(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】推進敷設工法用推進力伝達装置
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20230523BHJP
F16L 1/028 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
E21D9/06 311C
F16L1/028 E
(21)【出願番号】P 2019142140
(22)【出願日】2019-08-01
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000231877
【氏名又は名称】日本鋳鉄管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】松島 誠二
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-309890(JP,A)
【文献】特開2003-202093(JP,A)
【文献】特開2018-179066(JP,A)
【文献】特開2001-099353(JP,A)
【文献】米国特許第05316352(US,A)
【文献】特開2001-108147(JP,A)
【文献】特開2004-316810(JP,A)
【文献】特開2011-032632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
F16L 1/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行管の受け口に後行管の挿し口を嵌め込むことにより接合した管を、順次、さや管内に押し込んで、新設管を前記さや管内に敷設する推進敷設工法に使用され、前記挿し口の外周面に固定される推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記挿し口の外周面に取り付けられるリング状のバンドを含み、
前記バンドは、
前記受け口の端面に当接して、前記後行管の押し込み力を前記先行管に伝達する推進力伝達部と、
前記押し込み力が所定の力を超えた場合に、前記バンドの取り付け姿勢を変化させる姿勢変化手段と、
を有
し、
前記姿勢変化手段は、
前記バンドをその軸直交断面において中心を通る直線で2つの領域に分けた場合の、その一方の領域の内周面の少なくとも一部に形成された、前記内周面における他の部分よりも前記挿し口の接触面との摩擦力を高くする摩擦力向上部と、
前記推進力伝達部に形成され、前記押し込み力が前記所定の力を超えた場合に変形する変形部と、
を有することを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項2】
先行管の受け口に後行管の挿し口を嵌め込むことにより接合した管を、順次、さや管内に押し込んで、新設管を前記さや管内に敷設する推進敷設工法に使用され、前記挿し口の外周面に固定される推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記挿し口の外周面に取り付けられるリング状のバンドを含み、
前記バンドは、
前記受け口の端面に当接して、前記後行管の押し込み力を前記先行管に伝達する推進力伝達部と、
前記押し込み力が所定の力を超えた場合に、前記バンドの取り付け姿勢を変化させる姿勢変化手段と、
を有し、
前記姿勢変化手段は、
前記バンドをその軸直交断面において中心を通る直線で2つの領域に分けた場合の、その一方の領域の内周面の少なくとも一部に形成された、前記内周面における他の部分よりも前記挿し口の接触面との摩擦力を高くする摩擦力向上部を有し、
前記2つの領域の他方の領域に位置する前記推進力伝達部が、前記受け口の端面に最初に当接する第1当接部を有することを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項3】
前記第1当接部は、前記バンドの端面から軸方向に突出していることを特徴とする請求項
2に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項4】
前記第1当接部は、前記バンドの外周面から軸方向に突出していることを特徴とする請求項
2に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項5】
前記推進力伝達部は、
前記挿し口の外周面に沿って間隔をあけて配される複数個の推進力伝達手段からなり、
前記推進力伝達手段は、
前記受け口の端面に当接し、前記後行管の押し込み力を前記先行管に伝達する推進力伝達部材と、
前記バンドに固定されたブラケットと、
前記さや管内において前記後行管を支持する支持部材と、
前記支持部材を前記ブラケットに固定する、一端が前記ブラケットに取り付けられた固定軸と、
を有し、
前記推進力伝達部材には、前記バンドの軸方向に長い長孔が形成され、
前記長孔には、その一方端に前記固定軸を固定し、前記長孔を仕切る仕切壁が形成され、
前記固定軸の他端は、前記長孔の一方端に抜け出し不可に挿入され、
当該仕切壁が、前記変形部として機能することを特徴とする請求項
1に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項6】
前記推進力伝達部は、
前記挿し口の外周面に沿って間隔をあけて配される複数個の推進力伝達手段からなり、
前記推進力伝達手段は、
前記受け口の端面に当接し、前記後行管の押し込み力を前記先行管に伝達する推進力伝達部材と、
前記バンドに固定されたブラケットと、
前記さや管内において前記後行管を支持する支持部材と、
前記支持部材を前記ブラケットに固定する、一端が前記ブラケットに取り付けられた固定軸と、
を有し、
前記推進力伝達部材には、前記バンドの軸方向に長い長孔が形成され、
前記長孔には、その一方端に前記固定軸を固定し、前記長孔を仕切る仕切壁が形成され、
