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特許7284076三次元形状計測装置および三次元形状計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】三次元形状計測装置および三次元形状計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019216051
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085797
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】福江 久美子
(72)【発明者】
【氏名】北村 藤和
(72)【発明者】
【氏名】小川 章
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-002378(JP,A)
【文献】特開2018-163092(JP,A)
【文献】特開2001-034766(JP,A)
【文献】特開平07-098217(JP,A)
【文献】特開2013-178174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光パターンを投影するプロジェクタと、
前記プロジェクタから投影された光パターンを撮像する撮像カメラと、
三次元座標により示される所定の計測空間内の座標位置と、前記計測空間で前記撮像カメラの奥行方向に並ぶ複数の基準面のそれぞれに投影された前記光パターンが前記基準面上の前記座標位置で示す位相との対応関係を示すデータを、前記座標位置毎に有する第1位相座標テーブルを格納する第1記憶部と、
前記計測空間内に計測対象物を保持する保持部材と、
前記計測空間のうち、前記保持部材に保持される前記計測対象物の表面を含んで前記計測空間より狭い領域内の前記座標位置に対応するデータを前記第1位相座標テーブルから抽出して第2位相座標テーブルとして格納する第2記憶部と、
前記プロジェクタから前記保持部材に保持される前記計測対象物に投影された前記光パターンを前記撮像カメラにより撮像した画像が示す位相と前記第2位相座標テーブルとの対比に基づき、前記計測対象物の三次元形状を求める演算部と
を備えた三次元形状計測装置。
【請求項2】
前記第2記憶部は、前記第1記憶部より小さい容量を有するとともに、前記第1記憶部よりも高速で動作する請求項1に記載の三次元形状計測装置。
【請求項3】
前記第2記憶部は、前記計測対象物の表面うち、前記撮像カメラに撮像されない死角部分の前記座標位置に対応するデータは前記第1位相座標テーブルから抽出しない請求項1または2に記載の三次元形状計測装置。
【請求項4】
前記死角部分は、前記奥行方向への段差である請求項3に記載の三次元形状計測装置。
【請求項5】
前記第2記憶部は、前記計測対象物のうち、前記奥行方向から見て、前記段差を境界に隣接する2個の表面のうち、一方の表面を含む領域内の前記座標位置に対応するデータである一方データと、他方の表面を含む領域内の前記座標位置に対応するデータである他方データとをそれぞれ抽出し、
前記奥行方向から見て、前記一方データが示す前記座標位置が分布する領域の端と、前記他方データが示す前記座標位置が分布する領域の端とが、重複領域で重複し、
前記重複領域は、前記段差を含むように設けられている請求項4に記載の三次元形状計測装置。
【請求項6】
三次元座標により示される所定の計測空間内の座標位置と、前記計測空間で撮像カメラの奥行方向に並ぶ複数の基準面のそれぞれに投影された光パターンが前記基準面上の前記座標位置で示す位相との対応関係を示すデータを、前記座標位置毎に有する第1位相座標テーブルから抽出したデータを、前記第1位相座標テーブルを記憶する第1記憶部から第2記憶部に転送して、前記第2記憶部に第2位相座標テーブルとして格納する工程と、
測対象物に投影された前記光パターンを前記撮像カメラにより撮像した画像が示す位相と前記第2位相座標テーブルとの対比に基づき、前記計測対象物の三次元形状を求める工程と
を備え、
前記第2記憶部には、前記計測空間のうち、前記計測対象物の表面を含んで前記計測空間より狭い領域内の前記座標位置に対応するデータが前記第1位相座標テーブルから抽出されて第2位相座標テーブルとして格納される三次元形状計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、計測対象物に投影される光パターンが示す位相に基づき計測対象物の三次元形状を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、計測対象物の三次元形状を計測する手法として、位相シフト法が知られている。この位相シフト法は、計測対象物に投影された光パターンの撮像を光パターンの位相を変更しつつ実行し、各光パターンの撮像画像に基づき、計測対象物の三次元形状が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4873485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、特許文献1では、全空間テーブル化法によって、計測対象物の三次元形状が計測される。この方法によると、水平な基準平面に投影された光パターンを撮像した画像から、XY座標における基準平面上の各座標位置の位相を算出する処理が、基準平面のZ座標(高さ)を変更しつつ繰り返し実行される。その結果、三次元座標(XYZ座標)における座標位置と当該座標位置の位相との対応関係を示すデータを、計測空間内の各座標位置について有する位相座標テーブル(全空間テーブル)が取得される。計測対象物の三次元形状の計測では、計測対象物に投影された光パターンが示す各XY座標位置における位相と、全空間テーブルとを対比することで、計測対象物の外表面の三次元座標が算出される。
