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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】水素化異性化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/74 20060101AFI20230523BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20230523BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20230523BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230523BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20230523BHJP
   C10G 45/64 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B01J29/74 M
B01J37/00 D
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J37/18
C10G45/64
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019550760
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2018056273
(87)【国際公開番号】W WO2018167081
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】PA201700178
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】グリル・マリー
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520419(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02862627(EP,A1)
【文献】特表2002-503753(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001404(WO,A1)
【文献】特表2003-525118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0065449(US,A1)
【文献】特表2002-534247(JP,A)
【文献】米国特許第04683214(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0143610(US,A1)
【文献】国際公開第2014/156486(WO,A1)
【文献】特開平04-211023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金、分子ふるい及び金属酸化物支持材を含む触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料であって、前記白金は、白金表面積の少なくとも80%、90%または95%が上記分子ふるい上にクラスタ中にあるように分散していること、及び更に、上記白金は、白金表面積の少なくとも80%、90%または95%が、2nmまたは1nm未満のサイズを有するクラスタ中にあるように分散していること、及び少なくとも0.5重量%の炭素を更に含むことを特徴とする、前記触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
【請求項2】
白金、分子ふるい及び金属酸化物支持材を含む触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料であって、前記白金は、白金質量の少なくとも80%、90%または95%が上記分子ふるい上にクラスタ中にあるように分散していること、及び更に、上記白金は、白金質量の少なくとも80%、90%または95%が、2nmまたは1nm未満のサイズを有するクラスタ中にあるように分散していること、及び少なくとも0.5重量%の炭素を更に含むことを特徴とする、前記触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
【請求項3】
少なくとも1重量%の有機添加剤またはそれから誘導される化合物を含む、請求項1または2に記載の触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
【請求項4】