前記固定軸の他端は、前記長孔の一方端に抜け出し不可に挿入され、
前記複数個の推進力伝達手段のうち、前記2つの領域の他方の領域に位置する推進力伝達手段が、前記第1当接部を有することを特徴とする請求項
4に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項7】
前記支持部材は、車輪からなることを特徴とする、請求項
5又は
6に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項8】
前記推進力伝達部材の先端部は、前記受け口の前記端面と当接するように折れ曲がっていることを特徴とする、請求項
5乃至
7の何れか1項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項9】
前記摩擦力向上部には突起が形成されていることを特徴とする、請求項
1乃至
8の何れか1項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、先行管の受け口に後行管の挿し口を嵌め込むことにより接合した管を、順次、予め地中に敷設されたさや管内に押し込んで、新設管をさや管内に敷設する推進敷設工法に使用され、挿し口の外周面に固定されて後行管の推進力を先行管に伝達する推進敷設工法用推進力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路工事による交通障害や掘削残土の処理等の問題が少なく、しかも、軌道下等の開削工事が行えない場所であっても管の敷設が可能なさや管式推進敷設工法が実施されている。
【0003】
さや管式推進敷設工法に使用される推進力伝達装置の一例が特許文献1に開示されている。以下、この推進力伝達装置を、従来推進力伝達装置という。
【0004】
従来推進力伝達装置は、後行管の外周面に、円弧状部材をボルト・ナットにより円形リング状に連結することで装着された固定部材と、弾性体を介して固定部材に取り付けられ、先行管の受け口のフランジに当接する推進力伝達部材と、を備えている。
【0005】
従来推進力伝達装置によれば、推進力伝達部材と、固定部材との間に介在する弾性体により、推進管路の状況が複雑で、カーブ推進を繰り返す場合であっても、弾性体のクッション効果と復元力により、常に確実に推進力を伝達し、推進管路に追従しながら管を推進させることができる。
【0006】
従来推進力伝達装置の固定方法は、まず、先行管に後行管を接合した後、後行管の挿し口の外周面に予め推進力伝達部材を固定した固定部材を仮止めし、次いで、推進力伝達部材の先端が先行管の受け口のフランジに当接するまで固定部材を移動させ、最後にボルト・ナットを本締めすることにより固定する。
【0007】
このようにして、先行管と後行管とが、接合部に収縮代を維持した状態で接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来推進敷設装置を用いる工法によれば、後行管の外周面に、円弧状部材をボルト・ナットにより円形リング状に連結することで装着された固定部材と、弾性体を介して固定部材に取り付けられた推進力伝達部材により、推進管路の状況によらず常に確実に推進力を先行管に伝達し、管の耐震性を確保した状態で推進することができる。
【0010】
しかしながら、後行管の外周面に固定部材を装着する際に、円弧状部材をボルト・ナットにより円形リング状に連結をするが、ボルト・ナットの締め付け力が不足してしまうと、全ての管の推進が完了するよりも前に、管の外周面と固定部材との間に滑りが生じ、後行管の挿し口が先行管の受け口内に入り込むことにより、接合部において収縮代を維持できなくなり、管の耐震性が損なわれるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、挿し口の外周面に取り付けられるリング状のバンドを含み、推進中に当該バンドと挿し口外周面との間に滑りが生じることのない推進敷設工法用推進力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、先行管の受け口に後行管の挿し口を嵌め込むことにより接合した管を、順次、さや管内に押し込んで、新設管を前記さや管内に敷設する推進敷設工法に使用され、前記挿し口の外周面に固定される推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記挿し口の外周面に取り付けられるリング状のバンドを含み、前記バンドは、前記受け口の端面に当接して、前記後行管の押し込み力を前記先行管に伝達する推進力伝達部と、前記押し込み力が所定の力を超えた場合に、前記バンドの取り付け姿勢を変化させる姿勢変化手段と、を有し、前記姿勢変化手段は、前記バンドをその軸直交断面において中心を通る直線で2つの領域に分けた場合の、その一方の領域の内周面の少なくとも一部に形成された、前記内周面における他の部分よりも前記挿し口の接触面との摩擦力を高くする摩擦力向上部と、前記推進力伝達部に形成され、前記押し込み力が前記所定の力を超えた場合に変形する変形部と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、先行管の受け口に後行管の挿し口を嵌め込むことにより接合した管を、順次、さや管内に押し込んで、新設管を前記さや管内に敷設する推進敷設工法に使用され、前記挿し口の外周面に固定される推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記挿し口の外周面に取り付けられるリング状のバンドを含み、前記バンドは、前記受け口の端面に当接して、前記後行管の押し込み力を前記先行管に伝達する推進力伝達部と、前記押し込み力が所定の力を超えた場合に、前記バンドの取り付け姿勢を変化させる姿勢変化手段と、を有し、前記姿勢変化手段は、前記バンドをその軸直交断面において中心を通る直線で2つの領域に分けた場合の、その一方の領域の内周