(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】繊維系食品用容器を製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
D21J 3/00 20060101AFI20230523BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20230523BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
D21J3/00
B65D1/26 BSE
B65D1/26 BRQ
B65D1/00 110
(21)【出願番号】P 2019526197
(86)(22)【出願日】2017-07-26
(86)【国際出願番号】 US2017044036
(87)【国際公開番号】W WO2018022806
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-27
(32)【優先日】2016-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519030833
【氏名又は名称】フットプリント インターナショナル, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】チュン, ヨーク ドウ
(72)【発明者】
【氏名】ムーア, ブランドン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, イユン
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-097351(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101624794(CN,A)
【文献】特開2006-206103(JP,A)
【文献】特開2001-355199(JP,A)
【文献】特開平10-046500(JP,A)
【文献】特開2002-138399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21J 3/00
B65D 1/26
B65D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維系の電子レンジ使用可能な食品用容器の真空成形で使用するためのスラリーであって、
古い段ボール容器(OCC)および新聞印刷用紙(NP)のうちの少なくとも1つから磨砕された繊維を含む水様のパルプ混合物と、
水分バリア成分として前記スラリー重量の0.5%~10%の範囲のアルキルケテン二量体(AKD)と、
油バリア成分として前記スラリー重量の0.5%~10%の範囲のフルオロカーボン樹脂およびフッ素含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含有する水性エマルジョンであって、前記水分バリア成分と異なる油バリア成分と、
剛性成分として前記スラリー重量の1%~5%の範囲の液体デンプンと、
を含む、スラリー。
【請求項2】
肉用トレイを製造する方法であって、
古い段ボール容器(OCC)および新聞印刷用紙(NP)のうちの少なくとも1つを含む繊維系スラリー混合物を提供する、前記スラリー混合物は、さらに、i)アルキルケテン二量体(AKD)を含む水分バリア成分と、ii)フルオロカーボン樹脂およびフッ素含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含有する水性エマルジョンを含む油バリア成分と、iii)液体デンプンを含む剛性成分と、を含む、ことと、
前記肉用トレイの形をしたワイヤーメッシュ型を提供することと、
前記型を前記繊維系スラリー混合物に浸漬することと、
前記ワイヤーメッシュ型を横切って真空引きして、繊維粒子を前記ワイヤーメッシュ表面に蓄積させることと、
前記型および付着した繊維粒子を前記スラリー混合物からから取り出すことと、
その後、前記繊維粒子を乾燥させて、前記肉用トレイをもたらすことと、を含む、方法。
【請求項3】
食品用トレイの真空成形で使用するためのスラリーを混合する方法であって、
古い段ボール容器(OCC)および新聞印刷用紙(NP)のうちの少なくとも1つを含む繊維系スラリー混合物を提供することと、
アルキルケテン二量体(AKD)を含む、スラリー重量の約1%~4%の範囲の水分バリア成分を前記スラリー混合物に添加することと、
フルオロカーボン樹脂およびフッ素含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含有する水性エマルジョンを含む、スラリー重量の約1.5%の範囲の油バリア成分を前記スラリー混合物に添加することと、を含む、方法。
【請求項4】
電子レンジ使用可能な食品用容器を製造する方法であって、
i)アルキルケテン二量体(AKD)を含む、スラリー重量の約1.5%~4%の範囲の水分バリア成分と、ii)フルオロカーボン樹脂およびフッ素含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含有する水性エマルジョンを含む、スラリー重量の約1%~4%の範囲の油バリア成分と、iii)スラリー重量の約0.1%~0.5%の範囲の液体デンプンを含む剛性成分と、を含む繊維系スラリー混合物を用意することと、
ワイヤーメッシュ型を前記繊維系スラリー混合物に浸漬することと、
前記ワイヤーメッシュ型を横切って真空引きして、繊維粒子を前記ワイヤーメッシュ表面に蓄積させることと、
その後、前記電子レンジ使用可能な食品用容器を乾燥させて、前記型から取り出すことと、
前記食品用容器の内側表面および外側表面のうちの少なくとも1つを、前記油バリア成分と異なる蒸気バリアとして水性長鎖フッ素含有ポリマーでコーティングすることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して容器および包装材料を製造するための環境保護から持続可能な方法および装置に関し、より具体的にはプラスチックを置き換えるための成型繊維製品の真空成形で使用するための新規のスラリーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てプラスチック容器および包装材料によって引き起こされる汚染は蔓延しており、これにより地球全体の状況が脅かされ、かつ健全な生態系およびそこに住む様々な生物の脅威となっている。廃棄物は、スタイロフォームおよび発泡ポリスチレン(EPS)包装材、持ち帰り用容器、ボトル、薄膜袋、ならびに光分解したプラスチックペレットの破片の形態で、水路および海と接触することになる。
【0003】
この海の廃棄物が蓄積すると、海の還流の各々に漂う大量の断片が非常に集中したプラスチックの島を形成する。太陽光および波によって、浮遊プラスチックは次第により小さな粒子に分解されるが、それらは決して完全には消滅または生分解されることはない。使い捨てプラスチックのマイクロビーズは、それらの周囲の水よりも毒性が100万倍も高い可能性がある。プラスチック粒子は、殺虫剤などの水中の汚染物質に対してスポンジのように作用する。魚、カメ、およびクジラでさえも、病気を引き起こすか命を奪う可能性があるプラスチック物体を食べる。より小さな海洋生物は小さなプラスチック粒子を摂取し、海産食品を食べることにより我々の中にそれらが送り込まれる。
