(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】ブルドーザを制御するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/85 20060101AFI20230523BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
E02F3/85 D
E02F9/22 E
(21)【出願番号】P 2019134678
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】植村 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 圭
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5143975(JP,B2)
【文献】特開2015-008678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/85
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードを含むブルドーザを制御するためのシステムであって、
前記ブレードの動作を制御するためのレバーと、
前記レバーに設けられ、オペレータによる操作に応じた信号を出力する操作装置と、
前記操作装置からの信号を受信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記操作装置からの信号が、前記ブレードの手動制御のための通常操作と、前記ブレードの自動制御のためのトリガー操作とのいずれを示しているかを判定し、
前記操作装置からの信号が、前記通常操作を示していると判定したときには、前記操作装置の操作に応じて前記ブレードの角度が変更されるように、前記ブレードを動作させ、
前記ブルドーザが走行中に、前記操作装置からの信号が前記トリガー操作を示していると判定したときには、前記ブレードの角度が所定の目標角度に達するまで前記ブレードを動作させる、
システム。
【請求項2】
前記操作装置は、複数の方向に操作可能であり、
前記コントローラは、前記操作装置の操作方向に応じて、前記所定の目標角度を変更する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記所定の目標角度は、掘削に適した角度と、排土に適した角度と、運土に適した角度のいずれかである、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記排土に適した角度は、前方への最大ピッチ角である、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記運土に適した角度は、後方への最大ピッチ角である、
請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
ブレードを含むブルドーザを制御するためのシステムであって、
オペレータによる操作に応じた信号を出力する操作装置と、
前記操作装置からの信号を受信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記操作装置からの信号が、前記ブレードの手動制御のための通常操作と、前記ブレードの自動制御のためのトリガー操作とのいずれを示しているかを判定し、
前記操作装置からの信号が、前記通常操作を示していると判定したときには、前記操作装置の操作に応じて前記ブレードの角度が変更されるように、前記ブレードを動作させ、
前記ブルドーザが走行中に、前記操作装置からの信号が前記トリガー操作を示していると判定したときには、前記ブレードの角度が所定の目標角度に達するまで前記ブレードを動作させ、
前記コントローラは、
前記ブルドーザが前進中と後進中とのいずれであるかを判定し、
前記ブルドーザが前進中に、前記操作装置からの信号が前記トリガー操作を示していると判定したときには、前記ブレードの角度が第1目標角度に達するまで前記ブレードを動作させ、
前記ブルドーザが後進中に、前記操作装置からの信号が前記トリガー操作を示していると判定したときには、前記ブレードの角度が、前記第1目標角度と異なる第2目標角度に達するまで前記ブレードを動作させる、
システム。
【請求項7】
前記第1目標角度は、排土に適した角度、又は、運土に適した角度であり、
前記第2目標角度は、掘削に適した角度である、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記トリガー操作は、前記操作装置を所定時間以上、長押しする操作である、
