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特許7284090固体フレーバー組成物の調製、組成物、該組成物を含む食品、およびフレーバー付与方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】固体フレーバー組成物の調製、組成物、該組成物を含む食品、およびフレーバー付与方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20230523BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20230523BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230523BHJP
【FI】
A23L27/00 C
A23L2/56
A23L5/00 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019523571
(86)(22)【出願日】2017-11-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2017078158
(87)【国際公開番号】W WO2018083224
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】1618535.7
(32)【優先日】2016-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(74)【代理人】
【識別番号】100195419
【弁理士】
【氏名又は名称】矢後 知美
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルブリング,イヴァン
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-523088(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101283775(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101263888(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102283365(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0348991(US,A1)
【文献】Journal of Food Engineering,2007年07月20日,Vol. 84, No. 4,pp. 582-590
【文献】Journal of the Saudi Society of Agricultural Sciences,2016年07月15日,Vol. 17, No. 3,pp. 323-329,http://dx.doi.org/10.1016/j.jssas.2016.07.003
【文献】Chapter 38 Microwave and Thermally Induced Maillard Reactions,Thermally Generated Flavors,ACS Symposium Series 543,1994年,449-456
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L,A23F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応フレーバー固体組成物を調製するプロセスであって、反応フレーバー前駆体化合物を含有する水性スラリーを、マイクロ波放射を使用して加熱し、反応フレーバーを形成し、付随して該スラリーを乾燥させ、反応フレーバー固体組成物を形成する工程を含む、前記プロセス。
【請求項2】
水性スラリーの水分含量が、スラリーの総重量の15~50wt%である、請求項1に記載の反応フレーバー固体組成物を調製するプロセス。
【請求項3】
反応フレーバー固体組成物の水分含量が、反応フレーバー固体組成物の総重量の0.5~5wt%である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
スラリーが、1~15分にわたる期間、加熱される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
スラリーが、最大180℃の温度で加熱されてもよい、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
最大125℃、130℃、140℃、150℃、160℃または180℃の温度までスラリーを加熱する前に、水の大部分を蒸発させるためにスラリーがある期間、100℃に加熱される、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項7】
スラリーが1~5分の期間、100℃の温度に加熱される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
スラリーが周囲圧力において、または真空下で加熱される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
スラリーが0.3~5.0cmの厚さを有するフィルムの形態である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
スラリーが、室温において、1’000~50’000センチポアズの粘度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
スラリーが、担体材料を含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
食品もしくは飲料にフレーバーを付与する、または食品もしくは飲料のフレーバーを調整もしくは改善する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセスにより得られる反応フレーバー固体組成物を前記食品または飲料に添加する工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、マイクロ波放射によって反応フレーバー固体組成物を形成する方法;前記方法に従って作製される反応フレーバー固体組成物;および前記反応フレーバー固体組成物を含有する食品または飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
マイクロ波調理によって食品のフレーバーおよび色を生成することは、当該技術分野において知られている、例えば、EP 2 797 427、US 4,940,592またはUS 5,053,236を参照のこと。マイクロ波はまた、乾燥のためにも使用されている、例えば、CN 101263888またはCN 101283775を参照のこと。しかしながら、食品の調理の結果としてのフレーバーおよび/または色の即座の生成は、本質的に食品または飲料マトリックスの外部のフレーバー組成物を調製するプロセスである、工業生産反応フレーバーとは異なる。