【0005】
ところで、全空間テーブルは、三次元形状計測装置の計測空間の全域について求められるため、大きなデータ量を有する。そのため、投影パターンに基づき算出した位相と位相座標テーブルとの対比に長時間を要して、計測対象物の三次元形状の計測を効率的に行うことが難しい場合があった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、位相と位相座標テーブルとの対比に要する時間を抑えて、計測対象物の三次元形状を効率的に計測することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る三次元形状計測装置は、光パターンを投影するプロジェクタと、プロジェクタから投影された光パターンを撮像する撮像カメラと、三次元座標により示される所定の計測空間内の座標位置と、計測空間で撮像カメラの奥行方向に並ぶ複数の基準面のそれぞれに投影された光パターンが基準面上の座標位置で示す位相との対応関係を示すデータを、座標位置毎に有する第1位相座標テーブルを格納する第1記憶部と、計測空間内に計測対象物を保持する保持部材と、計測空間のうち、保持部材に保持される計測対象物の表面を含んで計測空間より狭い領域内の座標位置に対応するデータを第1位相座標テーブルから抽出して第2位相座標テーブルとして格納する第2記憶部と、プロジェクタから保持部材に保持される計測対象物に投影された光パターンを撮像カメラにより撮像した画像が示す位相と第2位相座標テーブルとの対比に基づき、計測対象物の三次元形状を求める演算部とを備える。
【0008】
本発明に係る三次元形状計測方法は、三次元座標により示される所定の計測空間内の座標位置と、計測空間で撮像カメラの奥行方向に並ぶ複数の基準面のそれぞれに投影された光パターンが基準面上の座標位置で示す位相との対応関係を示すデータを、座標位置毎に有する第1位相座標テーブルから抽出したデータを、第1位相座標テーブルを記憶する第1記憶部から第2記憶部に転送して、第2記憶部に第2位相座標テーブルとして格納する工程と、 計測対象物に投影された光パターンを撮像カメラにより撮像した画像が示す位相に対応付けられた座標位置と第2位相座標テーブルとの対比に基づき、計測対象物の三次元形状を求める工程とを備え、第2記憶部には、計測空間のうち、計測対象物の表面を含んで計測空間より狭い領域内の座標位置に対応するデータが第1位相座標テーブルから抽出されて第2位相座標テーブルとして格納される。
【0009】
このように構成された本発明(三次元形状計測装置、三次元形状計測方法)では、第1位相座標テーブルが第1記憶部に記憶される。この第1位相座標テーブルは、三次元座標により示される所定の計測空間内の座標位置と、計測空間で撮像カメラの奥行方向に並ぶ複数の基準面のそれぞれに投影された光パターンが基準面上の座標位置で示す位相との対応関係を示すデータを、座標位置毎に有する。さらに、第2記憶部が設けられており、第2記憶部は、計測空間のうち、計測対象物の表面を含んで計測空間より狭い領域内の座標位置に対応するデータを第1位相座標テーブルから抽出した第2位相座標テーブルを格納する。そして、計測対象物に投影された光パターンを撮像カメラにより撮像した画像が示す位相に対応付けられた座標位置と第2位相座標テーブルとの対比に基づき、計測対象物の三次元形状が求められる。
【0010】
つまり、計測対象物の存在範囲が計測空間の一部であることから、計測対象物の三次元形状の計測は、計測空間に対して設けられた第1位相座標テーブルの全データを必要としない。そこで、計測対象物の表面を含んで計測空間より狭い領域内の座標位置に対応するデータを有する第2位相座標テーブルが、第1位相座標テーブルから抽出されて第2記憶部に格納される。そして、計測対象物に投影された光パターンを撮像カメラにより撮像した画像が示す位相に対応付けられた座標位置と第2位相座標テーブルとの対比に基づき、計測対象物の三次元形状が求められる。かかる第2位相座標テーブルは、第1位相座標テーブルよりも少ないデータ量を有するため、第2位相座標テーブルと位相との対比に要する時間は、第1位相座標テーブルと位相との対比に要する時間と比較して短縮することができる。こうして、位相と位相座標テーブルとの対比に要する時間を抑えて、計測対象物の三次元形状を効率的に計測することが可能となっている。
【0011】
また、第2記憶部は、第1記憶部より小さい容量を有するとともに、第1記憶部よりも高速で動作するように、三次元形状計測装置を構成しても良い。このように高速で動作する第2記憶部に第2位相座標テーブルを格納しておくことで、第2位相座標テーブルと位相との対比に要する時間をより短縮して、計測対象物の三次元形状をさらに効率的に計測できるとともに、第2記憶部の容量を小さく抑えることで、第2記憶部に要するコストを抑えることができる。
【0012】
