(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】水中油型乳化固形化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230523BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230523BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230523BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230523BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230523BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230523BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/34
A61K8/06
A61Q19/00
A61Q17/04
A61Q1/02
(21)【出願番号】P 2019550390
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2018040210
(87)【国際公開番号】W WO2019088056
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2017210540
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 俊
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-502394(JP,A)
【文献】特開平11-246352(JP,A)
【文献】米国特許第05928655(US,A)
【文献】特開2003-095862(JP,A)
【文献】特開2015-145416(JP,A)
【文献】特開2010-254670(JP,A)
【文献】特表2014-509627(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0065379(US,A1)
【文献】特開2018-172305(JP,A)
【文献】特開2013-177364(JP,A)
【文献】特開2017-036338(JP,A)
【文献】特開2012-206994(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00985410(EP,A1)
【文献】特開平08-245363(JP,A)
【文献】川口純子,多機能タウリン系水溶性ポリマー増粘剤の香粧品への応用,FRAGRANCE JOURNAL,Vol.42 No.10,2014年10月,p.61-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジェランガム
を含み、それに加えて寒天及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含む共重合体のいずれか一方又は両方を含む親水性増粘剤、
(B)高級アルコール、
(C)界面活性剤、
(D)水、及び
(E)油分を含有し、
前記(B)高級アルコールの配合量が0.75~3.75質量%であり、
前記(A)親水性増粘剤の配合量と、前記(B)高級アルコール及び(C)界面活性剤
の合計配合量との比が、3:1~1:9の範囲内であ
り、
ワックスを含まないことを特徴とする水中油型乳化固形化粧料。
【請求項2】
(A)親水性増粘剤、(B)高級アルコール及び(C)界面活性剤の合計配合量が2.0~7.5質量%の範囲内である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含む共重合体が、架橋型N,N-ジメチルアクリルアミド-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)共重合体である、請求項1
又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
(C)界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
(C)界面活性剤が、HLB値が10以上の非イオン性界面活性剤を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項6】
内油相に分散した疎水性粉末をさらに含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項7】
外水相に分散した親水性粉末をさらに含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項8】
スキンケア化粧料、サンスクリーン又はメーキャップ化粧料である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型乳化固形化粧料に関する。さらに詳しくは、水中油型乳化物のみずみずしさや保湿効果を有しながら、ワックスを含有する油中水型乳化物のような取れを実現した水中油型乳化固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション等の従来の固形化粧料は、その形態を保持するためにワックス等を含む油中水型乳化物とするのが一般的である。油中水型乳化化粧料は、形態保持性やパフ等の塗布具による取れといった点では優れているが、塗布した際のみずみずしさに欠け、保湿効果やうるおい感に劣り、またワックス特有の重さ・べたつきを生じるものであった。
【0003】
一方、水中油型乳化化粧料は、みずみずしい感触が得られ保湿効果にも優れており、水中油型乳化物を増粘又は固化して半固形又は固形の化粧料とする試みがなされている(特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
