(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】床構造及び床施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/43 20060101AFI20230523BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20230523BHJP
E04C 2/30 20060101ALI20230523BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20230523BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
E04B5/43 G
E04F15/02 101B
E04C2/30 Z
E04B1/76 400A
E04B1/76 400J
E04B1/80 100Q
(21)【出願番号】P 2019043855
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】若木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 靖典
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-095293(JP,A)
【文献】実開昭49-123815(JP,U)
【文献】特開2000-352130(JP,A)
【文献】特開2007-332698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76-1/80
E04C 2/30
E04F 15/02
E04B 5/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の梁に取り付けられ、前記梁に支持される床板部材と、
前記床板部材の上面側に、パネル面内方向で複数配置された状態で積層されている積層パネルと、
前記パネル面内方向で隣接する2つの積層パネルに跨って貼着されている防水テープと、
前記積層パネルの上面側に積層される防水シートと、を備え、
前記積層パネルは、
互いに連結されることなくパネル厚み方向に積層されている複数の機能層からなる積層体と、
前記積層体の周囲を被覆して前記複数の機能層の相対的な移動を規制する、防水性を有する包装体と、を備え、
前記包装体は、前記積層体の鉛直方向上面の全域を少なくとも覆っており、
前記防水テープは、前記パネル面内方向で隣接する2つの積層パネルの前記包装体に跨って貼着されている、床構造。
【請求項2】
前記複数の機能層は、互いに連結されることなく前記パネル面内方向に当接させて連接されている複数の機能要素から構成されている集成機能層を含み、
前記包装体は、前記複数の機能層の相対的な移動、及び、前記集成機能層の前記複数の機能要素の相対的な移動、を規制する、請求項1に記載の床構造。
【請求項3】
前記複数の機能層は、厚みが外縁に向かって漸減するテーパ機能層を含む、請求項1又は2に記載の床構造。
【請求項4】
前記複数の機能層は、発泡樹脂から構成される断熱層を含む、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の床構造。
【請求項5】
前記複数の機能層は、前記断熱層よりも曲げ強度または圧縮強度の大きい補強層を含む、請求項4に記載の床構造。
【請求項6】
前記包装体は、熱収縮性フィルムから構成されている、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の床構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の床構造の床施工方法であって、
前記床板部材の上面側に、前記積層パネルを前記パネル面内方向に複数配置させて積層するパネル取付工程と、
前記パネル面内方向で隣接する2つの積層パネルの前記包装体に跨って前記防
水テープを貼着する仮防水処理工程と、
前記積層パネルの上面側に防水シートを積層する防水処理工程と、含む、床施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層パネル、床構造及び床施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設現場において各機能層を順次積層して施工される建物の床構造が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、例えば蓄熱槽の内壁に代表されるように温水を対象として保温性及び保水性等が要求される壁体を構築する際に用いられる壁体用断熱パネルが記載されている。特許文献1に記載の壁体用断熱パネルでは、発泡樹脂製の基板の全面が、合成樹脂製のシートで被覆される。特許文献1には、このシートを、基板にかぶせて収縮させた多層のシュリンクフィルムにより形成することが記載されている。