また、第2記憶部は、計測対象物の表面うち、撮像カメラに撮像されない死角部分の座標位置に対応するデータは第1位相座標テーブルから抽出しないように、三次元形状計測装置を構成してもよい。つまり、撮像カメラの死角部分は、三次元形状の計測の対象から外れるため、死角部分に対応するデータが無くても、精度を損なうことなく三次元形状の計測を実行できる。そこで、死角部分に対応するデータを第1位相座標テーブルから抽出しないことで、第2位相座標テーブルのデータ量をさらに少なくできる。その結果、位相と位相座標テーブルとの対比に要する時間を効果的に抑えて、計測対象物の三次元形状をさらに効率的に計測することができる。
【0013】
なお、死角部分の具体例は種々想定できる。例えば、死角部分は奥行方向への段差であってもよい。このような段差は、撮像カメラで撮像されないため、段差に対応するデータが無くても、精度を損なうことなく三次元形状の計測を実行できる。そこで、段差に対応するデータを第1位相座標テーブルから抽出しないことで、第2位相座標テーブルのデータ量をさらに少なくできる。その結果、位相と位相座標テーブルとの対比に要する時間を効果的に抑えて、計測対象物の三次元形状をさらに効率的に計測することができる。
【0014】
また、第2記憶部は、計測対象物のうち、奥行方向から見て、段差を境界に隣接する2個の表面のうち、一方の表面を含む領域内の座標位置に対応するデータである一方データと、他方の表面を含む領域内の座標位置に対応するデータである他方データとをそれぞれ抽出し、奥行方向から見て、一方データが示す座標位置が分布する領域の端と、他方データが示す座標位置が分布する領域の端とが、重複領域で重複し、重複領域は、段差を含むように設けられているように、三次元形状計測装置を構成しても良い。このように、段差を境界に隣接する2個の表面にそれぞれ対応する各データの分布領域を部分的に重複させておくことで、計測対象物の配置場所がばらついて、段差の位置がぶれても、段差を境界に隣接する2個の表面の形状を的確に求めることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、位相と位相座標テーブルとの対比に要する時間を抑えて、計測対象物の三次元形状を効率的に計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る三次元形状計測装置の電気的構成を示すブロック図。
図2】本発明に係る三次元形状計測装置の機械的構成を示す模式図。
図3】三次元形状の計測のために撮像される撮像画像を模式的に示す図。
図4】全空間テーブルの取得方法の一例を示すフローチャート。
図5図4のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す図。
図6】三次元形状の計測方法の一例を示すフローチャート。
図7図6のフローチャートで実行される抽出領域の決定方法の一例を示すフローチャート。
図8図6のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す図。
図9】全空間テーブルおよび部分空間テーブルでのZ座標の管理方法の変形例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係る三次元形状計測装置の電気的構成を示すブロック図であり、図2は本発明に係る三次元形状計測装置の機械的構成を示す模式図であり、図3は三次元形状の計測のために撮像される撮像画像を模式的に示す図である。この三次元形状計測装置1は、位相シフト法によってワークWの三次元形状を計測する。なお、図2では、Z軸方向を鉛直方向とし、X軸方向およびY軸方向をそれぞれ水平方向とするXYZ直交座標系が示されている。
【0018】
図2に示すように、三次元形状計測装置1は、支持テーブル11(ワーク支持部材)を備え、支持テーブル11に支持されるワークW(計測対象物)の三次元形状を計測する。ワークWの具体例としては、スパナ等の工具や、コネクティングロッド等のエンジンの部品が挙げられる。ワークWが鉄等を含んで磁力により保持できる場合には、支持テーブル11として電磁石テーブルを用いることができる。ワークWが樹脂等の磁力により保持できないものである場合には、エアー吸着あるいはチャック機構によってワークWを支持するテーブルを支持テーブル11として用いることができる。なお、ワークWの保持機構はテーブルに限られず、ロボットハンドでもよい。
【0019】
三次元形状計測装置1は、プロジェクタ2、撮像カメラ3および撮像制御部4を備え、撮像制御部4がプロジェクタ2および撮像カメラ3を制御することで、支持テーブル11に支持されたワークWにプロジェクタ2から投影した光パターンPを撮像カメラ3によって撮像する。撮像制御部4は例えばプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit)およびRAM(Random Access Memory)等で構成することができる。
【0020】
プロジェクタ2は、M個の光源L(1)~L(4)と、格子23とを有する。Mは3以上の整数であり、ここの例では、M=4である。なお、M個の光源L(1)~L(4)を区別しない場合には、光源Lと適宜称する。M個の光源L(1)~L(4)は、複数のLED(Light Emitting Diode)が直線状に配列されたライン光源であり、互いに平行に配置されている。格子23は、4個の光源L(1)~L(4)と、支持テーブル11上のワークWとの間に配置され、光源L(1)~L(4)のうちから選択された1個の光源Lが点灯すると、当該光源Lから射出されて格子23を通過した光が光パターンPとしてワークWに投影される。
