(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】水中油滴型の微細エマルション型化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20230523BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230523BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230523BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230523BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230523BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20230523BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20230523BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230523BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20230523BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230523BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/89
A61K8/891
A61Q19/00
B82Y5/00
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2020510375
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2019004734
(87)【国際公開番号】W WO2019187703
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2018069278
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】宇山 允人
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-203026(JP,A)
【文献】特開2012-111726(JP,A)
【文献】特開2013-082687(JP,A)
【文献】特開2008-100937(JP,A)
【文献】国際公開第2007/097412(WO,A1)
【文献】特開2016-088868(JP,A)
【文献】特開2017-066068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
B82Y 5/00-99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油滴型の微細エマルション型化粧料であって、
水及び二価グリコールを含む分散媒、
前記分散媒中に分散している、シリコーン油及び炭化水素油を含む油分、
下記式1で表されるカルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、
25℃で液状であり、かつ、炭素原子数が16~22である、高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種、並びに
ポリオキシエチレン鎖を有する、HLBが12~1
4の非イオン性界面活性剤
を含み、かつ、油滴の平均粒子径が150nm以下である、微細エマルション型化粧料:
【化1】
式1中、
R
1~R
3のうちの少なくとも1つは、-O-Si(R
4)
3で表され、R
4が、炭素原子数1~6のアルキル基及びフェニル基の中から選ばれる少なくとも一種である、置換基であり、R
1~R
3の全てが前記置換基でない場合、残りは、同一又は異なっていてもよい非置換若しくは置換型の一価の炭化水素基であり、
Aは、C
qH
2qで表され、qが0~20の整数である、直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、かつ
Mは、金属原子又は有機陽イオンである。
【請求項2】
前記カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、前記高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種、並びに前記非イオン性界面活性剤が、25℃の雰囲気下において、前記油滴の液状界面膜を形成している、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記高級アルコールが、イソステアリルアルコール及びオレイルアルコールの中から選択される少なくとも一種であり、前記高級脂肪酸が、イソステアリン酸及びオレイン酸の中から選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記シリコーン油及び炭化水素油が、前記油分中に82質量%以上含まれている、請求項1~3の何れか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
前記シリコーン油及び炭化水素油の質量比が、1:9~9:1である、請求項1~4の何れか一項に記載の化粧料。
【請求項6】
前記カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、前記高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種、並びに前記非イオン性界面活性剤の総量に対する、前記油分の質量比が、0.45~1.0である、請求項1~5の何れか一項に記載の化粧料。
【請求項7】
前記油滴の平均粒子径が、55nm以下であり、かつ、低級アルコールを含む、請求項1~6の何れか一項に記載の化粧料。
【請求項8】
水中油滴型の微細エマルション型化粧料の製造方法であって、
前記化粧料が、
水及び二価グリコールを含む分散媒、
前記分散媒中に分散している、シリコーン油及び炭化水素油を含む油分、
下記式1で表されるカルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、
25℃で液状であり、かつ、炭素原子数が16~22である、高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種、並びに
ポリオキシエチレン鎖を有する、HLBが12~17の非イオン性界面活性剤
を含み、かつ、油滴の平均粒子径が150nm以下であり、
80℃以上の加温処理を適用することなく、
前記分散媒の一部、前記油分、前記カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、前記高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種、並びに前記非イオン性界面活性剤を混合してマイクロエマルションを調製し、
前記マイクロエマルションに、前記分散媒の残部を添加して希釈する、又は、前記分散媒の残部に、前記マイクロエマルションを添加して希釈する、
化粧料の製造方法
:
【化2】
式1中、
R
1
~R
3
のうちの少なくとも1つは、-O-Si(R
