(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】化粧用器具
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
A45D34/04 510A
A45D34/04 515Z
(21)【出願番号】P 2019095100
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 大悟
(72)【発明者】
【氏名】尾花 敬和
(72)【発明者】
【氏名】杉原 めぐみ
【審査官】家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-017004(JP,U)
【文献】実開昭58-086015(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0059942(US,A1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2018-0002885(KR,U)
【文献】韓国公開実用新案第20-2009-0002622(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の部材からなり、一端近傍部分が使用者によって把持される把持部とされ、他端近傍部分が基材保持部とされた操作棒と、
前記基材保持部の周囲に緊密に存在する環状の線材が、該基材保持部の長さ方向に沿って互いに間隔を置いて繰り返し配置され
且つ長さ方向に沿った直線状の連結部材により連結されてなる基材
、又は前記基材保持部の周囲に緊密に存在する線材が螺旋状に成形されてなる基材と、
を有する化粧用器具であって、
前記基材の内側に有る前記基材保持部の少なくとも一部の外周面に
、螺旋溝として形成された溝部が刻設されて
おり、
前記溝部の、前記他端の側における長さ方向の間隔が、前記一端の側における長さ方向の間隔より短い、ことを特徴とする化粧用器具。
【請求項2】
棒状の部材からなり、一端近傍部分が使用者によって把持される把持部とされ、他端近傍部分が基材保持部とされた操作棒と、
前記基材保持部の周囲に緊密に存在する環状の線材が、該基材保持部の長さ方向に沿って互いに間隔を置いて繰り返し配置され
且つ長さ方向に沿った直線状の連結部材により連結されてなる基材
、又は前記基材保持部の周囲に緊密に存在する線材が螺旋状に成形されてなる基材と、
を有する化粧用器具であって、
前記基材の内側に有る前記基材保持部の少なくとも一部の外周面に溝部が刻設されて
おり、
前記溝部が、不規則なモザイク状のパターンに形成されている、ことを特徴とする化粧用器具。
【請求項3】
棒状の部材からなり、一端近傍部分が使用者によって把持される把持部とされ、他端近傍部分が基材保持部とされた操作棒と、
前記基材保持部の周囲に緊密に存在する環状の線材が、該基材保持部の長さ方向に沿って互いに間隔を置いて繰り返し配置され、
且つ長さ方向に沿って前記基材保持部から間隙をおいて離れて設けられた直線状の連結部材により連結されてなる基材と
、を有する
、ことを特徴とする化粧用器具。
【請求項4】
前記環状の線材同士の間に、前記操作棒の周方向にわたるC字状の線材がさらに配設されている、請求項3記載の化粧用器具。
【請求項5】
棒状の部材からなり、一端近傍部分が使用者によって把持される把持部とされ、他端近傍部分が基材保持部とされた操作棒と、
前記基材保持部の周囲に緊密に存在す
る線材が、
螺旋状に成形されてなる基材と、
を有する化粧用器具であって、
前記線材同士の、前記操作棒の長さ方向の間隔が、前記把持部と接する側で、前記把持部と反対側での間隔よりも長い、ことを特徴とする化粧用器具。
【請求項6】
棒状の部材からなり、一端近傍部分が使用者によって把持される把持部とされ、他端近傍部分が基材保持部とされた操作棒と、
前記基材保持部の周囲に緊密に存在す
る線材が、
螺旋状に成形されてなる基材と、
を有する化粧用器具であって、
前記線材同士の、前記操作棒の長さ方向の間隔が、前記操作棒の周方向の一方の半周領域において、他方の半周領域における間隔よりも長い、ことを特徴とする化粧用器具。
