(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】防護体、防護体におけるエアバッグ装置、および防護体におけるエアバッグ装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
E01F 15/04 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
E01F15/04 A
(21)【出願番号】P 2019237246
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 信行
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-241571(JP,A)
【文献】特開平10-219640(JP,A)
【文献】特開2003-064626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に固定される防護体であって、
ガス発生器と、
前記ガス発生器の作動時に当該ガス発生器から供給されるガスによって展開するエアバッグ袋体と、
前記ガス発生器を作動させる作動機構と、
前記ガス発生器、前記エアバッグ袋体、および前記作動機構を収容する外殻部と、
を備え、
前記作動機構は、前記ガス発生器の作動前の初期状態において配置されている所定の初期位置から所定の起動位置に変位することを契機に、前記ガス発生器を作動させる起動部と、
前記外殻部の内壁面に設けられた固定部に一端側が接続されると共に他端側が前記起動部に接続され、外力によって前記外殻部が変形した際に当該外力を前記固定部から前記起動部に伝達することで当該起動部を前記初期位置から前記起動位置に変位させる伝達部材と、
を有する、防護体。
【請求項2】
前記伝達部材は、線材又は帯材であり、
前記作動機構は、前記伝達部材に張力を作用させるテンショナを有し、
前記初期状態のときに前記テンショナが前記伝達部材に作用させる張力は、前記起動部が前記初期位置から前記起動位置に変位するときに前記伝達部材に作用する作動時張力に比べて小さい、
請求項1に記載の防護体。
【請求項3】
前記ガス発生器は、加圧ガスが充填された充填ボトルと、前記充填ボトルにおけるガス排出口を閉塞する閉塞部材と、を有する加圧ガス式のガス発生器であり、
前記作動機構は、前記起動部が前記初期位置から前記起動位置に変位することを契機に前記閉塞部材を開裂することで前記ガス排出口から加圧ガスを排出させる、
請求項1又は2に記載の防護体。
【請求項4】
前記ガス発生器のガス排出口と、前記エアバッグ袋体のガス導入口とが、可撓性を有する連結管によって連結されている、
請求項1から3の何れか一項に記載の防護体。
【請求項5】
前記防護体は、空間を防護対象領域と防護対象外領域とに仕切るために地面に固定される防護体であって、
前記防護対象領域と前記防護対象外領域との境界部に沿って延設される防護隔壁部材を含み、
前記外殻部が前記防護隔壁部材に設けられている、
請求項1から4の何れか一項に記載の防護体。
【請求項6】
前記外殻部における前記固定部の配置位置と前記起動部の前記初期位置は、前記防護隔壁部材の延設方向に沿った異なる位置にそれぞれ設定されており、前記伝達部材は前記防護隔壁部材の延設方向に沿って延設されている、
請求項5に記載の防護体。
【請求項7】
前記防護体は、空間を防護対象領域と防護対象外領域とに仕切るために地面に固定される防護体であって、
前記防護対象領域と前記防護対象外領域との境界部に沿って延設される防護隔壁部材と
、前記防護隔壁部材を支持する支柱と、を含み、
前記外殻部が前記支柱に設けられている、
請求項1から4の何れか一項に記載の防護体。
【請求項8】
前記外殻部における前記固定部の配置位置と前記起動部の前記初期位置は、前記支柱の高さ方向に沿った異なる位置にそれぞれ設定されており、前記伝達部材は前記支柱の高さ方向に沿って延設されている、
請求項7に記載の防護体。
【請求項9】
前記外殻部は、前記ガス発生器の作動時に前記エアバッグ袋体を外部に展開させるためのバッグ出口と、前記バッグ出口を遮蔽するカバー部材と、を有し、
前記ガス発生器の作動時に前記エアバッグ袋体の膨張圧によって前記バッグ出口が開放される、
請求項1から8の何れか一項に記載の防護体。
【請求項10】
前記防護体は、歩道と車道との境界位置に設置されるガードレールである、請求項1から9の何れか一項に記載の防護体。
【請求項11】
地面に固定される防護体におけるエアバッグ装置であって、
ガス発生器と、
前記ガス発生器の作動時に当該ガス発生器から供給されるガスによって展開するエアバッグ袋体と、
前記ガス発生器を作動させる作動機構と、
前記防護体に設けられ、前記ガス発生器、前記エアバッグ袋体、および前記作動機構を収容する外殻部と、
を備え、
前記作動機構は、前記ガス発生器の作動前の初期状態において配置されている所定の初期位置から所定の起動位置に変位することを契機に、前記ガス発生器を作動させる起動部と、
前記外殻部の内壁面に設けられた固定部に一端側が接続されると共に他端側が前記起動部に接続され、外力によって前記外殻部が変形した際に当該外力を前記固定部から前記起動部に伝達することで当該起動部を前記初期位置から前記起動位置に変位させる伝達部材と、
を有する、防護体におけるエアバッグ装置。
【請求項12】
地面に固定される防護体におけるエアバッグ装置の作動方法であって、
前記エアバッグ装置として、
ガス発生器と、
前記ガス発生器の作動時に当該ガス発生器から供給されるガスによって展開するエアバッグ袋体と、
前記ガス発生器を作動させる作動機構と、
前記防護体に設けられ、前記ガス発生器、前記エアバッグ袋体、および前記作動機構を収容する外殻部と、
を備えることと、
前記作動機構として、前記ガス発生器の作動前の初期状態において配置されている所定の初期位置から所定の起動位置に変位することを契機に、前記ガス発生器を作動させる起動部と、
前記外殻部の内壁面に設けられた固定部に一端側が接続されると共に他端側が前記起動部に接続された伝達部材と、
を備えることと、
外力によって前記外殻部が変形した際に前記伝達部材を介して当該外力を前記固定部から前記起動部に伝達することで当該起動部を前記初期位置から前記起動位置に変位させ、前記起動部に前記ガス発生器を作動させることを含む、
防護体におけるエアバッグ装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護体、防護体におけるエアバッグ装置、および防護体におけるエアバッグ装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地面に固定され、歩行者等の防護対象を保護するための防護体として、ガードレール、フェンス等が広く知られている。例えば、ガードレールは、車両の逸脱の防止等を目的として設けられる防護体であり、車道と歩道との境界部に沿って延設されることで空間を防護対象領域(例えば、歩道)と防護対象外領域(例えば、車道)とに仕切っている。
【0003】
ガードレールは、一般的に、適度な剛性と靭性を有するビームと、当該ビームを支持する支柱によって構成され、車両等の衝突時の衝撃に対してビームと支柱の変形によってエネルギーを吸収する構造となっている。このようなガードレール等の防護体は、車両等の衝突物が衝突した際の衝突エネルギーを吸収するためにビームや支柱にある程度の変形が起こることを許容されて設計されている。そのため、ガードレール等の防護体に対して車両等の衝突物が衝突した際に防護体が大きく変形する場合もあり、従来よりも安全性の優れた防護体が望まれている。
【0004】
特許文献1には、支柱間に鋼製部材を架設したガードレールにおいて、鋼製部材の車道側側面に、内部に緩衝材を充填した緩衝部材を鋼製部材に沿って延在するように取り付け、ガードレールに接触した車両やガードレールの損傷の軽減を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-241571号公報
