(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法、及び毛包を再生するための組成物の評価方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20230523BHJP
C12Q 1/6841 20180101ALI20230523BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230523BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20230523BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230523BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6841 Z
C12Q1/04
C12N5/071
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2020506526
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2019009798
(87)【国際公開番号】W WO2019176881
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2018044262
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】石松 弓子
(72)【発明者】
【氏名】相馬 勤
(72)【発明者】
【氏名】岸本 治郎
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/200025(WO,A1)
【文献】特表2005-528916(JP,A)
【文献】J. Invest. Dermatol.,2003年,Vol.121, No.6,pp.1267-1275
【文献】再生医療,2016年,第15巻/増刊号,p.275 (0-51-4)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GREM2遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
【請求項2】
さらに、ASPN遺伝子、MMP11遺伝子、PTGER3遺伝子、RBP4遺伝子、TLE4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
GREM2遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
【請求項6】
さらに、ASPN遺伝子、MMP11遺伝子、PTGER3遺伝子、RBP4遺伝子、TLE4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法に関する。また、本発明は、毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は皮膚に存在する毛包によって産生される。毛包とは、毛を取り囲む組織層であり、外胚葉由来の毛母(毛母細胞)、内毛根鞘、外毛根鞘や、中胚葉由来の真皮毛根鞘、毛乳頭などから構成されている。毛乳頭を取り囲む毛母細胞が、毛乳頭から供給される栄養やタンパク質によって誘導されて分裂を繰り返し、角質化することによって毛を形成する。
【0003】
毛髪の発育に問題が生じることで薄毛・脱毛症が生じる。薄毛・脱毛症には、壮年性脱毛症、円形脱毛症、休止期脱毛症などがあり、最も頻度が多いのが壮年性脱毛症である。壮年性脱毛症は、男性において、主に男性ホルモンの影響によって引き起こされるものであり、男性型脱毛症とも呼ばれる。毛は、成長期、退行期及び休止期からなるヘアサイクルを繰り返しながら生え替わる。男性型脱毛症は、このヘアサイクルの中でも成長期が短くなり、細く短い毛髪の割合が増えることで引き起こされる症状である。
【0004】
現在、壮年性脱毛症の治療として、外用剤のミノキシジルや、経口薬のフィナステリドが主に用いられている。これらの治療法は、いずれも有効性や安全性が確認されているが、必ずしも全ての壮年性脱毛症に有効というわけではない。
【0005】
その他、壮年性脱毛症の治療として、自家植毛術が実施されている。自家植毛術とは、側頭部や後頭部から採取した毛根を含む毛髪を、自己の脱毛部に移植する術式である。しかしながら、当該術式は、自己の毛髪を別の場所へ植え替える術式であるため、毛髪の総数を増やすものではない。
【0006】
近年、様々な疾患に対する再生医療技術が開発されており、毛髪再生分野においても新たな技術が研究開発されている。例えば、毛包の中でも、毛包の再外層に位置する真皮毛根鞘、特に毛球部の底部に位置する毛球部毛根鞘(dermal sheath cup cell:DSC)には高い毛包誘導能力を有することが示唆されており、DSCCを移植した実験では発毛が認められたことが報告されている(非特許文献1、2)。また、DSCCが、発毛において重要な役割を有する毛乳頭(Dermal papilla:DP)細胞の前駆細胞であることも示されており、DSCCに注目が集まっている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Jahoda CA,,et al.,Induction of hair growth by implantation of cultured dermal papilla cells.Nature 1984;311:560-562.
【文献】McElwee KJ,,et al.,Cultured peribulbar dermal sheath cells can induce hair follicle development and contribute to the dermal sheath and dermal papilla.J.Invest.Dermatol.2003;121:1267-1275.