上記有機添加剤が、クエン酸、乳酸及びギ酸からなる群から選択される、請求項3に記載の触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
【請求項5】
上記金属酸化物支持材が、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ及びチタニアを含む群から選択される、請求項1、2、3または4に記載の触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
【請求項6】
上記分子ふるいが、AEI、AEL、AFO、AFX、ATO、BEA、CHA、FAU、FER、MEL、MFI、MOR、MRE、MTT、MWWまたはTONトポロジーを有するグループ、例えばEU-2、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-48、SAPO-5、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-34、SAPO-41、SSZ-13、SSZ-16、SSZ-39、MCM-22、ゼオライトY、フェリエライト、モルデナイト、ZSM-5またはゼオライトベータから選択される一種以上の材料である、請求項1、2、3、4または5に記載の触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
【請求項7】
前記分子ふるいがEU-2である、及び前記分子ふるいが50、90、125または155~200のシリカ/アルミナ比を有する、請求項1、2、3、4、5または6に記載の触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
【請求項8】
触媒活性材料のための前駆体を製造するための方法であって、次のステップ:
a)アルミナと分子ふるいとを組み合わせて支持材ペーストを形成するステップ、
b)上記支持材ペーストを押出しまたはペレット化して、支持材粒子を形成するステップ、
c)上記支持材粒子を、有機添加剤を含む白金塩の溶液で、インシピエント・ウェットネス含浸法により含浸処理して、触媒前駆体を供するステップ、
d)上記触媒前駆体を、空気中で120℃~200℃の温度で乾燥するステップ、
を含み、
ステップd)からの乾燥した触媒前駆体が少なくとも0.5重量%の炭素を更に含む、
方法。
【請求項9】
前記有機添加剤が、クエン酸、乳酸及びギ酸からなる群から選択される、請求項8に記載の触媒活性材料のための前駆体を製造する方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一つに記載の前駆体からまたは請求項8または9に従い製造される前駆体から触媒活性材料を製造する方法であって、前記前駆体を、150℃と350℃との間の温度で水素などの還元剤の流れと接触させる、前記方法。
【請求項11】
炭化水素または炭化水素混合物を脱蝋する方法であって、上記炭化水素または炭化水素混合物を、水素の存在下に、脱蝋条件下に、請求項8または9に従い製造された触媒活性材料または請求項1~のいずれか一つに記載の触媒活性材料と接触させることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒活性材料の製造方法、具体的にはディーゼル燃料、ジェット燃料、潤滑油または家庭用加熱油として使用するのに適した炭化水素混合物の水素化異性化用の触媒、並びにこの触媒を使用する水素化異性化方法に関する。
【0002】
本開示に関連する供給物としての炭化水素混合物は、広い沸騰範囲の炭化水素混合物の常圧分留または真空分留のいずれかに由来するものであってよい。炭化水素混合物は、鉱油、再生可能油(植物及び/または動物起源の油も含む)、及び合成して製造した炭化水素、例えば、合成ガス、中でも、バイオマス及び石炭ガス化、天然ガス改質、コークス炉ガスなどから生成した合成ガスに対する周知のフィッシャートロプシュ反応を介して合成して製造した炭化水素、並びにこれらの源の炭化水素の混合物などの様々な源に由来し得る。
【背景技術】
【0003】
例えばディーゼル燃料についての欧州規格EN590から当業者には周知なように、炭化水素混合物は、その起源に依存して、一つの特定の用途について任意の温度下に満足な低温流動特性を有し得、他方で、低温流動特性は、しばしば季節的な温度変化(特に冬季)に関連して、或る他の用途では向上する必要があるか、あるいは低温流動特性は年間を通した改善を必要とし得る。
【0004】
問題のある低温流動特性、すなわち低温での結晶化または部分的な固化は、最も通常は長い(C7+)直鎖n-パラフィンに関連し、これらは異性化して、向上した低温流動特性を持つ分岐状異性化パラフィン(i-パラフィン)とすることができる。
【0005】
