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特許7284102センサによって人間の少なくとも1つのバイタルパラメータを検出するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】センサによって人間の少なくとも1つのバイタルパラメータを検出するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20230523BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20230523BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20230523BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20230523BHJP
   A61B 5/318 20210101ALI20230523BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20230523BHJP
【FI】
A61B5/0245 A
A61B5/02 310G
A61B5/022 B
A61B5/1455
A61B5/318
A61B5/256 130
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019567594
(86)(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2018063863
(87)【国際公開番号】W WO2018224340
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】102017209767.1
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517119556
【氏名又は名称】ニューロループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キミッヒ,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ボレティウス,ティム
(72)【発明者】
【氏名】プラフタ,デニス
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/069866(WO,A2)
【文献】独国特許出願公開第102005029355(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010015278(DE,A1)
【文献】特開平09-122083(JP,A)
【文献】特開2016-072798(JP,A)
【文献】特開平07-241279(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0038849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/0538
A61B 5/06-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の外耳道の中に少なくとも部分的に脱着可能に装着され、その上にバイタルパラメータの検出のための少なくとも1つのセンサが取り付けられるように適切な形状と寸法で作られる支持体を有する、人間の少なくとも1つのバイタルパラメータの検出用の装置であって、
前記支持体は、中空円筒状に形成され、前記中空円筒の円筒軸に対して半径方向外側に、連続的に開口する中空チャネルを区画化し、前記支持体の装着状態において、前記人間の外耳道と少なくとも部分的に面接触する、中空円筒の外壁領域を有する平面基板であり、
前記平面基板は、巻軸の周りに巻くことによって中空円筒形状に変更可能であり、
前記平面基板は、材料固有の形状保持剛性を有し、巻くことによって中空円筒に変更される前記平面基板は、巻きプロセスの結果として、外部からの機械的な拘束無しで互いにゆるく重なる2つの対向する平面基板部分を有する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
中空円筒状に巻かれた前記平面基板は、外部からの機械的な拘束無しに中空円筒状に巻かれた状態において、前記支持体の装着状態において人間の外耳道の内径よりも大きい第1の円筒外径を有し、前記平面基板が前記外耳道に半径方向外側に向く力を生じさせる装置。
【請求項3】
請求項1又は2のうちの1項に記載の装置であって、
前記平面基板は、少なくとも2つの表面セグメントを有し、それぞれが中間ウェブ領域を介して互いに一体的に接続され、前記表面セグメントのそれぞれが中空円筒状に巻かれる装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、