4
)
3
で表され、R
4
が、炭素原子数1~6のアルキル基及びフェニル基の中から選ばれる少なくとも一種である、置換基であり、R
1
~R
3
の全てが前記置換基でない場合、残りは、同一又は異なっていてもよい非置換若しくは置換型の一価の炭化水素基であり、
Aは、C
q
H
2q
で表され、qが0~20の整数である、直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、かつ
Mは、金属原子又は有機陽イオンである。
【請求項9】
前記分散媒の残部に低級アルコールが含まれている、請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水中油滴型の微細エマルション型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧料の分野において、透明性、機能性又は使用感などを改良するために、水中油滴型の微細エマルションなどが検討されている。係る微細エマルションは、例えば、高い剪断力を付与し得る高圧乳化装置などを用い、エマルション中の乳化粒子を機械的に微細化して製造される。
【0003】
特許文献1には、(A)塩型薬剤、(B)親水性非イオン性界面活性剤、(C)N-長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩、(D)2種以上の高級脂肪酸及び高級脂肪酸石鹸を構成するアルカリ、(E)高級アルコール、(F)油分、及び(G)水を含有し、高圧乳化により乳化粒子を微細化した、水中油型乳化組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、連続層である水相と、該水相中に分散され、油相中に合計で82質量%以上のシリコーン油及び炭化水素油を含む油相と、特定のカルボキシ変性シリコーンと、C16~22の高級アルコールと、POE鎖を有する、HLBが5~10の非イオン性界面活性剤と、二価グリコールと、を含む、平均乳化粒子径が150nm以下である微細エマルション型化粧料が開示されている。また、この特許文献2では、高圧乳化を用いずに、マイクロエマルションを経由して微細エマルションを得ることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-126705号公報
【文献】特開2017-066068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
化粧料中で微細化した乳化粒子は、比較的不安定な傾向を呈し易いため、係る化粧料の分野においては、より一層安定な微細エマルション型の化粧料が望まれていた。
【0007】
したがって、本発明の主題は、安定である、新規な水中油滴型の微細エマルション型化粧料を提供することである。また、本発明の主題は、マイクロエマルションを経由して、このような新規な水中油滴型の微細エマルション型化粧料を得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〈態様1〉
水中油滴型の微細エマルション型化粧料であって、
水及び二価グリコールを含む分散媒、
前記分散媒中に分散している、シリコーン油及び炭化水素油を含む油分、
下記式1で表されるカルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、
25℃で液状であり、かつ、炭素原子数が16~22である、高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種、並びに
ポリオキシエチレン鎖を有する、HLBが12~17の非イオン性界面活性剤
を含み、かつ、油滴の平均粒子径が150nm以下である、微細エマルション型化粧料:
【化1】
式1中、
R
1~R
3のうちの少なくとも1つは、-O-Si(R
4)
3で表され、R
4が、炭素原子数1~6のアルキル基及びフェニル基の中から選ばれる少なくとも一種である、置換基であり、R
1~R
3の全てが前記置換基でない場合、残りは、同一又は異なっていてもよい非置換若しくは置換型の一価の炭化水素基であり、
Aは、C
qH
2qで表され、qが0~20の整数である、直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、かつ
Mは、金属原子又は有機陽イオンである。
〈態様2〉
前記カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、前記高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種、並びに前記非イオン性界面活性剤が、25℃の雰囲気下において、前記油滴の液状界面膜を形成している、態様1に記載の化粧料。
〈態様3〉
前記高級アルコールが、イソステアリルアルコール及びオレイルアルコールの中から選択される少なくとも一種であり、前記高級脂肪酸が、イソステアリン酸及びオレイン酸の中から選択される少なくとも一種である、態様1又は2に記載の化粧料。
〈態様4〉
前記シリコーン油及び炭化水素油が、前記油分中に82質量%以上含まれている、態様1~3の何れか一項に記載の化粧料。
〈態様5〉
前記シリコーン油及び炭化水素油の質量比が、1:9~9:1である、態様1~4の何れか一項に記載の化粧料。
〈態様6〉
前記カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、前記高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種、並びに前記非イオン性界面活性剤の総量に対する、前記油分の質量比が、0.45~1.0である、態様1~5の何れか一項に記載の化粧料。
〈態様7〉
前記油滴の平均粒子径が、55nm以下であり、かつ、低級アルコールを含む、態様1~6の何れか一項に記載の化粧料。
〈態様8〉
前記分散媒の一部、前記油分、前記カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、前記高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種、並びに前記非イオン性界面活性剤を混合してマイクロエマルションを調製し、
前記マイクロエマルションに、前記分散媒の残部を添加して希釈する、又は、前記分散媒の残部に、前記マイクロエマルションを添加して希釈する、
態様1~7の何れか一項に記載の化粧料の製造方法。
〈態様9〉
前記分散媒の残部に低級アルコールが含まれている、態様8に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安定である、新規な水中油滴型の微細エマルション型化粧料を提供することができ、特に、40~50℃程度の比較的高温下に保持しても長期に安定な、水中油滴型の微細エマルション型化粧料を提供することができる。
【0010】
また、本発明によれば、マイクロエマルションを経由して、このような新規な水中油滴型の微細エマルション型化粧料を得る方法を提供することができ、特に、高温、例えば、80℃以上の高温を用いずに、係る微細エマルション型化粧料を得る方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
