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特許7284049冠水検知装置、冠水検知システム、及び冠水検知プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】冠水検知装置、冠水検知システム、及び冠水検知プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20230523BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20230523BHJP
   G01W 1/00 20060101ALN20230523BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G08G1/13
G01W1/00 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019167664
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021043910
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595168749
【氏名又は名称】株式会社ウェザーニューズ
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】石原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】河合 英紀
(72)【発明者】
【氏名】山部 尚孝
(72)【発明者】
【氏名】西 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】矢野 裕幸
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024460(JP,A)
【文献】特開2003-161628(JP,A)
【文献】特開2015-207106(JP,A)
【文献】特開2011-185838(JP,A)
【文献】特開2016-103267(JP,A)
【文献】特開2007-051974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車速を含む車両の走行に関する複数種類の走行状態データと、複数の車両から収集した前記走行状態データを用いて予め導出した、車速を求める車種毎の車両挙動モデルとに基づいて、前記車両が走行する道路の冠水を検知した検知結果を取得する検知結果取得部と、
前記車両が走行する地域の降雨実績量を表す降雨情報を含む気象情報を取得する気象情報取得部と、
前記検知結果取得部及び前記気象情報取得部の各々の取得結果を用いて、冠水が検知された位置で予め定めた閾値以上の降雨実績がある位置を前記道路の冠水ポイントとして検出する検出部と、
を含む冠水検知装置。
【請求項2】
ソーシャル・ネットワーキング・サービスの投稿情報を収集する収集部を更に含み、
前記検出部が、前記検知結果取得部及び前記気象情報取得部の各々の取得結果と、前記収集部の収集結果とを用いて、冠水が検知された位置で予め定めた閾値以上の降雨実績がある位置、及び前記投稿情報がある冠水が検知された位置の少なくとも一方を前記冠水ポイントとして検出する請求項1に記載の冠水検知装置。
【請求項3】
前記走行状態データと、予め導出した車種毎の車両挙動モデルとに基づいて、前記車両が走行する道路の冠水を検知する検知部を更に含み、前記検知結果取得部が前記検知部から前記検知結果を取得する請求項1又は請求項2に記載の冠水検知装置。
【請求項4】
前記検知結果取得部は、前記走行状態データと、予め導出した車種毎の車両挙動モデルとに基づいて、前記車両が走行する道路の冠水を検知する検知部を備えた車両から前記検知結果を取得する請求項1又は請求項2に記載の冠水検知装置。
【請求項5】
前記気象情報は、降雨予測量を表す降雨予測情報を更に含み、
前記検出部によって検出された前記冠水ポイントを、前記検出部による冠水の検出時に用いられた前記気象情報と共に記録する記録部と、
前記気象情報取得部が取得した前記降雨予測情報が表す降雨予測量と、前記記録部に記録された前記冠水ポイントにおける前記降雨情報が表す降雨実績量とを用いて、前記記録部に記録された前記冠水ポイントの冠水を予測する冠水予測部と、を更に含む請求項1~4の何れか1項に記載の冠水検知装置。
【請求項6】
車両の走行に関する複数種類の走行状態データを検出する走行検出部と、
前記走行検出部が検出した前記複数種類の走行状態データを複数の前記車両から取得する取得部と、
車速を求める車種毎の車両挙動モデルを、前記取得部が複数の前記車両から予め取得した前記複数種類の走行状態データと、予め定めた学習モデルとを用いて導出する導出部と、
前記導出部が導出した前記車両挙動モデルと、予め定めた注目車両から前記取得部が取得した現在の前記複数種類の走行状態データとを用いて予測した前記車速と、前記注目車両から前記取得部が取得した現在の前記走行状態データから得られる前記車速とを用いて、前記注目車両が走行する道路の冠水を検知する検知部と、
前記車両が走行する地域の降雨実績量を表す降雨情報を含む気象情報を取得する気象情報取得部と、
前記検知部の検知結果及び前記気象情報取得部の取得結果の各々を用いて、冠水が検知された位置で予め定めた閾値以上の降雨実績がある位置を前記道路の冠水ポイントとして検出する検出部と、