請求項1
から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記トリガー操作は、前記操作装置を所定回数、連続クリックする操作である、
請求項1
から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
ブレードを含むブルドーザを制御するための方法であって、
前記ブレードの動作を制御するためのレバーに設けられた操作装置へのオペレータによる操作に応じた信号を受信することと、
前記信号が、前記ブレードの手動制御のための通常操作と、前記ブレードの自動制御のためのトリガー操作とのいずれを示しているかを判定することと、
前記信号が前記通常操作を示していると判定したときには、前記操作装置の操作に応じて前記ブレードの角度が変更されるように、前記ブレードを動作させることと、
前記ブルドーザが走行中に、前記信号が前記トリガー操作を示していると判定したときには、前記ブレードの角度が所定の目標角度に達するまで前記ブレードを動作させること、
を備える方法。
【請求項11】
前記操作装置は、複数の方向に操作可能であり、
前記操作装置の操作方向に応じて、前記所定の目標角度を変更することをさらに備える、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の目標角度は、掘削に適した角度と、排土に適した角度と、運土に適した角度のいずれかである、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記排土に適した角度は、前方への最大ピッチ角である、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記運土に適した角度は、後方への最大ピッチ角である、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ブレードを含むブルドーザを制御するための方法であって、
オペレータによる操作装置の操作に応じた信号を受信することと、
前記信号が、前記ブレードの手動制御のための通常操作と、前記ブレードの自動制御のためのトリガー操作とのいずれを示しているかを判定することと、
前記信号が前記通常操作を示していると判定したときには、前記操作装置の操作に応じて前記ブレードの角度が変更されるように、前記ブレードを動作させることと、
前記ブルドーザが走行中に、前記信号が前記トリガー操作を示していると判定したときには、前記ブレードの角度が所定の目標角度に達するまで前記ブレードを動作させることと、
前記ブルドーザが前進中と後進中とのいずれであるかを判定することと、
前記ブルドーザが前進中に、前記操作装置からの信号が前記トリガー操作を示していると判定したときには、前記ブレードの角度が第1目標角度に達するまで前記ブレードを動作させることと、
前記ブルドーザが後進中に、前記操作装置からの信号が前記トリガー操作を示していると判定したときには、前記ブレードの角度が、前記第1目標角度と異なる第2目標角度に達するまで前記ブレードを動作させること、
を備える方法。
【請求項16】
前記第1目標角度は、排土に適した角度、又は、運土に適した角度であり、
前記第2目標角度は、掘削に適した角度である、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記トリガー操作は、前記操作装置を所定時間以上、長押しする操作である、
請求項10
から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記トリガー操作は、前記操作装置を所定回数、連続クリックする操作である、
請求項10
から16のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルドーザを制御するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルドーザには、ブレードの角度を自動で調整するための操作部材を備えるものがある。例えば、特許文献1のブルドーザは、ブレード操作レバーとオートピッチボタンとを備えている。オペレータは、ブレード操作レバーを操作することで、ブレードの角度を手動で調節することができる。また、オペレータがオートピッチボタンを押すと、ブレードの角度が、所定の目標角度となるように、自動的に調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したブルドーザでは、手動によるブレードの角度の調節と、自動によるブレードの角度の調節とで、オペレータは、異なる操作部材を操作する必要がある。そのため、ブレードの角度を調節するための操作が煩雑である。
