(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】含フッ素オリゴマーを有効成分とする表面改質剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20230523BHJP
C07C 67/14 20060101ALI20230523BHJP
C07C 69/708 20060101ALI20230523BHJP
C08G 65/332 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C07C67/14 CSP
C07C69/708 A CSP
C08G65/332
(21)【出願番号】P 2019117433
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】金海 吉山
(72)【発明者】
【氏名】浦田 公彦
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-350404(JP,A)
【文献】特開2011-052158(JP,A)
【文献】国際公開第2009/008380(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/001846(WO,A1)
【文献】米国特許第03644492(US,A)
【文献】特開平11-012212(JP,A)
【文献】特開2006-137689(JP,A)
【文献】特開2015-092583(JP,A)
【文献】MARIANNE K. BERNETT,Oligomeric Fluorinated Additives as Surface Modifiers for Solid Polymers,POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,1977年,Vol.17,No.7,p.450-455
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08G 65/00 - 67/04
C08G 81/00 - 85/00
C07B 31/00 - 61/00
C07B 63/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
C09K 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
CF
3(CF
2)
n(OCF
2)
o(OC
3F
6)
p(OC
2F
4)
qOCF(CF
3)COO-R′-R 〔I〕
(ここで、nは1または2であり、o、p、qはそれぞれ0~50の整数であり、(OCF
2)
o(OC
3F
6)
p(OC
2F
4)
qはランダムに結合しており、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、R′は炭素数1~10のアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基である)で表される含フッ素オリゴマー
を有効成分とする表面改質剤。
【請求項2】
含フッ素オリゴマーの5%減熱分解温度が220℃未満である請求項1記載の
表面改質剤。
【請求項3】
請求項1記載の
表面改質剤をゴムまたは樹脂の内添離型剤として含有する組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素オリゴマーを有効成分とする表面改質剤に関する。さらに詳しくは、ゴム、樹脂等の内添離型剤等として有効に用いられる含フッ素オリゴマーを有効成分とする表面改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、(A)ポリアルキレングリコールまたはそのアルキルエーテルに、一般式 CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)bCH=CH2(n:1~6、a:1~4、b:1~3)で表されるポリフルオロ-1-アルケンをグラフト共重合させたグラフト共重合体単体または(A)と(B)一般式 CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cP(O)(OH)2(n、a、b:前記と同じ、c:1~3)で表されるポリフルオロアルキルホスホン酸またはその塩とを有効成分とする離型剤を提案している(特許文献1~2)。
【0003】
この離型剤は、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有する離型剤と同等以上の離型性能を有し、生体蓄積性が低いといわれる炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物を有効成分としている。