【0003】
「反応フレーバー」は、食品または飲料のすべての様式のフレーバーを付与、調整、または改善するために使用することができるフレーバー組成物を記載する、当該技術分野で認識されている用語である。それらは、制御された反応条件下で反応フレーバー前駆体成分を反応させることにより形成される。反応フレーバーは、それ自体は食品ではなく;それは、食品または飲料にフレーバーを付与するために、またはそれらにおけるフレーバーを調整または改善するために、食品または飲料に添加することが意図されている製造品である。反応フレーバーは本質的に非栄養性であり、すなわち、それらの実質的な目的は、食品または飲料にフレーバーを付与すること、またはそれらが添加される食品または飲料のフレーバーを増強、調整または改善することであり、栄養を提供することではない。反応フレーバー固体組成物は、固体、例えば、粉末状固体またはペーストの形態における反応フレーバーである。
【0004】
反応フレーバー固体組成物の調製に採用される反応フレーバー前駆体成分は、それ自身ではほとんどまたは全くフレーバーを有さず、これは、メイラード反応、シッフ塩基形成、ストレッカー分解、カラメル化反応、および/またはフレーバーおよび/または色の発現に有益である他の反応などの複雑な一連の連続的および/または競合的反応によって発現または生産され、これらのすべては当業者によく知られている。許容される前駆体成分および推奨される反応条件は、当業者に知られている規制当局によって提供される指針に記載されている。
【0005】
メイラード反応についてのマイクロ波の使用は、例えば、CN 104397661、CN 101756148、CN 102283365またはCN 103564395に記載されている。
反応フレーバーは、典型的には、揮発性および非揮発性の両方の反応生成物、ならびに任意の未反応の出発材料の複雑な多成分混和物からなる。反応フレーバーの生産において、その組成的構成は反応パラメーターに敏感であり得、そしてその構成部分に関して、またはそれらの構成部分の分布のパターンにおいて変更し得る。重要な反応パラメーターは、前駆体成分の化学的性質、反応時間および温度、水分、圧力、pHなどを含み得る。これらのパラメーターの1つ以上が制御されていない場合、例えばすべての出発材料を変換できないことによって、またはオフテイストの発現によって、フレーバープロファイルおよび/または反応フレーバーの着色は悪影響を受ける可能性がある。
【0006】
反応フレーバーの工業生産において、当業者は前述の反応パラメーターまたは変数を考慮に入れるのみならず、プロセス工学的考慮も考慮に入れなければならない。例えば、反応媒体中の粘度制御は、工業的規模においてポンピング、攪拌、混和および濾過などの操作に影響を及ぼす重要なプロセスパラメータであり、これらの操作を容易にするために、非常に希薄な水性スラリーからなる反応媒体中で反応フレーバーを形成することが慣習的である。さらに、このような方式において粘度を制御することに加えて、高いレベルの水を採用することは、熱伝達の制御を助け、反応フレーバー形成の間の過熱または局所的な加熱を防ぐことができる。
【0007】
しかしながら、非常に希薄なスラリーの使用はいくつかの欠点を有する。反応フレーバーは通常、固体組成物の形態で市販されている。乾燥形態の反応フレーバーは、それらの物理的および微生物学的安定性の理由のために、ならびに貯蔵、取扱い、投与の容易さなどのサプライチェーンの考慮のために特に重要である。反応フレーバーが形成されると、反応混合物からの水の除去は、それゆえに重要なプロセス工程である。
【0008】
従来のプロセス条件を使用する場合、第一の工程における反応フレーバーを作成するためにスラリーを調理した後、スラリーは、噴霧乾燥または真空オーブン乾燥による第二の工程において脱水される。噴霧乾燥は、比較的安価であるが、この技術は、比較的大量の担体材料の使用を必要とし、これは、完成した反応フレーバーのフレーバープロファイルおよび食感に有害であり得る。より一般的には、第二工程において、脱水は真空オーブン乾燥を使用して達成される。この場合において、反応フレーバーを調製した後、スラリーは乾燥トレイに移され、トレイは真空オーブンに挿入され、そこで減圧下で加熱(通常100℃未満)することによって水を蒸発させる。しかしながら、このようにしてスラリーを脱水するのに必要な時間とエネルギーはかなり無駄な資源である。このプロセスは手間がかかり、複雑でそして高価であり;長い乾燥時間および上昇した温度への依存は、慎重なプロセス内制御がなくては、乾燥プロセスが反応フレーバー固体組成物のフレーバーの品質および信頼性にその痕跡を残し得ることを意味する。
【0009】
それにもかかわらず、反応フレーバー固体組成物は取り扱いが容易であり、食品または飲料中の添加剤として多くの用途があり、フレーバー製造業者および食品および飲料製造業者などによって非常に望まれている。従来のプロセスによって形成される反応フレーバー固体組成物に特徴的な、またはそれを改善する、強力な本格的なフレーバープロファイルを示す反応フレーバー固体組成物をもたらすことができる、費用効果が高く効率的な様式で反応フレーバー固体組成物を形成する工業的な方法を提供する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
従来技術の欠点に取り組む中で、出願人は、驚くべき様式で、マイクロ波放射を使用する単一の加熱工程において、反応性フレーバーの形成および脱水の両方を行うことができることを発見した。本出願人は、水性スラリー中に反応フレーバーを形成する一方で、付随して該スラリーを脱水して反応フレーバー固体組成物を形成する任意の先行技術のプロセスも、具体的に、マイクロ波放射を使用して行われるそのようなプロセスのいずれも知らない。
【0011】
本発明は、第一の側面において、マイクロ波放射を使用して反応フレーバー前駆体化合物を含有する水性スラリーを加熱する工程を含む、反応フレーバー固体組成物を調製するプロセスを提供する。
別の側面において、本発明は、マイクロ波放射を使用して反応フレーバー前駆体化合物を含有する水性スラリーを加熱する工程を含むプロセスによって得られる反応フレーバー固体組成物を提供する。
【0012】
別の側面において、本発明は、本発明の反応フレーバー固体組成物を含む食品または飲料を提供する。
さらに別の側面において、本発明は、食品または飲料にフレーバーを付与する、または、食品または飲料のフレーバーを調整または改善する方法であって、本明細書に定義される反応フレーバー固体組成物を前記食品または飲料に添加する工程を含む、前記方法を提供する。