【請求項7】
前記基材がコイルばねであり、
前記操作棒に、前記コイルばねの一端に当接する当接部が設けられ、
前記把持部が管状であり、
前記把持部が、前記コイルばねの他端と向かい合う位置において
前記基材保持部と螺合し、前記基材保持部が前記把持部の中で螺進退自在とされ、
当該把持部が前記コイルばねを前記当接部に押し付けて圧縮可能
である、請求項
5又は6記載の化粧用器具。
【請求項8】
前記基材の内側に有る前記基材保持部の少なくとも一部の外周面に溝部が刻設されており、
前記溝部が、巻方向が前記線材の巻方向と逆向きである螺旋溝から構成されている請求項
5から7のいずれか1項記載の化粧用器具。
【請求項9】
前記基材の内側に有る前記基材保持部の少なくとも一部の外周面に溝部が刻設されており、
前記溝部が、巻方向が前記線材の巻方向と同じ向きである螺旋溝から構成されている請求項
5から7のいずれか1項記載の化粧用器具。
【請求項10】
前記基材の内側に有る前記基材保持部の少なくとも一部の外周面に溝部が刻設されており、
前記溝部が、前記基材保持部の長さ方向に互いに間を置いて配された複数の溝から構成されている、請求項3から7のいずれか1項記載の化粧用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスカラ液の塗布等のための化粧用器具に関し、より詳しくは、棒状部材の一部に環状の線材が部材長さ方向に繰り返し配置されてなる化粧用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マスカラ液の塗布のために用いられる睫毛用化粧用器具として、例えば特許文献1や2に示されているように、使用者によって把持される棒状部材の先端部にコイルばねを保持してなるものが知られている。この種の化粧用器具は、コイルばねを構成する線材と線材との間にマスカラ液を保持させた後、それらの線材の並び方向が睫毛の並び方向と概略平行になる状態、つまり線材と線材との間に睫毛を位置させる状態として、コイルばねで睫毛を梳くようにして使用される。それにより、線材と線材との間に保持されていたマスカラ液が睫毛に塗布される。
【0003】
なお、このような化粧用器具は、特許文献1にも示されているように、マスカラ液に限らず、毛染め剤やマニキュア液等、その他の液体化粧料の塗布にも使用され得るものである。さらにこの種の化粧用器具は、特許文献1に示されている通り、コイルばねの部分が櫛歯のように機能するので、マスカラ液は塗布せずに睫毛を梳かすためだけに用いることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-136017号公報
【文献】特許第6254317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上説明したタイプの睫毛用化粧用器具においては、コイルばねの部分に十分な量の液体化粧料を保持することが難しい、という問題が従来認められていた。この問題に対処するために特許文献1には、棒状部材のコイルばねを巻回保持する部分の断面形状を三角形にする構造や、ばね軸方向から見たコイルばねの巻き形状を楕円形にする構造が提案されている。他方特許文献2では、コイルばねの巻き形状を円形ではなくて複数の屈曲部を有する形状とし、この形状を、ばね軸方向に進むのにつれてばね周方向に所定角度ずつ回転させる構造が提案されている。
【0006】
しかし特許文献1や2に示されている従来の構造は、液体化粧料保持用のスペースは広く確保されるものの、そのスペースに液体化粧料を確実に保持させておく点で改善の余地が残されている。また上記従来の構造は、保持させておく液体化粧料の量を調節することは不可能であって、この点でも改善の余地が残されている。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、マスカラ液等の液体化粧料を十分な量、確実に保持させておくことができる化粧用器具を提供することを目的とする。さらに本発明は、保持させておく液体化粧料の量を調節できる化粧用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による第1の化粧用器具は、