【文献】米国特許第5791811号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来におけるガードレールに取り付けた緩衝部材は外部に露出しているため、紫外線、雨風等に晒されること等によって緩衝部材が劣化し、長期に亘って保護性能を維持することが困難となる虞がある。
【0007】
これに対して、自動車に搭載される保護装置として、自動車の衝突時に乗員を保護するためのエアバッグ装置が広く実用化されている。しかしながら、地面に固定される防護体においては、エアバッグ装置を作動させるための電源を確保することが容易でなく、当該防護体に自動車用エアバッグ装置をそのまま転用することは難しいという実情がある。
【0008】
本開示の技術は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、地面に固定される防護体において、従来に比べて安全性に優れ、電源の確保が不要であり且つ長期に亘って防護性能が低下することを抑制可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の技術は以下の構成を採用した。すなわち、本開示の防護体は、地面に固定される防護体であって、ガス発生器と、前記ガス発生器の作動時
に当該ガス発生器から供給されるガスによって展開するエアバッグ袋体と、前記ガス発生器を作動させる作動機構と、前記ガス発生器、前記エアバッグ袋体、および前記作動機構を収容する外殻部と、を備え、前記作動機構は、前記ガス発生器の作動前の初期状態において配置されている所定の初期位置から所定の起動位置に変位することを契機に、前記ガス発生器を作動させる起動部と、前記外殻部の内壁面に設けられた固定部に一端側が接続されると共に他端側が前記起動部に接続され、外力によって前記外殻部が変形した際に当該外力を前記固定部から前記起動部に伝達することで当該起動部を前記初期位置から前記起動位置に変位させる伝達部材と、を有する。
【0010】
ここで、前記伝達部材は、線材又は帯材であり、前記作動機構は、前記伝達部材に張力を作用させるテンショナを有し、前記初期状態のときに前記テンショナが前記伝達部材に作用させる張力は、前記起動部が前記初期位置から前記起動位置に変位するときに前記伝達部材に作用する作動時張力に比べて小さくても良い。
【0011】
また、前記ガス発生器は、加圧ガスが充填された充填ボトルと、前記充填ボトルにおけるガス排出口を閉塞する閉塞部材と、を有する加圧ガス式のガス発生器であり、前記作動機構は、前記起動部が前記初期位置から前記起動位置に変位することを契機に前記閉塞部材を開裂することで前記ガス排出口から加圧ガスを排出させても良い。
【0012】
また、本開示の防護体において、前記ガス発生器のガス排出口と、前記エアバッグ袋体のガス導入口とが、可撓性を有する連結管によって連結されていても良い。
【0013】
また、前記防護体は、空間を防護対象領域と防護対象外領域とに仕切るために地面に固定される防護体であって、前記防護対象領域と前記防護対象外領域との境界部に沿って延設される防護隔壁部材を含み、前記外殻部が前記防護隔壁部材に設けられていても良い。また、その場合に、前記外殻部における前記固定部の配置位置と前記起動部の前記初期位置は、前記防護隔壁部材の延設方向に沿った異なる位置にそれぞれ設定されており、前記伝達部材は前記防護隔壁部材の延設方向に沿って延設されていても良い。
【0014】
また、前記防護体は、空間を防護対象領域と防護対象外領域とに仕切るために地面に固定される防護体であって、前記防護対象領域と前記防護対象外領域との境界部に沿って延設される防護隔壁部材と、前記防護隔壁部材を支持する支柱と、を含み、前記外殻部が前記支柱に設けられていても良い。また、その場合に、前記外殻部における前記固定部の配置位置と前記起動部の前記初期位置は、前記支柱の高さ方向に沿った異なる位置にそれぞれ設定されており、前記伝達部材は前記支柱の高さ方向に沿って延設されていても良い。
【0015】
また、前記外殻部は、前記ガス発生器の作動時に前記エアバッグ袋体を外部に展開させるためのバッグ出口と、前記バッグ出口を遮蔽するカバー部材と、を有し、前記ガス発生器の作動時に前記エアバッグ袋体の膨張圧によって前記バッグ出口が開放されても良い。
【0016】
また、前記防護体は、歩道と車道との境界位置に設置されるガードレールであっても良い。
【0017】
また、本開示の技術は、地面に固定される防護体におけるエアバッグ装置として特定することができる。すなわち、本開示に係るエアバッグ装置は、ガス発生器と、前記ガス発生器の作動時に当該ガス発生器から供給されるガスによって展開するエアバッグ袋体と、前記ガス発生器を作動させる作動機構と、前記防護体に設けられ、前記ガス発生器、前記エアバッグ袋体、および前記作動機構を収容する外殻部と、を備え、前記作動機構は、前記ガス発生器の作動前の初期状態において配置されている所定の初期位置から所定の起動位置に変位することを契機に、前記ガス発生器を作動させる起動部と、前記外殻部の内壁
面に設けられた固定部に一端側が接続されると共に他端側が前記起動部に接続され、外力によって前記外殻部が変形した際に当該外力を前記固定部から前記起動部に伝達することで当該起動部を前記初期位置から前記起動位置に変位させる伝達部材と、を有する。
【0018】
また、本開示の技術は、地面に固定される防護体におけるエアバッグ装置の作動方法として特定することができる。すなわち、本開示の技術は、地面に固定される防護体におけるエアバッグ装置の作動方法であって、前記エアバッグ装置として、ガス発生器と、 前記ガス発生器の作動時に当該ガス発生器から供給されるガスによって展開するエアバッグ袋体と、前記ガス発生器を作動させる作動機構と、前記防護体に設けられ、前記ガス発生器、前記エアバッグ袋体、および前記作動機構を収容する外殻部と、を備えることと、前記作動機構として、前記ガス発生器の作動前の初期状態において配置されている所定の初期位置から所定の起動位置に変位することを契機に、前記ガス発生器を作動させる起動部と、前記外殻部の内壁面に設けられた固定部に一端側が接続されると共に他端側が前記起動部に接続された伝達部材と、を備えることと、外力によって前記外殻部が変形した際に前記伝達部材を介して当該外力を前記固定部から前記起動部に伝達することで当該起動部を前記初期位置から前記起動位置に変位させ、前記起動部に前記ガス発生器を作動させることを含む。
【発明の効果】
【0019】
本開示に係る技術によれば、地面に固定される防護体において、従来に比べて安全性に優れ、電源の確保が不要であり且つ長期に亘って防護性能が低下することを抑制可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るガードレールの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るガードレールの斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係るエアバッグ装置の内部構造を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係るガス発生器のディフューザ部およびその周辺の詳細構造を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係るエアバッグ装置の作動状況を説明する図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係るエアバッグ装置の作動状況を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係るエアバッグ装置において、作動ワイヤによって引っ張られた起動片が支持体から切り離された状態を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態1において