しかしながら、これらの化粧料は、水中油型化粧料に特有の清涼感を有するものの、パフへの取れ、肌上での伸びなどの使用感及び化粧もちにおいて満足できるものではなかった(特許文献3、段落0005)。
特許文献3では、表面張力25以下の油分、炭化水素ワックスとプロピレングリコール及びその誘導体を併用し、親水性ノニオン界面活性剤を用いて水中に分散させることによって、応力を加えると乳液状に変化しうる固形状の化粧料として、パフへの取れ等を改善している。
【0005】
しかしながら、特許文献3においてはワックスが必須とされており、ワックスを含まない水中油型乳化物の系で良好な取れを実現した例は無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3242137号公報
【文献】特許第3563815号公報
【文献】特開平10-291914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水中油型乳化物のみずみずしさや保湿効果を有しながら、ワックスを含有する油中水型乳化固形化粧料のような「取れ(とれ)」を実現した水中油型乳化固形化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、内相(油相)にラメラ状の液晶構造を導入し、外相(水相)に特定の親水性増粘剤を配合し、それらの配合成分の質量比を特定範囲内に調整することによって、水中油型乳化物を固化することができ、なおかつ油中水型乳化固形化粧料(ワックス含有)のような取れを実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)ジェランガム、寒天、及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含む共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の親水性増粘剤、
(B)高級アルコール、
(C)界面活性剤、
(D)水、及び
(E)油分を含有し、
前記(A)に含まれる親水性増粘剤の配合量と、前記(B)高級アルコール及び(C)界面活性剤との合計配合量との比が、3:1~1:9の範囲内であることを特徴とする水中油型乳化固形化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水中油型乳化固形化粧料(以下、単に「本発明の化粧料」ともいう)は、水中油型乳化物が有するみずみずしさ、冷感(清涼感)、保湿効果及びうるおい感を有するのに加えて、従来は困難であった油中水型乳化化粧料のような化粧料の「取れ」が実現できる。また、本発明の化粧料は、化粧料自体が従来に無い独特の感触を有し、使用感に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化粧料は、内相(油相)として、ラメラ状の液晶構造(αゲル構造を含む)を持つ油滴を含み、外相(水相)に特定の親水性増粘剤を配合することにより、ワックス等の固形油分を配合しなくても固形化が可能となる。得られた固形化粧料は、パフ等の塗布具で化粧料表面を横(表面に沿った)方向にとると、液晶構造(αゲル構造)が崩れてジェルに変化するため、水中油型乳化物でありながら、ワックス等を含んだ油中水型乳化固形化粧料と同様の「取れ」性を実現することができると考えられる。以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0012】
(A)親水性増粘剤
本発明の化粧料で用いられる(A)親水性増粘剤(「(A)成分」ともいう)は、ジェランガム、寒天、及び、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含む共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0013】
「ジェランガム」は、グルコースを主成分とする培地中でシュードモナス エロデア(Pseudomonas Elodea)が産出する物質であり、グルコース、グルクロン酸及びラムノースからなるヘテロ多糖類を主成分とする(グルコース:グルクロン酸:ラムノース=2:1:1の割合)。本発明におけるジェランガムは、分子量が670,000~920,000程度のものが好ましい。ジェランガムの構造は、下記式に示すように、1-3結合したグルコース、1-4結合したグルクロン酸、1-4結合したグルコース、1-4結合したラムノースの繰り返し構造からなる直鎖の高分子多糖構造である。
【0014】
【化1】
ジェランガムには脱アシル型ジェランガム及びネイティブ型ジェランガムがあるが、本発明においては、いずれも好適に使用することができる。
【0015】
「寒天」としては、ゲル化力の高いアガロースを主成分とするものであれば、特に限定されない。寒天は天然物でも市販品でもよい。市販されている寒天としては、例えば、伊那寒天PS-84、Z-10、AX-30、AX-100、AX-200、T-1、S-5、M-7(伊那食品工業株式会社製)等を好適に用いることができる。また、寒天として精製アガロースを使用してもよい。
【0016】
「2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含む共重合体」は、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)を構成モノマーとして含むコポリマー又はクロスポリマーである。
【0017】