本発明の水中油滴型の微細エマルション型化粧料は、水及び二価グリコールを含む分散媒、係る分散媒中に分散している、シリコーン油及び炭化水素油を含む油分、下記式1で表されるカルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、25℃で液状であり、かつ、炭素原子数が16~22である、高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種、並びにポリオキシエチレン鎖を有する、HLBが12~17の非イオン性界面活性剤を含み、かつ、油滴の平均粒子径が150nm以下である。
【0013】
【化2】
式1中、
R
1~R
3のうちの少なくとも1つは、-O-Si(R
4)
3で表され、R
4が、炭素原子数1~6のアルキル基及びフェニル基の中から選ばれる少なくとも一種である、置換基であり、R
1~R
3の全てが前記置換基でない場合、残りは、同一又は異なっていてもよい非置換若しくは置換型の一価の炭化水素基であり、
Aは、C
qH
2qで表され、qが0~20の整数である、直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、かつ
Mは、金属原子又は有機陽イオンである。
【0014】
原理によって限定されるものではないが、水中油滴型の安定な微細エマルションを得ることができる作用原理は以下のとおりであると考える。
【0015】
本発明者は、特定の分散媒、特定の油分、特定の二種類の界面活性剤、及び特定の高級アルコール又は高級脂肪酸の組み合わせを採用した場合に、比較的低い温度下においてマイクロエマルション相が発現することを見出し、さらに、係るマイクロエマルション相を水等で希釈することにより、水中油滴型の安定な微細エマルションを調製し得ることを見出した。
【0016】
例えば、特許文献2で使用されるようなベヘニルアルコールは、融点が65~72℃と高いため、係るアルコールを使用して得られる水中油滴型の微細エマルションは、分散する油滴界面において、界面活性剤及びベヘニルアルコールからなる25℃で固体状又はα-ゲル状の界面膜が形成されるものと考えられる。一方、本発明の微細エマルションの場合は、25℃で液状である高級アルコール又は高級脂肪酸等を用いているため、得られる油滴には、25℃で液状の界面膜が形成されるものと考えている。
【0017】
液状界面膜を有する油滴は、係る膜を構成する界面活性剤等が、平衡状態において、分散媒中の界面活性剤又は隣接する他の油滴の界面活性剤等と置換するような挙動を呈するため、係る挙動を呈しない固体状界面膜を有する油滴に比べて不安定になることが予想される。しかしながら、本発明の微細エマルションは、油滴の界面付近において、カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤に基づく静電反発作用に加えて、特定のHLBを有する非イオン性界面活性剤に基づく立体反発作用の両方が発揮され、油滴同士の凝集合一をより抑制し得るため、安定な油滴が形成されるものと考えている。また、係る両作用及び形成される界面膜の性状の違いが、高温下での長期安定性、例えば、40℃~50℃で30日間にも及ぶ安定性ももたらしていると考えている。
【0018】
本発明における用語の定義は以下のとおりである。
【0019】
本発明において「微細エマルション」なる用語は、平均粒子径が150nm以下の油滴を含む水中油滴型のエマルションを意味する。
【0020】
本発明において「マイクロエマルション」なる用語は、界面活性剤、水、油分、及び場合により二価グリコール等の助剤を含む系において、熱力学的に安定である、水連続型(O/W型)、両連続型(バイコンティニュアス型)、又は油連続型(W/O型)の透明な相を意味する。
【0021】
本発明において「α-ゲル」なる用語は、六方晶系を基本単位とするラメラ状の2分子膜会合体を意味し、α型の水和結晶相とも呼ばれる。
【0022】
《微細エマルション型化粧料》
本発明の化粧料は、分散相としての油滴が、水及び二価グリコールを含む連続相である分散媒中に微細に分散している状態の水中油滴型の乳化組成物である。
【0023】
本発明の化粧料は、油滴が分散媒中に微細に分散しているため、透明又は半透明の化粧料とすることができる。透明性については、例えば、COLOR-EYE 7000A(Gretag Macbeth社製)等の色差計から算出されるL値によって評価することができる。L値は、100に近いほど透明度が高いことを意図し、本発明の化粧料は、80以上、85以上又は90以上のL値を呈することができる。
【0024】
また、本発明の化粧料は、高温下での長期安定性を付与することができる。例えば、化粧料を40℃又は50℃で30日間保持した場合に、油滴の平均粒子径の増大を、作製直後から、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下に抑制することができる。
【0025】
〈油滴〉
水中油滴型の乳化組成物における油相又は分散相としての油滴は、油分、カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、並びに高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種を含むことができる。
【0026】
カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種、並びに非イオン性界面活性剤の総量に対する、油分の質量比としては、微細エマルションの形成性等の観点から、0.45以上、0.50以上、又は0.55以上とすることができ、また、1.0以下、0.95以下、又は0.90以下とすることができる。
【0027】
本発明の化粧料中の油滴の平均粒子径は、例えば、透明又は半透明の乳化組成物を得る観点から、150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下、又は110nm以下とすることができ、さらに、100nm以下、80nm以下、又は60nm以下とすることが好ましい。平均粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば、5nm以上、10nm以上、又は15nm以上とすることができる。油滴の平均粒子径は、例えば、油滴の粒子形状を球状と仮定したときに、動的光散乱法等により光学的に測定された油滴の直径の平均値として規定することができる。
【0028】
(油分)
本発明の化粧料で使用される油分としては、シリコーン油及び炭化水素油の少なくとも二種類の油を含んでいる。一般的に、化粧料においてシリコーン油及び炭化水素油を併用しようとすると分離してしまう場合が多いが、本発明の化粧料は、特定の二種類の界面活性剤を併用しているため、シリコーン油及び炭化水素油の少なくとも二種類の油を分離させることなく配合することができる。
【0029】
シリコーン油としては、次のものに限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーンなどを使用することができる。
【0030】
炭化水素油としては、次のものに限定されないが、例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソパラフィン、セレシン、水添ポリデセン、イソドデカン、イソヘキサデカンなどを使用することができる。
【0031】