低温流動特性を最適化するために幾つかの方法が利用可能であり、そしてこれらの全ては、n-パラフィンのようなワックスの存在または少なくともその効果を減少することを狙ったものであるため、これらの方法は通常は脱蝋法と称される。
【0006】
供給原料を低沸点流(例えばケロシン)で希釈するかまたは適当な添加剤を供給原料油に加えることによる配合技術が、低温流動特性を向上し得る。技術的にはシンプルではあるものの、これらの方法は昔からコスト高である。
【0007】
許容可能な低温流動特性を持つ製品は、供給原料の触媒水素化分解によっても得ることができる。この反応は、長鎖n-パラフィンを分解して、満足な低温流動特性を持つ、より短鎖の分子を生成する。水素化分解は、所望の沸点範囲外で沸騰する炭化水素の生成の故の製品のロス、並びに水素の大量消費の結果となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US6,984,309
【非特許文献】
【0009】
【文献】「Atlas of Zeolite Framework Types」 Sixth Revised Edition,Elsevier,2007
【発明の概要】
【0010】
製品の低温流動特性の向上のための更に別のルートは、触媒水素化異性化である。適当な触媒は、水素化異性化反応の促進に活性を示し、元の直鎖パラフィンから様々な分岐度の異性体を供する。
【0011】
水素化異性化は、水素化分解と比べて、より高い収率の関心のある製品留分及び水素のより少ない消費量を可能にする。この方法は水素の存在を必要とする。
【0012】
脱蝋または水素化異性化のプロセスは、触媒の存在下に行われ、該触媒は、本開示によれば、周期律表の第VIII族から選択される貴金属成分を含み、該貴金属成分は、アルミナ、シリカ、チタニアもしくはシリカ-アルミナまたはこれらの組み合わせなどの金属酸化物、並びにトポロジーを有する分子ふるい、例えばAEI、AEL、AFO、AFX、ATO、BEA、CHA、FAU、FER、MEL、MFI、MOR、MRE、MTT、MWWまたはTONを含むキャリア上に支持されている。
【0013】
殆どの化学反応、特にディーゼルプールなどの複雑な混合物の化学反応におけるように、複数の並行な反応が起こり得る。これらの並行な反応は、水素化異性化を介した脱蝋の場合には、ディーゼルプールの一部としては適しておらず、そのため収量損失となり、そうして経済的損失並びに水素の消費のためのコストである小さい炭化水素を生成物として有する水素化分解反応である場合がしばしばある。時間全体を通して、特にプロセス条件及び使用する触媒を最適化することによって、収率が最適化された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで使用する場合、低温流動パラメータの値は、低温での炭化水素混合物の粘度を反映する温度、例えば曇天、流動点、凝固点及び低温濾過器目詰まり点(CFPP)のパラメータを初めとした温度によって表される。これらのパラメータに共通しているのは、これらが、ディーゼルへの要求を規定する規格EN590にも指定されるような低温条件下でのディーゼルの低粘度についての要求事項を定義している点である。最も実用的な目的からは、これらのパラメータは、同じ化学的機序によって作用を受けるものであり、そして「低温流動特性の向上」または「これらのパラメータのいずれか一つの向上」という記載は、他に記載がなければ等価であると理解されたい。
【0015】
ここで使用する場合、i-パラフィンまたはiso-パラフィンは、iso-パラフィンが、炭素鎖末端の非常に近くに単一のメチル基を有するパラフィンという厳格な定義とは異なり、精油技術の分野における当業者により理解されるように任意の分岐状パラフィンのことと見なされる。
【0016】
以下で使用する場合、「供給原料」または「供給原料油」とは、低温流動特性の改善が必要な、鉱油、再生可能油の一つ以上に、または合成ガスからのフィッシャートロプシュ合成の生成物に由来する任意の流れを含む。
【0017】
水素化異性化に触媒活性を示す材料とは、使用する条件下に水素化異性化へ有意の触媒活性を有する材料のことと理解され、但し、当業者に理解されるように、殆どの反応は、ある程度の量の副反応を示し、そして副反応の度合いが、所望の水素化異性化反応と同等かまたはそれを超える場合でも、この材料は、ある程度の量の水素化異性化が起こる時には水素化異性化に触媒活性があると見なされる。
【0018】
ここで使用する場合、単位NL/Lは、液体の体積(15℃及び1barでのリットル)当たりのガスの体積(標準状態でのリットル、すなわち0℃及び1barでのリットル)を指す。
【0019】
ここで使用する場合、触媒活性材料の前駆体という用語は、還元などの活性化プロセスによって触媒活性材料に転化可能な材料のことと理解される。
【0020】