、防護対象領域に展開した後のエアバッグ袋体を概略的に示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態1において、防護対象領域に展開した後のエアバッグ袋体を概略的に示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係るガードレールの斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係るガードレールにおける支柱の内部構造を説明する図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係るガードレールにおける支柱が変形した状態を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係るエアバッグ装置において、作動ワイヤによって引っ張られた起動片が支持体から切り離された状態を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係るガードレールにおいて、防護対象領域に展開した後のエアバッグ袋体を概略的に示す図である。
【
図15】
図15は、他の実施形態に係る防護体を説明する図である。
【
図16】
図16は、他の実施形態に係る防護体を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本開示に係る防護体、防護体におけるエアバッグ装置、および防護体におけるエアバッグ装置の作動方法の実施形態について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0022】
<実施形態1>
図1および
図2は、実施形態1に係るエアバッグ装置を備えた防護体としてのガードレール1の斜視図である。
図1は、ガードレール1を正面側から眺めた斜視図である。
図2は、ガードレール1を背面側から眺めた斜視図である。
【0023】
ガードレール1は、複数の支柱2、支柱2間に支持されたビーム3、エアバッグ装置4等を備えている。ガードレール1は、地面GRに固定された防護体の一例である。ガードレール1は、歩道と車道との境界位置に設置されており、これらに沿って延設されている。ガードレール1は、歩道側に位置する防護対象領域AR1を防護するために、空間を防護対象領域AR1と防護対象外領域AR2とに仕切る防護体であり、接触あるいは衝突した車両等が歩道側の防護対象領域AR1に進入することを抑制する。
図1、
図2等においては、説明の便宜上、ガードレール1の一部、すなわち一対の支柱2と、支柱2間に架設されたビーム3を示している。
【0024】
支柱2は、例えば、内部が中空構造として構成された円筒状の鋼製支柱である。また、ビーム3は、例えば鋼板を折り曲げ加工することで形成された鋼板ビームである。ビーム3は、防護隔壁部材の一例であり、歩道側の空間である防護対象領域AR1と車道側の空間である防護対象外領域AR2との境界部に沿って延設されている。ビーム3は、防護対象領域AR1に面する防護内面31と、防護対象外領域AR2に面する防護外面32を有している。また、支柱2は、当該支柱2が防護対象領域AR1に配置されるようにビーム3の防護内面31に接合されている。ビーム3は、例えば、取付具5によって支柱2に取り付けられている。
【0025】
以下では、防護対象外領域AR2に面する防護外面32側をガードレール1(ビーム3)の正面側とし、防護対象領域AR1に面する防護内面31側をガードレール1(ビーム3)の背面側として説明する。また、地面GRに対して支柱2が延びる方向をガードレール1の上下方向として説明する。ビーム3は、高さ方向中央部に、正面側から見て背面側に向かって窪んだ中央凹部33が形成されている。中央凹部33は、ビーム3の延設方向(長手方向)に沿って延在している。但し、ビーム3および支柱2の形状は特に限定されない。
【0026】
ガードレール1は、例えば、車道を走行する車両等がガードレール1に接触、衝突等した際に、歩道(防護対象領域AR1)に位置する歩行者等を保護するためのエアバッグ装置4を備えている。以下、エアバッグ装置4の詳細について説明する。
【0027】
図3は、実施形態1に係るエアバッグ装置4の内部構造を示す図である。エアバッグ装置4は、鋼製の外殻ケース41を有し、当該外殻ケース41の内部にエアバッグ装置4の各種部品を収容する収容空間としての収容部40が形成されている。外殻ケース41は、外殻部の一例である。エアバッグ装置4の外殻ケース41(収容部40)は、ガードレール1の内部に配設されていても良いし、ガードレール1の外側に付設されていても良い。
図1および
図2に示すように、本実施形態においては、ガードレール1におけるビーム3にエアバッグ装置4の外殻ケース41(収容部40)を付設する例を説明する。
【0028】
図1および
図2に示す例では、エアバッグ装置4の外殻ケース41は、ビーム3のうち
、一対の支柱2間に挟まれたスパン中央部の近傍に配置されている。また、エアバッグ装置4の外殻ケース41は、ビーム3の中央凹部33に設けられている。外殻ケース41は、前壁411、後壁412、上壁413、下壁414、左右一対の側壁415等を有している。
【0029】
また、外殻ケース41における後壁412にはバッグ出口416が開口形成されており、このバッグ出口416がカバー部材417によって遮蔽されている。カバー部材417は、外殻ケース41を形成する鋼製の各壁体よりも低強度の材料、例えば、薄厚の樹脂材料によって形成されている。なお、外殻ケース41の一部は、ビーム3を形成する鋼板によって形成されていても良い。言い換えると、ビーム3を形成する鋼板の一部が、外殻ケース41の一部又は全体を兼ねて構成していても良い。
【0030】
図3に示すように、外殻ケース41の内側、すなわち収容部40には、ガス発生器50、エアバッグ袋体60、作動機構70等が収容されている。エアバッグ袋体60は、収容部40における所定位置に折り畳まれた状態で配置されている。収容部40におけるエアバッグ袋体60の態様は特に限定されない。例えば、収容部40内におけるエアバッグ袋体60は蛇腹折りで折り畳まれていても良いし、ロール折りで折り畳まれていても良いし、他の形態で折り畳まれていても良い。なお、エアバッグ袋体60は、例えば、外殻ケース41の内壁面に設けられた適宜の保持部材(図示せず)に保持されることで、収容部40の所定位置に位置決めされていても良い。また、
図3に示すように、エアバッグ袋体60は、外殻ケース41に収容された状態においてカバー部材417に対向するように、エアバッグ袋体60の配置位置とカバー部材417の位置、大きさ等が定められている。なお、
図3は、ガス発生器50が作動する前のエアバッグ装置4の状態を示している。
【0031】
また、ガス発生器50の種類は特に限定されないが、本実施形態におけるガス発生器50は、加圧ガスが充填された充填ボトル51を有するストアードガス方式のガス発生器である。ガス発生器50の作動時に充填ボトル51が開封されることで加圧ガスがエアバッグ袋体60に供給され、エアバッグ袋体60が膨張する。充填ボトル51の内部に充填された加圧ガスは、例えば、アルゴン、ヘリウム等、エアバッグ袋体60を膨張展開させるために適した適宜のガスを用いることができる。ガス発生器50の充填ボトル51は、適宜の固定部材53によって外殻ケース41に固定されている。
図3に示す例では、ガス発生器50の充填ボトル51が外殻ケース41における前壁411の内壁面411Aに固定されている。但し、ガス発生器50の充填ボトル51は、外殻ケース41における他の壁面に固定されていても良い。
【0032】
更に、
図1~
