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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】無線通信システム及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/04 20060101AFI20230523BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20230523BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20230523BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230523BHJP
   B61C 17/12 20060101ALN20230523BHJP
【FI】
B61L23/04
B61L25/02 Z
H04W4/40
H04N7/18 D
H04N7/18 K
B61C17/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019054265
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020152292
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】澤田 恒
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-090780(JP,A)
【文献】特開平09-226584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/04
B61L 25/02
H04W 4/40
H04N 7/18
B61C 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載された通信装置と、監視カメラで撮影された監視映像を送信する地上無線機とを備えた無線通信システムであって、
前記地上無線機が、受信状態に応じて点滅の態様が異なる光源を備え、
前記通信装置が、前記地上無線機と通信を行う車上無線機と、
前記地上無線機を撮影する車上カメラと、
映像を表示する表示部と、
前記車上カメラで撮影された複数の前記地上無線機の映像を画像処理して、前記複数の地上無線機に設けられた光源の点滅の態様を認識し、前記態様に基づいて前記複数の地上無線機の受信状態を検出し、前記車上無線機に、前記検出された受信状態が最も良好である地上無線機と通信を行わせ、当該地上無線機から送信され、前記車上無線機で受信した監視映像を前記表示部に表示させる制御部とを備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記制御部が、外部からの指示に基づいて、前記表示部に、前記受信した監視映像と前記車上カメラで撮影した地上無線機の映像とを切り替えて表示させることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記光源が、赤外線を発光する赤外線LEDであり、前記車上カメラが、赤外線を検知する赤外線カメラであることを特徴とする請求項1又は2記載の無線通信システム。
【請求項4】
監視カメラで撮影された監視映像を送信すると共に受信状態に応じて点滅の態様が異なる赤外線LEDを備えた地上無線機と通信を行い、移動体に搭載される通信装置であって、
無線信号の送受信を行う車上無線機と、
前記地上無線機を撮影する赤外線カメラと、
映像を表示する表示部と、
前記赤外線カメラで撮影された複数の前記地上無線機の映像を画像処理して、前記複数の地上無線機に設けられた赤外線LEDの点滅の態様を認識し、前記態様に基づいて前記複数の地上無線機の受信状態を検出し、前記車上無線機に、前記検出された受信状態が最も良好である地上無線機と通信を行わせ、当該地上無線機から送信され、前記車上無線機で受信した監視映像を前記表示部に表示させる制御部とを備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項5】
前記制御部が、外部からの指示に基づいて、前記表示部に、前記受信した監視映像と前記赤外線カメラで撮影した地上無線機の映像とを切り替えて表示させることを特徴とする請求項4記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載された通信装置と地上無線機との間で通信を行う無線通信システム及び通信装置に係り、特に安定した通信を行うことができる無線通信システム及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、列車と地上との間でデータ伝送を行うための無線通信システムがある。