【0005】
本開示の目的は、ブルドーザにおいてブレードの角度を調節するための操作性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るシステムは、ブレードを含むブルドーザを制御するためのシステムである。当該システムは、操作装置とコントローラとを備える。操作装置は、オペレータによる操作に応じた信号を出力する。コントローラは、操作装置からの信号を受信する。コントローラは、操作装置からの信号が、ブレードの手動制御のための通常操作と、ブレードの自動制御のためのトリガー操作とのいずれを示しているかを判定する。コントローラは、操作装置からの信号が、通常操作を示していると判定したときには、操作装置の操作に応じてブレードの角度が変更されるように、ブレードを動作させる。コントローラは、ブルドーザが走行中に、操作装置からの信号がトリガー操作を示していると判定したときには、ブレードの角度が所定の目標角度に達するまでブレードを動作させる。
【0007】
第2の態様に係る方法は、ブレードを含むブルドーザを制御するための方法である。当該方法は、以下の処理を備える。第1の処理は、オペレータによる操作装置の操作に応じた信号を受信することである。第2の処理は、信号が、ブレードの手動制御のための通常操作と、ブレードの自動制御のためのトリガー操作とのいずれを示しているかを判定することである。第3の処理は、信号が通常操作を示していると判定したときには、操作装置の操作に応じてブレードの角度が変更されるように、ブレードを動作させることである。第4の処理は、ブルドーザが走行中に、信号がトリガー操作を示していると判定したときには、ブレードの角度が所定の目標角度に達するまでブレードを動作させることである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、オペレータは、ブレードの手動制御と自動制御とを共通のスイッチを用いて指示することができる。それにより、ブルドーザにおいてブレードの角度を調節するための操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る作業機械を示す斜視図である。
【
図3】作業機械の制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】オートピッチ制御の処理を示すフローチャートである。
【
図7A】ブルドーザが前進中のオートピッチ制御を示す図である。
【
図7B】ブルドーザが前進中のオートピッチ制御を示す図である。
【
図8A】ブルドーザが後進中のオートピッチ制御を示す図である。
【
図8B】ブルドーザが後進中のオートピッチ制御を示す図である。
【
図10】制御システムの構成の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るブルドーザ1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係るブルドーザ1を示す側面図である。ブルドーザ1は、車体2と、走行装置3と、第1作業機4と、第2作業機5とを含む。
【0011】
車体2は、運転室11とエンジン室12とを含む。エンジン室12は、運転室11の前方に配置されている。走行装置3は、車体2に取り付けられている。走行装置3は、左右の履帯13を含む。なお、
図1では、左側の履帯13のみが図示されている。履帯13が回転することによって、ブルドーザ1が走行する。
【0012】
第1作業機4は、車体2に取り付けられている。
図2は、第1作業機4の斜視図である。
図2に示すように、第1作業機4は、リフトフレーム14と、ブレード15と、リフトシリンダ16a,16bと、チルトシリンダ17a,17bとを含む。
【0013】
リフトフレーム14は、ブレード15を支持している。ブレード15は、車体2の前方に配置されている。ブレード15は、第1回転軸Ax1回りに動作可能にリフトフレーム14に取り付けられている。第1回転軸Ax1は、車幅方向に延びている。
【0014】
リフトフレーム14は、第2回転軸Ax2回りに動作可能に走行装置3に取り付けられている。第2回転軸Ax2は、車幅方向に延びている。リフトフレーム14は、車体2に取り付けられてもよい。リフトフレーム14は、左フレーム14aと右フレーム14bとを含む。ブレード15は、リフトフレーム14の動作に伴って上下に移動する。
