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  • 特許-レーザ加工装置およびレーザ加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】レーザ加工装置およびレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/046 20140101AFI20230523BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20230523BHJP
【FI】
B23K26/046
B23K26/382
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019104137
(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2020196032
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 勇輝
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013092(JP,A)
【文献】国際公開第2013/038606(WO,A1)
【文献】特開2006-289419(JP,A)
【文献】特開2001-276986(JP,A)
【文献】特開2016-173371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を載置するテーブルと、集光レンズを介し前記被加工物にレーザを照射するレーザ照射部と、当該レーザ照射部を前記集光レンズの光軸方向での移動を行うための第1の駆動部と、当該第1の駆動部による移動動作を制御する移動制御部と、前記テーブルと前記レーザ照射部との相対移動を行う第2の駆動部とを有するレーザ加工装置において、
複数の区画に論理的に分割された前記被加工物の表面の前記区画内の各々における少なくとも一つの位置の前記光軸方向での高さを検出するセンサを設け、
前記移動制御部は、前記第2の駆動部による相対移動を伴って前記区画の各々での加工を順次行う場合、新たな加工位置となる区画への前記相対移動を行う期間において前記センサによる検出結果に基づいて前記第1の駆動部を動作させ、
前記センサが検出する前記位置は、前記区画の頂点を結ぶ二つの対角線において当該対角線の交点と前記区画の頂点との中間に位置する複数点に設定され、
前記移動制御部は、前記複数点での検出値を平均した平均値に基づいて前記第1の駆動部の動作を制御する、
レーザ加工装置。
【請求項2】
集光レンズを介して被加工物にレーザを照射するレーザ照射部であって前記集光レンズの光軸方向への移動ができるものと、被加工物を載置するテーブルとの相対移動を行うことにより、前記被加工物の表面における異なる位置での加工を行うようにしたレーザ加工方法において、
前記被加工物を加工する前に複数の区画に論理的に分割された前記被加工物の表面の前記区画内の各々における少なくとも一つの位置の前記光軸方向での高さを検出し、当該検出結果に基づいて新たな加工位置となる区画への前記相対移動を行う期間において前記レーザ照射部の前記光軸方向への移動を行い、
前記光軸方向での高さを検出する前記位置は、前記区画の頂点を結ぶ二つの対角線において当該対角線の交点と前記区画の頂点との中間に位置する複数点に設定され、
前記複数点での検出値を平均した平均値に基づいて前記レーザ照射部の前記光軸方向への移動を行う、
レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板にレーザを使用して穴あけ加工等を行うレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板にレーザを使用して穴あけ加工等を行うレーザ加工装置においては、
レーザ発振器から出射されたレーザパルスをガルバノスキャナにより2次元方向へ偏向し、集光レンズ(Fθレンズ)を介してテーブルに載置されたプリント基板に照射するようになっている。
従来のレーザ加工装置においては、例えば、特許文献1に示すように、プリント基板1の厚みを一様と見做し、プリント基板の表面が測定したテーブルの高さに基づいて計算した位置にあるとし、その高さを基準にしてレーザ照射部のプリント基板の厚み方向、すなわち集光レンズの光軸方向の位置を調整するようにしている。
しかしながら、このプリント基板の厚みは詳細に見れば一様ではない。従って、表面の高さが基準と異なる加工位置においては、レーザ照射部との間隔が集光レンズの焦点距離との関係で適正なものでなくなり、穴形状が悪い等、加工品質を落とす問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4272667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、厚みが一様でない基板のレーザ加工において、加工品質を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される発明のうち、大表的なレーザ加工装置は、被加工物を載置するテーブルと、集光レンズを介し前記被加工物にレーザを照射するレーザ照射部と、当該レーザ照射部を前記集光レンズの光軸方向での移動を行うための第1の駆動部と、当該第1の駆動部による移動動作を制御する移動制御部と、前記テーブルと前記レーザ照射部との相対移動を行う第2の駆動部とを有するレーザ加工装置において、複数の区画に論理的に分割された前記被加工物の表面の前記区画内の各々における少なくとも一つの位置の前記光軸方向での高さを検出するセンサを設け、前記移動制御部は、前記第2の駆動部による相対移動を伴って前記区画の各々での加工を順次行う場合、新たな加工位置となる区画への前記相対移動を行う期間において前記センサによる検出結果に基づいて前記第1の駆動部を動作させ、前記センサが検出する前記位置は、前記区画の頂点を結ぶ二つの対角線において当該対角線の交点と前記区画の頂点との中間に位置する複数点に設定され、前記移動制御部は、前記複数点での検出値を平均した平均値に基づいて前記第1の駆動部の動作を制御する、ものである。
