(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230523BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20230523BHJP
G06T 15/08 20110101ALI20230523BHJP
【FI】
A61B6/03 360E
A61B6/03 360G
A61B5/00 G
G06T15/08
(21)【出願番号】P 2019109844
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】500109320
【氏名又は名称】ザイオソフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 剛
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-106870(JP,A)
【文献】特開2006-192151(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055026(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102743185(CN,A)
【文献】特開2017-037391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、6/00-6/14
G06T 1/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得部及び処理部を備える医用画像処理装置であって、
前記取得部は、複数の時相の被検体のボリュームデータを取得する機能を有し、
前記処理部は、
時相方向における位置である時相位置と、3次元空間上の所定方向における位置である空間方向位置とで、直積集合が構成され、
前記3次元空間において互いに平行に、前記直積集合における第1の時相位置かつ第1の空間方向位置である第1の元に位置する第1の平面と、前記直積集合における第2の時相位置かつ第2の空間方向位置である第2の元に位置する第2の平面と、前記直積集合における第3の時相位置かつ第3の空間方向位置である第3の元に位置する第3の平面と、を指定し、
前記第1の平面において前記ボリュームデータの一部を示す
所定の関心領域である第1の2D領域を指定し、
前記第2の平面において前記ボリュームデータの一部を示す
前記関心領域である第2の2D領域を指定し、
前記第3の平面において前記ボリュームデータの一部を示す
前記関心領域である第3の2D領域を指定し、
前記直積集合において、前記第1の元と前記第2の元と前記第3の元を頂点とする
三角形に囲まれた範囲で、第4の時相位置かつ第4の空間方向位置である第4の元に位置し、前記第1の平面に平行な第4の平面において、前記第1の2D領域、前記第2の2D領域、及び前記第3の2D領域に基づく第4の2D領域を生成する、機能を有し、
少なくとも前記第1の時相位置と前記第2の時相位置とが異なり、
前記第1の空間方向位置と前記第2の空間方向位置と前記第3の空間方向位置とが異なる、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、複数の時相の複数の空間的な範囲で示される4D領域を生成し、
前記4D領域は、前記複数の時相のボリュームデータの一部を示す、前記第1の2D領域、前記第2の2D領域、前記第3の2D領域及び前記第4の2D領域を含む連続な4D領域である、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記複数の時相のボリュームデータのうち、前記4D領域に含まれる部位を表示部に表示させる、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記第2の時相位置と前記第3の時相位置とが異なる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記第2の時相位置と前記第3の時相位置とが同一であり、
前記処理部は、
前記ボリュームデータの一部を示す3D領域を指定し、
前記3D領域の存在する前記第1の平面に平行な平面のうち両端にある2の平面をそれぞれ、前記第2の平面、前記第3の平面とし、
前記第2の平面における前記3D領域に含まれる領域を、前記第2の2D領域とし、
前記第3の平面における前記3D領域に含まれる領域を、前記第3の2D領域とする、
請求項1~4のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、
前記直積集合において、前記第1の元、前記第2の元、及び前記第3の元の他に、少なくとも1つの他の元を指定し、
前記第1の元、前記第2の元、前記第3の元、及び少なくとも1つの前記他の元を頂点とする範囲で、前記第1の元、前記第2の元、前記第3の元、及び少なくとも1つの前記他の元のうち、いずれか3つの元を頂点とした複数の三角形の範囲において、前記三角形の範囲毎に、前記三角形の範囲の頂点となる3つの元に対応する3つの2D領域に基づいて、前記第4の平面において前記第4の2D領域を生成する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記時相は、循環するものであり、
前記直積集合において前記第1の時相位置、前記第2の時相位置、及び前記第3の時相位置を頂点とする範囲は、前記直積集合において循環する前記時相の開始時を跨ぐ、
請求項1~6のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記第1の平面、前記第2の平面、前記第3の平面、及び前記第4の平面は、
前記ボリュームデータに含まれるスライスデータの属する平面である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
医用画像処理方法であって、
時相方向における位置である時相位置と、3次元空間上の所定方向における位置である空間方向位置とで、直積集合が構成され、
複数の時相の被検体のボリュームデータを取得するステップと、
前記3次元空間において互いに平行に、前記直積集合における第1の時相位置かつ第1の空間方向位置である第1の元に位置する第1の平面と、前記直積集合における第2の時相位置かつ第2の空間方向位置である第2の元に位置する第2の平面と、前記直積集合における第3の時相位置かつ第3の空間方向位置である第3の元に位置する第3の平面と、を指定するステップと、
前記第1の平面において前記ボリュームデータの一部を示す
所定の関心領域である第1の2D領域を指定するステップと、
前記第2の平面において前記ボリュームデータの一部を示す
前記関心領域である第2の2D領域を指定するステップと、
前記第3の平面において前記ボリュームデータの一部を示す
前記関心領域である第3の2D領域を指定するステップと、
前記直積集合において、前記第1の元と前記第2の元と前記第3の元を頂点する
三角形に囲まれた範囲で、第4の時相位置かつ第4の空間方向位置である第4の元に位置し、前記第1の平面に平行な第4の平面において、前記第1の2D領域、前記第2の2D領域、及び前記第3の2D領域に基づく第4の2D領域を生成するステップと、
を有し、
少なくとも前記第1の時相位置と前記第2の時相位置とが異なり、
前記第1の空間方向位置と前記第2の空間方向位置と前記第3の空間方向位置とが異なる、