【0015】
リフトシリンダ16a,16baは、車体2とブレード15とに接続されている。リフトシリンダ16a,16baは、左リフトシリンダ16aと右リフトシリンダ16bとを含む。リフトシリンダ16a,16bが伸縮することによって、リフトフレーム14が、第2回転軸Ax2回りに動作する。それにより、ブレード15が、上下に動作する。
【0016】
チルトシリンダ17a,17bは、リフトフレーム14とブレード15とに接続されている。チルトシリンダ17a,17bは、左チルトシリンダ17aと右チルトシリンダ17bとを含む。左チルトシリンダ17aは、左フレーム14aとブレード15とに接続されている。右チルトシリンダ17bは、右フレーム14bとブレード15とに接続されている。
【0017】
左チルトシリンダ17aと右チルトシリンダ17bとが、共に伸縮することで、ブレード15が、第1回転軸Ax1回りに動作する。それにより、ブレード15が前後方向に傾動する。このブレード15の前後方向への傾動動作は、ピッチ動作と呼ばれる。詳細には、左チルトシリンダ17aと右チルトシリンダ17bとが共に伸長することで、ブレード15が前傾する。左チルトシリンダ17aと右チルトシリンダ17bとが共に収縮することで、ブレード15が後傾する。
【0018】
左チルトシリンダ17aと右チルトシリンダ17bとの一方が停止し、他方が伸長することで、ブレード15が、左右方向に傾動する。このブレード15の左右方向への傾動動作は、チルト動作と呼ばれる。詳細には、左チルトシリンダ17aが伸長し、右チルトシリンダ17bが停止していることで、ブレード15の左側が上方に動作する(以下、この動作を左チルトと呼ぶ)。右チルトシリンダ17bが伸長し、左チルトシリンダ17aが停止していることで、ブレード15の右側が上方に動作する(以下、この動作を右チルトと呼ぶ)。
【0019】
図1に示すように、第2作業機5は、車体2に取り付けられている。第2作業機5は、リッパ18とリッパシリンダ19,20とを含む。リッパ18は、車体2の後方に配置されている。リッパシリンダ19,20は、リッパ18を動作させる。
【0020】
図3は、ブルドーザ1の制御システム6の構成を示すブロック図である。本実施形態では、制御システム6は、ブルドーザ1に搭載されている。
図3に示すように、ブルドーザ1は、エンジン21と、エンジンセンサ22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24とを含む。エンジンセンサ22は、エンジン回転速度を検出する。油圧ポンプ23は、エンジン21によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ16a,16bと、チルトシリンダ17a,17bと、リッパシリンダ19,20とに供給される。なお、
図3では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0021】
動力伝達装置24は、エンジン21の駆動力を走行装置3に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0022】
制御システム6は、走行操作装置25と、リッパ操作装置26と、ブレード操作装置27と、ピッチ操作装置32と、コントローラ28と、制御弁29とを備える。走行操作装置25と、リッパ操作装置26と、ブレード操作装置27と、ピッチ操作装置32とは、運転室11に配置されている。
図4は、運転室11内を示す図である。
図4に示すように、運転室11内には、シート31が配置されている。走行操作装置25と、リッパ操作装置26と、ブレード操作装置27と、ピッチ操作装置32とは、オペレータによって操作可能である。走行操作装置25と、リッパ操作装置26と、ブレード操作装置27と、ピッチ操作装置32とは、シート31の左右の側方に配置されている。
【0023】
本実施形態において、走行操作装置25は、レバーである。走行操作装置25の操作に応じて、ブルドーザ1の走行が制御される。走行操作装置25は、前後左右に操作可能である。走行操作装置25は、走行操作装置25の操作方向に応じた操作信号を出力する。走行操作装置25は、オペレータによる操作を受け付け、コントローラ28に操作信号を出力する。
【0024】
本実施形態において、リッパ操作装置26は、レバーである。リッパ操作装置26の操作に応じて、リッパ18の動作が制御される。リッパ操作装置26は、前後、或いは左右に操作可能である。リッパ操作装置26は、リッパ操作装置26の操作方向に応じた操作信号を出力する。リッパ操作装置26は、オペレータによる操作を受け付け、コントローラ28に操作信号を出力する。