を含む冠水検知システム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1~の何れか1項に記載の冠水検知装置の各部として機能させるための冠水検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冠水検知装置、冠水検知システム、及び冠水検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大量の降雨や他の場所に降った雨水などが流入することにより、道路が冠水することがある。このような道路の冠水を検知する技術としては、例えば、特許文献1、2の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1では、車両に液状有体物の存在を検知可能に構成された冠水センサを備えて道路の冠水を検知し、センタサーバに検知結果を送信し、他の車両に通過不能な冠水を通らないルートを設定して迂回ルートの案内を行うことが提案されている。
【0004】
特許文献2では、車両のワイパの拭き取り速度と動作時間とに基づいて、車両が走行している位置の降雨量を予測し、他車からの予測降雨量を基に、走行ルートに冠水が発生するか否かを予測することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-341795号公報
【文献】特開2012-216103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、冠水センサが必要であり、より簡易に冠水を判定するためには改善の余地がある。
【0007】
また、特許文献2の技術では、降雨量が同じでも全ての運転者が同じワイパ速度で作動させるとは限らず、冠水を正確に検出するためには改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、簡易かつ高精度に道路の冠水を検出可能な冠水検知装置、冠水検知システム、及び冠水検知プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の冠水検知装置は、車速を含む車両の走行に関する複数種類の走行状態データと、複数の車両から収集した前記走行状態データを用いて予め導出した、車速を求める車種毎の車両挙動モデルとに基づいて、前記車両が走行する道路の冠水を検知した検知結果を取得する検知結果取得部と、前記車両が走行する地域の降雨実績量を表す降雨情報を含む気象情報を取得する気象情報取得部と、前記検知結果取得部及び前記気象情報取得部の各々の取得結果を用いて、冠水が検知された位置で予め定めた閾値以上の降雨実績がある位置を前記道路の冠水ポイントとして検出する検出部と、を含む。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、検知結果取得部では、車両の走行に関する複数種類の走行状態データと、複数の車両から収集した前記走行状態データを用いて予め導出した、車速を求める車種毎の車両挙動モデルとに基づいて、車両が走行する道路の冠水を検知した検知結果が取得される。
【0011】
気象情報取得部では、車両が走行する地域の降雨実績量を表す降雨情報、及び降雨予測情報の少なくとも一方を含む気象情報が取得される。
【0012】
そして、検出部では、検知結果取得部及び気象情報取得部の各々の取得結果を用いて、冠水が検知された位置で予め定めた閾値以上の降雨実績がある位置を道路の冠水ポイントとして検出される。これにより、冠水検知センサを用いることなく、冠水を容易に検知することができると共に、高精度に道路の冠水を検出することが可能となる。
【0013】
なお、請求項2に記載の発明のように、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの投稿情報を収集する収集部を更に含み、検出部が、検知結果取得部及び気象情報取得部の各々の取得結果と、収集部の収集結果とを用いて、冠水が検知された位置で予め定めた閾値以上の降雨実績がある位置、及び投稿情報がある冠水が検知された位置の少なくとも一方を冠水ポイントとして検出してもよい。これにより、道路の冠水の検出精度を更に向上することが可能となる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明のように、走行状態データと、予め導出した車種毎の車両挙動モデルとに基づいて、車両が走行する道路の冠水を検知する検知部を更に含み、検知結果取得部が検知部から検知結果を取得してもよい。
【0015】
また、請求項4に記載の発明のように、検知結果取得部は、走行状態データと、予め導出した車種毎の車両挙動モデルとに基づいて、車両が走行する道路の冠水を検知する検知部を備えた車両から検知結果を取得してもよい。
【0016】
また、請求項5に記載の発明のように、気象情報は、降雨予測量を表す降雨予測情報を更に含み、検出部によって検出された冠水ポイントを、検出部による冠水の検出時に用いられた気象情報と共に記録する記録部と、気象情報取得部が取得した降雨予測情報が表す降雨予測量と、記録部に記録された冠水ポイントにおける降雨情報が表す降雨実績量とを用いて、記録部に記録された冠水ポイントの冠水を予測する冠水予測部と、を更に含んでもよい。
【0017】