【0006】
また、本願において開示される発明のうち、代表的なレーザ加工方法は、集光レンズを介して被加工物にレーザを照射するレーザ照射部であって前記集光レンズの光軸方向への移動ができるものと、被加工物を載置するテーブルとの相対移動を行うことにより、前記被加工物の表面における異なる位置での加工を行うようにしたレーザ加工方法において、前記被加工物を加工する前に複数の区画に論理的に分割された前記被加工物の表面の前記区画内の各々における少なくとも一つの位置の前記光軸方向での高さを検出し、当該検出結果に基づいて新たな加工位置となる区画への前記相対移動を行う期間において前記レーザ照射部の前記光軸方向への移動を行い、前記光軸方向での高さを検出する前記位置は、前記区画の頂点を結ぶ二つの対角線において当該対角線の交点と前記区画の頂点との中間に位置する複数点に設定され、前記複数点での検出値を平均した平均値に基づいて前記レーザ照射部の前記光軸方向への移動を行う、ものである。
【0007】
なお、本願において開示される発明の代表的な特徴は以上の通りであるが、ここで説明していない特徴については、後述する発明を実施するための形態において説明しており、また特許請求の範囲にも示した通りである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、厚みが一様でない基板のレーザ加工において、加工品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例となるレーザ加工装置のブロック図である。
図2】レーザ加工のワークとなるプリント基板の断面図である。
図3】レーザ加工のワークとなるプリント基板の平面図である。
図4図3における区画の中を説明するための図である。
図5】穴あけ加工に先立って行う動作のフローチャートである。
図6図1におけるZ軸位置記憶部の内容を示す図である。
図7】複数の区画の加工過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【実施例
【0011】
以下、本発明の一実施例を図を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例となるレーザ加工装置のブロック図である。各構成要素や接続線は、主に実施例を説明するために必要と考えられるものを示してあり、レーザ加工装置として必要な全てを示している訳ではない。
このレーザ加工装置では、プリント基板1を載置する加工テーブル11はテーブル駆動部12と結合され、加工テーブル11を駆動することによってプリント基板1とレーザ照射ユニット13とのX、Y方向の相対移動を行えるようになっている。これにより、プリント基板1の所定の位置にレーザ照射ユニット13からレーザパルスを照射させ、穴あけ加工を行うようになっている。
【0012】
レーザ照射ユニット13の内部には、集光レンズ14と、レーザ発振器15から出射されたレーザパルスを2次元方向に走査し集光レンズ14を介してプリント基板1に照射するガルバノスキャナ16と、変位センサ17が搭載されている。
レーザ照射ユニット13は照射ユニット駆動部18と結合され、Z軸方向(集光レンズ14の光軸方向)、すなわちプリント基板1の厚み方向に移動することができるようになっている。
図2はレーザ加工のワークとなるプリント基板1の断面図である。変位センサ17は、プリント基板1のZ軸方向から見て任意位置の表面の高さを測定するものであり、H0を基準とし、表面位置Aでは変位量は-Ah、表面位置Bでは変位量は+Bhと検出する。
一つの区画内においては変位量の差は小さいものとし、逆に区画内の差が小さくなるように一つの区画の大きさが設定されている。
【0013】
19は装置全体の動作を制御する全体制御部で、例えばプログラム制御の処理装置によって実現され、その中の各構成要素や接続線は、論理的なものも含むものとする。また各構成要素の一部は全体制御部19と別個に設けられていてもよい。また、各構成要素や各構成要素間を接続する線は、主に本実施例を説明するために必要と考えられるものを示してあり、ここで説明するもの以外の構成要素や制御機能を有しているものする。
【0014】
全体制御部19には、テーブル駆動部12の位置決め動作を制御するテーブル駆動制御部20、与えられた穴あけ位置情報に従ってガルバノスキャナ16の位置決め動作を制御するガルバノスキャナ制御部21、与えられるZ軸位置情報に従って照射ユニット駆動部17のZ軸方向の位置決め動作を制御する照射ユニット駆動制御部22、加工プログラムを格納するためのプログラム記憶部23、区画S1、S2、S3・・・の各々毎に頂点P1~4の座標を記憶しておくための頂点記憶部24、Z軸補正記憶部25がそれぞれ設けられている。
【0015】