【0004】
プラスチック汚染を低減するための持続可能な解決策が推進されてきている。しかしながら、継続的に採用するには、これらの解決策が環境に良いだけでなく、性能およびコスト的観点の両方においてプラスチックに対して競争力があることが必要とされる。本発明は、競争力のあるコスト構造の範囲内で製品の性能を損なうことなく、成型繊維の革命的な技術でプラスチックを置き換えることに関与する。
【0005】
簡潔な背景説明としては、容器、トレイ、および他の包装材を作製するために、成型製紙パルプ(成型繊維)が1930年代以降使用されてきたが、プラスチック発泡包装の導入後、1970年代に減少を経験した。製紙パルプは、古い新聞印刷用紙、段ボール箱、および他の植物性繊維から生成することができる。今日、成型パルプ包装材は、電子機器、家庭用品、自動車部品、および医療製品、ならびに先端/角保護材、または電子機器および他の壊れやすい構成要素の輸送のためのパレットトレイとして広く使用されている。金型は、金属工具を完成した包装材の鏡像の形状に機械加工することによって作製される。孔は、工具を通して穿孔され、次いで、網がその表面に取り付けられる。孔を通して真空引きする一方で、網はパルプが孔を塞ぐのを防ぐ。
【0006】
2つの最も一般的なタイプの成型パルプは、タイプ1およびタイプ2に分類される。タイプ1は一般的に支持包装用途に使用され、3/16インチ(4.7mm)~1/2インチ(12.7mm)の壁を有する。「乾式」製造としても既知であるタイプ1のパルプ成形体の製造は、水中で溶解された磨砕された新聞印刷用紙、クラフト紙、または他の繊維から作製された繊維スラリーを使用する。圧盤に取り付けられた金型は、スラリー内に浸漬または沈められ、概して凸状の後ろ側に真空が適用される。真空引きによって、スラリーを金型上にのせて、包装材の形状を形成する。真空下のまま、金型をスラリータンクから取り出して、パルプから水を排出させる。次いで、工具を通して空気を送り、成型繊維部品を押し出す。典型的には、乾燥オーブンを通過するコンベイヤー上にその部分を置く。
「湿式」製造としても既知であるタイプ2の成型パルプ製造は、典型的には、電子器材、携帯電話、および家庭用品を、0.02インチ(0.5mm)~.06インチ(1.5mm)の壁を有する容器で包装するために使用されている。タイプ2の成型パルプは、真空引きによってスラリーを金型上にのせる時点まで、タイプ1の製造と同じ材料を使用し、タイプ1の製造と同じ基本的なプロセスをたどる。この工程の後、移送金型は、繊維包装材と組み合わせらされ、形成された「湿潤部分」をホットプレスに移動し、繊維材料を圧縮および乾燥させて、密度を増加させ、滑らかな外部表面仕上げを提供する。例えば、http://www.stratasys.com/solutions/additive-manufacturing/tooling/molded-fiber、http://www.keiding.com/molded-fiber/manufacturing-process/、Grenidea Technologies PTE Ltd.、2007年4月11日に公開された、題名「Improved Molded Fiber Manufacturing」の欧州特許公開第EP 1492926 B1号、およびhttp://afpackaging.com/thermoformed-fiber-molded-pulp/を参照されたい。前述の全ての内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
繊維系包装製品は、生分解可能、堆肥化可能であり、かつプラスチックと違い、海に流れ込まない。しかしながら、現在既知の繊維技術は、肉および鶏肉用容器、加工調理済み食品、農産物、電子レンジ使用可能食品用容器、ならびに温かいコーヒーなどの飲料用容器のための蓋に使用するためには良好に適合してはいない。
【0009】
したがって、先行技術の限界を克服する方法および装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
様々な特徴および特性は、添付の図面およびこの背景技術の項と併せて、後続の発明を実施するための形態および添付の特許請求の範囲からも明白になるであろう。
【0011】
本発明の様々な実施形態は、特に、i)構造的剛性を増進する新規の幾何学的特徴を具現化した肉、農産物、園芸、および多目的容器と、ii)組み込み式および/または局所的水分/蒸気バリアを有する肉、農産物、園芸用容器と、iii)スプレーノズルの方向を向け直して、農産物および園芸用容器の通気孔のサイズを増加させるように改造された真空成型工具と、iv)組み込み式のおよび/もしくは局所的な水分、油、ならびに/または蒸気バリア、および/または化学結合を改善するための保持助剤を具現化した電子レンジ使用可能/オーブン加熱容器と、v)長期の貯蔵寿命にわたって構造的剛性を保持する水分/蒸気バリアを具現化した肉用容器と、vi)水分/蒸気バリアを具現化した温かい飲料用容器のための蓋と、vii)金型から返り勾配を有する飲料用の蓋を押し出すためのピストンを含むように改造された真空成型工具と、を含む、真空成型繊維系包装材および容器製品を製造するための方法、化学組成、および装置に関する。
【0012】
本明細書に記載される様々な発明は、従来のスラリー系真空成形プロセスの状況で例示されるが、そのように限定されないことに留意されたい。当業者は、本明細書に記載される発明が3D印刷技術を含む任意の繊維系製造様式を企図してもよいことを理解するであろう。
【0013】
様々な他の実施形態、態様、および特徴は、以下でより詳述される。
【0014】
例示的な実施形態が以下に添付の図面と併せて記載され、同様の数字は、同様の要素を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】様々な実施形態による繊維系スラリーを使用する例示的な真空成形プロセスの概略ブロック図である。
【
図2】様々な実施形態による、スラリーの化学組成物を制御するための例示的な閉ループスラリーシステムの概略ブロック図である。
【
図3】様々な実施形態による、フープ強度を高めるための丸めた縁、張り出しスカート、およびリブ付きの構造的特徴を示す例示的な農産物用容器の斜視図である。
【
図4】様々な実施形態による、
図3に示される容器の端面図である。
【
図5A】様々な実施形態による、拡張通気孔を含む例示的な農産物用容器の斜視図である。
【
図5B】様々な実施形態による、
図5Aに示される容器の端面図である。
【
図6A】様々な実施形態による、様々な棚部およびリブの特徴を例示する食品用容器の代替的な実施形態である。
【
図6B】様々な実施形態による、様々な棚部およびリブの特徴を例示する食品用容器の代替的な実施形態である。
【
図6C】様々な実施形態による、様々な棚部およびリブの特徴を例示する食品用容器の代替的な実施形態である。
【
図7】様々な実施形態による、通気孔挿入部からパルプを洗い流すように構成されたスプレーノズルを含む例示的な洗い流し工具の斜視図である。
【
図8】様々な実施形態による、