具体例としては、N,N-ジメチルアクリルアミド-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)共重合体、アクリルアミド/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)共重合体、ビニルピロリドン/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)共重合体、アクリル酸ナトリウム/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)共重合体等が挙げられる。上記の「塩」としては、ナトリウム、カリウム等の無機塩、アンモニウム等の有機塩が好適である。中でも、架橋型N,N-ジメチルアクリルアミド-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)共重合体(クロスポリマー)が好ましく使用される。市販品の例として、「SU-Polymer G-1」(東邦化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0018】
本発明における親水性増粘剤((A)成分)は、ジェランガム、寒天、及び、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含む共重合体から選択される1種又は2種以上であるが、少なくともジェランガムを含み、それに加えて寒天及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含む共重合体のいずれか一方又は両方を含むようにするのが特に好ましい。
【0019】
本発明では、前記親水性増粘剤((A)成分)を予め調製したゲルの形態で配合するのが好ましい。
ゲルを調製する方法は特に限定されるものではなく、一般的な方法を用いることができる。以下、典型的な調製方法について説明する。
まず、親水性増粘剤を、任意に水性成分を含む水に溶解した後、放置冷却して固化させ、ゲルを形成させる。前記増粘剤の水(または水性成分)への溶解は、混合、加熱等によって行うことができる。ゲル化(固化)は、溶解後、加熱を止めてゲル化温度(固化温度)より低温となるまで放置(静置)することにより行う。
【0020】
水性成分としては、化粧料、医薬品分野において用いられ得る水性成分であれば特に限定されるものでない。例えば、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エタノール、プロパノール等の低級アルコール(炭素数6未満のアルコール)、さらに一般に化粧料の水相成分として配合される成分が挙げられる。水相成分としては、メタリン酸塩、エデト酸塩等のキレート剤、pH調整剤、防腐剤等が例示されるが、これら例示に限定されるものでない。なお、親水性増粘剤としてジェランガムを用いる場合、ゲル強度をより向上させるために、水性成分中に陽イオンを添加することもできる。陽イオンとしては、特に限定されるものでないが、1価または2価の陽イオンが好ましく、具体的には1価の陽イオン(H+)を放出する酸、例えば酢酸、クエン酸等、1価または2価の陽イオン、例えばMg2+、Ca2+、Na+、K+を放出する塩、例えば、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0021】
本発明における(A)親水性増粘剤は、前記ゲルに代えて、もしくは前記ゲルに加えて、好ましくは0.1~1000μmの平均粒径を有するミクロゲルの形態で配合することもできる。
ミクロゲルは、上記で形成されたゲルをホモジナイザー、ディスパー、メカニカルスターラー等により破砕して得ることができる。本発明において好適に使用されるミクロゲルの平均粒径は、通常は0.1~1,000μmであり、好ましくは1~300μm程度、より好ましくは10~200μm程度である。
【0022】
本発明の化粧料における親水性増粘剤((A)成分)の配合量は、特に限定されるものではないが、化粧料の全量に対して、好ましくは0.3~5.0質量%であり、より好ましくは0.4~4.0質量%、さらに好ましくは0.5~3.0質量%である。
【0023】
(B)高級アルコール
本発明の化粧料における(B)高級アルコールは、後述する(C)界面活性剤及び(D)水とともにラメラ液晶構造を有する会合体(「αゲル」を含む)を形成する。本明細書では、(B)高級アルコールと(C)界面活性剤のことを「αゲル構成成分」とも呼称する。
【0024】
本発明の化粧料で使用する(B)高級アルコール(「(B)成分」ともいう)としては、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において使用できる炭素数6以上のアルコールであれば特に限定されず、直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和の一価アルコールを包含する。直鎖状のアルコールとしては、ドデカノール(ラウリルアルコール)、トリドデカノール、テトラドデカノール(ミリスチルアルコール)、ペンタデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、ノナデカノール、イコサノール(アラキルアルコール)、ヘンイコサノール、ドコサノール(ベヘニルアルコール)、トリコサノール、テトラコサノール(カルナービルアルコール)、ペンタコサノール、ヘキサコサノール(セリルアルコール)、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の飽和アルコール、エライジルアルコール等の不飽和アルコールが挙げられる。分岐鎖状アルコールとしては、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。これらは組み合わせて用いることができる。本発明では経時安定性の点から飽和直鎖状の一価アルコールが特に好ましい。
【0025】
(B)高級アルコールとして、融点が60℃以上のもの、例えば、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール等を用いるのが好ましい。本発明では、上記の高級アルコールの1種または2種以上を用いることができ、2種以上の高級アルコールの混合物を用いる場合には、その混合物の融点が60℃以上となるような組み合わせを選択するのが好ましい。