油分中には、シリコーン油及び炭化水素油以外に、極性油等の他の油も含まれていてもよいが、微細エマルションの形成性等の観点から、シリコーン油及び炭化水素油は、油分中に、82質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上含まれていることが好ましく、シリコーン油及び炭化水素油のみからなることがより好ましい。また、微細エマルションの形成性等の観点から、シリコーン油及び炭化水素油の質量比としては、1:9~9:1であることが好ましく、2:8~8:2であることがより好ましく、3:7~7:3であることが特に好ましい。
【0032】
本発明の化粧料における油分の配合量は、次のものに限定されないが、例えば、化粧料全量に対して、0.04質量%以上、0.07質量%以上、又は0.10量%以上とすることができ、また、10質量%以下、8質量%以下又は6質量%以下とすることができる。
【0033】
(カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤)
本発明の化粧料で使用されるカルボキシ変性シリコーン系界面活性剤は、アルキルカルボキシル基で変性されたカルボキシ変性シリコーンの界面活性剤であり、下記の式1で表される化合物である。
【0034】
【0035】
式1中、R1~R3のうちの少なくとも1つは、-O-Si(R4)3で表され、R4が、炭素原子数1~6のアルキル基及びフェニル基の中から選ばれる少なくとも一種である、置換基であり、R1~R3の全てが前記置換基でない場合、残りは、同一又は異なっていてもよい非置換若しくは置換型の一価の炭化水素基であり、Aは、CqH2qで表され、qが0~20の整数である、直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、かつ、Mは、金属原子又は有機陽イオンである。
【0036】
-O-Si(R4)3で表される置換基において、R4は、炭素原子数1~6のアルキル基及びフェニル基の中から選ばれる少なくとも一種であり、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基である。炭素原子数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、ヘキシル等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等が挙げられる。-O-Si(R4)3で表される置換基としては、具体的には、例えば、-O-Si(CH3)3、-O-Si(CH3)2(C2H5)、-O-Si(CH3)2(C3H7)、-O-Si(CH3)2(C4H9)、-O-Si(CH3)2(C5H11)、-O-Si(CH3)2(C6H13)、-O-Si(CH3)2(C6H5)等が挙げられるが、トリアルキルシロキシ基であることが好ましく、トリメチルシロキシ基であることがより好ましい。
【0037】
また、上記式1中、R1~R3のうちの少なくとも1つは、-O-Si(R4)3で表される置換基であればよく、R1~R3の全てが当該置換基でない場合には、その他は、非置換又は置換型の一価の炭化水素基であってもよく、また、係る炭化水素基は、同一でも又は異なっていてもよい。
【0038】
非置換の一価の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、ヘキシル等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;アラルキル基等が挙げられる。
【0039】
置換型の一価の炭化水素基としては、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基等のパーフルオロアルキル基;3-アミノプロピル基、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基等のアミノアルキル基;アセチルアミノアルキル基等のアミドアルキル基等が挙げられる。
【0040】
また、非置換又は置換型の一価の炭化水素基の一部が、水酸基、アルコキシ基、ポリエーテル基又はパーフルオロポリエーテル基で置換されていてもよく、該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基等が挙げられる。
【0041】
上記式1中、R1~R3の1つ又は2つが、-O-Si(R4)3で表される置換基である場合、その他は、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。特に、式1中、R1~R3において、全部又は2つが、-O-Si(R4)3で表される置換基であることが好ましく、2つ、例えばR1及びR2が係る置換基である場合、残りのR3が、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0042】
上記式1中、Aは、CqH2qで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0~20の整数である。ここで、q=0の場合、式1で表されるカルボキシ変性シリコーン系界面活性剤は、下記式2で表される化合物であり、カルボキシル変性基は、エチレン基を介してケイ素と結合しているものである。また、qは、6~20の整数であることが好ましく、2~15の整数であることがより好ましく、6~12の整数であることが特に好ましい。
【0043】
【0044】
上記式1中、Mは、金属原子又は有機陽イオンである。金属原子としては、例えば、1価のアルカリ金属、2価のアルカリ土類金属等が挙げられる。1価のアルカリ金属としては、Li、Na、K等が挙げられ、2価のアルカリ土類金属としては、Mg、Ca、Ba等が挙げられ、その他、Mn、Fe、Co、Al、Ni、Cu、V、Mo、Nb、Zn、Ti等の金属原子なども挙げられる。また、有機陽イオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、アルギニン中和イオン、アミノメチルプロパノール中和イオン等が挙げられる。Mは、特に1価のアルカリ金属、又は1価の有機陽イオンであることが好ましい。
【0045】
本発明の化粧料を調製するに際し、カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤は、上記式1で示されるような中和した状態のものを使用してもよく、或いは、式1のMが水素原子である係る界面活性剤の原料と中和剤とを混合し、化粧料の調製中に中和させたものであってもよい。
【0046】
中和剤としては、次のものに限定されないが、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、N-メチルタウリン塩、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられ、中でも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールが好ましい。
【0047】
本発明の化粧料におけるカルボキシ変性シリコーン系界面活性剤の配合量は、次のものに限定されないが、例えば、化粧料全量に対して、0.05質量%以上、0.07質量%以上、又は0.10量%以上とすることができ、また、2.0質量%以下、1.5質量%以下又は1.0質量%以下とすることができる。
【0048】
(25℃で液状であり、かつ、炭素原子数が16~22である、高級アルコール及び高級脂肪酸)
本発明の化粧料で使用される高級アルコール及び高級脂肪酸は、各々、25℃で液状であり、かつ、炭素原子数が16~22のものであればいかなるものでもよい。また、高級アルコール及び高級脂肪酸は、各々、一種又は二種以上用いることができ、高級アルコール及び高級脂肪酸を併用してもよい。係る高級アルコール及び高級脂肪酸は、25℃で液状であるため、80℃程度の高温の加温処理を要さず、例えば、25~40℃程度の室温付近でマイクロエマルション相を形成することができる。