医用画像処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の医用画像処理方法をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医用画像を扱う画像処理装置において、画像診断装置により撮像された複数の断層画像の間を補間する補間画像を生成し、補間画像に基づいて三次元画像を生成することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、同一の構造体において空間的な複数の位置の間の位置に対応する補間画像を生成する。補間画像は、異なるタイミングで撮像されたボリュームデータに対しても、複数の時刻の間の時刻に対応する補間画像が生成可能であることが好ましい。また、補間画像を生成するための空間的な位置や時刻の基点が統一されていなくても、補間可能であることが好ましい。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてされたものであって、空間的且つ時間的にデータが抽出される領域を好適に補間できる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、取得部及び処理部を備える医用画像処理装置であって、前記取得部は、複数の時相のボリュームデータを取得する機能を有し、前記処理部は、時相方向における位置である時相位置と、3次元空間上の所定方向における位置である空間方向位置とで、直積集合が構成され、前記3次元空間において互いに平行に、前記直積集合における第1の時相位置かつ第1の空間方向位置である第1の元に位置する第1の平面と、前記直積集合における第2の時相位置かつ第2の空間方向位置である第2の元に位置する第2の平面と、前記直積集合における第3の時相位置かつ第3の空間方向位置である第3の元に位置する第3の平面と、を指定し、前記第1の平面において前記ボリュームデータの一部を示す所定の関心領域である第1の2D領域を指定し、前記第2の平面において前記ボリュームデータの一部を示す前記関心領域である第2の2D領域を指定し、前記第3の平面において前記ボリュームデータの一部を示す前記関心領域である第3の2D領域を指定し、前記直積集合において、前記第1の元と前記第2の元と前記第3の元を頂点とする範囲で、第4の時相位置かつ第4の空間方向位置である第4の元に位置し、前記第1の平面に平行な第4の平面において、前記第1の2D領域、前記第2の2D領域、及び前記第3の2D領域に基づく第4の2D領域を生成する、機能を有し、少なくとも前記第1の時相位置と前記第2の時相位置とが異なり、前記第1の空間方向位置と前記第2の空間方向位置と前記第3の空間方向位置とが異なる、医用画像処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、空間的且つ時間的にデータが抽出される領域を補間できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態における医用画像処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図
【
図2】医用画像処理装置の機能構成例を示すブロック図
【
図12】比較例における被検体の画像の空間的な分布及び時間的な分布を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
(本開示の一態様を得るに至った経緯)
CT装置は、被検体を撮像して被検体のボリュームデータを得る。ボリュームデータは、例えば被検体における所定の面の位置を被検体の体軸に沿って移動させながら、空間的に異なる面上のボクセル値を得る。また、CT装置は、異なるタイミングで被検体を撮像し、時相の異なる複数のボリュームデータを生成することも可能である。つまり、CT装置は、複数のタイミングで、被検体において空間的に異なる面の画像を得ることができ、複数の空間的な位置で、被検体において時間的に異なるタイミングの断層画像(スライスデータ)を得ることができる。
【0011】
図12は、比較例における被検体の画像の空間的な分布及び時間的な分布を示している。
図12では、横軸方向に時相の相対値が示され、縦方向に短軸(SA:short axis)画像の番号が示されている。
図12では、横方向及び縦方向に沿う長方形の4隅の位置(
図12の「○」印参照)が、ユーザに指定される。比較例の医用画像処理装置は、ユーザ指定された4隅の位置に対応する4つのスライスデータを取得し、スライスデータにおいて2D領域を作成し、特許文献1の技術を適用することによって短軸方向に補間し、2D領域から3D領域を作成する。さらに、同様に、時相方向に補間し、3D領域から4D領域を作成する。ここでの各領域は、スライスデータにおいて各種処理の対象とされる領域である。
【0012】
しかし、この場合、2つの時相の位置が一致し、2つの体軸方向の位置が一致する4点を指定する必要がある。また、4隅の領域は、ユーザ手動により生成する必要があるが、その位置での領域をユーザが確信を持って指定できるとは限らない。また、補間を行うための時相方向と体軸方向とで規定された領域(補間対象領域)の形状は、長方形の形状に限られ、観察対象の時間的又は空間的な動きが特殊である場合、時相方向及び体軸方向を加味した領域を高精度に生成することができず、領域による抽出精度が不十分となり、ユーザによる観察精度が不十分になり得る。また、移動しながら変形する対象の4D領域は、4隅の領域が空領域であることがあるが、この手法では対応できない。
【0013】
以下の実施形態では、空間的且つ時間的にデータが抽出される領域を好適に補間できる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムについて説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における医用画像処理装置100の構成例を示すブロック図である。医用画像処理装置100は、ポート110、UI120、ディスプレイ130、プロセッサ140、及びメモリ150を備える。
【0015】
医用画像処理装置100には、CT装置200が接続される。医用画像処理装置100は、CT装置200からボリュームデータを取得し、取得されたボリュームデータに対して処理を行う。医用画像処理装置100は、PCとPCに搭載されたソフトウェアにより構成されてもよい。
【0016】
CT装置200は、被検体へX線を照射し、体内の組織によるX線の吸収の違いを利用して、画像(CT画像)を撮像する。被検体は、生体、人体、動物、等を含んでよい。CT装置200は、被検体内部の任意の箇所の情報を含むボリュームデータを生成する。CT装置200は、CT画像としてのボリュームデータを医用画像処理装置100へ、有線回線又は無線回線を介して送信する。CT画像の撮像には、CT撮像に関する撮像条件や造影剤の投与に関する造影条件が考慮されてよい。なお、ボリュームデータは、被検体の体軸方向に沿った断層画像(スライスデータ)が積層されることで表現される。ボリュームデータの代わりにスライスデータが、医用画像処理装置100へ送られ、医用画像処理装置100内にてスライスデータを基にボリュームデータが生成されてもよい。ここでは、医用画像処理装置100がCT装置200からボリュームデータを取得することを例示するが、スライスデータを取得する場合も適用可能である。
【0017】
医用画像処理装置100内のポート110は、通信ポートや外部装置接続ポート、組み込みデバイスへの接続ポートを含み、CT装置200で得られたボリュームデータを取得する。取得されたボリュームデータは、直ぐにプロセッサ140に送られて各種処理されてもよいし、メモリ150において保管された後、必要時にプロセッサ140へ送られて各種処理されてもよい。また、ボリュームデータは、記録媒体や記録メディアを介して取得されてもよい。また、ボリュームデータはスライスデータ、中間データ、圧縮データやシノグラムの形で取得されてもよい。また、ボリュームデータは医用画像処理装置100に取り付けられたセンサーデバイスからの情報から取得されてもよい。ポート110は、ボリュームデータ等の各種データを取得する取得部として機能する。
【0018】
UI120は、タッチパネル、ポインティングデバイス、キーボード、又はマイクロホンを含んでよい。UI120は、医用画像処理装置100のユーザから、任意の入力操作を受け付ける。ユーザは、医師、放射線技師、学生、又はその他医療従事者(Paramedic Staff)を含んでよい。
【0019】
UI120は、各種操作を受け付ける。例えば、ボリュームデータやボリュームデータに基づく画像(例えば後述する3次元画像、2次元画像)における、関心領域(ROI)の指定や輝度条件の設定等の操作を受け付ける。関心領域は、各種組織(例えば、血管、気管支、臓器、器官、骨、脳)の領域を含んでよい。組織は、病変組織、正常組織、腫瘍組織、等を含んでよい。
【0020】
ディスプレイ130は、例えばLCDを含んでよく、各種情報を表示する。各種情報は、ボリュームデータから得られる3次元画像や2次元画像を含んでよい。3次元画像は、ボリュームレンダリング画像、サーフェスレンダリング画像、仮想内視鏡画像、仮想超音波画像、CPR画像、等を含んでもよい。ボリュームレンダリング画像は、レイサム(RaySum)画像、MIP画像、MinIP画像、平均値画像、又はレイキャスト画像を含んでもよい。2次元画像は、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像、MPR画像、等を含んでよい。
【0021】