図7に示されるスプレーノズルの拡大図である。
【
図9】様々な実施形態による、
図7および8に示されるスプレーノズルによる除去の標的とされた過剰繊維の斜視図である。
【
図10】様々な実施形態による、例示的な電子レンジ使用可能食品用容器の斜視図である。
【
図11A】様々な実施形態による、例示的な肉用容器の斜視図である。
【
図11B】様々な実施形態による、
図11Aに示される電子レンジ使用可能食品用容器の端面図である。
【
図12】様々な実施形態による、ずれたリブを有する棚部を例示する浅い食品トレイの代替的な実施形態である。
【
図13】様々な実施形態による、液体(例えば、スープ、またはコーヒーもしくはソーダなどの飲料)容器のための例示的な蓋の斜視図である。
【
図14】様々な実施形態による、
図13に示される蓋の上面図である。
【
図15】様々な実施形態による、
図13および14に示される蓋の側立面図である。
【
図16】様々な実施形態による、
図13~15に示される蓋を製造する上で使用するための例示的な金型の斜視図である。
【
図17】様々な実施形態による、後退位置で示される
図16の金型の側立面図である。
【
図18】様々な実施形態による、延出位置で示される
図17の金型の側立面図である。
【
図19】様々な実施形態による、多目的(非食品)容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の発明を実施するための形態は、基本的には単に例であり、本発明または本明細書および本発明の使用を限定することを意図しない。さらに、前述の背景技術または以下の発明を実施するための形態に提示される一切の理論に縛られることを意図しない。
【0017】
本発明の様々な実施形態は、食品および飲料業界の内外両方で使用するための繊維系製品またはパルプ系製品に関する。非限定的な例として、本開示は、油バリア、水分バリア、および水蒸気バリア、ならびに保持助剤を含む、食品業界が直面する固有の問題に対応するように適合された特定のスラリーの化学組成に関し、それが欠如していたため、これまで繊維系製品は食品業界において使い捨てプラスチック容器および成分に取って代わることができなかった。本開示は、剛性を高めるための幾何学的および構造的特徴を有する繊維系容器をさらに企図する。これらの特徴を新規の化学物質と合わせると、例えば:冷凍、冷蔵、および非冷蔵食品;医療、医薬、および生物学的用途;電子レンジ使用可能食品用容器;飲料;摂取可能および摂取不可能な液体;貯蔵、輸送、および調製(例えば、調理)中、水、油、および/または水蒸気を解放する物質;消費可能および造園/ガーデニング植物、花卉、草本、低木、および木を含む園芸用途;化学薬品貯蔵および分配装置(例えば、ペイントトレイ);農産物(果物および野菜などのヒト用および動物用食品を含む);サラダ;加工調理済み食品;肉、鶏肉、および魚用の包装材;蓋;カップ;ボトル;前述のものを加工および展示するためのガイドおよび分離体;電子機器、鏡、美術品、および他の壊れやすい構成要素の包装、保管、および輸送用の縁用部品;および角用部品;バケツ;管;工業用、自動車用、船舶用、航空宇宙、および軍用構成要素(ガスケット、スペーサー、シール、クッションなど);ならびに前述の構成要素を製造するための、関連する金型、ワイヤーメッシュ型枠、処方、プロセス、化学組成、成型工具、スラリー分配、化学モニタリング、化学的注入、ならびに関連システム、装置、方法、および技法などの、幅広い様々な用途において繊維系製品で、それらのプラスチック相対物を置き換えることが可能になる。
【0018】
ここで
図1を参照すると、繊維系スラリーを使用する例示的な真空成形システムおよびプロセス100は、製造される製品の鏡像の形態の金型(明確にするために図示せず)が、この金型の輪郭と一致するように薄いワイヤーメッシュ型枠102の中に包まれる、第1の段階101を含む。繊維系スラリー104の供給104が、圧力(P1)106(典型的には、周囲圧力)で投入される。金型の内側でより低い圧力(P2)108を維持することによって、スラリーはメッシュ型枠を通して引っ張られ、繊維粒子を金型の形状に捕捉する一方で、過剰スラリー110を再循環させてこのシステムに戻すために排出する。
【0019】
図1を継続して参照すると、第2の段階103は、繊維層130を金型の形状のワイヤーメッシュの周囲に蓄積させることに関与する。層130が所望の厚さに到達すると、金型は、湿式硬化または乾式硬化のいずれかのための第3の段階105に入る。湿式硬化プロセスでは、形成された部分は加熱プレス(図示せず)に移送され、層130は所望の厚さに圧縮および乾燥され、それにより完成した部分に関して滑らかな外部表面仕上げをもたらす。乾式硬化プロセスでは、加熱空気が層130上を直接通り、そこから水分を除去し、結果として従来の卵の紙箱に酷似したより質感のある仕上げをもたらす。
【0020】
様々な実施形態によると、真空金型プロセスは、閉ループシステムとして実施され、そこで、未使用のスラリーは再循環されて、製品が形成される浴に戻る。このように、化学的添加剤(以下でより詳細に考察される)の一部は個別の繊維内に吸収され、添加剤の一部は水溶液中に残る。真空成形中、繊維(添加剤の一部を吸収している)のみが型枠内に捕捉され、一方で残りの添加剤は、再循環されてタンクに戻る。結果として、残りの添加剤は溶液中のスラリーとともに再循環されるため、形成された部分に捕捉された添加剤のみ補充する必要がある。以下に記載されるように、このシステムは、スラリーを含む構成成分の所定の体積比で真空タンク内に安定した状態の化学物質を維持する。
【0021】
ここで
図2を参照すると、スラリーの化学組成物を制御するための閉ループスラリーシステム200である。例示された実施形態において、タンク202が特定の所望の化学物質を有する繊維系スラリー204で充填されると、真空金型206はスラリー浴中に浸漬されて、成型部品を形成する。成型部品が所望の厚さに形成された後、金型206は後続のプロセス208(例えば、形成、加熱、乾燥、トップコーティングなど)のために取り出される。
【0022】
典型的な湿式プレス法において、ホットプレス温度範囲は、およそ150~250℃であり、ホットプレス圧力範囲は、およそ140~170kg/cm2である。完成した製品の密度は、およそ0.5~1.5g/cm3であるはずであり、最も可能性が高いのは、およそ0.9~1.1g/cm3である。完成した製品の厚さは、約0.3~1.5mm、好ましくは約0.5~0.8mmである。
【0023】
図2を継続して参照すると、パルプおよび水を含む繊維系スラリーは、スラリー投入部210でタンク202内に投入される。様々な実施形態において、パルプ繊維を磨砕して、追加の結合部位を作り出すために磨砕機が使用されてもよい。1つ以上の追加の成分または化学的添加剤は、投入部212~214のそれぞれにおいて供給されてもよい。スラリーは、閉ループ導管218を使用して再循環されてもよく、追加のパルプおよび/または水が必要に応じて添加される。所望の化学的添加剤の安定した状態バランスを維持するために、スラリーの構成成分を測定するか、または別の方法で監視するように、かつ入力212~214のそれぞれを制御することによって、それぞれの添加剤レベルを動的もしくは周期的に調整するように、試料モジュール216が構成される。典型的には、スラリー濃度は、およそ0.1~1%、最も理想的にはおよそ0.3~0.4%である。一実施形態において、様々な化学的構成成分は、所定の所望の体積パーセントに維持され、代替的には化学物質は、重量パーセントまたは任意の他の所望の制御様式に基づいて維持されてもよい。