【0021】
この光パターンPは、点灯する光源Lと格子23との位置関係によって決まる光の投影パターンであり、M個の光源L(1)~L(4)の間で点灯させる光源Lを切り換えることで、ワークWに投影される光パターンPを切り換えることができる。具体的には、M個の光源L(1)~L(4)は互いに異なる位相(例えば、0度、90度、180度、270度)に対応しており、点灯させる光源Lを切り換えることで、光パターンPの位相を切り換えることができる。
【0022】
撮像カメラ3は、レンズ31と、撮像素子32とを有する。レンズ31は、支持テーブル11に支持されるワークWに対向して、ワークWに投影された光パターンPを撮像素子32に結像する。撮像素子32は、CCD(Charge-Coupled Device)イメージサンサあるいはCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子であり、レンズ31により結像された光パターンPを撮像する。レンズ31はZ軸方向からワークWに対向し、撮像カメラ3はZ軸方向からワークWを撮像する。つまり、Z軸方向が撮像カメラ3の奥行方向である。
【0023】
図3に示すように、撮像素子32により撮像された撮像画像IMは、撮像素子32において二次元的に配列された複数の画素PXのそれぞれが示す画像データDiにより構成される。なお、図3に示す画素PXの配列態様は一例であり、画素PXの配列態様は縦・横のそれぞれに直線的に画素PXを配列する図3の態様に限られない。また、図3では、1個の画素PXが示す画像データDiがハッチングにより示されているが、撮像画像IMでは、複数の画素PXのそれぞれが画像データDiを示す。この画像データDiは、撮像素子32の対応する画素PXに入射した光の輝度を多階調で示す。
【0024】
なお、図3では、X軸方向に対応するXc軸方向と、Y軸方向に対応するYc軸方向とが示されている。これは、実空間に対して設定された図1の座標系XYZと、撮像カメラ3に対して設定された図3の座標系XcYcZとを区別したものである。これらの座標系の関係については、図5を用いて後に説明する。
【0025】
図2に示すように、撮像カメラ3は、中空のカメラ筐体39を有する。このカメラ筐体39は、支持テーブル11に支持されるワークWに対向する開口を有し、この開口にレンズ31が取り付けられており、カメラ筐体39の内部に撮像素子32が配置されている。
【0026】
さらに、図1に示すように、三次元形状計測装置1は、演算部5、主記憶部7および副記憶部8を備える。演算部5は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)で構成され、三次元形状の計測に必要な演算を実行する。主記憶部7は、HDD(Hard Disk Drive)で構成され、全空間テーブルTtを格納し、副記憶部8は、SSD(Solid State Drive)で構成され、全空間テーブルTtの一部を抽出した部分空間テーブルTpを格納する。全空間テーブルTtおよび部分空間テーブルTpの詳細は後述する。主記憶部7の動作速度(アクセス速度)に比べて、副記憶部8の動作速度は速く、主記憶部7の容量に比べて副記憶部8の容量は小さい。そして、演算部5は、撮像素子32から受信した撮像画像IMと、部分空間テーブルTpとに基づき、ワークWの三次元形状を算出する。
【0027】
図4は全空間テーブルの取得方法の一例を示すフローチャートであり、図5図4のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す図である。図4のフローチャートは、撮像制御部4および演算部5の協働制御によって実行される。このフローチャートでは、特許第4873485号公報と同様に、水平に保持された基準平面Rに投影された光パターンが示す位相を、基準平面Rの高さを微小量ずつ変更しつつ求めた結果に基づき、全空間テーブルTtが取得される。
【0028】
図4のフローチャートが開始されると、基準平面Rの高さ変更回数nを管理する撮像制御部4は、ステップS101で変更回数nをゼロにリセットしてから、ステップS102で高さ変更回数nをインクリメントする(「1」増加させる)。そして、ステップS103で、基準平面Rが高さZ(n)に移動する。
【0029】
ステップS104で、互いに異なる位相を有するM個の光パターンPを識別する位相識別番号mをゼロにリセットしてから、ステップS105で位相識別番号mをインクリメントする(「1」増加させる)。そして、M個の光源L(1)~L(4)のうち一の対象光源L(m)を点灯させることで、M個の光源L(1)~L(4)が投影可能なM個の光パターンP(1)~P(4)のうち、一の対象パターンP(m)をワークWに投影する(ステップS106)。
【0030】