【0004】
一般に、パーフルオロエーテル基含有化合物は、その表面エネルギーが非常に小さく、撥水撥油性、耐薬品性、潤滑性、離型性、防汚性などを有するため、その性質を利用して工業用機器の防油剤、離型剤、化粧料、保護膜等に幅広く利用されており、前記離型剤もこれを金型に塗布して用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO 2010/140651 A1
【文献】WO 2010/140652 A1
【文献】特開昭61-254697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ゴム組成物、樹脂組成物の成形時の金型からの離型性を改善することにあり、特にゴム、樹脂等の内添離型剤として有効に使用される含フッ素オリゴマーを有効成分とする表面改質剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、一般式
CF3(CF2)n(OCF2)o(OC3F6)p(OC2F4)qOCF(CF3)COO-R′-R 〔I〕
(ここで、nは1または2であり、o、p、qはそれぞれ0~50の整数であり、(OCF2)o(OC3F6)p(OC2F4)qはランダムに結合しており、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、R′は炭素数1~10のアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基である)で表される含フッ素オリゴマーを有効成分とする表面改質剤によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る表面改質剤は、それをゴム、樹脂等に含有させることで、成形製品の低表面張力の被膜を形成させることができ、離型性、表面特性を改善したゴム、樹脂製品材料を提供することができる。
【0011】
なお、ゴム、樹脂等の成形時に金型に対して外部離型剤の塗布を行わない訳ではなく、外部離型剤の塗布量を減らし、含フッ素オリゴマー内添離型剤を併用することで、ゴム、樹脂組成物の離型性を改善し、成型不良率を低下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般式〔I〕で表される含フッ素オリゴマーは、一般式〔II〕で表されるパーフルポリエーテルカルボン酸フロライドと一般式〔III〕で表されるポリアルキレングリコールまたはそのモノ低級アルキルエステルとを縮合反応させることにより製造される。
【0013】
パーフルオロポリエーテルカルボン酸フロライド〔II〕は、公知の化合物であり、例えば特許文献3に記載されている。
CF3(CF2)2OCF(CF3)COF
CF3(CF2)2〔OCF(CF3)CF2〕OCF(CF3)COF
CF3(CF2)2〔OCF(CF3)CF2〕4OCF(CF3)COF
CF3(CF2)2〔OCF(CF3)CF2〕10OCF(CF3)COF
【0014】
ポリアルキレングリコール(モノ低級アルキルエステル)〔III〕としては、平均分子量200~20,000、好ましくは200~10000のポリエチレングリコール、平均分子量200~4,000、好ましくは200~2000のポリプロピレングリコール、平均分子量400~4,000、好ましくは400~2000のポリエチレングリコールモノメチルエステル、モノ 2-エチルヘキシルエステル、モノイソデシルエステル、モノ分岐アルキルエステル等が例示される。
【0015】
これらのポリアルキレングリコール(モノ低級アルキルエステル)は、市販品、例えば日油製品PEGの#200T、#200、#300、#400、#600、#1000、#1500、#1540、#2000、#4000、#4000P、#6000、#6000P、#11000、#20000、日油製品ユニオールのD-200、D-250、D-400、D-700、D-1000、D-1200、D-2000、D-4000、日油製品ユニオックスのM-400、M-550、M-1000、M-2000、M-2500、M-3000、M-4000、日油製品ノニオンのEH-204、EH-208、ID-203、ID-206、ID-209、ディスパノールTOC等がそのまま用いられる。
【0016】
縮合反応は、パーフルオロポリエーテルカルボン酸フロライド〔II〕1モルに対して、ポリアルキレングリコール(モノ低級アルキルエステル)が約0.5~2.0のモル比、一般に等モル量用いられ、好ましくは約1.0~1.5のモル比で用いられ、さらに好ましくは約1.1のモル比で用いられる。ただし、等モル量未満のモル比で用いられた場合には、ジエステルが一部形成される。