一方、請求項6に記載の冠水検知システムは、車両の走行に関する複数種類の走行状態データを検出する走行検出部と、前記走行検出部が検出した前記複数種類の走行状態データを複数の前記車両から取得する取得部と、車速を求める車種毎の車両挙動モデルを、前記取得部が複数の前記車両から予め取得した前記複数種類の走行状態データと、予め定めた学習モデルとを用いて導出する導出部と、前記導出部が導出した前記車両挙動モデルと、予め定めた注目車両から前記取得部が取得した現在の前記複数種類の走行状態データとを用いて予測した前記車速と、前記注目車両から前記取得部が取得した現在の前記走行状態データから得られる前記車速とを用いて、前記注目車両が走行する道路の冠水を検知する検知部と、前記車両が走行する地域の降雨実績量を表す降雨情報を含む気象情報を取得する気象情報取得部と、前記検知部の検知結果及び前記気象情報取得部の取得結果の各々を用いて、冠水が検知された位置で予め定めた閾値以上の降雨実績がある位置を前記道路の冠水ポイントとして検出する検出部と、を含む。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、検出部では、車両の走行に関する複数種類の走行状態データが検出される。
【0019】
取得部では、検出部が検出した複数種類の走行状態データが複数の車両から取得される。
【0020】
導出部では、車速を求める車種毎の車両挙動モデルが、取得部が複数の車両から予め取得した複数種類の走行状態データと、予め定めた学習モデルとを用いて導出される。
【0021】
検知部では、導出部が導出した車両挙動モデルと、予め定めた注目車両から取得部が取得した現在の複数種類の走行状態データとを用いて予測した車速と、注目車両から取得部が取得した現在の走行状態データから得られる車速とを用いて、注目車両が走行する道路の冠水が検知される。
【0022】
気象情報取得部では、車両が走行する地域の降雨実績量を表す降雨情報を含む気象情報が取得される。
【0023】
そして、検出部では、検知部の検知結果及び気象情報取得部の取得結果の各々を用いて、冠水が検知された位置で予め定めた閾値以上の降雨実績がある位置を道路の冠水ポイントとして検出される。これにより、冠水検知センサを用いることなく、冠水を容易に検知することができる。また、走行状態データだけではなく気象情報を加味して冠水を検出するので、高精度に道路の冠水を検出することが可能となる。
【0024】
なお、コンピュータを、請求項1~6の何れか1項に記載の冠水検知装置の各部として機能させるための冠水検知プログラムとしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、簡易かつ高精度に道路の冠水を判定可能な冠水検知装置を提供できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る冠水検知システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】車速の予測値と実測値を用いたエラー(冠水)判定の一例を説明するための図である。
図3】車種とモデルの係数とを対応づけたテーブルの一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る冠水検知システムの冠水判定センタにおいて、車両挙動モデルを機械学習によって導出する際に中央処理部で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】本実施形態に係る冠水検知システムの冠水判定センタにおいて、冠水を判定する際に中央処理部で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】本実施形態に係る冠水検知システムにおいて、情報収集部が収集したSNSの投稿情報や、気象データを用いて、中央処理部が行う冠水判定の精度を向上する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態に係る冠水検知システムの冠水予測部で行われる冠水予測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】CANデータによる冠水判定処理で冠水判定された位置において降雨実績がある場合、及び冠水報告を表すSNSの投稿情報がある場合のそれぞれの場合に、冠水ポイントとして冠水ポイントデータベースに記録する場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】CANデータによる冠水判定処理で冠水判定された位置において降雨実績がある場合、及びCANデータによる冠水判定処理で冠水判定された位置における冠水報告を表すSNSの投稿情報がある場合のそれぞれの場合に、冠水ポイントとして冠水ポイントデータベースに記録する場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】CANデータを用いた冠水判定を各車両に搭載された情報提供装置側で行う場合の冠水検知システムの構成例を示すブロック図である。
図11】気象情報センタ60が、気象データ、冠水検出情報、及びSNSの投稿情報を収集して、冠水エリアマップを提供するサービスを行う例を示す図である。
図12】車両挙動モデルの他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る冠水検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【0028】
本実施形態に係る冠水検知システム10は、複数の車両12に搭載された情報提供装置14、冠水判定センタ36、気象情報センタ60、及びSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)サーバ62の各々が通信ネットワーク34を介して接続されている。