【0004】
更に、特許文献2においても、熱収縮したフィルム層が断熱材の外側の全表面に密着して被覆されてなる断熱材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-189356号公報
【文献】特開平11-159023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、例えば上述の床構造の施工など、建設現場にて発生する各機能層を順次積層する作業を、熱収縮性フィルム等の包装体を利用することで、簡単に効率化でき、その結果、工期短縮を実現できるという知見を得るに至った。
【0007】
そこで本発明は、建設現場での工期短縮を実現可能にする、包装体を利用した積層パネル、この積層パネルを備える床構造、及び、この積層パネルを用いた床施工方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様としての積層パネルは、互いに連結されることなくパネル厚み方向に積層されている複数の機能層と、前記複数の機能層の周囲を被覆して前記複数の機能層の相対的な移動を規制する包装体と、を備える。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記複数の機能層は、互いに連結されることなくパネル面内方向に当接させて連接されている複数の機能要素から構成されている集成機能層を含み、前記包装体は、前記複数の機能層の相対的な移動、及び、前記集成機能層の前記複数の機能要素の相対的な移動、を規制する。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記複数の機能層は、厚みが外縁に向かって漸減するテーパ機能層を含む。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記複数の機能層は、発泡樹脂から構成される断熱層を含む。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記複数の機能層は、前記断熱層よりも曲げ強度または圧縮強度の大きい補強層を含む。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記包装体は、熱収縮性フィルムから構成されている。
【0014】
本発明の第2の態様としての床構造は、上記積層パネルと、建物の梁に取り付けられ、前記梁に支持される床板部材と、を備え、前記積層パネルは、前記床板部材の上面側に積層されている。
【0015】
本発明の1つの実施形態として、前記包装体は防水性を有し、前記積層パネルは、前記床板部材の上面側に、パネル面内方向で複数配置されており、パネル面内方向で隣接する2つの積層パネルの前記包装体に跨って貼着されている防水テープを備える。
【0016】
本発明の第3の態様としての床施工方法は、上記積層パネルを、建物の梁に取り付けられ、前記梁に支持されている床板部材の上面側に積層する。
【0017】
本発明の1つの実施形態として、前記包装体は防水性を有し、前記床板部材の上面側に、前記積層パネルをパネル面内方向に複数配置し、パネル面内方向で隣接する2つの積層パネルの前記包装体に跨って防水テープを貼着する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、建設現場での工期短縮を実現可能にする、包装体を利用した積層パネル、この積層パネルを備える床構造、及び、この積層パネルを用いた床施工方法、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態としての床構造を備える建物を示す図である。
【
図2】
図1に示すバルコニーの床の床構造についての床施工方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図1に示す建物の架構を示す図であり、
図2に示す床板取付工程の概要を示す概要図である。
【
図4】
図2に示す床板取付工程の概要を示す概要図である。
【
図5】
図2に示すパネル取付工程の概要を示す概要図である。
【
図6】
図2に示す周縁処理工程の概要を示す概要図である。
【
図7】
図2に示す防水処理工程の概要を示す概要図である。
【
図8】本発明の一実施形態としての積層パネルの構成の概要を示す図である。
【