メモリ150は、各種ROMやRAMの一次記憶装置を含む。メモリ150は、HDDやSSDの二次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、USBメモリやSDカードの三次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、各種情報やプログラムを記憶する。各種情報は、ポート110により取得されたボリュームデータ、プロセッサ140により生成された画像、プロセッサ140により設定された設定情報、各種プログラムを含んでもよい。メモリ150は、プログラムが記録される非一過性の記録媒体の一例である。
【0022】
プロセッサ140は、CPU、DSP、又はGPUを含んでもよい。プロセッサ140は、メモリ150に記憶された医用画像処理プログラムを実行することにより、各種処理や制御を行う処理部160として機能する。
【0023】
図2は、処理部160の機能構成例を示すブロック図である。処理部160は、領域処理部161、画像生成部162、及び表示制御部163を備える。なお、処理部160に含まれる各部は、1つのハードウェアにより異なる機能として実現されてもよいし、複数のハードウェアにより異なる機能として実現されてもよい。また、処理部160に含まれる各部は、専用のハードウェア部品により実現されてもよい。
【0024】
領域処理部161は、例えばポート110を介して、被検体のスライスデータを取得し、スライスデータを積層してボリュームデータとできる。スライスデータで定義される平面は、体軸方向と垂直でよい。領域処理部161は、ボリュームデータやスライスデータに含まれる任意の領域のデータを抽出するための領域(例えばマスク領域)を生成する。この領域は、平面的な領域(2D領域)の単位で生成され、同一時相の空間的な範囲で積層することによって3D領域とされたり、同一平面の時間的な範囲で示される2D+T領域とされたり、異なる時相の異なる空間的な範囲で示される4D領域とされる。よって、4D領域は、各スライスデータにおける2D領域を時相方向及び体軸方向に配列して得られる領域である。これらの2D領域、3D領域、4D領域、等は、各種処理(例えば表示、体積の算出、体積の推移、画素値の評価、形状の評価、病変の評価)の対象とされる処理領域である。
【0025】
領域処理部161は、例えばボリュームデータやスライスデータのボクセル値に基づいて、自動で関心領域を指定し、関心領域として領域を抽出してよい。領域処理部161は、例えばUI120を介して、手動で関心領域を指定し、関心領域として領域を抽出してよい。関心領域は、例えば心臓の領域を含んでよい。心臓は、拍動により周期的に形状が変化する。関心領域は、臓器の少なくとも一部であってよいし、病変や腫瘍であってもよい。
【0026】
領域はマスク領域で表現されてよく、マスク領域は、ボリュームデータやスライスデータのボクセルに1対1対応するビットの集合で表現されてよい。マスク領域は、任意の形状となるように設定されてよい。マスク領域は、複数存在してよい。マスク領域の内部は、レンダリング対象とされ、マスク領域の外部は、レンダリング対象外とされる。マスク領域毎に異なる色彩やボクセル値に対応した不透明度の設定をしてもよい。マスク処理を利用した画像生成については、例えば参考特許文献1に開示されている。また、領域は、プリミティブオブジェクトやその組み合わせ、サーフィスに囲まれた領域等、既知の方法によって表現されてよい。
(参考特許文献1:特許第4188900号公報)
【0027】
ボリュームデータは、時相の異なる複数のボリュームデータでよく、時系列に並ぶ複数のボリュームデータでよい。時相とは、広義の時系列上の複数のボリュームデータのそれぞれの撮像時刻のことを指す。この撮像時刻は等間隔である必要は無い。また、時相は、心電同期や呼吸同期によって循環する時相を含んでよい。一つのボリュームデータを作成するために同一の時相について複数回の撮影が行われてよい。例えば、時相の異なる複数のボリュームデータは、循環する複数のフェーズを有するボリュームデータを含んでよく、心電同期により1つのフェーズのボリュームデータを生成するために時間間隔を空けて複数撮像する場合を含み得る。被検体を含む複数の時相のボリュームデータは、被検体の動きが表現された動画(4Dデータ)を構成する。
【0028】
領域処理部161は、時相が同一又は異なる複数のボリュームデータに含まれるスライスデータ(平面のデータの一例)をマッピングするためのマップMPを生成してよい。マップMPは、時相方向(t方向)の位置(時相位置)を規定するt軸と、空間方向を規定するz軸と、を少なくとも備える。z軸は、体軸方向でよい。なお、ボリュームデータ又はスライスデータを平面的に表現する手段として、スライスデータではなく、MPRやオブリーク、その他のデータが用いられてもよい。この場合、z軸はMPRやオブリークの向きに準じる。また、MRIでみられるように、z軸とスライス面は必ずしも垂直である必要が無い。
【0029】
領域処理部161は、ボリュームデータに付加された付加情報を取得してよい。付加情報は、ボリュームデータやスライスデータが撮像された時相(時相位置)を示す情報、体軸方向におけるスライスデータの位置(体軸位置)を示す情報、等を含んでよい。よって、領域処理部161は、付加情報に基づいて、各スライスデータをマップMPにおける各時相位置及び各体軸位置に配置可能である。スライスデータがマップMP上にマッピングされる位置を、マップ位置とも称する。マップ位置は、時相位置(t方向の位置)と空間位置(z方向の位置)とで特定される。
【0030】
したがって、マップMPは、直積集合の一例である。時相位置は、第1の集合の元の一例である。体軸位置は、第2の集合の元の一例である。マップ位置は、各集合の元を取り出して組にしたものの一例であり、直積集合の元の一例である。マップMPは、時相位置と体軸位置の組からなるリストで表現してもよいし、時相位置と体軸位置を添え字とする多次元配列として表現してもよい。また、マップMPは、付加的な情報を組み合わせて表現してもよい。
【0031】
領域処理部161は、マップMPにおいて2D領域を補間するための時相方向と体軸方向とで規定された領域(補間対象領域)を生成してよい。補間対象領域の形状は任意であり、例えば三角形状である。領域処理部161は、UI120を介してユーザ指示を受け、補間対象領域の輪郭の一部(例えば三角形の頂点)となるマップ位置を複数指定してよい。例えば補間対象領域の形状を三角形状とする場合、マップ位置を3つ指定し、指定された3つのマップ位置を頂点とする三角形の補間対象領域を生成してよい。指定される複数のマップ位置では、マップ位置を特定する複数の時相位置のうち少なくとも2つが異なり、マップ位置を特定する複数の体軸位置のうち少なくとも2つが異なる。
【0032】
領域処理部161は、指定されたマップ位置に対応するスライスデータ(指定スライスデータとも称する)を取得する。指定スライスデータにおいて、2D領域を指定する。この2D領域は、UI120を介して手動で指定されてもよいし、例えば関心領域の自動抽出により自動で指定されてもよい。
【0033】
領域処理部161は、ボリュームデータの付加情報を参照し、補間対象領域の内側に存在する補間対象のマップ位置を抽出する。抽出されたマップ位置は、複数存在してよい。領域処理部161は、抽出されたマップ位置に対応する補間対象のスライスデータを取得する。補間対象のスライスデータにおいて、2D領域を補間して生成する。この場合、複数の指定スライスデータにおいて指定された複数の2D領域に基づいて、例えば2D領域の位置や後述する寄与率に基づいて、補間対象スライスデータにおける2D領域を補間して生成してよい。領域処理部161は、指定された複数の2D領域の間を空間的に(空間における所定方向に)補間してよく、時間的に(時相方向に)補間してよく、空間的且つ時間的に補間してもよい。2D領域の補間数は任意である。なお、2D領域の補間は、例えば、参考特許文献2に記載された補間と同様の方法で行われてもよく、その他の方法(例えば各種モーフィングのアルゴリズムやLevelSet法やSnake法)で行われてもよい。
(参考特許文献2:特許第5897308号公報)。
【0034】
領域処理部161は、指定された2D領域が、補間される2D領域に対して寄与する場合の寄与に関する情報(例えば寄与率)を算出してよい。寄与率は、例えば、線形補間の他、バイキュービック法を用いて算出されてよい。例えば、指定された2D領域の面積や3次元空間における位置が、上記の寄与に加味されてよい。
【0035】