棒状の部材からなり、一端近傍部分が使用者によって把持される把持部とされ、他端近傍部分が基材保持部とされた操作棒と、
上記基材保持部の周囲に緊密に存在する環状の線材が、該基材保持部の長さ方向に沿って互いに間隔を置いて繰り返し配置されてなる基材と、
を有する化粧用器具において、
基材の内側に有る基材保持部の少なくとも一部の外周面に溝部が刻設されていることを特徴とするものである。
【0009】
なお、上記の「環状」とは、特に円形に限るものではなく、多角形状も含むものである。また、環状の線材が基材保持部の周囲に「緊密に」存在するとは、基材保持部に接触するか、微小間隙をおいて離れて存在する状態を示すものである。また、環状の線材が「間隔を置いて繰り返し配置され」とは、等間隔で繰り返す場合も、不等間隔で繰り返す場合も含むものとし、さらには、この間隔の両側に配置された線材同士が一部連結されている状態も含むものとする。
【0010】
上記の基材として具体的には、線材が螺旋状に成形されてなるものや、さらに具体的には例えばコイルばねを適用することができる。
【0011】
この化粧用器具において、上記基材としてコイルばねが適用される場合は、
操作棒に、コイルばねの一端に当接する当接部が設けられ、
コイルばねの他端と向かい合う位置において操作棒の少なくとも一部の周囲に、該操作棒に沿って螺進退自在とされ、コイルばねを上記当接部に押し付けて圧縮可能な管状部材が配設される、
ことが望ましい。
【0012】
さらに上記の基材としては、線材が螺旋状に成形されてなるものの他に、環状に形成された複数の線材が互いに間隔を置いた状態で連結部材により連結されてなるものを適用することもできる。
【0013】
一方、基材保持部の外周面に刻設される溝部は、より具体的には、互いに間を置いて配された複数の溝から構成されることが望ましい。この溝部が「互いに間を置いて配され」とは、等間隔で配される場合も、不等間隔で配される場合も含むものとする。
【0014】
そのような複数の溝部は、さらに具体的には、環状溝から構成されることが望ましい。この環状溝とは、基材保持部の外周面を一周以上延びる溝も、例えば「C」字状に一周未満延びる溝も含むものである。
【0015】
上述の環状溝は、特に線材が螺旋状に成形されてなる基材が用いられる場合においては、巻方向が上記線材の巻方向と逆向きである螺旋溝や、あるいは巻方向が上記線材の巻方向と同じ向きである螺旋溝とされてもよい。この溝部は後述するように、十分な量の液体化粧料を確実に保持する作用を果たすものであるが、液体化粧料の保持量を多く確保する上では、螺旋溝の巻方向が線材の巻方向と逆向きであることがより望ましい。
【0016】
また、本発明による第2の化粧用器具は、
棒状の部材からなり、一端近傍部分が使用者によって把持される把持部とされ、他端近傍部分が基材保持部とされた操作棒と、
上記基材保持部の周囲を緊密に巻回する状態に配置されたコイルばねと、
を有する化粧用器具において、
操作棒に、コイルばねの一端に当接する当接部が設けられ、
コイルばねの他端と向かい合う位置において操作棒の少なくとも一部の周囲に、該操作棒に沿って螺進退自在とされ、コイルばねを上記当接部に押し付けて圧縮可能な管状部材が配設されている、
ことを特徴とするものである。
【0017】
この本発明による第2の化粧用器具において、上記基材保持部は例えば円柱状のものとされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明による第1の化粧用器具においては、基材の内側に有る基材保持部の少なくとも一部の外周面に溝部が刻設されているので、基材保持部と基材とによって保持される(詳しくは基材保持部と基材との間、あるいは基材の線材同士間の空間に保持される)液体化粧料が、この溝部の中にも導入されるようになる。そこでこの第1の化粧用器具によれば、十分な量の液体化粧料を保持可能となる。しかも液体化粧料の保持は、単に上記空間を利用するのではなく、溝部の中に液体化粧料を導入してなされるので、液体化粧料が確実に保持されるようになる。
【0019】