図3はプリント基板1の平面図である。プリント基板1の表面は格子状に区分けした複数の大きさの等しい区画S1、S2、S3・・・に論理的に分けられている。
一つの区画の大きさはガルバノスキャナ16の一つの走査エリアの整数倍で、その大きさよりも相当大きい。プリント基板1の加工は、区画S1、S2、S3・・・のそれぞれにおいて、ガルバノスキャナ15の一つの走査エリアを単位にして行う。
図4図3における区画Snの中を説明するための図である。P0は区画Sn内での二つの対角線の交点、P1~4は区画Sn内での二つの対角線においてちょうど中間に位置する点を結んだ四辺形32の頂点である。
【0016】
このレーザ加工装置は、穴あけ加工を行うに先立って全体制御部19の制御の下で以下のように動作する。図5はこの動作のフローチャートである。
先ず、区画S1、S2、S3・・・の各々毎に、頂点P1~4の座標に基づき加工テーブル11を介してプリント基板1を変位センサ17に対し相対移動させ、各頂点P1~4での変位量を変位センサ17で検出し、Z軸補正記憶部25に記憶する(ステップ100)。Z軸補正記憶部25の内容を図6に示す。
次に、区画S1、S2、S3・・・の各々毎にZ軸補正記憶部25から4つの頂点P1~4での変位量hを読出し、これらの変位量の平均hm(以下、平均変位量と呼ぶ)を求め、Z軸補正記憶部25に記憶する(ステップ200)。

【0017】
加工品質を確保するためには、レーザ照射ユニット13を適正なZ軸位置Zにする必要がある。そこで、次に区画S1、S2、S3・・・の各々毎に、その平均変位量hmに基づき適正なZ軸位置Zまで駆動するための補正値(以下Z軸補正値と呼ぶ)を求め、Z軸補正記憶部25記憶する(ステップ300)。
例えば、図6において平均変位量hmがhm1、hm2、hm3ならば、それぞれZ軸補正値はk1、k2、k3、という具合である。
なお、図6はZ軸補正記憶部25に記憶されたデータの相互の論理的関係を説明するためのものであり、各種のデータが必ずしも図示の通りに記憶されている必要はない。要は、上記した論理的関係で各区画S1、S2、S3・・・のそれぞれのZ軸補正値K1、K2、K3・・・が得られるようになっていればよい。
【0018】
このレーザ加工装置においては、上記のようにして全ての区画S1、S2、S3・・・のZ軸補正値K1、K2、K3・・・を求めたプリント基板1に穴あけ加工を行う場合、全体制御部19の制御の下で以下のように動作する。
図7は複数の区画の加工過程を説明するための図である。加工の順序は図3での矢印に示すように、区画S1、S2、S3の順に行われるものとする。図7において、相対移動N1とN2は、前の区画の加工が終了してガルバノスキャナ15の走査エリアを次の区画の最初の走査エリアに位置合わせするために、加工テーブル11を駆動する時間である。
【0019】
先ず、区画S1の加工については、レーザ照射ユニット13は適正な加工品質を確保できるようにZ軸位置が調整された状態で行われたものとする。本発明に従うと、区画S1の加工が終了したら相対移動N1を行っている期間において次の区画S2のためのZ軸補正値k2がZ軸補正記憶部25から読出され、照射ユニット駆動制御部22に与えられる。照射ユニット駆動制御部22はこのZ軸補正値k2に基づき照射ユニット駆動部18の位置決め動作を制御し、次の区画S2の加工を始める前までにレーザ照射ユニット13のZ軸位置を適正な加工品質を確保できる位置への位置決めを完了する。
また相対移動N2を行っている期間においては、同様にして次の区画S3の加工を始める前までにレーザ照射ユニット13のZ軸位置を適正な加工品質を確保できる位置への位置決めを完了する。
【0020】
以上の実施例によれば、プリント基板1の穴あけ位置が属する区画の変位量に基づいてレーザ照射ユニット13のZ軸位置を適正な加工品質を確保できる位置に位置決めしてから加工を行うので、加工テーブル11の平坦度と関係なく、全ての区画31において、穴あけ位置とレーザ照射ユニット13との間隔は集光レンズ15の焦点距離に対して適正なものとなり、加工品質を確保できる。
【0021】
また、以上の実施例においては、各区画31内の四辺形の4つの頂点P1~4での平均変位量に基づいてレーザ照射ユニット13のZ軸方向位置を調整するようにしたが、他の複数位置での平均変位量、あるいは各区画31内での中央P0での変位量に基づいて調整するようにしてもよい。
要は、区画内でのいずれの位置においても適正な加工品質を確保できるように、区画の各々の大きさ及び変位量の検出方法を定めればよい。
さらに、区画S1、S2、S3・・・の各々の大きさは等しいものの場合を説明したが、異なっていてもよい。例えば、一つのZ軸補正値で補正できるように区画を設定するようにしてもよい。
【0022】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は当該実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもなく、様々な変形例が含まれる。
【符号の説明】
【0023】
1:プリント基板、11:加工テーブル、12:テーブル駆動部、
13:レーザ照射ユニット、14:集光レンズ、15:レーザ発振器、
16:ガルバノスキャナ、17:変位センサ、18:照射ユニット駆動部、
19:全体制御部、20:テーブル駆動制御部、21:ガルバノスキャナ制御部、
22:照射ユニット駆動制御部、23:プログラム記憶部、24:頂点記憶部、
25:Z軸補正記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7