【0024】
繊維対繊維の結合を改善し、かつ化学薬品の繊維に対する結合を改善するために、202で使用されるパルプ繊維も機械的に磨砕することができる。このようにして、スラリーは、繊維材料の濾水度または排水速度を変化させる精製プロセスを受ける。物理的に精製することによって、繊維を変化させて小繊維化し、かつそれらをより柔軟にしてより良好な結合を達成する。また、精製プロセスは、完成した製品の引張強度および破裂強度を増加することができる。様々な実施形態において、濾水度は、繊維の表面条件および膨化と関係する。濾水度(csf)は、好適には、本明細書に記載されるプロセスおよび製品の多くに対して、200~700、および好ましくは約220~250の範囲内である。
【0025】
様々な繊維系包装材および容器、ならびにそれらを製造するための方法に関する化学組成(本明細書において「化学物質」と称されることもある)および製品の構成は、ここで
図3~19と併せて記載される。
【0026】
農産物用容器
図3は、フープ強度を高めるための丸めた縁302、張り出しスカート304、ならびに外向きの反りを示す側面パネル、側面リブ306、および底部リブ308を含む様々な構造的特徴を示す、例示的な農産物用容器(例えば、キノコ用容器)300の斜視図である。この文脈では、フープ強度という用語は、結果として生じたゆがみに対して反対向きのベクトル310に沿って適用された横方向の力の指標を指す。容器の初期のフープ強度は本来、幾何学的形状の関数であるが、容器がその内容物(例えば、キノコ)から浸出した水分を吸収すると、フープ強度は低下する傾向にある。本発明者は、様々な幾何学的特徴を様々な用途のために最適化したスラリー化学物質と合わせると、長期の貯蔵時間にわたってフープ強度を持続することができると判定した。つまり、撥水バリアをスラリーの中へと組み込む(および/または、撥水表面コーティングを適用する)ことによって、容器の内容物から水分が出たとしてもフープ強度はより長期間の間維持される場合がある。
【0027】
図4は、概して、
図3に示される容器と類似する容器400の端面図であり、幅寸法402、高さ寸法404、ならびに0.1~5ミリメートルの範囲、および好ましくは約1.5mmのスカート長さ408を例示する。例示された実施形態において、スカートは下向きに延出し、またはスカートは直立面に対して斜角もしくは鈍角で延出してもよい。幅および高さ寸法402、404は、任意の所望の値、例えば、20~400mm、および好ましくは約60~200mmの範囲であってもよい。
【0028】
簡単に上述されたように、本発明による容器を真空成型するのに使用される様々なスラリーは、パルプと水との繊維基材混合物を含み、各々の特定の製品用途に適合させた所望の性能特性を付与するための化学的成分が添加される。基材繊維は、少なくとも以下の材料:軟木(SW)、バガス、竹、古い段ボール容器(OCC)、および新聞印刷用紙(NP)のうちの任意の1つまたはそれらの組み合わせを含んでもよい。あるいは、基材繊維は、以下のリソースに従って選択されてもよく、これらの内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる:Mohamed Naceur Belgacem and Antonio Pizzi(Copyright 2016 by Scrivener Publishing,LLC)により編集され、https://books.google.com/books?id=jTL8CwAAQBAJ&printsec=frontcover#v=onepage&q&f=falseで入手可能な「Lignocellulosic Fibers and Wood Handbook:Renewable Materials for Today’s Environment,」、Liisa Ohlsson and Robert Federeによる、the African Pulp and Paper Weekで2002年10月8日に出版され、http://www.tappsa.co.za/archive/APPW2002/Title/Efficient_use_of_fluorescent_w/efficient_use_of_fluorescent_w.htmlで入手可能な「Efficient Use of Flourescent Whitening Agents and Shading Colorants in the Production of White Paper and Board」、J F Kennedy,G O Phillips,P A Williamsにより編集され、(copyright 200 by Woodhead Publishing Ltd.)、https://books.google.com/books?id=xO2iAgAAQBAJ&printsec=frontcover#v=onepage&q&f=falseで入手可能な「Cellulosic Pulps,Fibres and Materials:Cellucon’98 Proceedings」、および1992年12月8日に取得された題名「Application of Enzymes and Flocculants for Enhancing the Freeness of Paper Making Pulp」である米国特許第5,169,497 A号。
【0029】
湿式プレスまたは乾式プレスのどちらかを使用して製造された真空成形体農産物用容器に対して、OCCおよびNPの繊維基材が使用されてもよく、ここで、OCC成分は50%~100%であり、また好ましくは約70%のOCCおよび30%のNPであり、1%~10重量%、および好ましくは約1.5%~4%、および最も好ましくは約4%の範囲の撥水(moisture repellant)/撥水(water repellant)が付加される。好ましい実施形態において、水分/水バリアは、アルキルケテン二量体(AKD)(例えば、AKD 80)および/または長鎖ジケテン(FOBCHEM(http://www.fobchem.com/html_products/Alkyl-Ketene-Dimer%EF%BC%88AKD-WAX%EF%BC%89.html#.V0zozvkrKUk)、およびYanzhou Tiancheng Chemical Co.,Ltd.(http://www.yztianchengchem.com/en/index.php?m=content&c=index&a=show&catid=38&id=124&gclid=CPbn65aUg80CFRCOaQod0JUGRg)で入手可能)を含んでもよい。
【0030】
成型パルプ製品に対して特定の色をもたらすために、カチオン性染料または繊維反応性染料がパルプに添加されてもよい。Procion MXなどの繊維反応性染料は、分子レベルで繊維と結合して、化学的に布の部分になる。さらに、塩、ソーダ灰の添加および/またはパルプ温度の増加は、吸収された染料がさらに布に固着するのを助け、色抜けを防ぎ、色の深みを高める。