図9】本発明の別の一実施形態としての積層パネルの構成の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る積層パネル、床構造及び床施工方法について、図面を参照して例示説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態としての床構造を備える建物100を示す図である。
図1に示すように、建物100は、屋外占有部としての陸屋根101及びバルコニー102を備えている。
【0022】
まず、建物100の概略について説明する。建物100は、例えば、鉄骨造の骨組みを有する2階建ての住宅とすることができる。また建物100は、例えば、地盤に固定された基礎構造体と、当該基礎構造体上に固定される上部構造体と、で構成される。
【0023】
基礎構造体は、上部構造体の下方に位置し、上部構造体を支持するものであり、例えば、鉄筋コンクリート造の断面T字状の布基礎とすることができる。上部構造体は、複数の柱と、柱間に架設された複数の梁とで構成される架構と、この架構の外周側に配置される外壁103と、架構の梁上に配置される、屋上階を含む各階の床104と、を備える。
【0024】
外壁103は、外装材としての外壁パネル111を備える。また、外壁103は、外壁パネル111の屋内側に、断熱層を構成する断熱材及び内装材を備える。
【0025】
外壁パネル111としては、例えば、軽量気泡コンクリート(以下、「ALC」と記載する。「ALC」とは「autoclaved light weight concrete」の略である。)のパネル、金属系や窯業系のサイディング、押出成形セメント板、木質系パネルなどを用いることができる。この外壁パネル111を架構の外周部の周囲に連接することにより、外壁103の外皮層を形成することができる。
【0026】
また、断熱材としては、例えば、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡樹脂系の材料からなるパネル状の断熱材の他、ロックウール等の繊維系の断熱材を用いることもできる。この断熱材を外壁パネル111の屋内側に、外壁パネル111の内面に沿って配置することにより、外壁103に断熱層を形成することができる。内装材としては、例えば、石膏ボードを用いることができ、内装材を架構の外周部の屋内側に連接することにより、内皮層を形成することができる。
【0027】
床104は、建物の層間に位置する。床104は、例えば部屋などの屋内占有部の床のみならず、陸屋根101、バルコニー102などの屋外占有部の床を含む。
【0028】
図2は、
図1に示すバルコニー102の床104の床構造についての床施工方法の一例を示すフローチャートである。
図2に示す床施工方法は、建物100の架構に対して床板部材10を取り付ける床板取付工程S1と、床板部材10の上面側に、本発明の一実施形態としての積層パネル1を積層するパネル取付工程S2と、床104の周縁部に防水鋼板20を設置する周縁処理工程S3と、積層パネル1及び防水鋼板20の上面側に防水シート30を積層する防水処理工程S4と、を含む。
図3~
図7は、
図2に示す床施工方法の各工程の概要を示す概要図である。以下、
図2~
図7を参照して、本発明の一実施形態としての床104の床構造の床施工方法、及び、本発明の一実施形態としての床104の床構造、について詳細に説明する。
【0029】
図3、
図4は、床板取付工程S1の概要を示す概要図である。
図3は、建物100の架構を示す図である。床板取付工程S1では、
図4に示すように、
図3に示す建物100の架構の梁に、床板部材10を取り付ける。具体的に、本実施形態の建物100の架構は、柱120と、この柱120間に架設されている梁121と、を備える。床板取付工程S1では、床板部材10を、梁121に取り付ける。床板部材10は、例えば、取付金物を介して、ボルト等の締結部材を用いて梁121へ締結される。これにより、床板部材10は、梁121間に架設され、梁121により支持される。
【0030】
本実施形態のバルコニー102の床構造では、矩形板状の同一形状の複数の床板部材10が、端面同士を対向させるように配置されている。
【0031】
なお、
図4では、
図3に示す建物100の架構に対して、外壁103についても取り付けられた状態を示している。
【0032】
図5は、パネル取付工程S2の概要を示す概要図である。
図5に示すように、パネル取付工程S2では、