【文献】Rahmani W.,et al.,Hair follicle dermal stem cells regenerate the dermal sheath,repopulate the dermal papilla,and modulate hair type.Dev.Cell.2014 Dec.8;31(5):543-58.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
毛髪再生の分野において毛包由来の細胞群を用いた治療法が開発されつつあるが、毛包の誘導能力が有する毛球部毛根鞘細胞は、現在のところ目視にて毛球部周辺底部の細胞を採取するしか方法がなく、特異的なマーカーは知られていなかった。また、採取された細胞に毛球部毛根鞘細胞以外の細胞がどれくらい混入しているかを評価することができなかった。また、採取した毛球部毛根鞘細胞をインビトロで培養後、その性質を維持した細胞がどのくらい残存しているかを評価することができなかった。
【0009】
したがって、本発明は、毛包由来の細胞群、特に毛球部毛根鞘細胞において特異的に発現するマーカー遺伝子を明らかにするとともに、当該遺伝子の発現レベルを指標とした、毛球部毛根鞘細胞を同定する方法を提供することを目的とする。また、毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意研究を行った結果、毛球部毛根鞘細胞において発現する遺伝子を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
【0011】
[1] GREM2遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
[2] さらに、ASPN遺伝子、MMP11遺伝子、PTGER3遺伝子、RBP4遺伝子、TLE4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[3] 前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、[3]に記載の方法。
[5] 毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
GREM2遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
[6] さらに、ASPN遺伝子、MMP11遺伝子、PTGER3遺伝子、RBP4遺伝子、TLE4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、[5]に記載の方法。
[7] 前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、[5]又は[6]に記載の方法。
[8] 前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、[7]に記載の方法。
【0012】
[9] ASPN遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
[10] さらに、GREM2遺伝子、MMP11遺伝子、PTGER3遺伝子、RBP4遺伝子、TLE4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、[9]に記載の方法。
[11] 前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、[9]又は[10]に記載の方法。
[12] 前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、[11]に記載の方法。
[13] 毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
ASPN遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
[14] さらに、GREM2遺伝子、MMP11遺伝子、PTGER3遺伝子、RBP4遺伝子、TLE4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、[13]に記載の方法。
[15] 前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、[13]又は[14]に記載の方法。
[16] 前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、[15]に記載の方法。
【0013】
[17] MMP11遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
[18] さらに、GREM2遺伝子、ASPN遺伝子、PTGER3遺伝子、RBP4遺伝子、TLE4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、[17]に記載の方法。
[19] 前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、[17]又は[18]に記載の方法。
[20] 前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、[19]に記載の方法。
[21] 毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
MMP11遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
[22] さらに、GREM2遺伝子、ASPN遺伝子、PTGER3遺伝子、RBP4遺伝子、TLE4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、[21]に記載の方法。
[23] 前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、[21]又は[22]に記載の方法。