一方、本発明による第2の化粧用器具においては、基材保持部の周囲を巻回するコイルばねの一端に当接する当接部が設けられ、また、コイルばねの他端と向かい合う位置に、コイルばねを上記当接部に押し付けて圧縮可能な管状部材が設けられているので、この管状部材を操作してコイルばねの圧縮の程度を変えることができる。こうして、この第2の化粧用器具によれば、コイルばねの圧縮の程度、すなわちコイルばねを構成する線材同士の間の距離を変えることができるので、この線材同士の間に保持される液体化粧料の量を調節可能となる。また、コイルばねを構成する線材同士の間の距離を変えることにより、このコイルばねを利用して睫毛を梳く際に、梳きの効果を強くしたり弱くしたり調節することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による化粧用器具を示す分解斜視図
【
図2】
図1の化粧用器具が適用されたマスカラ容器を示す一部破断側面図
【
図3】上記化粧用器具が使用される様子を示す概略図
【
図4】
図1の化粧用器具の一部を拡大して示す側面図
【
図5】上記化粧用器具の
図2とは異なる状態を示す一部破断側面図
【
図6】本発明の化粧用器具における基材の別の例を示す斜視図
【
図7】本発明の化粧用器具における基材のさらに別の例を示す斜視図
【
図8】本発明の化粧用器具における基材のさらに別の例を示す斜視図
【
図9】本発明の化粧用器具における基材のさらに別の例を示す斜視図
【
図10】本発明の化粧用器具における基材のさらに別の例を示す斜視図
【
図11】本発明の化粧用器具における基材保持部の別の例を示す斜視図
【
図12】本発明の化粧用器具における基材保持部のさらに別の例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による化粧用器具10を分解して示す斜視図であり、
図2はこの化粧用器具10が適用されたマスカラ容器20を一部破断して示す側面図である。この化粧用器具10は基本的に、棒状に形成された操作棒1と、この操作棒1に保持された基材としてのコイルばね5とから構成されている。
【0022】
操作棒1は、一例として円管状に形成された把持部2と、この把持部2の外径よりもやや小さい外径とされた概略円柱状の基材保持部3とからなる。把持部2は操作棒1の一端近傍部分を構成し、基材保持部3は操作棒1の他端近傍部分を構成している。基材保持部3の
図1中の上端部には、該基材保持部3の長手方向に延びる雄ねじ3aが設けられている。また基材保持部3の外周面には、周方向に延びて該基材保持部3の長さ方向に繰り返す溝部3bが刻設されている。この溝部3bは、一例として螺旋溝から構成されている。
【0023】
一方把持部2の
図1中の下端部においてその内周面には、上記雄ねじ3aと螺合する雌ねじ2aが設けられている。基材保持部3はその雄ねじ3aを上記雌ねじ2aと螺合させることにより、把持部2と同軸に一体化される。こうして基材保持部3は、円管状の把持部2の中で螺進退自在となっている。基材保持部3の雄ねじ3a以外の部分は、この雄ねじ3aよりも小径とされている。そこで、基材保持部3を把持部2の内部奥方に向けて螺進させた際には、基材保持部3の雄ねじ3a以外の部分も把持部2の中まで進入可能となっている。
【0024】
基材保持部3の
図1中の下端には、該基材保持部3よりも大径とされた、一例として薄い円柱状の当接部4が一体的に設けられている。以上述べた把持部2、基材保持部3および当接部4は、例えば合成樹脂から形成されるが、合成樹脂以外の材料から形成されてもよい。
【0025】
基材保持部3の周囲にはコイルばね5が配され、この状態としてから、上述のようにして基材保持部3と把持部2とが一体化される。コイルばね5は一般的なものと同様に、鋼線等の線材5aがコイル状に巻回されてなるものである。そこでこのコイルばね5が基材保持部3の周囲に配された状態では、環状の線材5aが基材保持部3の周囲に緊密に(つまり基材保持部3と接触するか、あるいは微小間隙をおいて離れて)存在し、該基材保持部3の長さ方向に沿って互いに間隔を置いて繰り返す状態となる。なお本実施形態では、コイルばね5を構成する線材5aは基本的に、基材保持部3の長さ方向に沿って互いに等間隔を置いて繰り返している。