本発明のこれらの、ならびに他の側面および態様は、以下の説明および例を参照してさらに理解される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、反応フレーバー前駆体化合物を含む水性スラリーを反応フレーバーに変換し、そしてマイクロ波放射を使用してスラリーを加熱することによって付随的に脱水することができるという驚くべき発見に基づいている。したがって、先行技術とは対照的に、反応および乾燥が同一工程で実施される。マイクロ波放射は、スラリー中に反応フレーバーを形成すること、およびスラリーを脱水することの両方のために熱源を提供し、それによって反応フレーバー固体組成物を提供する。
【0014】
本開示を通して使用される用語「反応フレーバー」は、あらゆる様式の食品または飲料のフレーバーを付与、調整または改善するために使用することができるフレーバー組成物を指す。それは典型的には、制御された反応条件下で反応フレーバー前駆体成分を反応させることにより形成される。「反応フレーバー」は、それ自体は食品ではなく;それは、食品または飲料にフレーバーを付与するために、またはそれらにおけるフレーバーを調整もしくは改善するために、食品または飲料に添加されることが意図されている製造品である。「反応フレーバー」なる用語は、「プロセスフレーバー」および「フレーバー調製物」の両方を包含することを意味する。
【0015】
フレーバリングについてのEC規制に関するEFFAガイダンス文書によれば、「サーマルプロセスフレーバー」は、還元糖およびアミノ酸/アミン源から形成される反応フレーバーである。一方、「フレーバリング調製物」は、EUにおいて「EFFA Guidance Document for the Production of Natural Flavouring Substances & (Natural) Flavouring Preparations」に概説されているように取り扱われる。
スラリー中で反応フレーバーを形成し、付随してスラリーを脱水して反応フレーバー固体組成物を形成するためにマイクロ波放射を採用することができる、という発見は、第一工程において水性スラリーを逐次加熱して反応フレーバーを形成し、その後従来の真空乾燥オーブンまたは噴霧乾燥による別の乾燥工程を行う、先行技術プロセスを使用する、従来可能であったよりもはるかに速い処理時間を可能にする。
【0016】
さらに、本発明によって、従来のプロセスによって形成される反応フレーバー固体組成物を強く連想させる反応フレーバー固体組成物を、はるかに短い期間で形成することが可能である。なおさらには、反応フレーバーの合成およびスラリーの乾燥は付随的に行われるので、反応フレーバー合成の化学は比較的低い水分含量の環境で進行し、従来のプロセスを使用しては達成し得なかった様々なおよび/または豊富な反応フレーバー構成成分の形成を可能にする。
【0017】
従来のプロセスでは、反応フレーバーが高い水分含量の反応媒体中で形成され、そして反応媒体を脱水することは望ましくないので、温度は100℃を上回らない、あるいは反応が密閉ベッセル中で行われるために反応媒体が加圧下にある場合、わずかに高い(例えば約120℃)。対照的に、本発明によれば、比較的低い水分含量のスラリーを最初に採用することができ、そして水分含量は脱水によりさらに減少する。これは、反応フレーバーの発現の間のより短い処理時間およびより高い処理温度をもたらす。より高い反応温度およびより短い反応時間の結果として、全く新しくかつ興味深いフレーバープロファイルを提供する反応フレーバーを作成することが可能である。
【0018】
実際に、出願人は、従来のプロセスでは達成し得ない、豊富なおよび/または様々な重要な反応フレーバー構成成分を含む反応フレーバー固体組成物を作成することが可能であることを見出した。より具体的には、本発明は、ケトピペラジン類、ピペラジン類、ピロリジン類、ピラジン類、スルフィド類、チオール類およびマルトール誘導体、ならびにそれらの混合物から選択される驚くべき豊富なおよび/または様々な反応フレーバー構成成分を含む反応フレーバー固体組成物を提供する。これらの反応フレーバー構成成分は、あらゆる様式の反応フレーバー固体組成物において特に有用な成分であるが、具体的には、風味のある(savoury)、家禽の(poultry)、ローストされた、皮の硬いパン(crusty bread)、トーストされたチーズ、炙った(seared)、または動物性のフレーバーノートを送達またはそれらに寄与することを意図するものである。
【0019】
所望の反応フレーバーが比較的短い処理時間および比較的高い温度で形成されそして脱水され得るという発見は、反応フレーバーを製造する分野における当業者が、フレーバーおよび色の発現が、時間および温度を含む上記の確立された反応変数の順守に依存すること、および、工業的に標準的な調理および乾燥工程(真空乾燥または噴霧乾燥など)が、反応フレーバー固体組成物の所望のフレーバープロファイルを作成するために重要であることを理解し受け入れていることを考慮すると、実に、非常に驚くべきであり、反直観的である。
【0020】
本発明の態様において、反応フレーバー固体組成物を形成する方法は、最大50wt%、具体的には、10~50wt%、より具体的には、10~30wt%、より具体的には、15~30wt%、およびさらにより具体的には、10~20wt%の量で水を含有する反応フレーバー前駆体化合物の水性スラリーを提供する工程、および、スラリーを脱水し、かつ反応フレーバー固体組成物を生産するのに十分な期間、それにマイクロ波放射を適用する工程を含む。
スラリーの脱水後、得られる反応フレーバー固体組成物は、0.1~5.0wt%、より具体的には、0.5~5.0wt%、より具体的には、1.0~4.0wt%、より具体的には、1.0~3.0wt%、およびさらにより具体的には、1.0~2.0wt%の水分含量を有し得る。
【0021】
本発明によれば、マイクロ波放射は、水性スラリーに適用され、その中に含有される前駆体化合物を反応させ、そして反応フレーバーを形成させる。付随して、マイクロ波放射によって生成した熱はスラリーを脱水する。
スラリーの温度は、反応フレーバーを形成させ、その時間スケールにおいてスラリーも脱水させ、反応フレーバー固体組成物を形成させるようなものである。
【0022】
本発明の態様において、スラリーの温度が12時間を超える期間、125℃になってはならないという条件で、スラリーは125℃の温度で加熱されてもよい。
本発明の態様において、スラリーの温度が4時間を超える期間、140℃になってはならないという条件で、スラリーは140℃の温度で加熱されてもよい。
本発明の態様において、スラリーの温度が2時間を超える期間、150℃になってはならないという条件で、スラリーは150℃の温度で加熱されてもよい。
本発明の態様において、スラリーの温度が1時間を超える期間、160℃になってはならないという条件で、スラリーは160℃の温度で加熱されてもよい。
本発明の態様において、スラリーの温度が15分を超える期間、180℃になってはならないという条件で、スラリーは180℃の温度で加熱されてもよい。
【0023】