[24] 前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、[23]に記載の方法。
【0014】
[25] PTGER3遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
[26] さらに、GREM2遺伝子、ASPN遺伝子、MMP11遺伝子、RBP4遺伝子、TLE4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、[25]に記載の方法。
[27] 前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、[25]又は[26]に記載の方法。
[28] 前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、[27]に記載の方法。
[29] 毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
PTGER3遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
[30] さらに、GREM2遺伝子、ASPN遺伝子、MMP11遺伝子、RBP4遺伝子、TLE4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、[29]に記載の方法。
[31] 前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、[29]又は[30]に記載の方法。
[32] 前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、[31]に記載の方法。
【0015】
[33] RBP4遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
[34] さらに、GREM2遺伝子、ASPN遺伝子、MMP11遺伝子、PTGER3遺伝子、TLE4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、[33]に記載の方法。
[35] 前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、[33]又は[34]に記載の方法。
[36] 前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、[35]に記載の方法。
[37] 毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
RBP4遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
[38] さらに、GREM2遺伝子、ASPN遺伝子、MMP11遺伝子、PTGER3遺伝子、TLE4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、[37]に記載の方法。
[39] 前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、[37]又は[38]に記載の方法。
[40] 前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、[39]に記載の方法。
【0016】
[41] TLE4遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
[42] さらに、GREM2遺伝子、ASPN遺伝子、MMP11遺伝子、PTGER3遺伝子、RBP4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、[41]に記載の方法。
[43] 前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、[41]又は[42]に記載の方法。
[44] 前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、[43]に記載の方法。
[45] 毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
TLE4遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
[46] さらに、GREM2遺伝子、ASPN遺伝子、MMP11遺伝子、PTGER3遺伝子、RBP4遺伝子、GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、[45]に記載の方法。
[47] 前記毛包由来の細胞群が、インビトロで培養された毛包由来の細胞群である、[45]又は[46]に記載の方法。
[48] 前記毛包由来の細胞群が、1回以上継代された毛包由来の細胞群である、[47]に記載の方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、毛包由来の細胞群に含まれる毛球部毛根鞘細胞を識別可能となり、毛包由来の細胞群を含有する毛包を再生するための組成物の品質を評価することが可能となる。また、単離した毛球部毛根鞘細胞をインビトロで培養して増殖させた後においても、毛球部毛根鞘細胞が残存しているかどうか評価することが可能となり、毛包誘導能が高い毛包を再生するための組成物を選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】毛包(Fair follicle:HF)サブユニットを示す図である。(a)HF全体。(b)切開された上部真皮毛根鞘(Upper Dermal Sheath:UDS)。(c)切開され、反転された、分離前の、毛球部毛根鞘(Dermal Sheath Cup:DSC)及び毛乳頭(Dermal Papilla:DP)。スケールバー=200μm。
【