【0026】
基材保持部3と把持部2とが一体化された状態では、コイルばね5の一端つまり
図1中の下端は当接部4に当接し、他端つまり
図1中の上端は把持部2に当接する。こうしてコイルばね5は、把持部2と当接部4との間において圧縮状態で操作棒1に保持される。そして、例えば当接部4を指で把持して基材保持部3を軸周りに回転させ、該基材保持部3を把持部2に対して螺進退させると、把持部2と当接部4との間で保持されているコイルばね5の圧縮状態すなわちその全長が変化する。
【0027】
以上述べた化粧用器具10は、例えば
図2に示すマスカラ容器20と組み合わせて用いられる。マスカラ容器20は、マスカラ液Mを貯留する容器本体21と、この容器本体21に被着されてその上部開口を閉じるキャップ22とから構成されている。容器本体21およびキャップ22は、概略有底の円筒状に形成されている。容器本体21の上部には外周面に雄ねじ部23を有する口元部24が形成され、この口元部24の径方向内側には、概略円筒状のシゴキ25が取り付けられている。一方、キャップ22の開放側の端部には、上記雄ねじ部23に螺合する雌ねじ部26が形成され、この雌ねじ部26の奥方(
図2中の上方)においてキャップ22の内部には、操作棒固定部27が嵌合固定されている。
【0028】
化粧用器具10は、
図2に示すように、キャップ22の操作棒固定部27に固定された状態で使用に供される。この化粧用器具10の固定は、より詳しくは、操作棒1の把持部2の一部を操作棒固定部27の中に固定することによってなされている。
図2に示すように、容器本体21にキャップ22が螺合されて容器本体21が閉じられた状態では、化粧用器具10のコイルばね5が保持されている部分が、マスカラ液Mの中に浸漬された状態となる。それにより、コイルばね5の線材5a同士の間に、あるいは各線材5aと基材保持部3の表面との間に、マスカラ液Mが保持されるようになる。
【0029】
マスカラ液Mを睫毛に塗布する際には、容器本体21からキャップ22が取り外され、このキャップ22が
図3に示すように使用者の手30によって把持される。そして、キャップ22に固定されている化粧用器具10を、そのコイルばね5で睫毛31を梳くように操作することにより、上述のようにして化粧用器具10に保持されているマスカラ液Mが睫毛31に塗布される。なお、容器本体21からキャップ22が取り外される際、コイルばね5がシゴキ25の内方を通過すると、コイルばね5の外側に付着していた余分な量のマスカラ液Mがシゴキ25によって拭い取られる。
【0030】
以上の説明から明らかなように本実施形態では、操作棒1の把持部2の一部が使用者の手30により、キャップ22を介して間接的に把持されている。本発明では、こうして把持部2が間接的に把持される場合も、また把持部2が直接的に把持される場合も、同様に「把持部が使用者によって把持される」と見做すものとする。化粧用器具10は特にマスカラ容器20のキャップ22と組み合わせることなく、単独で用いることも可能であり、その場合は化粧用器具10の操作棒1の把持部2が、使用者の手によって直接的に把持されることになる。
【0031】
本実施形態においては、基材保持部3の外周面に前述した通りの溝部3bが刻設されているので、該基材保持部3とコイルばね5との間ではこの溝部3bにもマスカラ液Mが導入されて、十分な量のマスカラ液Mが確実に保持されるようになる。
図4は、基材保持部3およびコイルばね5の一部の側面形状を拡大して示すものである。ここに示される通り本実施形態では、螺旋溝である溝部3bの巻方向は、コイルばね5の線材5aの巻方向と逆向きとされている。マスカラ液M等の液体化粧料の保持量を多く確保する上では、溝部3bとコイルばね5の線材5aの各巻方向をこのように互いに逆向きとしておくのが望ましいが、それに限らず、両者の各巻方向は互いに同じ向きとされても構わない。
【0032】
図5には、
図2に示す状態にある化粧用器具10を、この状態下と比べて、把持部2と当接部4との間の距離がより短くなるように変化させた状態を示している。このように上記距離を変化させるには、キャップ22を容器本体21から取り外した後、例えばキャップ22を一方の手の指で把持し、別の手の指で把持した当接部4を回して、基材保持部3を把持部2の内部奥方(
