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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】加熱器具
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/00 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
A47J37/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019181530
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021053269
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】502397325
【氏名又は名称】株式会社きちりホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平川 昌紀
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-013425(JP,U)
【文献】米国特許第04745968(US,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2011-0011011(KR,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0186602(US,A1)
【文献】特開平03-193011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00-37/07
A21B 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物の内部を加熱するための加熱器具であって、
前記被調理物の外面から差し込まれる差し込み部と、
前記差し込み部に対して熱伝導可能に接続され、前記被調理物の外面よりも外側に位置するように配置される熱受け部と、
前記差し込み部が前記被調理物に差し込まれた状態において、前記被調理物の外面の位置を示す位置合わせ部と、
を備え、
前記差し込み部は、前記熱受け部から一方向に突出し、かつスリットによって離れた複数の差込刃を有し、
前記スリットの一部は、前記一方向において、前記位置合わせ部が示す前記外面の位置よりも前記熱受け部側に位置している、
加熱器具。
【請求項2】
前記熱受け部の表面積は、前記差し込み部の表面積よりも大きい、
請求項1に記載の加熱器具。
【請求項3】
前記複数の差込刃は板状に形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の加熱器具。
【請求項4】
前記加熱器具が平板状である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加熱器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱器具に関し、より詳細には、被調理物の内部を加熱するための加熱器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、ひき肉のパテや肉の塊等の被調理物に対して加熱調理を行うことで、被調理物を食べられる状態にしたり、食べやすい状態にしたりすることが行われている。例えば、特許文献1には、加熱調理に用いられる石窯が記載されている。
【0003】
石窯は、被調理物を内部に収容した状態で、被調理物を高温で焼く。被調理物は、高温で焼かれることで、例えば、内部に火が通り、かつ表面に焼き色が生じ、食べられる状態又は食べやすい状態に変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-115220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被調理物を加熱しようとする場合、所定温度以上の高い温度で加熱すると、比較的短時間で被調理物の内部に火が通るものの、被調理物の表面が焦げてしまう。このため、被調理物を加熱調理するには、必要以上に温度を上げずに、長時間じっくりと加熱することが必要である。しかし、時間に制約がある場合や、生産性を向上させたい場合等、できる限り調理時間を短くすることも求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、加熱温度を必要以上に上げなくても、被調理物の内部に効果的に火を通すことができ、被調理物の加熱調理の時間を短縮することができる加熱器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の加熱器具は、被調理物の内部を加熱するための加熱器具である。前記加熱器具は、前記被調理物の外面から差し込まれる差し込み部と、前記差し込み部に対して熱伝導可能に接続され、前記被調理物の外面よりも外側に位置するように配置される熱受け部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る上記態様の加熱器具は、加熱温度を必要以上に上げなくても、被調理物の内部に効果的に火を通すことができ、被調理物の加熱調理の時間を短縮することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る加熱器具の使用状態の斜視図である。