図2】主成分分析後のマイクロアレイ結果の近似性を示すグラフである。異なる視点からの三次元的視点。X軸、主成分(PC)1(32.34%の分散補足);Y軸、PC2(22.83%の分散補足);Z軸、PC3(20.43%の分散補足)。黒のシンボル:個人(ID)1;白のシンボル:ID2;斜線のシンボル:ID3。三角:DSC、四角:DP、丸:UDS。
【
図3】毛球部毛根鞘(DSC)において異なって発現する遺伝子。正規化したDSC識別遺伝子の発現レベルを、3名のそれぞれにおいて、毛乳頭(DP)及び上部真皮毛根鞘(UDS)と比較した。
【
図4】定量的PCRによって解析した、毛球部毛根鞘(DSC)及び毛乳頭(DP)におけるGREM2の発現レベルを示すグラフである。GAPDHの発現量を100%とした時の相対的な値を示す。
【
図5】ヒト毛包におけるGREM2の発現の発現を示す図である。in situハイブリダイゼーションの結果を示す。(a)GREM2プローブ、(b)(a)の拡大図、(c)プローブ無し。赤:in situシグナル、青:Hechst33342による核染色。スケールバー、(a):100μm、(b)及び(c):50μm。
【
図6】ヒト毛包におけるGREM2及びGREM1の発現を示す図である。in situハイブリダイゼーションの結果を示す。(a)GREM2プローブ、(b)GREM1プローブ、(c)プローブ無し。上段:in situシグナルのみ、中段:in situシグナル及び核、下段:DSC部分の拡大図。赤:in situシグナル、青:Hechst33342による核染色。スケールバー:100μm。
【
図7】DSC識別遺伝子の調節制御及びその細胞内局在を示す推定図である。
【
図8】毛球部毛根鞘(DSC)の培養前後におけるDSC識別遺伝子の発現量の変化を示す図である。インタクトなDSC、及び約30日間インビトロで培養したDSCからトータルRNAを回収し、定量的PCRによって解析した。GAPDHの発現量で正規化し、インタクトなDSCの遺伝子発現量を100%とした時の、培養後のDSCの相対的な遺伝子発現量を示す。
【
図9】(a)毛球部毛根鞘(DSC)、毛乳頭(DP)、上部真皮毛根鞘(UDS)を培養後1継代目の各細胞におけるGREM2の発現レベルを定量的PCRによって解析したグラフである。DSC細胞でのGAPDHの発現量に対するGREM2の発現量を100%とした時の相対的な値の2回の実験の平均値を示す。(b)毛球部毛根鞘(DSC)、毛乳頭(DP)、上部真皮毛根鞘(UDS)を培養後1継代目の各細胞におけるコロニー形成能をDSC細胞の値を1とした時の比で示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに限定されない。
【0020】
毛の皮膚内部最深部の膨らんだ部分を毛球部(hair bulb)といい、毛球部の中央部にある間葉系細胞からなる部分を毛乳頭(dermal papilla)という。毛乳頭には毛細血管や神経が入り込んでいて、食物からの栄養や酸素を取り入れ、毛の発生や成長をつかさどっている。毛乳頭に接したところに毛母細胞(hair matrix cell)があり、毛はこの部位で産生される。すなわち毛母細胞は、毛乳頭に入り込んでいる毛細血管から栄養や酸素を取り込み、分裂を繰り返すことにより毛が形成される。
【0021】
本明細書において、「毛包(Hair Follicle:HF)」とは、上皮系細胞であるの毛母(毛母細胞)、内毛根鞘、外毛根鞘や、間葉系細胞であるの真皮毛根鞘、毛乳頭、及びメラノサイトなどを含む、毛を取り囲む組織層をいう。本発明において使用される組織又は細胞は、いずれの動物由来であってもよいが、脊椎動物由来が好ましく、哺乳動物由来がより好ましく、ヒト由来であることが最も好ましい。
【0022】
本明細書において、「真皮毛根鞘(Dermal Sheath:DS)」とは、毛包の最外層を包む一層又は数層の真皮性細胞層(ビメンチン陽性)よりなる組織であって、平滑筋型αアクチン(α-SMA)陽性細胞を含む。真皮毛根鞘は、毛球部の最下端において毛乳頭と連続している。後述するように、本明細書において、真皮毛根鞘には、毛球部毛根鞘と上部真皮毛根層が含まれる。
【0023】
本明細書において、「毛球部毛根鞘(dermal sheath cup:DSC)」とは、真皮毛根鞘の一部であり、毛球部の底部に位置する組織をいう(
図1参照)。「毛球部毛根鞘細胞(dermal sheath cup cell:DSCC)」とは、毛球部毛根鞘を構成する細胞である。毛球部毛根鞘細胞は、毛乳頭細胞の前駆細胞であることが知られており、毛球部毛根鞘細胞を皮膚に移植することにより、移植部位において毛包が誘導されることが知られている。すなわち、毛包由来の細胞群又は毛包由来の細胞群を含有する毛包を再生するための組成物において、毛球部毛根鞘細胞の割合が高い及び/又はその活性が高い毛包由来の細胞群又は組成物を選択することができれば、より毛包誘導能が高い毛包由来の細胞群又は毛包由来の細胞群を含有する毛包を再生するための組成物を提供することが可能となる。
【0024】
本明細書において、「上部真皮毛根鞘(Upper Dermal Sheath:UDS)」とは、真皮毛根鞘のうち、上記の毛球部毛根鞘の部分を除いた組織をいう。
【0025】
本明細書において、「毛包由来の細胞群」とは、上記の毛包を構成する細胞を含む細胞群をいう。また、本明細書において、「毛包由来の細胞群を含む毛包を再生するための組成物」とは、毛包由来の細胞群の他、例えば、生体適合可能な物質を含むものである。生体適合可能な物質とは、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、細胞培養培地、生体適合性ハイドロゲル(キトサンゲル、コラーゲンゲル、ゼラチン、ペプチドゲル、ラミニンゲル及びフィブリンゲルなど)等であってもよく、これらに限定されない。
【0026】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、毛球部毛根鞘細胞(DSCC)において特異的に発現する遺伝子を発見した。すなわち、本発明において用いられる、毛球部毛根鞘細胞を識別するために用いられる遺伝子又は識別マーカーは、以下の表1を含む:
【表1】
【0027】
なお、本発明において用いられる表1及び表2(後述)に記載の遺伝子の具体的な配列は、GeneBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から取得することができる。本発明に用いられる遺伝子の具体的な配列は、表1及び表2に記載のアクセッション番号によって取得される配列に限定されるものではなく、例えば、上記表1又は表2によって特定されるヌクレオチド配列と70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上同一の配列や、それらのスプライシング変異体なども含まれる。また、その遺伝子の由来は、いずれの動物由来であってもよいが、脊椎動物由来が好ましく、哺乳動物由来がより好ましく、ヒト由来であることが最も好ましい。
【0028】
一実施態様において、本発明は、以下の態様を含む。
GREM2遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
【0029】
また、一実施態様において、本発明は、以下の態様を含む。
ASPN遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
【0030】
また、一実施態様において、本発明は、以下の態様を含む。
MMP11遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
【0031】
また、一実施態様において、本発明は、以下の態様を含む。
PTGER3遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
【0032】
また、一実施態様において、本発明は、以下の態様を含む。
RBP4遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
【0033】
また、一実施態様において、本発明は、以下の態様を含む。
TLE4遺伝子の発現レベルを指標とすることを特徴とする、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の同定方法。
【0034】
毛包由来の細胞群において、上記遺伝子の発現レベルを測定することによって、毛包由来の細胞群に含まれる毛球部毛根鞘細胞(DSCC)を同定することができる。また、毛包由来の細胞群において、上記遺伝子の発現レベルを測定することによって、毛包由来の細胞群が有する毛包誘導効果を予測することができる。
【0035】
一実施態様において、本発明は、以下の態様を含む。
毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
GREM1遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
【0036】
また、一実施態様において、本発明は、以下の態様を含む。
毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
ASPN遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
【0037】
また、一実施態様において、本発明は、以下の態様を含む。
毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
MMP11遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
【0038】
また、一実施態様において、本発明は、以下の態様を含む。
毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
PTGER3遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
【0039】
また、一実施態様において、本発明は、以下の態様を含む。
毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
RBP4遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
【0040】
また、一実施態様において、本発明は、以下の態様を含む。
毛包由来の細胞群を含有する、毛包を再生するための組成物の評価方法であって、
TLE4遺伝子の発現レベルを指標として、前記毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することを特徴とする、方法。
【0041】
毛包由来の細胞群を含有する毛包を再生するための組成物において、上記遺伝子の発現レベルを指標として、毛包由来の細胞群における毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の割合及び/又は活性を決定することによって、毛包由来の細胞群に含まれる毛球部毛根鞘細胞の相対的な量又は活性を評価することができ、その結果、毛球部毛根鞘細胞による毛包誘導効果を予測することができる。
【0042】
他の態様において、本発明は、上記のいずれかの方法は、さらに、
GREM2遺伝子、ASPN遺伝子、MMP11遺伝子、PTGER3遺伝子、RBP4遺伝子及びTLE4遺伝子からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とするものであってもよい。毛球部毛根鞘細胞に特異的なこれらの遺伝子を組み合わせることにより、より正確に毛包由来の細胞群又は毛包由来の細胞群を含有する毛包を再生するための組成物に含まれる毛球部毛根鞘細胞を評価することが可能となる。
【0043】