図2中の上方)に入り込むように螺進させる操作を行えばよい。この操作後の
図5の状態では、
図2の状態と比べて、コイルばね5の線材5a同士の間隔がより短くなっている。そこで
図5の状態では、
図2の状態と比べて、線材5a同士の間に保持されるマスカラ液Mの量がより少なくなる。また、コイルばね5による梳きの効果は、より強いものとなる。
【0033】
なお、化粧用器具10に保持させるマスカラ液M等の液体化粧料の量や、コイルばね5による梳きの効果を調節可能としなくてもよい場合は、把持部2と当接部4との間の距離は固定として、コイルばね5の線材5a同士間の距離を変更不可能としてもよい。そして、そのようにコイルばねの線材同士間の距離を変更不可能とする場合でも、さらには、変更可能とする場合でも、この距離が互いに異なる部分を複数設けておいて、必要に応じてそれらの部分から一つを選択使用できるようにコイルばねを構成するのが望ましい。
【0034】
図6および
図7は、そのように構成されたコイルばねの例を概略的に示している。なおこれらの図において、先に説明した
図1~
図5中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は、特に必要の無い限り省略する(以下、同様)。
図6に示す例のコイルばね35では、コイルばね線材35a同士間の距離が、当接部4と接する側のばね領域つまり図中の下半分領域では比較的短く、そして把持部2と接する側のばね領域つまり図中の上半分領域では比較的長く設定されている。このようなコイルばね35が適用された際に、線材35a同士の間に保持される液体化粧料の量を比較的少なくし、また、コイルばね35による睫毛の梳きの効果を比較的強くしたい場合は、コイルばね35の図中下半分領域を使用すればよい。それに対して、線材35a同士の間に保持される液体化粧料の量を比較的多くし、また、コイルばね35による睫毛の梳きの効果を比較的弱くしたい場合は、コイルばね35の図中上半分領域を使用すればよい。
【0035】
一方、
図7に示す例のコイルばね45では、コイルばね線材45a同士間の距離が、コイルばね45の軸周りの半周領域単位で変えられている。すなわち本例では、上記距離が、コイルばね45の図中右半分領域では比較的短く、そしてコイルばね45の図中左半分領域では比較的長く設定されている。このようなコイルばね45は、図中右半分領域ではコイルばね線材45aを半周だけ巻回して折り返すことを2回続けて行い、次いで普通にコイルばね線材45aを一周巻回する、という工程を繰り返して形成することができる。
【0036】
上述のようなコイルばね45が適用された際に、線材45a同士の間に保持される液体化粧料の量を比較的少なくし、また、コイルばね45による睫毛の梳きの効果を比較的強くしたい場合は、コイルばね45の図中右半分領域を使用すればよい。それに対して、線材45a同士の間に保持される液体化粧料の量を比較的多くし、また、コイルばね45による睫毛の梳きの効果を比較的弱くしたい場合は、コイルばね45の図中左半分領域を使用すればよい。
【0037】
なお、以上述べた通りのコイルばね5、35あるいは45が基材として用いられて、それらのコイルばねが円管状の把持部2によって圧縮可能とされる場合は、基材保持部3に溝部3bは特に設けなくても構わない。
【0038】
また、基材保持部3の周囲に配置されてなる基材としては、コイルばね以外の基材も適用可能である。
図8~
図10は、そのような基材の例を概略的に示している。
図8に示す基材50は、各々環状に形成された線材51が複数、互いに間隔を置いて一定ピッチで配設され、そしてそれらの環状線材51が例えば4本の直線状の連結部材52により連結されてなるものである。これらの環状線材51および連結部材52は、例えば金属や合成樹脂等からなる細い円柱状部材や薄い板状部材を用いて形成することができる。なお同図では煩雑化を避けるために、4本の連結部材52は2本だけ図示し、また基材保持部3は途中で分断した状態で示している。この種の基材50を用いる場合も、環状線材51と連結部材52の外周面とで囲まれた空間に液体化粧料を保持することができ、また、環状線材51同士の間の空間を利用して睫毛を梳くこともできる。