図2図2(A)は、同上の加熱器具の斜視図である。図2(B)は、同上の加熱器具の正面図である。
図3図3は、同上の加熱器具の使用状態の正面図である。
図4図4(A)は、変形例の加熱器具の正面図である。図4(B)は、更なる変形例の加熱器具の正面図である。図4(C)は、更なる変形例の加熱器具の正面図である。図4(D)は、更なる変形例の加熱器具の正面図である。
図5図5(A)は、実施例1に係る加熱器具の形状を説明するための正面図である。図5(B)は、実施例2に係る加熱器具の形状を説明するための正面図である。図5(C)は、実施例3に係る加熱器具の形状を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)実施形態
以下、本実施形態に係る加熱器具1について、詳細に説明する。
【0011】
(1.1)全体構成
加熱器具1は、図1に示すように、被調理物5の外面51から差し込まれて用いられる。ユーザは、被調理物5に加熱器具1が差し込まれた状態で、被調理物5を加熱調理することで、被調理物5の内部を効果的に加熱することができる。
【0012】
被調理物5とは、加熱調理される直前の一定の形状を有する物(固形物)を意味する。被調理物5を加熱調理することで出来上がる食品としては、特に制限がなく、例えば、ハンバーグステーキ、ビーフステーキ、魚、野菜、冷凍食品、コロッケ、シュウマイ、ロールキャベツ、肉まん、握り飯等が挙げられる。ここでは、被調理物5の一例として、加熱調理するとハンバーグステーキになる、ひき肉のパテ(以下、肉パテ50という)を例にとって説明する。
【0013】
肉パテ50は、加熱調理によって、外面51(表面)が焼かれながら、内部まで火が通される。肉パテ50は、例えば、上から見て(以下、平面視という)略楕円形状で、かつドーム型に形成されている。ただし、本発明では、被調理物5の形状には特に制限はなく、例えば、俵状、球状、直方体状、立方体状の肉パテであってもよい。
【0014】
肉パテ50は、加熱器具1が差し込まれた状態で、調理器具に収容され、加熱調理が行われる。ここで用いられる調理器具は、窯(例えば、石窯)が好ましいが、そのほかにも、例えば、炉、オーブン、グリル、ガスコンロ、電子レンジ、過熱蒸気オーブンレンジ等であってもよい。
【0015】
(1.2)加熱器具
加熱器具1は、被調理物5(肉パテ50)の内部を加熱するために用いられる。一般に、肉パテ50を加熱調理する際、加熱調理の温度を上げると、外面51が焦げやすいため、内部に火を通すためには、必要以上に温度を上げることなくじっくりと長時間加熱する必要があり、調理に時間が掛かる。しかし、本実施形態に係る加熱器具1を用いることで、必要以上に温度を上げることなく、肉パテ50の内部を効果的に加熱することができる。この結果、加熱温度を必要以上に上げなくても、短時間でハンバーグステーキを焼き上げることができる。
【0016】
加熱器具1は、熱伝導性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウムを含む金属板で構成されている。ただし、本発明に係る加熱器具1の素材は、例えば、アルミニウム合金、金、銀、銅、真ちゅう、鉄等の金属であってもよいし、セラミックス、カーボン、樹脂、複合材料等であってもよい。ここでいう「熱伝導性を有する」とは、被調理物5の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有することを意味する。肉パテ50の熱伝導率は、およそ0.4~0.5W/m・Kであるから、本実施形態でいう「熱伝導性を有する材料」は、熱伝導率が0.5W/m・K超であり、好ましくは、100W/m・K以上、より好ましくは、200W/m・K以上である。
【0017】
加熱器具1は、図2(A)に示すように、差し込み部2と、熱受け部3と、位置合わせ部4と、を備える。ここでは、説明の便宜上、熱受け部3と差し込み部2とが並ぶ方向を「上下方向」として定義し、上下方向のうち、熱受け部3から差し込み部2に向かう一方向を「下方向」とし、その反対方向を「上方向」として定義する。ただし、これらの方向の定義は、加熱器具1の使用態様を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0018】
(1.2.1)差し込み部