さらに、他の態様において、本発明は、上記の工程に加え、さらに、以下の表2に含まれる遺伝子(GREM1遺伝子、DCN遺伝子、PDGFRL遺伝子、ACKR1遺伝子、HAPLN1遺伝子、DCD遺伝子、SCGB1D2遺伝子、ACTA2遺伝子、PLIN4遺伝子、DOK6遺伝子、ENPP4遺伝子、IL15遺伝子、CCDC80遺伝子、TNXB遺伝子、FBLN2遺伝子、DLEC1遺伝子、LRRC17遺伝子、ZNF791遺伝子、CNIH3遺伝子、PRR15L遺伝子、DCAF4遺伝子、GYLTL1B遺伝子、LOC142937遺伝子、BPIFC遺伝子、ANO2遺伝子、IFI44L遺伝子及びPCSK7遺伝子)からなる群から1つ以上選択される遺伝子の発現レベルを指標とするものであってもよい。
【表2】
【0044】
本明細書において、「遺伝子の発現レベル」とは、任意の遺伝子から転写された転写産物、又はその転写産物を鋳型として翻訳された翻訳産物を検出し、測定することによって決定することができるものをいう。転写産物とは、例えば、遺伝子のDNAを鋳型として転写されるRNA鎖、すなわち、RNAポリメラーゼにより合成されるRNA鎖、及び転写後細胞内で修飾されたRNA鎖を意味する。転写産物に含まれるRNA鎖としては、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)である。これらのRNA鎖は、転写後、細胞内でプロセッシングされたものも含む。翻訳産物とは、例えば、遺伝子によって転写された転写産物を鋳型として翻訳されるポリペプチド鎖、すなわち、リボソームによって合成されるポリペプチド鎖、及びそのポリペプチド鎖がフォールデングすることで形成されるタンパク質を意味する。翻訳産物には、ポリペプチド鎖又はタンパク質のフラグメントも含まれる。
【0045】
遺伝子の発現レベルは、公知の方法を用いることによって測定することができる。例えば、遺伝子の発現レベルを測定するために、遺伝子の転写産物を測定する場合、目的の遺伝子の配列を参考にすることによって適切なプローブを設計し、それらを用いて、定量的PCR法(qPCR法)、in situハイブリダイゼーション法、ノーザンブロット法、DNAマイクロアレイ法などの方法を用いることによって測定することができる。
【0046】
また、例えば、遺伝子の発現レベルを測定するために、遺伝子の翻訳産物を測定する場合、目的の遺伝子によって翻訳されるタンパク質を検出する抗体を用い、例えば、ウエスタンブロット法、フローサイトメトリー法(FACS法)、ELISA法などによって測定することができる。
【0047】
一実施態様において、遺伝子の発現レベルは、任意のハウスキーピング遺伝子の発現レベルによって正規化(標準化)することによって比較することができる。比較のために用いることができるハウスキーピング遺伝子としては、例えば、GAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)、β-アクチン、β2-マイクログロブリン、HPRT 1(hypoxanthine phosphoribosyltransferase 1)などが挙げられる。本発明に用いられる上述の遺伝子と同様の方法により、ハウスキーピング遺伝子の発現レベルを測定し、当該ハウスキーピング遺伝子の発現レベルによって正規化(標準化)することによって、異なるサンプル間で比較することができる。
【0048】
一実施態様において、「遺伝子の発現レベルを指標とする」とは、毛包由来の細胞群において、所定のレベル以上(例えば、ネガティブコントロールのサンプルのシグナル以上)の、遺伝子を発現する細胞の割合を検出することであってもよい。これにより、毛包由来の細胞群に含まれる毛球部毛根鞘細胞の割合を評価することが可能となる。
【0049】
一実施態様において、「遺伝子の発現レベルを指標とする」とは、毛包由来の細胞群全体において、任意の遺伝子の発現レベルを検出し、他のサンプルの同一の遺伝子の発現レベルと比較することであってもよい。これにより、毛包由来の細胞群全体として、毛球部毛根鞘細胞で発現する遺伝子が高発現又は低発現しているかどうかを評価することができる。
【0050】
一実施態様において、「毛球部毛根鞘細胞(DSCC)の活性」とは、毛球部毛根鞘細胞において発現する上記の遺伝子の発現レベルである。異なるサンプル間において、上記の遺伝子の発現レベルを比較することにより、毛包由来の細胞群に含まれる毛球部毛根鞘細胞の相対的な活性を比較することができる。
【0051】
一実施態様において、本発明は、インビトロで培養された毛包由来の細胞群を用いることができる。これにより、毛包由来の細胞群に含まれる毛球部毛根鞘細胞が、培養の前後に、その割合又はその性質が変化していないかを評価することができる。また、他の態様において、本発明は、1回以上継代された毛包由来の細胞群を用いることができる。毛包由来の細胞群をインビトロで培養し、継代する方法については公知の方法を採用すればよく、限定されない。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0053】
<実施例1>
1.方法
1-1.毛包サブユニットの調製
2例の母斑細胞母斑、及び1例の脂肪腫の切除を受けた30~70歳の3人の女性から、頭皮の毛包(Hair Follicle:HF)を含む皮膚片を得た。サンプルは、腫瘍巣を避け、切除された皮膚の縁から採取した。McElwee KJ.,et al.(参考文献1)及びNiiyama S.,et al.(参考文献2)を参考に、実体顕微鏡下で、単離されたインタクトのHFから、HFの間葉系サブユニットを顕微解剖した(
図1)。簡潔に述べると、HFを、毛球領域に隣接した場所を鉗子で把持し、毛球を、針を用いて横断的に切断して切開した。毛球の毛球部毛根鞘(Dermal Sheath Cup:DSC)を鉗子と針を用いて反転させ、残りの上皮由来組織を除去して毛乳頭(Dermal papilla:DP)を露出させた。DPを横断切断してDSCから分離した。上部真皮毛根鞘(Upper Dermal Sheath:UDS)は、HFの近位端を別の鉗子で保持しながら、鉗子で外毛根鞘から剥がして単離した。
【0054】
1-2.トータルRNAの調製