スラリーがどのように加熱されるかに応じて、その温度は、ボイル(boiling)、グリル(grilling)、またはロースト(roasting)などの異なる種類の調理技術を模倣するために制御され得る。所望のフレーバープロファイルが確実に作成されるように、温度は制御されるべきである。スラリーの処理においては、時間も別の重要な要素である。スラリーが十分な期間加熱されない場合、未反応の前駆動化合物に関連したオフノートや、過度にローストされた(over-roasted)または焦てさえいるノート(burnt note)さえも発現し、それは他の所望の、より微細なノートを圧倒し得る。
【0024】
任意の反応フレーバーを本発明の方法によって生成することができる。最も一般的な反応フレーバーのいくつかは、赤身肉のノート、家禽のノート、野菜のノート、パンの皮のノート、チョコレートのノート、キャラメルのノート、ポップコーンのノートおよび炙り焼きの(fire roasted)ノートを提供しまたはそれらに寄与するものを含む。
【0025】
本発明の特色は、反応フレーバー固体組成物を形成するための、反応フレーバーの合成とその脱水との両方が、単一工程のプロセスにおいて本質的に同時に起こることである。スラリーが脱水されて固体組成物を形成するのと同じ時間フレーム内で、プロセスフレーバーが形成され得、そして過剰に調理されないことは全くもって驚くべきことであった。しかしながら、出願人は、これをプロセス変数の適切な制御によって達成し得ることを見出した。
【0026】
本発明の態様において、スラリーは、1~15分、より具体的には、1~10分、さらにより具体的には、1~7分、およびさらにより具体的には、1~5分にわたる期間加熱される。加熱の期間においてスラリーの温度は、最大180℃であってもよい。
【0027】
より特定の態様において、スラリーは、蒸発によって大部分の水を追い出すために、ある期間にわたって100℃で加熱されてもよい。その期間はスラリーの水分含量に依存するが、典型的には約1~約5分の範囲であり得る。
その後、反応フレーバーの形成を完了させ、かつ残留する水を追い出して脱水を完了させるために、スラリーの温度は、ある期間にわたって130、140、150、160または180℃に上昇させてもよい。好適な期間は、わずか10秒、最大1分、最大2分、最大3分、最大4分、または最大5分であってもよい。
【0028】
反応フレーバー固体組成物は、マイクロ波電源を切ることによって、またはマイクロ波オーブンからそれを取り出すことによって冷却することができる。
スラリーの加熱は、周囲圧力でまたは真空下で行われてもよい。100mbar~1mbarの真空は、本発明の実行において好適である。
本発明の態様において、マイクロ波放射はフィルムの形態であるスラリーに適用される。フィルムは、スラリーを蒸発面上にキャスティング、注入またはポンピングすることによって形成されてもよい。
【0029】
フィルムの厚さは、所望の反応フレーバーが発現される期間内にスラリーを脱水しなければならないことを考慮して選択される。効率的かつ均一な加熱を確実にするためには、入射マイクロ波放射がフィルムを透過することも必要である。フィルムの表面温度は、蒸発面の長さに沿って間隔を置いて配置された標準的な赤外線センサーを使用して測定することができる。
好適なフィルムの厚さは、約0.1~約5.0cm、より具体的には、0.3~5.0cm、より具体的には、1.0~4.0cm、およびさらにより具体的には、1.0~3.0cmの範囲内である。
【0030】
スラリーのフィルムから水を蒸発させるための典型的な装置は、その上で水性スラリーのフィルムがキャスティング、注入またはポンピングされ得る蒸発表面を含んでもよい。表面は、トレイおよびスラリーがマイクロ波オーブンに入れられる前にその上でスラリーがキャストされる、トレイからなってもよい。あるいは、表面は、その上でスラリーがキャストされるベルトであってもよく、それはベルトの経路に配置されたマイクロ波オーブンを通って供給され、それを通してベルトが移動し、それによってスラリーは上記で言及された時間および温度で加熱される。
【0031】
マイクロ波オーブンを通過した後、得られる反応フレーバー固体組成物は、粘性のペースト、ケーキ、リボンなどの形態で存在してもよい。
この段階で、反応フレーバー固体組成物はさらなる処理工程に供されてもよい。例えば、粘性のペーストの形態の反応フレーバー固体組成物は、それを成形する、それを包装することなどが望まれる場合には、押出しまたは成型の工程に供してもよい。
【0032】
ケーキまたはリボン形態の反応フレーバー固体組成物は、それを所望の粒径を有する粉末、顆粒などの形態にするために、粉砕、細粉および篩い分けすることによって等級付けされてもよい。
水性スラリーの粘度は、蒸発器表面上に容易にキャストまたはポンピングされるようなものであるべきであり、そして処理の間に表面上で十分に不動であるべきである。
好適な粘度は、室温で約150~200,000センチポアズ、好ましくは1,000~50,000センチポアズの範囲内にあるであろう。
【0033】
本発明に従った方法において、任意の工業用マイクロ波オーブンを採用してもよい。好適なマイクロ波オーブンは、30kW/915MHz(50kVA)から最大100kW/915MHz(150kVA);または100W/2450MHz(0.15kVA)から最大30kW/2450MHz(45kVA)を含む。
スラリー、典型的には水性スラリーへのマイクロ波エネルギー入力は、典型的には3~100kW、またはさらにそれ以上、好ましくは30~100kWの範囲であってもよい。
上述のように最大50wt%であり得るスラリーの水分含量は別として、スラリーの残りの大部分は、反応フレーバー前駆体化合物、ならびにタンパク質またはタンパク質の断片、炭水化物、脂肪および塩、および担体などの必要と思われる任意の加工助剤から構成される。
【0034】
脂肪および塩はフレーバーを生成する目的でスラリーに添加されてもよいが、それらはまた処理を助けてもよい。例えば、脂肪または油はスラリー全体を通して良好な熱放散を確実にする。塩の添加は、スラリーへのエネルギーの取り込みを促進し、加熱速度を速めることができる。
担体もまたスラリーに組み込んでもよい。担体は、繊維状材料およびマルトデキストリンを含む。それらは、プロセスフレーバー固体組成物が乾燥粉末として得られることを確実にするのを助けることができ、それは次に粉砕などのような任意の下流の処理工程を容易にするであろう。
【0035】
スラリーに採用してもよい前駆体化合物は当技術分野においてよく知られており、それらは、作成することが望まれる特定の反応フレーバーに応じて、熟練したフレーバリストに知られている様式で変更されてもよい。前駆体化合物はアミノ酸/アミン源(またはそれらの源)および還元糖を含む。スラリーはまた、脂質または脂肪、スパイス、および加水分解植物性タンパク質(HVP)または酵母自己溶解物などのタンパク質源を含んでもよい。
【0036】
これらの材料に加えて、スラリーは、硫黄源、肉パウダー、粉末ブロスまたはストックを含む、味またはフレーバーを調整することができる他の材料を含有してもよく、かかる成分のより十分な議論は以下に記載される。