少なくとも1つの表面セグメントが構成され、巻かれた状態において、その表面セグメントが個別に半径方向に伸長可能なフィンガー部分を有し、それぞれのフィンガー部分が互いに対になって噛み合う装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちの1項に記載の装置であって、
前記平面基板は、少なくとも1つのセンサが一体化され、又は前記少なくとも1つのセンサが貼付される単層又は多層のポリマー層から製造される装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちの1項に記載の装置であって、
前記少なくとも1つのセンサは、くし形電極配置と、電気抵抗センサと、光源と光検出器とを有する光センサシステムと、加速度センサとからなる群から選択される装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちの1項に記載の装置であって、
前記平面基板の内部に一体化される電気的構成要素に接続される、少なくとも1つの露出した金属の表面接触部が、前記外耳道に面する中空円筒の外壁領域上に設けられる装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちの1項に記載の装置であって、
ワイヤレス又は有線のいずれかで、信号と電力を外部の端末装置とやり取りするための信号と電力の伝送ユニットが前記支持体に取り付けられている装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちの1項に記載の装置であって、
前記支持体は、前記支持体の装着状態において、人間の外耳道の中で、少なくとも部分的に、前記外耳道を通して鼓膜に対して自由なアクセスがあるように形成されかつ寸法が決められている装置。
【請求項10】
請求項に記載の装置であって、
前記くし形電極配置が構造化表面セグメントに一体化されている装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちの1項に記載の装置であって、
少なくとも1つのアクチュエータが前記支持体に取り付けられている装置。
【請求項12】
心拍数、ECG信号、体温、血中酸素飽和度、COセンサ、pH値、血糖、皮膚電気抵抗、血圧のうち少なくとも1つの人間のバイタルパラメータの検出用のための請求項1乃至11のうちの1項に記載の装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサによって人間の少なくとも1つのバイタルパラメータを検出するための装置に関し、人間の外耳道の中に少なくとも部分的に脱着可能に装着するために適切な形状と寸法で作られ、バイタルパラメータを検出するために少なくとも1つのセンサが取り付けられる支持体を備える。
【背景技術】
【0002】
通例の装置は小型軽量ユニットであり、一方では、人間に対していかなる制約又は妨げを引き起こさず、他方では、外見上、第三者にほとんど見えないか又は見えないという条件下で、感覚バイタルパラメータの記録用に耳に取り付けるように設計されている。耳の上に又は耳の中に取り付けられる公知技術のセンサシステムは、血圧、血中酸素飽和度、ECG信号、心拍数などのバイタルパラメータをセンサによって記録し、さらなるデータ評価のために、それらを無線又は有線でデータ記録・検出ユニットに伝送することができる。
【0003】
特許文献1において、ロバストな光電子心血管モニタリング装置が開示されている。それは、耳の中に設置可能であり、耳にしっかり取り付ける目的のために、人間工学的に適合したフック部を有し、そのフック部は、耳介の後ろに取り付けられ、そして、外耳道の中に少なくとも部分的に開口しているハウジング部に接続され、これにより、機械的及び音響的に外耳道を閉鎖する。そのフック部の中に一体化されているモーションセンサに加えて、少なくとも1つの発光器が設けられており、その発光は耳介の後部上に放射される。耳介を通して透過した光成分は、そのハウジング部に取り付けられた受光器によって検出され、次に、その検出された光信号が有線又は無線のいずれかで伝送される外部の評価ユニットで行われる、フォトプレスチモグラフィ評価を受ける。任意に、心電信号の取得用の付加的な信号電極と受信電極をそのフック部及び/又はそのハウジング部上に設けることができる。
【0004】
耳に取り付けられる公知技術のセンサシステムは、装着快適性と、運動の自由度と、視覚的な目立ちにくさとに関する要件にほぼ適合しているけれども、外耳道に開口しているプラグ状のハウジング部は、防音しかつ密閉するように外耳道を閉鎖する結果、当該耳の音響知覚は少なくとも著しく損なわれる。
【0005】
特許文献2において、円筒形のセンサ支持体が開示されており、それは、外耳道の中に挿入するように適切に考案され、多数のセンサ、例えば、血圧測定用のひずみセンサ、酸素センサ等を有する。
【0006】
特許文献3において、人間の外耳道の中に挿入するための漏斗状のホルダが記載されており、補聴器への接続のために、そのホルダの中に音響伝達チャネルを接続することができる。
【0007】
上述の2つの事例のそれぞれにおいて、外耳道への自由なアクセスがない。それどころか、後者は、公知技術の2つの装置によって、いずれの場合にも、音響的に閉鎖されている。