面の少なくとも一部に形成された、前記内周面における他の部分よりも前記挿し口の接触面との摩擦力を高くする摩擦力向上部と、前記推進力伝達部に形成され、前記押し込み力が前記所定の力を超えた場合に変形する変形部と、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記第1当接部は、前記バンドの端面から軸方向に突出していることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記第1当接部は、前記バンドの外周面から軸方向に突出していることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記推進力伝達部は、前記挿し口の外周面に沿って間隔をあけて配される複数個の推進力伝達手段からなり、前記推進力伝達手段は、前記受け口の端面に当接し、前記後行管の押し込み力を前記先行管に伝達する推進力伝達部材と、前記バンドに固定されたブラケットと、前記さや管内において前記後行管を支持する支持部材と、前記支持部材を前記ブラケットに固定する、一端が前記ブラケットに取り付けられた固定軸と、を有し、前記推進力伝達部材には、前記バンドの軸方向に長い長孔が形成され、前記長孔には、その一方端に前記固定軸を固定し、前記長孔を仕切る仕切壁が形成され、前記固定軸の他端は、前記長孔の一方端に抜け出し不可に挿入され、当該仕切壁が、前記変形部として機能することを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記推進力伝達部は、前記挿し口の外周面に沿って間隔をあけて配される複数個の推進力伝達手段からなり、前記推進力伝達手段は、前記受け口の端面に当接し、前記後行管の押し込み力を前記先行管に伝達する推進力伝達部材と、前記バンドに固定されたブラケットと、前記さや管内において前記後行管を支持する支持部材と、前記支持部材を前記ブラケットに固定する、一端が前記ブラケットに取り付けられた固定軸と、を有し、前記推進力伝達部材には、前記バンドの軸方向に長い長孔が形成され、前記長孔には、その一方端に前記固定軸を固定し、前記長孔を仕切る仕切壁が形成され、前記固定軸の他端は、前記長孔の一方端に抜け出し不可に挿入され、前記複数個の推進力伝達手段のうち、前記2つの領域の他方の領域に位置する推進力伝達手段が、前記第1当接部を有することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記支持部材は、車輪からなることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項5乃至7の何れか1項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記推進力伝達部材の先端部は、前記受け口の前記端面と当接するように折れ曲がっていることを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の何れか1項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記摩擦力向上部には突起が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、後行管への後方からの押し込み力が大きくなり所定の力を超えた場合に、バンドの取り付け姿勢が斜めに変化するため、後行管の挿し口から外れることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す部分断面斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置の爪部を拡大した部分斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置の断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、初期状態(第1段階)の断面図である。
【
図6】(A)は、第1実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第2段階の断面図、(B)は、第1実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第3段階の断面図、(C)は、第3段階の仕切壁23近傍を拡大した断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を示す斜視図である。
【
図8】(A)は、第2実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、初期状態(第1段階)の断面図、(B)は、第2実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第2段階の断面図、(C)は、第2実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第3段階の断面図である。
【
図9】(A)は、第3実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を示す斜視図、(B)は、第3実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置の断面図である。
【
図10】(A)は、第3実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、初期状態(第1段階)の断面図、(B)は、第3実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第2段階の断面図、(C)は、第3実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第3段階の断面図である。
【