【0025】
本実施形態において、ブレード操作装置27は、レバーである。ブレード操作装置27の操作に応じて、ブレード15の動作が制御される。ブレード操作装置27は、前後左右に操作可能である。ブレード操作装置27の操作方向に応じて、ブレード15の上げ、下げ、左チルト、右チルトの各動作が制御される。ブレード操作装置27は、ブレード操作装置27の操作方向に応じた操作信号を出力する。ブレード操作装置27は、オペレータによる操作を受け付け、コントローラ28に操作信号を出力する。
【0026】
なお、走行操作装置25、リッパ操作装置26、及び/又は、ブレード操作装置27は、複数の操作部材を含んでもよい。走行操作装置25、リッパ操作装置26、及び/又は、ブレード操作装置27は、レバーに限らず、ペダル、或いはスイッチ等の他の形態であってもよい。
【0027】
図5は、ブレード操作装置27の斜視図である。
図5に示すように、ピッチ操作装置32は、ブレード操作装置27に設けられている。ピッチ操作装置32は、傾動操作可能である。或いは、ピッチ操作装置32は、スライド操作可能であってもよい。ピッチ操作装置32は、
図5に示す中立位置から、第1方向A1と第2方向A2とに操作可能である。第1方向A1と第2方向A2とは、互いに反対の方向である。ピッチ操作装置32は、モーメンタリスイッチである。ピッチ操作装置32は、非操作時には中立位置に戻る。
【0028】
ピッチ操作装置32は、ピッチ操作装置32の操作方向に応じた操作信号を出力する。ピッチ操作装置32は、オペレータによる操作を受け付け、コントローラ28に操作信号を出力する。ピッチ操作装置32の操作方向に応じて、ブレード15のピッチ動作が制御される。詳細には、ピッチ操作装置32が第1方向A1に操作されることで、ブレード15が前傾する。ピッチ操作装置32が第2方向A2に操作されることで、ブレード15が後傾する。
【0029】
コントローラ28は、取得したデータに基づいてブルドーザ1を制御するようにプログラムされている。
図3に示すように、コントローラ28は、記憶装置34とプロセッサ35とを含む。記憶装置34は、ROMなどの不揮発性メモリと、RAMなどの揮発性メモリとを含む。記憶装置34は、ハードディスク、或いはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでもよい。記憶装置34は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置34は、ブルドーザ1を制御するためのコンピュータ指令及びデータを記憶している。
【0030】
プロセッサ35は、例えばCPU(central processing unit)である。プロセッサ35は、プログラムに従って、ブルドーザ1を制御するための処理を実行する。コントローラ28は、走行装置3、或いは動力伝達装置24を制御することで、ブルドーザ1を走行させる。コントローラ28は、制御弁29を制御することで、ブレード15を上下に移動させる。
【0031】
制御弁29は、比例制御弁であり、コントローラ28からの指令信号によって制御される。制御弁29は、油圧アクチュエータと油圧ポンプ23との間に配置される。油圧アクチュエータは、リフトシリンダ16a,16bと、チルトシリンダ17a,17bと、リッパシリンダ19,20とを含む。
【0032】
制御弁29は、リフト制御弁291,292と、チルト制御弁293,294と、リッパ制御弁295,296とを含む。リフト制御弁291,292は、油圧ポンプ23から、リフトシリンダ16a,16bに供給される作動油の流量を制御する。コントローラ28は、ブレード操作装置27の操作に応じて、リフト制御弁291,292への指令信号を生成する。これにより、ブレード15が上方、又は下方に動作するように、リフトシリンダ16a,16bが制御される。
【0033】
チルト制御弁293,294は、油圧ポンプ23から、チルトシリンダ17a,17bに供給される作動油の流量を制御する。コントローラ28は、ブレード操作装置27の操作に応じて、チルト制御弁293,294への指令信号を生成する。これにより、ブレード15が、左チルト、又は、右チルトを行うように、チルトシリンダ17a,17bが制御される。また、コントローラ28は、ピッチ操作装置32の操作に応じて、チルト制御弁293,294への指令信号を生成する。これにより、ブレード15が、前傾、又は、後傾するように、チルトシリンダ17a,17bが制御される。
【0034】