【0008】
特許文献4において、上記のモニタリング装置の変形が記載されている。環境音を伝送する目的のために、例えばMP3プレーヤ又はマイクロホンの形で、例えば、音響信号源に接続されるスピーカをそのハウジング部の中に一体化することにより、外耳道の中に突出しているそのハウジング部の結果としての音響デカップリングの状況をこの目的のために用い、かつ/又は、それによって防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許第2116138号明細書
【文献】米国特許第6454718号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1594340号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0233051号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、人間の外耳道の中に少なくとも部分的に脱着可能に装着され、その上にバイタルパラメータの検出のための少なくとも1つのセンサが取り付けられるように、装着快適性をさらに向上する方法で、適切な形状と寸法で作られる支持体を有する、人間の少なくとも1つのバイタルパラメータの感覚検出用の装置を開発する目的に基づいている。特に、環境音を伝送又は増幅するどんなシステムも不要にすることができるように、外耳道は音響的に閉鎖されてはならない。同様に、視覚的な目立ちにくさを維持又は向上しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の根底にある目的の解決手段は請求項1に明示されている。発明概念をさらに有利に展開する特徴は、従属請求項の主題であり、そして、以下の記載において、特に実施形態の例を参照することによっても、理解できよう。
【0012】
解決手段に従い、請求項1のプリアンブルの特徴に従い人間の少なくとも1つのバイタルパラメータの感覚検出用の装置が考案されている。前記装置には、バイタルパラメータの検出用の少なくとも1つのセンサがその上又はその中に搭載されている支持体が平面基板状に構成されている。前記平面基板は、中空円筒状に形成され、前記中空円筒の円筒軸に対し半径方向外側に、連続的に開口する中空チャネルを区画し、又、前記支持体が人間の外耳道に少なくとも部分的に装着されたときに、前記外耳道の内壁の表面に少なくとも部分的に接触する中空円筒の外壁領域を有する。
【0013】
挿入状態で前記外耳道の内壁に密着する、薄肉の中空円筒状の支持体の形状により、前記外耳道への自由なアクセスが基本的に影響を受けない状態に留まる。このようにして、前記外耳道の中への前記中空円筒支持体の挿入期間中、当事者の音響知覚は影響を受けない。そして、急激な圧力変化が発生した場合でも圧力補正のための自然な刺激は変化しない。
【0014】
好適な実施形態において、前記支持体は、皮膚に優しい平面基板、好適には、単層又は多層のフィルム状のポリマー材料から成り、巻き軸の周りに巻くことによって中空円筒の形状に変更可能である。フィルム状の平面基板は、通例、10μmから数百μmの基板厚を有し、巻かれたとき、中空円筒内径が、通例4mmと7mmの間の、人間の外耳道の直径より無視できるほどに小さい中空円筒を囲む。前記巻き軸の周りに前記平面基板を多重巻きした場合においても、又、この動作に伴い多層フィルムが重なった場合においても、これにより形成される中空円筒の肉厚は、人間の外耳道の寸法に対して無視できるほどであり、そのため、外耳道に本解決手段の装置の使用に伴う音響制約は全くないか又は無視できるほどにごく軽微であり、さらに、外耳道の通気はほとんど変化を受けない。
【0015】
前記平面基板は、好適には、巻かれていない状態で正方形又は長方形であり、上面と下面を有する。図面との関連において説明されるように、平面基板のその他の形状も考えることができる。特定の測定要件のプロファイルによっては、人間の生理学的バイタルパラメータを記録するタスクを有する、一定の数及び様々な種類のセンサを前記フィルム状の平面基板の中に一体化する又はその上に貼付することができる。
【0016】
それ自体公知である薄膜技術は、好適に、この目的に適しており、その技術により、マイクロシステムのセンサを前記平面基板の中に一体化する、又は、その上に貼付することが可能である。好適に、多層で、フィルム状のポリマー材料で作られる前記平面基板の柔軟性と巻き性能は、前記センサによって、全く損なわれないか、又は、わずかに損なわれるのみであるため、バイタルセンサが実装、装着されている前記平面基板を続けて巻いて中空円筒にすることが可能である。
【0017】
巻きプロセスは、好適には、前記正方形又は長方形の平面基板の側縁に平行に行われるので、巻くことにより形成される前記平面基板は、中空円筒の形状において2つの対向する平面基板部分を有し、それらは、外部の機械的力無しに、巻きプロセスの結果として互いに緩く重なる。相互の重なりの程度は、基本的には任意に選択することができる。既に述べたように、巻くことによって前記対向する平面基板部分がほんのわずかのみ重なるように、単層の中空円筒壁を形成することにより、前記平面基板を巻いた状態に変更することは、外耳道の障害が最小限になるという理由で有利である。