画像生成部162は、各種画像を生成する。画像生成部162は、取得されたボリュームデータの少なくとも一部(例えば領域抽出データ)に基づいて、3次元画像や2次元画像を生成する。3次元画像や2次元画像では、マスク領域を描画対象としてよい。また、画像生成部162は、マスク領域に含まれる各ボクセルで表現される補間画像を生成してよい。また、画像生成部162は、処理領域に含まれるデータに基づいて、画像を生成してよい。
【0036】
表示制御部163は、各種データ、情報、画像をディスプレイ130に表示させる。画像は、画像生成部162で生成された画像を含み、補間された2D領域を含む処理領域を加味して生成された画像を含む。
【0037】
次に、具体的な2D領域MRの補間例について説明する。なお、指定されたマップ位置をマップ位置P1やP1x(xは任意の整数や文字や記号、以下同様)(P1の一例)とも記載し、補間対象のマップ位置をマップ位置P2やP2x(P2の一例)とも記載する。指定されるスライスデータをスライスデータSl1やSl1x(Sl1の一例)とも記載し、補間対象のスライスデータをスライスデータSl2やSl2x(Sl2の一例)とも記載する。指定される2D領域を2D領域MR1やMR1x(MR1の一例)とも記載し、補間対象の2D領域を2D領域MR2やMR2x(MR2の一例)とも記載する。なお、本実施形態で用いられた符号について、図面中での図示が省略されることもある。
【0038】
図3は、2D領域の第1補間例を示す図である。
図3では、t方向が時間方向(時相方向)を示しており、z方向が体軸方向(空間における所定方向の一例)を示している。
図3のマップMPでは、3つのマップ位置P11~P13が指定される。マップ位置とその体軸位置(zの値に相当)及び時相位置(tの値に相当)を加味して、マップ位置をP(z,t)とも記載する。
図3では、P11(z11,t11)、P12(z12,t12)、及びP13(z13,t13)とする。マップ位置P11には、スライスデータSl11が配置され、スライスデータSl11には2D領域MR11が指定される。マップ位置P12には、スライスデータSl12が配置され、スライスデータSl12には2D領域MR12が指定される。マップ位置P13には、スライスデータSl13が配置され、スライスデータSl13には2D領域MR13が指定される。指定されるスライスデータSl11~Sl13と2D領域MR11~MR13とは、実線で示されている。
【0039】
領域処理部161は、指定されたマップ位置P11~P13を基に、マップMPにおいて補間対象領域AR1を生成する。ここでは、補間対象領域AR1の形状は、マップ位置P11~P13をそれぞれ直線で結ぶ三角形である。領域処理部161は、補間対象領域AR1の内側にあるマップ位置P21~P24を取得し、マップ位置P21~P24に対応するスライスデータSl21~Sl24を取得する。ここでは、P21(z21,t21)、P22(z22,t22)、P23(z23,t23)、及びP24(z24,t24)とする。そして、領域処理部161は、指定された2D領域MR11~MR13に基づいて、スライスデータSl21において2D領域MR21を補間して生成し、スライスデータSl22において2D領域MR22を補間して生成し、スライスデータSl23において2D領域MR23を補間して生成し、スライスデータSl24において2D領域MR24を補間して生成する。補間対象のスライスデータSl21~Sl24と補間される2D領域MR21~MR24とは、破線で示されている。
【0040】
なお、補間対象領域AR1の内側とは、補間対象領域AR1の輪郭上又は輪郭より内側であり、
図3では三角形の辺上及び辺よりも内側を含んでよい。2D領域が補間される補間対象のマップ位置P2(例えばP21~P24)の数は、補間される2D領域MRの数と同数であり、任意である。指定されるマップ位置P1及び補間対象のマップ位置P2は、z方向(体軸方向)における位置(体軸位置)が同じでも異なってもよいし、t方向(時相方向)における位置(時相位置)が同じでも異なってもよい。例えば、指定される複数のマップ位置P1~P3について、体軸位置z11,z12が少なくとも異なり、体軸位置z11又はz12と体軸位置z13とは同じでも異なってもよい。また、例えば、時相位置t11,t12が少なくとも異なり、時相位置t11又はt12と時相位置t13とは同じでも異なってもよい。
【0041】
このように、医用画像処理装置100は、t方向への補間によって時間的に2D領域を補間でき、z方向への補間によって空間的に2D領域を補間できる。そして、空間方向及び時間方向の2D領域を積層することによって、4D領域を得ることができる。
【0042】
図4は、2D領域の第2補間例を示す図である。第2補間例では、第1補間例と同様の処理については、その説明を省略又は簡略化することがある。以降の補間例でも同様である。
【0043】
図4では、多数の2D領域が指定された場合の2D領域の補間例を示している。
図4では、マップ位置P1が7つ(複数の一例)指定されている。領域処理部161は、マップMPにおいて、7つのマップ位置P1を頂点として補間対象領域AR2を生成する。そして、領域処理部161は、7つのマップ位置P1の少なくとも一部をドロネー分割し、7つのマップ位置P1のうちの各々の3つのマップ位置P2によって、複数の三角形ARTを生成する。つまり、補間対象領域AR2を複数の三角形ART(部分的な補間対象領域の一例)に分割している。各三角形ARTの内側における各マップ位置P2の取得、各スライスデータSl2の取得、及び各スライスデータSl2における2D領域MR2の補間、生成については、
図3に示した三角形が補間対象領域AR1とされた第1補間例と同様の方法で行われてよい。つまり、第2補間例は、1補間例による補間の複数の組み合わせにより実現できる。
【0044】
また、指定されたマップ位置P1のうち、マップ位置P14a、P14b(それぞれP1の一例)は時相位置が一致し、マップ位置P14b,P14cは体軸位置が一致し、マップ位置P14c,P14d(それぞれP1の一例)は時相位置が一致し、マップ位置P14a,P14dは体軸位置が一致している。この場合、マップ位置P14a~P14dに包囲された領域は、マップMPにおいて長方形ARQ(部分的な補間対象領域の一例)を形成しており、比較例における4隅の位置を指定した場合と同じである。よって、マップ位置P14a~P14dに包囲された領域内では、例えば比較例と同じ公知の手法を用いて、補間対象の各2D領域MR2の補間及び生成が可能である。
【0045】
なお、マップ位置P14a~P14dも含めて、ドロネー分割して補間対象領域AR2を分割し、第2補間例の補間処理を実施してもよい。
【0046】
このように、補間対象領域AR2を複数の三角形に分割して2D領域MR2を補間して生成することで、補間対象領域AR2が複雑な形状を有する場合でも、単純な形状の複数の補間対象領域に分割でき、補間処理を単純処理の組み合わせにすることができる。なお、補間対象領域AR2を生成するためのマップ位置P1の指定数を多くすることで、ユーザ所望の補間対象領域の形状と変化(例えば観察対象の組織の形状と変化)に一層近づけることができる。この場合でも、容易に2D領域MR2を補間可能であり、補間対象領域AR2の分割により補間精度も向上できる。
【0047】
図5は、2D領域の第3補間例を示す図である。
図5では、3D領域が指定される場合の2D領域の補間例を示す。3D領域は、同一の時相(時相位置)における複数のスライスデータにおいて指定される。領域処理部161は、3D領域を、UI120を介して手動で指定してもよいし、自動的に抽出して指定してもよい。また、3D領域の含まれる複数のスライスデータの空間方向の範囲を3次元範囲R3とする。
図5では、3次元範囲R3は、t方向に同一の時相位置(例えば時相位置t15)でz方向に所定の範囲に広がる領域に含まれる複数(例えば5つ)のマップ位置(例えば5つのマップ位置P15a,P15b,P15c,P15d,P15e)に対応する複数のスライスデータ(例えば5つのスライスデータSl15a,Sl15b,Sl15c,Sl15d,Sl15e)で示される複数の平面を含む空間の範囲である。3次元範囲R3は、スライスデータを体軸方向に任意の数だけ組み合わせた範囲でよい。
【0048】
領域処理部161は、3D領域MR3を指定してよい。3D領域MR3は、3D領域MR3の全体がUI120を介して指定されたものでよい。領域処理部161は、3D領域MR3のz方向の両端のマップ位置z15a,z15eのスライスデータSl15a,Sl15eのそれぞれにおいて2D領域MR15a,MR15eを指定し、その間のスライスデータSl15b,Sl15c,Sl15dにおける2D領域MR15b,MR15c,MR15dを補間し、これらの2D領域を合成することで3D領域MR3を指定してよい。この場合、両端のマップ位置z15a,z15eの時相位置は同じであるので、従来の手法を用いて2D領域MR15b,MR15c,MR15dを補間し、3D領域MR3を生成してよい。