図3に示すように、エアバッグ装置4における外殻ケース41のバッグ出口416は、歩道側に位置する防護対象領域AR1に面する後壁412に開口されている。バッグ出口416は、ガス発生器50の作動時にエアバッグ袋体60を外殻ケース41(収容部40)の外部に展開させるための開口部である。外殻ケース41のバッグ出口416を遮蔽するカバー部材417は、ガス発生器50の作動時に充填ボトル51から供給された加圧ガスによってエアバッグ袋体60が膨張する過程で、エアバッグ袋体60の膨張圧によって後壁412から外れ、或いは、破壊される。その結果、バッグ出口416が開放される。このように、エアバッグ袋体60の膨張圧によって外殻ケース41のバッグ出口416が開放されることにより、外殻ケース41の内外が連通する結果、歩道側に位置する防護対象領域AR1にエアバッグ袋体60が展開される。
【0033】
なお、外殻ケース41におけるカバー部材417は、ガス発生器50の作動時にエアバッグ袋体60の膨張圧によって後壁412から外部に向けて脱離可能なように、後壁412に対して簡易的に取り付けられていても良い。また、カバー部材417における適所に、カバー部材417における他の部位よりも板厚が小さい脆弱部(例えば、ティアライン
)を延在させても良い。この場合、ガス発生器50の作動時に、エアバッグ袋体60の膨張圧によって脆弱部を起点としてカバー部材417が破断することで、バッグ出口416が開放される。
【0034】
図3に示すように、ガス発生器50は、加圧ガスが充填された充填ボトル51、充填ボトル51の出口端部511側に設けられたディフューザ部52等を有する。充填ボトル51およびディフューザ部52は、例えばステンレス等の金属によって形成されている。充填ボトル51およびディフューザ部52は、溶接等によって互いに接合されていても良いし、一体成形されていても良い。
【0035】
図4は、実施形態1に係るガス発生器50のディフューザ部52およびその周辺の詳細構造を説明する図である。充填ボトル51の内部には加圧ガス室510が形成されており、加圧ガス室510の内部に加圧ガスが充填されている。また、充填ボトル51の出口端部511は筒形状を有しており、出口端部511にはガス排出口512が開口している。また、充填ボトル51における出口端部511には、ガス排出口512を閉塞するバーストディスク等といった閉塞部材513が設けられている。閉塞部材513は、例えば鉄、ステンレス等の金属製の薄肉円盤によって形成されており、ガス排出口512を密閉している。また、
図4に示す例では、加圧ガス室510内に充填された加圧ガスの圧力を受けて閉塞部材513がディフューザ部52のディフューザ室523側に向けて椀状に変形している。
【0036】
ディフューザ部52は、例えば有底筒形状を有する部材であり、筒状の壁部521と、筒状の壁部521の端部を閉塞する底壁部522とを含んでおり、内側に中空のディフューザ室523が形成されている。
図4に示すように、充填ボトル51のガス排出口512を閉塞する閉塞部材513は、その外面513Aがディフューザ室523を臨むように配置されている。ここで、閉塞部材513が開裂することでガス排出口512が開放されると、加圧ガス室510における加圧ガスがガス排出口512からディフューザ室523に流出する。
【0037】
ここで、ディフューザ部52における筒状の壁部521には、ディフューザ室523から加圧ガスを排出するための中空筒形状を有する排出パイプ524の一端が接続されている。排出パイプ524の内側には、加圧ガスを流通させるための内部通路が形成されている。但し、排出パイプ524は、充填ボトル51からエアバッグ袋体60に供給するための加圧ガスをディフューザ室523から排出することができれば良く、例えば、底壁部522に接続されていても良い。また、ディフューザ部52における筒状の壁部521において、排出パイプ524が接続される位置には連通孔521Aが形成されており、連通孔521Aによって排出パイプ524の内部通路とディフューザ室523とが連通されている。
【0038】
また、排出パイプ524の他端には、ディフューザ室523から流れてくる加圧ガスをエアバッグ袋体60に向けて排出するガス排出口524Aが形成されている。エアバッグ袋体60は、その内部に加圧ガスを導入するためのガス導入口61を有し、排出パイプ524におけるガス排出口524Aとエアバッグ袋体60におけるガス導入口61が、可撓性を有する連結管54によって気密に連結されている(
図3を参照)。連結管54は、例えば蛇腹状のフレキシブルホースであっても良い。
【0039】
次に、作動機構70の詳細構造について説明する。作動機構70は、支持体71、起動部としての起動片72、伝達部材としての作動ワイヤ73、プーリ74等を含んでいる。支持体71は、起動片72を支持する部材であり、ディフューザ部52における筒状の壁部521に固定されている。支持体71は、筒状の壁部521からディフューザ室523
における径方向中心側に向かって延在しており、支持体71の先端に形成された脆弱部711に対して起動片72が一体に接続されている。支持体71の先端に形成された脆弱部711は、外力に対して脆い材料によって形成されており、その断面は起動片72の横断面に比べて小さい。
【0040】
また、起動片72は、閉塞部材513の外面513Aに対向する第1面721と、その反対側を向く第2面722を有する。本実施形態において、起動片72における第1面721および第2面722は平坦面として形成されている。
【0041】
図4に示すように、ガス発生器50の作動前の状態において、作動機構70における起動片72の第1面721には、閉塞部材513の外面513Aが当接している。ここで、閉塞部材513の強度は、当該閉塞部材513が開裂するときのバースト圧が加圧ガスの充填圧よりも小さい値となるように設定されている。言い換えると、閉塞部材513の強度は、加圧ガスの充填圧に耐えられない程度に設定されている。そして、作動機構70における支持体71に支持される起動片72が閉塞部材513をディフューザ室523側から支持することによって、閉塞部材513の開裂が抑制されている。すなわち、閉塞部材513は、起動片72によって支持されている限りにおいて開裂が抑制されるが、起動片72からの支持力を喪失した時点で開裂するようになっている。なお、
図4に示すように、ガス発生器50の作動前の初期状態において起動片72が配置されている位置を「初期位置P1」と定義する。すなわち、起動片72が初期位置P1に配置されている初期状態においては、起動片72が閉塞部材513をディフューザ室523側から支持することによって閉塞部材513の開裂が抑制されている。一方、起動片72が初期位置P1から当該初期位置P1と異なる所定の起動位置P2に変位することを契機に、起動片72が閉塞部材513を支持する支持力が失われる。その結果、閉塞部材513が開裂することで、充填ボトル51におけるガス排出口512が開放され、ガス排出口512から加圧ガスが排出される。
【0042】
また、作動機構70における起動片72の第2面722には、作動ワイヤ73における第1端部731が固定されている。作動ワイヤ73における第1端部731は、例えば、起動片72の第2面722に固定された丸環部材等といった固定具723に係留されていても良い。また、作動ワイヤ73における第1端部731には、シール部材75が設けられている。シール部材75は、例えば円盤形状を有していても良い。一方、作動ワイヤ73における第1端部731と反対側の端部である第2端部732は、外殻ケース41における内壁面に固定されている(
図3を参照)。
図3に示す例では、作動ワイヤ73における第2端部732は、外殻ケース41における前壁411の内壁面411Aに設けられた固定具76に固定されている。本実施形態においては、固定具76が固定部の一例である。固定具76は、例えば、外殻ケース41における内壁面に設けられた丸環部材であっても良く、作動ワイヤ73における第2端部732が固定具76に係留されていても良い。なお、本実施形態においては、作動ワイヤ73は金属製ワイヤによって形成されているが、他の材料によって形成されていても良い。また、
図3に示すように、作動ワイヤ73は、外殻ケース41における収容部40に設けられたプーリ74に架け渡されている。プーリ74は、定滑車であり、架け渡された作動ワイヤ73の方向を案内する円盤と、当該円盤を回転可能に軸支する回転軸を有している。プーリ74の回転軸は、例えば外殻ケース41における上壁413、或いは下壁414等に固定されている。