【0018】
それと同時に、巻き軸の周りの複数のスパイラル巻きによって、前記平面基板を多層の中空円筒壁に変更することが可能である。
【0019】
好適にポリイミドから成り、センサのための支持体としての役割を果たすシート状の平面基板が、巻いた後に自発的に元の形状に戻ることを防止するために、中空円筒に巻かれる前記平面基板は、熱処理を受ける。熱処理を受けて、前記平面基板は、材料固有の形状保持剛性を得て長期間安定して中空円筒形状を保持する。
【0020】
巻きプロセスにより前記平面基板を形成する代わりとして、前記平面基板が中空円筒に巻かれた形状で製造される鋳造プロセスによって前記中空円筒形状を形成することも可能である。
【0021】
金型鋳造プロセスによって、圧縮性材料により、例えば、ポリマーフォームにより、閉じた中空円筒の形態で、前記支持体を製造することも可能である。この場合、前記支持体の中空円筒形状は、外部からの機械的な拘束無しに、人間の外耳道内部に少なくとも部分的に装着されたとき、前記支持体が有する第2の円筒外径より大きい第1の円筒外径を有する。そこで、前記支持体は、材料固有の復元力により外耳道上に対して半径方向外側に向く力を及ぼし、その力が前記支持体を外耳道内部でしっかり安定した挿入状態にする。
【0022】
上述のあらゆる可能な実施形態において、中空円筒に形成される前記平面基板は、外耳道の通気を保つ中空円筒状の通路を備え、これにより、環境に対して音響的に完全に結合される。これに加えて、このようにして、自然な圧力の均一化と強制的な圧力の均一化が依然として可能である。
【0023】
バイタルパラメータを取得する目的のために、前記平面基板の中に一体化するか又はその上に貼付することに対して、多数の様々なセンサが利用可能である。従って、例えば、心拍数センサは、容量性センサ部材を利用して、例えば、前記平面基板内部に一体化されるくし形電極構造を設計して実装することができる。体温を測定する場合には、電気抵抗変化に基づく温度センサ、例えば、PT100がこの目的に適している。血中酸素飽和度の検出のためには、適切に選択される光源と適切に選択される光検出器が適しており、それらは、発光及び検出の目的のために、外耳道に面する、前記支持体又は平面基板の上側に配置され、フォトプレスチモグラフィに基づいて評価用の測定信号を生成することができる。
【0024】
外耳道に面する前記平面基板の表面に取り付けられた電極接点も、内耳壁との皮膚接触を介して心電図信号を受信することに適しており、心電図(ECG)を生成する。加速度センサ等のさらなるセンサも前記平面基板に一体化することができる。
【0025】
実施形態のさらなる変形において、少なくとも1つのアクチュエータが、好適には、音響発生アクチュエータの形で、前記支持体に搭載される。このようにして、耳鳴りの形態によっては、人工的に生成されたノイズを特定のノイズスペクトルと音響重畳することによって音響心理学的背景の中に後退させることができるものもある。そのようなノイズは、好適には、前記中空円筒の内壁に面する音響放射面を有する、前記平面基板の中に一体化される「小型スピーカ」を利用して実装することが可能である。前記平面基板の中に一体化されるそのようなアクチュエータは、前記アクチュエータが耳鳴りに対して継続して「作動している」にもかかわらず、外部の音響が妨げられずに耳に届くという利点を有するであろう。そのようなアクチュエータ又は音響トランスデューサは、好適には、小型のセラミック部材、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛の方式がとられる。
【0026】
前記支持体の中に一体化されるか、又は、その上に貼付される全てのセンサ及びあらゆるアクチュエータは、信号処理と信号評価のために必要な電力源並びに評価用エレクトロニクスを含む電子モジュールに好適に有線で接続される。前記電子モジュールは、前記支持体とは分離したユニットとして、耳に対して人間工学的に適合した取り付け台を利用して、耳介の後ろに目立ちにくいように好適に固定することができる。
【0027】
代わりに又は組み合わせにより、電力伝送及び信号伝送に適した受信機と送信機のユニットを、例えば、RFID技術に基づいて、中空円筒支持体の中に一体化することが可能である。そのため、前記支持体の中、又はその上に装着されている全てのセンサをワイヤレスで動作させることが可能である。このためには、前記支持体に一体化される付加的なマイクロエレクトロニクスユニットが必要になる。前記マイクロエレクトロニクスユニットに対してセンサへの供給と制御のために外部の制御ユニットからの電力と制御信号が伝送され、又、前記マイクロエレクトロニクスユニットを介して、記録された、感覚のバイタルパラメータが、さらなる評価のために前記制御ユニットに対してセンサ信号の形で伝送される。そのようなワイヤレス信号伝送技術を用いることにより、必要とされるものは、外耳道内部に確実に固定され、さもなければ、第三者に対して視覚的に知覚できない、中空円筒形状を有するセンサ支持体である。