例えば、駅ホームには、ホーム上の安全を監視するための監視カメラが設置されており、地上無線機が、監視カメラで撮影した映像を列車に搭載された車上無線機に送信し、車上無線機が受信した画像情報を表示部に表示させるものがあった。
このようなシステムでは、運転士が、当該映像を見て乗降客の安全を確認できるものである。
地上無線機及び車上無線機としては、ミリ波無線機を用いたものがある。
【0003】
[従来の無線通信システム:図6
従来の無線通信システムについて図6を使って説明する。図6は、従来の無線通信システムの概要を示す模式説明図である。
図6に示すように、従来の無線通信システムは、地上と移動体(列車)との間で通信を行うものであり、地上側の設備として、駅ホーム200に設置された監視カメラ7a,7b,7c(監視カメラ7と称することもある)と、地上無線機6a,6b(地上無線機6と称することもある)とを備え、移動体側の設備として、列車4に搭載された車上無線機41と車両搭載モニタ42とを備えている。
尚、列車4側には、車上無線機41及び車両搭載モニタ42を制御する制御部が設けられているが、ここでは図示は省略する。
また、地上無線機6及び車上無線機41は、ミリ波無線機である。
【0004】
監視カメラ7a,7b,7cは、駅ホーム200の映像(監視映像)を撮影し、地上無線機6に出力する。
地上無線機6a,6bは、それぞれIDが付されており、車上無線機41からのポーリングを受信すると、IDを付して応答する。そして、通信が確立すると、監視カメラ7からの映像を車上無線機41に送信する。
ここで、従来の無線通信システムでは、列車の進行方向に沿って、手前側から奥側に向かって順次IDが小さくなるよう設置されている。つまり、手前側に設置された地上無線機6aのIDが大きく、奥側に設置された地上無線機6bのIDが小さいものである。
【0005】
列車4に搭載された車上無線機41は、地上無線機6に対してポーリングを行って、応答があった地上無線機6の中で、最もIDが大きいものと通信を行い(通信確立)、監視映像を受信する。
車両搭載モニタ42は、受信した監視映像を表示する。
【0006】
従来の無線通信システムの動作について簡単に説明する。
図6では、列車4は画面の左側から右側に向かって走行しており、A駅が近づいている状況を示している。
そして、従来の無線通信システムでは、車上無線機41は、ポーリングを行いながら、地上無線機6からの応答を待ち受け、応答があるとIDを読み取り、複数の地上無線機6からの応答があった場合、IDが最大の地上無線機6に対して通信要求を送信する。ここでは、地上無線機6aに対して通信要求を行う。
【0007】
通信要求を受信した地上無線機6aは、通信確立後、監視カメラ7a,7b,7cからの映像を車上無線機41に送信し、列車4では、車上無線機41で受信した駅ホーム200の映像を車両搭載モニタ42に表示する。
【0008】
列車4が駅を出発して列車4′の位置に移動し、地上無線機6aから応答がなくなると、車上無線機41は、ポーリングを行って応答があった地上無線機6の内、次にIDが大きい地上無線機6bと通信を行って駅ホーム200の映像を受信して、車両搭載モニタ42が映像を表示する。
このようにして、従来の無線通信システムの動作が行われるようになっていた。
【0009】
[関連技術]
尚、無線通信システムの従来技術としては、特許第6307600号公報「無線通信システム、無線通信装置、及び、可動柵制御システム」(特許文献1)がある。
特許文献1には、データ伝送の第1のモードと、移動体が停止したか否かを判定するレーダーの第2のモードとを切り替えて、一つのシステムで実現することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6307600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の無線通信システムでは、車上無線機がIDによって地上無線機を選択して通信を行うため、IDが最大の地上無線機のRSSI(Received Signal Strength Indicator;受信信号強度)が低下している場合には、通信が不安定になり、車両搭載モニタにホーム映像が映らなくなるという問題点があった。
【0012】