【0049】
領域処理部161は、指定されたマップ位置P16と指定された3次元範囲R3の両端部に対応するマップ位置P15a,P15eに基づいて、マップMPにおいて補間対象領域AR3を生成する。ここでは、補間対象領域AR3の形状は、マップ位置P16,P15a,P15eをそれぞれ直線で結ぶ三角形である。マップ位置P16には、スライスデータSl16が配置され、スライスデータSl16には2D領域MR16が指定される。領域処理部161は、補間対象領域AR1の内側にある各マップ位置P2を抽出し、各マップ位置P2に対応する各スライスデータSl2を取得する。そして、領域処理部161は、指定された2D領域MR16及び3D領域MR3に基づいて、各スライスデータSl2において各2D領域MR2を補間して生成してよい。例えば、指定された2D領域MR16及び3D領域MR3のz方向の両端の2D領域MR15a,MR15eに基づいて、各スライスデータSl2において各2D領域MR2を補間して生成してもよい。
【0050】
このように、所定の時相において指定された3次元範囲R3を用いて、マップMP3における補間対象領域AR3を生成でき、多数のスライスデータSL1を指定しなくて済むまた、3次元範囲R3における3D領域MR3を用いることで、多数の2D領域MR1を生成しなくて済む。また、既存の3D領域抽出アルゴリズムを利用できる。また、領域処理部161は、UI120を介してユーザが作成した(指定した)3D領域MR3に対応するマップ位置P1を、補間対象領域AR3を生成するためのマップ位置の1つとして扱ってよい。この場合、多数の2D領域を用いる第2補間例を適用して、2D領域MR2を生成できる。
【0051】
図6は、2D領域の第4補間例を示す図である。
図6では、複数の3D領域MR31,MR32が指定され、複数の3次元範囲R31,R32が指定されている。3次元範囲R31,R32(3次元範囲R31,R32に対応するマップ位置)は、マップMPにおいて、異なる時相位置に配置され、更に体軸方向における範囲(体軸範囲)が異なっている。領域処理部161は、複数の3次元範囲R31,R32に基づいて、補間対象領域AR4を生成する。
図6では、3次元範囲R31,R32の両端部に対応するマップ位置を直線で接続して、補間対象領域AR4を生成している。補間対象領域AR4の内側において、補間対象のマップ位置P2を抽出し、マップ位置P2に対応する補間対象のスライスデータSl2を取得し、スライスデータSl2における2D領域MR2を補間して生成する。3次元範囲R31において3D領域MR31が指定される。3次元範囲R32において3D領域MR32が指定される。
【0052】
3D領域MR31,32は、マップMPにおいて、共通する体軸範囲が存在する場合、その体軸範囲の両端が位置する2つの体軸位置と、3D領域MR31,MR32が位置する2つの時相位置と、によって囲まれる領域は、長方形ARQとなる。この長方形ARQの範囲は、補間対象領域AR4の一部となる。領域処理部161は、この長方形ARQの範囲では、マップMPにおける4隅を指定する比較例の場合と同様であるので、例えば比較例と同じ公知の手法を用いて、2D領域MR2を補間して生成してよい。また、3次元範囲R31,R32の範囲に含まれるマップ位置は、指定された複数のマップ位置P1の少なくとも1つに相当する。マップMPにおいて補間対象領域AR4における長方形ARQの範囲の外側では、指定したマップ位置P1が複数の三角形ART1,ART2を形成する場合と同じとなる。よって、領域処理部161は、この三角形ART1,ART2の部分では、第1補間例や第2補間例を適用して2D領域MR2を生成してよい。
【0053】
このように、複数の3D領域MR31,MR32が存在し、この3D領域MR31,MR32において共通する体軸範囲が存在する場合、公知の手法を用いた補間を行うことで、補間対象領域AR4が単純な緒方形等の形状でなくても、補間に係る処理負荷を低減できる。
【0054】
図7は、2D領域の第5補間例を示す図である。
図7では、2つのマップ位置P18,P19が指定されている。マップ位置P18,P19では、マップMPにおいて時相位置が異なり、体軸位置が異なる。領域処理部161は、マップ位置P18,P19に基づいて補間対象領域AR5を生成する。例えばマップ位置P18,P19を直線で結ぶ領域を補間対象領域とする。領域処理部161は、マップ位置P18,P19におけるスライスデータSl18,Sl19を取得し、スライスデータSl18,Sl19における2D領域MR18,MR19を指定する。領域処理部161は、マップ位置P18,P19における補間対象領域AR5の内側にあるマップ位置P2を取得し、マップ位置P2に対応するスライスデータSl2を取得する。領域処理部161は、指定された2D領域MR18,MR19に基づいて、スライスデータSl2において2D領域MR2を補間して生成する。
【0055】
このように、医用画像処理装置100は、時相位置及び体軸位置が異なる2つのマップ位置における2つのスライスデータで指定された2つの2D領域を基に、補間対象領域において2D領域を補間できる。
【0056】
なお、各補間例は、組み合わせて実施されてもよい。
【0057】
次に、医用画像処理装置の動作例について説明する。
以下の動作例では、例えば下記の記号を用いて説明する。例えば、「t」は、時相に付されたインデックス番号(整数)であり、時相(時相位置)の識別情報の一例である。「z」は、スライスデータ(断層画像)のインデックス番号(整数)であり、スライスデータの識別情報の一例であり、体軸位置の識別情報の一例である。「Sl(z,t)」は、時相t(時相位置t)でz番目(体軸位置z)のスライスデータを示す。「P(z,t)」は、マップMPにおける時相tでz番目のスライスデータが位置するマップ位置である。「MR(z,t)」は、Sl(z,t)における2D領域である。
【0058】
図8は、第1補間処理の一例を示すフローチャートである。
図8では、マップMPにおける2つの指定されたマップ位置P1での2つの2D領域MR1を基に、2つの指定されたマップ位置P1の間に位置する補間対象のマップ位置P2での2D領域MR2を生成することを例示する。
図8は、
図7を用いて説明した第5補間例の処理例を示す。なお、補間や領域に関する処理は、主に領域処理部161で実施され、以降の補間処理の例でも同様である。
【0059】
例えばUI120を介して、スライスデータSl18(z18,t18)及びS119(z19,t19)について、2D領域MR18(z18,t118)及びMR19(z19,t19)をそれぞれ指定する(S11)。この場合、z18≠z19、且つ、t18≠t19とする。マップ位置P18(z18,t18)及びP19(z19,t19)を繋ぐ線分を仮定する。この線分の領域が、マップMPにおいて補間対象領域AR5となる。そして、例えばBresenhamのアルゴリズムに従って、仮定された線分をマップMP上の離散的な点群ListPとして導出する(S12)。点群ListPに含まれる各マップ位置Pi(z,t)について、a=(Pi-P18)/(P19-P18)として、2D領域MR18の寄与率をa-1、2D領域MR19の寄与率をaとして算出する(S13)。ここでは、P18、P19、Pi等のマップMP上の位置を用いて算出している。補間対象の各マップ位置Pi(z,t)において2D領域MRi(z,t)(2D領域MR2の一例)を、ここでは2D領域MR18,MR19を、それぞれの寄与率をもって補間処理を行って生成する(S14)。S14の処理後、変数iをインクリメントし(S15)、マップ位置P18及びP19の間においてiが終点となるまで、つまり取得されたスライスデータが存在するマップ位置がなくなるまで、S13,S14の処理を反復する。
【0060】
図9は、第2補間処理の一例を示すフローチャートである。
図9では、マップMPにおける3つの指定されるマップ位置P1での3つの2D領域MR1を基に、補間対象領域における補間対象のマップ位置P2での2D領域MR2を生成することを例示する。
図9は、
図3を用いて説明した第1補間例の処理例を示す。
【0061】