【0049】
本発明の化粧料における高級アルコール及び高級脂肪酸の総配合量は、次のものに限定されないが、例えば、化粧料全量に対して、0.05質量%以上、0.07質量%以上、又は0.10量%以上とすることができ、また、2.0質量%以下、1.5質量%以下又は1.0質量%以下とすることができる。ここで「総配合量」とは、化粧料において高級アルコール及び高級脂肪酸の両方が使用された場合は、両者の合計の配合量を意図し、高級アルコール又は高級脂肪酸の何れか一方が使用された場合は、その何れかの配合量を意図する。
【0050】
高級アルコールとしては、次のものに限定されないが、例えば、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、ホホバアルコール等が挙げられる。中でも、マイクロエマルション相の形成のし易さ等の観点から、オレイルアルコール及びイソステアリルアルコールが好ましく、イソステアリルアルコールがより好ましい。
【0051】
高級脂肪酸としては、次のものに限定されないが、例えば、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等が挙げられる。中でも、マイクロエマルション相の形成のし易さ等の観点から、オレイン酸及びイソステアリン酸が好ましく、イソステアリン酸がより好ましい。
【0052】
(ポリオキシエチレン鎖を有する、HLBが12~17の非イオン性界面活性剤)
本発明の化粧料で使用される非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン鎖を有し、HLBが12~17のものであればいかなるものでもよい。立体反発性、乳化安定性等の観点から、ポリオキシエチレン鎖の平均付加モル数としては、10~100が好ましく、15~30がより好ましく、また、HLBとしては、12~14であることがより好ましい。ここで、HLBとは、一般に界面活性剤の水及び油への親和性を示す値であって、親水性-親油性バランスとして知られているパラメーターであり、例えば、グリフィン法などの公知の計算法により容易に求めることができる。
【0053】
係る非イオン性界面活性剤としては、次のものに限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルなどが挙げられ、これらを単独で又は二種以上併用して使用することができる。また、室温付近でのマイクロエマルション相の形成のし易さ等の観点から、室温付近で液状となり易い分岐状の非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0054】
具体的には、例えば、POE(15)オレイルエーテルのオレス-15(HLB=12)、イソステアリン酸PEG-15グリセリル(HLB=12)、ステアリン酸PEG-15グリセリル(HLB=13)、イソステアリン酸PEG-20グリセリル(HLB=13)、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル(HLB=13)、ステアリン酸PEG-20グリセリル(HLB=14)、POE(25)イソステアリルエーテルのイソステアレス-25(HLB=14)、イソステアリン酸PEG-30グリセリル(HLB=15)、POE(20)ベヘニルエーテル(HLB=16.5)、ステアリン酸PEG-100(HLB=17)などが挙げられる。中でも、POE(15)オレイルエーテル(HLB=12)、イソステアリン酸PEG-20グリセリル(HLB=13)、POE(25)イソステアリルエーテル(HLB=14)、イソステアリン酸PEG-30グリセリル(HLB=15)、ステアリン酸PEG-100(HLB=17)が好ましく、POE(15)オレイルエーテル(HLB=12)、イソステアリン酸PEG-20グリセリル(HLB=13)、POE(25)イソステアリルエーテル(HLB=14)がより好ましい。ここで、POE及びPEGは、ポリオキシエチレン及びポリエチレングリコールを意図する。
【0055】
本発明の化粧料における上記の非イオン性界面活性剤の配合量は、次のものに限定されないが、例えば、化粧料全量に対して、0.05質量%以上、0.07質量%以上、又は0.10量%以上とすることができ、また、2.0質量%以下、1.5質量%以下又は1.0質量%以下とすることができる。
【0056】
〈分散媒〉
(水)
分散媒に使用し得る水としては、特に限定されるものではないが、例えば、蒸留水、精製水、イオン交換水などを使用することができる。水の配合量は、化粧料の使用用途等に適宜調整することができ、特に限定されるものではないが、例えば、化粧料全量に対して、70質量%以上、75質量%以上又は80質量%以上とすることができ、また、99質量%以下、98質量%以下又は97質量%以下とすることができる。
【0057】
(二価グリコール)
本発明では、マイクロエマルション相の形成のために分散媒として二価グリコールを使用する。係る二価グリコールとしては、マイクロエマルション相を形成し得る限り、特に限定されるものではないが、例えば、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどを単独で又は二種以上併用して使用することができる。二価グリコールの配合量としては、特に限定されるものではないが、例えば、化粧料全量に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上とすることができ、また、5質量%以下、4質量%以下、又は3質量%以下とすることができる。
【0058】
(アルキレンオキシド誘導体)
本発明では、二価グリコールとともに、アルキレンオキシド誘導体を併用することができる。係るアルキレンオキシド誘導体は、二価グリコールと同様に、分散媒として使用することができ、また、上記の非イオン性界面活性剤に対して微細乳化を助ける作用を奏することもできる。アルキレンオキシド誘導体としては、例えば、下記式3で示されるものが挙げられる。
【0059】
R5O-[(AO)r(EO)s]-R6 …式3
【0060】
式3中、AOは、炭素原子数3~4のオキシアルキレン基であり、EOは、オキシエチレン基である。AOとしては、具体的には、例えば、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられ、中でも、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。
【0061】
また、AO及びEOの合計に対するAOの割合は、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましい。
【0062】
AO及びEOの付加する順序は特に指定はなく、また、AO及びEOは、ブロック状又はランダム状に付加していてもよいが、ランダム状に付加されているものが好ましい。ここで、ブロック状には、二段ブロックのみならず、三段以上のブロックも含まれる。
【0063】
r及びsは、それぞれオキシアルキレン基及びオキシエチレン基の平均付加モル数であって、1≦r≦70、1≦s≦70であり、2≦r≦60、2≦s≦60であることが好ましい。また、べたつき性等を観点から、r及びsの合計は、100以下であることが好ましい。
【0064】