【0017】
生成物中には、少量のジエステル、すなわちポリアルキレングリコールの両末端にパーフルオロポリエーテルカルボン酸が付加したものが生成することがみられる場合もあるが、それが混在していてもその表面処理剤特性には殆ど影響しない。
【0018】
反応は、約0~100℃、好ましくは約0~20℃の反応温度で行われ、好ましくは下記の如き反応溶媒の1種または2種以上の混合物を用いて行われる。
【0019】
ハイドロフルオロカーボン:CF3CF2CF2CHF2、CF3(CF2)2CH2F、CF3CF2CH2CF3、F2CH(CF2)2CHF2、F2CHCH2CF2CF3、CF3CHFCH2CF3、CF3CH2CF2CHF2、F2CHCHFCF2CHF2、CF3CHFCF2CH3、F2CHCHFCHFCHF2、CF3CH2CF2CH3、CF3CF2CH2CH3、F2CHCH2CF2CH3、F2CH(CF2)3CF3、CF3(CF2)2CHFCF3、F2CH(CF2)3CHF2、CF3(CHF)2CF2CF3、CF3CHFCF2CH2CF3、CF3CF(CF3)CH2CHF2、CF3CH(CF3)CH2CF3、CF3CH2CF2CH2CF3、F2CHCHFCF2CHFCHF2、F2CH(CF2)2CHFCH3、CF3(CH2)3CF3、F2CHCH2CF2CH2CHF2、CF3(CF2)4CHF2、CF3(CF2)4CH2F、CF3(CF2)3CH2CF3、F2CH(CF2)4CHF2、CF3CH(CF3)CHFCF2CF3、CF3CF2CH2CH(CF3)CF3、CF3CH2(CF2)2CH2CF3、CF3CF2(CH2)2CF2CF3、CF3(CF2)3CH2CH3、CF3CH(CF3)(CH2)2CF3、F2CHCF2(CH2)2CF2CHF2、CF3(CF2)2(CH2)2CH3等
【0020】
ハイドロフルオロエーテル:CF3CF2CF2OCH3、(CF3)2CFOCH3、CF3(CF2)2OCH2CH3、CF3(CF2)3OCH3、(CF3)2CFCF2OCH3、C(CF3)3OCH3、CF3(CF2)3OCH2CH3、(CF3)2CFCF2OCH2CH3、(CF3)3COCH2CH3、CF3CF(OCH3)CF(CF3)2、CF3CF(OCH2CH3)CF(CF3)2、C5F11OCH2CH3、CF3(CF2)2CF(OCH2CH3)CF(CF3)2、CH3O(CF2)4OCH3、CH3O(CF2)2OCH2CH3、C3H7OCF(CF3)CF2OCH3等
【0021】
脂肪族炭化水素:ペンタン、2-メチルブタン、3-メチルペンタン、ヘキサン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、ヘプタン、オクタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルヘキサン、デカン、ウンデカン、ドデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等
【0022】
脂環式炭化水素:シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等
【0023】
芳香族炭化水素またはそのフッ素化置換体:ベンゼン、トルエン、キシレン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等
【0024】
ケトン:アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン等
【0025】
エステル:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ペンチル等
【0026】
反応終了後、反応混合物から溶媒を除去することにより、含フッ素オリゴマーが得られる。得られる含フッ素オリゴマーの分子量は、約3000以下、好ましくは約2000以下と小さく、分子量が小さい程分子運動が速くなるため、これを内添離型剤として用いたとき、これが添加されたゴムまたは樹脂成形品表面への移行がし易くなる。
【0027】
得られる含フッ素オリゴマーは、5%減熱分解温度が220℃未満、好ましくは210℃未満と低く、これを有効成分とする表面改質剤は実質的にすべての成形材料に適用でき、好ましくはゴムまたは樹脂成形品に内添離型剤として適用可能である。
【0028】
ゴムとしては、例えばフッ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等が挙げられ、これらに対応する加硫剤と共に用いられる。樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0029】