【0028】
特に好適な実施形態において、外部の制御ユニットの機能は、人が携帯している市販のスマートフォンによって実行することができる。前記スマートフォンは、前記支持体上に一体化されているマイクロエレクトロニクスユニットに対するワイヤレスでの電力伝送と信号伝送に必要な全てのハードウェア部品を既に有している。バイタルパラメータの記録と伝送の目的のために、外耳道に装着される中空円筒のセンサ支持体と通信するための前記スマートフォンの技術的能力は、当該目的のために設計されたアプリケーションプログラム形式のプログラムをインストールすることにより遂行することができる。
【0029】
前記解決手段の装置は、以下の人間のバイタルパラメータ、すなわち、心拍数と、ECG信号と、体温と、血中酸素飽和度と、CO血中飽和度と、血糖と、pHと、皮膚電気抵抗と、血圧とを記録することに特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
一般的な発明概念を限定することなく、実施形態の例によって例示的に、本発明を以下に図面を参照して説明する。
図1a】バイタルパラメータのセンサを有する平坦な平面基板の概略図を示す。
図1b】中空円筒の形に巻かれた平面基板の図を示す。
図2】外耳道に装着された中空円筒形のセンサ支持体の概略図を示す。
図3】中空円筒としての円筒形のセンサ支持体の一体型の実施形態を示す。
図4a】構造化された平面基板のセンサ支持体を示す。
図4b】構造化された平面基板のセンサ支持体を示す。
図4c】構造化された平面基板のセンサ支持体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1aは、概略的に描かれた平面状の支持体1と、通例、数十μmから数百μmまでの層厚を有する、単層又は多層のポリマー層状の長方形の平面基板2との上面図を遠近法によって示している。多数の様々なバイタルパラメータのセンサが平面基板2の中に一体化又はその上に貼付されている。以下のバイタルパラメータのセンサ3乃至8を任意の数及び任意の配置で平面基板2上又はその中に搭載することが可能である。単一のバイタルパラメータのセンサだけを平面基板2上又はその中に設けることも可能である。適切なバイタルパラメータのセンサとしては、心拍数を記録するための容量性くし形構造3と、体温を記録するための抵抗型温度センサ4、好適にはPT100温度センサ又はPT1000温度センサと、フォトプレスチモグラフィに基づき血中酸素飽和度又はCO血中飽和度を測定するための、LEDフォトダイオード5及び光検出器6と、平面基板の表面に取り付けられた接触電極型のECGセンサ7と、加速度センサ8と、その他の適切なマイクロエレクトロニクスセンサとがあり、それらの全ては、薄膜技術を用いて、好適に、平面基板2上に貼付され又はその中に一体化されている。平面基板2上にある全てのバイタルパラメータのセンサは、導体トラック(図示せず)を経由してマイクロエレクトロニクスユニット9に電気的に接続されている。電気伝導トラックは、バイタルパラメータのセンサに電力と制御信号の両方を供給し、そして、記録されたセンサ信号は、電気伝導トラックを介して、さらなる処理のためにマイクロエレクトロニクスユニット9に入力される。実施形態の一例において、マイクロエレクトロニクスユニット9は、ケーブルによって、電力供給と信号供給の両方を提供する働きをする外部の制御ユニット10にケーブルによって接続されている。
【0032】
特に好適な実施形態において、制御ユニット10とマイクロエレクトロニクス9との間の信号伝送と電力伝送は、RFID技術、又は類似する電力と信号のワイヤレス伝送技術に基づいて行われるので、制御ユニット10は、支持体1とは分離されたモバイルユニットとして取り扱うことができる。代わりに、有線による解決手段も利用することができる。
【0033】
図1bは、中空円筒に巻かれた形の平面基板2を示し、平面基板2の対向する側縁領域11、12は、わずかにオーバーラップしている(図1bの左側の図の重なりU参照)。代わりに、図1bの右側に図示するように、対向する側縁領域11、12が相互に大きな領域の重なりUを有する、平面基板2の巻き状態を形成することが可能である。
【0034】
図1bに示す中空円筒形状に従い、ポリマーからなるフィルム状の平面基板2を巻いた後、巻かれた平面基板2が、例えば、アニーリング処理により、平面基板2が材料固有の形状保持剛性を増大するように処理されることによって、中空形状が長期的に安定する。
【0035】
中空円筒に巻かれた平面基板2は、人間の外耳道Gの内径d2よりわずかに大きい円筒直径d1を有する(センサ支持体1が挿入される外耳道14を有する人間の耳介13を概略で示す図2も参照のこと)。内径d2の方が小さいために、中空円筒のセンサ支持体1は、外耳道14の内部の着座位置でいくらか半径方向に押し縮められ、外耳道14の内耳壁に半径方向に作用する接触力を生成する。これにより、センサ支持体1は、外耳道14の中でしっかりと脱着可能に固定される。
【0036】