ここで使用する場合、分子ふるいのトポロジーという用語は、「Atlas of Zeolite Framework Types」 Sixth Revised Edition,Elsevier,2007(非特許文献1)に記載の意味で使用され、そしてそれに従い、三つの文字のフレームワーク型コードが使用される。
【0021】
広い形態では、本開示は、白金、分子ふるい及び金属酸化物支持材を含む触媒活性材料の前駆体または触媒活性材料であって、上記白金のうちの少なくとも80%、90%または95%が、前記分子ふるい上に分散しており、及び上記白金のうちの少なくとも80%、90%または95%が、1nm未満のサイズを有するクラスタ中に分散しており、このような触媒活性材料の付随する利点は、高活性でありかつ脱蝋または水素化異性化に対し選択的である点であることを特徴とする前記触媒活性材料の前駆体または触媒活性材料に関する。
【0022】
更に別の態様の一つでは、該前駆体または触媒活性材料は、少なくとも0.5%の炭素を更に含み、このような触媒活性材料の付随する利点は、高活性であることと、脱蝋または水素化異性化に対して選択的である点にある。
【0023】
更に別の態様の一つでは、該前駆体または触媒活性材料は、少なくとも1%の有機添加物またはそれから誘導される化合物を含み、このような触媒活性材料の付随する利点は、高活性であることと、脱蝋または水素化異性化に対して選択的である点にある。
【0024】
更に別の態様の一つでは、上記金属酸化物支持材は、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ及びチタニアを含む群から選択され、このような触媒活性材料の付随する利点は熱的かつ機械的に安定しているという点にある。
【0025】
更に別の態様の一つでは、上記分子ふるいは、AEI、AEL、AFO、AFX、ATO、BEA、CHA、FAU、FER、MEL、MFI、MOR、MRE、MTT、MWWまたはTONトポロジーを有するグループ、例えばEU-2、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-48、SAPO-5、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-34、SAPO-41、SSZ-13、SSZ-16、SSZ-39、MCM-22、ゼオライトY、フェリエライト、モルデナイト、ZSM-5またはゼオライトベータから選択される一種以上の材料であり、このような材料の付随する利点は、線状炭化水素の脱蝋または水素化異性化に活性であるという点にある。
【0026】
更に別の態様の一つでは、上記分子ふるいはEU-2であり、上記分子ふるいは、50、90、125または155~165または200のシリカ/アルミナ比を有し、このようなシリカ/アルミナ比は、高い水素化異性化活性及び選択性を持つ安定した分子ふるいを供するという付随する利点がある。
【0027】
本発明の更に別の観点の一つは、触媒活性材料の前駆体を製造する方法であって、次のステップ:
a)金属酸化物と分子ふるいとを組み合わせて支持材ペーストを形成するステップ、
b)上記支持材ペーストを押出しまたはペレット化して、支持材粒子を形成するステップ、
c)上記支持材粒子を、クエン酸、乳酸またはギ酸などの有機添加剤を含む白金塩の溶液で、インシピエント・ウェットネス含浸法により含浸処理して、触媒前駆体を供するステップ、
d)上記触媒前駆体を、空気中で120℃~200℃の温度で乾燥するステップ、
を含む方法に関し、
このような方法の付随する利点は、粒子中への向上した含浸深さ及び分子ふるい上への選択的な含浸にある。
【0028】
本発明の更に別の観点の一つは、上記前駆体を、150と350℃との間の温度で水素流と接触させることによって、前記前駆体から触媒活性材料を製造する方法に関し、このような方法の付随する利点は、触媒活性材料の使用場所とは独立して前記前駆体の製造が可能になる点にある。
【0029】
本発明の更に別の観点の一つは、炭化水素を異性化するための方法であって、上記炭化水素を、水素の存在下に脱蝋条件の下に、触媒活性材料を製造するための上記方法に従い製造された触媒活性材料と接触させることを含む方法に関し、このような脱蝋方法の付随する利点は、同じ分子ふるいを含むが、異なる白金分布及び分散を有する触媒活性材料上での脱蝋と比べて、向上した活性を有する点にある。
【0030】
本開示の更に別の態様の一つは、白金、MREトポロジーを有する分子ふるい、及びアルミナもしくはシリカである金属酸化物支持材を含み、場合により及び0.5重量%の炭素及び/または1%の有機添加剤及び/もしくは有機添加剤から誘導される化合物を更に含む触媒または触媒前駆体であって、白金表面積の少なくとも95%は上記分子ふるい上のクラスタ中にあり、及び上記白金は、白金表面積の少なくとも85%が2nm未満のサイズのクラスタ中にあるように分散している触媒または触媒前駆体に関し、異性化に活性を示すMREトポロジーの分子ふるい、向上した異性化活性をサポートするゼオライトの非常に近くで利用可能な白金、及び高い活性を供する小さいクラスタ中の白金の存在の故に高活性の異性化触媒が供されるという付随する利点がる。