アミノ酸/アミン源は、システイン、メチオニン、アラニン、グリシン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン、バリン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、グルタチオン、他の硫黄含有ペプチド、HVP(ピーナッツ(groundnut)、大豆小麦/トウモロコシグルテン)、他の加水分解タンパク質(例えば、ミルク、卵、魚、血液、肝臓、骨、コラーゲンに由来し得るもの)、酵母抽出物、自己溶解酵母、肉抽出物、タウリンおよびピロリドンカルボン酸からなる群から選択されてもよい。
【0037】
還元糖は、アルデヒド基を有するか、または異性化によって溶液中でそれを形成することができるもののいずれかを有するものである。アルデヒド基は、糖がメイラード反応において還元剤として作用することを可能にし、多くの食品の褐変において重要である。アルドースの環状ヘミアセタール形態は開環してアルデヒドになり得、ある種のケトースは互変異性化を受けてアルドースなり得る。還元糖の例は、グルコース、フルクトース、キシロース、グリセルアルデヒド、ガラクトース、ラクトース、アラビノース、マルトース、デンプン、加水分解デンプンなどのグルコースポリマー、ならびにグルコースシロップ、マルトデキストリン、およびデキストリンのようなデンプン誘導体を含む。
【0038】
硫黄源は、硫化水素、システイン、シスチン、メチオニン、グルタチオン、チアミン(thaimin)、無機硫化物、有機チオールおよび硫化物、2-メルカプトエタノール誘導体、例えば、メルカプトアセトアルデヒドおよび/またはその二量体である2,5-ジヒドロキシ-1,4-ジチアン、5-ヒドロキシ-3-メルカプトペンタノン、3-メルカプトプロパン-1-オール、4,5-置換チアゾール、チオカーボナート、チオアミド、2-メルカプトアルカン酸(2-mercaptoalkoanoic acid)/アミド、メルカプトアルキルアミン、アミノスルフィド、S-アセチルメルカプトコハク酸、植物抽出物、発酵野菜ジュース、酵母抽出物、自己溶解酵母、卵タンパク質、肉エキス抽出物からなる群から選択されてもよい。
【0039】
アミノ酸と還元糖との比は広い範囲内で変更することができ、例えば、アミノ酸と炭水化物との典型的な比は1:5であるが、これは達成されることが望まれる効果に応じて著しく逸脱し得る。
本発明の態様において、反応フレーバー固体組成物は、最大30wt%の水;最大70wt%のタンパク質;最大6wt%の還元糖などの還元炭水化物;最大4wt%の脂質;最大20wt%の担体を含有するスラリーの生成物であるだろう。
本発明の別の態様において、反応フレーバー固体組成物は、最大30wt%の水;最大30wt%の塩;最大35wt%の還元糖などの還元炭水化物;最大15wt%の脂質;最大20wt%までのアミノ酸;および最大14wt%の担体を含有するスラリーの生成物であるだろう。
【0040】
スラリーのpHは、0.5~8、より具体的には2~8、さらにより具体的には4~8の範囲に調節することができる。任意の食品グレードの酸および塩基を使用することができる。酸の例は、乳酸、リン酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、タンニン酸、カフェイン酸、安息香酸、酪酸、およびそれらの組み合わせを含む。塩基の例は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、および酢酸ナトリウムを含む。
【0041】
本発明の反応フレーバー固体組成物は、それにフレーバーを付与するため、またはそのフレーバーを調整もしくは改善するために、食品または飲料と混和してもよい完全なフレーバー組成物を表してもよい。あるいは、反応フレーバー固体組成物は、完全なフレーバー組成物の一部のみを形成してもよく、そして反応フレーバー固体組成物を他のフレーバー成分と混合して完全なフレーバー組成物を形成することができる。
熟練したフレーバリストは、食品および飲料業界の要求を満たすための幅広い多様な完全なフレーバー組成物を開発するために、本発明の反応フレーバー固形組成物をフレーバー組成物に採用される他の既知の成分と混合することができるであろう。
【0042】
完全なフレーバー組成物に有用なそれらの他の既知の成分は、反応フレーバー固体組成物の形成前にスラリーに添加されてもよく、または、それが形成された後に、あるいはその両方において、それらは反応フレーバー固体組成物と混和されてもよい。
完全なフレーバー組成物は、本明細書に記載の反応フレーバー固体組成物;芳香揮発性物質および当該技術分野において一般に知られている他のフレーバー成分;および脂肪または脂肪酸など、あるいはそれらの供給源、ハーブ、スパイスなどの他の相乗剤または増強剤;pH調整剤;無機塩;味マスキング剤;味覚物質(taste sensates);ビタミン;染料;着色剤;顔料などを含んでもよい。
【0043】
他の成分は、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、メチルプロパナール、C3~C5アルカナール、HVPを含むアルデヒドおよびケトン源、ブタンジオン、ペンタン-2,3-ジオン、ピルブアルデヒド、ピルビン酸、グリセルアルデヒド、グリオキサール、ジヒドロキシアセトン、アルファ-ケト酪酸、ヘプタン-3,4-ジオン-2,5-ジアセタート、HMFone、HDFone、および関連する誘導体、アスコルビン酸、5-ケトグルコン酸、シクロテン、マルトール、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸を含むアルファジケトンおよびそれらの供給源、ならびにタンパク質加水分解物を含む。
【0044】
フレーバー増強剤およびそれらの供給源の例は、MSG、IMP、GMP、酵母抽出物、自己溶解酵母、HVP、2-フルフリル-チオイノシン-5’-リン酸、2-アリルオキシイノシン-5’-リン酸、2-(低級アルコキシ)イノシン-5’-ホスファート、2-ベンジルチオイノシン-5’-ホスファート、4-グルコシルグルコン酸、およびシクロテンを含む。
pH調整剤の例は、HCl、硫酸およびリン酸などのモノ-、ジ-およびトリ-塩基性無機酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸およびプロピオン酸を含む有機酸;バリン、グリシンおよびグルタミン酸を含むアミノ酸を含む。
脂肪の例は、牛肉、鶏肉、ココナッツの脂肪、他のトリグリセリド、脂肪酸、およびそれらのエステルを含む。
無機塩の例は、塩化物およびリン酸塩を含む。
【0045】
熟練したフレーバリストが達成しようとしているフレーバープロファイルに応じて、完全なフレーバー組成物はさらに、1以上の以下の成分:
アセトアルデヒド(リンゴ)、硫化ジメチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、および酪酸エチル;例えば、酢酸シンナミル、桂皮アルデヒド、シトラール、ジエチルアセタール、酢酸ジヒドロカルビル、ギ酸オイゲニル、およびp-メチルアニソールを含む、揮発性アルデヒドまたはエステルを含有するフレーバー油