リッパ制御弁295,296は、油圧ポンプ23から、リッパシリンダ19,20に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ28は、リッパ操作装置26の操作に応じて、リッパ制御弁295,296への指令信号を生成する。これにより、リッパ18が、動作するように、リッパシリンダ19,20が制御される。
【0035】
制御弁29は、圧力比例制御弁であってもよい。その場合、ブレード操作装置27の操作に応じたパイロット圧が、制御弁29に入力されてもよい。或いは、制御弁29は、電磁比例制御弁であってもよい。ブレード操作装置27の操作に応じた電気信号が、制御弁29に入力されてもよい。
【0036】
次に、ブレード15の自動制御について説明する。本実施形態に係るブルドーザ1では、コントローラ28は、ブレード15のピッチ角を自動的に制御するオートピッチ制御を実行する。ピッチ角は、ブレード15の前後方向への傾斜角度である。ピッチ角は、上述したブレード15のピッチ動作によって変更される。
図6は、コントローラ28によって実行されるオートピッチ制御の処理を示すフローチャートである。
【0037】
図6に示すように、ステップS101では、コントローラ28は、ピッチ操作装置32から操作信号を受信する。ステップS102では、コントローラ28は、ピッチ操作装置32からの操作信号が、オートピッチ制御のためのトリガー操作を示しているかを判定する。トリガー操作は、スイッチを所定時間以上、長押しする操作である。所定時間は、例えば1秒から2秒程度までの時間である。ただし、所定時間はこれに限らず、1秒より短くてもよい、或いは2秒より長くてもよい。
【0038】
ピッチ操作装置32からの操作信号が、トリガー操作を示していないときには、処理はステップS103に進む。すなわち、ピッチ操作装置32からの操作信号が、ブレード15の手動制御のための通常操作を示しているときには、処理はステップS103に進む。ステップS103では、コントローラ28は、手動制御によりピッチ角を変更する。手動制御では、コントローラ28は、ピッチ操作装置32がオペレータによって操作されている間、ピッチ角を変更する。
【0039】
例えば、ピッチ操作装置32が第1方向A1に操作されている間、コントローラ28は、ブレード15が前傾するようにブレード15を動作させる。ピッチ操作装置32が第2方向A2に操作されている間、コントローラ28は、ブレード15が後傾するようにブレード15を動作させる。コントローラ28は、ピッチ操作装置32がオペレータによって操作されていないときには、ブレード15をピッチ動作させずに静止させる。すなわち、ピッチ操作装置32の操作後、ピッチ操作装置32が中立位置に戻ったときには、コントローラ28は、ブレード15のピッチ動作を停止させる。
【0040】
ステップS102において、ピッチ操作装置32からの操作信号が、トリガー操作を示しているとコントローラ28が判定したときには、処理はステップS104に進む。ステップS104では、コントローラ28は、ブルドーザ1の走行状態を取得する。走行状態は、前進、後進、及び停止を含む。コントローラ28は、例えば走行操作装置25からの操作信号に基づいて、走行状態を取得する。或いは、コントローラ28は、走行装置3、或いは動力伝達装置24の状態を検出することで、走行状態を取得してもよい。或いは、コントローラ28は、GPS(Global Positioning System)などの位置センサによって、走行状態を取得してもよい。
【0041】
ステップS105では、コントローラ28は、ブルドーザ1が走行中であるかを判定する。コントローラ28は、ステップS104で取得した走行状態に基づいて、ブルドーザ1が走行中であるかを判定する。コントローラ28は、ブルドーザ1が走行中ではないと判定したときには、自動制御を実行しない。すなわち、コントローラ28は、ブルドーザ1が停止中であると判定したときには、トリガー操作を無効とする。
【0042】
コントローラ28が、ブルドーザ1が走行中であると判定したときには、処理はステップS106に進む。
【0043】
ステップS106では、コントローラ28は、オートピッチ制御によって、ピッチ角を変更する。オートピッチ制御では、コントローラ28は、ピッチ操作装置32が中立位置に戻っても、ブレード15のピッチ角が所定の目標角度に達するまでブレード15を動作させる。
【0044】
ステップS107では、コントローラ28は、ブレード15のピッチ角が所定の目標角度に到達したかを判定する。ブレード15のピッチ角が所定の目標角度に達すると、ステップS108において、コントローラ28は、ブレード15のピッチ動作を停止させる。