尚、特許文献1には、地上無線機にRSSI値に応じて点滅の態様が異なるLEDを設け、列車に搭載された通信装置が、複数の地上無線機をカメラで撮影し、画像解析を行ってLEDの点滅の状態から各地上無線機のRSSIのレベルを求めて、最もRSSIが大きい地上無線機と通信を行うことは記載されていない。
【0013】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、通信先として通信状態が良好な地上無線機を選択して、安定した通信を行うことができる無線通信システム及び通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、移動体に搭載された通信装置と、監視カメラで撮影された監視映像を送信する地上無線機とを備えた無線通信システムであって、地上無線機が、受信状態に応じて点滅の態様が異なる光源を備え、通信装置が、地上無線機と通信を行う車上無線機と、地上無線機を撮影する車上カメラと、映像を表示する表示部と、車上カメラで撮影された複数の地上無線機の映像を画像処理して、複数の地上無線機に設けられた光源の点滅の態様を認識し、当該態様に基づいて複数の地上無線機の受信状態を検出し、車上無線機に、検出された受信状態が最も良好である地上無線機と通信を行わせ、当該地上無線機から送信され、車上無線機で受信した監視映像を表示部に表示させる制御部とを備えたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、制御部が、外部からの指示に基づいて、表示部に、受信した監視映像と車上カメラで撮影した地上無線機の映像とを切り替えて表示させることを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、光源が、赤外線を発光する赤外線LEDであり、車上カメラが、赤外線を検知する赤外線カメラであることを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、監視カメラで撮影された監視映像を送信すると共に受信状態に応じて点滅の態様が異なる赤外線LEDを備えた地上無線機と通信を行い、移動体に搭載される通信装置であって、無線信号の送受信を行う車上無線機と、地上無線機を撮影する赤外線カメラと、映像を表示する表示部と、赤外線カメラで撮影された複数の地上無線機の映像を画像処理して、複数の地上無線機に設けられた赤外線LEDの点滅の態様を認識し、態様に基づいて複数の地上無線機の受信状態を検出し、車上無線機に、検出された受信状態が最も良好である地上無線機と通信を行わせ、当該地上無線機から送信され、車上無線機で受信した監視映像を表示部に表示させる制御部とを備えたことを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記通信装置において、制御部が、外部からの指示に基づいて、表示部に、受信した監視映像と赤外線カメラで撮影した地上無線機の映像とを切り替えて表示させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、移動体に搭載された通信装置と、監視カメラで撮影された監視映像を送信する地上無線機とを備えた無線通信システムであって、地上無線機が、受信状態に応じて点滅の態様が異なる光源を備え、通信装置が、地上無線機と通信を行う車上無線機と、地上無線機を撮影する車上カメラと、映像を表示する表示部と、車上カメラで撮影された複数の地上無線機の映像を画像処理して、複数の地上無線機に設けられた光源の点滅の態様を認識し、当該態様に基づいて複数の地上無線機の受信状態を検出し、車上無線機に、検出された受信状態が最も良好である地上無線機と通信を行わせ、当該地上無線機から送信され、車上無線機で受信した監視映像を表示部に表示させる制御部とを備えた無線通信システムとしているので、安定した通信を行うことができ、車上無線機で確実に駅等の監視映像を受信して表示部に表示することができる効果がある。
【0020】
また、本発明によれば、光源が、赤外線を発光する赤外線LEDであり、車上カメラが、赤外線を検知する赤外線カメラである上記無線通信システムとしているので、夜間やトンネル(地下鉄)等の暗い環境であっても赤外線カメラでLEDの発光を検知して、鮮明な映像を撮影できる効果がある。
【0021】