R5及びR6は、炭素原子数1~4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられ、中でも、メチル基、エチル基が好ましい。R5及びR6は、同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
係るアルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができ、例えば、水酸基を有している化合物にエチレンオキシド及び炭素数3~4のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒の存在下にエーテル反応させることによって得ることができる。
【0066】
式3のアルキレンオキシド誘導体としては、具体的には、例えば、POE(17)POE(4)ジメチルエーテル、POE(14)POP(7)ジメチルエーテル、POE(36)POP(41)ジメチルエーテル、POE(55)POP(28)ジメチルエーテル、POE(22)POP(40)ジメチルエーテル、POE(35)POP(40)ジメチルエーテル、POE(50)POP(40)ジメチルエーテル、POE(11)POP(9)ジメチルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
アルキレンオキシド誘導体を併用する場合、二価グリコールとアルキレンオキシド誘導体の総配合量としては、例えば、化粧料全量に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上とすることができ、また、25質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下とすることができる。また、二価グリコールとアルキレンオキシド誘導体の質量比としては、3:7~8:2であることが好ましく、4:6~8:2であることがより好ましく、5:5~8:2であることが特に好ましい。
【0068】
(任意成分)
本発明の化粧料は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、各種成分を適宜配合することができる。各種成分としては、化粧料に通常配合し得るような添加成分、例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ等の上記以外の油分、上記以外の高級アルコール、上記以外の高級脂肪酸、上記以外のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、上記以外の非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、シリコーン化多糖類等の皮膜形成剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、各種抽出液、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、キレート剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、医薬品、医薬部外品、化粧品等に適用可能な水溶性薬剤、酸化防止剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止助剤、噴射剤、有機系粉末、顔料、染料、色素、香料等を挙げることができる。
【0069】
(用途)
本発明の化粧料の用途としては、特に限定されるものではないが、安定性等に優れることから化粧水や美容液等に用いることが好ましい。その他、例えば、保湿クリーム、保湿乳液、保湿ローション、マッサージクリーム、マッサージローション、エッセンス等のスキンケア化粧料、へアクリーム、ヘアローション、整髪料等のヘアケア化粧料、サンスクリーン、ボディクリーム、ボディローション等のボディケア化粧料、口紅、マスカラ、アイライナー、ネールエナメル、液状ファンデーション、ゲル状ファンデーション等のメーキャップ化粧料、メーク落とし、シャンプー、リンス、リンスインシャンプー等の洗浄料等の種々の化粧料に利用することもできる。
【0070】
《微細エマルション型化粧料の製造方法》
本発明の微細エマルション型化粧料は、マイクロエマルション相を経由して調製することができるため、高圧乳化装置を用いる必要がない。具体的には、例えば、水及び二価グリコールを含む分散媒の一部、油分、カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤、高級アルコール及び高級脂肪酸の中から選ばれる少なくとも一種、並びに非イオン性界面活性剤を混合してマイクロエマルションを調製し、その後、係るマイクロエマルションに、分散媒の残部を添加して希釈することによって、又は、分散媒の残部に、係るマイクロエマルションを添加して希釈することによって、本発明の微細エマルション型化粧料を製造することができる。
【0071】
ここで、カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤は、上記式1で示されるような中和した状態のものを使用してもよく、或いは、式1のMが水素原子である係る界面活性剤の原料と中和剤とを混合し、化粧料の調製中に中和させたものであってもよい。また、分散媒の残部は、二つ以上に分割して使用することができる。この場合、最初に使用する分散媒の残部には、水が含まれ、任意に、二価グリコール及び低級アルコールも含まれていてもよく、残りの分散媒の残部には、最初の分散媒の残部に二価グリコールが含まれていない場合は、水及び二価グリコールが含まれ、最初の分散媒の残部に二価グリコールが含まれている場合は、水及び任意に二価グリコールが含まれており、かつ、何れの場合も、上記の任意成分が適宜含まれていてもよい。
【0072】
本発明におけるマイクロエマルション相の形成温度としては、10℃以上、15℃以上又は20℃以上とすることができ、また、75℃以下、70℃以下又は65℃以下とすることができる。生産性等の観点から、マイクロエマルション相の形成温度としては、25℃~50℃の範囲が好ましく、25℃~45℃の範囲がより好ましい。本発明の化粧料は、このような温度下においてマイクロエマルション相を形成し、続く分散媒の希釈によって調製されるため、微細エマルションの調製において従来使用されていたような、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、又は80℃以上の高温の加温処理を適用しなくてもよい。
【0073】
また、マイクロエマルションを希釈するための分散媒の残部には、低級アルコールを配合することが好ましい。低級アルコールの使用は、得られる化粧料中の油滴の平均粒子径をより一層低減させることができる。係る低級アルコールとしては、炭素原子数1~5のアルキル基を有する一価アルコールが好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基を有する一価アルコールがより好ましい。また、分散媒の残部中での低級アルコールの配合量としては、分散媒の残部全量に対して、35質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下とすることができる。
【0074】