【0029】
気象情報センタ60は、気象に関する各種気象データを気象情報として通信ネットワーク34に接続された装置に提供する。気象情報としては、例えば、場所毎の降雨実績量及び降雨予測量の少なくとも一方の気象データを含む。なお、以下の説明では、気象データは主に降雨実績量として説明するが、降雨実績量を検出できない地域等では、降雨予測量を用いてもよい。
【0030】
SNSサーバ62は、予め登録されたユーザ間でコミュニケーションを取るサービスを提供する。例えば、ユーザが各種情報を投稿情報としてSNSサーバ62に投稿し合うことでユーザ間のコミュニケーションを取る。
【0031】
冠水判定センタ36は、複数の車両12に搭載された情報提供装置14から車両12の走行状態データをCAN(Controller Area Network)データとして収集すると共に、気象情報センタ60から気象データを取得する。そして、収集したCANデータ、気象データ、及びSNSの投稿情報等を用いて各車両12が走行している道路の冠水を判定する処理を行う。また、冠水判定センタ36は、冠水判定された冠水ポイントの履歴と気象データとを用いて冠水予測を行う。
【0032】
各車両12に搭載された情報提供装置14は、演算部16、GPS受信部18、加速度センサ20、表示部22、車速センサ24、通信部26、勾配センサ28、アクセルペダルセンサ30、及びブレーキペダルセンサ32を備えている。なお、加速度センサ20、車速センサ24、勾配センサ28、アクセルペダルセンサ30、及びブレーキペダルセンサ32は、走行検出部に対応する。
【0033】
演算部16は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を含む一般的なマイクロコンピュータで構成されている。
【0034】
GPS受信部18は、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信して受信したGPS信号を演算部16に出力する。これにより、演算部16は、複数のGPS衛星からのGPS信号に基づいて、自車両12の位置を測位する。
【0035】
加速度センサ20は、自車両12に加わる加速度を走行状態データとして検出し、検出結果を演算部16に出力する。加速度は、車両12の前後方向、幅方向、及び上下方向の各々の方向を検出してもよいが、車両12の前後方向の加速度のみを検出してもよい。
【0036】
表示部22は、冠水判定センタ36によって冠水判定された冠水ポイントの情報(例えば、地図情報等)や、各種情報を表示する。
【0037】
車速センサ24は、自車両12の走行速度を走行状態データとして検出し、検出結果を演算部16に出力する。
【0038】
通信部26は、通信ネットワーク34と無線通信を行うことにより、冠水判定センタ36や、他の車両12に搭載された情報提供装置14と通信する。通信ネットワーク34としては、例えば、携帯電話回線網等の無線通信回線網を含む。
【0039】
勾配センサ28は、車両12の傾きを検出することにより、車両12が走行している勾配を走行状態データとして検出し、検出結果を演算部16に出力する。勾配は、車両12の前後方向の勾配のみを検出してもよいし、車幅方向の勾配も加えて検出してもよい。
【0040】
アクセルペダルセンサ30は、アクセルペダルの踏み込み量を走行状態データとして検出し、検出結果を演算部16に出力する。
【0041】
ブレーキペダルセンサ32は、ブレーキペダルの操作状態を走行状態データとして検出し、検出結果を演算部16に出力する。
【0042】
本実施形態では、走行状態データとして、加速度センサ20、車速センサ24、勾配センサ28、アクセルペダルセンサ30、及びブレーキペダルセンサ32の検出結果を一例として検出する例を説明するが、これらに限るものではない。
【0043】
演算部16は、各センサから取得した複数種類の走行状態データ及び車種を識別する車種IDを、通信部26及び通信ネットワーク34を介して冠水判定センタ36に送信する。
【0044】
一方、冠水判定センタ36は、中央処理部38、中央通信部48、モデル記憶部50、CANデータベース52、及び冠水ポイントデータベース56を備えている。
【0045】
中央通信部48は、通信ネットワーク34と無線通信を行うことにより、各車両12に搭載された情報提供装置14と通信する。
【0046】
モデル記憶部50は、車両12が走行することにより変化する物理量(詳細は後述)を求める車両挙動モデルと、車種毎に設定された係数テーブルを記憶する。
【0047】
CANデータベース52は、各車両12に搭載された情報提供装置14から取得した走行状態データをCANデータとして記憶する。
【0048】
中央処理部38は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を含む一般的なコンピュータで構成されている。中央処理部38は、予測部40、判定部42、モデル更新部46、情報収集部54、及び冠水予測部44の機能を有する。各機能は、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。なお、中央処理部38の各機能は、検知結果取得部、気象情報取得部、検出部、収集部、検知部、記録部、冠水予測部、取得部、及び導出部に相当し、詳細は後述する処理に対応する。
【0049】