を含有していてもよい。フレーバー油中に存在してもよい揮発性化合物のさらなる例は、以下:
【0046】
ベンズアルデヒド(チェリー、アーモンド);桂皮アルデヒド(シナモン);シトラール、すなわちアルファ-シトラール(レモン、ライム)、ネラール、すなわちベータ-シトラール(レモン、ライム);デカナール(オレンジ、レモン);エチルバニリン(バニラ、クリーム);ヘリオトロピン、すなわちピペロナール(バニラ、クリーム);バニリン(バニラ、クリーム);アルファ-アミルシンナムアルデヒド(スパイシーフルーティーフレーバー);ブチルアルデヒド(バター、チーズ);バレルアルデヒド(バター、チーズ);シトロネラール(修飾体、多くの種類);デカナール(シトラスフルーツ);アルデヒドC-8(シトラスフルーツ);アルデヒドC-9(シトラスフルーツ);アルデヒドC-12(シトラスフルーツ);2-エチルブチルアルデヒド(ベリーフルーツ);ヘキセナール、すなわちトランス-2(ベリーフルーツ);トリルアルデヒド(チェリー、アーモンド);ベラトルムアルデヒド(バニラ);2,6-ジメチル-5-ヘプテナール、すなわちメロナール(メロン);2,6-ジメチルオクタナール(グリーンフルーツ);および2-ドデセナール(シトラス、マンダリン);チェリー;またはグレープおよびそれらの組み合わせ;
【0047】
オールスパイス由来のスパイスオレオレジン、バジル、トウガラシ(capsicum)、シナモン、クローブ、クミン、ディル、ニンニク、マジョラム、ナツメグ、パプリカ、ブラックペッパー、ローズマリー、およびターメリック、精油、アニス油、キャラウェイ油、クローブ油、ユーカリ油、フェンネル油、ニンニク油、ショウガ油、ペパーミント油、タマネギ油、ペッパー油、ローズマリー油、スペアミント油、シトラス油、オレンジ油、レモン油、ビターオレンジ油、タンジェリン油、アリウム属フレーバー、ニンニク、ニラ(leek)、チャイブ(chive)、およびタマネギ、植物抽出物、アルニカフラワー抽出物、カモミールフラワー抽出物、ホップ抽出物、マリーゴールド抽出物、植物性フレーバー抽出物、ブラックベリー、チコリ根、ココア、コーヒー、コーラ、甘草根、ローズヒップ、サルサパリラ根、サッサフラス樹皮、タマリンドおよびバニラ抽出物、タンパク質加水分解物、加水分解植物性タンパク質、肉タンパク質加水分解物、ミルクタンパク質加水分解物、ならびにS. Heath, Source Book of Flavors, Avi Publishing Co., Westport Connecticut, 1981, pages 149-277に開示されるものを含む天然および人工の両方の複合フレーバー;
【0048】
バレリアン油;3,4-ジメチル-オキシフェノール(3,4-dimeth-oxyphenol);酢酸アミル;桂皮酸アミル、γ-ブチリルラクトン;フルフラール;トリメチルピラジン;酢酸フェニル;イソバレルアルデヒド;エチルマルトール;エチルバニリン;吉草酸エチル;酪酸エチル;ココア抽出物;コーヒー抽出物;ペパーミント油;スペアミント油;クローブ油;アネトール;カルダモン油;ウィンターグリーン油;桂皮アルデヒド;吉草酸エチル-2-メチル;γ-ヘキセニルラクトン;2,4-デカジエナール;2,4-ヘプタジエナール;メチルチアゾールアルコール(4-メチル-5-β-ヒドロキシエチルチアゾール);2-メチルブタンチオール;4-メルカプト-2-ブタノン;3-メルカプト-2-ペンタノン;1-メルカプト-2-プロパン;ベンズアルデヒド;フルフラール;フルフリルアルコール;2-メルカプトプロピオン酸;アルキルピラジン;メチルピラジン;2-エチル-3-メチルピラジン;テトラメチルピラジン;ポリスルフィド;ジプロピルジスルフィド;メチルベンジルジスルフィド;アルキルチオフェン;2,3-ジメチルチオフェン;5-メチルフルフラール;アセチルフラン;2,4-デカジエナール;グアイアコール(guiacol);フェニルアセトアルデヒド;β-デカラクトン;D-リモネン;アセトイン;酢酸アミル;マルトール;酪酸エチル;レブリン酸;ピペロナール;酢酸エチル;n-オクタナール;n-ペンタナール;n-ヘキサナール;ジアセチル;グルタミン酸一ナトリウム;グルタミン酸一カリウム;硫黄含有アミノ酸、例えばシステイン;加水分解植物性タンパク質;2-メチルフラン-3-チオール;2-メチルジヒドロフラン-3-チオール;2,5-ジメチルフラン-3-チオール;加水分解魚タンパク質;テトラメチルピラジン;プロピルプロペニルジスルフィド;プロピルプロペニルトリスルフィド;ジアリルジスルフィド;ジアリルトリスルフィド;ジプロペニルジスルフィド;ジプロペニルトリスルフィド;4-メチル-2-[(メチルチオ)-エチル]-1,3-ジチオラン;4,5-ジメチル-2-(メチルチオメチル)-1,3-ジチオラン;および4-メチル-2-(メチルチオメチル)-1,3-ジチオラン
を含む。
【0049】
完全なフレーバー組成物は味マスキング剤を含有していてもよい。味マスキング剤は、1以上の不快な味覚、特に苦味、渋味および/または金属味覚または後味をマスキングするための物質であり、これらの物質は本発明による生成物の構成要素となり得る。例は、ジヒドロカルコン、ヌクレオチド、ナトリウム塩、ヒドロキシフラバノンなどを含む。完全なフレーバー組成物は味覚物質を含有していてもよい。味覚物質は、辛い味覚、唾液分泌誘導物質、温感またはチクチクする感覚を引き起こす物質、および冷感活性成分を含む。
【0050】
辛い味覚、および/または唾液分泌誘導物質、および/または皮膚または粘膜に温感および/またはチクチクする感覚を引き起こす物質の例は、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ジンゲロール、パラドール、ショウガオール、ピペリン、カルボン酸-N-バニリルアミド、具体的には、ノナン酸-N-バニリルアミド、ペリトリン(pellitorin)またはスピラントール、2-ノナン酸アミド、具体的には、2-ノナン酸-N-イソブチルアミド、2-ノナン酸-N-4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルアミド、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジルアルコールのアルキルエーテル、具体的には、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル-n-ブチルエーテル、4-アシルオキシ-3-メトキシベンジルアルコールのアルキルエーテル、具体的には、4-アセチルオキシ-3-メトキシベンジル-n-ブチルエーテルおよび4-アセチルオキシ-3-メトキシベンジル-n-ヘキシルエーテル、3-ヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコールのアルキルエーテル、3,4-ジメトキシベンジルアルコールのアルキルエーテル、3-エトキシ-4-ヒドロキシベンジルアルコールのアルキルエーテル、3,4-メチレンジオキシベンジルアルコールのアルキルエーテル、(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)酢酸アミド、具体的には、(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)酢酸-N-n-オクチルアミド、バニリルマンデル酸(vanillomandelic acid)アルキルアミド、フェルラ酸-フェネチルアミド、ニコチンアルデヒド、ニコチン酸メチル、ニコチン酸プロピル、2-ニコチン酸ブトキシエチル、ニコチン酸ベンジル、1-アセトキシカビコール、ポリゴジアールおよびイソドリメニノールである。