例えばUI120を介して、スライスデータSl11(z11,t11)、Sl12(z12,t12)及びSl13(z13,t13)について、2D領域MR11(z11,t11)、MR12(z2,t2)及びMR3(z3,t3)をそれぞれ指定する(S21)。この場合、z11≠z12≠z13、且つ、t11≠t12≠t13とする。マップMP(zt平面)において、マップ位置P11(z11,t11)、P12(z12,t12)及びP13(z13,t13)を頂点とする三角形(補間対象領域AR1の一例)に含まれる点群ListPを導出する。点群ListPは、補間対象領域AR1に含まれる点(マップ位置)の集合を示す。マップ位置P11、P12及びP13を頂点とする三角形の面積AEを算出する(S23)。
【0062】
点群ListPに含まれる任意のマップ位置Pi(zi,ti)について、マップ位置P11,P12,Piを頂点とする三角形の面積A3、マップ位置P11,P13,Piを頂点とする三角形の面積A2、及び、マップ位置P12,P13,Piを頂点とする三角形の面積A1を算出する(S24)。補間対象領域AR1としての三角形の領域全体に対する2D領域MR11の寄与率としてA1/AEを算出し、領域全体に対する2D領域MR12の寄与率としてA2/AEを算出し、領域全体に対する2D領域MR13の寄与率としてA3/AEを算出する(S25)。2D領域MR11,MR12,MR13及びこれらの寄与率としてのA1/A,A2/A,A3/Aに基づいて、補間対象領域AR1の内側のマップ位置Piでの2D領域MRi(zi,ti)を補間して生成する(S26)。S26の処理後、変数iをインクリメントし(S27)、点群ListPに含まれる任意のマップ位置Piにおいてiが終点となるまで(他のマップ位置Piがなくなるまで)、つまり取得されたスライスデータが存在するマップ位置がなくなるまで、S24,S25,S26の処理を反復する。
【0063】
第2補間処理によれば、医用画像処理装置100は、例えばユーザが3つの2D領域MR11~MR13を指定すると、空間的及び時間的にこの3つのスライスデータに囲まれる補間対象領域AR1を充填するように2D領域を補間して生成でき、4D領域を生成できる。この場合、ユーザが2D領域を指定した3つのスライスデータの空間位置(例えば体軸位置)及び時間位置(例えば時相位置)のいずれも一致していない場合でも、4D領域を生成できる。
【0064】
図10は、第3補間処理の一例を示すフローチャートである。
図10では、マップMPにおける多数の指定されるマップ位置P1での多数の2D領域MR1を基に、補間対象領域AR2における補間対象のマップ位置P2での2D領域MR2を生成することを例示する。
図10は、
図4を用いて説明した第2補間例の処理例を示す。
【0065】
例えばUI120を介して、n個のスライスデータSl[0]~Sl[n-1](スライスデータSl1の一例)において、2D領域MR[0]~MR[n-1](2D領域MR1の一例)をそれぞれ指定する(S31)。マップMP(zt平面)において、スライスデータSl[0]~Sl[n-1]に対応するマップ位置P[0]~P[n-1](マップ位置P1の一例)を取得し、マップ位置P[0]~P[n-1]を用いてドロネー分割し、マップ位置P[0]~P[n-1]のうちのそれぞれの3点を用いて複数の三角形ARTを含む三角形群ListARTを生成する(S32)。例えば、マップ位置P[0],P[1],P[2]を用いて1つの三角形ART11を生成し、マップ位置P[3],P[4],P[5]を用いて1つの三角形ART12を生成し、P[0],P[1],P[6]を用いて1つの三角形ART13を生成し、P[2],P[7],P[8]を用いて1つの三角形ART14を生成する、などを繰り返す。生成された複数の三角形ARTにより補間対象領域AR2が形成されてよい。三角形群ListARTに含まれる各三角形ARTの頂点を構成する各マップ位置P1、及び各マップ位置P1で指定される各2D領域MR1に基づいて、補間対象領域AR2における補間対象の各マップ位置P2での2D領域MR2を補間して生成する(S33)。つまり、
図9に示した1つの三角形に対する補間処理(例えば
図9に示したS22~S27)を各三角形において反復することで、多数の三角形に対する補間処理を行うことができる。
【0066】
第3補間処理によれば、マップMPにおいて、指定された多数のマップ位置P1をドロネー分割等により複数の部分的な補間対象領域(例えば三角形ARTの領域)を生成し、部分的な補間対象領域の内部において2D領域MR2を補間して生成可能である。そして、部分的な補間対象領域を含む全体の補間対象領域AR2において同様の処理を行うことで、2つや3つのマップ位置P1での2D領域MR1が指定された場合と同様に、多数のマップ位置P1での2D領域MR1が指定された場合においても2D領域MR2を補間できる。
【0067】
このように、医用画像処理装置100によれば、ユーザは、例えばUI120を用いて所定の複数のマップ位置P1でのスライスデータSl1において2D領域MR1を指定して、補間対象のマップ位置P2でスライスデータSl2において2D領域MR2を生成できる。これにより、ユーザは、指定された2D領域MR1と補間された2D領域MR2とを合わせて、4D領域を容易に生成できる。例えば、マップMPにおいて体軸方向及び時相方向において任意に指定された少なくとも2つ又は3つの2D領域MR1をUI120を介して生成し、生成された2D領域MR1を基に、マップMPにおいて2D領域MR2を空間方向且つ時間方向に補間し、4D領域を生成できる。また、指定されるマップ位置P1における体軸位置と時相位置とがどれも一致していない場合でも、補間できる。また、医用画像処理装置100による補間処理は、3D領域を自動抽出するアルゴリズムを有していない場合や、被検体において特殊な計測をしたい場合に有効である。これによって、ユーザは、体軸位置と時相位置にかかわらず観察対象の形状が顕著なスライスデータSl1において、2D領域MR1を指定して4D領域を生成できる。
【0068】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0069】
例えば、心電同期で撮影された心臓の拍動を表現する4Dデータのように、4Dデータの時相が反復するようなデータである場合、領域処理部161は、時相のデータが循環する箇所を跨ぐように2D領域MR2を補間してよい。例えば、時相位置ta~tcのデータが反復する場合、時相位置tcのデータの次に時相位置taのデータが配列されていることを考慮して、時相位置tcのデータと時相位置taのデータとの間を補間してよい。
【0070】
図11は、2D領域の第6補間例を示す図である。
図11では、時相のデータが循環し、PR1、PR2と2回分の循環する時相を表している。また、線L1は、時相の開始位置(例えば第0フェーズ)を示している。領域処理部161は、時相の開始位置を跨いで3つのマップ位置P1a(PR2),P1b(PR1),P1c(PR1)を指定し、補間対象領域AR6を生成してよい。3つのマップ位置P1a,P1b,P1cでのスライスデータSl1a,Sl1b,Sl1cにおいて2D領域MR1a,MR1b,MR1cを指定し、補間対象領域AR6の内部における補間対象のマップ位置P2でのスライスデータSl2において2D領域MR2を補間してもよい。また、
図11においてさらに、領域処理部161は、時相の開始位置を跨がない箇所にも補間対象領域を生成してよい。PR1内でP1a(PR1),P1b(PR1),P1c(PR1)を指定し補間対象領域を作り、2D領域MR2を補間してもよい。さらに、第二の時相の開始位置をまたぐ補間対象領域として、P1a(PR2),P1b(PR2),P1b(PR1)を指定し補間対象領域を作り、2D領域MR2を補間してもよい。さらに、第三の時相の開始位置をまたぐ補間対象領域としてP1a(PR2),P1c(PR2),P1c(PR1)を指定し補間対象領域を作り、2D領域MR2を補間してもよい。これら4つの補間対象領域から補間された2D領域MR2を積層させると、循環する4D領域を作成することができる。これによって、医用画像処理装置100は、例えば、心室の拍動を可視化できる。
【0071】
また、領域処理部161は、ドロネー法に従って三角形を生成(三角分割)することを例示したが、他の手法(例えばMinimum-weight triangulation法)に従って三角形を生成してもよい。また、三角分割でなく、四角形など他の図形に分割してもよい。
【0072】