図11】(A)は、第4実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を示す部分断面斜視図、(B)は、第4実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置の断面図である。
【
図12】(A)は、第4実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、初期状態(第1段階)の断面図、(B)は、第4実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第2段階の断面図、(C)は、第4実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第3段階の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
次に、この発明の推進敷設工法用推進力伝達装置の第1実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置(以下、「推進力伝達装置」という場合がある)を装着した管接合部を示す部分断面斜視図、
図2は、第1実施形態に係る推進力伝達装置を示す斜視図、
図3は、第1実施形態に係る推進力伝達装置の爪部を拡大した部分斜視図、
図4は、第1実施形態に係る推進力伝達装置の断面図である。
図5は、第1実施形態に係る推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、初期状態(第1段階)の断面図、
図6(A)は、第1実施形態に係る推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第2段階の断面図、
図6(B)は、第1実施形態に係る推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第3段階の断面図、
図6(C)は、第3段階の仕切壁23近傍を拡大した断面図である。
【0026】
図1から
図6において、第1実施形態に係る推進力伝達装置11は、後行管5の挿し口3の外周面に装着されるリング状の締め付け手段12と、挿し口3の外周面に沿って間隔をあけて配される複数個(この例では3個)の推進力伝達手段13A、13B、13C(これらを総称して推進力伝達手段13という場合がある)とからなっている。
【0027】
締め付け手段12は、一本のバンド14と、バンド14を締め付ける締め付け具としてのボルト15とナット16とからなっている。ボルト15は、バンド14の両端に通され、ボルト15に螺合するナット16を締めることによって、バンド14が締め付けられる。なお、締め付け手段12は、複数本のバンド14同士を締め付け具としてのボルト15とナット16とによりリング状に連結したものであってもよい。
【0028】
図3に示すように、バンド14の内周面であって、ボルト15とナット16によってバンド14を締め付ける部分の近傍には、爪部24が形成されている。爪部24は、バンド14の内周面における他の部分よりも挿し口3の接触面との摩擦力を高くするために形成されている。
【0029】
図4に示すように、バンド14をその軸直交断面において中心Oを通る直線Lで2つの領域に分けた場合の、その一方の領域(
図4において直線Lの下方の領域)を「第1領域」といい、他方の領域(
図4において直線Lの上方の領域)を「第2領域」という。爪部24、推進力伝達手段13A、13Bは、バンド14の第1領域に設けられており、推進力伝達手段13Cは、バンド14の第2領域に設けられている。なお、推進力伝達手段13Cは、第2領域における他の位置に設けることとしてもよい。
図4では直線Lを水平に設定しているが、爪部24を除いた領域と区分するのであれば、水平から角度のついた状態で領域を分けてもよい。
【0030】
推進力伝達手段13は、先行管2の受け口1の端面1aに当接し、後行管5の押し込み力を先行管2に伝達する推進力伝達部材17と、締め付け手段12の外周面に固定されたブラケット18と、さや管(図示しない)内において後行管5を支持する支持部材としての車輪20と、車輪20をブラケット18に回転可能に固定する、一端がブラケット18に取り付けられた固定軸21とからなっている。推進力伝達部材17の先端部は、受け口1の端面1aと当接するように折れ曲がっている。
【0031】
固定軸21は、ボルトからなり、固定軸21の他端は、推進力伝達部材17に形成された長孔17aの一方端に、ナット22により抜け出し不可に挿入されている。固定軸21の他端が挿入された長孔17aは、仕切壁23(
図5参照)により仕切られ、これによって、固定軸21の他端は、推進力伝達部材17の長孔17aに保持されている。なお、仕切壁23は、推進力伝達部材17と一体に形成してもよいし、別体としてもよい。
【0032】
後行管5の挿し口3は、その先端部に抜止め用突起4が形成されている。また、受け口1の内周面に形成されたロックリング用溝7(
図5参照)内には、芯出し用リング8を介してロックリング6が嵌め込まれており、受け口1の内周面に形成されたゴム輪用溝10(
図5参照)内には、ゴム輪9が嵌め込まれている。
【0033】
次に、この発明の推進力伝達装置11を使用した推進敷設工法について説明する。
【0034】
この発明の推進力伝達装置11を使用した推進敷設工法により管を接合するには、地上で後行管5の挿し口3に推進力伝達装置11を固定する。すなわち、締め付け手段12のバンド14をボルト15とナット16とにより締め付けて、推進力伝達装置11を挿し口3に固定する。
【0035】
推進力伝達装置11の固定位置は、挿し口3を受け口1に嵌め込んだときに、先行管2と後行管5との管接合部が伸縮可能となる位置で、推進力伝達手段13の先端部が受け口1の端面1aに当接する位置とする。
【0036】
地上で推進力伝達装置11を後行管5の挿し口3に固定したら、後行管5を地下に吊り下ろして、先行管2の受け口1に嵌め込む。これによって、先行管2と後行管5とが、管接合部に収縮代T1(