ステップS107では、ワークWに投影された対象パターンP(m)が撮像カメラ3の撮像素子32により撮像されて、撮像画像IM(m)が取得され、ステップS108では、撮像画像IM(m)が演算部5に転送される。ステップS109では、位相識別番号mが「M」に到達したかが判断される。ここでは、位相識別番号m=1であるため、ステップS109で「NO」と判断され、ステップS105に進む。そして、位相識別番号mがインクリメントされて「2」となり、ステップS106~S108が実行される。かかる動作が、位相識別番号mが「M」に到達するまで繰り返されることで、互いに異なる位相を有するM個の光パターンP(m)をそれぞれ示すM個の撮像画像IM(m)が取得される。
【0031】
位相識別番号mが「M」に到達して、ステップS109で「YES」と判断されると、ステップS110において、高さZ(n)に位置する基準平面R上で二次元的かつ離散的に配列された複数のXY座標位置Rxyそれぞれでの位相が、M個の撮像画像IM(m)に基づき演算部5によって算出される。これによって、高さZ(n)の各XY座標位置Rxyにおける位相が算出されて、XYZ座標位置と位相とを対応付けた位相座標データが取得される。そして、この位相座標データは、演算部5から主記憶部7に転送される(ステップS111)。
【0032】
ステップS112では、高さ変更回数nがNに到達したかが判断される。ここでは、高さ変更回数nがN未満であると判断され(ステップS112で「NO」)、ステップS102に進む。ステップS102では高さ変更回数nがインクリメントされ、ステップS103で基準平面Rが高さZ(n)に移動する。これによって、所定の上昇ピッチΔRだけ基準平面Rが上昇する。そして、Z(n)に上昇した基準平面Rに対して、ステップS104~S111が実行される。
【0033】
高さ変更回数nがNに到達するまで(ステップS112で「YES」と判断されるまで)、ステップS102~S111が繰り返される。つまり、高さZ(n)の各XY座標位置Rxyにおける位相を算出して、XYZ座標位置と位相とを対応付けた位相座標データを取得する動作が、高さZ(n)を上昇ピッチΔRずつ(N-1)回上昇させながら実行される。これによって、計測空間SmにおいてZ軸方向に並ぶ複数の高さZ(1)~Z(N)のそれぞれついて各XY座標位置Rxyにおける位相を示す全空間テーブルTtが取得され、この全空間テーブルTtが主記憶部7に格納される。
【0034】
ところで、図5の「実座標」の欄では、それぞれ角度が異なる複数の主光線Cが示されている。この際、同一の主光線C上に位置する複数の点(同図の黒丸の点)は撮像素子32の同一の画素に結像される。そのため、これら複数の点は、実座標(X、Y)において異なるXY座標位置に対応するとしても、カメラ座標(Xc、Yc)では同一のXY座標位置に対応する。全空間テーブルTtは、実座標(X、Y)およびカメラ座標(Xc、Yc)のいずれの形式によっても格納でき、ここでは後者のカメラ座標の形式で全空間テーブルTtを格納しているとして説明を行う。
【0035】
こうして、本実施形態では、三次元座標(Xc、Yc、Z)で示される座標位置と、当該座標位置での位相とを対応付けた位相座標データが算出される。そして、計測空間Smの全域に対して三次元的かつ離散的に配列された複数の座標位置(複数の点)のそれぞれについて位相座標データが算出されて、座標位置と位相との対応関係を各座標位置について示す全空間テーブルTtが取得・格納される。
【0036】
図6は三次元形状の計測方法の一例を示すフローチャートであり、図7図6のフローチャートで実行される抽出領域の決定方法の一例を示すフローチャートであり、図8図6のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す図である。図6のフローチャートは、撮像制御部4および演算部5の協働制御によって実行される。図6の三次元形状の計測方法では、ワークWのうちの計測対象部分に応じた位相座標データが部分空間テーブルTpとして全空間テーブルTtから抽出されて用いられる。
【0037】
ステップS201では、部分空間テーブルTpの抽出が必要であるかが判断される。具体的には、部分空間テーブルTpを構成する複数の位相座標データにそれぞれ対応する複数の座標位置の分布領域が、ワークWの計測対象部分を含むかが判断される。この計測対象部分は、撮像カメラ3によって撮像されるワークWの上側(撮像カメラ3側)の表面に相当する。例えば、前回の三次元形状計測と今回の三次元形状計測とでワークWの種類が変更されているような場合には、前回の計測対象部分に対応する部分空間テーブルTpの各座標位置の分布領域から今回の計測対象部分がずれる。そのため、テーブル抽出が必要(ステップS201で「YES」)と判断され、ステップS202が実行される。
【0038】
このステップS202では、位相座標データの抽出領域が、ワークWの計測対象部分を含むように決定される。具体的には図7に示すように、ステップS301において、CAD(Computer-Aided Design)データが例えば主記憶部7に格納されているかが判断される。図8の「ワークW」の欄に示すワークWを例に挙げて説明する。撮像カメラ3から見た平面視(すなわち、Z軸方向からの平面視)では、ワークWの上面Wa1、Wa2および斜面Wbが表れて、これらが撮像カメラ3により撮像される。一方、ワークWの側面Wcおよび底面Wdは、撮像カメラ3から見てワークWに隠れるため、撮像カメラ3の死角部分となる。さらに、上面Wa1、Wa2の間でZ軸方向に平行に設けられたワークWの段差Weも、撮像カメラ3が撮像できない死角部分となる。
【0039】