【0031】
本開示の更に別の態様の一つは、白金、50~200のシリカ/アルミナ比を有するEU-2である分子ふるい、アルミナである金属酸化物支持材を含み、場合により及び0.5重量%の炭素及び/または1%の有機添加剤及び/もしくは有機添加剤から誘導される化合物を更に含む触媒または触媒前駆体であって、前記白金は、白金表面積の少なくとも90%が上記分子ふるい上のクラスタ中にありかつ白金表面積の少なくとも80%が2nm未満のサイズを有するクラスタ中にあるように分散している触媒または触媒前駆体に関し、(特に、低いシリカ/アルミナ比において)異性化に活性を示すEU-2分子ふるい、向上した異性化活性をサポートするゼオライトの非常に近くで利用可能な白金、及び高い活性を供する小さいクラスタ中の白金の存在の故に高活性の異性化触媒を供する付随する利点を有する。
【0032】
本開示の更に別の態様の一つは、白金、50~200のシリカ/アルミナ比を有するEU-2である分子ふるい、アルミナである金属酸化物支持材を含み、場合により及び0.5重量%の炭素及び/または1%の有機添加剤及び/もしくは有機添加剤から誘導される化合物を更に含む触媒または触媒前駆体であって、前記白金は、白金表面積の少なくとも90%が上記分子ふるい上のクラスタ中にありかつ白金表面積の少なくとも90%が2nm未満のサイズを有するクラスタ中にあるように分散している触媒または触媒前駆体に関し、(特に、低いシリカ/アルミナ比において)異性化に活性を示すEU-2分子ふるい、向上した異性化活性をサポートするゼオライトの非常に近くで利用可能な白金、及び高い活性を供する小さいクラスタ中の白金の存在の故に高活性の異性化触媒を供する付随する利点を有する。
【0033】
本開示の更に別の態様の一つは、白金、90~200のシリカ/アルミナ比を有するEU-2である分子ふるい、アルミナである金属酸化物支持材を含み、場合により及び0.5重量%の炭素及び/または1%の有機添加剤及び/もしくは有機添加剤から誘導される化合物を更に含む触媒または触媒前駆体であって、前記白金は、白金表面積の少なくとも90%が上記分子ふるい上のクラスタ中にありかつ白金表面積の少なくとも90%が2nm未満のサイズを有するクラスタ中にあるように分散している触媒または触媒前駆体に関し、(特に、低いシリカ/アルミナ比において)異性化に活性を示すEU-2分子ふるい、向上した異性化活性をサポートするゼオライトの非常に近くで利用可能な白金、及び高い活性を供する小さいクラスタ中の白金の存在の故に高活性の異性化触媒を供する付随する利点を有する。
【0034】
本開示の更に別の態様の一つは、白金、125~200のシリカ/アルミナ比を有するEU-2である分子ふるい、アルミナである金属酸化物支持材を含み、場合により及び0.5重量%の炭素及び/または1%の有機添加剤及び/もしくは有機添加剤から誘導される化合物を更に含む触媒または触媒前駆体であって、前記白金は、白金表面積の少なくとも90%が上記分子ふるい上のクラスタ中にありかつ白金表面積の少なくとも90%が2nm未満のサイズを有するクラスタ中にあるように分散している触媒または触媒前駆体に関し、中程度のシリカ/アルミナ比においても異性化に活性を示すEU-2分子ふるい、向上した異性化活性をサポートするゼオライトの非常に近くで利用可能な白金、及び高い活性を供する小さいクラスタ中の白金の存在の故に高活性の異性化触媒を供する付随する利点を有する。
【0035】
本開示の更に別の態様の一つは、白金、50~200のシリカ/アルミナ比を有するフェリエライトである分子ふるい、アルミナである金属酸化物支持材を含み、場合により及び0.5重量%の炭素及び/または1%の有機添加剤及び/もしくは有機添加剤から誘導される化合物を更に含む触媒または触媒前駆体であって、前記白金は、白金表面積の少なくとも90%が上記分子ふるい上のクラスタ中にありかつ白金表面積の少なくとも90%が2nm未満のサイズを有するクラスタ中にあるように分散している触媒または触媒前駆体に関し、(特に、低いシリカ/アルミナ比において)異性化に活性を示すフェリエライト分子ふるい、向上した異性化活性をサポートするゼオライトの非常に近くで利用可能な白金、及び高い活性を供する小さいクラスタ中の白金の存在の故に高活性の異性化触媒を供する付随する利点を有する。
【0036】
水素化異性化に触媒活性を示す材料は、典型的には数ミリメータの直径を有する粒子である。その製造は、典型的には、安定した支持材の形成、その後の活性金属の含浸を含む。安定した支持材は、典型的には、金属酸化物並びに(ゼオライトであってよい)分子ふるいを含む。安定した支持材は、最大の表面積を保証するために高い多孔度をもって製造され、そして典型的には、支持材の全体積にわたって活性金属を含浸することが望ましい。