図5参照)を維持した状態で接合される。
【0037】
次いで、油圧ジャッキ等を用いて後行管5をさや管内に押し込むと、推進力伝達手段13がその押し込む力(押し込み力)を先行管2に伝達し、後行管5、先行管2及びその先の管がさや管の奥に押し込まれる。
【0038】
そして、さや管内の管の数が増えていくと、押し込み力が上昇していく。ここで、従来の推進力伝達装置であれば、後行管5の押し込み力が上昇したときにボルト15とナット16の締め付け力が不足していると、推進力伝達装置と後行管5の挿し口3の外周面との間に滑りが生じ、推進が完了する前に、後行管5の挿し口3が先行管2の受け口1内に入り込んでしまうという問題があった。
【0039】
しかしながら、第1実施形態の推進力伝達装置11は、バンド14の内周面に爪部24が形成されているとともに仕切壁23を有するため、押し込み力がかかった際にバンド14の取り付け姿勢が挿し口3に対して斜めに変化するだけで、バンド14と挿し口3の外周面との間に滑りは生じずに固定状態を維持する。以下、その流れについて
図5及び
図6の遷移図を用いて具体的に説明する。
【0040】
図5、
図6(A)、(B)、(C)は、
図4のα-α断面図である。
図5は、後行管5に押し込み力(荷重)が掛かっていない初期状態(「第1段階」)を示している。
【0041】
第1段階から後行管5に対して押し込み力が掛かると、バンド14には押し込み力とは反対方向への力が働き、
図6(A)に示すように、推進力伝達手段13A、13Cのそれぞれの仕切壁23が同様に変形する状態(「第2段階」)へと遷移する。
【0042】
第2段階から後行管5に対して更に押し込み力が掛かり、所定の力を超えると、
図6(B)、
図6(C)に示すように、推進力伝達手段13Aの仕切壁23が、推進力伝達手段13Cの仕切壁23よりも大きく変形し、バンド14の取り付け姿勢が斜めに変化した状態(「第3段階」)へと遷移する。推進力伝達手段13Aの仕切壁23が、推進力伝達手段13Cの仕切壁23よりも大きく変形する理由は、爪部24が第1領域(
図4参照)のみに設けられているため、同じ第1領域に設けられた推進力伝達手段13Aの方が、第2領域(
図4参照)に設けられている推進力伝達手段13Cよりも大きな押し込み力を先行管2に伝達する(推進力伝達手段13Aの仕切壁23に掛かる力の方がより大きい)ためである。このように、第1実施形態に係る推進力伝達装置11によれば、押し込み力が上昇した場合であっても、バンド14の取り付け姿勢が斜めに変化するだけで、バンド14(推進力伝達装置11)と、挿し口3の外周面との間に滑りが生じることがない。なお、
図6(A)、(B)に示すように、仕切壁23が変形した分だけ、バンド14(ブラケット18)の端面(管の後方側の端面)と、推進力伝達部材17の端面(管の後方側の端面)は、二つの面の間に段差が無くフラットな当初の状態(
図5参照)から二つの面がずれた状態となる。
【0043】
以上説明したように、第1実施形態に係る推進力伝達装置11は、先行管2の受け口1に後行管5の挿し口3を嵌め込むことにより接合した管を、順次、さや管内に押し込んで、新設管をさや管内に敷設する推進敷設工法に使用され、挿し口3の外周面に固定される。また、推進力伝達装置11は、挿し口3の外周面に取り付けられるリング状のバンド14を含み、バンド14の推進力伝達手段13(「推進力伝達部」の一例)は、受け口1の端面1aに当接して、後行管5の押し込み力を先行管2に伝達し、爪部24(「摩擦力向上部」の一例)及び仕切壁23(「変形部」の一例)(爪部24及び仕切壁23は「姿勢変化手段」の一例)は、押し込み力が所定の力を超えた場合に、バンド14の取り付け姿勢を変化させる。
【0044】
また、バンド14をその軸直交断面において中心Oを通る直線Lで2つの領域に分けた場合の、第1領域(「一方の領域」の一例)の内周面の少なくとも一部に形成された爪部24が、内周面における他の部分よりも挿し口3の接触面との摩擦力を高くし、推進力伝達手段13に形成された仕切壁23が、押し込み力が所定の力を超えた場合に変形することにより、押し込み力が所定の力を超えた場合に、バンド14の取り付け姿勢を変化させる。
【0045】
したがって、第1実施形態に係る推進力伝達装置11によれば、後行管5への後方からの押し込み力が大きくなり所定の力を超えた場合に、バンド14の取り付け姿勢が斜めに変化するため、推進途中でバンド14(推進力伝達装置11)と、後行管5の挿し口3の外周面との間に滑りが生じることがない。
【0046】
[第2実施形態]
次に、この発明の推進敷設工法用推進力伝達装置の第2実施態様を、図面を参照しながら説明する。なお、第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の部材については同一の符号を用いて説明を省略する。
【0047】
図7は、第2実施形態に係る推進力伝達装置を示す斜視図、
図8(A)は、第2実施形態に係る推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、初期状態(第1段階)の断面図、
図8(B)は、第2実施形態に係る推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第2段階の断面図、
図8(C)は、第2実施形態に係る推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第3段階の断面図である。
【0048】
図7に示すように、第2実施形態に係る推進力伝達装置11は、3つの推進力伝達手段13A、13B、13Cを有しており、第2領域(
図4参照)に設けられている推進力伝達手段13Cにおける推進力伝達部材17Cの長手方向の長さが、第1領域(
図4参照)に設けられている推進力伝達手段13A、13Bにおける推進力伝達部材17A、17Bの長手方向の長さよりも長くなっている。
【0049】