本発明によれば、監視カメラで撮影された監視映像を送信すると共に受信状態に応じて点滅の態様が異なる赤外線LEDを備えた地上無線機と通信を行い、移動体に搭載される通信装置であって、無線信号の送受信を行う車上無線機と、地上無線機を撮影する赤外線カメラと、映像を表示する表示部と、赤外線カメラで撮影された複数の地上無線機の映像を画像処理して、複数の地上無線機に設けられた赤外線LEDの点滅の態様を認識し、態様に基づいて複数の地上無線機の受信状態を検出し、車上無線機に、検出された受信状態が最も良好である地上無線機と通信を行わせ、当該地上無線機から送信され、車上無線機で受信した監視映像を表示部に表示させる制御部とを備えた通信装置としているので、地上無線機と安定した通信を行って、確実に駅等の監視映像を受信して表示することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本無線通信システムの概要を示す模式説明図である。
図2】本通信装置の構成ブロック図である。
図3】地上無線機情報テーブルの模式説明図である。
図4】本通信装置10の制御部14の処理を示すフローチャートである。
図5】地上無線機の状態監視を示す模式説明図である。
図6】従来の無線通信システムの概要を示す模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本無線通信システム)は、車上無線機及び赤外線カメラを備えた通信装置(本通信装置)と、地上に設けられた地上無線機とが通信を行うものであって、地上無線機に、車上無線機から送信された無線信号のRSSIの値に連動して点滅の態様が変化する光源を設け、本通信装置の制御部が、赤外線カメラで撮影した地上無線機の映像を解析して、RSSI値が最大の地上無線機を特定し、当該地上無線機と通信を行うよう車上無線機に指示を出力するものであり、IDの値にかかわらず、最も通信状態が良好な地上無線機と通信を行って、安定した通信を行うことができるものである。
また、本無線通信システム及び本通信装置は、運転士一人が乗車するワンマン路線におけるホーム監視システムに特に有効である。
【0024】
[本無線通信システムの概要:図1
本無線通信システムの概要について図1を用いて説明する。図1は、本無線通信システムの概要を示す模式説明図である。
図1に示すように、本無線通信システムは、列車に搭載された車上無線機11と駅に設けられた地上無線機31a,31b(地上無線機31と記載することもある)との間で通信を行うものである。
従来と同様に、駅ホームに設けられた監視カメラ7a,7b,7cで撮影された映像を、複数の地上無線機31a,31bの内、列車側で選択された方が、車上無線機11に送信するものであるが、列車側における地上無線機の選択方法が従来とは異なっている。
【0025】
本無線通信システムの特徴として、地上無線機31a,31bには、RSSIに応じて点滅の態様が段階的に変化する光源(本例では赤外線LED)32a,32b(赤外線LED32と記載することもある)が設けられている。赤外線LED32a,32bは、列車から見通せる位置に設置されている。
赤外線LED32a,32bの点滅の態様は、例えば、RSSI値が大きい場合には激しく点滅し(点滅の頻度が高い)、RSSI値が中くらいの場合には中程度に点滅し、RSSI値が小さい場合にはゆっくり点滅する(点滅の頻度が低い)よう設定されている。
図1では、模式的に、赤外線LED32aが激しく点滅し、赤外線LED32bは中程度の頻度で点滅している様子を示している。
【0026】
本無線通信システムでは、赤外線LED32a,32bは、車上無線機11から送信されたポーリング信号のRSSI値に応じた態様で点滅する。
尚、点滅の段階は上述した3段階に限るものではない。
【0027】
列車1には、本通信装置が搭載されている。
本通信装置は、従来と同様の車上無線機11、車両搭載モニタ12に加えて、赤外線カメラ13を備えている。つまり、図1において、列車1上に記載されている車上無線機11、車両搭載モニタ12、赤外線カメラ13は、全て本通信装置に含まれるものである。
【0028】
そして、本通信装置では、赤外線カメラ13で地上無線機31a,31bを撮影し、その映像を画像処理して、地上無線機31a,31bに設けられた赤外線LED32a,32bの点滅の態様を認識し、それに基づいて各地上無線機31a,31bのRSSI値の大きさを判定(検出)する。
本無線通信システムでは、発光と撮影を赤外線を用いて行うようにしているので、可視光とは異なり、暗い環境(夜間やトンネル内)でも鮮明な映像を撮影できるものである。
【0029】
そして、RSSI値が大きい方の地上無線機を選択して、車上無線機11に当該地上無線機との通信を行わせる。
これにより、本通信装置では、良好な通信状態となる地上無線機を選択して、ホームの監視映像を受信することができ、安定した通信を実現できるものである。
【0030】
[本通信装置の構成:図2
次に、本通信装置の構成について図2を用いて説明する。図2は、本通信装置の構成ブロック図である。