差し込み部2は、加熱器具1において、被調理物5の外面51から差し込まれる部分である。差し込み部2は、被調理物5に差し込まれた状態では被調理物5に埋め込まれ、差し込み部2の少なくとも一部(ここでは先端部)が被調理物5の中心部に位置する。ここでいう「中心部」とは、被調理物5の重心を含む一定の範囲を持つ部分を意味し、被調理物5を加熱調理する際、外面51を焼くことでは、直ぐには火が通りにくい部分である。差し込み部2は、複数(ここでは二つ)の差込刃21を有する。
【0019】
各差込刃21は、差し込み部2の幅方向の寸法よりも幅狭に形成されている。差込刃21を有することにより、被調理物5に対して、差し込み部2を差し込みやすい上に、加熱調理後、加熱器具1を被調理物5から抜いた際に、被調理物5に形成された穴を小さくすることができる。複数の差込刃21は、スリット22を介して離れており、複数の差込刃21の並ぶ方向は、上下方向に直交している。
【0020】
各差込刃21は、熱受け部3から下方向に突出している。各差込刃21の突出寸法L1(図2(B))は、特に制限されないが、加熱調理後の食品の見栄えを保つ観点から、差し込み部2を被調理物5に差し込んだ際に貫通しないことが好ましく、例えばL1=10mm以上30mm以下であることが好ましい。
【0021】
各差込刃21は、板状に形成されており、複数の差込刃21は同一平面上に位置している。各差込刃21の幅寸法H2は、本発明では特に制限されないが、加熱調理後の食品の保形性(崩れにくさ)を保つ観点から、幅寸法H2=10mm以下とすることが好ましい。これにより、加熱調理の際に、被調理物5が凝固して差込刃21に付着するのをできる限り抑えることができ、被調理物5の保形性を保つことができる。
【0022】
複数の差込刃21において、幅方向の一端から他端までの間の寸法(すなわち、差し込み部2の幅寸法H1)は、本発明では特に制限されないが、加熱調理後の食品の見栄えを保つ観点から、H1=30mm以下とすることが好ましい。
【0023】
一例として、本実施形態に係る加熱器具1は、各差込刃21の幅寸法H2=10mm、スリット22の幅寸法H3=10mm、複数の差込刃21における幅方向の一端から他端までの間の寸法H1=30mmである。したがって、加熱器具1を用いて加熱調理することで、加熱調理後の食品の見栄え及び保形性を良好に保つことができる。
【0024】
スリット22は、複数の差込刃21を離す細隙である。スリット22の幅は、本発明では特に制限されないが、複数の差込刃21を被調理物5に差し込んだ際に、被調理物5の一部がスリット22に入り込むことができる幅寸法であることが好ましい。スリット22の幅寸法が極端に狭いと、スリット22に被調理物5の一部が入り込まないため、結果的に被調理物5に大きく穴が開くことになるからである。スリット22の幅寸法H3は、H3=3mm以上15mm以下であることが好ましく、より好ましくは、5mm以上12mm以下であり、更に好ましくは6mm以上10mm以下である。
【0025】
スリット22の上端部は、上下方向において、熱受け部3と差し込み部2との境界よりも、熱受け部3側に位置している。このため、図3に示すように、差し込み部2を被調理物5に差し込んだ際に、スリット22の上端部は、被調理物5に入り込まない。この結果、差し込み部2の全てを被調理物5に差し込んだ際に、被調理物5に形成される穴を、差込刃21による穴のみに留めることができる。
【0026】
(1.2.2)熱受け部
熱受け部3は、加熱調理の際、熱源からの熱を受ける部分である。熱受け部3は、差し込み部2が被調理物5に差し込まれた状態で、被調理物5の外面51よりも外側に位置する。熱受け部3は、熱源から放射された輻射熱を受け、加熱される。ただし、本発明では、熱受け部3は、対流又は伝導により、熱を受けるように構成されてもよい。
【0027】
熱受け部3は、差し込み部2に対し、熱伝導可能に接続されている。熱受け部3は、差し込み部2に対し、一体に形成されており、熱受け部3で受けた熱を効果的に伝導することができる。ここで、「熱伝導可能に接続されている」とは、熱受け部3と差し込み部2とが一体であることに限らず、例えば、熱受け部3と差し込み部2とが接合されてもよいし、他の部材を介して接続されてもよい。部材同士の接合は、例えば、溶接、ねじ止め、リベット止め、接着剤、凹凸嵌合、ろう付け、はんだ付け等により実現される。
【0028】
熱受け部3は、図2(A)に示すように、一対の主面を有するように板状に形成されている。熱受け部3の形状には特に制限がなく、例えば、矩形状(正方形を含む)、円形状、台形状、五角形以上の多角形状等が挙げられるが、製造上の観点から、矩形状に形成されることが好ましい。一方で、熱受け部3が受ける熱量を増やす観点では、熱受け部3は、できる限り広い面積を有するように形成されることが好ましい。本実施形態では、熱受け部3の表面積は、差し込み部2の表面積(すなわち、複数の差込刃21の合計の表面積)よりも大きくなるように設定されている。具体的には、熱受け部3の横寸法W(長さ寸法)は、例えば、W=14mm以上70mm以下であることが好ましく、より好ましくは、20mm以上65mm以下であり、更に好ましくは30mm以上60mm以下である。また、熱受け部3の縦寸法D(幅寸法)は、例えば、D=10mm以上70mm以下であることが好ましく、より好ましくは、15mm以上65mm以下であり、更に好ましくは20mm以上60mm以下である。