【0039】
図9に示す基材55は、
図8に示した基材50と対比すると、複数配設される環状線材51の配設ピッチが、それらの並び方向内で一定ではない点で相違するものである。すなわち本例の基材55では、環状線材51同士間の距離が、当接部4と接する側の基材領域つまり図中の下半分領域では比較的短く、そして把持部2と接する側の基材領域つまり図中の上半分領域では比較的長く設定されている。このような基材55が適用された際に、環状線材51同士の間に保持される液体化粧料の量を比較的少なくし、また、環状線材51による睫毛の梳きの効果を比較的強くしたい場合は、基材55の図中下半分領域を使用すればよい。それに対して、環状線材51同士の間に保持される液体化粧料の量を比較的多くし、また、環状線材51による睫毛の梳きの効果を比較的弱くしたい場合は、基材55の図中上半分領域を使用すればよい。
【0040】
図10に示す基材57は、
図8に示した基材50と対比すると、複数配設される環状線材51の配設ピッチが、それらの径方向内で一定ではない点で相違するものである。すなわち本例の基材57では、全周に亘って延びる環状線材51同士の間にそれぞれ、半周だけ延びる「C」字状の環状線材51が配設されている。この「C」字状の環状線材51は、図中左側が開いた状態となるように配されている。したがって本例では環状線材51同士の間の距離が、基材57の図中右半分領域では比較的短く、そして基材57の図中左半分領域では比較的長く設定されている。
【0041】
このような基材57が適用された際に、環状線材51同士の間に保持される液体化粧料の量を比較的少なくし、また、環状線材51による睫毛の梳きの効果を比較的強くしたい場合は、基材57の図中右半分領域を使用すればよい。それに対して、環状線材51同士の間に保持される液体化粧料の量を比較的多くし、また、環状線材51による睫毛の梳きの効果を比較的弱くしたい場合は、基材57の図中左半分領域を使用すればよい。
【0042】
なお、以上述べた通りの基材50、55あるいは57が用いられて、それらを構成する環状線材51同士の間の距離が変更不可能とされる場合、基材保持部3には必ず溝部3bが刻設される。
【0043】
先に
図4を参照して説明した通り、基材保持部3に刻設された複数の溝部3bは全て同一ピッチで規則的に基材保持部3の長さ方向に繰り返すものであるが、本発明の化粧用器具においてはそれ以外の形態の溝部が適用されてもよい。例えば
図11に示す基材保持部63においては、その外周面上に刻設された螺旋溝からなる溝部63bが、当接部4と接する側の溝部領域つまり図中の下半分領域では比較的短い間隔で、それよりも上側の溝部領域つまり図中の上半分領域では比較的長い間隔で刻設されている。このような溝部63bを有する基材保持部63が適用された際に、溝部63bに導入、保持される液体化粧料の量を比較的多くしたい場合は、基材保持部63の図中下半分領域の周囲に配置されている基材を使用すればよい。それに対して、溝部63bに導入、保持される液体化粧料の量を比較的少なくしたい場合は、基材保持部63の図中上半分領域の周囲に配置されている基材を使用すればよい。
【0044】
また、
図12に示す基材保持部73においては、その外周面上に刻設された溝部73bが、不規則なモザイク状のパターンに形成されている。このような基材保持部73を有する化粧用器具を用いる際には、該基材保持部73の周囲に配置されている基材を短時間だけ液体化粧料中に浸漬して直ぐ液体化粧料の塗布に供するような場合でも、液体化粧料を満遍なく溝部73bに導入、保持できるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0045】
1 操作棒
2 把持部
2a 把持部の雌ねじ
3、63、73 基材保持部
3a 基材保持部の雄ねじ
3b、63b、73b 基材保持部の溝部
4 当接部
5、35、45 コイルばね
5a、35a、45a コイルばねの線材
10 化粧用器具
20 マスカラ容器
50、55、57 基材
51 環状部材
52 連結部材
M マスカラ液