図2に示すように、本通信装置10は、列車1上に搭載されるものであり、車上無線機11と、車両搭載モニタ12と、赤外線カメラ13と、制御部14と、記憶部15と、操作部16とを備えている。
【0031】
車上無線機11は、従来と同様に駅に設けられた地上無線機31と通信を行うものであるが、本通信装置10の車上無線機11は、通信先(通信相手)として、制御部14から指示された地上無線機と通信を行う。
【0032】
車両搭載モニタ12は、従来と同様に、車上無線機11で受信した駅ホームの監視映像を表示する。
また、本通信装置10の特徴として、車両搭載モニタ12は、赤外線カメラ13で撮影した地上無線機31の画像、若しくは後述するように画像処理を施して赤外線LEDの点滅の状態を見やすくした画像を表示する。
車両搭載モニタ12で駅ホームの画像を表示するか、地上無線機の画像を表示するかは、操作部16での画像切り替え操作に応じて、制御部14の制御によって切り替えられる。
【0033】
赤外線カメラ13は、駅に設けられた地上無線機31を撮影する。
記憶部15は、制御部14における処理プログラムや駅ごとの地上無線機31の情報(地上無線機情報)を記憶している。地上無線機情報については後述する。
操作部16は、運転士等が操作を行うものであり、例えば、車両搭載モニタ12の表示を、駅ホームの映像又は地上無線機31の映像のいずれかに切り替える指示を入力する。
【0034】
制御部14は、本通信装置10の特徴部分であり、車上無線機11に対して、通信する地上無線機を指定する制御を行う。
具体的には、制御部14は、赤外線カメラ13から入力される地上無線機31及び赤外線LED32の映像を画像処理し、画像処理結果から点滅の態様を認識して、RSSI値が最も大きい地上無線機31を特定し、当該地上無線機31と通信を行うよう、車上無線機11に指示を出力する。
制御部14における処理は、記憶部15に記憶されたプログラムを制御部14が実行することにより実現されるものである。
【0035】
[地上無線機情報テーブル:図3
制御部14の動作について具体的に説明する前に、記憶部15に記憶されている地上無線機情報について図3を用いて説明する。図3は、地上無線機情報テーブルの模式説明図である。
図3に示すように、地上無線機情報テーブルは、各駅に設置されている地上無線機31の情報を管理するものであり、駅毎に、列車の進行方向手前側からの設置順と、地上無線機31のIDと、制御部14における画像処理に基づくRSSIのレベルを記憶している。
【0036】
図3の例では、A駅には進行方向の手前側から、ID110,109,108の3台の地上無線機31が設置されている。そして、RSSI値のレベルは、ID110ではLEDの点滅が検出できずブランクとなっており、ID109では大きく(レベル大)、ID108では中程度(レベル中)であったことを示している。
【0037】
[本通信装置10の動作:図1~3]
本通信装置10の赤外線カメラ13は、常時又は駅に近づいた場合に駅ホーム200の地上無線機31の映像を撮影し、制御部14に出力する。
制御部14は、入力された映像を画像処理して、無線機の形状を認識して、更に各地上無線機31の所定の位置にある赤外線LED32の点滅の態様を把握する。地上無線機31は、電源がオンとなっている場合には周囲に比べて温度が高く、明るく映ることで容易に認識可能である。
【0038】
そして、制御部14は、各赤外線LED32の点滅の状態に基づいて、各地上無線機31のRSSI値のレベルを認識し、画像から解析された無線機の配置位置(設置順)に対応付けて地上無線機情報テーブルに記憶する。
例えば、制御部14は、最も手前に位置する配置順1の無線機のRSSIはブランク、配置順2の無線機のRSSIはレベル大、最も奥に位置する配置順3の無線機のRSSIはレベル中、といったように記憶する。
【0039】
そして、制御部14は、RSSI値が最大である地上無線機31を特定し(図3の例では配置順2の無線機)、当該地上無線機31のID109を付して、車上無線機11に当該地上無線機31と通信を行うよう指示を出力する。
【0040】
車上無線機11は、従来と同様に常時ポーリングを行って地上無線機31の捕捉を行う。
そして、車上無線機11は、捕捉した地上無線機31の内、制御部14から指示されたID109の無線機と通信を確立し、駅ホームの映像を受信する。ID109の地上無線機31は、RSSIが最大であったものである。
そして、制御部14は、受信した駅ホームの映像を車両搭載モニタ12に出力して表示させる。
【0041】
尚、画像処理の結果、複数の地上無線機31のRSSIが同程度であった場合には、制御部14は、IDの大きいものを選択して、当該地上無線機31と通信を行うよう、車上無線機11に指示を出力する。