【0051】
辛い味覚の天然抽出物、および/または、皮膚または粘膜に温感および/またはチクチクする感覚をもたらし、完全なフレーバー組成物の構成要素となり得る天然抽出物は、パプリカの抽出物、コショウの抽出物(例えば、トウガラシ(capsicum)抽出物)、トウガラシ(chili pepper)の抽出物、ショウガの根の抽出物、Aframomum melguetaの抽出物、Spilanthes-acmellaの抽出物、Kaempferia galangalの抽出物、Alpinia galangalの抽出物であり得る。
【0052】
上述したように、これらの成分のいずれか1つまたは組み合わせを、反応フレーバー形成中にスラリーに添加してもよく、あるいは本発明による方法に従って後者が形成された後に、それらを反応フレーバー固体組成物と混和してもよい。
前述の成分に加えて、完全なフレーバー組成物は担体材料を含有していてもよい。具体的には、反応完全フレーバー組成物が流動助剤または増量剤として粉末の形態で存在する場合、または粉末のガラス転移温度(Tg)を調整することによって粉末に物理的安定性を提供するために、担体材料は採用される。
【0053】
反応フレーバー固体組成物の構成成分それ自体として、または完全なフレーバー組成物中の構成成分として含まれていてもよい好適な担体は、限定されることなく、糖、糖誘導体、加工デンプン、タンパク質、アルコール、セルロース、デキストリン、ゴム、糖ポリオール、ペプチド、酸、炭水化物、親水コロイドを含む。好適な材料の特定の例は、アラビアゴム、カプスル、マルトース、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、トレハロース、フルクトース、リボース、デキストロース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、ペンタトール、アラビノース、ペントース、キシロース、ガラクトースなどの糖;水素化デンプン加水分解物、イヌリン、オリゴフルクトースなどのオリゴ糖;マルトデキストリンまたはデキストリン(すなわち、可溶性繊維);加工デンプン;糖フルーツグラン(sugar fruit gran);コーンシロップ固体;糖ホワイトグラン(sugar white gran);寒天、アカシアゴム、変性アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、カラギーナンなどの親水コロイド;ガム;ポリデキストロース;カルボキシメチルセルロースナトリウム、酵素加水分解カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース;ゼラチン、エンドウ豆タンパク質、大豆およびホエータンパク質単離物および加水分解物、ならびにカゼイン酸ナトリウムなどのタンパク質;二酸化ケイ素;ならびにそれらの誘導体および混合物を含む。
【0054】
担体は、反応フレーバー固体組成物の乾燥重量を基づいて5~25wt%の量で、完全なフレーバー組成物中に採用してもよい。
完全なフレーバー組成物単独でまたはその一部として本発明の反応フレーバー固体組成物を含有する食品または飲料は、本発明の範囲内である。
本発明の特色は、反応フレーバー固体組成物が食品または飲料マトリックスの外部で形成される生成物であることである。それは、それが食品または飲料と混合されるかまたはそれに適用されることによって、単独でまたは完全なフレーバー組成物の一部としてのいずれかで、食品または飲料のフレーバーを付与または調整または改善することができる製造品である。反応フレーバー固体組成物は、食品または飲料マトリックス中またはその上に形成されず、一方で、食品または飲料は加熱または調理されるプロセス中にある。
【0055】
食品または飲料に採用される特定の反応フレーバー固体組成物の量は、意図される用途および達成されることが望まれる効果に依存するが、一般に、0.1~1重量%、好ましくは、約0.1~0.5重量%の量が、食品または飲料に望ましいフレーバーおよび/または香りを付与するために、あるいは食品または飲料のフレーバーおよび/または香りを調整または改善するのに適切である。
食品または飲料の例は、ベークド(baked)製品、スナック食品、シリアル製品、アルコールおよび非アルコール飲料、スパイスブレンド、即時加熱可能な食品、即時飲食可能な食事、乳製品、肉製品、調味料調製物、ケチャップ、ソース、乾燥野菜、スープ、ブイヨン、ヌードル、冷凍のアントレ(frozen entree)、グレービー、およびデザートを含む。
【0056】
本発明の反応フレーバー固体組成物は、食品または飲料のフレーバーを一般的に改善することができる。反応フレーバー固体組成物は、コンビニエンス食品などの食品または飲料の最終ブレンドにおいて他の成分と単に混合することによって食品または飲料に添加されてもよい。あるいは、反応フレーバー固体組成物は、食品または飲料の外側に添加されてもよく、例えば、スナック食品を散布する、または噴霧コーティングするプロセスである。なおさらには、反応フレーバー固体組成物は、その形成の間である、時おり内部フレーバリングと呼ばれるプロセス中に、食品または飲料に添加されてもよい。
【0057】
本発明の反応フレーバー固体組成物は、限定することなく、以下の製品:
菓子類、好ましくは、チョコレート、チョコレートバー製品、バー形態の他の製品、フルーツガム、ハードおよびソフトキャラメルおよびチューインガムからなる群から選択される;
ベークド製品、好ましくは、パン、乾燥ビスケット、ケーキおよび他のクッキーからなる群から選択される;
スナック食品、好ましくは、焼いたまたは揚げたポテトチップスまたはポテト生地製品、パン生地製品、およびコーンまたはピーナッツ(peanut)ベースの押出物からなる群から選択される;
【0058】
シリアル製品、好ましくは、朝食用シリアル、ミューズリーバーおよび調理済み完成米製品からなる群から選択される;
アルコールおよびノンアルコール飲料、好ましくは、コーヒー、ティー、ワイン、ワインを含有する飲料、ビール、ビールを含有する飲料、リキュール、シュナップス、ブランデー、フルーツを含有するソーダ、アイソトニック飲料、ソフトドリンク、ネクター、フルーツおよび野菜ジュース、ならびにフルーツまたは野菜調製物からなる群から選択される;インスタント飲料、好ましくは、インスタントココア飲料、インスタントティー飲料およびインスタントコーヒー飲料からなる群から選択される;