また、領域処理部161は、補間対象領域の内部において2D領域を補間ではなく、補外してもよい。したがって、例えば3つの指定マップ位置を頂点とする三角形を仮定した場合、補われる2D領域に対応するマップ位置は、三角形の辺の内部に厳密に含まれなくてもよい。補外としては、例えば線形補外や最近傍補外が行われてよい。また、領域処理部161は、アンチアライアス処理を加味して補外してよい。例えば、CT装置200により取得される空間における所定方向(例えば体軸方向)に沿ったスライスデータの数は多数あるため、アンチアライアス処理の必要性が低いが、時間方向の枚数(フェーズの数に相当)については、例えば10枚程となるので、アンチアライアス処理の必要性が高くなる。アンチアライアス処理を行うことで、補外による2D領域の生成精度が高くなる。
【0073】
また、領域処理部161は、2D領域の補間及び補外時に、取得されたボリュームデータの内容を参照してもよい。例えば、三角形の内部におけるマップ位置で補間される2D領域と同様の特性を有する場合、マップ位置が三角形の辺の多少外側であっても、補外対象のマップ位置とし、このマップ位置のスライスデータにおいて2D領域を補外して生成してもよい。ここでの補間される2D領域と同様の特性とは、例えば、補間される2D領域で抽出される組織と同一又は類似、この組織の画素値とサイズが類似、などが挙げられる。これにより、補間される2D領域の形状を組織の形状にあわせることが可能である。
【0074】
また、アキシャル画像を想定して異なるz座標(体軸位置を示す座標)を可変としたマップMPを想定したが、体軸方向に垂直な、つまりアキシャル画像の投影面に沿うx方向の位置を示すx座標やy方向の位置を示すy座標を可変としたマップMPを想定してもよい。つまり、マップMPは、z方向の位置(体軸方向)以外の3次元空間における所定方向(例えばx方向の位置やy方向の位置)と時相方向の位置とを規定するものであってもよい。また、MPRを用いたオブリーク(x,y,z方向から傾斜した断面)に沿って3次元空間における所定方向が規定されてもよい。
【0075】
また、補間によって作成された4D領域は、連続する領域であってよい。連続する4D領域とは、マップMPに含まれる各マップ位置において、各マップ位置に対応する各2D領域が時相方向及び体軸方向に連続的に変化することで、4D領域が形成されることを示している。つまり、4D領域が複数の領域に分断された状態でないことを示している。補間時に4D領域は連続領域であると制限することによって、ユーザの予測した結果が得られやすくなる。
【0076】
また、指定され又は補間される2D領域は、原則全て平行であるが、平行でないものが一部含まれてもよい。例えば、曲線に沿った多数の短軸画像に対して2D領域を指定され、補間されてもよい。
【0077】
また、補間された2D領域及び4D領域を確認してから、指定する2D領域を追加し補間結果を修正することができる。つまり、領域処理部161は、補間された2D領域及び4D領域を基に、指定する2D領域を追加し又は補間結果を修正してよい。この場合、当初指定された2D領域と新たに指定された2D領域を、いずれも指定した2D領域として、新たに補間処理を行うことができる。
【0078】
また、指定された2D領域、3D領域は、UI120により既存の手法でユーザの手動で作成された2D領域、3D領域であってもよいし、既存のアルゴリズムで抽出された2D領域、3D領域であってもよい。また、それらの組み合わせによって作成された領域であってもよい。例えば、領域処理部161は、ユーザの指定したスライスにおけるUI120を介してフリーハンドで囲った2D領域を起点として、Region Growing法を利用した臓器抽出法によって抽出された臓器の3D領域を生成し、この3D領域からユーザの指定した画素値を閾値としてカットして得られた3D領域を、指定された3D領域としてよい。また、領域処理部161は、その3D領域を構成するスライスを取り出して、指定された2D領域としてもよい。
【0079】
また、医用画像処理装置100は、少なくともプロセッサ140及びメモリ150を備えてよい。ポート110、UI120、及びディスプレイ130は、医用画像処理装置100に対して外付けであってもよい。
【0080】
また、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へ送信されることを例示した。この代わりに、ボリュームデータが一旦蓄積されるように、ネットワーク上のサーバ(例えば画像データサーバ(PACS)(不図示))等へ送信され、保管されてもよい。この場合、必要時に医用画像処理装置100のポート110が、ボリュームデータを、有線回線又は無線回線を介してサーバ等から取得してもよいし、任意の記憶媒体(不図示)を介して取得してもよい。
【0081】
また、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へポート110を経由して送信されることを例示した。これは、実質的にCT装置200と医用画像処理装置100とを併せて一製品として成立している場合も含まれるものとする。また、医用画像処理装置100がCT装置200のコンソールとして扱われている場合も含む。
【0082】
また、CT装置200により画像を撮像し、被検体内部の情報を含むボリュームデータを生成することを例示したが、他の装置により画像を撮像し、ボリュームデータを生成してもよい。他の装置は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、血管造影装置(Angiography装置)、又はその他のモダリティ装置を含む。また、PET装置は、他のモダリティ装置と組み合わせて用いられてもよい。なお、ここでのMRI装置で撮像されたボリュームデータには、スライス間隔が広いために通常はボリュームレンダリングの対象とされない積層画像が含まれ得る。
【0083】
また、医用画像処理装置100における動作が規定された医用画像処理方法として表現可能である。また、コンピュータに医用画像処理方法の各ステップを実行させるためのプログラムとして表現可能である。
【0084】
(上記実施形態の概要)
上記実施形態の一態様は、医用画像処理装置であって、取得部(例えばポート110)と、処理部160と、を備える。取得部は、複数の時相のボリュームデータを取得する機能を有する。処理部160は、時相方向(t方向)における位置である時相位置と、体軸方向(z方向)(3次元空間上の所定方向の一例)における位置である体軸位置(空間方向位置の一例)とで、マップMP(直積集合の一例)が構成されてよい。処理部160は、3次元空間において互いに平行に、マップMPにおける時相位置t11(第1の時相位置の一例)かつ体軸位置z11(第1の空間方向位置の一例)であるマップ位置P11(第1の元の一例)に位置するスライスデータSl11(第1の平面の一例)と、マップMPにおける時相位置t12(第2の時相位置の一例)かつ体軸位置z12(第2の空間方向位置の一例)であるマップ位置P12(第2の元の一例)に位置するスライスデータSl2(第2の平面の一例)と、マップMPにおける時相位置t13(第3の時相位置の一例)かつ体軸位置z13(第3の空間方向位置の一例)であるマップ位置P13(第3の元の一例)に位置するスライスデータSl13(第3の平面の一例)と、を指定してよい。処理部160は、スライスデータSl11においてボリュームデータの一部を示す2D領域MR11(第1の2D領域の一例)を指定し、スライスデータSl12においてボリュームデータの一部を示す2D領域MR12(第2の2D領域の一例)を指定し、スライスデータSl13においてボリュームデータの一部を示す2D領域MR13(第3の2D領域の一例)を指定してよい。処理部160は、マップMPにおいて、マップ位置P11,P12,P13を頂点とする範囲で、時相位置t21(第4の時相位置の一例)かつ体軸位置z21(第4の空間方向位置の一例)であるマップ位置P21(第4の元の一例)に位置し、スライスデータSl11に平行なスライスデータSl21(第4の平面の一例)において、2D領域MR11,MR12,MR13に基づく2D領域MR21(第4の2D領域の一例)を生成してよい。また、少なくとも時相位置t11,t12が異なってよい。体軸位置z11,z12,z13が異なってよい。
【0085】