含フッ素オリゴマーのこれらの成形材料に対する添加割合は、一般に約0.001~20重量%、好ましくは約0.01~10重量%である。これよりも少ない添加割合では、その添加効果が不十分であり、一方これよりも多い割合で用いると、成形材料の物性が許容範囲よりも低下するおそれがある。
【0030】
添加方法は通常の方法に従って行われ、例えばロールによる混練によって行われる。
【0031】
この含フッ素オリゴマー内添離型剤を添加、混練および成形すると、含フッ素オリゴマーが成形材料表面に滲み出て、金型表面がパーフルオロカーボン基で覆われて表面エネルギーが低下し、良好な離型性が発現される。また、含フッ素オリゴマー中の炭化水素基は、成形材料と含フッ素オリゴマーとの相溶性を向上させ、含フッ素オリゴマーを成形材料中に均一に分散させるので、含フッ素オリゴマーの均一な滲み出しが起こるようになる。
【0032】
含フッ素オリゴマーは、ゴムまたは樹脂成形品の内添離型剤として有効に用いられるばかりではなく、一般的な離型剤、撥水撥油剤等としても用いられる。
【実施例】
【0033】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0034】
実施例1
(1) 容量1Lのガラス製反応器に、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日油製品ユニオックスM-550、平均分子量550)180g(0.33モル)およびハイドロフルオロエーテル系溶媒(AGC製品アサヒクリンAE-3000)250gを仕込み、攪拌した。反応器が15℃を超えない温度を保ちながら、パーフルオロポリエーテルカルボン酸フロライド
CF3CF2CF2OCF(CF3)COF 〔PO-2-COF〕
100g(0.30モル)を攪拌しながら滴下した。
【0035】
滴下終了後、15時間攪拌を継続し、エージングを行った。19F-NMRで原料のPO-2-COFのシグナルが消失したことを確認し、反応を終了した。反応器中には、HF吸着剤であるKW-2000(協和化学工業製品)32gを仕込み、pHが中性(6~7)であることを確認した。
【0036】
吸引ロ過して吸着剤を除去し、ロ液をエバポレータで溶媒を除去して、無色透明の液体258g(収率92%)を回収した。得られた液体は、1H-NMR、19F-NMRにより、次のような化合物であることが確認された。
CF3CF2CF2OCF(CF3)COO(CH2CH2O)nCH3 〔2POM55;分子量879(計算値)〕
n:10~14 (平均12)
1H-NMR:(300 MHz, CDCl3)
δ: 4.56 (2H)、 3.77 (2H)、 3.63~3.68 (47H)、 3.56(2H)、3.38 (3H)
19F-NMR:(300 MHz, CDCl3)
δ: -80~-88 (8F)、-131 (2F)、-133 (1F)
【0037】
この2POM55について、5%減熱分解温度を次のような方法で測定し、206℃という値を得た。
空気雰囲気中、昇温速度10℃/分で熱重量分析法(TGA)で測定し、5%減少時の温度を測定
【0038】
一般的に、5%減熱分解温度は分解開始温度と称され、この温度を維持すると化合物の分解が続く。化合物の一部が分解して、さらに小さい分子となり、それが昇華するようになる。したがって、5%減熱分解温度が二次加硫温度よりも低ければ、二次加硫によって内添離型剤である含フッ素オリゴマーは成形品中に残らず、昇華するようになる。
【0039】
(2) フッ素ゴム(ユニマテック製品FKM) 100重量部
MTカーボンブラック 25 〃
ビスフェノールAF 2 〃
水酸化カルシウム 5 〃
酸化マグネシウム 3 〃
ベンジルトリフェニルホウホニウムクロライド 0.4 〃
含フッ素オリゴマー(2POM55) 1 〃
以上の各成分をオープンロールで混練し、混練物(組成物)について180℃、10分間のプレス加硫(一次加硫)および230℃、22時間のオーブン加硫(二次加硫)を行った。
【0040】
得られた加硫成形品について、圧縮永久歪(ASTM D395;Method Bを用いてOリングについて測定)および常態物性(ISO 37、ISO 7619;タイプ(A))を測定すると共に、加硫時の金型離型性の評価を下記基準に基づいて評価した。
○:Oリング離型時に金型への粘着やゴム加硫成形品自体の破損がなく、円滑に
離型できる
△:多少金型への粘着がみられるが、離型は可能
×:離型時にゴムシートの破損が著しく、シートとしての離型が困難
【0041】
また、金型汚れまでの離型ショット数を測定した。ゴム加硫成形品の離型の際に、目視で金型にゴムが残っていたらNGとし、その時点でのショット数である。なお、一次加硫前に金型には離型剤が塗布されていない。
【0042】
実施例2