【0043】
また、
図4に示すように、ディフューザ部52における底壁部522には、作動ワイヤ73を挿通する挿通孔522Aが形成されている。挿通孔522Aは、底壁部522を材厚方向に貫通している。また、挿通孔522Aは、作動ワイヤ73の直径よりも大きな内径を有しており、挿通孔522Aの内周面に沿って作動ワイヤ73が摺動自在となっている。また、ディフューザ部52における挿通孔522Aの内径は、シール部材75の直径
よりも小さな寸法に設定されている。
【0044】
次に、ガードレール1に備えられたエアバッグ装置4の作動内容について説明する。本実施形態におけるエアバッグ装置4は、例えば車道(防護対象外領域AR2)を走行する車両等がガードレール1に接触、衝突等した際にガス発生器50が作動し、歩道側に位置する防護対象領域AR1にエアバッグ袋体60を展開させることで歩行者等を保護する。より詳しくは、エアバッグ装置4は、車両等がガードレール1に車道側から接触、衝突等することに伴う外力によってビーム3および当該ビーム3に設置された外殻ケース41が変形することを契機に作動機構70が機能し、当該外殻ケース41に作用した外力を利用してガス発生器50を作動機構70が作動させる。
【0045】
図5は、実施形態1に係るエアバッグ装置4の作動状況を説明する図である。例えば、車道を走行する車両がガードレール1のビーム3の防護外面32に衝突した場合、当該車両の衝突に伴う外力に起因して、ビーム3に設置された外殻ケース41が変形する。例えば、外殻ケース41のうち、主として車道(防護対象外領域AR2)側に面する前壁411が防護対象領域AR1側に向けて湾曲するように変形する。このように、外力によって外殻ケース41(主に前壁411)が変形すると、作動ワイヤ73の第1端部731が接続されている起動片72と、作動ワイヤ73の第2端部732が接続されている固定具76との相対位置が変化し、作動ワイヤ73における経路長(以下、「ワイヤ経路長」という)が、外殻ケース41が変形する前に比べて増大する。
【0046】
作動ワイヤ73のワイヤ経路長は、外殻ケース41における前壁411の内壁面411Aに設けられた固定具76から、起動片72に設けられた固定具723に至るまでの、作動ワイヤ73の経路長である。本実施形態においては、作動ワイヤ73がプーリ74に張架されているため、作動ワイヤ73のワイヤ経路長は、固定具76およびプーリ74間における直線距離と、固定具723およびプーリ74間における直線距離との和に概ね合致する。
【0047】
上記のように、作動ワイヤ73の両端部は起動片72の固定具723と前壁411の固定具76にそれぞれ固定されているため、外殻ケース41の変形に起因してワイヤ経路長が増大すると、作動ワイヤ73が緊張し、作動ワイヤ73の経路長方向(作動ワイヤ73の延伸軸方向とも言える)に引張応力が生じる。このように、作動ワイヤ73に作用する張力は、作動ワイヤ73を介して起動片72の固定具723に伝達される。すなわち、作動ワイヤ73は、ガードレール1への車両の衝突に伴う張力(外力)を、前壁411の固定具76から起動片72の固定具723に伝達する。これにより、ディフューザ室523内に配置された起動片72は、
図6に示す矢印Fの方向、すなわち、閉塞部材513から離れる方向に作動ワイヤ73によって引っ張られる。その結果、支持体71における脆弱部711が千切れる等、破壊され、支持体71から起動片72が切り離される(離脱する)。その結果、起動片72が、
図4で説明した初期位置P1から、当該初期位置P1と異なる起動位置P2に変位する。
【0048】
図7は、実施形態1に係るエアバッグ装置4において、作動ワイヤ73によって引っ張られた起動片72が支持体71から切り離された状態を示す図である。
図7に示すように、起動片72が初期位置P1から起動位置P2に変位すると、それまで起動片72が閉塞部材513を支持していた支持力を喪失し、充填ボトル51(加圧ガス室510)に充填されている加圧ガスの充填圧に閉塞部材513が耐えることができなくなり、閉塞部材513が開裂する。その結果、充填ボトル51におけるガス排出口512が開放され、加圧ガス室510の加圧ガスがガス排出口512からディフューザ室523へと排出される。すなわち、ガス発生器50が作動する。
【0049】
本実施形態においては、作動ワイヤ73における第1端部731にはシール部材75が取り付けられており、且つ、ディフューザ部52の底壁部522における挿通孔522Aの内径はシール部材75の直径よりも小さい。従って、起動片72が支持体71から切り離された後は、
図7に示すように、作動ワイヤ73における第1端部731に設けられたシール部材75が抜け止めとなって、ディフューザ部52の底壁部522における挿通孔522Aを塞いでいる。
【0050】
また、充填ボトル51のガス排出口512からディフューザ室523へと排出された加圧ガスは、筒状の壁部521に形成された連通孔521A、排出パイプ524、連結管54を経由して、エアバッグ袋体60におけるガス導入口61からエアバッグ袋体60の内部へと供給される(
図3等を参照)。このようにして、収容部40に配置されているエアバッグ袋体60への加圧ガスの供給が開始されることで、エアバッグ袋体60の膨張が開始される。
【0051】
外殻ケース41の収容部40内でエアバッグ袋体60が膨張する過程において、外殻ケース41のバッグ出口416を遮蔽するカバー部材417にエアバッグ袋体60の膨張圧が作用する。その結果、カバー部材417が内側から外側に向かって押圧され、後壁412から外れ、或いは、破壊される。これにより、
図5に示すように、バッグ出口416が開放され、加圧ガスの供給によって膨張するエアバッグ袋体60をバッグ出口416から外殻ケース41(収容部40)の外部に展開させることができる。また、外殻ケース41のバッグ出口416は、防護対象領域AR1(歩道)に面して設けられているため、エアバッグ袋体60を防護対象領域AR1(歩道)に展開させることができる。なお、
図5は、エアバッグ袋体60が防護対象領域AR1(歩道)に展開している途中の状態を示している。
【0052】
図8および
図9は、実施形態1において、防護対象領域AR1(歩道)に展開した後のエアバッグ袋体60を概略的に示す図である。
図8は、ガードレール1を上側から眺めた状態、
図9は、ガードレール1を側面側から眺めた状態を概略的に示している。
【0053】
本実施形態におけるガードレール1は、車両等といった衝突物が衝突した場合等、大きな外力がガードレール1に作用したときにエアバッグ装置4(ガス発生器50)を作動し、防護対象領域AR1(歩道)にエアバッグ袋体60を展開させることができる。これにより、防護対象領域AR1(歩道)における歩行者等といった保護対象を好適に保護することができる。つまり、ガードレール1によれば、防護対象領域AR1(歩道)の安全性をより一層確保することができる。
【0054】
また、本実施形態におけるガードレール1によれば、通常時(エアバッグ装置4の作動前)は、外殻ケース41の内部にエアバッグ袋体60が折り畳まれた状態でコンパクトに収容されているため、ガードレール1が嵩張り難くすることができる。よって、歩行者の通行を妨げ難い。また、上記のように、通常時(エアバッグ装置4の作動前)は、外殻ケース41の内部にエアバッグ袋体60が収容されているため、エアバッグ袋体60が長期に亘って紫外線、雨風等に晒されることを抑制できる。従って、ガードレール1を長期に亘って使用に供した場合においても、エアバッグ袋体60が劣化することを抑制できる。これにより、長期に亘って防護性能が低下しないガードレール1を提供することができる。
【0055】
更に、本実施形態におけるガードレール1は、ガス発生器50から供給するガスを用いてエアバッグ袋体60を膨張、展開させる方式であるため、ガードレール1の重量が過度に増加することを抑制できる。従って、ビーム3を支柱2に取り付ける取り付け構造が大掛かりになったり、強度を高める必要が無く、材料コストが過度に嵩み難い。以上より、