それぞれのサブユニットをプールし、1mlのISOGEN(ニッポン・ジーン社、富山、日本)に溶解し、製造業者の指示に従ってRNA抽出を行った。沈殿後、RNAの品質は、Agilent Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies、Palo Alto、CA、USA)を用いて、リボソームRNA比(28S/18S)から評価した。6.5~8.3のRNA Integrity number(RIN)を有するサンプルをマイクロアレイ分析に使用した。
【0055】
1-3.マイクロアレイアッセイ
マイクロアレイ解析は、製造業者の指示(Agilent Technologies)に従って実施した。10ngの全RNAを、Oligo(dT)プライマー、AffinityScript逆転写酵素、T7 RNAポリメラーゼ及びCy3色素で標識されたCTPの存在下で、Low Input Quick Amp Labeling Kit(Agilent Technologies)を用いてインビボ逆転写及びその後の転写を行い、蛍光標識cRNAへと変換した。得られた600ngの標識cRNAを断片化し、Agilent SurePrint G3 Human GE 8x60Kマイクロアレイ(G4851A、Agilent Technologies)へとハイブリダイズさせ、Agilentデュアルレーザーマイクロアレイスキャナー(G2565AA)でスキャンした。シグナル強度は、Feature Extraction Softwareバージョン11.0.1.1(Agilent Technologies)を用いて定量した。統計分析のために、データをGenespring GX 13.0ソフトウェア(Agilent Technologies)で処理した。マイクロアレイデータは、マイクロアレイ実験に関する最小限情報(MIAME)ガイドラインに従って記載し、Gene Expression Omnibus(GEO)データベース(受託番号GSE95219;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo)に寄託した。
【0056】
1-4.in situハイブリダイゼーション
細胞内におけるGREM2及びGREM1の局在を視覚化するために、パラフィン包埋組織切片を用いてin situハイブリダイゼーションを行った。ViewRNA(商標)ISH Tissue 1-Plex Assayキット(Thermo Fisher Scientific Inc.、Waltham、MA、USA)の製造業者マニュアルに従って、高度特異的分枝状DNAシグナル増幅技術に基づき、GREM2又はGREM1特異的タイプ6プローブを使用した。Fast Red基質を用いてシグナルを検出し、続いて蛍光を観察した。核の染色はHoechst33342(Thermo Fischer Scientific Inc.)を用いて実施した。
【0057】
1-5.定量的PCR(qPCR)
NucleoSpin RNA XS(TAKARA BIO Inc.、滋賀、日本)を用い、添付の説明書に従って、各サンプルからトータルRNAを抽出し、続いてCellAmp Whole Transcriptome Amplification Kit(Real Time)Ver.2(TAKARA BIO Inc.、滋賀、日本)を用いてcDNAを調製した。
【0058】
qPCRは、LightCycler(登録商標)FastStart DNA MasterPLUS SYBR Green I及びLightCycler(Roche Molecular Systems,Inc、Pleasanton)を用い、添付の説明書に従って実施した。
【0059】
2.結果
2-1.HFの各サブユニットは異なる遺伝子プロファイルを示す。
単離したインタクトなHFサブユニット(DSC、DP、UDS)の遺伝子発現プロファイルを解析した(
図1)。3人の別々のドナーから得た、顕微解剖によって得られたHFサブユニットのトータルRNAをマイクロアレイ解析し、HFサブユニット特異的であり、識別可能な遺伝子を同定した。2以上の個体についてデータが信頼できない、又はバックグラウンドと等しいとタグ付けされたマイクロアレイプローブは除外した。その結果、25342個のプローブを分析対象とした。インタクトなHFサブユニットに特異的であり、識別可能な遺伝子を同定するために、少なくとも1つのHFコンポーネントに対して、シグナル強度が50以上であった18905プローブをさらに選択して解析した。
【0060】
まず、主成分分析(PCA)を実施し、トータルマイクロアレイデータセットの関係性を解析した。同一個体由来の3つのHFサブユニットの位置は、PC1次元に沿って密接に関連していた。一方、異なる個体由来の同一サブユニットの位置は、PC3次元に沿って弱く関連していることが明らかとなった(
図2)。これらの個体内の差異を考慮し、それぞれの個体内で比較した。DSC対DP、DSC対UDS、及びUDS対DPで比較を行い、カットオフ値を1.5倍とした。個体内においても実質的に差異があったが、PCAによって、3名の個体間において、DSCのみならず、DP及びUDSプロファイルも類似点を有することが明らかとなった。
【0061】
2-2.DSC及びDP識別遺伝子の抽出
3名すべてに共通して発現亢進又は発現抑制されていた遺伝子の数を表3に示す。
【表3】
【0062】
その結果、DSC対DPにおいて、発現亢進した遺伝子を63個同定した。これらのうち、UDSにおいても発現亢進した遺伝子と、5個の特徴づけられていないプローブを除去し、DSC識別遺伝子として32個の遺伝子が得られた(表4)。
【表4】
【0063】
2-3.DSC識別遺伝子の特徴付け