第2実施形態に係る推進力伝達装置11の固定位置は、挿し口3を受け口1に嵌め込んだときに、先行管2と後行管5との管接合部が伸縮可能となる位置で、推進力伝達手段13Cの先端部が受け口1の端面1aに当接する位置とする。
【0050】
第2実施形態に係る推進力伝達装置11は、バンド14の内周面に爪部24が形成されているとともに、推進力伝達部材17Cの長手方向の長さが、推進力伝達部材17A、17Bの長手方向の長さよりも長いため、バンド14が推進中に滑りそうになってもバンド14の取り付け姿勢が挿し口3に対して斜めに変化するだけで、バンド14と、挿し口3の外周面との間に滑りが生じることはない。以下、その流れについて
図8の遷移図を用いて具体的に説明する。
【0051】
図8(A)、(B)、(C)は、第2実施形態に係る推進力伝達装置11のα-α断面図(
図4参照)である。
図8(A)は、後行管5に押し込み力(荷重)が掛かっていない初期状態(「第1段階」)を示している。第1段階では、推進力伝達部材17Cの長さが、推進力伝達部材17Aの長さよりも長いため、推進力伝達部材17Cが先行管2の受け口1の端面1aに当接するのに対して、推進力伝達部材17Aは先行管2の受け口1の端面1aに当接せず、両者の間に隙間Gが空いている。
【0052】
第1段階から後行管5に押し込み力が掛かると、まずは、推進力伝達部材17Cのみが先行管2の端面1aに当接して押し込み力により先行管2をさや管内に押し込む。そして、後行管5に押し込み力が更に掛かると、推進力伝達部材17Aが、受け口1の端面1aに当接していないため、
図8(B)に示すように、バンド14の取り付け姿勢が斜めに変化し、推進力伝達部材17Cと、推進力伝達部材17A(17B)の双方が、先行管2の受け口1の端面1aに当接する状態(「第2段階」)に遷移する。そして、3つの推進力伝達部材17A、17B、17Cが先行管2の端面1aに当接して押し込み力により先行管2をさや管内に押し込む。
【0053】
第2段階から後行管5に対して更に押し込み力が掛かると、
図8(C)に示すように、推進力伝達手段13Aの仕切壁23が、推進力伝達手段13Cの仕切壁23よりも変形し、バンド14の取り付け姿勢が更に斜めに変化した状態(「第3段階」)へと遷移する。推進力伝達手段13Aの仕切壁23が、推進力伝達手段13Cの仕切壁23よりも大きく変形する理由は、爪部24が第1領域(
図4参照)のみに設けられているため、同じ第1領域に設けられた推進力伝達手段13Aの方が、第2領域(
図4参照)に設けられている推進力伝達手段13Cよりも大きな押し込み力を先行管2に伝達する(推進力伝達手段13Aの仕切壁23に掛かる力の方がより大きい)ためである。このように、第2実施形態に係る推進力伝達装置11によれば、押し込み力が上昇した場合であっても、バンド14の取り付け姿勢が斜めに変化するだけで、バンド14(推進力伝達装置11)が推進中に滑ることがない。なお、第2段階で既にバンド14の取り付け姿勢が斜め変化しているため、押し込み力がそれほど過大ではない場合には第3段階まで姿勢が変化することなく推進が可能である。
【0054】
以上説明したように、第2実施形態に係る推進力伝達装置11は、挿し口3の外周面に取り付けられるリング状のバンド14を含み、バンド14の推進力伝達手段13(「推進力伝達部」の一例)は、受け口1の端面1aに当接して、後行管5の押し込み力を先行管2に伝達し、爪部24(「摩擦力向上部」の一例)及び推進力伝達部材17C(「第1当接部」の一例)(爪部24及び推進力伝達部材17Cは「姿勢変化手段」の一例)は、押し込み力が所定の力を超えた場合に、バンド14の取り付け姿勢を変化させる。
【0055】
また、バンド14をその軸直交断面において中心Oを通る直線Lで2つの領域に分けた場合の、第1領域(「一方の領域」の一例)の内周面の少なくとも一部に形成された爪部24が、内周面における他の部分よりも挿し口3の接触面との摩擦力を高くし、第2領域(「他方の領域」の一例)に位置する推進力伝達部材17Cが、受け口1の端面1aに最初に当接することにより、押し込み力が所定の力を超えた場合に、バンド14の取り付け姿勢を変化させる。
【0056】
したがって、第2実施形態に係る推進力伝達装置11によれば、後行管5への後方からの押し込み力が大きくなり所定の力を超えた場合に、バンド14の取り付け姿勢が斜めに変化するため、バンド14と、後行管5の挿し口3の外周面との間に滑りが生じることがない。
【0057】
[第3実施形態]
次に、この発明の推進敷設工法用推進力伝達装置の第3実施態様を、図面を参照しながら説明する。なお、第3実施形態の説明では、第1実施形態と同様の部材については同一の符号を用いて説明を省略する。
【0058】
図9(A)は、第3実施形態に係る推進力伝達装置を示す斜視図、
図9(B)は、第3実施形態に係る推進力伝達装置の断面図、
図10(A)は、第3実施形態に係る推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、初期状態(第1段階)の断面図、
図10(B)は、第3実施形態に係る推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第2段階の断面図、
図10(C)は、第3実施形態に係る推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第3段階の断面図である。
【0059】
図9(A)に示すように、第3実施形態に係る推進力伝達装置11は、後行管5の挿し口3の外周面に装着されるリング状の締め付け手段12を有している。バンド14の一方の端面には突起部31が形成されている。バンド14の一方の端面は、先行管2の受け口1の端面1aに当接して、後行管5の押し込み力を先行管2に伝達する。
【0060】
図9(B)に示すように、バンド14をその軸直交断面において中心Oを通る直線Lで2つの領域に分けた場合の、その一方の領域(
図9(B)において直線Lの下方の領域)を「第1領域」といい、他方の領域(