また、操作部16から映像切替の指示が入力された場合には、制御部14は、車両搭載モニタ12に、駅ホームの映像ではなく地上無線機31の映像を出力して、映像を切り替える。
このようにして、本通信装置10の動作が行われる。
【0042】
これにより、本通信装置10では、車上無線機11が、最もRSSIが大きく、通信状態が良好な地上無線機31と安定した通信を行うことができ、駅ホームの映像を確実に受信して表示して、運転士による駅ホームの安全確認をサポートすることができるものである。
【0043】
[制御部14の処理:図4
次に、本通信装置10の制御部14の処理について図4を用いて説明する。図4は、本通信装置10の制御部14の処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、制御部14は、赤外線カメラ13から地上無線機31の赤外線映像を入力する(S1)と、画像解析(画像処理)を行って、地上無線機31に設けられた赤外線LED32の点滅の状態を認識し、RSSI値の大きさ(レベル)を把握する(S2)。そして、制御部14は、地上無線機情報テーブルに、各地上無線機31のRSSI値のレベルを記憶しておく。
【0044】
制御部14は、撮影された地上無線機31の内、地上無線機テーブルを参照して、RSSI値のレベルが最大であった地上無線機31を特定し(S3)、当該地上無線機31と通信を行うよう、IDを付して車上無線機11に指示を出力する(S4)。
【0045】
そして、制御部14は、通信状態を監視し(S5)、地上無線機31との通信が切れたかどうかを判断して(S6)、切れていない場合には(Noの場合)、処理S5に戻る。
また、処理S6で、地上無線機31との通信が切れた場合(Yesの場合)には、制御部14は、処理S1に戻って次の映像を入力する。
このようにして、制御部14の処理が行われる。
【0046】
[地上無線機の状態監視:図5
次に、本システムの地上無線機31を用いた応用例として、地上無線機の状態監視について図5を用いて説明する。図5は、地上無線機の状態監視を示す模式説明図である。
これは、地上無線機31のメンテナンス等に用いられるものである。
図5では、駅等に設けられた監視側の構成として、赤外線カメラ7dと車載モニタ8のみを記載しているが、本通信装置10の制御部が設けられており、赤外線カメラ7dで撮影した映像の画像処理を行う。
監視対象となる地上無線機31c,31dは、上述した本システムの地上無線機31であり、RSSI値に応じて点滅する赤外線LEDが設けられている。
【0047】
そして、列車が近づいて、地上無線機31c,31dと車上無線機11とが通信を行うと、そのRSSI値に応じてLEDが点滅する。監視側の赤外線カメラ7dで撮影した映像を、制御部が画像処理して、表示装置8に出力する。
表示装置8では、受信状態がよくない地上無線機31は、点滅の頻度が低かったり、点滅していないように表示される。
保守員は、表示装置8を監視することで、地上無線機31c,31dの受信状態を目視で認識することができ、地上無線機31の不具合を容易に発見して、迅速にメンテナンスを行うことができるものである。
【0048】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る無線通信システムによれば、駅に設けられた地上無線機31が、RSSI値に応じて点滅の態様が変わる赤外線LED32を備え、列車上に設けられた通信装置10が、車上無線機11と、車両搭載モニタ12と、赤外線カメラ13と、制御部14とを備え、制御部14が、赤外線カメラ13で撮影した地上無線機31の映像を画像処理して、地上無線機31のRSSI値のレベルを認識し、最もRSSI値の大きい地上無線機31を特定して、当該地上無線機31と通信を行うよう車上無線機11に指示を出力するようにしているので、通信状態が良好な地上無線機31を選択して通信することができ、駅ホームの監視映像を確実に受信して、安全確認を行うことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、安定した通信を行うことができる無線通信システム及び通信装置に適している。
【符号の説明】
【0050】
1,4…列車、 6,31…地上無線機、 7…監視カメラ、 1…通信装置、 11,41…車上無線機、 12,42…車両搭載モニタ、 13…赤外線カメラ、 14…制御部、 15…記憶部、 16…操作部、 32…赤外線LED、 200…駅ホーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6