情報収集部54は、各種SNSサーバ62を介してユーザ間でやり取りされるSNSの投稿情報に含まれる冠水情報や、気象情報センタ60が提供する気象データ等の情報を収集する。
【0050】
予測部40は、モデル記憶部50に予め記憶した車両挙動モデルを読み出し、車種IDから車種を特定して、車種に対応する係数を選択して車両挙動モデルに適用することで車種毎の車両挙動モデルを導出する。そして、導出した車両挙動モデルにCANデータを代入することにより、物理量の予測値を算出する。本実施形態では、予測する物理量として車速を適用し、車速を求めるために予め導出した車両挙動モデルに、車種に対応する予め求めた係数を適用して、車速の予測値を算出する。なお、車速を求める車両挙動モデルの詳細については後述する。
【0051】
判定部42は、予測部40によって予測した車速と、情報提供装置14から取得した実際の車速とを比較して、道路の冠水の有無を判定する。具体的には、予測値と実測値との差が予め定めた閾値以上の場合に冠水と判定することにより道路の冠水を検知する。例えば、図2に示すように、時間経過に対して、実測値と予測値が変化した場合には、実測値と予測値との差が予め定めた閾値以上の状態が所定時間(例えば、5秒以上)継続した区間で、判定部42は、エラー(冠水)と判定する。さらに、判定部42は、情報収集部54が収集したSNSの投稿情報や、気象データを用いて、CANデータによる冠水判定の精度を向上する処理を行う。
【0052】
モデル更新部46は、CANデータベース52に記憶されたCANデータを用いて車両挙動モデルの係数を機械学習によって導出し、モデル記憶部50に記憶すると共に、随時モデルの係数テーブルを更新する。
【0053】
続いて、上述の車速を求める車両挙動モデルの一例について詳細に説明する。本実施形態では、運動方程式を用いて物理量として車速を求める車両挙動モデルを導出する。
【0054】
まず、運動方程式は、以下の(1)式で表せる。
【0055】
M×(dv/dt)=F ・・・(1)
【0056】
なお、Mは車両重量、dv/dtは加速度、Fは車両12が前に進む力である。
【0057】
ここで、dv/dtは近似的に以下の(2)式で表せる。
【0058】
dv/dt=(v(t+Δt)-v(t))/Δt ・・・(2)
【0059】
なお、v(t+Δt)はΔt秒後の車速(予測した車速)、tは時間、v(t)は現在の時刻の車速である。
【0060】
(2)式を(1)式に代入すると、以下の(3)式が得られる。
【0061】
M×(v(t+Δt)-v(t))/Δt=F ・・・(3)
【0062】
v(t+Δt)について整理すると、以下の(4)式となる。
【0063】
v(t+Δt)=v(t)+(F/M)×Δt ・・・(4)
【0064】
ここで、Fの項は、F=F1(車両12の駆動力)-F2(車両12が受ける抵抗)であるが、CANデータを用いると、
【0065】
F1=C1×R ・・・(5)
【0066】
なお、C1は係数、Rはアクセル踏込み量であり、CANデータから得られる。
【0067】
F2=空気抵抗+勾配抵抗+転がり抵抗+加速抵抗 ・・・(6)
【0068】
空気抵抗=C21×v(t)
【0069】
勾配抵抗=C22×sinθ
【0070】
転がり抵抗=C23×v(t)
【0071】
加速抵抗=C24×a(t)
【0072】
なお、C21、C22、C23、C24は係数、θは路面勾配、v(t)は車速、a(t)は加速度であり、CANデータから得られる。
【0073】
(5)式及び(6)式を(4)式に代入して、下記の重回帰式を車両挙動モデルとして得ることができる。
【0074】
v(t+Δt)=v(t)+{C1×R-(C21×v(t)+C22×sinθ+C23×v(t)+C24×a(t))}×(Δt/M) ・・・(7)
【0075】
各係数は、複数の車両12から収集してCANデータベースに記憶された大量のCANデータを用いて、重回帰分析の学習モデルにより求めて係数テーブルとしてモデル記憶部50に記憶する。また、CANデータを新たに取得する毎に、モデル記憶部50に記憶された係数を更新する。また、車種毎に係数が異なるため、車種毎に係数を求めて更新する。例えば、モデル記憶部50に記憶する係数は、図3に示すように、車種とモデルの係数とを対応づけてテーブルとして記憶する。
【0076】
続いて、上述のように構成された本実施形態に係る冠水検知システム10において、冠水判定センタ36において中央処理部38が車両挙動モデルを導出する際の処理について説明する。図4は、本実施形態に係る冠水検知システム10の冠水判定センタ36において、車両挙動モデルを機械学習によって導出する際に中央処理部38で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図4の処理は、車両挙動モデルの初期の係数を導出する際に行われると共に、CANデータベース52にCANデータが収集される毎に行われる。
【0077】
ステップ100では、モデル更新部46が、中央通信部48を介してCANデータベース52に収集した走行状態データとしてのCANデータを取得してステップ102へ移行する。なお、ステップ100は取得部に相当する。
【0078】
ステップ102では、モデル更新部46が、取得したCANデータの前処理を行ってステップ104へ移行する。前処理としては、例えば、日時及び車種毎にCANデータをソートし、時間毎及び車種毎に分類する。また、CANデータ毎に、時間を統一してデータの欠損に対して補間等の処理を行ってもよい。
【0079】