【0031】
構造的剛性を高めるために、デンプン成分、例えば、Topcat(登録商標)L98カチオン性添加剤、Hercobond、およびTopcat(登録商標)L95カチオン性添加剤(Penford Products Co.,Cedar Rapids,Iowaから入手可能)として市販されている液体デンプンをスラリーに添加してもよい。あるいは、液体デンプンは、Penbond(登録商標)カチオン性添加剤およびPAF 9137 BRカチオン性添加剤(これもPenford Products Co.,Cedar Rapids,Iowaから入手可能)として入手可能なものなどの低電荷液体カチオン性デンプンとも組み合わせることができる。
【0032】
乾式プレス法に対しては、Topcat L95が、0.5%~10%、および好ましくは約1%~7%の範囲、そして特に高水分環境において強度を維持する必要がある製品に対しては、最も好ましくは約6.5%、そうでない場合には最も好ましくは約1.5~2.0%の範囲の重量パーセントで添加されてもよい。湿式プレス法に対しては、Topcat L95またはHercobondなどの乾燥強度添加剤、これは繊維および微粉との水素結合およびイオン結合の両方を形成する修飾ポリアミンから作製される。乾燥強度添加剤は、乾燥強度の増加、ならびに排水および保持を助け、繊維製品の中へとアニオン、疎水性物質、およびサイジング剤を固定させるのにも効果的である。これらの添加剤は、0.5%~10%、および好ましくは約1%~6%、および最も好ましくは約3.5%の範囲の重量パーセントで添加されてもよい。加えて、湿式プロセスおよび乾式プロセスの両方は、湿潤強度添加剤、例えば、Ashland Specialty Chemical Products(http://www.ashland.com/products)から入手可能なKymene577または類似の成分などのポリアミド-エピクロロヒドリン(PAE)樹脂が配合された溶液の添加から利益を受ける場合がある。好ましい実施形態において、Kymene577は、0.5%~10%、および好ましくは約1%~4%、および最も好ましくは約2%、または乾燥強度添加剤の投入量と等量の範囲の体積パーセントで添加されてもよい。Kymene577は、1分子当たり平均2つ以上のアミノ基および/または四級アンモニウム塩基(quaternary ammonium salt group)を含有するポリカチオン性材料のクラスのものである。かかるアミノ基は、酸性溶液中でプロトン化して、カチオン性種を生成する傾向にある。ポリカチオン性材料の他の例としては、HerculesのHercosett57およびCiba-GeigyのCatalyst3774として市販される、縮合アジピン酸およびジメチレントリアミンから調製されるものなどのアミノ含有ポリアミドのエピクロロヒドリンによる改変から誘導されるポリマーが挙げられる。
【0033】
一部の包装用途において、空気が容器を通過して流れ、例えば、内容物(例えば、トマト)の熟化を容易にするか、または破壊を回避することが可能であることが所望される。しかしながら、典型的には従来の真空成型工具は、下向きにされた水のスプレー(spry)を使用して過剰繊維を金型から洗い流し、それにより、完成した製品(produce)において最終的に得られる通気孔のサイズを限定する。本発明者は、スプレーの方向を向け直すことが洗い流しサイクルの間により多くの繊維の除去を容易にし、所与の金型構成に対して完成した製品により大きな通気孔を生み出すと判定した。
【0034】
より具体的には、
図5Aは、拡張緩衝孔502を含む例示的な農産物用容器500の斜視図である。
図5Bは、拡張通気孔506を例示する容器504の端面図である。この文脈では、「拡張通気孔」という用語は、以下で考察される
図9~7に示される改造された成型工具を使用して作製される孔を指す。
【0035】
ここで
図6A~6Cを参照すると、幾何学的特徴の様々な組合せが、食品用容器の構造的剛性/完全性を高めるために採用されてもよい。非限定的な例として、1つ以上の水平に延出する棚部602、604が、側壁の上方領域と下方領域との間に配置されてもよい。単一の棚部を含有する側壁に対して、棚部は、トレイの上部から壁の高さの30%~50%の範囲、および好ましくは約35%に配置されてもよい。棚部は、側面パネルを陥凹させ、かつ/または抜き勾配の角度を変化させることによって作り出してもよい。例えば、
図6Cに示される実施形態において、下方領域606は、約4~6°(および、好ましくは約5°)の範囲の抜き勾配の角度を示すが、上方領域608は、約6~8°(および、好ましくは約7°)の範囲の抜き勾配の角度を示す。
【0036】
図6A~6Cを継続して参照すると、様々なリブ構成610は、食品用容器の底部に沿って、また側面パネルに沿って上へと配置されてもよい。リブは、棚部で、棚部の上で(例えば、側壁の上方領域、例えば、頂部縁から下に25%の距離において)、棚部の下で(例えば、側壁の下方領域、例えば、棚部から下に25%の距離において)、または側壁の頂部縁で終端するように構成されてもよい。
図6Cに示されるように、リブ612は、容器の底部から上向きに延出し、棚部で終端してもよく、そうすると後続のリブ614は、リブ612からずれて、棚部から上向きに延出してもよい。リブは、丸めた、四角状の、または他の所望の幾何学的形状または構成で終端してもよい。
【0037】
通気孔成型工具
図7は、過剰パルプを通気孔挿入部706から洗い流すように構成された複数の方向を向け直したスプレーノズル704を含む指向性水衝突清浄システム700である。より具体的には、金型(図示せず)は、ワイヤーメッシュ708によって覆われ、金型は完成した製品の通気孔に対応する挿入部を含む。供給導管702は、洗い流す水を、複数のスプレーノズルを含む多岐管711に分配し、スプレーノズルの各々は、洗い流す水を方向付けて、挿入部に近接した過剰繊維を除去するように構成される。
【0038】
一時的に
図8を参照すると、多岐管811のセクションの拡大
図800は、対応する挿入部706に近接して洗い流す水を方向付けるように構成されたスプレーノズル802を示す。このようにして、挿入部を取り囲む残留繊維がより大量に除去され、上からスプレーされる水で金型を単に洗い流すという現在既知のシステムに対して、拡張通気孔を完成した製品にもたらす。重要なのは、拡張通気孔が、下にある金型または挿入部を調整する必要なく、実現し得ることである。
【0039】
図9で見られるように、本発明の改善されたスプレーノズルによって除去の標的とされる過剰繊維900は、既存の金型および現在既知の挿入部を使用して拡張通気孔を提供する。
【0040】
電子レンジ使用可能容器