【0059】
粉末グレービー、ソースミックス、コンディメント(condiment)および発酵製品を含む、スパイスブレンドおよび消費者調製食品;
即時加熱可能な食品:準備済み食事およびスープ、好ましくは、粉末スープ、インスタントスープ、調理済みスープからなる群から選択される;
乳製品ミルク製品、好ましくは、ミルク飲料、アイスミルク、ヨーグルト、ケフィア、クリームチーズ、ソフトチーズ、ハードチーズ、粉ミルク、ホエー、バター、バターミルクおよび部分的または完全に加水分解されたミルクタンパク質含有製品、フレーバーミルク飲料からなる群から選択される;
【0060】
大豆タンパク質または他の大豆画分、好ましくは、大豆ミルクおよびそれから生産される製品、大豆レシチン含有調製物、豆腐もしくはテンペなどの発酵製品またはそれから生産される製品および大豆ソースからなる群から選択される;
肉製品、好ましくは、ハム、新鮮なまたは生のソーセージ調製物、および味付けされたまたはマリネされた新鮮なまたは塩漬けの肉製品からなる群から選択される;
【0061】
卵または卵製品、好ましくは、乾燥卵、卵白および卵黄、ならびに、それらの油性製品またはエマルジョン、好ましくは、マヨネーズ、レムラード、ドレッシングおよび調味料調製物からなる群から選択される、からなる群から選択される;ならびに
フルーツ調製物、好ましくは、ジャム、シャーベット、フルーツソースおよびフルーツフィリングからなる群から選択される;野菜調製物、好ましくは、ケチャップ、ソース、乾燥野菜、急速冷凍野菜、調理済み野菜、酢中の野菜および保存野菜からなる群から選択される;
における使用によく適している。
本発明は、以下の非限定的な例によってさらに詳細に説明される。
【実施例
【0062】
例1
以下の手順に従って混合物(試料1)を調製し、処理した。
ガラスビーカー中の165gの水に、タンパク質源(220g)、アミノ酸(33g)、還元炭水化物源(55g)、腐食剤(caustic)(16.5g、1N)および牛脂(60.5g)を、均一な懸濁液が形成されるまでの激しい撹拌下で加えた。次いで、自由流動性スラリーを結晶皿に注ぎ入れ、マイクロ波放射(例えば、600W、7分、2450MHz、大気圧)に供した。マイクロ波のスイッチを入れた直後に、水は沸騰し始め、泡立ちが観察された。水画分の蒸発後、温度はさらに上昇した。145℃のピーク温度に達すると、マイクロ波電源のスイッチを切った。ガラス状材料を周囲温度まで冷却した。凝固した材料(1~3%の水分)を300~2000μmに微粉砕する前に粗く砕いた。
【0063】
従来のバッチ反応器を使用した比較試料の調製
試料1の調製において上述した材料を、アンカースターラーおよび温度センサーを備えた密閉型の、従来の、二重ジャケット付きガラス反応器(1リットルの容量)中で処理した。50℃で出発材料の懸濁液を確立した後、スラリーを70分以内に115℃まで加熱した。115℃に達した後、スラリーを65分間、この温度で維持した(圧力上昇が観察された:1.5bar)。反応後、バッチを40分以内に再び50℃に冷却した。得られた液体をある量の担体と混和し、続いてNiro Minor型噴霧タワー上で噴霧乾燥した。
【0064】
試料1および比較試料の評価
試料1を、同一の成分を含有するがアンカースターラーを備えた従来のバッチ反応器中で調製され、次いで反応スラリーの噴霧乾燥が行われた比較試料と共に、訓練されたパネリストによって評価した。評価の結果を以下に示す。
試料1は、比較試料のおおよそ2倍の強さであると決定された。さらに、調理技術によって得られるフレーバーをより連想させる、より強力で複雑なフレーバーを有すると考えられた。比較すると、比較試料はそれほど本格的ではない(less authentic)とみなされた。
【0065】
例2
以下の手順に従って、混合物(試料2)を調製し、処理した。
調製タンク中で、472gの飲料水を400gの酵母抽出物、70gの植物油および15gのアミノ酸と混合した。均一なスラリーを形成した後、25gを結晶皿(3~5mm層厚)に注いだ。スラリーを大気圧で、6分間、800Wでマイクロ波処理した。水の沸点に達した直後に、スラリーの最初の泡立ちが観察され、水画分の蒸発後、二度目に反応物は発泡し、そして最終的に凝固した(電源を切った時点での最高温度:表面温度は148℃(IR)、内部161℃(Pt標準抵抗温度計)。試料の最終水分含量は1.5~2.5wt%であった。4分間冷却した後、得られた脆い生成物を乳鉢と乳棒で細粉した。得られた粉末粒子径は、300~2000μmであった。得られた粉末は周囲温度で6ヶ月の試験期間にわたって安定で自由流動性であった。
【0066】
試料2の調製に採用した材料を使用して、バッチ反応器中で比較生成物を調製した。上述の材料を、アンカースターラーおよび温度センサーを備えた密閉型の、従来の、二重ジャケット付きガラス反応器(1リットルの容量)中で処理した。50℃で出発材料の懸濁液を確立した後、スラリーを脱気して反応の間の過度の発泡を防いだ。次いで、スラリーを55分間かけて105℃まで加熱した。105℃に達した後、スラリーを135分間この温度で維持した(圧力の上昇が観察された:0.6bar)。反応後、バッチを35分かけて再び50℃に冷却した。得られた液体を担体と混和し、続いてNiro Minor型噴霧タワー上で噴霧乾燥した。
【0067】
試料2を、同一の成分を含有するがアンカースターラーを備えた従来のバッチ反応器中で調製され、次いで反応スラリーの噴霧乾燥が行われた比較試料と共に、訓練されたパネリストによって評価した。評価の結果を以下に提供する。
試料2は、強度にローストされ顕著な動物種特異的特質を有する新規で複雑な特徴を提供する一方で、比較生成物においては、酵母の特徴が優勢であった。試料2は、従来の調理技術によって得られるフレーバーを連想させる、より本格的なフレーバーを提供すると考えられた一方で、比較試料は、反対に、それほど本格的ではないと考えられた。
【0068】
例3
適切な調製タンク中で、41gのフルーツシロップ、19gのL-プロリン(0.17モル)、および15gのクエン酸Na(0.06モル)の懸濁液を調製した。27gのマルトデキストリンを添加した後、得られたスラリーをマイクロ波処理(800Wで2分、続いて300Wで3分)に供した。著しい発泡が観察された。最高温度はIRにより111℃と測定された。冷却している間、熱い、粘性の物体が凝固した。乾燥し、発砲した脆い材料が得られ、これを制御された雰囲気下で粉砕した(Retsch ZM100, Germany)。水分含量は2.3%と測定された(Moisture Analyser HB43, Mettler-Toledo, Switzerland)。
【0069】
マイクロ波処理生成物と従来の水ベースのバッチ処理代替物(処理後に噴霧乾燥)との機能的感覚刺激性の比較は、ブイヨンタイプテイスティングベース(bouillon type tasting base)において同等の機能的性能を提供するために、マイクロ波処理生成物の7倍の用量減少が可能になった。