本実施形態におけるガードレール1によれば、従来に比べて防護対象領域AR1の安全性をより一層確保することができ、しかも、ガードレール1が過度に嵩張ったり重量の過度な増加を伴うことなく、長期に亘って防護性能が低下しない、地面に固定される防護体を提供できる。
【0056】
また、
図9に示したように、エアバッグ袋体60は、展開後における高さ方向への展開幅(高さ寸法)Haが、防護隔壁部材としてのビーム3の高さ寸法Hbよりも大きくなるように設計されている。このようなエアバッグ袋体60によれば、展開後において、ビーム3の高さ方向における全体をエアバッグ袋体60によって覆うことができる。よって、防護対象領域AR1(歩道)における歩行者をより一層安全に防護することができる。
【0057】
また、
図3に示したように、本実施形態におけるエアバッグ装置4は、外殻ケース41(収容部40)に収容されたガス発生器50が、カバー部材417と対向しない位置に配置されている。このように、外殻ケース41を形成する壁体に比べて強度の低いカバー部材417にガス発生器50が対向しないように配置することで、ガードレール1に車両等が激しく衝突した際に、ガス発生器50のハウジング(本実施形態では、充填ボトル51)が万が一損傷した場合等においても、周囲の安全をより一層好適に確保できる。
【0058】
また、本実施形態におけるガードレール1においては、エアバッグ袋体60が、外殻ケース41のカバー部材417に対向するように収容部40に配置されているため、収容部40内でエアバッグ袋体60が膨張する過程において、エアバッグ袋体60の膨張圧をカバー部材417に作用させやすく、外殻ケース41のバッグ出口416を円滑に開放することができる。
【0059】
本実施形態におけるガードレール1のエアバッグ装置4は、車両等の衝突物がガードレール1に衝突した際の外力によって外殻ケース41が変形した際、当該外殻ケース41を変形させる外力を利用してガス発生器50を機械的機構によって作動させる作動機構70を備えている。これによれば、ガス発生器50を作動させるための電源を確保する必要が無い。従って、本実施形態におけるエアバッグ装置4は、電源を確保することが容易ではない、地面に固定される防護体に設置するエアバッグ装置として特に適している。また、本実施形態におけるエアバッグ装置4によれば、ガードレール1への衝突物の衝突を検知するセンサも不要である。そして、本実施形態におけるエアバッグ装置4およびその作動方法によれば、電力を使用することなく作動し、エアバッグ袋体60を膨張、展開させることができるため、設置場所についての制約を受けることなくガードレール1を設置することができる。つまり、本実施形態におけるエアバッグ装置4を適用することで、設置場所についての自由度が非常に優れたガードレール1を提供できる。
【0060】
更に、本実施形態におけるエアバッグ装置4においては、外殻ケース41(外殻部)における固定具76の配置位置と起動片72(起動部)の初期位置P1は、ビーム3(防護隔壁部材)の延設方向に沿った異なる位置にそれぞれ設定されており、作動ワイヤ73(伝達部材)をビーム3(防護隔壁部材)の延設方向に沿って延設するようにした。これによれば、ビーム3に対する車両の衝突に伴って外殻ケース41が変形する際、作動ワイヤ73に張力が生じ易くなる。その結果、ビーム3に対する車両の衝突時に、起動片72を初期位置P1から起動位置P2に円滑に変位させ、エアバッグ装置4(ガス発生器50)を精度良く作動させることができる。
【0061】
また、本実施形態におけるエアバッグ装置4は、
図7で説明したように、作動機構70がガス発生器50を作動させる際、作動ワイヤ73の第1端部731に設けられたシール部材75が抜け止めとなって底壁部522における挿通孔522Aを塞ぐように構成されている。これにより、充填ボトル51からディフューザ室523に排出された加圧ガスが
、挿通孔522Aから漏れ出すことを抑制できる。その際、ディフューザ部52における挿通孔522Aに位置付けられたシール部材75は、充填ボトル51からディフューザ室523へと加圧ガスが供給されている間に亘って、加圧ガスの圧力によって底壁部522に押し付けられる。そのため、シール部材75によって挿通孔522Aをより一層確実に閉塞し、加圧ガスの漏出を抑制できる。従って、ガス発生器50(充填ボトル51)からエアバッグ袋体60に迅速に加圧ガスを供給し、エアバッグ袋体60を膨張させることができる。また、ガス発生器50(充填ボトル51)からエアバッグ袋体60に供給される加圧ガスの量が減ってしまうことを抑制できる。
【0062】
また、本実施形態におけるエアバッグ装置4は、上記のように排出パイプ524におけるガス排出口524Aとエアバッグ袋体60におけるガス導入口61が可撓性を有する連結管54によって連結されている。そのため、車両等がガードレール1に衝突した際、外殻ケース41が大きく変形しても、ガス発生器50側からエアバッグ袋体60に供給される加圧ガスの流路が閉塞したり、過度に狭まってしまうことを好適に抑制できる。但し、連結管54は、必ずしも可撓性を有している必要は無い。例えば、ディフューザ部52における排出パイプ524とエアバッグ袋体60におけるガス導入口61との間に連結管54を介在させず、エアバッグ袋体60におけるガス導入口61に対して排出パイプ524を直接的に接続しても良い。
【0063】
また、本実施形態におけるエアバッグ装置4の作動機構70において、プーリ74は、作動ワイヤ73に張力を作用させるテンションプーリ(テンショナ)であっても良い。作動機構70が、テンショナとして機能するプーリ74を備えることによって、作動ワイヤ73が撓むことを抑制できる。その結果、車両等がガードレール1に衝突した際、作動ワイヤ73に張力を生じ易くなり、エアバッグ装置4(ガス発生器50)を精度良く作動させることができる。なお、プーリ74をテンションプーリとする場合、車両等がガードレール1に衝突する前の初期状態のときにプーリ74(テンショナ)が作動ワイヤ73に作用させる張力(初期張力)の大きさは、ディフューザ室523に配置された起動片72が初期位置P1から起動位置P2に変位するときに作動ワイヤ73に作用する作動時張力に比べて小さく設定される。これにより、車両等がガードレール1に衝突する前に、エアバッグ装置4(ガス発生器50)が誤って作動することを抑制できる。なお、初期状態において、作動ワイヤ73に張力を作用させるテンショナを、プーリ74とは別に配置しても良いのは勿論である。
【0064】
なお、本実施形態におけるエアバッグ装置4を備えたガードレール1において、エアバッグ袋体60の展開態様、例えば、展開後におけるエアバッグ袋体60の形状、位置、大きさ等の態様は特に限定されない。また、ガードレール1におけるエアバッグ装置4の設置箇所、設置数等は特に限定されない。また、本実施形態においては、作動機構70における伝達部材として、線材である作動ワイヤ73を用いているがこれには限定されない。例えば、作動ワイヤ73の代わりに帯材を用いて、外殻ケース41に作用した外力を当該外殻ケース41に設けられた固定具76から起動片72に伝達しても良く、当該伝達機能を発揮する限りにおいて種々の形態を採用することができる。
【0065】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係るエアバッグ装置を備えた防護体としてのガードレール1Aを説明する。
図10は、実施形態2に係るガードレール1Aの斜視図である。
図10は、ガードレール1Aを背面側から眺めた状態を示しており、実施形態1と共通の構成については同一の参照符号を付すことで詳しい説明を省略する。
【0066】
本実施形態におけるガードレール1Aにおいても、実施形態1に係るガードレール1と同様、ビーム3が支柱2によって支持されている。また、支柱2は、当該支柱2が防護対