前述の農産物用容器の開発により得られた知識を基に、本発明者は、スラリー化学物質を最適化することによって、電子レンジ、コンベクションオーブン、および従来のオーブンで使用するのに好適な成型繊維容器を使い捨て食品用容器として好適にすることができると判定した。特に、スラリー化学物質は、以下の3つの性能評価基準:i)水分バリア、ii)油バリア、およびiii)熱い容器を、その容器よりも低い温度を有する表面に置くことによる凝縮を回避するための水蒸気(凝縮)バリア、のうちの1つ以上に有利に適応する必要がある。この状況では、水蒸気が容器を浸透する程度は、容器の空隙率に関係し、本発明ではこの低減を求める。つまり、たとえ容器が油および水に対して効果的に不浸透性であっても、水蒸気が容器に浸透する場合、特に、水蒸気が冷たい表面で凝縮して、水分リングを残す場合、それにもかかわらず使用者の経験が損なわれる場合がある。本発明者は、水蒸気は典型的には、プラスチックバリアを浸透しないため、凝縮物問題が繊維系用途において特異的に顕著であることをさらに判定した。
【0041】
したがって、電子レンジ使用可能容器に対して、本発明は、水バリア、油バリア、および水蒸気バリア、ならびに任意選択的な保持助剤を含む繊維系またはパルプ系スラリーを企図する。実施形態において、約10%~90%、および好ましくは約7:3の範囲の比の軟木(SW)/バガスの繊維基材が使用されてもよい。水分バリアとして、AKDは、約0.5%~10%、および好ましくは約1.5%~4%、および最も好ましくは約3.5%の範囲で使用されてもよい。油バリアとして、脂および油忌避添加剤は、通常、フルオロカーボン樹脂または他のフッ素含有ポリマー(例えば、DaikinまたはWorld of Chemicals(http://www.worldofchemicals.com/chemicals/chemical-properties/unidyne-tg-8111.html)から入手可能なUNIDYNE TG 8111またはUNIDYNE TG-8731など)の組成物を含有するフッ素の水性エマルジョンである。スラリーの油バリア成分(または、局所的コーティング)を、重量パーセントで、0.5%~10%、および好ましくは約1%~4%、および最も好ましくは約2.5%の範囲で含んでもよい。保持助剤としては、Naperville,IllのNalco Companyから入手可能なNalco7527などの有機化合物を、0.1体積%~1体積%、および好ましくは約0.3体積%の範囲で採用してもよい。最終的に、完成した製品を強化するために、無機塩(例えば、http://solenis.com/en/industries/tissue-towel/innovations/hercobond-dry-strength-additives/で入手可能なHercobond 6950(http://www.sfm.state.or.us/CR2K_SubDB/MSDS/HERCOBOND_6950.PDFも参照されたい))などの乾燥強度添加剤を、0.5重量%~10重量%、および好ましくは約1.5%~5%、および最も好ましくは約4%の範囲で採用してもよい。
【0042】
述べたように、蒸気バリア性能は、繊維トレイの空隙率によって直接影響を受ける。繊維トレイの空隙率を低減すること、ひいては、蒸気バリア性能を改善することを、少なくとも2つの手法を使用して達成することができる。1つは、繊維を磨砕することによってトレイ材料の濾水度を改善することによる。第2の方法は、例えば、水性長鎖フッ素(Flourione)含有ポリマーであるDaikin S2066を使用する局所的スプレーコーティングによる。スプレーコーティングは、約0.1重量%~3重量%、および好ましくは約0.2%~1.5%、および最も好ましくは約1%の範囲を使用して実施されてもよい。
【0043】
ここで
図10を参照すると、例示的な電子レンジ使用可能食品用容器1000は、2つの区画を示し、あるいは、この容器は、任意の所望の形状(例えば、円形のボウル、楕円形、長方形、またはそれらの類似形状)を備えてもよい。上述されるように、様々な水、油、および蒸気バリア添加剤がスラリーの中へと混合されてもよく、コーティング上にスプレーとして局所的に塗布されてもよく、またはそれらの両方であってもよい。
【0044】
肉用容器
食料品店において鶏肉、牛肉、豚肉、および海産食品の陳列(he display)のために使用されるものなどの現在既知の肉用トレイは典型的には、主にその優れた水分バリア特性のためにポリスチレンおよびスタイロフォームなどのプラスチック系材料から作製される。本発明者は、電子レンジ使用可能容器に使用される前述の化学物質の変形形態が、特に、水分バリアに関して(油および多孔性バリアは典型的には、肉用トレイにおいては電子レンジ容器においてほど重要ではない)、肉用トレイで使用するように適合される場合があると判定した。
【0045】
したがって、肉用容器に関して、本発明は、水バリアおよび任意選択的に油バリアを含む繊維系またはパルプ系スラリーを企図する。実施形態において、約10%~90%、および好ましくは約7:3の範囲の比の軟木(SW)/バガスおよび/または竹/バガスの繊維基材が使用されてもよい。水分/水バリアとして、AKDは、約0.5%~10%、および好ましくは約1%~4%、および最も好ましくは約4%の範囲で使用されてもよい。油バリアとして、UNIDYNE TG 8111またはUNIDYNE TG-8731などの水性エマルジョンが採用されてもよい。スラリーの油バリア成分(または、局所的コーティング)は、重量パーセントで、0.5%~10%、および好ましくは約1%~4%、および最も好ましくは約1.5%の範囲で含まれてもよい。最終的に、完成した製品を強化するために、Hercobond6950などの乾燥強度添加剤を、0.5重量%~10重量%、および好ましくは約1.5%~4%、および最も好ましくは約4%の範囲で採用してもよい。
【0046】
農産物用容器と関連して上記で考察されるように、スラリー化学物質は、構造的特徴と組み合わされて、水分/水がトレイ内に入り込むことを防ぐことによって経時的に長期的な剛性を提供する場合がある。
【0047】
図11Aは例示的な肉用容器1100の斜視図であり、
図11Bは側壁リブ1102および底部リブ1104を含む
図11Aに示される肉用容器の端面図である。
【0048】
図12は、底部に沿っておよび側壁に沿って上向きに延出し、棚部1204で終端するリブ1202を含む例示的な浅い肉用容器1200の斜視図である。第2のリブ1206は、第1のリブ1202からずれて、棚部から上向きに延出する。
【0049】
飲料用蓋
繊維系およびパルプ系紙カップは広く知られているが、飲料業界には、持続可能な繊維系蓋の解決策がなおも必要である。繊維系蓋の幅広い採択に対する著しい障害は、金型からそれを利便的に取り外すことができるような方法で、抜き勾配をなくす、または返り勾配を蓋に組み込む能力を包含する。加えて、繊維系化学物質は、蓋の剛性が液体の存在下で損なわれないように、適当な水分/水バリアを提供するように適合されなければならない。本発明によって企図される方法、化学組成、および成型工具は、先行技術によって従来対処されなかった方法でこれらの問題の両方に対応する。
【0050】