図9(B)において直線Lの上方の領域)を「第2領域」という。爪部24は、バンド14の第1領域に設けられており、突起部31はバンド14の第2領域に形成されている。
【0061】
第3実施形態に係る推進力伝達装置11の固定位置は、挿し口3を受け口1に嵌め込んだときに、バンド14の突起部31が受け口1の端面1aに当接する位置とする。
【0062】
第3実施形態に係る推進力伝達装置11は、バンド14の内周面に爪部24が形成されているとともに、バンド14に突起部31が形成されているため、バンド14が滑りそうになってもバンド14の取り付け姿勢が挿し口3に対して斜めに変化するだけで、バンド14と、挿し口3の外周面との間に滑りが生じることはない。以下、その流れについて
図10の遷移図を用いて具体的に説明する。
【0063】
図10(A)、(B)、(C)は、第3実施形態に係る推進力伝達装置11のβ-β断面図(
図9(B)参照)である。
図10(A)は、後行管5に押し込み力(荷重)が掛かっていない初期状態(「第1段階」)を示している。第1段階では、バンド14の突起部31がバンド14の端面から突起しているため、突起部31が先行管2の受け口1の端面1aに当接するのに対して、バンド14の端面(突起部31を除く)は先行管2の受け口1の端面1aに当接せず、両者の間に隙間Gが空いている。
【0064】
第1段階から後行管5に押し込み力が掛かると、まずは、バンド14の突起部31のみが先行管2の端面1aに当接して押し込み力により先行管2をさや管内に押し込む。そして、後行管5に押し込み力が更に掛かると、バンド14の爪部24近傍の端面が受け口1の端面1aに当接していないため、
図10(B)に示すように、バンド14の取り付け姿勢が斜めに変化し、バンド14の端面(突起部31を除く)と受け口1の端面1aの間の隙間Gが狭くなる状態(「第2段階」)に遷移する。
【0065】
第2段階から後行管5に対して更に押し込み力が掛かると、
図10(C)に示すように、バンド14の突起部31と、爪部24近傍の端面の双方が、先行管2の受け口1の端面1aに当接する状態(「第3段階」)に遷移する。そして、バンド14の突起部31とバンド14の端面が押し込み力により先行管2をさや管内に押し込む。このようにバンド14の取り付け姿勢が第2段階より斜めに変化するのは、爪部24が設けられていない突起部31側(
図10(C)の上側)の方が挿し口3との間で働く摩擦力が低く滑るためである。このように、第3実施形態に係る推進力伝達装置11によれば、押し込み力が上昇した場合であっても、バンド14の取り付け姿勢が斜めに変化するだけで、推進中にバンド14(推進力伝達装置11)と、挿し口3の外周面との間に滑りが生じることがない。なお、この第3実施形態も第2実施形態同様、第2段階で既にバンド14の取り付け姿勢が斜め変化しているため、押し込み力がそれほど過大ではない場合には第3段階まで姿勢が変化することなく推進が可能である。
【0066】
以上説明したように、第3実施形態に係る推進力伝達装置11は、挿し口3の外周面に取り付けられるリング状のバンド14を含み、バンド14の端面(「推進力伝達部」の一例)は、受け口1の端面1aに当接して、後行管5の押し込み力を先行管2に伝達し、爪部24(「摩擦力向上部」の一例)及びバンド14の端面に形成された突起部31(「第1当接部」の一例)(爪部24及び突起部31は「姿勢変化手段」の一例)は、押し込み力が所定の力を超えた場合に、バンド14の取り付け姿勢を変化させる。
【0067】
また、バンド14をその軸直交断面において中心Oを通る直線Lで2つの領域に分けた場合の、第1領域(「一方の領域」の一例)の内周面の少なくとも一部に形成された爪部24が、内周面における他の部分よりも挿し口3の接触面との摩擦力を高くし、第2領域(「他方の領域」の一例)に位置し、バンド14の軸方向に突出している突起部31が、受け口1の端面1aに最初に当接することにより、押し込み力が所定の力を超えた場合に、バンド14の取り付け姿勢を変化させる。
【0068】
したがって、第3実施形態に係る推進力伝達装置11によれば、後行管5への後方からの押し込み力が大きくなり所定の力を超えた場合に、バンド14の取り付け姿勢が斜めに変化するため、バンド14と、後行管5の挿し口3の外周面との間に滑りが生じることがない。
【0069】
[第4実施形態]
次に、この発明の推進敷設工法用推進力伝達装置の第4実施態様を、図面を参照しながら説明する。なお、第4実施形態の説明では、第1実施形態と同様の部材については同一の符号を用いて説明を省略する。
【0070】
図11(A)は、第4実施形態に係る推進力伝達装置を示す部分断面斜視図、
図11(B)は、第4実施形態に係る推進力伝達装置の断面図、
図12(A)は、第4実施形態に係る推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、初期状態(第1段階)の断面図、
図12(B)は、第4実施形態に係る推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第2段階の断面図、
図12(C)は、第4実施形態に係る推進力伝達装置を装着した管接合部を示す、第3段階の断面図である。
【0071】
図11(A)に示すように、第4実施形態に係る推進力伝達装置11は、後行管5の挿し口3の外周面に装着されるリング状の締め付け手段12を有している。バンド14は、挿し口3の外周面に装着されるリング状のバンド本体14aを含み、バンド本体14aの一方の縁部には外周方向に立ち上がる支え壁14bが形成されている。また、バンド本体14aの外周面には推進力伝達部材32がリング状に設けられている。推進力伝達部材32は、支え壁14bに当接しつつ、バンド本体14aの他方の縁部からはみ出すように設けられている。
【0072】
推進力伝達部材32は、先行管2の受け口1の端面1aに当接して、後行管5の押し込み力を先行管2に伝達する。推進力伝達部材32は、押し込み力が所定の力を超えない場合には変形せず(押し潰されず)、後行管5の押し込み力を先行管2に伝達し、押し込み力が所定の力を超えた場合には変形する(押し潰される)材料からなっている。