そこで、ステップS302では、ワークWのうちから死角部分Wc、Wd、Weを除いた上面Wa1、Wa2および斜面Wbが計測対象部分に決定される。図8の「S302」の欄では、死角部分Wc、Wd、Weが破線で示される一方、計測対象部分Wa1、Wa2、Wbが実線で示されている。ステップS303では、ワークWのうち、計測対象部分Wa1、Wa2、Wbを含むように、抽出領域Aa1、Aa2、Abがそれぞれ設定される(図8の「S303」の欄)。ステップS304では、実座標(X、Y、Z)における支持テーブル11のワークWの支持位置にワークWの抽出領域Aa1、Aa2、Abを設定する座標変換が実行される。この座標変換は、CAD座標の原点、実座標(X、Y、Z)の原点およびこれらの座標間の回転角度等に基づき実行できる。さらに、抽出領域Aa1、Aa2、Abを示す座標位置を、実座標(X、Y、Z)からカメラ座標(Xc、Yc、Z)に変換して(ステップS305)、図6のフローチャートに戻る。
【0040】
一方、ステップS301でCADデータが存在しないと判断されると(「NO」と判断されると)、三次元形状計測装置1は、特許第4873485号公報で提案されている手法により、全空間テーブルTtを用いてワークWの三次元形状を計測する(ステップS306)。ステップS307では、こうしてワークWの三次元形状を実際に計測した結果に基づき、抽出領域Aa1、Aa2、Abが設定される。そして、上述と同様にカメラ座標への変換を行って(ステップS305)、図6のフローチャートに戻る。
【0041】
ちなみに、図7の抽出領域の決定では、抽出領域Aa1、Aa2、Abは、対応する計測対象部分Wa1、Wa2、Wbの位置が、ワークWの形状公差あるいは支持テーブル11のワークWの支持位置のばらつきによって変動する幅を含むように設定される。また、段差Weを境界として挟んで隣接する2個の計測対象部分Wa1、Wa2に対応して2個の抽出領域Aa1、Aa2が設定されている。撮像カメラ3から見た平面視において、これら抽出領域Aa1、Aa2の端が互いに重複して重複領域Oを形成し、段差Weは重複領域O内に位置する。この重複領域Oは、上記の要因による段差Weの変動幅を含むように設定される。
【0042】
抽出領域の決定(ステップS202)が完了すると、データ抽出が実行される(ステップS203)。具体的には、主記憶部7内の全空間テーブルTtに含まれる全ての位相座標データのうち、対応する座標位置が抽出領域Aa1、Aa2、Abに含まれる位相座標データが抽出されて、部分空間テーブルTpとして副記憶部8に転送・格納される。
【0043】
こうして、今回の計測で用いる部分空間テーブルTpの準備が完了し(ステップS202、S203)、あるいはステップS201でテーブル抽出が不要(NO)と判断されると、ステップS204~S213が実行される。
【0044】
ステップS204で、位相識別番号mをゼロにリセットしてから、ステップS205で位相識別番号mをインクリメントする。そして、M個の光源L(1)~L(4)のうち一の対象光源L(m)を点灯させることで、互いに異なる位相を有するM個の光パターンP(1)~P(4)のうち、一の対象パターンP(m)をワークWに投影する(ステップS206)。
【0045】
ステップS207では、ワークWに投影された対象パターンP(m)が撮像カメラ3の撮像素子32により撮像されて、撮像画像IM(m)が取得され、ステップS208では、撮像画像IM(m)が演算部5に転送される。ステップS209では、位相識別番号mが「M」に到達したかが判断される。そして、位相識別番号mが「M」に到達するまで(ステップS209で「YES」と判段されるまで)、ステップS205~S208が繰り返されることで、互いに異なる位相を有するM個の光パターンP(m)をそれぞれ示すM個の撮像画像IM(m)が取得される。
【0046】
ステップS210では、ワークWの検査対象部分内のXcYc座標位置での位相θc(算出位相)がM個の光パターンP(m)に基づき算出される。そして、ステップS211では、算出位相θcに対応する位相座標データが部分空間テーブルTpに含まれる位相座標データのうちから探索される。かかる探索は、対象のXcYc座標位置を有する複数の位相座標データ(換言すれば、XcYc座標位置に対応する一の主光線Cに属する複数の位相座標データ)に対して実行すればよい。算出位相θcと一致する位相θpeを有する位相座標データが部分空間テーブルTpに存在する場合には、当該位相座標データが探索結果として取得される。一方、算出位相θcと一致する位相θpを有する位相座標データが部分空間テーブルTpに存在しない場合には、次の条件
θps:θcより小さい位相のうち最も大きい位相
θpl:θcより大きい位相のうち最も小さい位相
を満たす2個の位相θps、θplに対応する位相座標データが探索結果として取得される。
【0047】
ステップS212では、ステップS211での探索結果に基づき、対象のXcYc座標位置でのZ座標(高さ)が決定される。算出位相θcと一致する位相θpeが探索された場合には、位相θpeを有する位相座標データが示すZ座標が、対象のXcYc座標位置でのZ座標であると決定される。算出位相を挟む2個の位相θps、θplが探索された場合には、位相θps、θplをそれぞれ有する2個の位相座標データに基づく補間により算出される算出位相θcに対応するZ座標が、対象のXcYc座標位置でのZ座標であると決定される。
【0048】