【0037】
本開示によれば、含浸用液が、クエン酸などの有機添加剤を含む場合に、活性金属が、単に触媒前駆体の外殻を含浸する代わりに、より触媒前駆体に到達し、加えて活性金属が分子ふるい上に選択的に体積することが今や確認された。
【0038】
理論により拘束されるものではないが、含浸用液中の有機添加剤は、支持材表面と相互作用して、金属酸化物上に貴金属が堆積することを妨害するものと考えられる。その結果、貴金属は、触媒前駆体の全体積じゅうに分布させることができ、及び専ら分子ふるい上にのみ堆積される。
【0039】
この効果は、白金及びクエン酸を含む含浸用液を用いた、アルミナ及びEU-2ゼオライトを含むキャリアの含浸について実証された。EU-2について観察されたこの効果は、他の分子ふるいにも期待される。この効果は、乳酸及びギ酸を始めとした他の有機添加剤にも期待される、というのも、これらもまた、触媒前駆体中の支持材表面と相互作用するからである。最後に、この効果は、同様に触媒活性材料の組成物中に使用されるシリカ及びチタニアなどの他の金属酸化物支持材にも当てはまるものと考えられる。
【実施例
【0040】
触媒活性材料の二つの例を合成した。触媒1は、本発明に従い製造し、触媒2は、US6,984,309(特許文献1)に従い従来技術に基づいて製造した。
【0041】
例1
触媒1:
155のシリカ/アルミナ比(SAR)を有する市販のEU-2ゼオライトを、硝酸及びアルミナ粉末で解膠したアルミナゲルと、押出物の最終組成が乾質基準で65重量%のゼオライト及び35重量%のアルミナとなる比率で混合した。こうして得られたペーストを、直径1.86mmの円筒形の開口部を持つダイプレートに通して出す。次いで、押出物を120℃で一晩乾燥し、次いで500℃で空気中、2時間か焼する。この基材上に、インシピエント・ウェットネス含浸によって、クエン酸及びPt(NH 2+,2HCO の水溶液を、基材上に堆積される白金の含有率が600℃で分解した後に最終的に0.5重量%となるように堆積し、この際、クエン酸濃度は0.6Mである。次いで、これらの押出物を空気中、150℃で乾燥する。この調製は、PtがEU-2ゼオライト上に存在する完全に含浸された触媒を生成する。
【0042】
触媒2:
155のシリカ/アルミナ比(SAR)を有する市販のEU-2ゼオライトを、硝酸及びアルミナ粉末で解膠したアルミナゲルと、押出物の最終組成が乾質基準で65重量%のゼオライト及び35重量%のアルミナとなる比率で混合した。こうして得られたペーストを、直径1.86mmの円筒形の開口部を持つダイプレートに通して出す。次いで、押出物を120℃で一晩乾燥し、次いで500℃で空気中、2時間か焼する。この基材上に、インシピエント・ウェットネス含浸によって、アンモニア及びPt(NH 2+,2HCO の水溶液を、基材上に堆積される白金の含有率が600℃で分解した後に最終的に0.5重量%となるように堆積し、この際、アンモニア濃度は0.15Mである。次いで、これらの押出物を空気中、310℃で乾燥する。この調製は、Ptがアルミナ及びEU-2ゼオライトの両方上に存在する外殻含浸触媒を生成する。
【0043】
触媒1及び2をTEM及びSEMによって分析した。その結果を表1に報告する。本開示に従い製造された触媒1は、押出物の全体積への白金の分布(外殻含浸なし)、アルミナ上の白金の不在、及び1nm未満の貴金属のクラスタサイズを特徴とし、これに対し、従来技術に従い製造された触媒2は、最大15nmまでのかなりより大きなクラスタを有し、白金は、押出物の外表面近くの外殻層中に分布しており、及び白金は、アルミナ上及びゼオライト上に見られることを観察できる。加えて、触媒1は2%の炭素を含み、これは、クエン酸またはそれから誘導される化合物の形であると推察される。
【0044】
例2:
水素化脱酸素化されたコーン油を、例示触媒上での水素化異性化のための供給物として使用した。この供給物の特性を表2に示す。
【0045】
この供給物を、50bargの圧力、300及び320℃の温度、2h-1のLHSV、及び500NL/Lの水素/油比で触媒1及び2と接触させた。生成物の主要特性を表3に示す。
【0046】
表3は、触媒1及び触媒2の性能に対する、白金分布のこれらの違いの効果を示す。類似の条件では、触媒1は、類似の条件で、等温(iso-temperature)でのより高い曇点向上(cloud point improvement, CPI)によって反映されるより高い脱蝋活性を有することが見られる。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 白金、分子ふるい及び金属酸化物支持材を含む触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料であって、上記白金の少なくとも80%、90%または95%が上記分子ふるい上に分散しており、及び上記白金の少なくとも80%、90%または95%が、2nmまたは1nm未満のサイズを有するクラスタ中に分散していることを特徴とする前記触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