これにより、医用画像処理装置100は、時相方向及び空間における所定方向を規定するマップMP(直積集合の一例)を想定し、マップMPにおいて指定された各マップ位置(元の一例)を頂点とする範囲で、スライスデータの2D領域を生成できる。また、時相位置の少なくとも2つが異なり、空間方向位置の少なくとも3つが異なるようにすることで、時相方向や空間の所定方向に沿う辺を有する長方形の4隅において2D領域を指定しなくて済むので、例えば、ユーザが描きやすい空間方向位置や時相位置を任意に選択して、UI120を介して2D領域を作成して指定できる。よって、例えばユーザがUI120を介して心室内腔における2D領域を指定する際に、1フェーズずつ指定する労力を不要とし、ユーザの手間を低減できる。また、例えば、心室内腔のうちユーザが画像を心室内腔の輪郭を明瞭に感じ、輪郭形状に確信を持てる任意のスライスについてのみ2D領域を指定することができる。この場合でも、2D領域を適切に補間でき、2D領域を用いてデータを抽出し、補間画像を適切に生成できる。また、医用画像処理装置100は、たとえ観察対象用の領域抽出アルゴリズムが存在しない場合や精度が不足している場合にも、移動し変形する観察対象の2D領域を生成でき、補間画像を適切に生成できる。
【0086】
また、処理部160は、複数の時相の複数の空間的な範囲で示される4D領域を生成してよい。処理部160は、複数の時相のボリュームデータの一部を示す2D領域MR11,MR12,MR13,MR21を含む連続な4D領域を生成してよい。これにより、ユーザは、ユーザが確信を持てる任意のスライスデータの2D領域を元に、簡単に4D領域を得ることができる。また、ユーザは、たとえ観察対象用の領域抽出アルゴリズムが存在しない場合や精度が不足している場合にも、移動し変形する観察対象の4D領域を生成でき、補間画像を適切に生成できる。
【0087】
また、処理部160は、複数の時相のボリュームデータのうち、4D領域に含まれる部位を表示部(例えばディスプレイ130)に表示させてよい。4これにより、ユーザは、時相位置や空間方向位置が様々である被検体の画像を確認できる。また、ユーザは、時相位置や空間方向位置を連続的に変化させながら被検体を観察でき、時間的且つ空間的に移動する組織を動画のように観察できる。
【0088】
また、時相位置t12と時相位置t13とが異なってよい。これにより、ユーザは、時相を気にせずにマップ位置を指定して、指定されたマップ位置での2D領域を作成できる。また、ユーザは、臓器の特徴がはっきり出ているスライスデータを指定し、このスライスデータにおいて臓器の特徴を好適に抽出するような2D領域を指定できる。よって、補間の基となる2D領域の作成精度が向上するので、2D領域の補間精度を向上できる。
【0089】
また、時相位置t2と時相位置t3とが同一でよい。処理部160は、ボリュームデータの一部を示す3D領域MR3(3D領域の一例)を指定してよい。処理部160は、3D領域MR3が存在するスライスデータSl16(第1の平面の一例)に平行な両端のスライスデータ(平面の一例)のうち両端にある2つのスライスデータをそれぞれ、スライスデータSl15a,Sl15e(第2の平面、第3の平面の一例)としてよい。処理部160は、スライスデータSl15aにおける3D領域MR3に含まれる処理領域を、2D領域MR1の1つとしてよい。処理部160は、スライスデータsl15eにおける3D領域MR3に含まれる処理領域を、2D領域MR1の1つとしてよい。これにより、医用画像処理装置100は、2D領域MR1の代わりに3D領域MR3を指定することでも、指定対象となる少なくとも3つの2D領域MR1を指定できる。また、3D領域MR3における補間については、マップMPの時相方向及び空間所定方向に沿って実施でき、処理負荷を小さくして2D領域を補間できる。
【0090】
また、処理部160は、マップMPにおいて、マップ位置P11~P13の他に、少なくとも1つの他のマップ位置P1(他の元の一例)を指定してよい。処理部160は、マップ位置P11~P13及び少なくとも1つの他のマップ位置P1を頂点とする範囲で、マップ位置P11~P13及び少なくとも1つの他のマップ位置P1のうち、いずれか3つのマップ位置を頂点とした複数の三角形ARTの範囲において、三角形ARTの範囲毎に、三角形ARTの範囲の頂点となる3つのマップ位置に対応する3つの2D領域に基づいて、スライスデータSl2(第4の平面の一例)において2D領域MR2(第4の2D領域の一例)を生成してよい。これにより、医用画像処理装置100は、多数の指定された2D領域に対応するマップ位置を基に、マップMP上の2D領域を補間するための三角形の範囲を多数想定できる。よって、多数の三角形で形成される領域の全体形状が複雑化しても、単純な形状の部分的な範囲(例えば三角形)の組み合わせとして扱うことができ、ユーザ所望の時相の範囲や3次元空間の所定方向の範囲において2D領域を補間し易くできる。これによって、ユーザは、描きやすい空間方向位置や時相位置を任意の数だけ複雑に選択して、UI120を介して2D領域を作成して指定でき、最適な補間結果を得ることができる。また、ユーザは、得られた補間結果を確認してから、UI120を介して指定される2D領域を更に追加し、補間結果を修正できるようにすることもできる。
【0091】
また、時相は、循環するもの(例えば心拍の時相)でよい。マップMPにおいて時相位置ta(第1の時相位置の一例)、時相位置tb(第2の時相位置の一例)、及び時相位置tc(第3の時相位置の一例)を頂点とする範囲は、マップMPにおいて循環する時相の開始時(例えば線L1)を跨いでよい。これにより、医用画像処理装置100は、例えば、周期PR1ではマップ位置P1aの後に位置するマップ位置P1b,P1cと、周期PR1の次の周期PR2でのマップ位置P1aと、を結んで、各時相位置を頂点とする範囲を生成できる。よって、循環する時相において異なる周期PR1,PR2に指定されたマップ位置P1a,P1b,P1cであっても、時相方向及び空間の所定方向において連続的に2D領域を補間できる。
【0092】
上記実施形態の一態様は、医用画像処理方法であって、時相方向における位置である時相位置と、3次元空間上の所定方向における位置である空間方向位置とで、マップMP(直積集合の一例)が構成され、複数の時相の被検体のボリュームデータを取得するステップと、3次元空間において互いに平行に、マップMPにおける時相位置t11(第1の時相位置の一例)かつ体軸位置z11(第1の空間方向位置の一例)であるマップ位置P11(第1の元の一例)に位置するスライスデータSl11(第1の平面の一例)と、マップMPにおける時相位置t12(第2の時相位置の一例)かつ体軸位置z12(第2の空間方向位置の一例)であるマップ位置P12(第2の元の一例)に位置するスライスデータSl2(第2の平面の一例)と、マップMPにおける時相位置t13(第3の時相位置の一例)かつ体軸位置z13(第3の空間方向位置の一例)であるマップ位置P13(第3の元の一例)に位置するスライスデータSl13(第3の平面の一例)と、を指定するステップと、スライスデータSl11においてボリュームデータの一部を示す2D領域MR11(第1の2D領域の一例)を指定するステップと、スライスデータSl12においてボリュームデータの一部を示す2D領域MR12(第2の2D領域の一例)を指定するステップと、スライスデータSl13においてボリュームデータの一部を示す2D領域MR13(第3の2D領域の一例)を指定するステップと、マップMPにおいて、マップ位置P11,P12,P13を頂点とする範囲で、時相位置t21(第4の時相位置の一例)かつ体軸位置z21(第4の空間方向位置の一例)であるマップ位置P21(第4の元の一例)に位置し、スライスデータSl11に平行なスライスデータSl21(第4の平面の一例)において、2D領域MR11,MR12,MR13に基づく2D領域MR21(第4の2D領域の一例)を生成するステップと、を有してよい。また、少なくとも時相位置t11,t12が異なってよい。体軸位置z11,z12,z13が異なってよい。
【0093】
本実施形態の一態様は、上記の医用画像処理方法をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラムでよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本開示は、空間的且つ時間的にデータが抽出される領域を好適に補間できる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム等に有用である。
【符号の説明】
【0095】
100 医用画像処理装置
110 ポート
120 ユーザインタフェース(UI)
130 ディスプレイ
140 プロセッサ
150 メモリ
160 処理部
161 領域処理部
162 画像生成部
163 表示制御部
200 CT装置
AR1,AR2,AR3,AR4,AR5,AR6 補間対象領域
MR1,MR2 2D領域
MR3 3D領域
P1,P2 マップ位置
R3 3次元範囲
Sl1,Sl2 スライスデータ