ステップS213では、抽出領域Aa1、Aa2、Ab内の全てのXcYc座標位置についてステップS201~S212を実行したかが判断される。そして、抽出領域Aa1、Aa2、Ab内の全てのXcYc座標位置についてZ座標が決定されると(ステップS213で「YES」)、カメラ座標(Xc、Yc、Z)におけるワークWの計測対象部分の三次元形状が計測されたこととなる。そして、ステップS214で、ワークWの三次元形状をカメラ座標(Xc、Yc、Z)から実座標(X、Y、Z)に変換して、図6のフローチャートを終了する。
【0049】
以上に説明した実施形態では、全空間テーブルTt(第1位相座標テーブル)が主記憶部7(第1記憶部)に記憶される。この全空間テーブルTtは、三次元座標(Xc、Yc、Z)により示される所定の計測空間Sm内の座標位置と、計測空間Smで撮像カメラ3の奥行方向Zに並ぶ複数の基準平面R(基準面)のそれぞれに投影された光パターンPが基準平面R上の座標位置で示す位相との対応関係を示す位相座標データを、座標位置毎に有する。さらに、副記憶部8(第2記憶部)が設けられており、副記憶部8は、計測空間Smのうち、ワークW(計測対象物)の表面Wa1、Wa2、Wbを含んで計測空間Smより狭い領域Aa1、Aa2、Ab内の座標位置に対応する位相座標データを全空間テーブルTtから抽出した部分空間テーブルTp(第2位相座標テーブル)を格納する(ステップS202、S203)。そして、ワークWに投影された光パターンPを撮像カメラ3により撮像した撮像画像IMが示す位相に対応付けられた座標位置と部分空間テーブルTpとの対比(ステップS210、S211)に基づき、ワークWの三次元形状が求められる(ステップS210~S213)。
【0050】
つまり、ワークWの存在範囲が計測空間Smの一部であることから、ワークWの三次元形状の計測は、計測空間Smの全域に対して設けられた全空間テーブルTtの全位相座標データを必要としない。そこで、ワークWの表面Wa1、Wa2、Wbを含んで計測空間Smより狭い領域Aa1、Aa2、Ab内の座標位置に対応する位相座標データを有する部分空間テーブルTpが、全空間テーブルTtから抽出されて主記憶部7に格納される(ステップS203)。そして、ワークWに投影された光パターンPを撮像カメラ3により撮像した撮像画像IMが示す位相に対応付けられた座標位置と部分空間テーブルTpとの対比(ステップS210、S211)に基づき、ワークWの三次元形状が求められる(ステップS210~S213)。かかる部分空間テーブルTpは、全空間テーブルTtよりも少ないデータ量を有するため、部分空間テーブルTpと位相との対比に要する時間は、全空間テーブルTtと位相との対比に要する時間と比較して短縮することができる。こうして、位相と位相座標テーブルとの対比に要する時間を抑えて、ワークWの三次元形状を効率的に計測することが可能となっている。
【0051】
また、副記憶部8は、主記憶部7より小さい容量を有するとともに、主記憶部7よりも高速で動作する。このように高速で動作する副記憶部8に部分空間テーブルTpを格納しておくことで、ステップS211において位相座標データを高速で探索でき、部分空間テーブルTpと位相との対比に要する時間をより短縮して、ワークWの三次元形状をさらに効率的に計測できる。さらに、部分空間テーブルTpのデータ量が少ない点を利用して副記憶部8の容量を小さく抑えることで、高速で動作する副記憶部8に要するコストを抑えることができる。
【0052】
また、ステップS203において、副記憶部8は、ワークWのWa1、Wa2、Wb、Wc、Wd、We表面うち、撮像カメラ3に撮像されない死角部分Wc、Wd、Weの座標位置に対応する位相座標データは全空間テーブルTtから抽出しない(すなわち、部分空間テーブルTpに含めない)。つまり、撮像カメラ3の死角部分Wc、Wd、Weは、三次元形状の計測の対象から外れるため、死角部分Wc、Wd、Weに対応する位相座標データが無くても、精度を損なうことなく三次元形状の計測を実行できる。そこで、死角部分Wc、Wd、Weに対応する位相座標データを全空間テーブルTtから抽出しないことで、部分空間テーブルTpのデータ量をさらに少なくできる。その結果、位相と位相座標テーブルとの対比に要する時間を効果的に抑えて、ワークWの三次元形状をさらに効率的に計測することができる。
【0053】
なお、上記に示すように、死角部分Wc、Wd、Weの具体例(側面Wc、底面Wdあるいは段差Ws)は種々想定できる。例えば、撮像カメラ3の奥行方向Zへの段差Weは、撮像カメラ3で撮像されないため、段差Weに対応する位相座標データが無くても、精度を損なうことなく三次元形状の計測を実行できる。そこで、ステップS203では、段差Weに対応する位相座標データを全空間テーブルTtから抽出しないことで、部分空間テーブルTpのデータ量をさらに少なくしている。その結果、位相と位相座標テーブルとの対比に要する時間を効果的に抑えて、ワークWの三次元形状をさらに効率的に計測することができる。
【0054】