【0026】
(B)高級アルコールの配合量は、化粧料全量に対して、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは0.1~7.0質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%である。(D)高級アルコールの配合量が0.1質量%未満又は10質量%を超えると十分な乳化安定性が得られない場合がある。
【0027】
(C)界面活性剤
本発明の水中油型乳化化粧料に使用される(C)界面活性剤は、非イオン性界面活性剤及びイオン性(アニオン性、カチオン性及び両性)界面活性剤から選択される少なくとも1種である。非イオン性界面活性剤としては、そのHLB値が10以上の親水性界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0028】
本発明で使用されるHLB値が10以上の非イオン性界面活性剤は、例えば、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、マルチトールヒドロキシ脂肪族アルキルエーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油グリセリル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、テトラポリオキシエチレン・テトラポリオキシプロピレン-エチレンジアミン縮合物、ポリオキシエチレン-ミツロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド、ポリオキシエチレン-プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-アルキルアミン、ポリオキシエチレン-脂肪酸アミド、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸などから選択することができる。
【0029】
HLB値が10以上の非イオン性界面活性剤の好ましい例としては、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(ステアリン酸PEG-40等)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60等)、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(ベヘネス-20)等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの非イオン性界面活性剤は、1種又は2種以上を用いることができる。2種以上の非イオン性界面活性剤のHLB値は、各界面活性剤のHLB値を当該界面活性剤の配合量に応じて加重平均することにより算出し、その値が10以上であればよい。
【0030】
本発明で使用するイオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤を含む。
【0031】
本発明に好ましいアニオン性界面活性剤の例としては、特に限定されないが、N-ココイルグルタミン酸塩、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン塩、N-カプロイルメチルタウリン塩、N-ラウロイルメチルタウリン塩、N-ミリストイルメチルタウリン塩、N-パルミトイルメチルタウリン塩、N-ステアロイルメチルタウリン塩、N-オレオイルメチルタウリン塩、N-ココイルグルタミン酸塩、N-ラウロイルグルタミン酸塩、N-ミリストイルグルタミン酸塩、N-パルミトイルグルタミン酸塩、N-ステアロイルグルタミン酸塩、N-オレオイルグルタミン酸塩、ラウリルリン酸塩、ミリスチルリン酸塩、パルミチルリン酸塩、ステアリルリン酸塩等が挙げられる。好ましい対イオンとしては、ナトリウム、カリウム、トリエタノールアミン、アンモニア等が挙げられる。
【0032】
本発明に好ましいカチオン性界面活性剤の例としては、特に限定されないが、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ミリスチルトリメチルアンモニウム、臭化ミリスチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムメタンスルホネート、ステアリルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化セチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化オクチルジヒドロキシエチルメチルアンモニウム、塩化2-デシルテトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化2-ドデシルヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウム、臭化N-(2-ヒドロキシ-3-ステアロキシプロピル)-N、N-ジメチルアミン等が挙げられる。
【0033】
本発明に好ましい両性界面活性剤の例としては、特に限定されないが、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤、コカミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0034】
本発明の化粧料では、(C)界面活性剤として、非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種を含んでいればよいが、2種以上を組み合わせて配合してもよい。例えば、HLB値が10以上の非イオン性界面活性剤を少なくとも1種含有し、非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種を更に含有するのは、本発明における好ましい態様の一つである。