【0045】
図7A及び
図7Bは、ブルドーザ1が前進中のオートピッチ制御を示す図である。
図8A及び
図8Bは、ブルドーザ1が後進中のオートピッチ制御を示す図である。コントローラ28は、ブルドーザ1が前進中と後進中とのいずれであるかを判定する。コントローラ28は、ブルドーザ1が前進中に、ピッチ操作装置32からの操作信号がトリガー操作を示していると判定したときには、ブレード15の角度が第1目標角度に達するまでブレード15を動作させる。
【0046】
コントローラ28は、ピッチ操作装置32の操作方向に応じて、第1目標角度を変更する。
図7Aに示すように、ブルドーザ1が前進中に、ピッチ操作装置32からの操作信号が第1方向A1へのトリガー操作を示すときには、コントローラ28は、第1目標角度を排土に適した角度に設定する。排土に適した角度は、例えば、前方への最大ピッチ角である。
図7Aにおいて矢印B1で示すように、コントローラ28は、ピッチ角が前方への最大ピッチ角に到達するまで、ブレード15を前傾させる。前方への最大ピッチ角は、チルトシリンダ17a,17bが伸長方向へのストロークエンドに達しているときのピッチ角である。ただし、排土に適した角度は、前方への最大ピッチ角より小さくてもよい。
【0047】
図7Bに示すように、ブルドーザ1が前進中に、ピッチ操作装置32からの操作信号が第2方向A2へのトリガー操作を示すときには、コントローラ28は、第1目標角度を運土に適した角度に設定する。運土に適した角度は、例えば、後方への最大ピッチ角である。
図7Bにおいて矢印B2で示すように、コントローラ28は、ピッチ角が後方への最大ピッチ角に到達するまで、ブレード15を後傾させる。後方への最大ピッチ角は、チルトシリンダ17a,17bが収縮方向へのストロークエンドに達しているときのピッチ角である。ただし、運土に適した角度は、後方への最大ピッチ角より小さくてもよい。
【0048】
コントローラ28は、ブルドーザ1が後進中に、ピッチ操作装置32からの操作信号がトリガー操作を示していると判定したときには、ブレード15の角度が第2目標角度に達するまでブレード15を動作させる。第2目標角度は、第1目標角度と異なる。第2目標角度は、前方への最大ピッチ角と、後方への最大ピッチ角との間の角度である。第2目標角度は、掘削に適した角度である。第2目標角度は、予め設定されており、記憶装置34に保存されている。第2目標角度は、固定値であってもよい。或いは、第2目標角度は、変更可能であってもよい。
【0049】
図8Aに示すように、ブルドーザ1が後進中に、ピッチ操作装置32からの操作信号が第2方向A2へのトリガー操作を示すときには、コントローラ28は、矢印C1で示すようにブレード15を後方への最大ピッチ角まで後傾させた後、矢印C2で示すように第2目標角度まで前傾させる。すなわち、ブルドーザ1が後進中に、ピッチ操作装置32からの操作信号が第2方向A2へのトリガー操作を示すときには、コントローラ28は、後方への最大ピッチ角を経て、第2目標角度までピッチ角を変更する。
【0050】
図8Bに示すように、ブルドーザ1が後進中に、ピッチ操作装置32からの操作信号が第1方向A1へのトリガー操作を示すときには、コントローラ28は、矢印D1で示すようにブレード15を前方への最大ピッチ角まで前傾させた後、矢印D2で示すように第2目標角度まで後傾させる。すなわち、ブルドーザ1が後進中に、ピッチ操作装置32からの操作信号が第1方向A1へのトリガー操作を示すときには、コントローラ28は、前方への最大ピッチ角を経て、第2目標角度までピッチ角を変更する。
【0051】
コントローラ28は、タイマーを用いて、第2目標角度までピッチ角を変更する。コントローラ28は、チルトシリンダ17a,17bがストロークエンドに到達してから、所定の作動時間が経過するまで、ブレード15を前傾、或いは後傾させる。コントローラ28は、チルトシリンダ17a,17bがストロークエンドに到達してから所定の作動時間が経過した時点で、ブレード15の前傾、或いは後傾を停止させる。
【0052】
コントローラ28は、
図9に示す作動時間データを参照して、エンジン回転速度に応じて、作動時間を決定する。作動時間データは、エンジン回転速度と作動時間との関係を規定する。作動時間データは、記憶装置34に保存されている。作業時間データは、エンジン回転速度の増大に応じて減少する作動時間を規定している。
【0053】