象領域AR1に配置されるようにビーム3の防護内面31に接合されている。また、本実施形態におけるガードレール1Aは、エアバッグ装置4Aがビーム3ではなく、支柱2に設けられている。支柱2は、内部が中空構造となっており、エアバッグ装置4Aの各種部品を収容する収容部40が支柱2の内部に形成されている。
図10に示す符号20は、支柱2における円筒壁であり、円筒壁20の内側に収容部40が形成されている。本実施形態においては、内側に収容部40が形成される円筒壁20が外殻部の一例である。また、支柱2における円筒壁20のうち、防護対象領域AR1に面する部位(以下、「第1部位」という)20Aには、バッグ出口416が開口形成されており、当該バッグ出口416がカバー部材417によって遮蔽されている。
【0067】
図11は、実施形態2に係るガードレール1Aにおける支柱2の内部構造を説明する図である。円筒壁20の内側に形成される収容部40には、エアバッグ装置4Aを構成するガス発生器50、エアバッグ袋体60、作動機構70等が収容されている。エアバッグ装置4Aは、支柱2に設けられている点を除いて、実施形態1に係るエアバッグ装置4と実質的に同一構造である。
【0068】
図11に示すように、収容部40には、折り畳まれた状態のエアバッグ袋体60が配置されている。また、ガス発生器50における充填ボトル51は、円筒壁20における第1部位20Aに固定されている。また、ガス発生器50のディフューザ部52は、実施形態1(
図3、
図4等を参照)と同一構造であり、ディフューザ部52における排出パイプ524、連結管54、エアバッグ袋体60におけるガス導入口61の連結態様についても実施形態1に係るエアバッグ装置4と同様である。作動機構70の詳細構造について説明する。本実施形態においても、実施形態1と同様に作動機構70が支持体71、起動片72、作動ワイヤ73、プーリ74等を含んでいる。そして、作動機構70における起動片72は、ディフューザ室523内において初期位置P1に配置された状態で、充填ボトル51におけるガス排出口512を閉塞している閉塞部材513を加圧ガスの充填圧に抗して支持している。これにより、車両がガードレール1Aに衝突する前の初期状態において、閉塞部材513が加圧ガスの充填圧によって開裂することが抑制されている。また、作動機構70における伝達部材としての作動ワイヤ73は、実施形態1と同様、第1端部731が起動片72に固定された固定具723に係留され、第2端部732が固定具76に係留されている。ここで、作動ワイヤ73の第2端部732が接続される固定具76は、円筒壁20における第1部位20Aの内壁面に設けられている。また、
図11に示すように、エアバッグ袋体60は、支柱2における円筒壁20の第1部位20Aに形成されたバッグ出口416およびカバー部材417に対向する位置に配置されている。一方、ガス発生器50における充填ボトル51は、カバー部材417に対向しない位置に配置されている。
【0069】
ここで、車両等の衝突物がガードレール1Aの支柱2の近傍におけるビーム3に衝突すると、
図12に示すように、支柱2の上端側が防護対象領域AR1(歩道)側に向かって傾倒するように支柱2が変形する。
図12において、便宜上、支柱2における内部構造の図示を省略している。
【0070】
本実施形態におけるエアバッグ装置4Aは、ガードレール1Aに対する車両の衝突によって外殻部としての支柱2の円筒壁20が変形することを契機に、作動機構70によってガス発生器50を作動させる。すなわち、
図11に示す初期状態から、
図12に示すように支柱2の円筒壁20が変形する過程で、作動ワイヤ73の第1端部731が接続されている起動片72と、作動ワイヤ73の第2端部732が接続されている固定具76との相対位置が変化し、作動ワイヤ73におけるワイヤ経路長が増大することに起因して作動ワイヤ73に張力が発生する。このようにして作動ワイヤ73に生じた張力が、起動片72の固定具723に作動ワイヤ73を介して伝達されることで、起動片72が閉塞部材51
3から離れる方向に引っ張られる。このように、車両の衝突時に外力によって支柱2の円筒壁20が変形した際に、当該外力を円筒壁20に設けられた固定具76から作動ワイヤ73を介して起動片72に伝達することで、支持体71の脆弱部711に大きなモーメントが掛かり、脆弱部711を破断することができる。その結果、
図13に示すように、支持体71から起動片72が切り離され、起動片72を初期位置P1から起動位置P2へ変位させることができる。
【0071】
すなわち、
図13に示すように、起動片72が支持体71から切り離されることで起動片72が閉塞部材513から離れると、それまで加圧ガスの充填圧に対抗するように閉塞部材513を支持していた支持力が失われる。その結果、閉塞部材513が開裂し、充填ボトル51におけるガス排出口512が開封される。
【0072】
充填ボトル51のガス排出口512からディフューザ室523に排出された加圧ガスは、ディフューザ部52における連通孔521A、排出パイプ524、連結管54を経由し、ガス導入口61からエアバッグ袋体60の内部へと供給される(
図11を参照)。以上のように、ガードレール1Aに車両が衝突した際、外殻部としての支柱2の円筒壁20が変形することを契機に作動機構70が機械的にガス発生器50を作動させることによって、ガス発生器50からエアバッグ袋体60への加圧ガスの供給が開始される。
【0073】
本実施形態におけるエアバッグ装置4Aにおいても、収容部40に収容されているエアバッグ袋体60は、円筒壁20の第1部位20Aに形成されたバッグ出口416を遮蔽するカバー部材417に対して対向するように配置されている。そのため、収容部40内でエアバッグ袋体60が膨張する過程でエアバッグ袋体60の膨張圧がカバー部材417に作用し、カバー部材417が円筒壁20(第1部位20A)から離脱し、或いは、破壊されることで、バッグ出口416が開放される。その結果、エアバッグ袋体60がバッグ出口416を通じて外部の防護対象領域AR1に飛び出すと共に展開する。
図14は、実施形態2に係るガードレール1Aにおいて、防護対象領域AR1(歩道)に展開した後のエアバッグ袋体60を概略的に示す図であり、ガードレール1を上側から眺めた状態を示している。
【0074】
図14に示すように、本実施形態におけるガードレール1Aにおいても、車両等の衝突に伴う外力(衝撃)によって支柱2の円筒壁20が変形することを契機に、作動機構70によってガス発生器50を作動させ、エアバッグ袋体60を防護対象領域AR1(歩道)に展開することができる。これにより、防護対象領域AR1(歩道)における歩行者を好適に防護することができ、当該防護対象領域AR1の安全性をより一層確保することができる。そして、作動機構70は、車両等の衝突エネルギーによって支柱2の円筒壁20が変形した際、当該衝突エネルギーを利用して、電力を使用することなく機械的メカニズムによってガス発生器50を作動させることができる。従って、本実施形態におけるエアバッグ装置4Aおよびその作動方法は、道路に沿って設置されるガードレール1Aのように、外部電源を確保することが難しい環境下に設置されることが多い防護体に適用した場合のメリットが特に顕著となる。
【0075】
更に、本実施形態におけるエアバッグ装置4Aは、支柱2の円筒壁20(外殻部)における固定具76の配置位置と起動片72(起動部)の初期位置P1が、
図11に示したように支柱の高さ方向に沿った異なる位置にそれぞれ設定されている。これによれば、ガードレール1Aに対する車両の衝突に伴って支柱2の円筒壁20が変形する際、作動ワイヤ73に張力が生じ易くなる。その結果、ガードレール1Aに対する車両の衝突時に、起動片72を初期位置P1から起動位置P2に円滑に変位させ、エアバッグ装置4A(ガス発生器50)を迅速に精度よく作動させることができる。
【0076】