【0035】
(C)界面活性剤の配合量は、水中油型乳化化粧料全量に対して、0.1~20質量%が好ましく、より好ましくは0.2~10質量%、さらに好ましくは0.3~5質量%である。(C)界面活性剤の配合量が0.1質量%未満又は20質量%を超えると十分な乳化安定性が得られない場合がある。
【0036】
本発明の水中油型乳化化粧料は、前記(A)親水性増粘剤の配合量と、前記(B)高級アルコール及び(C)界面活性剤(即ち「αゲル構成成分」)の合計配合量との質量比([親水性増粘剤]:[αゲル構成成分])を、3:1~1:9の範囲内、好ましくは2.5:1~1:8の範囲内、より好ましくは2:1~1:7の範囲内とすることによって優れた「取れ」を実現したことを特徴としている。前記の質量比が3:1~1:9の範囲外になると、化粧料が固形にならずにクリーム状になるか、固形になっても取れが悪くなるので好ましくない。
【0037】
さらに、親水性増粘剤とαゲル構成成分の合計配合量を2.0~7.5質量%の範囲内にするのが好ましく、2.5~7.0質量%の範囲内にするのが更に好ましい。この合計配合量を前記範囲内に調整すると、取れ性に優れるのみならず、特にみずみずしい使用感触を与えることができる。合計配合量が2.0質量%未満であると化粧料の硬度が不十分になることがあり、7.5質量%を超えるとみずみずしさが失われる傾向がある。
【0038】
(D)水
本発明の化粧料に使用される(D)水(「(D)成分」ともいう)は、特に限定されず、具体的に示せば、精製水、イオン交換水などである。
(D)水の配合量は、水中油型乳化化粧料全量に対して、25~90質量%が好ましく、さらに好ましくは30~80質量%であり、最も好ましくは35~70質量%である。(D)水の配合量が上記範囲外であると、水中油型乳化化粧料の安定性が低下したり、みずみずしい使用感が低下したりする場合がある。
【0039】
(E)油分
本発明の水中油型乳化化粧料に使用される(E)油分((E)成分ともいう)は、前記(B)成分及び(C)成分とともに水中油型乳化物の内相(油相)を構成する。本発明に使用できる油分は特に限定されず、化粧品に用いられている炭化水素油、エステル油、シリコーン油、油脂、香料、油溶性紫外線吸収剤等から選択することができる。
【0040】
炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソパラフィン、セレシン、イソドデカン、イソヘキサデカン、オゾケライト、プリスタン、ワセリン等が例示される。
【0041】
エステル油としては、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、エチルヘキサン酸セチル、ホホバ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、トリイソステアリン、ジイソステアリン酸グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、パルミチン酸イソプロピル、マカダミアナッツ脂肪酸フィトステリル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、セバシン酸ジイソプロピル、ネオペンタン酸イソデシル、オクタン酸オクチル、ノナン酸ノニル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ピバリン酸トリプロピレングリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、ジイソステアリン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、セチル2-エチルヘキサノエート-2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が例示できる。
【0042】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等)、環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)、アクリルシリコーン類等が挙げられる。
【0043】
液体油脂としては、アマニ油、ツバキ油、マカダミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ナタネ油、大豆油、落花生油、トリグリセリン、タートル油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、綿実油、エノ油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油等が挙げられる。また、固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0044】
香料としては、動物又は植物より得られる天然香料と、化学的合成手段によって製造される合成香料、及びそれらの混合物である調合香料が挙げられ、特に限定されない。香料を配合することで、香りの持続性に優れた化粧料を得ることができる。