図4に示す状態の床板部材10の上面側に、本発明の一実施形態としての積層パネル1を積層する。積層パネル1は、床板部材10の上面側に、パネル面内方向Bに複数配置される。具体的に、本実施形態のバルコニー102の床構造では、矩形板状の複数の積層パネル1が、端面同士を対向させるように、床板部材10の上面側に敷設される。詳細は後述するが、積層パネル1は防水性を有する包装体3を備える。そして、パネル面内方向Bで隣接する2つの積層パネル1に対して、2つの積層パネル1の包装体3を跨るようにして、防水テープ40(
図6参照)を貼着する。これにより、積層パネル1間の仮防水処理を行うことができる。仮防水処理の他に、複数の積層パネル1間の間隙に例えば気密テープを貼着して、気密処理を行ってもよい。
積層パネル1の詳細は後述する(
図8参照)。
【0033】
図6は、周縁処理工程S3の概要を示す概要図である。
図6に示すように、周縁処理工程S3では、
図5に示す状態から、バルコニー102の周縁部であるパラペット102aの周辺に、防水鋼板20を設置する。より具体的に、周縁処理工程S3では、バルコニー102のパラペット102aと、このパラペット102a近傍に敷設された積層パネル1の外縁部と、の間に跨るように、クランク状の防水鋼板20を設置する。
【0034】
図7は、防水処理工程S4の概要を示す概要図である。
図7に示すように、防水処理工程S4では、
図6に示す状態から、積層パネル1の上面側に、防水シート30を積層する。より具体的に、防水処理工程S4では、敷設された複数の積層パネル1の上面側の全域を覆うように、防水シート30を積層する。また、防水処理工程S4では、露出する積層パネル1の上面のみならず、積層パネル1の外縁部の上面を覆う防水鋼板20の一部についても、防水シート30で覆う。
【0035】
本実施形態のバルコニー102の床104の床構造は、上述の床施工方法により施工することができる。したがって、本実施形態のバルコニー102の床104の床構造は、建物100の架構と、この架構に取り付けられる床板部材10と、この床板部材10に積層される積層パネル1と、防水鋼板20と、防水シート30と、備える。
【0036】
床板部材10は、床104の上面側から負荷される鉛直荷重を支持する。床板部材10としては、例えば、ALCパネルを用いることできるが、折板、押出成形セメント板、木質パネル材などの別の部材を用いてもよい。
【0037】
防水シート30は、例えば、塩化ビニルシート、加硫ゴムシート、アスファルトシート、オレフィンシート等からなる。
【0038】
次に、本実施形態の積層パネル1の概要を説明する。
図8は、積層パネル1の構成の概要を示す図である。
【0039】
図8に示すように、積層パネル1は、複数の機能層と、包装体3と、を備える。複数の機能層は、互いに連結されることなくパネル厚み方向Aに積層される。本実施形態の複数の機能層は、第1断熱層2aと、第2断熱層2bと、補強層2cと、から構成されているが、複数の機能層の構成は、本実施形態の構成に限られない。本実施形態の包装体3は、熱収縮性フィルムから構成されている。また、包装体3は、複数の機能層の周囲を被覆して複数の機能層の相対的な移動を規制する。以下、積層パネル1の各部の詳細について説明する。ここでは、説明の便宜上、互いに連結されることなくパネル厚み方向Aに積層された複数の機能層の全体を「積層体2」と記載する。なお、
図8では、積層パネル1の複数の機能層及び包装体3が一体化される前の別々の状態を示している。
【0040】
第1断熱層2aは、床104の床構造の断熱機能を高める1つの機能層である。本実施形態の第1断熱層2aは、発砲樹脂から構成されている。具体的に、本実施形態の第1断熱層2aは、矩形板状のポリスチレンフォームから構成されている。
【0041】
第2断熱層2bは、床104の床構造の断熱機能を高める1つの機能層である。本実施形態の第2断熱層2bは、発砲樹脂から構成されている。具体的に、本実施形態の第2断熱層2bは、矩形板状のフェノールフォームから構成されている。
【0042】
補強層2cは、床104の床構造の荷重支持機能を高める1つの機能層である。本実施形態の補強層2cは、上述の第1断熱層2a及び第2断熱層2bよりも曲げ強度又は圧縮強度が大きい。具体的に、本実施形態の補強層2cは、矩形板状のケイ酸カルシウム板から構成されている。
【0043】
なお、本実施形態の積層パネル1は、上述した床板部材10(
図4参照)の上面側に積層された状態で、鉛直方向下方から上方に向かって、第1断熱層2a、第2断熱層2b、補強層2cの順に配置される。
【0044】