ステップ104では、モデル更新部46が、モデル式を決定し、モデル記憶部50に記憶して一連の処理を終了する。すなわち、CANデータを用いて上述の車両挙動モデルとしての重回帰式の各係数を機械学習により導出してモデル記憶部50に記憶する。既に各係数が記憶されている場合には、各係数を更新する。なお、ステップ104は導出部に相当する。
【0080】
次に、冠水判定センタ36において中央処理部38が各車両12からのCANデータに基づいて冠水を判定する際に行われる処理について説明する。図5は、本実施形態に係る冠水検知システム10の冠水判定センタ36において、冠水を判定する際に中央処理部38で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図5の処理は、後述する冠水判定の精度を向上する処理中に行われるものとする。
【0081】
ステップ200では、中央処理部38が、中央通信部48及び通信ネットワーク34を介して情報提供装置14からCANデータを取得してステップ202へ移行する。なお、ステップ200は取得部に相当し、以降のステップ202~210の処理が検知部に相当する。
【0082】
ステップ202では、予測部40が、取得したCANデータと車両挙動モデルとを用いて車速の予測値を算出してステップ204へ移行する。すなわち、モデル記憶部50に記憶した車両挙動モデルを読み出して、車種IDから車種を特定して車種に対応する係数を選択して車両挙動モデルに適用する。そして、取得したCANデータを車両挙動モデルに代入することで、車速の予測値を算出する。
【0083】
ステップ204では、判定部42が、車速の予測値と、情報提供装置14から取得した実際のCANデータの車速の実測値とを比較してステップ206へ移行する。
【0084】
ステップ206では、判定部42が、予測値と実測値との差が予め定めた閾値以上であるか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ208へ移行し、肯定された場合にはステップ210へ移行する。
【0085】
ステップ208では、判定部42が、CANデータを取得した車両12が走行する道路が冠水していない非冠水であると判定して一連の処理を終了する。
【0086】
一方、ステップ210では、判定部42が、CANデータを取得した車両12が走行する道路が冠水していると判定して一連の処理を終了する。
【0087】
続いて、本実施形態に係る冠水検知システム10において、情報収集部54が収集したSNSの投稿情報や、気象データを用いて、中央処理部38が行う冠水判定の精度を向上する処理について説明する。図6は、本実施形態に係る冠水検知システム10において、情報収集部54が収集したSNSの投稿情報や、気象データを用いて、中央処理部38が行う冠水判定の精度を向上する処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図7の処理は、例えば、各車両12の情報提供装置14からCANデータを取得する毎、或いは、予め定めた量のCANデータを取得する毎に開始する。
【0088】
ステップ300では、中央処理部38が、CANデータによる冠水判定処理を行ってステップ302へ移行する。すなわち、上述の図5に示す冠水判定処理を行うことにより冠水判定結果を取得する。なお、ステップ300は、検知結果取得部に相当する。
【0089】
ステップ302では、情報収集部54が、中央通信部48及び通信ネットワーク34を介してSNSサーバ62にアクセスすることにより、冠水情報を含むSNSの投稿情報を収集してステップ304へ移行する。なお、ステップ302は、収集部に相当する。
【0090】
ステップ304では、情報収集部54が、中央通信部48及び通信ネットワーク34を介して気象情報センタ60にアクセスすることにより、気象データを取得してステップ306へ移行する。なお、ステップ304は、気象情報取得部に相当する。
【0091】
ステップ306では、判定部42が、ステップ300によるCANデータによる冠水判定処理において冠水判定された位置で、予め定めた閾値以上の降雨実績があるか否かを気象データに基づいて判定する。該判定が肯定された場合にはステップ308へ移行し、否定された場合には一連の処理を終了する。なお、ステップ306の判定は、予め定めた閾値以上の降雨実績があるエリア内でステップ300によるCANデータによる冠水判定処理で冠水判定があるか否かを判定してもよい。
【0092】
ステップ308では、判定部42が、ステップ306の閾値以上の降雨実績がある冠水判定された位置のユーザ報告があるか否かを判定する。該判定は、ステップ300によるCANデータによる冠水判定処理によって冠水判定された位置における冠水報告を表すSNSの投稿情報を取得したか否かを判定する。該判定が肯定された場合にはステップ310へ移行し、否定された場合には一連の処理を終了する。
【0093】
ステップ310では、判定部42が、冠水ポイントデータベース56に冠水ポイントを記録して一連の処理を終了する。冠水ポイントを記録する際には、降雨実績量や降雨予想量等の気象データを共に記録する。なお、冠水ポイントデータベース56に記録した冠水ポイントは、例えば、中央通信部48を介して通信ネットワーク34に接続されている情報提供装置14に対して冠水情報を配信してもよい。これにより、各情報提供装置14を搭載した車両12では、冠水ポイントが分かるので、冠水ポイントを通行しないルートを選択することが可能となる。例えば、ナビゲーション装置により、冠水ポイントを通るルート案内が行われている場合に、冠水ポイントを避けるルートをリルートすることが可能となる。或いは、冠水ポイントの情報を必要としている天気予報会社等に配信して対価を得るようにしてもよい。なお、ステップ306~310は検出部に相当すると共に、ステップ310は記録部に相当する。