【0029】
熱受け部3の主面は、熱源に向けられることが好ましく、また、熱源の態様に応じた形状に形成されることが好ましい。熱受け部3は、本実施形態では平板状であるが、本発明では、例えば、トロイダル面状、ドーム状、球面状、波板状等に形成されてもよい。
【0030】
(1.2.3)位置合わせ部
位置合わせ部4は、図3に示すように、差し込み部2が被調理物5に差し込まれた状態において、被調理物5の外面51の位置を示す。位置合わせ部4は、熱受け部3の端面のうちの差し込み部2側に向く面(下面)により構成されている。差し込み部2が被調理物5に差し込まれると、位置合わせ部4は、被調理物5の外面51に対向し、位置合わせ部4の一部が、当該外面51に当たる。これによって、ユーザは、差し込み部2をどの位置まで差し込むことができるかを認識することができる。
【0031】
このように、本実施形態に係る位置合わせ部4は、少なくとも一部が、被調理物5の外面51に当たるように構成されているため、被調理物5に対して、加熱器具1を位置決めすることができる。ただし、位置合わせ部4は、本発明では、差し込み部2が被調理物5に差し込まれた状態において、被調理物5の外面51の位置を示すことができれば、位置決めできる機能を有さなくてもよい。位置合わせ部4としては、被調理物5の外面51の位置を示すように形成された、線、図、点、模様又は矢印により構成されてもよい。位置合わせ部4は、本実施形態のような部材の一面(熱受け部3の端面)のほか、例えば、印刷、罫書き線、エンボス、ピン等により実現される。
【0032】
(1.3)作用効果
以上説明したように、上記実施形態に係る加熱器具1は、被調理物5の外面51から差し込まれる差し込み部2と、差し込み部2に対して熱伝導可能に接続された熱受け部3と、を備える。熱受け部3は、差し込み部2が被調理物5に差し込まれた状態において、被調理物5の外面51よりも外側に位置する。
【0033】
被調理物5の外面51から差し込み部2を差し込んだ状態で加熱調理を行うと、熱受け部3が熱を受け、熱受け部3から差し込み部2に熱が伝導し、差し込み部2が被調理物5の内部を加熱する。このため、被調理物5の内部を効果的に加熱することができる。
【0034】
また、上記実施形態に係る加熱器具1は、位置合わせ部4を更に備える。位置合わせ部4は、差し込み部2が被調理物5に差し込まれた状態において、被調理物5の外面51の位置を示す。このため、本実施形態に係る加熱器具1によれば、ユーザは、被調理物5に対して加熱器具1を差し込む際に、差し込み部2を適切な位置まで差し込むことができる。
【0035】
また、上記実施形態に係る加熱器具1では、差し込み部2は、スリット22によって離れた複数の差込刃21を有する。スリット22の一部は、一方向(上記実施形態では上下方向)において、位置合わせ部4が示す外面51の位置よりも熱受け部3側に位置している。このため、差し込み部2を被調理物5に差し込んだ際に、スリット22の上端部は、被調理物5に入り込まない。この結果、差し込み部2の全てを被調理物5に差し込んだ際に、被調理物5に形成される穴を、差込刃21による穴のみに留めることができる。
【0036】
また、上記実施形態に係る加熱器具1では、熱受け部3の表面積は、差し込み部2の表面積よりも大きい。このため、被調理物5の内部を効果的に加熱することができる。
【0037】
(2)変形例
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0038】
上記実施形態に係る加熱器具1では、差し込み部2がスリット22によって複数の差込刃21に別れていたが、図4(A)に示すように、差し込み部2はスリット22を有さなくてもよい。
【0039】
上記実施形態に係る加熱器具1では、差し込み部2が二つの差込刃21を有していたが、図4(B)に示すように、三つの差込刃21を有してもよい。また、特に図示しないが、四つ以上の差込刃を有してもよい。
【0040】
上記実施形態に係る加熱器具1では、熱受け部3の横寸法W(上下方向に直交する方向に沿う寸法)が、差し込み部2の幅寸法H1よりも大きく形成されたが、図4(C)に示すように、熱受け部3と差し込み部2の幅寸法は同じでもよい。
【0041】
また、上記実施形態に係る加熱器具1では、熱受け部3の表面積は、差し込み部2の表面積よりも大きくなるように設定されたが、図4(D)に示すように、熱受け部3と差し込み部2の表面積は同じであってもよいし、被調理物5の内部に与える熱量は比較的小さくなるが、熱受け部3の表面積を、差し込み部2の表面積よりも小さくしてもよい。また、図4(C)及び図4(D)に示すように、位置合わせ部4はなくてもよい。
【0042】
上記実施形態では、加熱調理は、焼き調理であったが、例えば、炒め調理、蒸し調理、焙煎、燻製等であってもよい。