本実施形態の第1断熱層2a及び第2断熱層2bは、上述したように別の材料から構成しているが、同一の材料から構成してもよい。第1断熱層2a及び第2断熱層2bを構成する材料としては、上述のポリスチレンフォーム、フェノールフォームに限られず、別の発泡樹脂材料としてもよい。このような別の発泡樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ウレタンなどが挙げられる。また、第1断熱層2a及び第2断熱層2bとして、繊維系断熱材を高密度に圧縮して板状にしたものを使用してもよい。補強層2cは、床板部材10を補強して、床板部材10の変形を抑制できればよく、補強層2cは、上述のケイ酸カルシウム板に限られず、別の構成であってもよい。このような別の構成としては、例えば、木板、鉄板、木片セメント版、セメント版などが挙げられる。
【0045】
また、本実施形態の複数の機能層から構成される積層体2は、上述の第1断熱層2a、第2断熱層2b及び補強層2cにより構成されているが、別の機能層を更に備える4層以上の構成であってもよい。また、本実施形態の複数の機能層から構成される積層体2は、異なる機能(本実施形態では断熱機能及び補強機能)を有する層が積層されているが、同一の機能を有する層のみが積層される構成であってもよい。したがって、複数の機能層は、同一又は異なる機能を有する層が少なくとも2層以上に積層されていればよく、積層される各機能層の構成、積層順等は、特に限定されず、適宜設計可能である。
【0046】
更に、本実施形態の複数の機能層の各機能層のパネル厚み方向Aの両面それぞれは、一平面により構成されている。このような構成とすることで、複数の機能層を隙間なく積層し易くなる。また、本実施形態の複数の機能層の各機能層のパネル厚み方向Aの両面は、互いに平行な一平面により構成されている。換言すれば、本実施形態の複数の機能層の各機能層のパネル厚み方向Aの厚みは、略一様である。但し、後述するように、厚みが外縁に向かって漸減する機能層としてもよい(
図9参照)。
【0047】
包装体3は、上述したように、例えば熱収縮性フィルムにより構成される。包装体3を構成する熱収縮性フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等から得られる熱収縮性フィルムが挙げられる。上記合成樹脂から熱収縮性フィルムを製造する手段は、特に限定されるものではなく、インフレーション法による1軸ないしは2軸延伸成形法によって製造されてもよく、一旦成形されたこれら合成樹脂フィルムを、ロール法による1軸ないしは2軸延伸成形法やテンター法による1軸ないしは2軸延伸成形法によって製造されてもよい。
【0048】
また、包装体3を構成する熱収縮性フィルムは、上述の各種の合成樹脂の単一フィルムから構成されるものであってもよいが、ポリエチレン、エチレン、ナイロン、酢酸ビニル共重合体等を用いた複合フィルムから構成されるものであってもよい。
【0049】
但し、包装体3により周囲を被覆される積層体2が、上述のポリスチレンフォームから構成される第1断熱層2aを含む場合には、包装体3を構成する熱収縮性フィルムを、80℃未満の所定温度で熱収縮する合成樹脂材料により形成することが好ましい。このようにすることで、ポリスチレンフォームから構成される第1断熱層2aの熱膨張を抑制しつつ、包装体3により積層体2を被覆できる。更に、建築用途で用いることを考慮すると、包装体3を構成する熱収縮性フィルムとしては、強度(例えば引張強度)の大きい材料により形成することが好ましい。また更に、施工中の雨天を考慮すると、包装体3を構成する熱収縮性フィルムとしては、防水性を有する材料により形成することが好ましい。したがって、本実施形態の包装体3は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂から構成される熱収縮性フィルムとすることが好ましい。
【0050】
包装体3は、積層体2の周囲を被覆して積層体2の複数の機能層の相対的な移動を規制できればよく、包装体3の形状は特に限定されない。具体的に、包装体3は、積層体2の複数の機能層のパネル厚み方向Aの相対的な移動を規制する。更に、包装体3は、積層体2の複数の機能層のパネル面内方向Bの相対的な移動を規制する。包装体3による複数の機能層のパネル厚み方向Aでの移動規制は、例えば、包装体3が複数の機能層のパネル厚み方向Aの両面に当接することで実現可能である。また、包装体3による複数の機能層のパネル面内方向Bでの移動規制は、例えば、包装体3が複数の機能層のパネル面内方向B周囲の端面に当接することで実現可能である。また、相互に連結されていない複数の機能層から構成される積層体2は、包装体3により、積層体2のパネル厚み方向Aの両側、及び、パネル面内方向Bの周囲、の少なくともいずれかから圧縮される圧縮力により、一体化されてもよい。なお、本実施形態の複数の機能層から構成される積層体2では、包装体3を構成する熱収縮性フィルムが、積層体2のパネル厚み方向Aの両面に当接し、かつ、積層体2のパネル面内方向B周囲の端面に当接することで、積層体2の複数の機能層の相対的な移動が規制されている。更に、本実施形態では、複数の機能層から構成される積層体2は、包装体3を構成する熱収縮性フィルムの圧縮力によっても、複数の機能層の相対的な移動が規制されている。この包装体3を構成する熱収縮性フィルムの圧縮力は、熱収縮性フィルムが熱収縮することで得られる力である。このように、積層体2と包装体3との当接、及び、包装体3による積層体2の圧縮、のいずれか又は両方を利用することで、積層体2の複数の機能層の相対的な移動を規制できる。