香料としては、具体的には、アセチベノール、アニスアルデヒド、アネトール、アミルアセテート、アミルサリシレート、アリルアミルグリコレート、アリルカプロエート、アルデヒドC6~20、アンブレットライド、アンブレットリド、アンブロキサン、イオノン、イソイースーパー、オイゲノール、オウランチオール、ガラクソリド、カローン、クマリン、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、サンダロア、サンタロール、サンデラ、シクラメンアルデヒド、シス-3-ヘキセニルアセテート、シス-3-ヘキセノール、シトラール、シトロネリルアセテート、シトロネロール、シネオール、ジハイドロミルセノール、ジャスモラクトン、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、スチラリルアセテート、セドリルアセテート、セドロール、ダマスコン、ダマセノン、デカラクトン、テルピニルアセテート、テルピネオール、トナリッド、トナリド、トリプラール、ネロール、バクダノール、バニリン、ヒドロキシシトロネラール、フェニルエチルアセテート、フェニルエチルアルコール、ヘキシルサリシレート、ベチベリルアセテート、ヘディオン、ヘリオトロピン、ヘリオナール、ベルトフィックス、ベンジルアセテート、ベンジルサリシレート、ベンジルベンゾエート、ペンタリッド、ボルニルアセテート、マイオール、ムスクケトン、メチルアンスラニレート、メチルジヒドロジャスモネート、ヤラヤラ、ライムオキサイド、リナリルアセテート、リナロール、リモネン、リラール、リリアール、ローズオキサイド、ロジノール、アンジェリカオイル、アニスオイル、アルモアゼオイル、バジルオイル、ベイオイル、ベルガモットオイル、カラムスオイル、カンファーオイル、カナンガオイル、カルダモンオイル、カッシアオイル、セダーウッドオイル、セロリオイル、カモミールオイル、シナモンオイル、クローブオイル、コリアンダーオイル、クミンオイル、ディルオイル、エレミオイル、エストラゴンオイル、ユーカリオイル、フェンネルオイル、フェヌグリークオイル、ガルバナムオイル、ゼラニウムオイル、ジンジャーオイル、グレープフルーツオイル、ガヤックウッドオイル、ヒバオイル、ヒノキオイル、ジュニパーベリーオイル、ラバンジンオイル、ラベンダーオイル、レモンオイル、ライムオイル、マンダリンオイル、ジラムオイル、モミザオイル、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、ミルオイル、ミルトルオイル、ナツメグオイル、オークモスオイル、オリバナムオイル、オポポナックスオイル、オレンジオイル、パセリオイル、パチュリオイル、ペッパーオイル、ペリラオイル、プチグレンオイル、ネロリオイル、オレンジフラワーオイル、ピメントオイル、オールスパイスオイル、パインオイル、ローズオイル、ローズマリーオイル、クラリセージオイル、セージオイル、サンダルウッドオイル、スチラックスオイル、タジェオイル、タイムオイル、チュベローズオイル、バレリアンオイル、ベチバーオイル、バイオレットリーフオイル、ウィンターグリーンオイル、ワームウッドオイル、イランイランオイル、ユズオイル、カッシーアブソリュート、ジュネアブソリュート、ヒヤシンスアブソリュート、インモルテルアブソリュート、ジャスミンアブソリュート、ジョンキルアブソリュート、ナルシスアブソリュート、ローズアブソリュート、バイオレットリーフアブソリュート、ベンゾイン等が挙げられる。
【0045】
油溶性紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸(PABA)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル等の安息香酸系紫外線吸収剤;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート、3,4,5-トリメトキシケイ皮酸3-メチル-4-[メチルビス(トリメチルシリキシ)シリル]ブチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、オクトクリレン等が例示される。
【0046】
本発明の化粧料における油分((E)成分)の配合量は、特に限定されないが、化粧料全量に対して5~30質量%が好ましく、10~25質量%が更に好ましい。
【0047】
本発明における油分((E)成分)は、常温(25℃)で液状の油分(液状油分)を含有しているのが好ましい。一方、モクロウ等の固形油分を配合してもよいが、その配合量は本発明の効果を阻害しない範囲とする。例えば、固形油分(ワックス等)の配合量は5.0質量%未満であり、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下であり、本発明はワックスを含まない態様も包含する。
【0048】
本発明の化粧料は、上記必須成分(A)~(E)に加えて、化粧料等に通常配合される他の任意成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。他の任意成分としては、限定されないが、水溶性紫外線吸収剤、保湿剤、親水性又は親油性の増粘剤(前記(A)成分を除く)、粉末、低級アルコール(炭素数6未満)、酸化防止剤、緩衝剤、各種薬剤、安定化剤、防腐剤、色素等が挙げられる。
【0049】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸およびその塩、フェニレン-ビス-ベンゾイミダゾール-テトラスルホン酸およびその塩等のベンゾイミダゾール系紫外線吸収剤、3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル等が挙げられる。
【0050】
本発明の化粧料は、外相(水相)及び/又は内相(油相)に粉末を配合することができる。外相(水相)に配合する場合は親水性粉末を用い、内相(油相)に配合する場合は、表面疎水性の粉末又は表面疎水化処理した親水性粉末(疎水性粉末)を用いるのが安定性の点から好ましい。配合される粉末の形状や粒径は特に制限されない。
【0051】