【0043】
上記実施形態では、窯等の調理器具に被調理物5が収容されることで加熱調理が行われたが、例えば、フライパン等の鉄板に被調理物5が載った状態で加熱調理されてもよい。鉄板からの輻射熱を熱受け部3が受けることで、被調理物5の内部を効果的に加熱することができるからである。
【0044】
上記実施形態では、差込刃21は板状に形成されたが、差込刃21は、板状でなくてもよい。差込刃21は、一方向(上下方向)に一様な断面積でなくてもよく、例えば、断面くさび状に形成されてもよい。また、差込刃21は、棒状、針状に形成されてもよい。
【0045】
上記実施形態では、加熱器具1は板状に形成されたが、例えば、棒状、筒状、柱状等であってもよく、形状に制限はない。
【0046】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0047】
また、本明細書において「前端部」及び「前端」などのように、「…端部」と「…端」とで区別した表現が用いられている。例えば、「前端部」とは、「前端」を含む一定の範囲を持つ部分を意味する。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0048】
(3)実施例
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0049】
ここでは、加熱器具を用いて肉パテを加熱調理し、ハンバーグステーキを焼き上げた場合と、加熱器具を用いないで肉パテを加熱調理し、ハンバーグステーキを焼き上げた場合とで、ハンバーグステーキの内部に火が通っているかどうかの比較実験を行った。
【0050】
加熱器具を用いた加熱調理として、図5(A)~図5(C)に示すように、実施例1(図5(A))、実施例2(図5(B))及び実施例3(図5(C))に係る加熱器具を用いた。
【0051】
実施例1に係る加熱器具として、厚さ0.6mmのアルミニウム製の金属板を用い、各部の寸法が次の通りなるように加工した。差し込み部の長さ寸法L1=30mm、差し込み部の幅寸法H1=10mm、熱受け部の縦寸法(幅寸法)D=20mm、熱受け部の横寸法(長さ寸法)W=60mmとした。
【0052】
実施例2に係る加熱器具として、厚さ0.6mmのアルミニウム製の金属板を用い、各部の寸法が次の通りなるように加工した。各差込刃の長さ寸法L1=30mm、各差込刃の幅寸法H2=10mm、スリットの幅寸法H3=10mm、熱受け部の縦寸法(幅寸法)D=20mm、熱受け部の横寸法(長さ寸法)W=60mmとした。
【0053】
実施例3に係る加熱器具として、厚さ0.6mmのアルミニウム製の金属板を用い、各部の寸法が次の通りなるように加工した。各差込刃の長さ寸法L1=30mm、各差込刃の幅寸法H2=6mm、スリットの幅寸法H3=10mm、熱受け部の縦寸法(幅寸法)D=20mm、熱受け部の横寸法(長さ寸法)W=60mmとした。
【0054】
実施例1~3に係る加熱器具の差し込み部を、それぞれ、180g(幅60mm、長さ100mm、厚さ50mm)の肉パテに差し込み、加熱調理を行った。加熱調理としては、250℃前後の石窯の中で、奥壁から30cmの位置に5分間焼き、その後、奥壁から45cmの位置に移動させ、更に5分焼いた。
【0055】
その後、石窯から焼き上がったハンバーグステーキを取り出し、ハンバーグステーキを二つに割って、内部の様子を検証した。結果を以下に示す。
【0056】
なお、表1において、◎は非常に良好、○は良好、△は良くない、×は不良として評価した。
【表1】
【0057】
内部の火の通り具合を評価すると、実施例1~3の加熱器具を用いて加熱調理したハンバーグステーキでは、加熱器具を用いないハンバーグステーキに比べて、いずれも火の通り具合が良好であることが確認できた。このため、実施例1~3の加熱器具を用いることで、ハンバーグステーキの内部を、効果的に加熱できることがわかった。
【0058】
焼き上がり後の外観を評価すると、実施例1に係る加熱器具では、差し込み部の幅が広いため、肉パテが凝固しやすい。このため、焼き上がり後、加熱器具を引き抜くと、外観に損傷が生じた。実施例3に係る加熱器具では、差込刃の幅は狭いため、肉パテの凝固は実施例1,2よりは少ないが、加熱器具を引き抜いた後の穴が生じる幅が広いため、実施例1,2に係る加熱器具を用いて加熱調理したハンバーグステーキに比べて、見栄えが良くないという結果が得られた。
【0059】
このため、差し込み部の主面を、一つの面で構成するよりも、スリットを設け、主面を複数の面に分けるほうが、焼き上がり後の外観を良好に保つことができることがわかった。また、差し込み部の幅寸法については、できる限り小さくするほうが、焼き上がり後の外観を良好に保つことができることがわかった。
【符号の説明】
【0060】
1 加熱器具
2 差し込み部
21 差込刃
22 スリット
3 熱受け部
4 位置合わせ部
5 被調理物
51 外面
図1
図2
図3
図4
図5