【0094】
続いて、本実施形態に係る冠水検知システムの冠水予測部44で行われる冠水予測処理について説明する。図7は、本実施形態に係る冠水検知システム10の冠水予測部44で行われる冠水予測処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図7の処理は、例えば、車両12の乗員が情報提供装置14から冠水予測の要求を冠水判定センタ36に対して行った場合に開始してもよい。或いは、気象情報センタ60から大雨警報、洪水警報、土砂災害警戒情報等の降雨に関する警報が発表された場合等に開始してもよい。
【0095】
ステップ400では、冠水予測部44が、中央通信部48及び通信ネットワーク34を介して気象情報センタ60から、降雨予測量や雨雲予測等の気象データを取得してステップ402へ移行する。
【0096】
ステップ402では、冠水予測部44が、冠水ポイントデータベース56に記録された冠水記録を読み出してステップ404へ移行する。
【0097】
ステップ404では、冠水予測部44が、降雨予測量と冠水記録を照合してステップ406へ移行する。すなわち、気象データとして取得した降雨予測量と、冠水ポイントとして記録された冠水ポイントの降雨実績量とを照合する。
【0098】
ステップ406では、冠水予測部44が、ステップ404の照合結果から、冠水ポイントにおける降雨予測量が冠水時の降雨実績量を超えるか否かを判定する。該判定が否定された場合にはそのまま処理を終了し、肯定された場合にはステップ408へ移行する。
【0099】
ステップ408では、冠水予測部44が、冠水を予測して一連の処理を終了する。なお、冠水を予測した場合には、中央通信部48を介して通信ネットワーク34に接続されている情報提供装置14に対して冠水予測情報を配信してもよい。
【0100】
なお、上記の実施形態における図6の冠水判定の精度を向上する処理では、CANデータによる冠水判定処理の判定結果、気象データ、及びSNSの投稿情報を用いて冠水判定を行うようにしたが、これに限るものではない。例えば、図6のステップ302、308を省略して、SNSの投稿情報は利用しないで冠水判定を行う形態としてもよい。或いは、ステップ304、306を省略して、ステップ308はCANデータによる冠水判定処理で冠水判定された位置のユーザ報告があるか否かを判定することで、気象データは利用しないで冠水判定を行う形態としてもよい。
【0101】
また、上記の実施形態における図6の冠水判定の精度を向上する処理では、CANデータによる冠水判定処理で冠水判定された位置で降雨実績があり、かつユーザ報告がある場合に冠水ポイントとして冠水ポイントデータベース56に記録したが、これに限るものではない。例えば、CANデータによる冠水判定処理で冠水判定された位置において降雨実績がある場合と、冠水位置の報告を表すSNSの投稿情報がある場合のそれぞれの場合に、冠水ポイントとして冠水ポイントデータベース56に記録する形態としてもよい。この場合には、図8に示す処理を行う。図8は、CANデータによる冠水判定処理で冠水判定された位置において降雨実績がある場合、及び冠水報告を表すSNSの投稿情報がある場合のそれぞれの場合に、冠水ポイントとして冠水ポイントデータベース56に記録する場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図6と同一処理については同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0102】
まず、図6と同様に、上述のステップ300~304の処理を行ってステップ306へ移行する。
【0103】
ステップ306では、図6と同様に、判定部42が、ステップ300によるCANデータによる冠水判定処理において冠水判定された位置で、予め定めた閾値以上の降雨実績があるか否かを気象データに基づいて判定する。該判定が否定された場合にはステップ307へ移行し、肯定された場合にはステップ310へ移行する。
【0104】
ステップ307では、判定部42が、冠水位置を表すユーザ報告があるか否かを判定する。該判定は、冠水位置を表すSNSの投稿情報を取得したか否かを判定する。該判定が肯定された場合にはステップ310へ移行し、否定された場合には一連の処理を終了する。
【0105】
或いは、CANデータによる冠水判定処理で冠水判定された位置において降雨実績がある場合と、CANデータによる冠水判定処理で冠水判定された位置における冠水報告を表すSNSの投稿情報がある場合のそれぞれの場合に、冠水ポイントとして冠水ポイントデータベース56に記録する形態としてもよい。この場合には、図9に示す処理を行う。図9は、CANデータによる冠水判定処理で冠水判定された位置において降雨実績がある場合、及びCANデータによる冠水判定処理で冠水判定された位置における冠水報告を表すSNSの投稿情報がある場合のそれぞれの場合に、冠水ポイントとして冠水ポイントデータベース56に記録する場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図8と同一処理については同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0106】