(1) 実施例1(1)において、含フッ素溶媒の代りに同量(250g)のアセトンが用いられ、生成物 2POM55(分子量879)が252g(収率90%)得られた。これの5%減熱分解温度は、205℃であった。
【0043】
(2) 実施例1(2)において、上記 2POM55を用いて加硫が行われた。
【0044】
実施例3
(1) 反応溶媒としてアセトンが用いられた実施例2(1)において、PO-2-COFの代わりに
CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COF 〔PO-3-COF〕
が同量(100g:0.20モル)用いられ、またポリエチレングリコールモノメチルエーテル(ユニオックスM-550)量を120g(0.22モル)に変更したところ、生成物198g(収率90%)が得られ、これの5%減熱分解温度は206℃であった。得られた液体は、1H-NMR、19F-NMRにより、次のような化合物であることが確認された。
生成物 3POM55(分子量1045):
CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COO(CH2CH2O)nCH3
n:10~14 (平均12)
1H-NMR:(300 MHz, CDCl3)
δ: 4.56 (2H)、 3.77 (2H)、 3.63~3.68 (47H)、 3.56(2H)、3.38 (3H)
19F-NMR:(300 MHz, CDCl3)
δ: -80~-88 (13F)、-131 (2F)、-133 (1F)、-145(1F)
【0045】
(2) 実施例1(2)において、同量(1重量部)の上記 3POM55について加硫が行われた。
【0046】
実施例4
(1) 実施例1(1)において、PO-2-COFの代わりに
CF3CF2CF2〔OCF(CF3)CF2〕4OCF(CF3)COF 〔PO-6-COF〕
が同量(100g:0.10モル)用いられ、またポリエチレングリコールモノメチルエーテル(ユニオックスM-550)量を60g(0.11モル)に変更したところ、生成物146g(収率91%)が得られ、これの5%減熱分解温度は208℃であった。得られた液体は、1H-NMR、19F-NMRにより、次のような化合物であることが確認された。
生成物 6POM55(分子量1345):
CF3CF2CF2〔OCF(CF3)CF2〕4 OCF(CF3)COO(CH2CH2O)nCH3
n:10~14 (平均12)
1H-NMR:(300 MHz, CDCl3)
δ: 4.56 (2H)、 3.77 (2H)、 3.63~3.68 (47H)、 3.56(2H)、3.38 (3H)
19F-NMR:(300 MHz, CDCl3)
δ: -80~-88 (28F)、-131 (2F)、-133 (1F)、-145 (4F)
【0047】
(2) 実施例1(2)において、同量(1重量部)の上記 6POM55を用いて加硫が行われた。
【0048】
実施例5
(1) 反応溶媒としてアセトンが用いられた実施例2(1)において、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルとして、日油製品ユニオックスM-550の代わりに同社製品ユニオックスM1000、平均分子量1000)を330g(0.60モル)用いたところ、生成物396g(収率92%)が得られ、これの5%減熱分解温度は205℃であった。得られた液体は、1H-NMR、19F-NMRにより、次のような化合物であることが確認された。
生成物 2POM10(分子量1329):
CF3CF2CF2OCF(CF3)COO(CH2CH2O)nCH3
n:20~24 (平均22)
1H-NMR:(300 MHz, CDCl3)
δ: 4.56 (2H)、 3.77 (2H)、 3.63~3.68 (87H)、 3.56(2H)、3.38 (3H)
19F-NMR:(300 MHz, CDCl3)
δ: -80~-88 (8F)、-131 (2F)、-133 (1F)
【0049】
(2) 実施例1(2)において、同量(1重量部)の上記 2POM10を用いて加硫が行われた。
【0050】
実施例6
(1) 反応溶媒としてアセトンが用いられた実施例2(1)において、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりにポリエチレングリコール(日油製品PEG#400、平均分子量400)を80g(0.20モル)用いたところ、生成物167g(収率93%)が得られ、これの5%減熱分解温度は208℃であった。得られた液体は、1H-NMR、19F-NMRにより、次のような化合物の混合物であることが確認された。
生成物 2POPEG(分子量729):
CF3CF2CF2OCF(CF3)COO(CH2CH2O)nH