これに加えて、機能するために外耳道の内壁との皮膚接触又は少なくとも直接的光アクセスが必要な全てのバイタルパラメータのセンサは、中空円筒形状の支持体1の半径方向外側を向く上側に配置されている。これは、特に、ECG接触面7と、酸素飽和度センサ5、6の発光ダイオード5及び光検出器6とに関係する。
【0037】
これに対して、体温センサ4と心拍数センサ3とは、外部から見えない状態で、平面基板2の内部に一体化されている。単に個別のセンサを図示するという理由のために、図1aにおいて、センサ3乃至8の全ては、平面基板2の表面上に見ることができる。
【0038】
図2は、人間の外耳道14内部の中空円筒のセンサ支持体1の状態を示している。ここで、半径方向外側の円筒表面は、面接触状態で、外耳道14の内壁にばね荷重を印加して当接している。マイクロエレクトロニクス9に、例えば、ワイヤ接続により接続されている制御ユニット10は、小型化することができ、耳介13の後ろに目立ちにくく固定することができる。代わりに、ワイヤレス技術を用いてマイクロエレクトロニクス9と通信するように、制御ユニット10を、外部ユニットとして、例えば、スマートフォン方式で設計することが可能である。
【0039】
図3に示す中空円筒のセンサ支持体1の実施形態は、圧縮可能な材料、例えば、皮膚に優しいポリマーフォームからなる中空円筒の一体化設計を表す。それ自体公知である耳栓を挿入する場合と同様にして、センサを備える支持体1も、当該方法で半径方向に押し縮めて人間の外耳道14の中に挿入することができる。図3の中空円筒の支持体1は、鋳造プロセスにより製造される。
【0040】
外耳道14内部の、人間のバイタルパラメータの感覚記録のための装置に関するあらゆるソリューション指向の実施形態において、外耳道14は、支持体1の中空円筒設計により常に通気されているので、耳の中で装置を永続的に使用しても、衛生上の問題も聴覚制限も引き起こすことはない。
【0041】
外耳道の内壁にばね荷重を印加する中空円筒のセンサ支持体1は、中空直円筒として、中空円筒の軸方向延長部全体にわたって一定の外径を有する。外耳道の内部の自然な輪郭は、直円筒形状の外表面とは必ずしも一致しないので、中空円筒のセンサ支持体は、外耳道と均一に面接触しないことがある。このため、センサ支持体と外耳道の内壁との間で部分的に接触するのみであるため、上記の容量性くし形構造を用いて測定可能な外耳道のパルス波関連の変形を引き起こし、完全には検出されない恐れがある。
【0042】
これを避けるために、外耳道の内壁に可能な限り密着することが可能な個別の中空形状が得られるように、平面基板を巻くことによって平面基板を形成又は構造化することが適切である。
【0043】
これに関連して、図4aは、左側に平面的な描写で、又、右側に巻かれた形で、平面基板2を図示する。平坦な平面基板2は、環状セグメントの形状を有し、それが巻かれた状態では、外耳道の中に挿入するために漏斗形状となる。センサ支持体1に実装されているセンサの表示は省略されている。
【0044】
図4bは、中間ウェブ領域16を介して互いに一体的に接続されている表面セグメント15aと、15bと、15cとを有する、構造化平面基板2の別の実施形態の例を示す。表面セグメント15aと、15bと、15cとは、形状と大きさが互いに異なってもよい。長方形平面の表面セグメント15aと、15bとは対照的に、表面セグメント15cは、付加的に構造化され、巻かれた状態において、半径方向に伸長可能な個別のフィンガー部分17.1、17.2、17.3、17.4、17.5等を有し、それに沿ってくし形電極3が容量性の心拍数測定のために挿入されている。表面セグメント15cの断続するフィンガー構造により、中空円筒の壁と比べて、個別のフィンガー部が外耳道の内壁の個別の形状と個別に接触することが可能となる。
【0045】
中空円筒形状を永続的に保つために、巻かれた形に平坦な平面基板を変形する巻き処理はアニーリング処理と関連して行われる。
【0046】
個別の状況によって、中間ウェブ領域16は、幅と長さを適切に選択することができる。センサ、例えば、ECG接触面7、酸素飽和度センサ5、6の発光ダイオード5及び光検出器6、体温センサ4、並びに制御マイクロエレクトロニクス9の装着と配置も、必要に応じて行うことができる。
【0047】
センサ支持体1は、この場合においても、上記で既に述べたように、制御ユニット10にワイヤレスで又は有線で接続することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…支持体
2…平面基板
3…心拍数センサ
4…体温センサ
5、6…酸素飽和度センサ又はCOセンサ
7…ECGセンサ
8…その他のセンサ
9…マイクロエレクトロニクスユニット
10…制御ユニット
11…側縁領域
12…側縁領域
13…耳介
14…外耳道
15a…表面セグメント
15b…表面セグメント
15c…表面セグメント
16…中間ウェブ領域
17.1・・・…フィンガー部分
17.5…フィンガー部分のオーバーラップ
d1…外力がない状態での中空円筒直径
d2…外耳道の直径
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図4c