2. 白金、分子ふるい及び金属酸化物支持材を含む触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料であって、前記白金は、白金表面積の少なくとも80%、90%または95%が上記分子ふるい上にクラスタ中にあるように分散していること、及び更に、上記白金は、白金表面積の少なくとも80%、90%または95%が、2nmまたは1nm未満のサイズを有するクラスタ中のクラスタ中にあるように分散していることを特徴とする、前記触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
3. 白金、分子ふるい及び金属酸化物支持材を含む触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料であって、前記白金は、白金質量の少なくとも80%、90%または95%が上記分子ふるい上にクラスタ中にあるように分散していること、及び更に、上記白金は、白金質量の少なくとも80%、90%または95%が、2nmまたは1nm未満のサイズを有するクラスタ中のクラスタ中にあるように分散していることを特徴とする、前記触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
4. 少なくとも0.5重量%の炭素を更に含む、前記1.、2.または3.に記載の触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
5. 少なくとも1重量%の有機添加剤またはそれから誘導される化合物を含む、前記
4.に記載の触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
6. 上記金属酸化物支持材が、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ及びチタニアを含む群から選択される、前記1.、2.、3.、4.または5.に記載の触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
7. 上記分子ふるいが、AEI、AEL、AFO、AFX、ATO、BEA、CHA、FAU、FER、MEL、MFI、MOR、MRE、MTT、MWWまたはTONトポロジーを有するグループ、例えばEU-2、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-48、SAPO-5、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-34、SAPO-41、SSZ-13、SSZ-16、SSZ-39、MCM-22、ゼオライトY、フェリエライト、モルデナイト、ZSM-5またはゼオライトベータから選択される一種以上の材料である、前記1.、2.、3.、4.、5.または6.に記載の触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
8. 前記分子ふるいがEU-2である、及び前記分子ふるいが50、90、125または155~200のシリカ/アルミナ比を有する、前記1.、2.、3.、4.、5.、6.または7.に記載の触媒活性材料のための前駆体または触媒活性材料。
9. 触媒活性材料のための前駆体を製造するための方法であって、次のステップ:
a)アルミナと分子ふるいとを組み合わせて支持材ペーストを形成するステップ、
b)上記支持材ペーストを押出しまたはペレット化して、支持材粒子を形成するステップ、
c)上記支持材粒子を、クエン酸、乳酸またはギ酸などの有機添加剤を含む白金塩の溶液で、インシピエント・ウェットネス含浸法により含浸処理して、触媒前駆体を供するステップ、
d)上記触媒前駆体を、空気中で120℃~200℃の温度で乾燥するステップ、
を含む方法。
10. 前記1.~8.のいずれか一つに記載の前駆体からまたは前記9.に従い製造される前駆体から触媒活性材料を製造する方法であって、前記前駆体を、150℃と350℃との間の温度で水素などの還元剤の流れと接触させる、前記方法。
11. 炭化水素または炭化水素混合物を脱蝋する方法であって、上記炭化水素または炭化水素混合物を、水素の存在下に、脱蝋条件下に、前記9.に従い製造された触媒活性材料または前記1.~8.のいずれか一つに記載の触媒活性材料と接触させることを含む、前記方法。