【0051】
複数の機能層を上述の包装体3により被覆して一体化する構成とすれば、例えば紐状のバンド材を利用して複数の機能層を一体化する場合と比較して、他の板状要素に接するように配置した場合にバンド材の厚みに起因する空隙等の発生を抑制できる。また、複数の機能層を上述の包装体3により被覆して一体化する構成とすれば、例えば複数の機能層の間を接着剤等により接着して一体化する場合と比較して、接着剤の種類、塗布量などの品質管理が不要になる。更に、複数の機能層を上述の包装体3により被覆して一体化する構成とすれば、例えば複数の機能層を所定の金具を用いて一体化する場合と比較して、構成を簡素化できる。また更に、複数の機能層を上述の包装体3により被覆して一体化する構成とすれば、例えば複数の機能層をビス等の締結部材を用いて一体化する場合と比較して、ビス等の締結部材を締結するための下地層が不要となる。
【0052】
図8に示すように、本実施形態の包装体3は、全体の外形が矩形板状の積層体2のパネル厚み方向Aの両面と、対向する2側面と、の4面のみを覆う環状の熱収縮性フィルムにより構成されているが、この構成に限られず、例えば、積層体2のパネル厚み方向Aの両面と、全側面と、を完全に覆う構成であってもよい。但し、本実施形態の積層パネル1のように、屋外に露出するバルコニー102の床104の床構造に用いる場合には、包装体3は、施工時の雨天対策として、積層パネル1の設置時における積層体2の鉛直方向上面の全域を少なくとも覆う構成とすることが好ましい。なお、本実施形態の積層体2の全体の外形は矩形板状であるが、この形状に限られず、例えば、円形状、四角形以外の多角形状など、他の外形を有する積層体としてもよい。
【0053】
このように、熱収縮性フィルムから構成される包装体3により、互いに連結されることなくパネル厚み方向Aに積層されている複数の機能層を被覆する構成とすることで、互いに連結されていない複数の機能層同士の相対的な位置関係を所定の状態に保ったまま、複数の機能層の施工を同時に行うことができる。これにより、各機能層を順次積層させる作業を省略できるため、建設現場での工期短縮を実現することができる。
【0054】
特に、本実施形態のバルコニー102の床104ように、屋外占有部の床の床構造では、上記工期短縮に加えて、施工中の雨天対策として、積層パネル1の機能層の雨濡れを抑制できることが好ましい。そのため、本実施形態の包装体3は、防水性を有すると共に、積層パネル1が床板部材10(
図4参照)の上面側に設置された状態で、複数の機能層で構成される積層体2の鉛直方向上面の全域を覆っていることが好ましい。
【0055】
更に、本実施形態の包装体3では、複数の機能層のパネル厚み方向Aの両側に位置する部分が、複数の機能層のパネル面内方向Bの周囲に位置する部分よりも、皺が少ないことが好ましい。例えば、熱収縮フィルムの端部が複数の機能層のパネル面内方向Bの周囲に位置することが好ましい。このようにすることで、積層パネル1と床板部材10(
図4参照)との間や、積層パネル1と防水シート30(
図7参照)との間に、皺が介在することを抑制できる。そのため、皺が介在することによる不要な空隙の発生、及び、皺が介在することによる公差の発生、を抑制できる。
【0056】
次に、本発明に係る積層パネルの別の実施形態としての積層パネル201について説明する。
図9は、積層パネル201の構成の概要を示す図である。
図9に示すように、積層パネル201は、複数の機能層と、包装体203と、を備える。本実施形態の積層パネル201は、上述の積層パネル1と比較して、集成機能層の有無、及び、傾斜機能層の有無、において構成が相違しており、その他の構成は共通している。そのため、ここでは、積層パネル201と上述の積層パネル1とで相違する構成について主に説明し、共通する構成については説明を省略する。なお、
図9では、積層パネル201の複数の機能層及び包装体203が一体化される前の別々の状態を示している。
【0057】
図9に示すように、積層パネル201の複数の機能層は、第1断熱層202a、第2断熱層202b及び補強層202cから構成されている。積層パネル201の複数の機能層は、上述の積層パネル1の複数の機能層と同様、互いに連結されることなくパネル厚み方向Aに積層される。