すなわち、図8のステップ307の代わりステップ309を実行する。ステップ309では、判定部42が、ステップ300によるCANデータによる冠水判定で冠水判定された位置のユーザ報告があるか否かを判定する。該判定は、ステップ300によるCANデータによる冠水判定で冠水判定された位置における冠水報告を表すSNSの投稿情報を取得したか否かを判定する。該判定が肯定された場合にはステップ310へ移行し、否定された場合には一連の処理を終了する。
【0107】
また、上記の実施形態では、冠水判定センタ36側でCANデータを用いた冠水判定を行う例を説明したが、これに限るものではない。例えば、CANデータを用いた冠水判定は、各車両12に搭載された情報提供装置14側で行うようにしてもよい。図10は、CANデータを用いた冠水判定を各車両12に搭載された情報提供装置14側で行う場合の冠水検知システムの構成例を示すブロック図である。この場合には、図10に示すように、予測部40、判定部42、及びモデル記憶部50の機能を情報提供装置14に持たせる。すなわち、モデル記憶部50には、情報提供装置14を搭載する車両12の車種に応じた車両挙動モデルを予め導出して記憶しておく。或いは、車種毎の複数の車両挙動モデルを予め導出して記憶しておき、使用する際に自車両に対応する車両挙動モデルを選択する構成とする。そして、図5の処理を情報提供装置14の演算部16が実行することにより、予測部40によって予測値を算出して判定部42による冠水判定を上記実施形態と同様に行うことが可能となる。なお、冠水判定を各車両12に搭載された情報提供装置14側で行う場合は、図5の処理を演算部16が行う処理に適宜変換して行うものとする。また、この場合の演算部16が実行するステップ200の処理は取得部に相当し、ステップ202~210の処理は検知部に相当する。
【0108】
また、上記の実施形態では、冠水判定センタ36において、気象データ、SNSの投稿情報、及び走行状態データを収集する例を説明したが、これに限るものではない。例えば、気象情報センタ60が、気象データを収集すると共に、冠水判定センタ36から冠水判定結果を表す冠水検出情報を収集し、SNSサーバ62から投稿情報を収集する形態としてもよい。図11は、気象情報センタ60が、気象データ、冠水検出情報、及びSNSの投稿情報を収集して、冠水エリアマップを提供するサービスを行う例を示す図である。図11の例では、冠水判定センタ36が、各車両12からCANデータを収集してCANデータベース52に蓄積し、上記の実施形態と同様に、中央処理部38がCANデータを用いて冠水を判定する冠水判定ロジックを行うことで冠水を判定する。また、気象情報センタ60が、冠水判定ロジックの冠水判定結果を表す冠水検出情報を収集すると共に、気象データ及びSNSの投稿情報を収集する。そして、気象情報センタ60が、冠水検出情報、気象データ、及びSNSの投稿情報を用いて図6の処理を行って情報統合化を行うと共に、GUI(Graphical User Interface)化して、図11に示すように、地図上に冠水場所を表示した冠水エリアマップ70をお客様の携帯端末装置等に提供する。冠水エリアマップ70は、例えば、5分毎等の予め定めた時間毎、或いは、更新指示が行われた場合に更新する。
【0109】
また、上記の実施形態では、車両挙動モデルとして重回帰式を用いた例を説明したが、車両挙動モデルは、重回帰式による機械学習に限定されるものではない。例えば、車両挙動モデルは、図12に示すように、CANデータ(アクセル踏み込み量R、車速v(t)、路面勾配θ、加速度dv/dt等)を予測式の説明変数の各項に用いてΔt秒後の予測値v(t+Δt)を求める種々の予測モデルを適用できる。重回帰分析以外の予測モデルの一例としては、ニューラルネットワークや、サポートベクター回帰(SVR:Support Vector Regression)等の各種機械学習モデルを適用してもよい。
【0110】
また、上記の実施形態では、物理量として車速を求める車両挙動モデルを用いたが、物理量はこれに限るものではなく、例えば、加速度や、加速度の変化率など他の物理量を求める車両挙動モデルを用いてもよい。
【0111】
また、上記の実施形態では、空気抵抗、勾配抵抗、転がり抵抗、及び加速抵抗を車両が受ける抵抗F2として、車両挙動モデルを導出したが、車両が受ける抵抗F2はこれに限定されるものではない。例えば、転がり抵抗及び加速抵抗は他の抵抗に比べて小さいので、少なくとも一方の抵抗を省略してもよい。
【0112】
また、上記の各実施形態における冠水検知システム10の各部で行われる処理は、プログラムを実行することにより行われるソフトウエア処理として説明したが、これに限るものではない。例えば、ハードウエアで行う処理としてもよい。或いは、ソフトウエア及びハードウエアの双方を組み合わせた処理としてもよい。また、ソフトウエアの処理とした場合には、プログラムを各種記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
【0113】
さらに、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0114】
10 冠水検知システム
12 車両
14 情報提供装置
16 演算部
36 冠水判定センタ
38 中央処理部
40 予測部
42 判定部
44 冠水予測部
46 モデル更新部
50 モデル記憶部
52 CANデータベース
54 情報収集部
56 冠水ポイントデータベース
60 気象情報センタ
62 SNSサーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12