低級アルコールによる油滴の平均粒子径の低減効果は、マイクロエマルションを水で希釈して化粧料を調製した後に、別途、係る化粧料に低級アルコールを添加しても得られるものではない。したがって、化粧料中に低級アルコールが含まれている系であったとしても、化粧料中の油滴の平均粒子径が、55nm以下、50nm以下又は45nm以下であるか否かによって、本願発明の製造方法で得られた化粧料であるか否かを、物としても十分に区別することができる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、配合量は質量部で示す。
【0076】
《実施例1~30及び比較例1~8》
下記に示す表1~9の処方及び製造方法により得た、本発明の化粧料中の油滴の平均粒子径を評価した。ここで、表中の「希釈用残部分散媒」とは、最終的な化粧料に配合される分散媒の内、マイクロエマルション相を調製するために使用された分散媒の一部を差し引いた、マイクロエマルション相を希釈して化粧料を調製するための残りの分散媒を意味する。油滴の平均粒子径は、ゼータサイザーNanoZS(sysmex社製)を用い、試料を希釈することなくそのまま測定した。また、油滴の平均粒子径は、化粧料の安定性を評価する指標となり、油滴の平均粒子径が150nmを超えるものは、油滴が凝集合一して白濁化し易く、不安定であるといえる。
【0077】
〈非イオン性界面活性剤の影響〉
実施例1~5及び比較例1~4から、非イオン性界面活性剤が化粧料に及ぼす影響について検討した。
【0078】
【0079】
(実施例1)
カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤の原料であるカルボキシデシルトリシロキサン、その中和剤であるアミノメチルプロパンジオール、イソステアリルアルコール、非イオン性界面活性剤のオレス-15、油分としてのジメチルポリシロキサン及び水添ポリデセン、POE(14)POP(7)ジメチルエーテル、並びにイオン交換水を、45℃で溶解混合してマイクロエマルションを形成した。次いで、化粧料を調製するための希釈用の分散媒の残部であるイオン交換水に、形成したマイクロエマルションを添加し、攪拌混合して実施例1の化粧料を作製した。
【0080】
(実施例2~5)
非イオン性界面活性剤を、表1に記載されるイソステアリン酸PEG-20グリセリル等に各々変更したこと、マイクロエマルション相の調製温度を、実施例2では30℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2~5の化粧料を各々作製した。
【0081】
(比較例1~4)
非イオン性界面活性剤を、表1に記載されるステアリン酸PEG-5グリセリル等に各々変更したこと、マイクロエマルション相の調製温度を、比較例1及び2では75℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1~4の化粧料を各々作製した。
【0082】
(結果)
表1から明らかなように、ポリオキシエチレン鎖を有する、HLBが12~17の非イオン性界面活性剤を使用した実施例1~5の化粧料は、油滴の平均粒子径が110nm以下と小さく、油滴が分散媒中に安定に分散していたのに対し、HLBが12未満の非イオン性界面活性剤を使用した比較例1~4の化粧料は、油滴の平均粒子径が210nm以上と大きく白濁化しており、不安定であることが確認できた。
【0083】
〈高級アルコール及び高級脂肪酸の影響〉
実施例2、6~8及び比較例5から、高級アルコール及び高級脂肪酸が化粧料に及ぼす影響について検討した。
【0084】
【0085】
(実施例6~8)
イソステアリルアルコールに代えて、実施例6ではオレイルアルコールに変更したこと、実施例7ではイソステアリル酸に変更したこと、実施例8ではオレイン酸に変更したこと、並びに実施例6~8では、マイクロエマルション相の調製温度を45℃に変更したこと以外は、実施例2と同様にして実施例6~8の化粧料を各々作製した。
【0086】
(比較例5)
イソステアリルアルコールに代えて、ステアリルアルコールに変更したこと、及びマイクロエマルション相の調製温度を60℃に変更したこと以外は、実施例2と同様にして比較例5の化粧料を作製した。
【0087】
(結果)
表2から明らかなように、25℃で液状の高級アルコール又は高級脂肪酸を使用した実施例2及び実施例6~8の化粧料は、油滴の平均粒子径が134nm以下と小さく、油滴が分散媒中に安定に分散していたのに対し、25℃で固形状の高級アルコールであるステアリルアルコールを使用した比較例5の化粧料は、結晶が析出してしまい平均粒子径を測定できないほど不安定であることが確認できた。
【0088】
〈高温下での長期安定性〉
実施例9及び比較例6から、化粧料における高温下での長期安定性について検討した。
【0089】
【0090】
(実施例9)
POE(14)POP(7)ジメチルエーテルを使用しなかったこと以外は、実施例2と同様にして実施例9の化粧料を作製した。
【0091】
(比較例6)
カルボキシ変性シリコーン系界面活性剤の原料であるカルボキシデシルトリシロキサン、その中和剤であるトリエタノールアミン、セチルアルコール、非イオン性界面活性剤のステアリン酸PEG-5グリセリル、油分としてのジメチルポリシロキサン及び水添ポリデセン、並びにイオン交換水を、80℃で溶解混合してマイクロエマルションを形成した。次いで、希釈用の分散媒の残部であるイオン交換水に、形成したマイクロエマルションを添加し、攪拌混合して比較例6の化粧料を作製した。なお、比較例6の化粧料は、特許文献2の構成に相当する。
【0092】
(結果)
表3から明らかなように、比較例6の化粧料も、作製直後又は25℃程度の温度条件下においては、平均粒子径の増大はそれほど認められず、比較的安定であるともいえるが、40℃~50℃程度の高温下においては、平均粒子径が、作製直後に比べて30~50%程度も増大しており、高温下での長期安定性に欠けることが確認された。一方、実施例9の化粧料の場合、40℃~50℃程度の高温下であっても平均粒子径の増大は、1~3%程度と少なく、高温下での長期安定性に優れることが確認できた。
【0093】
〈油分の影響〉
実施例9~13から、油分が化粧料に及ぼす影響について検討した。
【0094】
【0095】
(実施例10~13)
ジメチルポリシロキサン、水添ポリデセン、及び希釈用の分散媒の残部であるイオン交換水の配合量を、表4に示されるように変更したこと、並びにマイクロエマルション相の調製温度を、実施例10では20℃、実施例11では25℃、実施例12及び13では40℃に変更したこと以外は、実施例9と同様にして実施例10~13の化粧料を作製した。
【0096】
(結果)
表4から明らかなように、油分の配合量を調整することによって、油滴の平均粒子径及びマイクロエマルション相の形成温度も調整し得ることが分かった。
【0097】
〈アルキレンオキシド誘導体の影響〉
実施例2、9、14及び15から、アルキレンオキシド誘導体が化粧料に及ぼす影響について検討した。
【0098】
【0099】
(実施例14及び15)
ジプロピレングリコール及びPOE(14)POP(7)ジメチルエーテルの配合量を、表5に示されるように変更したこと以外は、実施例2と同様にして実施例14及び15の化粧料を作製した。
【0100】
(結果)
表5から明らかなように、二価グリコールであるジプロピレングリコールとともに、POE(14)POP(7)ジメチルエーテルのようなアルキレンオキシド誘導体を併用しても、微細エマルション型の化粧料が調製し得ることが確認できた。
【0101】
〈油分量及びアルキレンオキシド誘導体の影響〉
実施例16~20から、油分量及びアルキレンオキシド誘導体が、化粧料に及ぼす影響について検討した。
【0102】
【0103】