【0058】
上述した第1断熱層2a(
図8参照)は、単一の矩形板状のポリスチレンフォームから構成されているが、本実施形態の第1断熱層202aは、互いに連結されることなくパネル面内方向Bに当接させて連接されている複数の機能要素240aから構成されている集成機能層である。より具体的に、本実施形態の第1断熱層202aは、複数の機能要素240aとしての2つの矩形板状のポリスチレンフォームがパネル面内方向Bに当接させて連接されることで、構成されている。本実施形態の第1断熱層202aは、複数の機能要素240aとしての2つの矩形板状のポリスチレンフォームにより構成されているが、機能要素240aの形状、数および配列方向は、本実施形態の形状、数および配列方向に限られない。したがって、3つ以上の機能要素240aを適宜組み合わせて別の形状の第1断熱層202aを構成してもよい。
【0059】
また、上述した第2断熱層2b(
図8参照)についても同様である。上述した第2断熱層2bは、単一の矩形板状のフェノールフォームから構成されているが、本実施形態の第2断熱層202bは、互いに連結されることなくパネル面内方向Bに当接させて連接されている複数の機能要素240bから構成されている集成機能層である。より具体的に、本実施形態の第2断熱層202bは、複数の機能要素240bとしての3つの矩形板状のフェノールフォームがパネル面内方向Bに当接させて連接されることで、構成されている。本実施形態の第2断熱層202bは、複数の機能要素240bとしての3つの矩形板状のフェノールフォームにより構成されているが、機能要素240bの形状、数および配列方向は、本実施形態の形状、数および配列方向に限られない。したがって、2つ以下又は4つ以上の機能要素240bを適宜組み合わせて別の形状の第2断熱層202bを構成してもよい。
【0060】
更に、上述した補強層2c(
図8参照)についても同様である。上述した補強層2cは、単一の矩形板状のケイ酸カルシウム板から構成されているが、本実施形態の補強層202cは、互いに連結されることなくパネル面内方向Bに当接させて連接されている複数の機能要素240cから構成されている集成機能層である。より具体的に、本実施形態の補強層202cは、複数の機能要素240cとしての2つの矩形板状のケイ酸カルシウム板がパネル面内方向Bに当接させて連接されることで、構成されている。本実施形態の補強層202cは、複数の機能要素240cとしての2つの矩形板状のケイ酸カルシウム板により構成されているが、機能要素240cの形状、数および配列方向は、本実施形態の形状、数および配列方向に限られない。したがって、3つ以上の機能要素240cを適宜組み合わせて別の形状の補強層202cを構成してもよい。
【0061】
なお、本実施形態の積層パネル201の複数の機能層では、第1断熱層202a、第2断熱層202b及び補強層202cの全てが集成機能層であるが、単一の部材から構成される単一機能層を含んでもよい。
【0062】
また、本実施形態の複数の機能層は、同一又は異なる機能を有する別の機能層を更に備えてもよい。更に、本実施形態では3つの機能層が積層されているが、同一又は異なる機能を有する2つの機能層のみから構成されていてもよい。
【0063】
包装体203は、上述した複数の機能層の相対的な移動のみならず、各機能層を構成する集成機能層の複数の機能要素の相対的な移動、をも規制する。具体的に、包装体203は、第1断熱層202aを構成する集成機能層の複数の機能要素240aの相対的な移動を規制する。また、包装体203は、第2断熱層202bを構成する集成機能層の複数の機能要素240bの相対的な移動を規制する。更に、包装体203は、補強層202cを構成する集成機能層の複数の機能要素240cの相対的な移動を規制する。
【0064】
このように、熱収縮性フィルムから構成される包装体203により、互いに連結されることなくパネル厚み方向Aに積層されている複数の機能層を被覆する構成とすることで、互いに連結されていない複数の機能層同士、及び、各機能層において互いに連結されていない複数の機能要素同士、の相対的な位置関係を所定の状態に保ったまま、複数の機能層の施工を同時に行うことができる。これにより、各機能層を順次積層させる作業を省略できるため、建設現場での工期短縮を実現することができる。更に、各機能層を構成する材料の端材を活用できるため、廃材の量を減らすことができる。
【0065】
また、
図9に示すように、本実施形態の複数の機能層の各機能層のパネル厚み方向Aの両面は、1つ又は複数の平面により構成されている。
【0066】