および
CF3CF2CF2OCF(CF3)COO(CH2CH2O)nCOCF(CF3)OCF2CF2CF3
の混合物
n:10~14 (平均12)
1H-NMR:(300 MHz, CDCl3)
δ: 4.56 (4H)、 3.80(1H)、3.77(8H)、 3.63~3.68 (94H)
19F-NMR:(300 MHz, CDCl3)
δ: -80~-88 (8F)、-131 (2F)、-133 (1F)
【0051】
(2) 実施例1(2)において、同量(1重量部)の上記 2POPEGを用いて加硫が行われた。
【0052】
実施例7
(1) 反応溶媒としてアセトンが用いられた実施例2(1)において、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりにポリプロピレングリコール(日油製品ユニオールD-400、平均分子量400)を80g(0.20モル)用いたところ、生成物162g(収率90%)が得られ、これの5%減熱分解温度は207℃であった。得られた液体は、1H-NMR、19F-NMRにより、次のような化合物の混合物であることが確認された。。
CF3CF2CF2OCF(CF3)COO(CH2CH(CH3)O)nH
および
CF3CF2CF2OCF(CF3)COO(CH2CH(CH3)O)nCOCF(CF3)OCF2CF2CF3
の混合物
n:6~10 (平均8)
1H-NMR:(300 MHz, CDCl3)
δ: 4.56 (4H)、 3.80(1H)、 3.5~3.6 (47H)、1.15(6H)
19F-NMR:(300 MHz, CDCl3)
δ: -80~-88 (8F)、-131 (2F)、-133 (1F)
【0053】
(2) 実施例1(2)において、同量(1重量部)の上記 2POD40を用いて加硫が行われた。
【0054】
比較例1
コンデンサおよび温度計を備えた200mlガラス製反応器に、FAMC-6 16g、ステアリルアクリレート24g、メチルエチルケトン(溶媒)56.8g、n-ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)1.7gを仕込み、反応系内を窒素置換した後、さらにアゾビスイソブチロニトリル 1.5g仕込み、攪拌しながら68℃で16時間重合反応を行った。反応終了後固形分濃度が39.7%の重合体溶液が得られた。
【0055】
重合体溶液をメタノールにて再沈を行い、120℃、5時間乾燥を行った。得られた重合体は、1H-NMR、19F-NMRにより次のような化合物であることが確認され、その重量平均分子量は7600、5%減熱分解温度は273℃であった。
〔CH2C(CH3)(COO(CH2)2(CF2)5CF3〕m〔CH2CH(COO(CH2)17CH3)〕n
【0056】
比較例2
実施例1(2)において、2POM55の代わりに同量(1重量部)のソルベイ社製品FPA-1(フッ素系加工助剤;分子量約2000~3000、5%減熱分解温度265℃)を用いて加硫が行われた。
【0057】
比較例3
実施例1(2)で用いられたフッ素ゴム組成物中、2POM55が用いられないものについて加硫が行われた。
【0058】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。
表
実施例
比較例
測定・評価項目 1
2
3
4
5
6
7
1
2
3
ムーニー粘度MLmin 56 55 56 56 56 56 56 56 56 55
スコーチタイム t5 (125℃) >20 >20 >20 >20 >20 >20 >20 >20 >20 >20
圧縮永久歪 (200℃/70時間) 18 18 19 19 19 18 18 19 19 16
常態物性
硬度 (ショアA) 73 72 73 73 72 72 72 72 72 71
破断強度 (MPa) 15.1 15.0 15.3 15.4 15.2 14.8 14.9 14.6 14.5 15.5
破断時伸び (%) 300 310 310 300 300 310 310 310 310 310
離型性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × ×
離型ショット数 (回) 50 50 50 45 50 40 40 1 1 1
【0059】
以上の結果から、次のようなことがいえる。
比較例1~2で用いられた化合物は、いずれも5%減熱分解温度が270℃以上で、二次加硫後もゴム加硫成形品中に残留する。これに対して、本発明に係る表面改質剤は5%減熱分解温度が220℃未満と低く、二次加硫後にはゴム加硫成形品中に残存しない。
したがって、本発明の表面改質剤は、離型性にすぐれ、金型汚れまでの離型ショット数が約40~50回とすぐれている。