特に、蓋のための化学物質は、上記で考察される肉用トレイおよび電子レンジボウルと類似である。特に、飲料用容器の蓋に対して、本発明は、水/水分バリアおよび任意選択的な保持助剤を含む繊維系またはパルプ系スラリーを企図する。実施形態において、約10%~90%、および好ましくは約7:3の範囲の比の軟木(SW)/バガスおよび/または竹/バガスの繊維基材を使用することができる。水分/水バリアとして、AKDを約0.5%~10%、および好ましくは約1%~4%、および最も好ましくは約4%の範囲で使用することができる。剛性は、0.5重量%~10重量%、および好ましくは約1%~4%、および最も好ましくは約2%の範囲の、または代替的にこのシステムで使用される乾燥強度添加剤と等量のHercobond6950によって高められる場合がある。Kymeneも、0.5%~10%、および好ましくは約1%~4%、および最も好ましくは約3%の範囲で添加されてもよい。様々な実施形態において、Hercobondおよび/またはKymene(または、機能的に類似する添加剤)は、AKDの添加の前にスラリーに添加されてもよい。
【0051】
ここで
図13を参照すると、例示的な蓋1300は、容器の内側に残る液体を飲み口1304に向けて促すように設計された保持壁1303によって取り囲まれた傾斜したプラットフォーム1302を含む。小さな通気開孔1310がプラットフォーム1302上に配置されてもよい。冠部1306はカップ(非表示)の頂部とプラットフォーム1302との間に容積空間を画定し、止輪1308はカップの頂部の周囲に確実に嵌るように構成される。
図14は、
図13に示される蓋の上面図であり、これは、比較のためのプラットフォーム1402、通気開孔1410、および飲み口1404を含む。
【0052】
図15は、蓋1500の側立面図であり、止輪に伴う返り勾配1522を強調している。従来の知識では、真空成型製品は抜き勾配のない特徴部または返り勾配特徴部を具現化し得ないことが示唆されるが、それは、完成した部分がそれ自体をその相手側の構成要素(本明細書においては、飲料カップ)に「係止」するのとほぼ同じ方法で、返り勾配特徴部はその一部を工具に「係止」することになるために、従来の真空金型工具は、工具から完成した部分を取り出すことができないためである。この制限を克服するために、本発明は、
図13~18と併せて以下にさらに詳述されるように、抜き勾配のないまたは返り勾配の係止特徴部の存在にもかかわらず、蓋を金型から取り外す真空金型工具を企図する。
【0053】
蓋成型工具
抜き勾配のない、または返り勾配を有する繊維系蓋を作製するための工具は、概して、蓋の鏡像の形状を有し、また蓋を係止する金型のその部分から完成した蓋を係脱するために延出するように構成された形状を有する伸縮式ピストンを備える。
【0054】
ここで
図16を参照すると、これは、様々な実施形態による、
図13~15に示される蓋を製造する上で使用するための例示的な金型アセンブリの斜視図である。より具体的には、金型アセンブリ1600は、止輪金型部分1608(
図13の止輪1308に対応する)を支持する金型ブロック1620と、傾斜したプラットフォーム1602を有する冠部部分1630を含む伸縮式ピストンアセンブリ(
図13の傾斜したプラットフォーム1302に対応する)と、シャフト部分1640と、を含む。操作時には、蓋がスラリー浴(図示せず)中で真空成形され、次いで、
図16に示されるホットプレス上に移送される。次いで、蓋工具の雌部分は、熱および圧力を使用して湿式真空成形蓋を圧縮する。
【0055】
図17は、後退位置で示される
図16の金型の側立面図である。特に、ピストンの冠部部分1706は、ピストンが
図17に示される後退位置にあるとき、金型ブロック1720の止輪部分1708に隣接する。プレスされるときに蓋が形成されると、蓋の返り勾配部分1522(
図15を参照されたい)は、金型の止輪部分1708の対応する返り勾配部分1722の周囲を係止する。完成した部品を金型から取り外すために、ピストンは上向きに延出され、強制的に蓋の止輪を一時的に拡げ、金型から係脱される。
【0056】
図18は、延出された位置にあるピストンを示す。特に、シャフト1840は、冠部部分1830を止輪部分1808から強制的に離し、蓋を金型の返り勾配特徴部1822から係脱する。実施形態において、ピストンは空気圧式で延出され、高圧の空気が放出されるとそれ自体の重量によって後退することができる。
【0057】
多目的容器および輸送用容器
図19は、様々な実施形態による、側壁リブ1902および周縁部1904を含む多目的(非食品)容器1900の斜視図である。収容される材料の特性によって、前述の化学物質のうちの任意の1つまたはそれらの組み合わせが、容器の構築に使用されてもよい。例えば、収容される液体が水成分を含む場合、好適な水分/水バリアが用いられてもよく、収容される材料が油成分を含む場合、好適な油バリアが用いられてもよく、といった具合である。
【0058】
本発明は、前述の実施形態の文脈で記載されているが、当然のことながら本発明はそのように限定されないことが認識される。例えば、様々な幾何学的特徴および化学物質は、本発明の教示に基づいて追加的な用途に適応するように調整され得る。
【0059】
こうして、農産物用容器を製造するための方法が提供される。この方法は、農産物用容器の鏡像を備える金型の上にワイヤーメッシュを形成することと、繊維系スラリー浴中にワイヤーメッシュを浸漬することと、ワイヤーメッシュを横切って真空を引いて、繊維粒子をワイヤーメッシュ表面に蓄積させることと、ワイヤーメッシュをスラリー浴から取り出すことと、を含み、スラリーは、1.5重量%~4重量%の範囲の水分/水バリア成分を含む。
【0060】
実施形態において、スラリーは、約4%の範囲の水分バリア成分を含む。
【0061】
実施形態において、水分バリア成分は、アルキルテン(alkyltene)二量体(AKD)を含む。
【0062】
実施形態において、水分バリア成分は、アルキルテン(alkyltene)二量体(AKD)80を含む。
【0063】
実施形態において、スラリーは、0.5/9.5の範囲の比のOCC/NPの繊維基材を含む。
【0064】
実施形態において、スラリーは、1重量%~7重量%の範囲の乾燥強度成分をさらに含む。
【0065】
実施形態において、デンプン成分は、カチオン性液体デンプンを含む。
【0066】
実施形態において、スラリーは、1重量%~4重量%の範囲のKymene(例えば、Kymene577)などの湿潤強度成分をさらに含む。
【0067】
実施形態において、金型は、垂直に降下するスカートを含む丸めた縁を含む。
【0068】
実施形態において、 水分/水バリアは、約4%の範囲のAKDを含み、AKDは、希釈溶液(例えば、ADK:水が1:10)としてパルプスラリーに添加されてもよく、スラリーは、1%~7%の範囲のカチオン性液体デンプン成分を含み、金型は、垂直に降下するスカートを含む丸めた縁と、少なくとも1つの底部リブと、少なくとも1つの側壁リブとを含む。
【0069】
前述の方法に従って製造された農産物用容器も提供される。
【0070】
完成した容器に通気孔を提供するように構成された実質的に垂直な挿入部を有する金型枠を取り囲むワイヤーメッシュを含むタイプの真空金型アセンブリにおいて、指向性洗い流しアセンブリが提供される。指向性洗い流しアセンブリは、水供給導管と、水供給導管に接続された多岐管と、多岐管に接続され、水平な構成要素を有するベクトルに沿って挿入部で水のスプレーを方向付けるように構成されたスプレーノズルと、を含む。
【0071】
実施形態において、金型は、複数の実質的に垂直な挿入部を含み、指向性洗い流しアセンブリは、複数のスプレーノズルをさらに含み、各々のスプレーノズルは、各々が水平な構成要素を有するそれぞれのベクトルに沿ってそれぞれの挿入部で水のスプレーを方向付けるように構成される。