作動時間データは、第1データE1と第2データE2とを含む。第1データE1は、ブルドーザ1の後進中に第1方向A1へのトリガー操作が行われたときのエンジン回転速度と作動時間との関係を規定している。第2データE2は、ブルドーザ1の後進中に第2方向A2へのトリガー操作が行われたときのエンジン回転速度と作動時間との関係を規定している。
【0054】
以上説明した本実施形態に係るブルドーザ1の制御システム6では、オペレータは、ブレード15の手動制御と自動制御とを共通のピッチ操作装置32を用いて指示することができる。それにより、ブルドーザ1においてブレード15の角度を調節するための操作性が向上する。
【0055】
ブルドーザ1の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、ブルドーザ1は、電動モータで駆動されてもよい。第2作業機5は省略されてもよい。制御システム6の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。ブルドーザ1は、遠隔操縦可能であってもよい。その場合、制御システム6の一部は、ブルドーザ1の外部に配置されてもよい。
【0056】
例えば、
図10に示すように、コントローラ28は、リモートコントローラ281と車載コントローラ282とを含んでもよい。リモートコントローラ281は、ブルドーザ1の外部に配置されてもよい。例えば、リモートコントローラ281は、ブルドーザ1の外部の管理センタに配置されてもよい。車載コントローラ282は、ブルドーザ1に搭載されてもよい。
【0057】
走行操作装置25、リッパ操作装置26、ブレード操作装置27、及び/又は、ピッチ操作装置32は、ブルドーザ1の外部に配置されてもよい。走行操作装置25、リッパ操作装置26、ブレード操作装置27、及び/又は、ピッチ操作装置32は、ブルドーザ1から省略されてもよい。その場合、運転室11は、ブルドーザ1から省略されてもよい。
【0058】
リモートコントローラ281と車載コントローラ282とは、通信装置38,39を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ28の機能の一部がリモートコントローラ281によって実行され、残りの機能が車載コントローラ282によって実行されてもよい。
【0059】
走行操作装置25、リッパ操作装置26、ブレード操作装置27、及び/又は、ピッチ操作装置32の構造、或いは配置は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、ピッチ操作装置32は、上記の実施形態の形状に限らず、レバー状などの他の形状であってもよい。
【0060】
ブレード15の自動制御の処理は、上述した実施形態のものに限らず、変更、省略、或いは追加されてもよい。自動制御の処理の実行順序は、上述した実施形態のものに限らず、変更されてもよい。
【0061】
トリガー操作は、長押しに限らず、他の操作であってもよい。例えば、トリガー操作は、ピッチ操作装置32を所定回数、連続クリックする操作であってもよい。所定回数は、例えば2回であってもよい。或いは、所定回数は2回より多くてもよい。
【0062】
制御システム6は、ブレード15の角度を検出する角度センサを備えてもよい。角度センサは、ピッチ角を検出してもよい。コントローラ28は、角度センサによって検出されたピッチ角を用いて、第2目標角度までピッチ角を変更してもよい。
【0063】
オートピッチ制御中にブルドーザ1の進行方向が変更されたときには、コントローラ28は、オートピッチ制御を終了してもよい。オートピッチ制御中にブルドーザ1が停止したときには、コントローラ28は、オートピッチ制御を終了してもよい。オートピッチ制御中にリッパ操作装置26が操作されたときには、コントローラ28は、オートピッチ制御を終了してもよい。或いは、オートピッチ制御中に上記の操作のいずれかが行われたときには、コントローラ28は、オートピッチ制御を一時停止してもよい。そして、当該操作が終了したときに、オートピッチ制御が再開されてもよい。
【0064】
上記の実施形態では、ブレード15の自動制御は、ピッチ動作に対して行われている。しかし、ピッチ動作に限らず、リフト動作、或いはチルト動作などの他の動作に対して、ブレード15の自動制御が行われてもよい。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示によれば、オペレータは、ブレードの手動制御と自動制御とを共通のスイッチを用いて指示することができる。それにより、ブルドーザにおいてブレードの角度を調節するための操作性が向上する。
【符号の説明】
【0067】
1 ブルドーザ
15 ブレード
28 コントローラ
32 ピッチ操作装置