上記DSC識別遺伝子リストには、以前、真皮毛根鞘(DS)で発現していると報告された、actin,alpha 2,smooth muscle(alpha-smooth muscle actin)、prostaglandin E receptor 3及びmatrix metallopeptidase11が含まれていた(参考文献3~5)。7個の細胞外マトリックスコンポーネント:decorin;fibulin 2;coiled-coil domain containing 80;tenascin XB;asporin;hyaluronan and proteoglycan link protein 1;及びmatrix metallopeptidase 11もこのリストには含まれており、このカテゴリーが、遺伝子オントロジー解析において、有意に大多数を占めていた。DSC識別遺伝子の多くは、DPと比較して、DSCのみならず、UDSにおいても高発現していた(
図3)。それらのうち、6つの遺伝子:asporin,DAN family BMP antagonist gremlin 2(GREM2);matrix metallopeptidase 11;prostaglandin E receptor 3;retinol binding protein 4;及びtransducin-like enhancer of split 4(TLE4)が、より高くDSCにおいて特異的に発現しており、UDSに対して少なくとも1.5倍発現亢進されていた(表5)。
【表5】
【0064】
2-4.GREM2はインタクトなDSC識別遺伝子である。
6つのDSC特異的遺伝子は、DP及びUDSの両方と比較した場合に、DSCにおいて実質的に発現亢進していた。そこで、それらの遺伝子のうち、GREM2に対する定量的PCRを、インタクトなDP及びDSC組織において実施した。その結果、DPと比較した場合、明らかに約10倍以上、DSC特異的に発現亢進していることが認められた(
図4)。組織におけるGREM2遺伝子の特異的な発現をさらに確認するために、in situハイブリダイゼーションを行った。その結果、毛包の毛球におけるDSC領域において、GREM2が発現していることが確認でき、GREM2発現が、インタクトな毛包においてDSC特異的であることが示された(
図5)。また、同じGREMファミリーであるGREM1においても、同様にin situハイブリダイゼーションを行い、HFにおける発現を確認した(
図6)。
【0065】
2-5.in silico解析によるDSC識別遺伝子の上流調節因子の同定
発現変化を評価する上流調節因子の分析の結果、報告された文献と一致して、TGF-b1がDSC識別の9つの遺伝子の推定調節因子として同定された(
図7)。5つの遺伝子がWnt経路に関連するものであり、その中の一つであるTLE4は、Wnt経路において良く知られた核コンポーネントであるGrouchoファミリーのメンバーである。2つのBMPシグナリングアンタゴニストであるGREM1及びGREM2もまた、DSCにおいて発現亢進されていた。
図7は、DSC識別因子の推定される調節ネットワークと、細胞内局在を示し、TGF-b1が、DSCに対して特徴的な細胞外マトリックスコンポーネントを調節することを示唆している。
【0066】
<実施例2>
実施例1と同様の方法によって単離したDSCをAmnio Max培地(Thermofisher)を用いて、37℃、5%CO
2にて、インビトロで約30日間培養した。培養前のインタクトなDSC、及び培養後のDSCからトータルRNAを回収し、上記1-5.と同様qPCRを実施した。GAPDHの発現量で正規化し、インタクトなDSCの遺伝子発現量を100%とした時の、培養後のDSCの遺伝子発現量は、
図8のようになった。
【0067】
<実施例3>
GREM2は培養したDSC細胞の識別遺伝子であり、細胞のコロニー形成活性と関連する。
【0068】
実施例1と同様の方法によって単離したDSC、DP、UDSをAmnio Max培地(Thermofisher)を用いて、37℃、5%CO2にて、インビトロで培養し、1継代目の各細胞からトータルRNAを回収して、上記1-5.と同様にqPCRを実施した。
【0069】
DSC細胞でのGAPDHの発現量に対するGREM2の発現量を100%とした時の相対的な値を
図9(a)に示す。その結果、DSC細胞においてGREM2の発現が亢進していることが認められた。
【0070】
培養した細胞のコロニー形成能を、1000個の細胞を10cmシャーレに播種しAmnio Max培地で培養して12日後に形成されたコロニー数を数えるという方法で評価した。その結果、DSC細胞は、高いコロニー形成活性を有することが認められた(
図9(b))。
【0071】
<参考文献>
1.McElwee KJ, Kissling S, Wenzel E, Huth A, Hoffmann R. Cultured peribulbar dermal sheath cells can induce hair follicle development and contribute to the dermal sheath and dermal papilla. J Invest Dermatol 2003; 121: 1267-1275.
2.Niiyama S, Happle R, Hoffmann R. The feasibility of quantitative analysis of androgen metabolism by use of single dermal papillae from human hair follicles. Exp Dermatol 2001; 10: 124-127.
3.Jahoda CA, Reynolds AJ, Chaponnier C, Forester JC, Gabbiani G. Smooth muscle alpha-actin is a marker for hair follicle dermis in vivo and in vitro. J Cell Sci 1991; 99: 627-636.
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5.Colombe L, Michelet JF, Bernard BA. Prostanoid receptors in anagen human hair follicles. Exp Dermatol 2008; 17: 63-72.