また、本実施形態におけるガードレール1Aは、ビーム3の防護内面31に支柱2が接合されることで、支柱2が防護対象領域AR1に配置されている。このようなビーム3と支柱2の接合態様によれば、エアバッグ装置4Aの作動時において、支柱2の内部に形成された収容部40からエアバッグ袋体60を防護対象領域AR1に展開させ易くなるという利点がある。
【0077】
なお、本実施形態におけるガードレール1Aは、ビーム3を支持する支柱2の円筒壁20を外殻部として利用したが、これには限定されない。例えば、実施形態1に係るような外殻ケース41を支柱2の外側に付設し、ガードレール1Aに車両が衝突した際にエアバッグ袋体60を防護対象領域AR1(歩道)に展開しても良い。
【0078】
また、上記実施形態においては、ガス発生器50における充填ボトル51のガス排出口512を封止する閉塞部材513のバースト圧を加圧ガスの充填圧よりも小さい値に設定し、車両等がガードレールに衝突する前の初期状態のときには閉塞部材513を起動片72によって直接的に支持することで閉塞部材513の開裂を抑制していたが、この態様には限定されない。例えば、作動機構70における起動片72が初期状態において配置される初期位置P1は、閉塞部材513と離間していても良い。この場合、初期状態において、閉塞部材513が加圧ガスの充填圧によって開裂しないように、閉塞部材513のバースト圧を加圧ガスの充填圧よりも大きくしておく。そして、このような態様では、車両等がガードレールに衝突した際、作動ワイヤ73を介して伝達される張力によって起動片72が初期位置P1から起動位置P2に変位した際、起動片72の変位と連動して閉塞部材513を開裂させる開封機構を別途、作動機構70が有していると良い。
【0079】
上記のような開封機構としては、例えば、起爆薬を内部に収容する雷管と、雷管に衝突するようにスプリング等によって付勢された撃針(トリガー)を含み、初期状態においては起動片72を開封機構の撃針に係合させておき、撃針が雷管に向かって衝突することをスプリングの付勢力に抗して規制しておいても良い。例えば、雷管のチャンバーに収容される起爆薬は、圧力が加わると燃焼する火薬である。
【0080】
このような開封機構では、スプリングの付勢力によって撃針が雷管に勢いよく衝突することで、雷管の起爆薬が燃焼し、起爆薬の燃焼によって生成された火炎や燃焼ガスの熱エネルギーによって閉塞部材513を開裂することができる。また、開封機構は、雷管の起爆薬とは別の伝火薬を収容する伝火薬チャンバーを有し、雷管のチャンバーと伝火薬チャンバーとを伝火孔(フラッシュホール)によって連通させておいても良い。この場合、雷管における起爆薬の燃焼によって生成された火炎や燃焼ガスを火薬チャンバー内に伝火孔を通じて導入させ、その熱エネルギーによって伝火薬に着火しても良い。そして、伝火薬の燃焼によって生成された火炎や燃焼ガスの熱エネルギーによって閉塞部材513を開裂しても良い。
【0081】
上記開封機構では、車両等がガードレールに衝突する前の初期状態において起動片72が初期位置P1に配置されている限りにおいては、撃針が雷管に衝突することが規制される。その結果、充填ボトル51のガス排出口512は、閉塞部材513によって封止された状態に維持される。一方、車両等がガードレールに衝突し、作動ワイヤ73によって起動片72が初期位置P1から起動位置P2に変位すると、起動片72と撃針との係合が解除される。その結果、スプリングの付勢力によって撃針が雷管に勢いよく衝突することで雷管の起爆薬が着火し、閉塞部材513が開裂する。これにより、充填ボトル51のガス排出口512が開封し、ガス発生器50を作動させることがきる。
【0082】
また、上記開封機構の別態様として、例えば、車両等がガードレールに衝突したときに、先端が尖ったロッド部材や矢じり部材等によって形成された開裂用部材をスプリング等
の付勢力を利用して閉塞部材513に衝突させ、その衝撃によって直接的に閉塞部材513を開裂する態様を採用しても良い。この場合、車両等がガードレールに衝突する前の初期状態においては、例えば起動部として構成されたストッパー部材を開裂用部材と係合させておき、開裂用部材が閉塞部材513に向かって発射されることをスプリングの付勢力に抗して規制しておいても良い。また、ストッパー部材(起動部)は作動ワイヤ73の第1端部731に接続されており、車両等がガードレールに衝突した際に作動ワイヤ73に引っ張られることによってストッパー部材(起動部)が開裂用部材と係合する初期位置P1から、その係合状態を解除する起動位置P2へと変位する。これを契機として、開裂用部材がスプリングの付勢力によって閉塞部材513に向かって発射され、閉塞部材513に開裂用部材が勢いよく衝突することによって閉塞部材513を開裂させ、充填ボトル51のガス排出口512を開封しても良い。
【0083】
<他の実施形態>
上述までの実施形態および変形例においては、本開示に係る防護体を、道路に沿って設置されるガードレールに適用する場合を例に説明したが、ガードレール以外の防護体に適用しても良い。すなわち、本開示に係る防護体は、地面に固定され、空間を防護対象領域と防護対象外領域とに仕切るための種々のフェンス、防護柵等に適用することができる。また、防護体によって仕切られる防護対象領域と防護対象外領域は、歩道と車道に限定されないのは勿論である。例えば、防護体は、工場や倉庫等といった施設内において、フォークリフト等による作業が行われる作業エリアと、作業外エリアの境界部に沿って設置されるフェンス、防護柵等であっても良い。
【0084】
図15および
図16は、他の実施形態に係る防護体1Bを説明する図である。
図15は、防護体1Bの背面図、
図16は、防護体1Bの上面図である。上述までの実施形態に係るガードレールと同一の構成については同一の符号を付すことで詳しい説明を省略する。
【0085】
防護体1Bは、防護対象領域AR1と防護対象外領域AR2との境界部に沿って延設される防護隔壁部材3Bと、防護隔壁部材3Bを支持する複数の支柱2Bを有している。防護隔壁部材3Bは、防護対象領域AR1と防護対象外領域AR2との境界部に沿って延びる複数の横桟部材300を含んでおり、各横桟部材300は例えば一定の間隔をおいて上下に並んで配置されている。なお、各横桟部材300は、防護対象領域AR1に面する防護内面31と、防護対象外領域AR2に面する防護外面32を有している。防護体1Bは、例えば、工場や倉庫等の施設における床面(地面)に固定される防護柵である。そして、防護体1Bは、フォークリフト等による作業が行われる作業エリアと、従業員等が通行する通行エリアの境界位置に沿って設置される。
【0086】
防護体1Bは、エアバッグ装置4Bを備えており、防護隔壁部材3Bにおける防護内面31にエアバッグ装置4Bの外殻ケース41が取り付けられている。外殻ケース41の内部構造は、実施形態1の
図3、
図4等で説明した構造と同一である。このような防護体1Bにおいても、防護体1Bに衝突物が衝突した際、衝突物の衝突エネルギーを利用して外殻ケース41内に収容されているガス発生器を機械的に作動させ、エアバッグ袋体を防護対象領域AR1に展開させることができる。
【0087】
なお、
図15および
図16に示す例では、防護体1Bにおける防護隔壁部材3Bに外殻ケース41を取り付ける態様を例に説明したが、これには限定されない。例えば、防護体1Bにおける防護隔壁部材3Bを中空構造とし、エアバッグ装置4Bを構成するエアバッグ袋体やガス発生器等を収容する収容部を防護隔壁部材3Bの内部に形成しても良い。また、防護体1Bにおける防護隔壁部材3Bに外殻ケース41を配設する代わりに、支柱2Bに外殻ケース41を配設しても良い。
【0088】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0089】
1・・・ガードレール
2・・・支柱
3・・・ビーム
4・・・エアバッグ装置
40・・・収容部
41・・・外殻ケース
50・・・ガス発生器
51・・・充填ボトル
52・・・ディフューザ部
60・・・エアバッグ袋体
70・・・作動機構
71・・・支持体
72・・・起動片
73・・・作動ワイヤ
74・・・プーリ
75・・・シール部材
76・・・固定具