外水相に分散できる粉末成分としては、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素等)、有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等)、無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等)、無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等)、無機褐色系顔料(例えば、γ-酸化鉄等)、無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等)、無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等)、無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等)、無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等)、無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等)、パール顔料(例えば、酸化チタンコ-テッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等)、金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等)、ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレ-キ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号等の有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等)、天然色素(例えば、クロロフィル、β-カロチン等)等が挙げられる。
【0052】
内油相に分散できる粉末成分としては粉体の表面が疎水性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、シリコーン樹脂粉体、フッ素樹脂粉体など、粉体自体が疎水性を有するもののほか、無機粉体粒子の表面を、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類、デキストリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、金属石鹸、アルキルリン酸エーテル、フッ素化合物、またはスクワラン、パラフィン等の炭化水素類を用いて、溶媒を使用する湿式法、気相法、メカノケミカル法等により疎水化処理したものが挙げられる。なお、疎水性粉体の平均粒子径は本発明の油相である乳化粒子よりも小さい必要がある。特に、粉体を紫外線散乱剤として使用する場合には、湿式分散機で破砕後の平均粒子径が100nm以下のものが好ましい。疎水化処理される無機粉体粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、黒酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム等が挙げられる。
【0053】
なお、前記疎水性粉末を内相に配合する際には分散剤を配合するのが好ましい。使用する分散剤としては、限定されないが、HLBが8以下の非イオン性界面活性剤及び/又は高級脂肪酸が好ましい。
HLBが8以下の非イオン性界面活性剤としては、例えば、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ソルビタンなどが挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。特にイソステアリン酸が好ましい。
【0054】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0055】
その他の任意配合可能成分としては、例えば、防腐剤(メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール等)、消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等)、美白剤(例えば、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等)、各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピートキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等)、血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノール等)、抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等)、抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)等が挙げられる。
【0056】
本発明の水中油型乳化固形化粧料は、限定されないが、例えば、(E)油分、(B)高級アルコール、(C)界面活性剤を高温で溶解して溶解油分パーツを調製し、(D)水と他の水性成分を含む水相パーツを加温したものに前記溶解油分パーツを加えて常法により乳化して、(A)親水性増粘剤を添加することによって製造することができる。
【0057】
本発明の水中油型乳化固形化粧料は、良好な取れや、みずみずしい感触、優れた保湿効果等の特徴を生かし、ファンデーション等のメーキャップ化粧料、サンスクリーン等のUVケア化粧料、あるいはスキンケア化粧料として提供することができる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は全量に対する質量%を表す。
【0059】
下記の表1~4に掲げる処方の水中油型乳化化粧料を製造し、以下の項目について評価した。それらの結果も表1~4に併せて示す。
(1)性状
製造した化粧料(試料)の容器を25℃の条件下で45°傾けて10秒後の容器内部の化粧料の流動の有無を目視で確認した。
固形:容器を傾けても内部の化粧料(試料)が流動しない。
クリーム:容器を傾けると、内部の化粧料(試料)が流動する。
【0060】
(2)取れ及び(3)みずみずしさ
(2)取れ及び(3)みずみずしさについては、製造した化粧料(試料)を10名の専門パネルに実際に使用して、「取れの良さ」及び「みずみずしさ」を4段階で評価してもらった。
A+:10名中9名以上が[優れている]と評価した。
