063】
次に、本実施の形態1の制御系の動作を説明する。
【0064】
図3は、本発明の実施の形態1に係るパウチ容器の残気量制御装置の制御系の動作を示すフローチャートである。
【0065】
まず、
図3に示すように、挟み込み幅検出部21は、パウチ容器12内に流動体が収容された状態で、一対の板状部材7がパウチ容器12の前面及び後面であって流動体10の液面より下側の部分を挟む挟み込み幅を上述した移動量測定手段によって検出する(ステップS11)。
【0066】
そして、このようにして検出した挟み込み幅と、パウチ容器12内の流動体10の液面の高さとの関係をあらかじめ実験等により求めておき、これら挟み込み幅との液面の高さとの関係、挟み込み幅とパウチ容器12内の残気量との関係を入力部22から入力して制御部23内の記憶部23a内、つまり上記ROMにあらかじめ記憶させておく(ステップS12)。
【0067】
次いで、ステップS13では、パウチ容器12内の液面の高さ、すなわちパウチ容器12内の残気量を変更する場合、オペレータが入力部22からその変更データを入力する。すると、制御部23は、その変更データを取得した場合(ステップS13:Yes)には、ステップS14に移行して記憶部23aに記憶されている挟み込み幅と流動体10の液面の高さとの関係を読み出す。なお、変更データを取得しない場合(ステップS13:No)には、変更データを取得まで待機する。
【0068】
さらに、制御部23は、流動体10の液面の高さが所定の液面の高さとなるように、シリンダ駆動部24を経てシリンダ25のピストンロッドのストロークを変更する。これにより、所定の挟み込み幅となるように挟み込み幅を変更することができる(ステップS15)。
【0069】
そして、パウチ容器12内の流動体10の液面の高さが所定の液面の高さとなった場合(ステップS16:Yes)には、全体の処理を終了する。なお、所定の液面の高さとならない場合(ステップS16:No)には、所定の液面の高さとなるように挟み込み幅を変更する。
【0070】
このように実施の形態1によれば、一対の板状部材7によってパウチ容器12の流動体10の液面より下側の部分を挟む挟み込み幅を変えることで、パウチ容器12内の流動体10の液面の高さを調整してパウチ容器12内の残気量を制御することにより、一台の装置でパウチ容器12内の残気量を確実かつ容易に制御することが可能になる。そのため、パウチ容器12内の残気量を変更するために他の装置を用いることがなくなり、設備コストを大幅に削減することができる。
【0071】
また、容積拡大部材8によってパウチ容器12の側面をパウチ容器12の外部から挟んで容積を拡げるようにしたので、パウチ容器12の開状態と、流動体10の液面高さを安定させることができる。
【0072】
また、実施の形態1によれば、下部チャック11によってパウチ容器12の下部両側を掴んでパウチ容器12を一定の位置に保持することにより、パウチ容器12の位置を安定させることができる。
【0073】
さらに、実施の形態1によれば、一対の板状部材7によってパウチ容器12の前面及び後面を挟み込み、これらの板状部材7のパウチ容器12への挟み込み幅に基づいて流動体10の液面の高さを調整することにより、流動体10の液面の高さを容易に調整することができる。その結果、パウチ容器12内の残気量を容易に制御することが可能になる。
【0074】
そして、実施の形態1によれば、一対の板状部材7のパウチ容器12への挟み込み幅に基づいて流動体10の液面の高さを所定の高さに制御するので、流動体10の液面の高さを高精度に制御することができる。その結果、パウチ容器12内の残気量を正確に制御することが可能になる。
【0075】
なお、上述した実施の形態1では、自立性のあるスタンディングパウチ型のパウチ容器12について説明したが、自立性のない平パウチ(平袋)型のパウチ容器12、並びに口栓付き平パウチ型のパウチ容器12などに本発明を同様に適用することも勿論できる。
【0076】
また、上述した実施の形態1では、脱気部材6が平板状に形成されている例について説明したが、平板状に限るわけではなく、例えば、丸棒状、角棒状、又はブロック状などに形成しても構わない。
【0077】
さらに、上述した実施の形態1では、容器シール手段がシール熱板5である場合について説明したが、シール熱板5以外の容器シール手段(例えば、インパルス加熱方式、超音波加熱方式、熱風加熱方式のシール手段など)を代用または併用することも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 パウチ容器の残気量制御装置
2 機体
4 ノズル(流動体充填手段)
4a 吐出孔
5 シール熱板(容器シール手段)
6 脱気部材(脱気手段)
7 板状部材(液面高さ調整手段)
8 容積拡大部材(容積拡大手段)
9 上部チャック
10 流動体
11 下部チャック(容器把持手段)
12 パウチ容器
12a 開口部
12b シート
12c シール部位
21 挟み込み幅検出部(挟み込み幅検出手段)
22 入力部
23 制御部
23a 記憶部
24 シリンダ駆動部(液面高さ調整手段)
25 シリンダ(液面高さ調整手段)