(実施例16~20)
ジメチルポリシロキサン及び水添ポリデセンの配合量を表6に示されるように変更したこと、並びに実施例16~18及び20については、ジプロピレングリコール及びPOE(14)POP(7)ジメチルエーテルのようなアルキレンオキシド誘導体の配合量を、表6に示されるように変更したこと、並びにマイクロエマルション相の調製温度を、実施例17~19では40℃に変更したこと以外は、実施例2と同様にして実施例16~20の化粧料を作製した。
【0104】
(結果)
表6から明らかなように、油分の配合量を、表5に示される態様よりもさらに減らした場合であっても、ジプロピレングリコールとPOE(14)POP(7)ジメチルエーテルの併用系において、微細エマルション型の化粧料が調製し得ることが確認できた。
【0105】
〈ジプロピレングリコール以外の他の二価グリコールの影響〉
実施例9及び21~24から、ジプロピレングリコール以外の他の二価グリコールが、化粧料に及ぼす影響について検討した。
【0106】
【0107】
(実施例21~24)
ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールの配合割合を、表7に示される割合に変更したこと、並びにマイクロエマルション相の調製温度を、実施例22では40℃、実施例23では55℃、実施例24では65℃に変更したこと以外は、実施例9と同様にして実施例21~24の化粧料を作製した。
【0108】
(結果)
表7から明らかなように、ジプロピレングリコールに限らず、1,3-ブチレングリコールのような他の二価グリコールを使用した系においても、微細エマルション型の化粧料が調製し得ることが確認できた。また、二価グリコールとして、ジプロピレングリコールを使用した系の方が、マイクロエマルション相の形成温度を低減し得ることも分かった。
【0109】
〈マイクロエマルション相調製用の水及び二価グリコールの配合割合の影響〉
実施例9及び25~27から、マイクロエマルション相調製用の水及び二価グリコールの配合割合が、化粧料に及ぼす影響について検討した。
【0110】
【0111】
(実施例25~27)
ジプロピレングリコール及びマイクロエマルション相調製用のイオン交換水の配合割合を、表8に示される割合に変更したこと、並びにマイクロエマルション相の調製温度を、実施例25では50℃、実施例26では40℃、実施例27では15℃に変更したこと以外は、実施例9と同様にして実施例25~27の化粧料を作製した。
【0112】
(結果)
表8から明らかなように、マイクロエマルション相調製用の水及び二価グリコールの配合割合を調整することによって、油滴の平均粒子径を大きく変動させることなく、マイクロエマルション相の形成温度を調整し得ることが分かった。
【0113】
〈希釈用の分散媒の残部における低級アルコールの影響〉
実施例2及び28~30及び比較例7~8から、希釈用の分散媒の残部に配合する低級アルコールが、化粧料に及ぼす影響について検討した。ここで、表9中の「EtOH」とは、エタノールを意味し、また、例えば、「EtOH10%」とは、水及びエタノールを含む希釈用の分散媒の残部中、10質量%がエタノールであることを意味する。
【0114】
【0115】
(実施例28~30及び比較例7~8)
希釈用残部分散媒の種類を表9に示すものに変更したこと以外は、実施例2と同様にして実施例28~30及び比較例7~8の化粧料を作製した。
【0116】
(結果)
表9の結果から明らかなように、水に加えてエタノールを所定量含む希釈用の分散媒を採用すると、化粧料中の油滴の平均粒子径を大幅に低減し得ることが確認できた。係る平均粒子径の低減効果は、エタノール以外にも、エタノールと類似の性能を奏する他の低級アルコール、例えば、炭素原子数1~5のアルキル基を有する一価アルコールを採用した場合にも同様に奏し得ることは、今回の結果から容易に推認し得るものと考える。
【0117】
《微細エマルション型化粧料の処方例》
以下に、本発明の微細エマルション型化粧料の処方例を挙げるが、この例示に限定されるものではない。
【0118】
〈処方例1 透明化粧水〉
(成分) (質量%)
精製水 残量
EDTA-2Na・2H2O 0.03
グリセリン 5.0
ジプロピレングリコール 5.0
ポリエチレングリコール300 3.0
エタノール 5.0
フェノキシエタノール 0.5
カルボキシデシルトリシロキサン 0.2
イソステアリルアルコール 0.3
イソステアリン酸PEG-20グリセリル 0.4
水添ポリデセン 0.35
ジメチコン 0.35
POE(14)POP(7)ジメチルエーテル 0.4
アミノメチルプロパンジオール 0.05
【0119】
(透明化粧水の製造方法)
精製水の一部、EDTA-2Na・2H2O、グリセリン、ジプロピレングリコールの一部、ポリエチレングリコール300、エタノールの一部、及びフェノキシエタノールを25℃で混合して溶解させ、混合液1を調製する。次いで、精製水の一部及びエタノールの一部を25℃で混合して混合液2を調製する。カルボキシデシルトリシロキサン、イソステアリルアルコール、イソステアリン酸PEG-20グリセリル、水添ポリデセン、ジメチコン、POE(14)POP(7)ジメチルエーテル、アミノメチルプロパンジオール、精製水の一部、及びジプロピレングリコールの一部を40℃で溶解混合させてマイクロエマルションを調製する。係るマイクロエマルションを混合液2に添加し、攪拌混合してマイクロエマルションを希釈して乳化物を調製する。さらに、係る乳化物を混合液1に添加し、攪拌混合して透明化粧水を作製した。得られる化粧水中の油滴の平均粒子径は、40nmであり、pHは8.35、L値は95であった。
【0120】
〈処方例2 美容液〉
(成分) (質量%)
精製水 残量
EDTA-2Na・2H2O 0.03
グリセリン 5.0
ジプロピレングリコール 5.0
ポリエチレングリコール300 3.0
エタノール 5.0
フェノキシエタノール 0.5
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.2
カルボキシデシルトリシロキサン 0.2
イソステアリルアルコール 0.3
イソステアリン酸PEG-20グリセリル 0.4
水添ポリデセン 0.35
ジメチコン 0.35
POE(14)POP(7)ジメチルエーテル 0.4
アミノメチルプロパンジオール 0.05
【0121】
(美容液の製造方法)
精製水の一部、EDTA-2Na・2H2O、グリセリン、ジプロピレングリコールの一部、ポリエチレングリコール300、エタノールの一部、フェノキシエタノール及びステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースを75℃で混合して溶解させ、混合液3を調製する。次いで、精製水の一部及びエタノールの一部を25℃で混合して混合液4を調製する。カルボキシデシルトリシロキサン、イソステアリルアルコール、イソステアリン酸PEG-20グリセリル、水添ポリデセン、ジメチコン、POE(14)POP(7)ジメチルエーテル、アミノメチルプロパンジオール、精製水の一部、及びジプロピレングリコールの一部を40℃で溶解混合させてマイクロエマルションを調製する。係るマイクロエマルションを混合液4に添加し、攪拌混合してマイクロエマルションを希釈して乳化物を調製する。さらに、係る乳化物を混合液3に添加し、攪拌混合して美容液を作製した。B型粘度計(ローターNo.2、12rpm)で測定した美容液の粘度は、770mPa/sであり、pHは8.25、L値は90であった。