【0073】
図11(B)に示すように、バンド14をその軸直交断面において中心Oを通る直線Lで2つの領域に分けた場合の、その一方の領域(
図11(B)において直線Lの下方の領域)を「第1領域」といい、他方の領域(
図11(B)において直線Lの上方の領域)を「第2領域」という。爪部24は、バンド14の第1領域に設けられており、推進力伝達部材32は第1領域及び第2領域にわたって設けられている。
【0074】
第4実施形態に係る推進力伝達装置11は、バンド14の内周面に爪部24が形成されているとともに、推進力伝達部材32が、押し込み力が所定の力を超えた場合に変形するため、バンド14の取り付け姿勢が挿し口3に対して斜めに変化するだけで、バンド14と、挿し口3の外周面との間に滑りは生じない。以下、その流れについて
図12の遷移図を用いて具体的に説明する。
【0075】
図12(A)、(B)、(C)は、第4実施形態に係る推進力伝達装置11のγ-γ断面図(
図11(B)参照)である。
図12(A)は、後行管5に押し込み力(荷重)が掛かっていない初期状態(「第1段階」)を示している。第1段階では、推進力伝達部材32が先行管2の受け口1の端面1aに当接する。
【0076】
第1段階から後行管5に押し込み力が掛かると、後行管5の押し込み力により先行管2をさや管内に押し込む。そして、後行管5の押し込み力が第1の所定の力を超えると、
図12(B)に示すように、推進力伝達部材32の第1領域に対応する部分及び第2領域に対応する部分が均等に変形する状態(「第2段階」)に遷移する。
【0077】
第2段階から後行管5に対して更に押し込み力が掛かり、第2の所定の力を超えると、
図10(C)に示すように、推進力伝達部材32の第1領域に対応する部分が、第2領域に対応する部分よりも大きく変形し、バンド14の取り付け姿勢が斜めに変化した状態(「第3段階」)へと遷移する。第1領域に対応する部分が、第2領域に対応する部分よりも大きく変形する理由は、爪部24が第1領域のみに設けられているため、第1領域に対応する部分の方が、第2領域に対応する部分よりも大きな押し込み力を先行管2に伝達する(第1領域に対応する部分に掛かる力の方がより大きい)ためである。このように、第4実施形態に係る推進力伝達装置11によれば、押し込み力が上昇した場合であっても、バンド14の取り付け姿勢が斜めに変化するだけで、バンド14(推進力伝達装置11)と、挿し口3の外周面との間に滑りが生じることがない。
【0078】
以上説明したように、第4実施形態に係る推進力伝達装置11は、挿し口3の外周面に取り付けられるリング状のバンド14を含み、推進力伝達部材32(「推進力伝達部」の一例)は、受け口1の端面1aに当接して、後行管5の押し込み力を先行管2に伝達し、爪部24(「摩擦力向上部」の一例)及び推進力伝達部材32(爪部24及び推進力伝達部材32は「姿勢変化手段」の一例)は、押し込み力が第2の所定の力を超えた場合に、バンド14の取り付け姿勢を変化させる。
【0079】
また、バンド14をその軸直交断面において中心Oを通る直線Lで2つの領域に分けた場合の、第1領域(「一方の領域」の一例)の内周面の少なくとも一部に形成された爪部24が、内周面における他の部分よりも挿し口3の接触面との摩擦力を高くし、推進力伝達部材32の第1領域に対応する部分が、押し込み力が第2の所定の力を超えた場合に、第2領域に対応する部分より大きく変形することにより、押し込み力が第2の所定の力を超えた場合に、バンド14の取り付け姿勢を変化させる。
【0080】
したがって、第4実施形態に係る推進力伝達装置11によれば、後行管5への後方からの押し込み力が大きくなり第2の所定の力を超えた場合に、バンド14の取り付け姿勢が斜めに変化するため、推進中にバンド14と、後行管5の挿し口3の外周面との間に滑りが生じることがない。
【0081】
なお、上記実施形態では、爪部24をバンド14の内周面であって、ボルト15とナット16によってバンド14を締め付ける部分の近傍に形成することとしたが(
図3、
図4参照)、第1領域の他の位置に形成することとしてもよいし、その数も複数であってもよい。また、爪部24の代わりに、バンド14の内周面における他の部分よりも挿し口3の接触面との摩擦力を高くする素材や形状からなる摩擦力向上部を第1領域に配置することとしてもよい。また、推進完了後に地震等により推進時の押し込み力を超える過大な力が加わった際には、推進力伝達部材の一部が変形、破損、バンドが滑るなどして、受け口1内への挿し口3の押し込みを許容する。
【0082】
上記各実施形態に係る推進力伝達装置11によれば、ボルト15とナット16により後行管5の外周面に締め付け固定されたバンド14が、当初の姿勢から斜めになることによってバンド14の周方向にさらなる引張力が生じることになる。この結果、引張力が、後行管5へのバンド14の固定力を向上させることによって、当初の姿勢よりも滑りにくい状態となる。
【0083】
また、爪部24が後行管5に食い込むまで(バンド14が密着するまで)ボルト15とナット16の締め付けを行うことにより、部分的な形状での凹凸の嵌合関係が構築されるため、バンド14が斜めの姿勢になる状況を容易に作ることができる。これにより作業者によるボルト15とナット16の締め付け強度のばらつきを吸収することができる。
【符号の説明】
【0084】
1:受け口
1a:端面
2:先行管
3:挿し口
4:抜け止め用突起
5:後行管
6:ロックリング
7:ロックリング用溝
8:芯出し用リング
9:ゴム輪
10:ゴム輪用溝
11:この発明の推進力伝達装置
12:締め付け手段
13:推進力伝達手段
14:バンド
15:ボルト
16:ナット
17:推進力伝達部材
17a:長孔
18:ブラケット
20:車輪
21:固定軸
22:ナット
23:仕切壁
24:爪部
31:突起部
32:推進力伝達部材