【0072】
空隙率がゼロまたはほぼゼロの食品用容器を製造するための方法も提供される。この方法は、第1の工程として湿式プレス手順を含み、その後に、約0.5重量%~6重量%、および好ましくは約1%~5%、および最も好ましくは約4%の範囲の、Daikin S2066などの水性長鎖フッ素含有ポリマーの薄い層を塗布するための追加の表面コーティング手順が続く。
【0073】
電子レンジ使用可能食品用容器および/またはオーブン耐性食品用容器を製造するための方法も提供される。この方法は、電子レンジ使用可能食品用容器の鏡像を含む金型の上にワイヤーメッシュを形成することと、繊維系スラリー浴中にワイヤーメッシュを浸漬することと、ワイヤーメッシュを横切って真空を引いて、繊維粒子をワイヤーメッシュ表面に蓄積させることと、ワイヤーメッシュをスラリー浴から取り出すことと、を含み、スラリーは、0.5重量%~10重量%の範囲の水分バリア成分と、0.5重量%~10重量%の範囲の油バリアと、0.05重量%~5重量%の範囲の保持助剤とを含む。
【0074】
実施形態において、水分/水バリア成分は約1.5%~4%の範囲であり、油バリアは約1%~4%の範囲であり、保持助剤は約0.1%~.5%の範囲である。
【0075】
実施形態において、水分バリア成分は、アルキルテン(alkyltene)二量体(AKD)を含む。
【0076】
実施形態において、水分バリア成分は、アルキルテン(alkyltene)二量体(AKD)79を含む。
【0077】
実施形態において、スラリーは、0.5/9.5の範囲の比のSW/バガスの繊維基材を含む。
【0078】
実施形態において、スラリーは、1重量%~5重量%の範囲の剛性成分をさらに含む。
【0079】
実施形態において、剛性成分は、乾燥無機塩を含む。
【0080】
実施形態において、油バリアは、水性エマルジョンを含む。
【0081】
実施形態において、油バリアは、TG8111を含む。
【0082】
実施形態において、保持助剤は、有機化合物を含む。
【0083】
実施形態において、保持助剤は、Nalco7527を含む。
【0084】
実施形態において、水分/水バリアは、約4%の範囲のAKDを含み、スラリーは、バガスおよび乾燥無機塩を含み、油バリアは水性エマルジョンを含み、蒸気バリアは有機化合物を含む。
【0085】
前述の方法に従って製造された電子レンジ使用可能容器も提供される。
【0086】
肉用トレイを製造する方法が提供され、この方法は、肉用トレイの鏡像を含む金型の上にワイヤーメッシュを形成することと、繊維系スラリー浴中にワイヤーメッシュを浸漬することと、ワイヤーメッシュを横切って真空を引いて、繊維粒子をワイヤーメッシュ表面に蓄積させることと、ワイヤーメッシュをスラリー浴から取り出すことと、を含み、スラリーは、0.5重量%~10重量%の範囲の水分/水バリア成分と、0.5重量%~10重量%の範囲の油バリアとを含む。
【0087】
実施形態において、水分/水バリア成分は約1%~4%の範囲であり、油バリアは約1%~4の範囲である。
【0088】
実施形態において、水分バリア成分は、アルキルテン(alkyltene)二量体(AKD)を含む。
【0089】
実施形態において、水分バリア成分は、アルキルテン(alkyltene)二量体(AKD)79を含む。
【0090】
実施形態において、スラリーは、1/9の範囲の比のSW/バガスの繊維基材を含む。
【0091】
実施形態において、スラリーは、1.5重量%~4重量%の範囲の剛性成分を含む。
【0092】
実施形態において、剛性成分は、乾燥無機塩を含む。
【0093】
実施形態において、油バリアは、水性エマルジョンを含む。
【0094】
実施形態において、油バリアは、約1.5重量%の範囲のTG8111を含み、TG8111は、希釈溶液(例えば、TG8111:水は1:5)としてパルプスラリーに添加されてもよい。
【0095】
実施形態において、 水分/水バリアは約4%の範囲のAKDを含み、スラリーはバガスおよび乾燥無機塩を含み、油バリアは水性エマルジョンを含む。
【0096】
前述の方法に従って製造された肉用トレイも提供される。
【0097】
実施形態において、肉用トレイは、少なくとも1つの側壁リブおよび少なくとも1つの底部リブを含む。
【0098】
飲料用容器のための蓋を製造する方法も提供される。この方法は、蓋の鏡像を含む金型の上にワイヤーメッシュを形成することと、繊維系スラリー浴中にワイヤーメッシュを浸漬することと、ワイヤーメッシュを横切って真空を引いて、繊維粒子をワイヤーメッシュ表面に蓄積させることと、 ワイヤーメッシュをスラリー浴から取り出すことと、を含み、スラリーは、0.5重量%~10重量%の範囲の水分/水バリア成分と、1重量%~4重量%の範囲の剛性成分と、約1%~4%の範囲のポリカチオン性成分とを含む。
【0099】
実施形態において、水分/水バリア成分は約1%~4%の範囲であり、油バリアは約1%~4の範囲である。
【0100】
実施形態において、水分バリア成分は、アルキルテン(alkyltene)二量体(AKD)を含む。
【0101】
実施形態において、水分バリア成分は、アルキルテン(alkyltene)二量体(AKD)80を含む。
【0102】
実施形態において、スラリーは、1/9の範囲の比のSW/バガスの繊維基材を含む。
【0103】
実施形態において、スラリーは、1.重量%~4重量%の範囲の剛性成分をさらに含む。
【0104】
実施形態において、剛性成分は、乾燥無機塩を含む。
【0105】
実施形態において、 水分/水バリアは約4%の範囲のAKDを含み、スラリーはバガスおよび乾燥無機塩を含み、スラリーは約1重量%~4重量%の範囲のポリカチオン性材料を含む。
【0106】
前述の方法に従って製造された蓋も提供される。
【0107】
実施形態において、蓋は、正ではない抜き勾配を有する止輪をさらに含む。
【0108】
冠部と、返り勾配を含む止輪とを有する繊維系飲料用蓋を製造するための真空成型工具も提供される。この成型工具は、蓋の止輪に対応する止輪金型部分を支持する金型ブロックと、蓋の冠部およびピストンシャフトに対応する冠部金型部分を備える伸縮式ピストンアセンブリと、ピストンシャフトを延出して、それにより、蓋の止輪を止輪金型部分から取り外すように構成される空気圧式のアクチュエータとを含む。
【0109】
実施形態において、真空成型工具は、冠部金型部分および止輪金型部分を取り外し可能に取り囲むワイヤーメッシュをさらに含む。
【0110】
本明細書において使用される場合、「例示的な」という用語は、「例、事例、または例示としての役割を果たす」ことを意味する。「例示的な」として本明細書に記載される任意の実装例は、必ずしも、他の実装例を上回って好ましい、または有利であるとは解釈されず、言葉通り複製されなければならないモデルとして解釈されることは意図されない。
【0111】
前述の発明を実施するための形態は、当業者に本発明の様々な実施形態を実施するのに利便性のある手順を提供するが、上述される特定の実施形態は単に例であり、決して本発明の範囲、適用性、または構成を限定することは意図されないことを理解されたい。反対に、本発明の範囲から逸脱することなく、記載される要素の機能および配置において様々な変更がなされてもよい。