A:10名中7名以上が[優れている]と評価した。
B:10名中5名以上が[優れている]と評価した。
C:[優れている]と評価したのが10名中4名以下であった。
【0061】
【0062】
表1に示すように、親水性増粘剤:αゲル構成成分の比が3:1~1:9の範囲内である実施例1~5は、固形でありながら良好な取れが実現された。一方、αゲル構成成分を含まない比較例1及びαゲル構成成分の比率が少なくて([親水性増粘剤]:[αゲル構成成分])の比が範囲外となる比較例2は取れが悪く、親水性増粘剤の比率が少なくて([親水性増粘剤]:[αゲル構成成分])の比が範囲外となる比較例3及び親水性増粘剤を含まない比較例4は固形にならなかった。
【0063】
【0064】
表2に示すように、親水性増粘剤:αゲル構成成分の比が所定範囲内であると良好な取れが実現されることが確認された。しかし、親水性増粘剤とαゲル構成成分の合計配合量が2質量%に満たないと、固形(容器を傾けても流動しない)ではあるが、硬度が低下した(実施例6)。一方、合計配合量が7.5質量%を超えると、取れは良好であるが、塗布したときのみずみずしさが低下した(実施例10及び11)。
【0065】
【0066】
表3に示すように、親水性増粘剤:αゲル構成成分の比が本発明所定の範囲内であり、親水性増粘剤とαゲル構成成分の合計配合量が2.0~7.5質量%の範囲内にあれば、親水性増粘剤や高級アルコールの種類を変更しても、良好な取れとみずみずしさを発揮する固形化粧料となる(実施例13及び14)。また、配合する粉末を微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛(実施例12)あるいはシリコーン樹脂粉末(実施例15)としても、油分にシリコーン油を配合しても(実施例16)、いずれも同様に良好な結果が得られた。親水性増粘剤にジェランガムを含まない実施例17でも同様の結果が得られたが、硬度が若干低下して、やや柔らかくなった。
【0067】
【0068】
表4に示すように、(C)界面活性剤として、アニオン性界面活性剤を含む例(実施例18~20)、カチオン性界面活性剤を含む例(実施例21、22)及び両性界面活性剤を含む例(実施例23)においても、本発明の要件を満たしている場合には、良好な取れとみずみずしさを発揮する固形化粧料となった。
【0069】
本発明の化粧料の他の処方を以下に例示する。いずれの処方も固形となり、取れやみずみずしさに優れていた。
【0070】
(処方例1)ファンデーション
1,3プロパンジオール 8%
フェノキシエタノール 0.5%
ジェランガム 1%
モノステアリン酸ポリエチレングリコール 0.5%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.5%
ステアリルアルコール 1.5%
イソドデカン 3%
トリエチルヘキサノイン 5%
トリメチルペンタフェニルトリシロキサン 5%
オクチルメトキシシンナメート 2%
オクトクリレン 1%
ステアリン酸グリセリル 1%
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1%
イソステアリン酸 1%
シリコーン処理顔料級酸化チタン 7%
シリコーン処理赤酸化鉄 0.3%
シリコーン処理黄酸化鉄 1.2%
シリコーン処理黒酸化鉄 0.02%
イオン交換水 残量
【0071】
(処方例2)サンスクリーン(1)
1,3プロパンジオール 8%
フェノキシエタノール 0.5%
ジェランガム 1%
モノステアリン酸ポリエチレングリコール 0.5%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.5%
ステアリルアルコール 1.5%
イソドデカン 3%
オクチメトキシシンナメート 7%
エチルヘキシルトリアゾン 1%
2-ヒドロキシー4ーメトキシベンゾフェノン 1%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
1%
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2%
ステアリン酸グリセリル 1%
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1%
イソステアリン酸 1%
シリコーン処理微粒子酸化チタン 3%
シリコーン処理微粒子酸化亜鉛 3%
イオン交換水 残量
【0072】
(処方例3)サンスクリーン(2)
DPG 8%
メチルパラベン 0.15%
エチルパラベン 0.1%
ジェランガム 1%
モノステアリン酸ポリエチレングリコール 0.5%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.5%
ステアリルアルコール 1.5%
ジメチコン 3%
オクチルメトキシシンナメート 3%
トリエタノールアミン 0.5%
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 1%
ステアリン酸グリセリル 1%
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1%
イソステアリン酸 1%
シリコーン処理微粒子酸化チタン 3%
シリコーン処理微粒子酸化亜鉛 3%
イオン交換水 残量
【0073】
(処方例4)スキンケア化粧料
1,3-ブチレングリコール 7%
メチルパラベン 0.15%
エチルパラベン 0.1%
ジェランガム 1%
モノステアリン酸ポリエチレングリコール 0.5%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.5%
ステアリルアルコール 1.5%
ジメチコン 5%
トリエチルヘキサノイン 3%
ステアリン酸グリセリル 1%
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1%
イソステアリン酸 1%
イオン交換水 残量