具体的に、第2断熱層202bのパネル厚み方向Aの両面それぞれは、互いに平行な一平面により構成されている。より具体的に、本実施形態の第2断熱層202bは、3つの矩形板状の機能要素240bを、パネル面内方向Bで端面同士を対向させて当接させ連接することで構成されている。そして、各機能要素240bの厚みは略一様であり、3つの機能要素240bの厚みは略同一である。したがって、本実施形態の第2断熱層202bは、全体として略一様な厚みとなるように構成されている。
【0067】
また、補強層202cのパネル厚み方向Aの両面それぞれは、互いに平行な一平面により構成されている。より具体的に、本実施形態の補強層202cは、2つの矩形板状の機能要素240cを、パネル面内方向Bで端面同士を対向させて当接させ連接することで構成されている。そして、各機能要素240cの厚みは略一様であり、2つの機能要素240cの厚みは略同一である。したがって、本実施形態の補強層202cは、全体として略一様な厚みとなるように構成されている。
【0068】
これに対して、第1断熱層202aは、パネル厚み方向Aの厚みが外縁に向かって漸減するテーパ機能層である。具体的に、本実施形態の第1断熱層202aは、2つの矩形板状の機能要素240aを、パネル面内方向Bで端面同士を対向させて当接させ連接することで構成されている。一方の機能要素240aの厚みは略一様である。しかしながら、他方の機能要素240aの厚みは、一方の機能要素240aと隣接する一端側外縁250aで、一方の機能要素240aと略同一であるが、一方の機能要素240aから離れた他端側外縁250bに向かって漸減している。そのため、他方の機能要素240aでは、他端側外縁250bでの最小厚みが、一端側外縁250aでの厚みよりも薄い。そのため、第1断熱層202aは、パネル厚み方向Aの厚みが外縁(本実施形態では他端側外縁250b)に向かって漸減するテーパ機能層を構成している。
【0069】
このように、複数の機能層がテーパ機能層を含む構成とすれば、水勾配(1/100)を有する積層パネル201を容易に形成することができる。そのため、積層パネル201を、
図1に示すバルコニー102の床104の床構造に用いるような場合であっても、積層パネル201の機能層を利用して容易に床の水勾配を形成することができる。
【0070】
なお、本実施形態の第1断熱層202aでは、1つの機能要素240a全体で、厚みが一端側外縁250aから他端側外縁250bに向かって漸減する構成であるが、この構成に限られず、1つの機能要素240aのなかの一部のみに、所定の外縁に向かって厚みが漸減する部分を設けてもよい。また、本実施形態の第1断熱層202aは、複数の機能要素240aのうち1つの機能要素240aのみに、外縁に向かって厚みが漸減する部分を設けたが、この構成に限られず、第1断熱層202aの外縁に向かって厚みが漸減する部分を、複数の機能要素240aに亘って設けてもよい。更に、本実施形態の第1断熱層202aは、上述した他端側外縁250bのみに向かって厚みが漸減するテーパ機能層であるが、この構成に限られず、外縁の異なる位置に向かってそれぞれ厚みが漸減するような、外縁に向かって厚みが漸減する部分が複数形成されている構成としてもよい。
【0071】
また更に、本実施形態のテーパ機能層は、第1断熱層202aにより構成されているが、この構成に限られず、テーパ機能層が別の機能層により構成されていてもよい。
【0072】
本開示に係る積層パネル、床構造及び床施工方法は、上述した実施形態の具体的な構成及び工程に限られず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。上述した実施形態では、バルコニー102の床104の床構造について説明したが、複数の機能層を順次積層する施工を要する部分には、本発明に係る積層パネルを適用可能である。但し、陸屋根101やバルコニー102などの人が乗る屋外占有部において、本発明に係る積層パネルを適用すれば、工期短縮に加えて、断熱層などの機能層の雨濡れを、包装体によって抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、積層パネル、床構造及び床施工方法に関する。
【符号の説明】
【0074】
1、201:積層パネル
2:積層体
2a、202a:第1断熱層
2b、202b:第2断熱層
2c、202c:補強層
3、203:包装体
10:床板部材
20:防水鋼板
30:防水シート
40:防水テープ
100:建物
101:陸屋根
102:バルコニー
103:外壁
104:床
111:外壁パネル
120:柱
121:梁
240a:第1断熱層の機能要素
240b:第2断熱層の機能要素
240c:補強層の機能要素
250a:一端側外縁
250b:他端側外縁
A:パネル厚み方向
B:パネル面内方向