また、副記憶部8は、ワークWのうち、撮像カメラ3の奥行方向Zから見て、段差Weを境界に隣接する2個の表面Wa1、Wa2のうち、一方の表面Wa1を含む抽出領域Aa1内の座標位置に対応する位相座標データ(一方データ)と、他方の表面Wa2を含む抽出領域Aa2内の座標位置に対応する位相座標データ(他方データ)とをそれぞれ抽出する(ステップS202、S203)。この際、撮像カメラ3の奥行方向Zから見て、一方データが示す座標位置が分布する抽出領域Aa1の端と、他方データが示す座標位置が分布する抽出領域Aa2の端とが重複領域Oで重複し、この重複領域Oは段差Weを含む。このように、段差Weを境界に隣接する2個の表面Wa1、Wa2にそれぞれ対応する各位相座標データの分布領域(抽出領域Aa1、Aa2)を部分的に重複させておくことで、ワークWの配置場所がばらついて、段差Weの位置がぶれても、段差Weを境界に隣接する2個の表面Wa1、Wa2の三次元形状を的確に求めることができる。
【0055】
以上に説明した実施形態では、三次元形状計測装置1が本発明の「三次元形状計測装置」の一例に相当し、支持テーブル11が本発明の「保持部材」の一例に相当し、プロジェクタ2が本発明の「プロジェクタ」の一例に相当し、撮像カメラ3が本発明の「撮像カメラ」の一例に相当し、演算部5が本発明の「演算部」の一例に相当し、主記憶部7が本発明の「第1記憶部」の一例に相当し、副記憶部8が本発明の「第2記憶部」の一例に相当し、重複領域Oが本発明の「重複領域」の一例に相当し、光パターンPが本発明の「光パターン」の一例に相当し、全空間テーブルTtが本発明の「第1位相座標テーブル」の一例に相当し、部分空間テーブルTpが本発明の「第2位相座標テーブル」の一例に相当し、ワークWが本発明の「計測対象物」の一例に相当し、表面Wa1、Wa2、Wbが本発明の「表面」の一例に相当し、段差Weが本発明の「段差」の一例に相当し、Z軸方向が本発明の「奥行方向」の一例に相当する。
【0056】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記の例では、全空間テーブルTtおよび部分空間テーブルTpのそれぞれは、Z座標(高さ)の実際の値を示す。しかしながら、図4の全空間テーブルTtの取得の際に変更される基準平面Rの各高さZ(n)をその変更回数nでラベリングして、番号nでZ座標を管理するようにしてもよい。
【0057】
図9は全空間テーブルおよび部分空間テーブルでのZ座標の管理方法の変形例を模式的に示す図である。図9の例では、全空間テーブルTtにおいて、Z座標が基準平面Rの変更回数nで管理されている。そして、全空間テーブルTtのうちから一点鎖線で囲った抽出範囲Aの位相座標データを抽出した部分空間テーブルTpが格納されている。図9の例では、Xc座標がXc1を有する位相座標データからは、(n+1)~(n+3)番までの位相座標データが抽出され、Xc座標がXc2を有する位相座標データからは、(n+1)~(n+3)番までの位相座標データが抽出され、Xc座標がXc3を有する位相座標データからは、n~(n+5)番までの位相座標データが抽出されている。
【0058】
これに対して、部分空間テーブルTpにおいては、同一のXcYc座標位置を有する位相座標データは、高さ変更回数nの昇順で、段数q(q=1、2、3、…)により再ラベリングされる。そのため、同一の段数qに属していても、XcYc座標位置が異なる位相座標データが示すZ座標は異なる場合がある。図9の例では、段数qが「1」である位相座標データのうち、Xc座標がXc1、Xc2である位相座標データは、変更回数(n+1)に対応する高さZ(n+1)を示すのに対して、Xc座標がXc3である位相座標データは変更回数nに対応する高さZ(n)を示す。
【0059】
このように、部分空間テーブルTpにおいては、段数qが1(すなわち、初段)の位相座標データが示すZ座標(「オフセットZoff」と称する)がXcYc座標位置によって個別に設定される。かかる部分空間テーブルTpを用いた場合、三次元形状計測のステップS211~S212は次のように実行される。ステップS211では、算出位相θcに対応する位相座標データが対象のXcXy座標に属する位相座標データのうちから探索される。そして、ステップS212では、探索された位相座標データが示す段数qについて次式
Z=ΔR×(q-1)+Zoff
を用いることで、段数qを高さZに変換しつつ、Z座標が決定される。
【0060】
また、図9に示したZ座標の管理方法以外の構成についても適宜変更が可能である。例えば、上記の説明では、基準平面Rを上昇させつつ全空間テーブルTtを取得したが、基準平面Rを加工させつつ全空間テーブルTtを取得しても構わない。
【0061】
また、撮像カメラ3の奥行方向はZ軸方向と平行である必要はなく、Z軸方向に対して傾いていてもよい。
【0062】
また、プロジェクタ2の個数は1個に限られず、複数のプロジェクタ2を設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、計測対象物の三次元形状を計測する技術の全般に適用可能であり、特に計測対象物の外観の良否を判定する外観検査技術に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…三次元形状計測装置
11…支持テーブル(保持部材)
2…プロジェクタ
3…撮像カメラ
5…演算部
7…主記憶部(第1記憶部)
8…副記憶部(第2記憶部)
O…重複領域
P…光パターン
Tt…全空間テーブル(第1位相座標テーブル)
Tp…部分空間テーブル(第2位相座標テーブル)
W…ワーク(計測対象物)
Wa1、Wa2、Wb…表面
We…段差
Z…Z軸方向(奥行方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9